転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2...

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転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~ 保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化 ~ Cellular Responses Induced by Activation of Transcription Factor Nrf2: Enhancement of Cytoprotective Effects and Modulation of Sensitivity to Chemotherapy 平成 25 年度入学 西本 翔一 (Nishimoto, Shoichi) 指導教員 小笠原 裕樹

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転写因子 N rf2 の活性化により誘導される細胞応答

~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化 ~

Ce l lu l a r Resp onse s Induced b y Act iv a t ion o f Tr ans cr ip t ion Fac to r

Nr f2 : Enhan cem en t o f C ytopro t ec t iv e E ffec t s and Mo dula t ion o f

Sens i t i v i t y t o Chemotherap y

平成 25 年度入学

西本 翔一 ( Ni sh i moto , Sho ich i )

指導教員

小笠原 裕樹

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目次

略語

序論 1

第 1 章 神経細胞株における N rf2 の活性化がメチルグリオキサー

ル誘導性のカルボニルストレスに与える効果 9

背景・目的 9

結果 13

第 1 節 SH-SY5 Y における MG 毒性と MG 化タンパク質の

形成 13

第 2 節 Nr f2 活性化剤による MG 毒性軽減効果 15

第 3 節 Nr f2 活性化剤による制御タンパク質及び代謝物の

変動 17

第 4 節 Nr f2 活性化剤の MG 毒性軽減効果における G SH の

関与 19

考察 21

第 2 章 急性前骨髄球性白血病細胞株 NB4 の三酸化ヒ素 (AT O)に

対する感受性における Nr f2 活性化の影響 26

背景・目的 26

結果 28

第 1 節 N B4 の A T O に対する感受性 28

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第 2 節 N B4 における CA による N r f2 系の活性化 30

