転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2...

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転写因子 N rf2 の活性化により誘導される細胞応答

~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化 ~

Ce l lu l a r Resp onse s Induced b y Act iv a t ion o f Tr ans cr ip t ion Fac to r

Nr f2 : Enhan cem en t o f C ytopro t ec t iv e E ffec t s and Mo dula t ion o f

Sens i t i v i t y t o Chemotherap y

平成 25 年度入学

西本 翔一 ( Ni sh i moto , Sho ich i )

指導教員

小笠原 裕樹

目次

略語

序論 1

第 1 章 神経細胞株における N rf2 の活性化がメチルグリオキサー

ル誘導性のカルボニルストレスに与える効果 9

背景・目的 9

結果 13

第 1 節 SH-SY5 Y における MG 毒性と MG 化タンパク質の

形成 13

第 2 節 Nr f2 活性化剤による MG 毒性軽減効果 15

第 3 節 Nr f2 活性化剤による制御タンパク質及び代謝物の

変動 17

第 4 節 Nr f2 活性化剤の MG 毒性軽減効果における G SH の

関与 19

考察 21

第 2 章 急性前骨髄球性白血病細胞株 NB4 の三酸化ヒ素 (AT O)に

対する感受性における Nr f2 活性化の影響 26

背景・目的 26

結果 28

第 1 節 N B4 の A T O に対する感受性 28

第 2 節 N B4 における CA による N r f2 系の活性化 30

第 3 節 Nr f2 活性化による AT O に対する感受性の減弱と、

細胞内ヒ素濃度への影響 33

第 4 節 トランスポーターMRP 阻害による細胞内ヒ素濃度へ

の影響 35

第 5 節 AT O に対する感受性における GSH の役割 37

第 6 節 CA 前処理 ATO 処理における Nr f2 ノックダウンの

効果 39

考察 42

総括 47

実験の部 50

材料 50

方法 52

第 1 章 神経細胞株における Nrf 2 の活性化がメチルグリオキ

サール誘導性のカルボニルストレスに与える効果 52

1-1 . SH-SY5 Y 細胞の培養 52

1-2 . SH-SY5 Y 細胞に対する CA、 CD DO- Im、 BSO、M G 処理 53

1-3 . 蛍 光 染 色 法 に よ る 細 胞 毒 性 の 評 価 (Ho echs t 3 3342 /P I

s t a in ing as sa y) 54

1-4 . Wes te rn Blo t t i ng 用全細胞タンパク質抽出サンプルの

調製 54

1 -5 . 細胞質画分及び核画分の調製 55

1-6 . タンパク質の定量 56

1-7 . Wes te rn Blo t t i ng 56

1-8 . 細胞内 GSH 量の定量 58

1-9 . t o t a l RNA の 調 製 と 、 reverse t r ansc r ip t ion - 定 量 PCR

(RT-qPCR)による遺伝子発現量の解析 59

1-10 . D -乳酸の測定 61

1-11 . 統計処理 62

第 2 章 急性前骨髄球性白血病細胞株 NB4 の三酸化ヒ素

(ATO )に対する感受性における N rf 2 活性化の影響 63

2-1 . N B4 細胞の培養 63

2-2 . N B4 細胞に対する CA、 ATO、 BSO、MK-571 処理 63

2-3 . 蛍 光 染 色 法 に よ る 細 胞 毒 性 の 評 価 (Ho echs t 3 3342 /P I

s t a in ing as sa y) 63

2-4 . 細胞質画分及び核画分の調製 64

2-5 . タンパク質の定量 64

2-6 . Wes te rn Blo t t i ng 65

2-7 . 細胞内 GSH 量の定量 65

2-8 . 誘導結合プラズマ -質量分析計 ( ICP -MS)による細胞内ヒ

素の定量 66

2-9 . t o t a l RNA の 調 製 と 、 reverse t r ansc r ip t ion - 定 量 PCR

(RT-qPCR)による遺伝子発現量の解析 67

2-10 . smal l i n t e r fe r ing RN A (s iRN A)トランスフェクションに

よる Nrf2 ノックダウン 68

2 -11 . 統計処理 69

謝辞 70

引用文献 71

略語

AGEs Advan ced g l yca t ion end p ro duc t s

AKR Aldo -ke to redu c tas e

ATO Arsen i c t r i ox ide

ATRA Al l - t r ans re t i no i c a c id

AP L Acu te p rom yelo c yt i c l euk emia

ARE Ant iox idan t r espon se e l em en t

ARP Argp yr imid in e

BCA Bic in chon in i c ac id

BT B Bro ad -Complex , Tr amt rack , an d Br i c -à -Brac

BSO Buth ion ine s u fox imine

bZip Bas i c - l eu c ine z ipp e r

CA Carnos i c ac id

CDDO-M e Ba rdox o lone meth yl

CDDO- Im 1 - [ 2 -c yano -3 - ,12 -d i ox oo leana -1 ,9 (11 ) - d i en -28 -o yl ]

imidazo le

CE L C arbox ye th yl l ys ine

Cu l3 Cu l l i n3

CNC Cap ‘n ’ C o l l a r

DGR Doub le - g l yc ine rep ea t

DMEM/F12 Dulbecco ' s mod i f i ed Eagle ’s m ed ium / Ham 's F -12

DMSO Dimeth yl su l fox ide

DTN B 5 ,5 ’ -d i th iob i s (2 -n i t robenzo ic ac id )

FBS Fe t a l bov ine s e rum

GC L γ - g lu t am yl - c ys t e in e l i gase

GC LC GC L ca t a l yt i c sub u n i t

GC LM GC L modi f i e r subu n i t

G LO1 Gl yox a las e I

GSH Reduced g l u t a th ion e

GSSG Ox id i z ed g lu t a th io ne

GST Glu ta th ione S - t r ans fe r ase

HO-1 Heme -ox ygen ase 1

HRP Horse rad i sh p e rox idase

ICP -MS In duc t ive l y coup l ed p l asma mass spec t romet r y

IV R In t e rv en in g r eg ion

Keap1 Kelch - l ike ECH ass oc ia t ed p ro t e in 1

MG Meth yl g l yox a l

MG-H1 Meth yl g l yox a l h yd r o imidazo lone i so fo rm 1

MRP Mul t id rug res i s t ans e -as so c i a t ed p ro t e i n

MTT 3 - (4 ,5 -d imeth yl th i azo l -2 - yl ) -2 ,5 -d iphen yl t e t razo l ium

bromide

Neh Nr f2 -ECH homolo gy

NF- κ B Nuclea r f a c to r -k ap pa B

Nrf2 NF- E2 p45- re l a t ed fac to r 2

PBS Phospha te bu ff e r ed sa l ine

PCO P ro te in ca rbon yl

P I P rop id ium iod ide

PVDF Po l yv in yl iden e d i f l uo r ide

Rbx 1 R ING-box p ro t e in 1

RNAi RNA in t e r f e rence

ROS Reac t iv e ox ygen sp ec i es

RT-qPCR R evers e t r ansc r ip t ion -quan t i t a t i v e PCR

SDS S od ium dodec yl su l fa t e

s iRNA S mal l i n t e r fe r in g R NA

TPBS PBS con ta in in g 0 .1 % Tw een 2 0

x CT C ys t ine / g lu t amate t r anspo r t e r

1

序論

ヒトの体は生活の中で、常に内因性、外因性の様々な酸化スト

レスや求電子性化学物質に曝露されている 1 )。活性酸素種 (ROS )

は一部では意図的に生体内で産生され、細胞内レドックス状態を

維持する上で重要な伝達物質として働く一方、酸化ストレス状態

が持続することで生体内のタンパク質、脂質、核酸の構造が酸化

的傷害を受け、その機能が障害される危険性がある 2 )。この酸化

ストレスは慢性的な炎症を引き起こし、発がん、神経変性、炎症

性疾患、老化へと繋がる 3 , 4 )。これに対し、生体は酸化ストレスに

対抗するためのシステムや有害な求電子性物質を無毒化・排泄す

る機能を備えており、抗酸化・解毒代謝酵素等の細胞保護に関わ

る遺伝子の発現制御において中心的な役割を担っている転写因子

として N F-E2 p 45- re l a t ed f ac to r 2 (N r f2 )が知られている 5 )。

Nr f2 は塩基性ロイシンジッパー (b Zip )構造を持つ転写因子であ

り、Cap ‘n ’ Co l l a r (CNC)転写因子群に属する 6 )。 199 4 年、Nr f2 は

Kan らによってグロビン遺伝子発現制御領域中の NE- F2 結合配列

に結合する因子としてクローニングされた 7 )。その後、 Kan らは

Nrf2 の生体内での役割を明らかにするために N rf2 ノックアウト

マウスを作成し、解析を行ったが、野生型マウスと比較して成長

や行動、解剖学的な違いがみられなかったことから、生体にとっ

て必須の遺伝子ではないと判断した 8 )。しかし、I t o らは野生型マ

ウスと N rf2 ノックアウトマウスにブチルヒドロキシアニソール

を投与したとき、Nrf2 ノックアウトマウスのみ第 I I 相代謝酵素で

ある glu t a th ione S - t r ans fe rase (GST )の発現が誘導されなかったこ

2

とから、N rf2 が解毒代謝に関わる酵素を制御していることを見出

した 9 )。更に、Nr f2 ノックアウトマウスは野生型と比べ酸化スト

レスに脆弱であることが報告され 1 0 )、Nr f2 はストレス状態におけ

る細胞内の解毒・代謝応答において重要な役割を担っていること

が認知された。

Nr f2 は 605 アミノ酸からなり、N rf2 - ECH homolo g y (N eh) 1 -7 と

呼ばれる機能ドメインを有している 1 1 , 1 2 )。Nrf2 の活性を制御する

上で最も重要な抑制因子として K elch - l ike ECH ass oc ia t ed p ro t e in

1 (Keap1)が知られている 1 1 )。Keap1 は 624 アミノ酸からなるタン

パク質であり、主要なドメインとして、ホモダイマー形成に関わ

る Broad -Complex , Tr amt rack , and Br i c -à - Brac (BTB)ドメイン、

C ys te in e リッチな In t e rv en in g reg ion ( IVR )ドメイン、 Nrf2 と相互

作用する Dou ble - g l yc i ne rep ea t /K e lch (D GR)ドメインを有してい

る 5 )。また、 Keap 1 は Cul l in3 (Cu l3 )、 R ING-b ox p ro t e i n 1 (Rbx 1)