第 3 節 Nr f2 活性化による AT O に対する感受性の減弱と、

細胞内ヒ素濃度への影響 33

第 4 節 トランスポーターMRP 阻害による細胞内ヒ素濃度へ

の影響 35

第 5 節 AT O に対する感受性における GSH の役割 37

第 6 節 CA 前処理 ATO 処理における Nr f2 ノックダウンの

効果 39

考察 42

総括 47

実験の部 50

材料 50

方法 52

第 1 章 神経細胞株における Nrf 2 の活性化がメチルグリオキ

サール誘導性のカルボニルストレスに与える効果 52

1-1 . SH-SY5 Y 細胞の培養 52

1-2 . SH-SY5 Y 細胞に対する CA、 CD DO- Im、 BSO、M G 処理 53

1-3 . 蛍 光 染 色 法 に よ る 細 胞 毒 性 の 評 価 (Ho echs t 3 3342 /P I

s t a in ing as sa y) 54

1-4 . Wes te rn Blo t t i ng 用全細胞タンパク質抽出サンプルの

調製 54

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1 -5 . 細胞質画分及び核画分の調製 55

1-6 . タンパク質の定量 56

1-7 . Wes te rn Blo t t i ng 56

1-8 . 細胞内 GSH 量の定量 58

1-9 . t o t a l RNA の 調 製 と 、 reverse t r ansc r ip t ion - 定 量 PCR

(RT-qPCR)による遺伝子発現量の解析 59

1-10 . D -乳酸の測定 61

1-11 . 統計処理 62

第 2 章 急性前骨髄球性白血病細胞株 NB4 の三酸化ヒ素

(ATO )に対する感受性における N rf 2 活性化の影響 63

2-1 . N B4 細胞の培養 63

2-2 . N B4 細胞に対する CA、 ATO、 BSO、MK-571 処理 63

2-3 . 蛍 光 染 色 法 に よ る 細 胞 毒 性 の 評 価 (Ho echs t 3 3342 /P I

s t a in ing as sa y) 63

2-4 . 細胞質画分及び核画分の調製 64

2-5 . タンパク質の定量 64

2-6 . Wes te rn Blo t t i ng 65

2-7 . 細胞内 GSH 量の定量 65

2-8 . 誘導結合プラズマ -質量分析計 ( ICP -MS)による細胞内ヒ

素の定量 66

2-9 . t o t a l RNA の 調 製 と 、 reverse t r ansc r ip t ion - 定 量 PCR

(RT-qPCR)による遺伝子発現量の解析 67

2-10 . smal l i n t e r fe r ing RN A (s iRN A)トランスフェクションに

よる Nrf2 ノックダウン 68

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2 -11 . 統計処理 69

謝辞 70

引用文献 71

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略語

AGEs Advan ced g l yca t ion end p ro duc t s

AKR Aldo -ke to redu c tas e

ATO Arsen i c t r i ox ide

ATRA Al l - t r ans re t i no i c a c id

AP L Acu te p rom yelo c yt i c l euk emia

ARE Ant iox idan t r espon se e l em en t

ARP Argp yr imid in e

BCA Bic in chon in i c ac id

BT B Bro ad -Complex , Tr amt rack , an d Br i c -à -Brac

BSO Buth ion ine s u fox imine

bZip Bas i c - l eu c ine z ipp e r

CA Carnos i c ac id

CDDO-M e Ba rdox o lone meth yl

CDDO- Im 1 - [ 2 -c yano -3 - ,12 -d i ox oo leana -1 ,9 (11 ) - d i en -28 -o yl ]

imidazo le

CE L C arbox ye th yl l ys ine

Cu l3 Cu l l i n3

CNC Cap ‘n ’ C o l l a r

DGR Doub le - g l yc ine rep ea t

DMEM/F12 Dulbecco ' s mod i f i ed Eagle ’s m ed ium / Ham 's F -12

DMSO Dimeth yl su l fox ide

DTN B 5 ,5 ’ -d i th iob i s (2 -n i t robenzo ic ac id )

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FBS Fe t a l bov ine s e rum

GC L γ - g lu t am yl - c ys t e in e l i gase

GC LC GC L ca t a l yt i c sub u n i t

GC LM GC L modi f i e r subu n i t

G LO1 Gl yox a las e I

GSH Reduced g l u t a th ion e

GSSG Ox id i z ed g lu t a th io ne

GST Glu ta th ione S - t r ans fe r ase

HO-1 Heme -ox ygen ase 1

HRP Horse rad i sh p e rox idase

ICP -MS In duc t ive l y coup l ed p l asma mass spec t romet r y

IV R In t e rv en in g r eg ion

Keap1 Kelch - l ike ECH ass oc ia t ed p ro t e in 1

MG Meth yl g l yox a l

MG-H1 Meth yl g l yox a l h yd r o imidazo lone i so fo rm 1

MRP Mul t id rug res i s t ans e -as so c i a t ed p ro t e i n

MTT 3 - (4 ,5 -d imeth yl th i azo l -2 - yl ) -2 ,5 -d iphen yl t e t razo l ium

bromide

Neh Nr f2 -ECH homolo gy

NF- κ B Nuclea r f a c to r -k ap pa B

Nrf2 NF- E2 p45- re l a t ed fac to r 2

PBS Phospha te bu ff e r ed sa l ine

PCO P ro te in ca rbon yl

P I P rop id ium iod ide

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PVDF Po l yv in yl iden e d i f l uo r ide

Rbx 1 R ING-box p ro t e in 1

RNAi RNA in t e r f e rence

ROS Reac t iv e ox ygen sp ec i es

RT-qPCR R evers e t r ansc r ip t ion -quan t i t a t i v e PCR

SDS S od ium dodec yl su l fa t e

s iRNA S mal l i n t e r fe r in g R NA

TPBS PBS con ta in in g 0 .1 % Tw een 2 0

x CT C ys t ine / g lu t amate t r anspo r t e r

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1

序論

ヒトの体は生活の中で、常に内因性、外因性の様々な酸化スト

レスや求電子性化学物質に曝露されている 1 )。活性酸素種 (ROS )