と Cul l in 型 E3 ユビキチンリガーゼ複合体を形成し、その中で

Keap1 は基質アダプターとしての役割を担う 1 3 )。更に、 Keap1 は

反応性の高いシステイン残基を有しており、酸化ストレスや求電

子性物質に対するストレスセンサーとしても機能している 1 4 )。

Nrf2 /K eap 1 系の概略を Fi g .1 に示した。非ストレス条件下におい

て、 Nrf2 は常に合成され続けているが、 Neh2 ドメイン内の D LG

モチーフと ET GE モチーフを介して Keap1 に捕捉され、ユビキチ

ン化の修飾を受けた後、 26S プロテアソーム系で分解されること

により、Nr f2 の機能は制限されている 1 5 )。しかし、求電子性物質

等による刺激を受けると、 K eap1 のシステインが修飾を受けてそ

3

の立体構造が変化し、プロテアソーム系による N rf2 の分解を誘導

できなくなることで Nrf2 と結合した Keap1 が飽和し、新たに作ら

れた Nrf2 が核内へ移行するようになる 1 4 , 1 6 )。核内 Nrf2 は sm al l

Maf タ ン パ ク 質 と ヘ テ ロ ダ イ マ ー を 形 成 し て 抗 酸 化 応 答 配 列

(ARE; TGA G/CNN NGC )に結合し、下流の遺伝子発現を誘導する 9 )。

Nr f2 が 制 御 す る 遺 伝 子 と し て 、 抗 酸 化 タ ン パ ク 質 で あ る

heme-ox ygen ase 1 (HO- 1) 1 7 ) や、第 I I 相代謝酵素 GST 9 )、薬剤排

出トランスポーターである mul t id ru g res i s t ans e - as soc i a t ed p r o t e in

(MRP )1 1 8 )、MRP2 1 9 ) 、MRP4 2 0 )等が報告されている 。また、Nrf 2

は細胞内の解毒代謝において重要な低分子化合物であるグルタチ

オンの量を制御することも知られている 2 1 )。グルタチオンはグル

タミン酸、システイン、グリシンからなるトリペプチドであり、

細胞内に 0 .5 ~ 10 mM という高濃度で存在する 2 2 )。細胞質、核、

ミトコンドリアにおいて、グルタチオンは通常還元型 (GSH)と 2

分子の GSH がジスルフィド結合した酸化型 (GSSG )が 30 :1 ~ 100 :1

の割合で存在しており、 自身が酸化、還元されることで細胞内の

レドックスバランスを保っている。また、求電子性物質とグルタ

チオン抱合体を形成することで解毒排泄を促すことや、グリオキ

サラーゼ系を介した反応性カルボニル化合物であるメチルグリオ

キサール (MG )の解毒代謝においても GSH が必要であることが知

られている 2 3 , 2 4 )。 GSH は Fi g . 2 に示した経路で合成され、 Nr f2

の活性化は c ys t in e /g lu t am ate t r ans po r t e r である x CT、 GSH 合成の

律速酵素である γ - g lu t am yl -c ys t e ine l i gas e ( GC L )の発現を制御する

ことで細胞内 GS H 量の増大を引き起こす 2 1 , 2 5 )。このように、Nr f2

4

の活性化は細胞の抗酸化・解毒代謝応答を活性化することで細胞

の恒常性維持に寄与していると考えられている。

Nr f2 が発見されてから今日に至るまで、培養細胞や動物組織に

おいて、様々なストレスに対する N rf2 の重要性について盛んに研

究が行われてきた。Nr f2 の活性化は求電子性物質や酸化ストレス

だけではなく、重金属、紫外線、電離放射線に対する防御におい

ても重要であることが報告されている 2 6 – 2 9 )。筆者らは以前、カド

ミウムの解毒に対する Nr f2 応答における、 GSH の重要性を報告

した 3 0 )。

また近年では、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性閉塞

性肺疾患、喘息、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、多発性硬化

症、骨関節炎、関節リウマチ等、多くの疾患において Nrf2 の活性

化による治療の可能性が示されている 3 1 – 3 7 )。 2013 年には、 Nr f2

活性化剤である d i meth yl fumara t e が多発性硬化症の治療薬として

FDA で認可され 3 8 )、同じく Nrf2 活性化剤である bardox o lone

meth yl (CDDO -Me)は慢性腎疾患の治療薬としての臨床試験が世

界中で行われており 3 9 )、Nrf2 活性化剤の臨床応用への動きが活発

である。最近では、糖尿病の合併症や神経変性疾患に関与すると

される反応性カルボニル化合物である MG による毒性が、Nr f2 活

性化により軽減されることが報告された 4 0 )。MG は糖代謝等の副

産物として産生され、タンパク質、脂質、DN A を修飾し、その機

能を障害することで毒性を発揮すると考えられている 4 1 )。 Nrf2

は MG の代謝に関与する gl yox a las e 1 (G LO1 )や a ldo -ke to redu c tas e

(AKR )ファミリーの遺伝子発現を制御することが報告されている

5

が 4 0 , 4 2 )、Nrf2 の活性化による MG 毒性軽減への寄与は不明瞭であ

ると共に、そのメカニズムも明らかにされていない。Nrf2 活性化

剤をこれらの疾患の治療薬として応用するためには、その作用メ

カニズムを明らかにすることが必要であると考えられる。

一方で、N rf2 は化学発がんの予防因子として重要な役割を担っ

ており、また、Car nos i c a c id (CA)や Sul fo l aphan e といった Nr f2 活

性化剤の予防的摂取による抗酸化、解毒代謝の活性化は細胞を化

学物質から保護し、疾病発症、発がんを抑制することが示唆され

ている 1 0 , 4 3 , 4 4 )。しかし、ひとたび何らかの疾病に罹患して、薬物

による治療が必要となった場合、このシステムが、治療の妨げと

なる場合があり、最近ではむしろ、化学療法においては Nrf2 系の

阻害が有効とされるケースも存在する 4 5 )。実際に、 d ox orub ic in、

c i sp l a t in、e topos id e といった抗がん剤は Nr f2 シグナルの活性化に

より、その抗腫瘍作用が減弱することが報告されている 4 6 )。さら

に、肺、肝、胆嚢、頭頸部のがん細胞では Keap1 又は Nrf2 遺伝子

の変異により、K eap1 による Nrf 2 の抑制機構が働かず、Nrf2 系が

常時活性化されている事例が見られ、それらのがん細胞では薬剤

に対する感受性が低いことが報告されている 4 7 – 5 0 )。急性骨髄性

白血病では、Nrf 2 または Keap1 の体細胞変異は認められていない

が、NF-κ B の活性化が間接的に N rf 2 発現の上昇を引き起こしてい

る事例が報告されている 5 1 )。従って、抗がん剤治療をより効果的

にするために、あるいは新たな抗がん剤を開発する上で、Nr f2 系

をコントロールすることは重要である。しかし、すべての化学療

法が Nr f2 活性化により減弱されるわけではなく、そのメカニズム

6

には不明な点を残しており、更なる知見の蓄積が必要である。

本研究では、始めに神経細胞における MG によるカルボニルス

トレスに対する防御機構として、Nr f2 系の関与について検討を行

った (第 1 章 )。

次いで、急性前骨髄球性白血病 (AP L)の三酸化ヒ素 (ATO: As 2 O 3 )

を用いた化学療法において Nr f2 の活性化が与える影響について

検討した (第 2 章 )。

7

遺伝子発現を誘導抗酸化タンパク質解毒代謝酵素

Nrf2

(非ストレス状態)

ポリユビキチン化

26Sプロテアソーム

分解

Nrf2

細胞質

Nrf2

Nrf2

Nrf2

酸化ストレス求電子性物質(E)

Nrf2

ユビキチン化できない

ARE (TGAC/GNNNGC)

Nrf2

ARE: antioxidant response element(抗酸化応答配列)

Fig . 1 . Nrf 2 / Keap 1 系の制御メカニズム

8

シスチン

シスチンGlu

Glu

(細胞外)

(細胞内)

(細胞膜)

Cys

γ-Glu-Cys

GSH

Gly

GCL

GS

Glu

xCT 4F2

Fig . 2 . 細胞内 GSH 生合成経路

GCL, γ-glutamyl-cysteine ligase; xCT, cystine/glutamate transporter; GS, Glutathione

Synthetase

9

第 1 章 神経細胞株における N rf2 の活性化がメチルグリオキサー

ル誘導性のカルボニルストレスに与える効果

背景・目的

MG は反応性の高い α -ジカルボニル化合物であり、典型的な糖

化反応の原因物質である。神経細胞における過剰な M G の蓄積は

強い細胞毒性を引き起こすことが報告されている 5 2 )。更に、MG

は様々なタンパク質と反応し、カルボニル化タンパク質 (PCO)を

経て、終末糖化産物 (AGEs )を形成する 5 3 )。PCO や AGEs の蓄積は

カルボニルストレスとして知られ、様々な疾患に関与している 5 4 )。

これらの化合物はタンパク質の構造変化とともにその機能を障害

することで細胞毒性を発揮すると考えられている。

これまで行われた研究より、MG は様々なタンパク質と反応し、

argp yr imid ine (AR P) 、 car box ye th yl l ys ine (CE L) 、 meth yl g l yox a l

h yd ro imidazo lone i so fo rm 1 (MG -H1)を形成することが明らかにさ

れた (F i g . 3 ) 5 5 )。MG 化タンパク質の蓄積は皮膚、網膜、腎臓、血

液で確認され 5 6 – 5 9 )、糖尿病、慢性腎疾患、アテローム性動脈硬化

症はカルボニルストレスとの関連が示唆されている 6 0 – 6 3 )。近年、

若年性アルツハイマー病やパーキンソン病のような神経変性疾患

においても、カルボニルストレスの関与が推測されている 6 4 , 6 5 )。

更に、A ra i らは難治性統合失調症患者の血漿中においてカルボニ

ルストレスマーカーが高値であることを報告している 6 6 )。

細胞内において M G は主にグリオキサラーゼ系と A K R ファミリ

10

ーによる代謝を受けることが知られている ( F i g . 4 ) 6 7 )。更にグリオ

キサラーゼ系の律速酵素である G LO 1 や MG を還元することがで

きる AKR は Nrf 2 による発現制御を受けることが報告されている

4 0 , 4 2 )。また、グリオキサラーゼ系による代謝に必要な GSH の合成

も Nrf2 により制御されることが知られている 2 1 )。しかし、これ

らの MG 解毒における寄与の詳細は未だ不明である。

従って、本研究では神経細胞における MG の解毒に焦点を当て、

MG により誘導されるカルボニルストレス性の細胞毒性に対する

解毒応答として N rf2 /K eap1 系に注目し、検討を行った。

11

CH

NH

(CH2)4 NH

CHCO 2H

CO

CH3

CH

NH

CO

(CH2)3 NH

NH

NO

CH3

H

CH

NH

CO

(CH2)3 NH

N

N

CH3

CH3

OH

CH3

O

O

MG

ARP

CEL

MG-H1

LysProtein

ArgProtein

ArgProtein

F ig . 3 . MG に由来する主な終末糖化産物 (AGEs )

MG, methylglyoxal; CEL, carboxyethyl lysine; MG-H1, methylglyoxal hydroimidazolone

isoform 1; ARP, argpyrimidine

12

CH3O

O

OGS

CH3

OH

H

O

CH3

OH

H

OH

CH3O

OH

CH3

OH

OH

グルタチオン

(GSH) GSH

GLO1

AKR1B1

MG

D-乳酸

AKR7A2(?)

グリオキサラーゼ (GLO) 系による代謝

アルドケトレダクターゼ (AKR) による代謝

CH3O

OH

GS

H

GLO2

AKR1B1

ヘミチオアセタール

D-ラクトイルグルタチオン

プロパン-1,2-ジオールアセトール

Fig . 4 . グリオキサラーゼ、アルドケトレダクターゼによる MG の

代謝

13

結果

第 1 節 SH-SY5 Y における MG 毒性と MG 化タンパク質の形成

まず、 SH-SY5Y 細胞が MG に曝露されたときの影響について、

細胞死の誘導と A GEs の形成を指標として評価した。 MG 曝露 24

時間後において、 prop id ium iod ide ( P I)で蛍光染色された細胞を死

細胞として判定し、その割合を測定したところ、 M G の濃度に依

存的な細胞死の誘導作用がみられ、0 .3 mM 以上の濃度で曝露した

とき細胞毒性が現れ、0 .5 mM 以上ではほとんどの細胞が死滅した

(F i g . 5 A)。また、 MG を曝露された SH-SY5Y 細胞について、MG

に由来する A GEs である CE L と MG -H1 の形成を Weste rn Blo t t i n g

にて検出したところ、 0 .5 mM MG 曝露することで遅くとも曝露 4

時間後には CE L、MG-H1 が形成されることが示された (F i g . 5B)。

従って、MG は神経細胞内においてタンパク質と反応して AGEs

を形成し、カルボニルストレスを引き起こすことで細胞毒性を発

揮することが示唆された。

14

A

B

0 h

4 h

8 h

20

h

0.5 mM MG

β-actin

Anti-

CEL

Anti-

MG-H1

0

20

40

60

80

100

0 0.25 0.5 0.75 1

PI-

po

sitiv

e c

ells

[%

]MG [mM]

*

** ** **

20

30

40

50

60

80100120

220

[kDa]

20

30

40

50

60

80100120

220

[kDa]

0 h

4 h

8 h

20

h

0.5 mM MG

β-actin

Fig . 5 . SH-SY5Y における MG 曝露による影響

(A) SH-SY5Yに対し 0 ~ 1 mM MGを 24 時間曝露し、細胞毒性を Hoechst 33342/PI

staining assayにより評価した。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01, significantly

defferent from 0 mM MG. (B) 細胞に 0.5 mM MGを 0 ~ 20時間曝露し、MG修飾タ

ンパク質を抗 CEL 抗体(左)、抗 MG-H1 抗体(右)を用いた Western Blotting により

検出した。β-actin は loading control として用いた。

15

第 2 節 Nr f2 活性化剤による MG 毒性軽減効果

神経細胞における MG 毒性と Nrf2 の関係を明らかにするために、

Nrf2 活性化剤として知られる carnos i c ac id (CA)または 1- [ 2 -c yano -

3 - ,12 -d iox oo lean a - 1 ,9 (11 ) -d i en -28 - o yl ] imidazo le (CDDO - Im)を用い

た検討を行った。 SH-SY5Y 細胞において 5 µ M CA を前処理する

ことにより MG による細胞毒性が軽減され、特に 0 .5 m M MG 曝露

においては v eh ic l e と 5 µ M CA 処理の間に有意な差が認められた

(F i g . 6A 左 )。また、 10 nM CDDO - Im 前処理では 0 .3 , 0 .5 mM MG

曝露において有意な MG 毒性軽減効果が得られた (F i g . 6A 右 )。さ

らに、MG 曝露による CE L、MG- H 1 の形成は CA、 C DDO- Im 前処

理により顕著に抑制された ( F i g . 6 B)。これらの結果より、SH-SY5Y

細胞において N rf 2 の活性化は MG による細胞毒性を軽減し、その

機序として A GEs 形成抑制作用の関与が示唆された。

16

0

20

40

60

80

100

0 0.5 1

MG [mM]

vehicle

5 µM CA

A

**

0

20

40

60

80

100

0 0.5 1

MG [mM]

vehicle

10 nM CDDO-Im

PI-

positiv

e c

ells

[%

]

*

**

Anti-

CEL

β-actin

20

30

40506080

100120

220

[kDa]

0

veh CA

0.3

0.5

CDDO-

Im

MG

conc.

[mM

]

Anti-

MG-H1

20

30

40506080

100120

220

[kDa]

β-actin

0 0.3

0.5 0 0.3

0.5 0

veh CA

0.3

0.5

CDDO-

Im

0 0.3

0.5 0 0.3

0.5

MG

conc.

[mM

]

B

Fig . 6 . SH-SY5Y 細胞における Nrf2 活性化剤による M G 毒性軽減

効果

SH-SY5Y細胞に対し、5 µM CA または 10 nM CDDO-Im を 24 時間前処理し、培地

交換により CAまたは CDDO-Im を除去した後に MGを曝露した。(A) MG を 24時

間曝露後、細胞毒性について Hoechst 33342/PI staining assayにより評価した。Mean ±

SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01, significant defference between vehicle and CA or

CDDO-Im. (B) MGを4時間曝露後、MG修飾タンパク質を抗CEL抗体(左)、抗MG-H1

抗体(右)を用いた Western Blottingにより検出した。β-actin は loading control として

用いた。

17

第 3 節 Nr f2 活性化剤による制御タンパク質及び代謝物の変動

SH-SY5Y 細胞において、CA、CDD O- Im 処理による Nrf2 系への

影響について検討を行った。各種 N r f2 活性化剤を処理した後、核

内に蓄積した N rf 2 について Weste r n Blo t t i n g による検出を行った

ところ、CA や CD DO- Im 処理によるバンド強度の顕著な増大が認

められ、 Nr f2 の核内移行・蓄積の促進が確認された (F i g . 7 A)。ま

た、Nrf2 活性化の指標として H O-1 の mRNA 発現量を解析したと

ころ、CA、CDDO - Im による有意な発現量の増大が認められた ( F i g .

7B)。神経細胞における Nr f2 活性化剤による MG 毒性軽減のメカ

ニズムを明らかにするために、 GSH 合成の律速酵素である GCLC

と GCLM、シスチントランスポーターである xCT 、グリオキサラ

ーゼ系の律速酵素として知られる G LO1、ヒトでの M G 代謝に関

わると考えられている AKR1B1、 AK R7A2 について m RNA 発現変

動を解析した。 G CLC と GCLM、 xCT の mRNA 発現量は CA、

CDDO- Im により有意に増大し (F i g . 7B)、それに伴い細胞内 GSH

量 が 増 大 し て い る こ と が 分 か っ た ( F i g . 7C )。 一 方 で 、 GLO 1、

AKR1B1、 AKR7A2 mRNA の発現の発現に有意な増加は見られなか

った (F i g . 7 B)。

18

0

10

20

30

40

50

60

70

vehicle 5 µM CA 10 nMCDDO-Im

GS

H [nm

ol/m

g p

rote

in]

Nrf2

Lamin B1nucle

us

CA [µM]

0 1 2 5 10

A

C

B

****

100

CDDO-Im [nM]

0

10

20

30

40

50

HO-1

0

0.5

1

1.5

2

GCLC

0

1

2

3

4

GCLM

0

2

4

6

8

10

xCT

0

0.5

1

1.5

GLO1

0

0.5

1

1.5

AKR1B1

0

0.5

1

1.5

AKR7A2

Rela

tive m

RN

A e

xpre

ssio

n

*

**

*

* *

****

**

****

vehicle

5 µM CA

10 nM CDDO-Im

Fig . 7 . CA、 CDD O-I m の Nrf 2 / Kea p1 系や細胞内グルタチオン濃

度の変動に与える影響

(A) SH-SY5Y細胞に対し示された濃度の CAまたは CDDO-Im を 24時間処理し、分

画を行い、Western Blotting により核内 Nrf2 タンパク質発現量について解析した。

Lamin B1 は核画分の loading control として用いた。(B) 5 µM CA または 10 nM

CDDO-Im を 6 時間処理したときの HO-1、GCLC、GCLM、xCT、GLO1、AKR7A2、

AKR1B1 mRNAの相対発現量。RT-qPCR 法により測定した。Mean ± SD (n = 3), *P <

0.05, **P < 0.01. (C) 5 µM CAまたは 10 nM CDDO-Imを 24時間処理したときの細胞

内 GSH濃度。DTNB 法により測定した。Mean ± SD (n = 3), **P < 0.01.

19

第 4 節 Nr f2 活性化剤の MG 毒性軽減効果における G SH の関与

Nr f2 活性化剤による細胞内 GSH 量増大の MG 毒性軽減への関

与を明らかにするために、 GSH 合成酵素阻害剤である Buth ion ine

su fox imine ( BSO) を 用 い て さ ら な る 検 討 を 行 っ た 。 始 め に 、

SH-SY5Y 細胞に対し Nr f2 活性化剤と同時に 10 µM BS O を処理し、

細胞内 GS H 量を測定したところ、N rf2 活性化剤による細胞内 GSH

量の増大は有意に抑制されることが確認された ( F i g . 8 A)。この前

処理条件において MG を曝露し、細胞毒性を測定したところ、N rf2

活性化剤による M G 毒性軽減効果は BSO 処理により打ち消された

(F i g . 8 B)。従って、細胞内 GSH 量の増大は MG 毒性軽減に寄与し

ていることが明らかとなった。

MG は非酵素的に GSH と反応し、ヘミチオアセタールとなった

後、グリオキサラーゼシステムにより代謝されて D -乳酸となるこ

とが知られている。そこで、 N rf2 活性化による細胞内 GSH 量の

増大がグリオキサラーゼシステムを介した代謝系を活性化してい

るかを検証するため、細胞内 D-乳酸量の測定を試みた。0 .5 mM MG

曝露により約 40 n mol /mg p ro t e in の細胞内 D -乳酸が検出され、CA、

CDDO- Im 前処理により細胞内 D-乳酸の量は有意に増大していた

(F i g . 8 C)。この結果により、細胞内 GSH 量の増大により MG のグ

リオキサラーゼ系を介した代謝が促進されていることが示唆され

た。

20

0

20

40

60

80

100

0 0.2 0.3 0.5

PI-

positiv

e c

ells

[%

]

MG [mM]

vehicle

CA

CDDO-Im

vehicle + BSO

CA + BSO

CDDO-Im + BSO

A

B

C

0

10

20

30

40

50

60

vehicle 5 µM CA 10 nMCDDO-Im

GS

H [nm

ol/m

g p

rote

in]

control

10 µM BSO

****

** **

0

10

20

30

40

50

60

vehicle vehicle CA CDDO-Im

D-lacta

te[n

mol/m

g p

rote

in]

****

0.5 mM MG

**

*

**

**

n.s.

n.s.n.s.

n.s.

n.s.

n.s.

n.s.

n.s.n.s.

n.s.

n.s.

n.s.

Fig . 8 . Nrf 2 活性化剤の MG 毒性軽減効果における GSH の関与

(A) SH-SY5Yに対し 5 µM CAまたは 10 nM CDDO-Imと同時に 10 µM BSOを 24時

間処理したときの細胞内 GSH濃度。Mean ± SD (n = 3), **P < 0.01. (B) SH-SY5Y に

対し 5 µM CA または 10 nM CDDO-Im と同時に 10 µM BSOを 24時間処理し、培地

交換した後に各濃度の MGを 24時間曝露した。その後、細胞毒性について Hoechst

33342/PI staining assayにより評価した。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01. (C)

SH-SY5Yに対し 5 µM CAまたは 10 nM CDDO-Im を 24時間処理し、培地交換した

後に 0.5 mM MG を 30 分間曝露した。その後、細胞内 D-乳酸の量を測定した。Mean

± SD (n = 3), **P < 0.01.

21

考察

MG のようなタンパク質や核酸と反応し易いジカルボニル化合

物は糖や脂質、アミノ酸から形成される 6 8 , 6 9 )。反応性の高いカル

ボニル化合物の蓄積により引き起こされる状態はカルボニルスト

レスと呼ばれ 7 0 )、カルボニル化合物による修飾を受けたタンパク

質から AGEs が形成される。ヒトにおいて、糖尿病 6 0 , 6 1 )、腎不全

7 1 )、精神疾患 7 2 , 7 3 )等、様々な疾患を抱える患者の体内で AGEs が

増大していることが報告されている。従って、様々な疾患の原因

究明・治療法確立のために生体のカルボニルストレスに対する防

御機構の解明が望まれている。

近年、MG の解毒機構における Nr f2 系の関与が報告されたが 4 0 )、

そのメカニズムは未だ不明瞭であるため、 MG の解毒における

Nrf2 の役割を明確にすることが重要である。SH-SY5 Y 細胞におい

て Nrf2 を活性化することで MG の細胞毒性が低下することを示し

た先行研究があるが 7 4 )、その解毒メカニズムは不明瞭で、本研究

ではその解明を試みた。得られた結果から、神経細胞において

Nrf2 の活性化は M G の毒性を軽減し、その作用機序として、細胞

内 GSH 量の増大が重要であることが明らかとなった。

初めに、筆者は SH-SY5Y 細胞に対し MG を曝露して、濃度依存

的に細胞死が誘導されることを確認した ( F i g .5A )。本研究では P I

により蛍光染色された細胞を死細胞の指標として MG による細胞

毒性を評価した。一般的に細胞毒性の判定に汎用される方法とし

て 、 3- (4 ,5 -d imet h yl th i azo l -2 - yl ) - 2 , 5 -d iphen yl t e t razo l i um bromide

22

(MTT)を用いて細胞内の還元力を指標とし評価する方法が知られ

ており、先行研究においても MG による細胞毒性を M TT Assa y に

より評価している報告が見受けられる 7 4 , 7 5 )。しかし、筆者の検討

では MG が直接 M TT と反応してホルマザンを生成し、正確な細胞

毒性を測定することができないことが判明した。一方で、 P I は

MG の 影 響 を 受 け る こ と な く 使 用 で き る こ と か ら 、 Ho echs t

33342 /P I s t a in in g a s sa y で細胞毒性を評価するに至った。また、

SH-SY5Y 細胞に対する MG の曝露により、AGEs の一種である CE L

と MG-H1 の明瞭な形成が確認された (F i g . 5 B)。神経細胞に対する

MG の毒性において AGEs の形成・蓄積が関与していることが報

告されており 7 6 )、本研究においても CE L や MG- H1 の形成による

タンパク質の機能的変化が、細胞毒性に寄与していることが予想

される。

本研究では、Nr f2 の活性化剤として CA と CDDO - Im を用いるこ

とで、MG による細胞毒性、 A GEs 形成に対する Nr f 2 系の関与を

明らかにした (F i g . 6 )。 CA はローズマリーに多く含有されるジテ

ルペンであり、 Keap1 による分解の抑制や、 Erk 1 /2、 P I3 K-Akt 経

路の活性化を介し Nrf2 の活性化を引き起こすことが報告されて

いる 4 3 , 7 7 )。また、 CA はマウスに経口投与された場合、脳へ移行

することが確認されており 4 3 )、i n v i vo で中枢神経の保護効果を発

揮し得ると考えられる。CDD O- Im は合成トリテルペノイドであり、

Keap 1 の C ys151 残基に結合し Keap1 を阻害することで Nr f2 の活

性化を引き起こすことが報告されている 7 8 , 7 9 )。 CA、 CDDO- Im は

Nrf 2 の核内蓄積、及び N rf 2 活性化の指標である H O-1 の mRNA

23

発現量の増大が認められる濃度において (F i g . 7 A, B)、MG に依る

AGEs の形成と細胞毒性を軽減した (F i g . 6 )。

Thorna l l e y らの報告では、MG は主にグリオキサラーゼ系により

代謝され 5 4 )、グリオキサラーゼ系の代謝酵素である G LO 1 は N rf2

による制御を受けることを報告している 4 0 )。また、哺乳動物にお

いて MG はアルドースレダクターゼ (ヒトでは A KR1B1 )による代

謝を受けることも以前から知られており 8 0 )、最近では AKR7A2

の MG 解毒への関与も報告されている 8 1 )。その一方で、AKR1B1、

7A2 は、いずれも Nrf2 による制御が報告されている 4 2 , 8 2 )。しか

し、本研究では、 SH-SY5Y 細胞において N rf 2 を活性化したとこ

ろ、 GLO1、 AKR1 B1、 AKR7A2 の mRNA 発現の誘導は認められな

かった ( F i g . 7B)。一方で、 GSH 合成に関わる xCT、 GC LC、 GCLM

の mRNA 発現は N rf2 活性化剤の処理により誘導され、細胞内 GSH

量が増大した (F i g . 7B, C)。これらの結果より、Nrf 2 の活性化によ

る MG 毒性軽減作用において、細胞内 GSH 量の増大が関与してい

る可能性が示唆された。筆者らはこれまでの研究において、神経

細胞における po l ysu l f ide による M G 毒性軽減効果の機序として、

GSH 量の上昇が一部関与していることを報告した 8 3 )。本研究でも、

GSH 合成阻害剤 BSO を用いた検討結果より、 N rf2 活性化による

MG 毒性軽減において、 GSH は重要な役割を果たしていることが

明らかとなった (F i g . 8 A, B)。

GSH は MG と非酵素的に反応し、 G LO1 の基質であるヘミチオ

アセタールを形成するため、GSH 量の増大はグリオキサラーゼ系

による MG の代謝を促進していることが予想された。結果に示す

24

通り、MG 曝露後の細胞内 D -乳酸の生成は N rf2 活性化により促進

されており、この解釈が妥当であることを示唆している (F i g . 8C )。

この結果を支持する先行研究として、Li らは不死化ヒト脳毛細血

管上皮細胞株において、 M G 曝露後の D-乳酸への代謝は細胞内

GSH 量に依存することを報告しており 8 4 )、MG のグリオキサラー

ゼ系による代謝における GSH 量の重要性を示している。

以上のことから、Nrf2 の活性化は細胞内 GSH 量の増大を介して

MG のグリオキサラーゼ系による解毒代謝加速を促し、その結果

AGEs の蓄積と細胞毒性を抑制することが判った (F i g . 9 )。本研究

は Nrf2 のカルボニルストレスに対する主たる作用メカニズムを

示唆すると同時に、神経変性疾患のようなカルボニルストレスの

関与が考えられている疾患に対し、Nrf2 活性化剤が予防・治療薬

となる可能性を示すものである。

25

Nrf2

CA

MG

GCL

GSH

カルボニルストレス

D-乳酸

xCT

(神経細胞)

(Nrf2活性化剤)