は一部では意図的に生体内で産生され、細胞内レドックス状態を

維持する上で重要な伝達物質として働く一方、酸化ストレス状態

が持続することで生体内のタンパク質、脂質、核酸の構造が酸化

的傷害を受け、その機能が障害される危険性がある 2 )。この酸化

ストレスは慢性的な炎症を引き起こし、発がん、神経変性、炎症

性疾患、老化へと繋がる 3 , 4 )。これに対し、生体は酸化ストレスに

対抗するためのシステムや有害な求電子性物質を無毒化・排泄す

る機能を備えており、抗酸化・解毒代謝酵素等の細胞保護に関わ

る遺伝子の発現制御において中心的な役割を担っている転写因子

として N F-E2 p 45- re l a t ed f ac to r 2 (N r f2 )が知られている 5 )。

Nr f2 は塩基性ロイシンジッパー (b Zip )構造を持つ転写因子であ

り、Cap ‘n ’ Co l l a r (CNC)転写因子群に属する 6 )。 199 4 年、Nr f2 は

Kan らによってグロビン遺伝子発現制御領域中の NE- F2 結合配列

に結合する因子としてクローニングされた 7 )。その後、 Kan らは

Nrf2 の生体内での役割を明らかにするために N rf2 ノックアウト

マウスを作成し、解析を行ったが、野生型マウスと比較して成長

や行動、解剖学的な違いがみられなかったことから、生体にとっ

て必須の遺伝子ではないと判断した 8 )。しかし、I t o らは野生型マ

ウスと N rf2 ノックアウトマウスにブチルヒドロキシアニソール

を投与したとき、Nrf2 ノックアウトマウスのみ第 I I 相代謝酵素で

ある glu t a th ione S - t r ans fe rase (GST )の発現が誘導されなかったこ

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とから、N rf2 が解毒代謝に関わる酵素を制御していることを見出

した 9 )。更に、Nr f2 ノックアウトマウスは野生型と比べ酸化スト

レスに脆弱であることが報告され 1 0 )、Nr f2 はストレス状態におけ

る細胞内の解毒・代謝応答において重要な役割を担っていること

が認知された。

Nr f2 は 605 アミノ酸からなり、N rf2 - ECH homolo g y (N eh) 1 -7 と

呼ばれる機能ドメインを有している 1 1 , 1 2 )。Nrf2 の活性を制御する

上で最も重要な抑制因子として K elch - l ike ECH ass oc ia t ed p ro t e in

1 (Keap1)が知られている 1 1 )。Keap1 は 624 アミノ酸からなるタン

パク質であり、主要なドメインとして、ホモダイマー形成に関わ

る Broad -Complex , Tr amt rack , and Br i c -à - Brac (BTB)ドメイン、

C ys te in e リッチな In t e rv en in g reg ion ( IVR )ドメイン、 Nrf2 と相互

作用する Dou ble - g l yc i ne rep ea t /K e lch (D GR)ドメインを有してい

る 5 )。また、 Keap 1 は Cul l in3 (Cu l3 )、 R ING-b ox p ro t e i n 1 (Rbx 1)

と Cul l in 型 E3 ユビキチンリガーゼ複合体を形成し、その中で

Keap1 は基質アダプターとしての役割を担う 1 3 )。更に、 Keap1 は

反応性の高いシステイン残基を有しており、酸化ストレスや求電

子性物質に対するストレスセンサーとしても機能している 1 4 )。

Nrf2 /K eap 1 系の概略を Fi g .1 に示した。非ストレス条件下におい

て、 Nrf2 は常に合成され続けているが、 Neh2 ドメイン内の D LG

モチーフと ET GE モチーフを介して Keap1 に捕捉され、ユビキチ

ン化の修飾を受けた後、 26S プロテアソーム系で分解されること

により、Nr f2 の機能は制限されている 1 5 )。しかし、求電子性物質

等による刺激を受けると、 K eap1 のシステインが修飾を受けてそ

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の立体構造が変化し、プロテアソーム系による N rf2 の分解を誘導