CDDO-Imor

AGEs

タンパク質

解毒

GLO1/GLO2

Fig . 9 . 神経細胞における Nrf 2 活性化による MG 毒性軽減メカニ

ズム

26

第 2 章 急性前骨髄球性白血病細胞株 NB4 の三酸化ヒ素 (ATO )に対

する感受性における Nrf2 活性化の影響

背景・目的

近年、三酸化ヒ素 (ATO: As 2 O 3 )は再発・難治性の急性前骨髄球

性白血病 (AP L)の治療薬として認可され、 AP L 細胞に対し、高濃

度 (0 .5 ~ 2 µM)でアポトーシス誘導、低濃度 (0 .1 ~ 0 .5 µ M )で分化誘

導を引き起こすことが知られている 8 5 )。また、 ATO は AP L に対

する第一選択薬である a l l - t r ans r e t i n o ic a c id ( ATRA)感受性、耐性

細胞のどちらにも著効を示すことから、AP L 治療において非常に

有効な治療薬である 8 5 )。 Liu らは、ヒト肺胞基底上皮腺癌由来細

胞株 A549 において Nrf2 をノックダウンすると、ATO による細胞

生存率低下への影響が大きくなることを示した 8 6 )。また、マウス

初代肝細胞で N rf 2 活性化剤である su l fo raph ane の処理により、

NaAsO 2 の毒性を軽減することが報告されている 8 7 )。しかし、多

発性骨髄腫由来細胞において、s iRN A により N rf2 をノックダウン

しても ATO に対する感受性は変化しない、という報告もあること

から 8 8 )、 ATO に対する感受性と N rf2 の関係については未だ不明

瞭である。一方で AP L においては、ATRA が N rf2 系を抑制し、結

果として ATO の作用を増強する、という間接的な N rf2 の関与を

示唆する報告もされている 8 9 )。いずれにせよ、現在まで ATO に

よる化学療法が行われている AP L 細胞における ATO に対する感

受性と、 Nr f2 の ATO の薬効に及ぼす影響に関する研究は十分に

27

行われていない。

筆者は AP L 細胞を用いて、Nr f2 系の活性化が ATO による化学

療法に与える影響と、そのメカニズムを明らかにするため、本研

究を行った。

28

結果

第 1 節 N B4 の ATO に対する感受性

NB4 細胞の ATO に対する感受性について、 P I で蛍光染色され

た細胞を死細胞として判定し、その割合を測定することで評価し

た。NB4 に対し ATO を 0 ~ 4 µM の範囲で 48 時間処理したところ、

無添加の場合と比べ、1 .5 µM 以上の濃度において有意な死細胞の

増加が認められ、 1 µM ~ 4 µM において濃度依存的であった ( F i g .

10 )。

29

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 0.1 0.2 0.5 1 1.5 2 4

PI-

po

sitiv

e c

ells

[%

]

ATO [µM]

**

**

**

Fig . 1 0 . NB4 における ATO に対する感受性評価

NB4 に対し 0 ~ 4 µM ATO を 48 時間処理し、死細胞の割合を Hoechst 33342/PI

staining assayにより測定した。Mean ± SD (n = 3), **P < 0.01, significantly different

from 0 µM ATO.

30

第 2 節 N B4 における CA による N r f2 系の活性化

NB4 細胞に対して Nrf2 活性化作用が知られている CA を処理し、

Weste rn Blo t t i ng により核内 N rf2 の検出を行った。その結果、5 µM

CA 処理 2 ~ 24 時間後における核内 Nrf2 量の有意な増大が認めら

れた (F i g . 11B)。次いで、 5 µM CA 処理による N rf2 により制御さ

れることが報告されている遺伝子の発現変動を解析したところ、

HO-1、GCLM、xCT mRNA の有意な発現誘導が認められたが、GCLC、

GSTP1 mRNA の発現に変動は認められなかった ( F i g . 11A)。また、

細胞質における H O-1、GC LM タンパク質について Weste rn Blo t t i n g

による解析を行ったところ、それぞれ 6 ~ 24 時間と 1 2 ~ 2 4 時間

において有意に増大していることが確認された ( F i g . 11B)。さらに、

細胞内 GSH 量の変化について調べたところ、5 µM CA 処理した後

6 ~ 24 時間において有意に上昇し、その上昇は CA 濃度依存的で

あった ( F i g . 11 C , D )。

31

Nrf2

Lamin B1

GCLM

β-actin

HO-1

0

1

2

3

4

5

0 6 12 18 24

[h]

vehicle

5 µM CA**** ** **

0

20

40

60

80

100

120

0 6 12 18 24GS

H [nm

ol/m

g p

rote

in]

[h]

vehicle5 µM CA

**

** **

0 h 2 h 6 h 24 h

5 µM CA

12 h

++++- - - - -

nucle

us

cyto

pla

sm

0

0.5

1

1.5

0 6 12 18 24[h]

vehicle

5 µM CA

** *

0

2

4

6

0 6 12 18 24[h]

vehicle

5 µM CA** *

*

0

20

40

60

80

100

120

0 1 2.5 5GS

H [nm

ol/m

g p

rote

in]

CA [µM]

****

*

A

B

C D

0

1

2

3

12

15

rela

tive m

RN

A

expre

ssio

n

vehicle

5 µM CA

HO-1 GCLC GCLM xCT GSTP1

**

** **

Band Inte

nsity

(Nrf

2/L

am

inB

1)

Band Inte

nsity

(GCLM/β

-actin)

Band Inte

nsity

(HO

-1/β

-actin)

Fig . 11 . NB 4 において carnos i c a c id (C A)が N rf 2 /Kea p1 系と細胞

内グルタチオンレベルに与える影響

(A) NB4 に対し 5 µM CA を 24時間処理したときの HO-1、GCLC、GCLM、xCT、

GSTP1 mRNAの相対発現量。RT-qPCR 法により測定した。Mean ± SD (n = 3), **P

< 0.01. (B) NB4 に対し 5 µM CA を 0 ~ 24 時間処理し、分画を行い、Western Blotting

により核内 Nrf2、細胞質内 HO-1、GCLM タンパク質発現量について解析した。

Lamin B1 は核画分の、β-actin は細胞質画分の loading control としてそれぞれ用い

た。下のグラフは Western Blottingの結果を densitometryで数値化、解析したもの

である。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01, significant defference between

vehicle and 5 µM CA. (C) NB4における 5 µM CA 処理(0 ~ 24 時間)による細胞内

32

GSH量の経時変化。GSH量は DTNB法により測定した。Mean ± SD (n = 3), *P <

0.05, **P < 0.01, significant defference between vehicle and 5 µM CA. (D) NB4 に対し

0 ~ 5 µM CA を処理したときの細胞内 GSH 量測定。Mean ± SD (n = 4), *P < 0.05,

**P < 0.01.

33

第 3 節 Nr f2 活性化による ATO に対する感受性の減弱と、細胞内

ヒ素濃度への影響

NB4 において、C A による N rf2 の活性化が ATO に対する感受性

に与える影響を明らかにするために、 5 µM CA 前処理を行った後

に 0 ~ 2 µM ATO を曝露した場合の細胞毒性について調べた。ATO

を処理する 24 時間前に 5 µM CA を処理することで、 2 µM ATO

処理による死細胞の増加が有意に抑制された ( F i g . 12 A )。次いで、

NB4 において認められた Nrf2 の活性化が ATO の細胞毒性を軽減

する作用と、ATO 処理後の細胞内ヒ素濃度との関係について検討

を行った。 N B4 に対し CA を前処理せずに 2 µM ATO を添加した

とき、細胞内ヒ素濃度は上昇し、 1 2 時間後に最大 (約 1 .2 nmol / mg

p ro t e in )となり、その後減少した (F i g . 1 2 B)。しかし、 5 µM CA を

前処理することにより、ATO 処理による細胞内ヒ素濃度の上昇は

およそ 6 時間付近で見かけ上一定となり、細胞内ヒ素の蓄積が抑

制された ( F i g . 1 2 B)。5 µM CA 前処理により最大濃度に達するまで

の時間が短縮されたことから、 CA 前処理はヒ素の排出に関して

影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、 CA による細胞

内ヒ素濃度の減少作用は CA 濃度に依存的であった (F i g . 1 2C )。

34

A

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

0 6 12 18 24

Intr

acellu

lar A

s[n

mol/m

g p

rote

in]

[h]

vehicle

5 µM CA

*

*

**

** **B

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 0.5 1 1.5 2

PI-

positiv

e c

ells

[%

]

ATO [µM]

vehicle

5 µM CA

**

*

****

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

0 1 2.5 5In

tracellu

lar A

s[n

mol/m

g p

rote

in]

CA [µM]

**

****

C

Fig . 12 . NB4 に対する ATO 処理において CA 前処理が与える影響

(A) NB4 に対し 0 ~ 5 µM CAを 24時間前処理し、次いで 0 ~ 2 µM ATOを 48時間

処理後の死細胞の割合を測定した。Mean ± SD (n = 4), *P < 0.05, **P < 0.01. (B)

NB4に対し vehicle または 5 µM CAを 24 時間処理し、次いで 2 µM ATOを各時間

処理後、細胞内ヒ素濃度について ICP-MS による測定を行った。Mean ± SD (n = 4),

*P < 0.05, **P < 0.01, significant differences between vehicle and 5 µM CA. (C) 0 ~ 5

µM CAで 24時間前処理し、次いで 2 µM ATO を 12時間処理したときの細胞内ヒ

素濃度について測定した。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01, significantly

different from non-treated controls (CA: 0 M).

35

第 4 節 トランスポーターMRP 阻害による細胞内ヒ素濃度への影

NB4 におけるヒ素排出のメカニズムとして、MRP ファミリーの

関与を調べるために、MRP 阻害剤として知られる MK - 571 を用い

検討を行った。 C A 前処理を行わない場合、 ATO の単独での添加

時に MK-571 を同時に処理することで細胞内ヒ素濃度上昇の傾向

が認められた (F i g . 13A)。その一方で、5 µM CA 前処理を行った後、

ATO と M K-571 を同時に処理した N B4 細胞内では、ヒ素濃度が明

らかに上昇し、その濃度は CA 未処理における ATO と MK-571 を

併用した場合と比べ同程度であった (F i g . 1 3 A)。このとき、 ATO

の細胞死誘導作用に MRP 阻害剤が与える影響について検討を行

ったところ、MK-5 71 は ATO と併用するとき ATO の細胞毒性を増

強し、また、 CA 前処理による ATO の細胞毒性減弱効果を打ち消

した (F i g . 1 3 B)。一方、CA による MR P1,2 ,4 mRNA の発現量につい

て解析したところ、いずれも有意な変動は認められなかった ( F i g .

4C)。

36

0

0.5

1

1.5

2

0 50

Intr

ace

llula

r A

s[n

mo

l/m

g p

rote

in]

MK-571 [µM]

vehicle

5 µM CA

A B

0

10

20

30

40

50

60

70

0 5 10 50

PI-

po

sitiv

e c

ells

[%

]

MK-571 [µM]

vehicle

5 µM CA

**

*

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

MRP1 MRP2 MRP4

rela

tive m

RN

A level

vehicle

5 µM CA

C n.s. n.s. n.s.

**

n.s.

n.s.n.s.

Fig . 13 . CA 前処理 ATO 処理 NB4 の細胞外へのヒ素排出おける

MR P の関与

(A) NB4 に対し vehicle または 5 µM CA を 24時間処理し、次いで vehicleまたは

50 µM MK-571と 2 µM ATO同時に添加し 12 時間培養した後、細胞内ヒ素濃度に

ついて ICP-MS による測定を行った。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01. (B)

NB4に対し vehicleまたは 5 µM CAを 24時間処理し、次いで vehicleまたは 50 µM

MK-571と2 µM ATO同時に添加し 24時間培養した後、死細胞の割合を測定した。

Mean ± SD (n = 4), *P < 0.05, **P < 0.01, n.s. not significant. (C) NB4 に対し vehicle

または 5 µM CA 24 時間処理したときの MRP1, 2, 4 mRNAの相対発現量。Mean ±

SD (n = 3), n.s. not significant.

37

第 5 節 ATO に対する感受性における GSH の役割

先に示した結果から、 NB4 細胞に対する CA 前処理により細胞

内 GSH 量が上昇することが示された (F i g . 11C , D )。そこで、 N B4

細胞に対する ATO 処理における G SH 濃度変化の影響を明らかに

するため、 GS H 合成阻害剤である BS O を用いた検討を行った。

まず、 N B4 に対し BS O を処理することで細胞内 G SH 量が減少す

ると共に、 C A 処理による細胞内 G SH 量の増大も抑制することが

見出された ( F i g . 1 4 A)。そこで、 BSO 前処理による ATO 添加時の

細胞内ヒ素蓄積量への影響を観察したところ、 CA 前処理による

細胞内ヒ素排出促進効果は BSO 前処理により消失し、BSO のみを

前処理した場合と有意差のないヒ素濃度となった (F i g . 14 B)。また、

細胞毒性試験では、 BSO 前処理後に 2 µM ATO 処理するとき ATO

による細胞毒性が増強され、 CA 前処理による ATO の毒性軽減効

果も、 BSO 前処理により消失した (F i g . 14 C)。以上の結果より、

Nrf 2 活性化による細胞内 GS H 量の増大はヒ素排出促進に寄与し、

ATO の作用を減弱していることが示唆された。一方、ヒ素と GSH

の複合体形成促進に GSTP1-1 が関与することが報告されているが

9 0 )、本検討においては、 CA による GSTP1 mRNA の発現上昇は認

められなかった (F i g . 11A)。

38

00.20.40.60.8

11.21.41.6

0 µM BSO 2 µM BSO

Intr

acellu

lar A

s[n

mol/m

g p

rote

in]

vehicle

5 µM CA

**

n.s.

0

20

40

60

80

100

120

0 1 2 3 4 5GS

H [

nm

ol/m

g p

rote

in]

BSO [µM]

vehicle5 µM CA

A

C

B

**

**

***

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 1 2 5

PI-

positiv

e c

ells

[%

]

BSO [µM]

vehicle

5 µM CA

**

** n.s. n.s.

Fig . 1 4 . C A 前処理、ATO 処理された NB4 における GSH 合成阻害

による影響

(A) NB4に対し vehicle または 5 µM CA と 0 ~ 5 µM BSOを同時に 24時間処理し、

GSH量についてDTNB法により測定した。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01,

significant differences between vehicle and 5 µM CA. (B) NB4 に対し vehicleまたは 5

µM CAと 2 µM BSO を 24 時間同時処理し、次いで 2 µM ATO を添加し 12時間培

養した後、細胞内ヒ素濃度について ICP-MS による測定を行った。Mean ± SD (n =

3), **P < 0.01, n.s. not significant. (C) NB4に対し vehicleまたは5 µM CAと 0 ~ 5 µM

BSOを 24 時間同時処理し、次いで PBS または 2 µM ATO を添加し 48 時間培養

した後、死細胞の割合を測定した。Mean ± SD (n = 4), **P < 0.01, n.s. not significant.

39

第 6 節 CA 前処理 ATO 処理における Nr f2 ノックダウンの効果

これまで、 N B4 細胞において、 CA 処理による N rf2 系の活性化

が ATO に対する感受性に与える影響とそのメカニズムの解明を

目的に検討を行ってきた。その結果を踏まえて、 CA 処理による

様々な効果が実際に Nrf2 を介しているということを証明するた

めに、 RNAi により Nrf 2 の発現をノックダウンすることで更なる

検証を試みた。 N B4 に対し Nr f2 t a rge t s iRN A (s iNrf2 )をトランス

フェクションした場合、 CA 処理の有無にかかわらず Nrf 2 の核内

蓄積がほとんど観られなくなった事から、充分なノックダウン効

果が確認された (F i g . 1 5 B)。次いで、C A 処理による HO- 1、GCLM、

xCT mRNA レベルの上昇、細胞質内 HO-1、GC LM タンパク質量の

発現について調べたところ、N rf2 のノックダウンによりいずれの

発現増大も抑制された (F i g . 1 5A, B)。このとき、 CA 前処理による

細胞内 GSH 量の増大についても、明らかに抑制されることが示さ

れた (F i g . 15C )。また、CA 前処理による ATO 処理時に観られる細

胞内ヒ素排出促進効果についても、 s iNrf2 の導入により抑制され

ることが分かった (F i g . 1 5 D)。以上の結果より、 CA により引き起

こされる GSH 量の増大とヒ素排出促進効果は N rf2 依存的である

ことが証明された。

40

B

DC

0

1

2

3

4

5

--

-+

+-

++siNrf2

5 µM CA

**

** ****

Nrf2

Lamin B1

siNrf25 µM CA - - + +

- + - +

HO-1

GCLM

β-actin

nucle

us

cyto

pla

sm

0

1

2

3

4

--

-+

+-

++

0

0.5

1

1.5

2

--

-+

+-

++

* ** ***

0

1

2

7.5

10

Rela

tive m

RN

A e

xpre

ssio

n

siCtrl, vehicle

siNrf2, vehicle

siCtrl, CA

siNrf2, CA

HO-1 GCLC GCLM xCT GSTP1

* **

** **

** **

- - + +- + - +

siNrf2

5 µM CA

siNrf2

5 µM CA

siNrf25 µM CA

A

Band Inte

nsity

(Nrf

2/L

am

inB

1)

Band Inte

nsity

(GCLM/β

-actin)

Band Inte

nsity

(HO

-1/β

-actin)

0

20

40

60

80

100

120

siCtrl siNrf2

GS

H [nm

ol/m

g p

rote

in] vehicle

5 µM CA**

n.s.

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

siCtrl siNrf2

Intr

acellu

lar A

s

[nm

ol/m

g p

rote

in]

vehicle5 µM CA**

n.s.

Fig . 15 . C A 前処理、 ATO 処理 NB4 における、 Nrf 2 ノックダウン

による細胞応答への影響

NB4に対し 100 nM の nonspecific siRNA (siCtrl)または Nrf2 target siRNA (siNrf2)を

トランスフェクションし、その後の細胞応答の変化を解析した。(A) siCtrl または

siNrf2 をトランスフェクションした NB4 に対して vehicle または 5 µM CA を 24

時間処理したときの HO-1、GCLC、GCLM、xCT、GSTP1 mRNA発現量を RT-qPCR

により解析した。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01. (B)トランスフェクショ

ン後の NB4に対し、vehicleまたは 5 µM CA を 24時間処理したサンプルについ

て分画を行い、Western Blottingにより核内 Nrf2、細胞質内 HO-1、GCLM タンパ

ク質発現量を解析した。Lamin B1 は核画分の、β-actin は細胞質画分の loading

41

controlとしてそれぞれ用いた。下のグラフはWestern Blottingの結果を densitometry

で数値化、解析したものである。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01, significant

defference between vehicle and 5 µM CA. (C) siCtrlまたは siNrf2をトランスフェクシ

ョンした NB4に対して vehicleまたは 5 µM CA を 24時間処理したときの、細胞

内 GSH量を測定した。Mean ± SD (n = 3), **P < 0.01, n.s. not significant. (D) siCtrl

または siNrf2 をトランスフェクションした NB4に対して vehicleまたは 5 µM CA

を 24時間処理し、次いで 2 µM ATOを 12時間処理後、細胞内ヒ素濃度の測定を

行った。Mean ± SD (n = 3), **P < 0.01, n.s. not significant.

42

考察

Nr f2 /K eap 1 系の巧妙な制御メカニズムに基づいて、N rf 2 は様々

なストレスに応答して活性化し、細胞保護的に働く。この生体反

応は健常人の細胞内で恒常的に起きている。さらに、これまでの

研究より、 N rf2 依存的な応答が、抗酸化応答配列である ARE を

介して薬物代謝や抗酸化に関わる遺伝子の発現を制御することで、

異物による肝毒性に対し保護的に働くことが示されている 9 1 )。加

えて、Nr f2 欠損マウスはヒ素による酸化ストレス、アポトーシス

誘導により、その感受性が高くなることが知られている 9 2 )。この

ような背景から、近年ではサプリメントや医薬品による Nrf2 に依

存する細胞保護的な応答の活性化を介した疾病の予防に関する研

究は、動物実験のみならず、ヒトに対する臨床試験も活発に行わ

れている 9 3 , 9 4 )。

その一方で、最近、Nrf 2 /Keap1 系の負の側面として、薬剤耐性

との関わりが指摘されている 4 6 )。がん細胞においては、 KRas や

cM yc などのがん遺伝子の活性化や Keap1 の遺伝子変異などによ

って Nr f2 は恒常的に活性化しており、抗酸化酵素や解毒酵素の産

生や活性が亢進していることが明らかとなっている 4 7 – 4 9 , 9 5 , 9 6 )。そ

れ故に、がん細胞は酸化ストレスや細胞傷害性物質に対する抵抗

性が亢進しており、それが抗がん剤や放射線治療に対する抵抗性

の原因になっていると考えられる。即ち、細胞ががん化した状態

で CA や su l fo r aph ane などの Nrf 2 活性化剤を多く摂取した場合、

がん細胞の N rf2 制御因子が強化され、抗がん剤や放射線治療に対

43

する抵抗性を高める可能性がある。従って、がん細胞においては、

Nrf2 の活性をむしろ阻害する物質が、がん治療に役立つという可

能性、即ち N rf2 を標的分子とする研究に注目が集まり始めた 4 6 )。

いずれにせよ、がんの予防や治療のターゲットとしての転写因子

Nrf2 には二面性があり、がん予防の場合とがん治療の場合では全

く異なる対処が必要であると考えられる。2006 年に Bi swal らは、

細胞内解毒に関わる遺伝子のブレーキを外す働きが、一般的な肺

がん細胞における薬剤耐性を引き起こしているのではないかとい

うことに気づいた 4 7 )。培養細胞を用いた研究においても、KEAP1

遺伝子の変異を起こしているがん細胞は、正常な肺組織の細胞よ

り抗がん剤への耐性度が高くなっていることが解っている 4 7 )。し

かし、薬剤耐性が問題になっている血液がんは多く存在するにも

かかわらず、血球系がん細胞における Nrf2 系と薬物感受性との関

わりについて研究した報告は極めて少ない。

今回、筆者は血球系細胞として N B4、抗がん剤として ATO を用

いて研究を行い、以下の知見を得た。

CA は第 1 章考察で述べた通り、 Keap1 による N rf2 の抑制を解

除することで N rf 2 を活性化することが知られており、 Nrf2 活性

化剤として繁用される 4 3 , 7 7 )。CA 処理によって、N B4 細胞内で Nr f2

は核内に移行し、GSH 合成の材料であるシスチンの取り込みに関

与する x CT、 GSH 合成律速酵素の活性調節サブユニットである

GC LM の発現が増大した後、細胞内 GSH 量が 2 倍近く上昇した ( F i g .

11 )。CA は、血球系がんである AP L に対する抗がん剤として用い

られるヒ素製剤 ( ATO)によるアポトーシス作用が発揮される前に、

44

ヒ素をトランスポーターである MR P を介して細胞外への排出を

促進することで、その効果を減弱した (F i g .12 , 13 A)。即ち、その

感受性減弱効果は、ヒ素排出の促進による細胞内ヒ素の蓄積の抑

制が関与していることが明らかとなった (F i g . 13 B)。ヒ素は細胞内

で GSH と の 複 合 体 ( a r sen i c t r i g lu t a th ion e [ A S (GS) 3 ] 、

monometh yl a r so n ic d ig lu t a th ion e [ AsCH 3 (GS) 2 ] )となり、MRP1, 2

を介して細胞外へ排出されることが知られている 9 0 , 9 7 , 9 8 )。さらに、

MRP4 過剰発現 HE K293 細胞を用いた研究より、MRP 4 もヒ素排出

に関与していることが報告されている 9 9 )。筆者らが得た結果より、

ヒ素排泄は MRP 依存的であることが示されたが、C A 処理によっ

て、MRP1、MRP2 及び MRP4 の mRN A 発現量自体には変化は認め

られなかった (F i g . 13 C)。ヒ素と GSH の複合体の形成は抱合酵素

である GSTP1 -1 により促進されることが報告されている 9 0 )。また、

GSTP1-1 の発現に Nrf2 が関与しており、GSTP1-1 の活性化が ATO

によるアポトーシス誘導を阻害することも報告されている 1 0 0 , 1 0 1 )。

しかし、本研究において、 CA 処理による細胞内 G STP1 mRNA の

発現上昇 ( F i g . 11 A )、GST 活性の上昇 (データ未掲載 )は認められな

かったため、N B4 細胞における CA によるヒ素排出の促進におい

て、GST 活性は関与しないものと考えられる。一方で、BSO によ

る細胞内 GSH 合成阻害は、 C A によるヒ素排出促進作用を消失さ

せたことから、 C A 処理による Nr f 2 系の活性化によって起こる、

ヒ素排泄の促進におけるエッセンシャルな因子は、細胞内 GSH 濃

度であることが強く示唆された (F ig . 14 )。即ち、細胞に取り込ま

れたヒ素は、GST 非依存的かつ GS H 濃度依存的に複合体 A S ( GS) 3

45

を形成し、その複合体、もしくはメチル化を受けた形 (AsCH 3 (GS) 2 )

が MRP によって基質として認識され、細胞外に排泄されるものと

考えられる。また、s iRNA による検討から、CA による細胞内 GSH

増大を介したヒ素排出促進は N rf2 系に依存した効果であり、N B4

細胞において、 Nr f2 系は ATO に対する感受性に関して重要な役

割を担っていることが明らかとなった (F i g . 15 )。本研究で得られ

た結果は、GSH 濃度が上昇すると、ヒ素との複合体形成が促進さ

れるという報告 1 0 2 , 1 0 3 )、及びヒ素 -G SH 複合体の濃度が上がると

き、それを基質とする MRP によって As(GS) 3 の排出が促進すると

いう報告によって支持されるものである 9 0 , 9 8 )。

以上のことから、 AP L 細胞において、 Nrf2 の活性化は細胞内

GSH 量の増大を介し、ヒ素の細胞外への排出を活性化することで、

AP L 治療薬である ATO の作用を減弱してしまうことが明らかと

なった ( F i g . 16 )。

この研究成果は、がんの予防において Nrf2 の活性化は有効であ

るとして注目されている一方で、がんの治療においては ATO 等の

化学療法の妨げとなることを強く示唆している。

46

Nrf2

CA

As3+

GCL

GSH apoptosis

As-GSH conjugate

exclusion

xCT

(APL細胞)