できなくなることで Nrf2 と結合した Keap1 が飽和し、新たに作ら

れた Nrf2 が核内へ移行するようになる 1 4 , 1 6 )。核内 Nrf2 は sm al l

Maf タ ン パ ク 質 と ヘ テ ロ ダ イ マ ー を 形 成 し て 抗 酸 化 応 答 配 列

(ARE; TGA G/CNN NGC )に結合し、下流の遺伝子発現を誘導する 9 )。

Nr f2 が 制 御 す る 遺 伝 子 と し て 、 抗 酸 化 タ ン パ ク 質 で あ る

heme-ox ygen ase 1 (HO- 1) 1 7 ) や、第 I I 相代謝酵素 GST 9 )、薬剤排

出トランスポーターである mul t id ru g res i s t ans e - as soc i a t ed p r o t e in

(MRP )1 1 8 )、MRP2 1 9 ) 、MRP4 2 0 )等が報告されている 。また、Nrf 2

は細胞内の解毒代謝において重要な低分子化合物であるグルタチ

オンの量を制御することも知られている 2 1 )。グルタチオンはグル

タミン酸、システイン、グリシンからなるトリペプチドであり、

細胞内に 0 .5 ~ 10 mM という高濃度で存在する 2 2 )。細胞質、核、

ミトコンドリアにおいて、グルタチオンは通常還元型 (GSH)と 2

分子の GSH がジスルフィド結合した酸化型 (GSSG )が 30 :1 ~ 100 :1

の割合で存在しており、 自身が酸化、還元されることで細胞内の

レドックスバランスを保っている。また、求電子性物質とグルタ

チオン抱合体を形成することで解毒排泄を促すことや、グリオキ

サラーゼ系を介した反応性カルボニル化合物であるメチルグリオ

キサール (MG )の解毒代謝においても GSH が必要であることが知

られている 2 3 , 2 4 )。 GSH は Fi g . 2 に示した経路で合成され、 Nr f2

の活性化は c ys t in e /g lu t am ate t r ans po r t e r である x CT、 GSH 合成の

律速酵素である γ - g lu t am yl -c ys t e ine l i gas e ( GC L )の発現を制御する

ことで細胞内 GS H 量の増大を引き起こす 2 1 , 2 5 )。このように、Nr f2

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の活性化は細胞の抗酸化・解毒代謝応答を活性化することで細胞

の恒常性維持に寄与していると考えられている。

Nr f2 が発見されてから今日に至るまで、培養細胞や動物組織に

おいて、様々なストレスに対する N rf2 の重要性について盛んに研

究が行われてきた。Nr f2 の活性化は求電子性物質や酸化ストレス

だけではなく、重金属、紫外線、電離放射線に対する防御におい

ても重要であることが報告されている 2 6 – 2 9 )。筆者らは以前、カド

ミウムの解毒に対する Nr f2 応答における、 GSH の重要性を報告

した 3 0 )。

また近年では、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性閉塞

性肺疾患、喘息、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、多発性硬化

症、骨関節炎、関節リウマチ等、多くの疾患において Nrf2 の活性

化による治療の可能性が示されている 3 1 – 3 7 )。 2013 年には、 Nr f2

活性化剤である d i meth yl fumara t e が多発性硬化症の治療薬として

FDA で認可され 3 8 )、同じく Nrf2 活性化剤である bardox o lone

meth yl (CDDO -Me)は慢性腎疾患の治療薬としての臨床試験が世

界中で行われており 3 9 )、Nrf2 活性化剤の臨床応用への動きが活発

である。最近では、糖尿病の合併症や神経変性疾患に関与すると

される反応性カルボニル化合物である MG による毒性が、Nr f2 活

性化により軽減されることが報告された 4 0 )。MG は糖代謝等の副

産物として産生され、タンパク質、脂質、DN A を修飾し、その機

能を障害することで毒性を発揮すると考えられている 4 1 )。 Nrf2

は MG の代謝に関与する gl yox a las e 1 (G LO1 )や a ldo -ke to redu c tas e

(AKR )ファミリーの遺伝子発現を制御することが報告されている

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が 4 0 , 4 2 )、Nrf2 の活性化による MG 毒性軽減への寄与は不明瞭であ