(Nrf2活性化剤)(ATO)As3+

MRPs

GST

Fig . 1 6 . NB4 における CA による Nrf 2 活性化と、それに伴う ATO

に対する感受性減弱のメカニズム

47

総括

Nr f2 /K eap1 系は細胞のストレスに対する防御機構を司る主経路

として認識されており、環境中の有害物質や内因性異常代謝物か

ら細胞を守り生体の恒常性を維持する上で非常に重要な機能を担

うシステムである。また、N rf2 を活性化することによる疾患治療

への応用も行われており、今後、臨床研究の領域において発展し

ていくことが期待される。しかし、その詳細なストレス応答メカ

ニズムについて、解明されていない点が残されており、更なる基

礎研究が行われることも望まれている。筆者は神経細胞における

カルボニルストレスに対する防御機構と Nrf2 の関係に着目し研

究を行った。その結果、MG によるカルボニルストレスは Nr f2 の

活性化により軽減され、特に細胞内 GSH 量の増大がカルボニルス

トレスの抑制において重要な因子であることを明らかにした。ま

た、本研究結果は Nrf2 を標的とした神経変性疾患治療の可能性を

示すものである。

Nr f2 の活性化は、化学物質による発がんを防ぐ一方で、がん治

療において抗がん剤の作用を減弱したり、がん細胞の増殖に有利

な還元的環境を作り出すことで、がん治療の妨げとなる可能性が

危惧されている。しかし、あらゆる化学療法において Nrf2 の活性

化が悪影響を及ぼすとは限らず、新たな発がんの抑制や正常細胞

の保護作用を同時にもたらすと考えられる。従って、がん治療に

おける Nr f2 の活性化については、個々のがん治療におけるエビデ

ンスの蓄積とともに、更なる研究が必要とされているのが現状で

ある。

48

筆者は急性前骨髄球性白血病 (AP L)に対し、治療薬として用い

られる三酸化ヒ素 (ATO )と N rf2 の関係に注目した。AP L の治療は

全トランスレチノイン酸製剤が第一選択薬であるが、再発・難治

例では ATO が第一選択薬として用いられる。 AP L に対する ATO

による治療は最後の砦とも言えるもので、がん細胞の薬物に対す

る感受性を確保し、治療効率を上げることは重要な課題である。

Nrf2 は前述したようにがん細胞の薬剤耐性に関与し、ある種のサ

プリメントや医薬品により活性化されることがある。そこで、筆

者は AP L 細胞における ATO に対する感受性が、 Nr f2 の活性化に

より、どのような影響を受けるかという点に焦点を当て、研究を

行った。結果として、 Nrf 2 を活性化することで MRP を介したヒ

素の細胞外への排出を促進することで、ATO の抗がん作用を妨害

することが示された。また、細胞内 GSH 量の増大が Nrf2 活性化

による薬効減弱作用の鍵となる応答であることを明らかにした。

この事実は、多種多様な抗がん剤の中でも GSH による解毒を受け

る薬剤の作用は、Nrf2 活性化による効果の減弱を受けやすい可能

性を示唆している。

以上の研究から、Nrf2 の活性化には両刃の剣ともいうべき側面

があることが改めて認識されると共に、 GSH 濃度の上昇が Nr f2

関連のストレス応答において大きく寄与するものであることが明

らかとなった。更に、Nr f2 活性化作用を持つ医薬品やサプリメン

トを服用する際には、併用される他の医薬品の効果を低下させる

可能性を考慮し、統合的な薬物治療計画において N rf 2 が適切にコ

ントロールされることが期待される。

49

また、本研究は N r f2 制御系の 1 つの側面を明確にしたが、今後

Nrf2 活性化の有用性とリスクについて更なる研究が行われ、N rf2

制御系をより深く理解することで健康維持と薬物治療の両面で有

効活用されることが望まれる。

50

実験の部

材料

・ SH-SY5Y 細胞は ATCC より購入した。

・Dulb ecco ' s mod i f i ed Eagl e ’s med ium (DMEM)/ Ham 's F - 12 (F1 2) は

L i f e Tech no lo gies より購入した。

・ウシ胎児血清 (FBS)は S IG MA (第 1 章 )または J RH (第 2 章 )より

購入した。

・ Pen ic i l l i n -S t rep tom ycin , Liqu id (pen ic i l l i n 10 000 Uni t / m L,

s t r ep tom ycin 1 0000 µg/m L) は Li fe Techno lo gies より購入した。

・ 0 .5 g / L トリプシン / 0 .53 mmol / L EDTA 溶液はナカライテスクよ

り購入した。

・ Dimeth yl su l fox ide ( DMSO )はナカライテスクより購入した。

・ Carnos i c ac id ( C A)は EN ZO より購入した。

・ 1- (2 -C yano-3 ,12 , 28 - t r i ox oo lean a -1 ,9 (11) -d i en -28- yl ) -1 H- imidazo le

(CDDO - Im)は R &D S ys tems より購入した。

・ Buth ion in e su l fo x imine ( BSO)は Si gma -Ald r i ch より購入した。

・ Meth yl g l yox a l は Rabban i ら に よ り 報 告 さ れ た 方 法 に 従 い

Meth yl g l yox a l 1 ,1 - d imeth yl a ce t a l (S i gma -Ald r i ch より購入 )から

合成した 1 0 4 )。

・ Hoechs t 33 342 は同仁化学研究所より購入した。

・ Prop id ium iod ide は Sigm a- Aldr i ch より購入した。

・ 10 × R IPA buffe r は Merck Mi l l i po r e より購入した。

・ 100 × プロテアーゼインヒビターカクテルはナカライテスクよ

51

り購入した。

・ NE-PER ® Nuc l ea r and C ytop l asmic Ex t rac t ion Reagen t は Thermo

Fi she r Sc i en t i f i c より購入した。

・ Pie rce BC A Pro t e in Assa y Ki t は T hermo Fi she r Sc i en t i f i c より購

入した。

・ 6×SDS Sample Buff e r はナカライテスクより購入した。

・ Pre -S ta in ed P ro t e in Mark ers ( Bro ad Range) はナカライテスクよ

り購入した。

・ Magi cMark™ X P Wes te rn P ro t e in S t anda rd は Th e rmo Fi she r

Sc i en t i f i c より購入した。

・ Ez Fas t Blo t は ATTO より購入した。

・ Tween20 はナカライテスクより購入した。

・ブロックエースは DS ファーマバイオメディカルより購入した。

・ Can Get S i gn a l ® So lu t ion 1、 2 は東洋紡より購入した

・ Lumin a ta Cr escendo Wes te rn HRP s ubs t ra t e は Merck Mi l l i po re よ

り購入した。

・ St r ipp ing So lu t io n は和光純薬工業より購入した。

・ Tr i ronX- 100 はナカライテスクより購入した。

・スルホサリチル酸は和光純薬工業より購入した。

・グルタチオン還元型 (GSH)は和光純薬工業より購入した。

・ 5 ,5 ’ -d i th iob i s ( 2 - n i t robenzo ic a c id ) ( DTN B)は和光純薬工業より購

入した。

・ Q Iazo l Lys i s Reagen t は Q IAGE N より購入した。

・ Rever Tr a Ace ® q PCR RT Mas te r Mi x は東洋紡より購入した。

52

・ THUN DERB IRD ® P rob e qPCR Mix は東洋紡より購入した。

・ TaqMan ® G ene E x pres s ion Mas t e r M ix は Appl i ed Bios ys t ems より

購入した。

・ D-lac t a t e Co lo r i met r i c Assa y Ki t は BioVis ion より購入した。

・ N B4 細 胞 は Deut sch e Samm alu ng von Mik roorgan i smen und

Ze l lku l tu ren より購入した。

・ RPM I164 0 培地は和光純薬工業より購入した。

・三酸化ヒ素 (ATO )は米山薬品工業より購入した。

・ヒ素標準液 (As1 000 )は和光純薬工業より購入した。

・ Ul t rapu r ® 60%硝酸は Mer ck より購入した。

・N eon™ Tr ans f ec t ion S ys t em 100 µ L Ki t (Neon ® チューブ、Neo n®

チ ッ プ 、 Res uspens ion Bu ff e r R 、 Elec t ro l yt i c Bu ffe r E2 ) は

In v i t ro gen より購入した。

そ の 他 一 般 試 薬 は ナ カ ラ イ テ ス ク 、 和 光 純 薬 工 業 ま た は

Sigma- Aldr i ch より購入した。

方法

第 1 章 神経細胞株における Nrf 2 の活性化がメチルグリオキサー

ル誘導性のカルボニルストレスに与える効果

1 -1 . SH-SY5 Y 細胞の培養

SH-SY5Y 細胞は 25 cm 2 または 75 cm 2 培養フラスコ (TPP)に

53

DMEM/F12 培地 (1 0% FBS、 25 U/m L ペニシリン、 25 µ g/m L ストレ

プトマイシン含有 ) 中 1 × 10 4 c e l l s / cm 2 となるように播種し、37 °C、

5% CO 2 に設定したインキュベーター内で培養を行った。SH-SY5Y

細胞は 60 ~ 80 % conf lu en t となった時点で次の方法で継代を行っ

た。まず、培養培地を全量 50 m L 遠沈管に移し、 120 × g で 5 分間

遠心分離後、上清を除去し、元の培地液量と同程度の DMEM/F1 2

培地で懸濁した。培地除去後のフラスコに対し PBS を静かに加え

て細胞の洗浄を行った。フラスコ内の PBS をアスピレーターで除

去した後、 0 .025 %トリプシン溶液を細胞全体に広がるように加え

て、 37 °C で 3 分間インキュベートした。顕微鏡で SH-SY5Y 細胞

がフラスコから剥離しているのを確認後、 50 m L 遠沈管の懸濁液

をフラスコに加え、ピペッティング操作により注意深く細胞を完

全に剥離させ、細胞塊をほぐした。この細胞懸濁液の 15 µ L を採

り、等量のトリパンブルー細胞染色液と混合し、血球計算盤にて

セ ル カ ウ ン ト を 行 っ た 。 そ の 後 、 DMEM/F12 培 地 で 1 × 10 4

ce l l s / cm 2 となるように細胞懸濁液を希釈して、 25 cm 2 または 75

cm 2 細胞培養フラスコに播種した。

1 -2 . SH-SY5 Y 細胞に対する CA、 CD DO- Im、 BSO、M G 処理

SH-SY5Y 細胞を D MEM/F12 培地中 4 × 10 4 ce l l s / cm 2 となるよう

に 96 wel l p l a t e、6 wel l p l a t e、6 cm d i sh または 10 cm d i sh (The rmo)

に播種し、 24 時間、 37 °C、 5% C O 2 に設定したインキュベーター

内で培養を行った。培養培地を除去し、 DMEM/F12 培地、または

各種濃度の CA、CDDO- Im、 BSO を含有する DMEM/ F12 培地を細

54

胞が剥離しないように注意深く添加した後、実験毎に設定した時

間 (0 .5 ~ 2 4 時間 )、 37 °C、 5% CO 2 に設定したインキュベーター内

で培養を行った。更に MG を曝露する場合、培養培地を除去し、

DMEM/F1 2 培地を細胞が剥離しないように注意深く添加した後、

103 mM MG 水溶液を PBS で適宜希釈して培地中に添加し、一定

の時間 37 °C、 5 % CO 2 に設定したインキュベーター内で培養を行

った。

1 -3 . 蛍光染色法による細胞毒性の評価 (Hoechs t 33342 / P I s t a in in g

as sa y)

96 w el l p l a t e (培地 100 µ L)中で各条件にて培養した S H-SY5Y 細

胞に 2 µ g/m L Hoechs t 33342 / 2 µ g/m L prop id ium iod ide (P I)含有 PBS

を加え、プレートミキサー (MPX -96 ; IWAK I)で混合した後、 37 °C

で 30 分間インキュベートし た後、 IN Ce l l An a l yz er 220 0 (GE

Hea l th car e )により解析した。Ho echs t 33342 は全細胞を、P I は死細

胞を染色するので、 P I-pos i t i ve ce l l s [ %] (死細胞の割合 )を下に示

す式で算出した。

PI‐ positive cells [%] = PI‐ positive cells

Hoechst 33342‐ positive cells × 100

1 -4 . Wes te rn Blo t t i ng 用全細胞タンパク質抽出サンプルの調製

6 cm d i sh 中で各条件にて培養した SH-SY5Y 細胞について、上

清を除去し、 2 m L の P BS を 6 cm d i sh に添加し、オートピペット

の 1 m L 用チップの裏側を使って細胞を剥離させ、15 m L 遠沈管に

55

回収した。 6 cm d i sh を 2 m L の P BS で洗い込み、 15 m L 遠沈管に

加え、細胞懸濁液を 1000 × g で 4 ° C、 5 分間遠心分離した。上清

を除去し、 PBS 1 m L 沈殿を再懸濁後、 1 .5 m L チューブに移した

後、1000 × g で 4 ° C、5 分間遠心分離を行った。上清を除去し、P BS

を 1 m L 加えて再懸濁し、再度 1000 × g で 4 °C、5 分間遠心分離を

行い、丁寧に上清を除去した。残った沈殿に対しプロテアーゼイ

ンヒビター含有 R IPA buffe r を 50 µ L 添加し、 10 秒間 vor t ex を行

った後に氷上で 1 0 分間静置した。 14000 × g で 4 °C、 15 分間遠心

分離を行い、上清の細胞抽出液を新しい 1 .5 m L チューブに移し、

これを Weste rn Bl o t t i ng 用細胞全タンパク質抽出サンプルとした。

1 -5 . 細胞質画分及び核画分の調製

6 cm d i sh 中で各条件にて培養した SH-SY5Y 細胞について、上

清を除去し、 2 m L の P BS を 6 cm d i sh に添加し、オートピペット

の 1 m L 用チップの裏側を使って細胞を剥離させ、15 m L 遠沈管に

回収した。 6 cm d i sh を 2 m L の P BS で洗い込み、 15 m L 遠沈管に

加え、細胞懸濁液を 1000 × g で 4 ° C、 5 分間遠心分離した。上清

を除去し、 PBS 1 m L で沈殿を再懸濁後、 1 .5 m L チューブに移し

た後、 1000 × g で 4 °C、 5 分間遠心分離を行った。上清を除去し、

PBS 1 m L で再懸濁し、再度 1000 × g で 4 °C、 5 分間遠心分離を行

い、丁寧に上清を除去した。この沈殿について、N E-P ER ® Nu c lea r

and C ytop lasmic E x t rac t ion Reagen t の推奨プロトコールに従って

細胞質 と 核画 分 の抽出 を行っ た 。 得ら れた 各 抽 出液を West e rn

Blo t t i n g 用の細胞質及び核画分サンプルとした。

56

1 -6 . タンパク質の定量

タンパク質の定量は Pie rce BC A Pro te in Ass a y Ki t を用いた BCA

法で行った。 BS A 標準液とサンプルの希釈系列を調製し、 10 µ L

ずつ 96 wel l p l a t e の各 wel l に入れ、そこに Reagen t A : Reagen t B

(50 : 1 )の混合液を 200 µ L ずつ添加し、 30 分間 37 °C にてインキ

ュベート後 M ICROP LATE READ ER Ben chmark ( B IO- RAD)により

570 nm の吸光度を測定した。BSA 標準液の吸光度から検量線を作

成し、各サンプルのタンパク質濃度を求めた。

1 -7 . Wes te rn B lo t t i ng

泳動用サンプルを全タンパク質では 8 ~ 10 µg p ro t e i n / Lane、核

画分では 3 µ g p ro t e in / Lan e となるように各抽出に用いた buff e r と

Mil l iQ 水で希釈し、 6×SDS Sample b u ff e r 1 .67 µ L を加えて全量を

10 µ L に調製し、9 5 °C で 3 分間加熱した。この泳動用サンプルを

5 ~ 20%グラディエントポリアクリルアミドゲル ( e -パジェル ® 5 ~

20% 18 検体用 ; ATTO)で展開した。分子量マーカーは Pre -S ta in ed

P ro te in Marke rs (Broad Ran ge )と M agicMark™ XP Wes te rn P ro t e in

Standard を使用した。

泳動後のゲルから PVDF 膜 ( Immo bi lon -P ; Merck Mi l l i po re )への

タンパク質の転写はセミドライ式転写装置 (W SE- 4020 ホライズ

ブロット 2M -R; ATTO)を用いて行った。 PVD F 膜はメタノールに

約 1 分間浸した後、転写 bu ff e r ( Ez Fas t Blo t )に 30 分間以上浸すこ

とで平衡化した。泳動終了後、セミドライ式ブロッティング装置

57

上に陽極側から順に、転写 buffe r に浸したろ紙 3 枚、 PVDF 膜、

ポリアクリルアミドゲル、転写 buff e r に浸したろ紙 3 枚を重ね、

均等に気泡を抜いた後、陰極をセットして 4 mA/cm 2 となるように

30 分間通電し転写を行った。

転写終了後、 PVD F 膜を 0 .1 % Tween 20 含有 PBS (TPBS)中で 10

分間振とうし、その後 4%ブロックエースで 1 時間ブロッキング

を行った。ブロッキング後、 TPBS 中で 10 分間振とう洗浄した

PVDF 膜を Can Ge t S igna l ® So lu t ion 1 で一定濃度に希釈した一次

抗体に浸し、 4 ° C で一晩または室温で 1 時間反応させた。 PVD F

膜を TPBS 中で 1 0 分間の振とうを 3 回行うことで洗浄し、Can G et

S igna l ® So lu t ion 2 で一定濃度に希釈した二次抗体に浸し、室温で

1 時間振とう攪拌しながら反応させた。 PVD F 膜を T PBS 中で 10

分間の振とうを 3 回行うことで洗浄した後、発光試薬 ( Lumin a ta

Crescendo Wes te rn HRP subs t r a t e )に均一に浸した後に ChemiDoc

Touch ( B IO-RA D)にて検出を行った。

β - ac t in によるリプロービングでは、検出後の PVD F 膜を TPBS

にて 10 分間振とう洗浄し、15% H 2 O 2 /PBS 溶液中で 3 0 分間振とう

することで HRP を失活させた。PV DF 膜を TPBS にて 10 分間振と

う洗浄した後、ブロッキング以降の操作を行った。

Lamin B1 によるリプロービングでは、検出後の PVDF 膜を TPBS

にて 10 分間振とう洗浄し、 St r ipp i ng So lu t ion 中で 1 0 分間強めに

振とうした。 PVD F 膜を TPBS 中での 5 分間の振とうを 3 回行う

ことで洗浄した後に、ブロッキング以降の操作を行った。

58

以下に用いた抗体を示す。カッコ内は希釈倍率を示している。

一次抗体

・ Ant i -CE L, mous e monoc lona l (1 :200 ) Cosmo Bio

・ Ant i -MG- H1, mo use monoc lon a l (1 : 1000) Ce l l Bio l abs

・ Ant i -β - ac t in , mo noc lona l , p e rox idas e -co n ju ga ted (1 :10 000) Wako

・ Ant i -Nr f2 , r abb i t po l yc lona l (1 :200) San ta Cruz Bio t echno log y

・ Ant i - Lamin B1 , r abb i t monoc lo na l , (1 :1000) Ce l l S igna l in g

Techno lo g y

二次抗体

・ HRP an t i -mous e IgG (1 :10 000) Vec to r Labo ra to r i es

・ HRP an t i - r abb i t IgG (1 :10000 または 1 :4000) Vec to r Labor a to r i es

※ Nrf2 検出では 1 : 10000、Lamin B1 検出では 1 :4000 の希釈倍率

にて行った。

1 -8 . 細胞内 GSH 量の定量

細胞内 GSH 量は DTN B 法によって測定した 1 0 5 )。6 wel l p l a t e 中

で各条件にて培養した SH-SY5Y 細胞について、上清を除去し、0 .6

m L の PBS を各 w el l に添加し、オートピペットの 1 m L 用チップ

の裏側を使って細胞を剥離させ、1 . 5 m L チューブに回収した。wel l

を 0 .6 m L の PBS で洗い込み、 1 .5 m L チューブに加え、細胞懸濁

液を 1000 × g で 4 ° C、5 分間遠心分離した。上清を除去し、PBS 500

µ L で沈殿を再懸濁後、1000 × g で 4 °C、5 分間遠心分離を行った。

59

上清を除去し、 P BS 100 µ L で再懸濁し、 10000 rpm で 4 °C、 5 分

間 遠 心 分 離を 行い 、 丁 寧 に上 清を 除 去 し た 。 この 沈 殿 を Lys i s

bu ff e r [プロテアーゼインヒビター、 0 .5% Tr i ro nX -1 00、 0 .5 mM

EDTA 含有 20 mM HEPES (pH =7 .0 ) ] 5 5 µ L で懸濁し、 1 分間 vor t ex

により撹拌した後、15000 rpm で 4 ° C、5 分間遠心分離した。上清

を 10 µ L 分取し、タンパク質定量用のサンプルとした。残りの溶

液に対し、 25 %スルホサリチル酸を 5 µ L 加え、 10 秒間 vor t ex し

た後、15000 rpm で 4 °C、 5 分間遠心分離した。 96 w el l p l a t e に 2 0

mM EDTA 含有 0 . 25 M Tr i s -HCl Buff e r (p H=8 .2 )を 150 µ L 入れ、こ

こに遠心分離後の溶液または 100 µ M GSH 標準液 (1 mM GSH/PBS

溶液 10 µ L、 Lys i s Buffe r 81 µ L、 2 5 %スルホサリチル酸 9 µ L の混

液 )を 30 µ L 加え混合した。この混液に 10 mM DTNB/メタノール

溶液を 3 µ L 添加、 p la t e mix er で混和し、 15 分間室温で放置した

後、M ICROP LAT E READER Benchmark ( B IO-RA D)により 415 nm

の吸光度を測定し、 100 µM GSH 標準液の吸光度との比からサン

プル中 GSH 濃度を求めた。

1 -9 . t o t a l RNA の調製と、 rev ers e t r ansc r ip t ion -定量 P CR (RT-qPCR)

による遺伝子発現量の解析

6 we l l p l a t e 中で各条件にて培養した SH-SY5Y 細胞について、

上清を除去し、 0 . 6 m L の P BS を各 wel l に添加し、オートピペッ

トの 1 m L 用チップの裏側を使って細胞を剥離させ、 1 .5 m L チュ

ーブに回収した。 wel l を 0 .6 m L の PBS で洗い込み、 1 .5 m L チュ

ーブに加え、細胞懸濁液を 1000 × g で 4 °C、5 分間遠心分離した。

60

丁寧に上清を除去し、沈殿に Q Iazo l Lys i s Reagen t 500 µ L を添加

し、テルモ注射針 26G× 1 / 2 ”を付けたテルモシリンジ 1 m L を用い

て 7 回吸排することによってホモジナイズした。クロロホルムを

100 µ L 添加し、 1 5 秒間激しく混合した後 2 分間室温で静置した。

12000 × g で 4 °C、1 5 分間遠心分離後、上清 200 µ L を慎重に取り、

新しい 1 .5 m L チューブに移した。この上清に 2-プロパノール 250

µ L を加え、十分に vor t ex で撹拌し、10 分間室温で静置後、12000

× g で 4 °C、1 0 分間遠心分離し、上清を除去した。この沈殿を 75%

エタノール 500 µ L で懸濁し、75 00 × g で 4 °C、5 分間遠心分離後、

上清を除去することで洗浄した。この洗浄を 2 回行った後、沈殿

を Nuclease F ree 水 30 µ L で溶解し、 t o t a l RNA 溶液とした。得ら

れた t o t a l RN A 溶液の 260 nm における吸光度を N an o -200 Nuc l e i c

Ac id Ana l yze r (A R BROWN)で 測 定 し 、 RNA の 定 量 (RNA 濃 度

[ µg/m L] =A2 60×40 )を行った。

得られた t o t a l RN A から Rev er Tr a Ace ® qPCR RT Mas t e r Mix を用

いた逆転写反応により cDN A を合成した。 t o t a l RN A は使用前に

65 °C で 5 分間インキュベートし、その後氷上で急冷した。 PCR

用サンプルチューブに Nucl eas e F ree 水で 12 .5 n g/µ L となるように

希釈した t o t a l RN A 16 µ L と 5 × RT Mas te r Mix 4 µ L を入れ、サー

マ ル サ イ ク ラ ー ( GeneAmp PCR S ys t em 2400 ; Perk in Elmer )に て

37 °C で 15 分間、 50 °C で 50 °C で 5 分間、 98 °C で 5 分間反応さ

せ、最後に 4 °C に冷却し、これを Nuclease Fr ee 水で 1 /10 希釈し

たものを PCR 用 cDNA 溶液として用いた。

61

定量 PCR は TaqMan プローブを用いたリアルタイム P CR 法で行

った。PCR 用 8 連チューブ内に T HU NDERB IRD ® P robe qPCR Mix 5

µ L、50x ROX r e f e rence d ye 0 .2 µ L、N uc lease Fr ee 水 1 .8 µ L、TaqM an ®

Gene Ex pres s ion M as te r Mix 0 .5 µ L、 cDN A 2 .5 µ L となるように入

れ、PCR 反応を行った。PCR 反応は 7300 Fas t Rea l - Time PCR S ys t em

(App l i ed Bios ys t em s)装置にて、95 °C 1 分間、 [ 94 °C 15 秒間、60 °C

1 分間 ] を 40 サイクルで行った。

使用した TaqMan ® Gene Ex pres s ion Mas te r Mix を以下に示す。

HO-1 ( a s s a y ID , Hs 01110251_m1 )

GCLC ( a s sa y ID, H s00155249_m1)

GCLM ( a s s a y ID , H s00978073_m1

xCT ( a s sa y ID, Hs0 0921938_m1)

GLO1 ( a s s a y ID , H s00198702_m1)

AKR1B1 ( a s s a y ID, Hs00739326_m1 )

AKR7A2 (Ass a y ID , Hs00761005_s1 )

GAPDH ( a s s a y ID , Hs02758991_ g1 )

1 -10 . D -乳酸の測定

10 cm d i sh 中で各条件にて培養した SH-SY5Y 細胞について、上

清を除去し、 3 m L の P BS を 10 cm d i sh に添加し、オートピペッ

トの 1 m L 用チップの裏側を使って細胞を剥離させ、1 5 m L 遠沈管

に回収した。10 cm d i sh を 3 m L の PBS で洗い込み、15 m L 遠沈管

に加え、細胞懸濁液を 1000 × g で 4 °C、 5 分間遠心分離した。上

62

清を除去し、P BS 500 µ L で沈殿を再懸濁後、1 .5 m L チューブに移

した後、1000 × g で 4 °C、5 分間遠心分離を行った。上清を除去し、

PBS 200 µ L で再懸濁し、再度 100 0 × g で 4 °C、 5 分間遠心分離を

行い、丁寧に上清を除去した。この沈殿を Assa y Bu ff e r (プロテア

ーゼインヒビター含有 ) 100 µ L で懸濁し、氷上で Hand y Son i c

(TOM Y SE IK O)により超音波破砕 (p ower 8、 1 秒間 1 0 パルス、イ

ンターバル 1 秒間 )を行った後、 100 00 × g で 4 °C、 10 分間遠心分

離を行った。この上清を D-乳酸測定用のサンプルとした。また、

その一部を分取しておき、タンパク質定量を行った。

D-乳酸の測定は D -lac t a t e Co lo r imet r i c Assa y Ki t ( BioVis ion)によ

り行った。 D -乳酸標準液の希釈系列を作成し、 50 µ L ずつ 96 wel l

p l a t e の各 w el l に入れ、別の w el l に Assa y Buffe r で 1 /5 希釈した

サンプルを 50 µ L に入れた。これらに D-lac t a t e Ass a y Buffe r 46 µ L、

D-lac t a t e Subs t r a t e Mix 2 µ L、 D-lac t a t e Enz ym e Mix 2 µ L を加え、

30 分間室温でインキュベートした。ネガティブコントロールは

D-lac t a t e E nz yme Mix を入れず、D-l ac t a t e Ass a y Buffe r を 48 µ L を

加えた。インキュベート後、 M IC ROP LAT E READE R Ben chmark

(B IO-RA D)により 450 nm の吸光度を測定した。D-乳酸標準液の吸

光度から検量線を作成し、各サンプルの D-乳酸濃度を求めた。

1 -11 . 統計処理

デ ー タ は 平 均 値 ±標 準 偏 差 で 表 示 し た 。 有 意 性 の 検 定 に は

Tuke y- K ramer 検定を用い、 P < 0 .05 を統計的に差異があるものと

した。

63

第 2 章 急性前骨髄球性白血病細胞株 NB4 の三酸化ヒ素 (ATO)に

対する感受性における Nr f2 活性化の影響

2 -1 . N B4 細胞の培養

NB4 細胞は TPP 製培養フラスコに RPM I164 0 培地 ( 10% FBS、50

U/m L ペニシリン、50 µ g/m L ストレプトマイシン含有 )中にて 37 °C、

5% CO 2 に設定したインキュベーター内で培養を行った。細胞の密

度が 0 .5 ~ 10 × 10 5 ce l l s /m L となるように維持した。

2 -2 . N B4 細胞に対する CA、 ATO、 BSO、MK-571 処理

NB4 細胞を RPM I1 640 培地中 0 .5 ~ 1 × 10 5 ce l l s /m L となるよう

に 96 wel l p l a t e、6 wel l p l a t e、6 cm d i sh または 10 cm d i sh (The rmo)

に播種し、CA、BS O を適宜希釈して培地中に添加し、指定の時間

37 °C、 5% CO 2 に設定したインキュベーター内で培養を行った。

その後、 ATO や M K-571 を適宜希釈して培地中に添加し、指定の

時間 37 °C、 5% CO 2 に設定したインキュベーター内で培養を行っ

た。

2 -3 . 蛍光染色法による細胞毒性の評価 (Hoechs t 33342 / P I s t a in in g

as sa y)

96 wel l p l a t e (培地 100 µ L)中で各条件にて培養した NB4 細胞に

2 µ g/m L Ho echs t 33342 / 2 µ g/m L p ro p id ium iod ide (P I)含有 PBS を

加え、プレートミキサーで混合した後、37 °C で 30 分間インキュ

64

ベートした。混液 100 µ L を新しい 96 wel l p l a t e に移し、 20 分間

静置した後、IN Ce l l Ana l yz er 2200 により解析した。Ho echs t 33342

は全細胞を、P I は死細胞を染色するので、P I-pos i t i ve ce l l s [ %] (死

細胞の割合 )を下に示す式で算出した。

PI‐ positive cells [%] = PI‐ positive cells

Hoechst 33342‐ positive cells × 100

2 -4 . 細胞質画分及び核画分の調製

6 cm d i sh 中で各条件にて培養した NB4 細胞を 15 m L 遠沈管に

回収した。 6 cm d i sh を 1 m L の P BS で洗い込み、 15 m L 遠沈管に

加え、細胞懸濁液を 500 × g で 4 °C、 5 分間遠心分離した。上清を

除去し、 PBS 1 m L で沈殿を再懸濁後、 1 .5 m L チューブに移した

後、500 × g で 4 °C、3 分間遠心分離を行った。上清を除去し、PBS

1 m L で再懸濁し、再度 500 × g で 4 °C、 3 分間遠心分離を行い、

丁寧に上清を除去した。この沈殿について、N E-PER ® Nuc lea r and

C ytop lasmi c Ex t rac t ion Reagen t の推奨プロトコールに従って細胞

質と核画分の抽出を行った。得られた抽出液を Weste rn Blo t t i n g

用の細胞質及び核画分サンプルとした。

2 -5 . タンパク質の定量

第 1 章 1-7 .に準じて行った。

65

2 -6 . Wes te rn Blo t t i ng

基本的に第 1 章 1- 8 .に準じて行った。泳動用サンプルを細胞質

画分では 10 µ g p r o t e in /8 .3 µ L、核画分では 3 µ g p ro t e i n / 8 .3 µ L と

なるように各抽出に用いた buffe r と Mil l iQ 水で希釈し、 6×SDS

Sample bu ffe r 1 .67 µ L と合わせて全量を 10 µ L に調製したものを

各レーンにアプライした。

以下に用いた抗体を示した。カッコ内は希釈倍率を示している。

一次抗体

・ Ant i -Nr f2 ※第 1 章 1-8 .参照

・ Ant i - Lamin B1 ※第 1 章 1-8 .参照

・ Ant i -HO -1 , r abb i t po l yc l ona l (1 :100 0) Enzo Li fe Sc i en ce

・ Ant i -GC LM, rab b i t po l yc l ona l ( 1 :5 00) San ta C ruz Bio t echno lo g y

・ Ant i -β - ac t in ※第 1 章 1-8 .参照

二次抗体

・ HRP an t i - r abb i t IgG (1 :10000 または 1 :4000) ※第 1 章 1-8 .参照

※ Nrf2、 GC LM の検出では 1 :10000、 Lamin B1、 H O- 1 の検出で

は 1 :4000 の希釈倍率にて行った。

2 -7 . 細胞内 GSH 量の定量

細胞内 GSH 量は DTN B 法によって測定した。 6 wel l p l a t e 中で

各条件にて培養した NB4 細胞について、 1 m L ずつ 1 .5 m L チュー

ブ 2 本に回収し、 500 × g で 4 °C、 3 分間遠心分離した。上清を除

66

去し、 PBS 1 m L を用いて沈殿を懸濁させ、細胞を 1 本の 1 .5 mL

チューブにまとめ、 500 × g で 4 °C、 3 分間遠心分離を行った。上

清を除去し、 P BS 100 µ L で再懸濁し、 10000 rpm で 4 °C、 5 分間

遠心分離を行い、丁寧に上清を除去した。抽出以降の操作は第 1

章 1-9 .に準じて行った。

2 -8 . 誘導結合プラズマ -質量分析計 ( ICP -MS )による細胞内ヒ素の

定量

6 we l l p l a t e 中で各条件にて培養した NB4 細胞について、 1 m L

ずつ 1 .5 m L チューブ 2 本に回収し、 500 × g で 4 °C、 3 分間遠心

分離した。上清を除去し、 PBS 50 0 µ L を用いて沈殿を懸濁させ、

細胞を 1 本の 1 .5 m L チューブにまとめ、500 × g で 4 °C、3 分間遠

心分離を行った。上清を除去し、 P BS 500 µ L で再懸濁し、 500 × g

で 4 °C、3 分間遠心分離を行い、上清を除去することで洗浄した。

この洗浄操作を 2 回行った。この沈殿に 0 .1% SDS、1% Tr i ton X -100、

プロテアーゼインヒビター含有 50 m M Tr i s - HCl (pH =7 . 4 ) を 50 µ L

添加し、撹拌後、氷上で 10 分間放置した。 15000 × g で 4 °C、 10

分間遠心分離を行い、上清を新たな 1 .5 m L チューブに移した。こ

の抽出液をヒ素測定用のサンプルとし、同時にその一部を分取し、

タンパク定量を行った。

ヒ素標準液の希釈系列を作成し、ヒ素標準液またはサンプルを

15 m L チューブに 20 µ L 入れた。6 0 %硝酸を 100 µ L 添加し、80 °C

で 90 分間加熱した後、Mil l iQ 水を 2 .88 m L と混和し、この混液中

の総ヒ素濃度を ICP -MS (E lan DRC I I , Pe rk inElmer )で測定した。

67

ICP -MS の条件を下に示す。

プラズマ条件 ICP R F 出力 1500 W

プラズマガス流速 17 L/ min

補助ガス流速 1 .1 L/ min

ネ ブ ラ イ ザ ー ガ ス 流 速

(Ar )

0 .9 ~ 1 .0 L/ min

(毎回最適化する )

レンズ電圧 5 .25 V

DRC 条件 セルガスの種類 O 2

セルガスの流量 0 .6 m L/ min

2 -9 . t o t a l RNA の調製と、 rev ers e t r ansc r ip t ion -定量 P CR (RT-qPCR)

による遺伝子発現量の解析

6 we l l p l a t e 中で各条件にて培養した NB4 細胞について、 1 m L

ずつ 1 .5 m L チューブ 2 本に回収し、500 × g で 4 °C、3 分間遠心分

離した。上清を除去し、PBS 1 m L を用いて沈殿を懸濁し、細胞を

1 .5 m L チューブ 1 本にまとめ、 500 × g で 4 °C、 3 分間遠心分離を

行った後、上清を除去した。Q Iazo l の添加以降の操作は第 1 章 1- 10 .

に準じて行った。

使用した TaqMan ® Gene Ex pres s ion Mas te r Mix を以下に示す。

HO-1 ※第 1 章 1- 10 .参照

GCLC ※第 1 章 1- 10 .参照

GCLM ※第 1 章 1 -10 .参照

68

xCT ※第 1 章 1-1 0 .参照

GSTP1 ( a s s a y ID , Hs00168310_m1 )

MRP1 ( a s sa y ID, H s00219905_m1)

MRP2 ( a s sa y ID, H s00166123_m1)

MRP4 ( a s sa y ID, H s00988717_m1)

GAPDH ※第 1 章 1-10 .参照

2 -10 . smal l i n t e r fe r ing RN A (s iRN A)トランスフェクションによる

Nrf2 ノックダウン

NB4 細胞に対しエレクトロポレーション法により s iRN A を導入

した。 4 .4 × 10 6 c e l l s に相当する N B4 細胞培養液を 5 0 m L 遠沈管

に採取し、 120 × g で 5 分間遠心分離を行った後、上清の培地を除

去した。PBS 1 m L で懸濁し、 1 .5 m L チューブに移した後、 120 × g

で 5 分間遠心分離を行い、上清を除去した。Resusp ens ion Bu ffe r R

209 µ L で懸濁した NB4 細胞に 1 0 0 µM s iRNA ( Nrf 2 t a rge t 及び

non-spec i f i c )を 11 µ L 添加し、ピペッティングすることで混和した。

この懸濁液を Neo n t i p s (100µ L) ( Inv i t rogen) により 100 µL 採取し、

Micro Por a to r MP - 100 ( Inv i t ro gen )を用い 1400V, 10msec , 3 pu l s e の

条件で電気刺激により s iRNA の導入を行った。s iR N A 導入後の細

胞懸濁液をあらかじめ抗生物質不含の 10% FBS 含有 R PM I1640 培

地 10m L を入れておいた 10 cm d i sh に添加した。1 枚の 10 cm d i sh

当たり s iRNA 導入細胞が 200 µ L となるようにこの操作を 2 回繰

り返した後、 s iRN A 導入後の細胞を 37 °C、 5% CO 2 に設定したイ

69

ンキュベーター内で 24 時間培養を行い、各実験に用いた。使用し

た s iRNA を以下に示す。

・ Nrf2 t a rge t s iRN A

S i l encer ® Se l ec t P r e -des i gned s iRN A ( Ambion)

- Ta rge t Gen e S ymb ol : NFE2 L2

- s iRNA ID# : s949 3

- Sense : 5 ´ CAG UCUUCAUU GCUACU AAt t 3 ´

- An t i s ense : 5 ´ UU AGUA GCAAU GAA GACUG gg 3 ´

・ non-spec i f i c s iRNA

S i l encer ® Se l ec t Nega t ive Con t ro l #1 s iRNA ( Ambion)

2 -11 . 統計処理

データは平均値 ±標準偏差で表示した。有意性の検定において、

2 群間の比較では対応のない t 検定を、3 群以上の比較では一元配

置分散分析と Dun ne t t 法による事後検定または Tuke y- Kram er 検定

を用い、 P < 0 .05 を統計的に差異があるものとした。

70

謝辞

本研究を遂行し学位論文をまとめるに当たり、終始懇篤なる御

指導、御鞭撻を賜りました、明治薬科大学分析化学研究室教授

小笠原 裕樹 先生に深く感謝申し上げます。

本稿作成に際し、懇切なる御指導、御教鞭を賜りました、明治

薬科大学衛生化学研究室教授 石井 一行 先生、同大学生体機能分

析学研究室教授 兎川 忠靖 先生に深く感謝致します。

本研究の遂行に当たり、貴重な御指導、御助言を賜りました、

明治薬科大学分析化学研究室准教授 鈴木 俊宏 先生に心より感

謝申し上げます。また、日々の研究だけでなく多岐にわたり御懇

意なる御指導、御助言を賜りました、同研究室助教 小池 伸 先生

に厚く御礼申し上げます。

共同研究を行うに当たり、御助言、御激励を賜り、また、細胞

を御恵与して頂きました、東京薬科大学薬学部応用生化学教室教

授 高木 教夫 先生、同教室講師 袁 博 先生に深謝致します。

本研究を遂行するに当たり、御配慮、御激励を賜りました明治

薬科大学衛生化学研究室講師 服部 研之 先生、同研究室助教

大山 悦子 先生に心から感謝の意を表します。

本研究を進めるに当たり、多くの御協力を頂きました、明治薬

科大学分析化学研究室 大学院生、卒業研究生の皆様に心より御礼

申し上げます。

最後に私事になりますが、大学院への進学に理解を示し、終始

温かく御支援を頂きました両親に心より感謝します。

71

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