ると共に、そのメカニズムも明らかにされていない。Nrf2 活性化

剤をこれらの疾患の治療薬として応用するためには、その作用メ

カニズムを明らかにすることが必要であると考えられる。

一方で、N rf2 は化学発がんの予防因子として重要な役割を担っ

ており、また、Car nos i c a c id (CA)や Sul fo l aphan e といった Nr f2 活

性化剤の予防的摂取による抗酸化、解毒代謝の活性化は細胞を化

学物質から保護し、疾病発症、発がんを抑制することが示唆され

ている 1 0 , 4 3 , 4 4 )。しかし、ひとたび何らかの疾病に罹患して、薬物

による治療が必要となった場合、このシステムが、治療の妨げと

なる場合があり、最近ではむしろ、化学療法においては Nrf2 系の

阻害が有効とされるケースも存在する 4 5 )。実際に、 d ox orub ic in、

c i sp l a t in、e topos id e といった抗がん剤は Nr f2 シグナルの活性化に

より、その抗腫瘍作用が減弱することが報告されている 4 6 )。さら

に、肺、肝、胆嚢、頭頸部のがん細胞では Keap1 又は Nrf2 遺伝子

の変異により、K eap1 による Nrf 2 の抑制機構が働かず、Nrf2 系が

常時活性化されている事例が見られ、それらのがん細胞では薬剤

に対する感受性が低いことが報告されている 4 7 – 5 0 )。急性骨髄性

白血病では、Nrf 2 または Keap1 の体細胞変異は認められていない

が、NF-κ B の活性化が間接的に N rf 2 発現の上昇を引き起こしてい

る事例が報告されている 5 1 )。従って、抗がん剤治療をより効果的

にするために、あるいは新たな抗がん剤を開発する上で、Nr f2 系

をコントロールすることは重要である。しかし、すべての化学療

法が Nr f2 活性化により減弱されるわけではなく、そのメカニズム

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には不明な点を残しており、更なる知見の蓄積が必要である。

本研究では、始めに神経細胞における MG によるカルボニルス

トレスに対する防御機構として、Nr f2 系の関与について検討を行

った (第 1 章 )。

次いで、急性前骨髄球性白血病 (AP L)の三酸化ヒ素 (ATO: As 2 O 3 )

を用いた化学療法において Nr f2 の活性化が与える影響について

検討した (第 2 章 )。

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遺伝子発現を誘導抗酸化タンパク質解毒代謝酵素

Nrf2

(非ストレス状態)

ポリユビキチン化

26Sプロテアソーム

分解

Nrf2

細胞質

Nrf2

Nrf2

Nrf2

酸化ストレス求電子性物質(E)

Nrf2

ユビキチン化できない

ARE (TGAC/GNNNGC)

Nrf2

ARE: antioxidant response element(抗酸化応答配列)

Fig . 1 . Nrf 2 / Keap 1 系の制御メカニズム

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シスチン

シスチンGlu

Glu

(細胞外)

(細胞内)

(細胞膜)

Cys

γ-Glu-Cys

GSH

Gly

GCL

GS

Glu

xCT 4F2

Fig . 2 . 細胞内 GSH 生合成経路

GCL, γ-glutamyl-cysteine ligase; xCT, cystine/glutamate transporter; GS, Glutathione

Synthetase

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第 1 章 神経細胞株における N rf2 の活性化がメチルグリオキサー

ル誘導性のカルボニルストレスに与える効果

背景・目的

MG は反応性の高い α -ジカルボニル化合物であり、典型的な糖

化反応の原因物質である。神経細胞における過剰な M G の蓄積は

強い細胞毒性を引き起こすことが報告されている 5 2 )。更に、MG

は様々なタンパク質と反応し、カルボニル化タンパク質 (PCO)を

経て、終末糖化産物 (AGEs )を形成する 5 3 )。PCO や AGEs の蓄積は

カルボニルストレスとして知られ、様々な疾患に関与している 5 4 )。

これらの化合物はタンパク質の構造変化とともにその機能を障害

することで細胞毒性を発揮すると考えられている。

これまで行われた研究より、MG は様々なタンパク質と反応し、

argp yr imid ine (AR P) 、 car box ye th yl l ys ine (CE L) 、 meth yl g l yox a l

h yd ro imidazo lone i so fo rm 1 (MG -H1)を形成することが明らかにさ

れた (F i g . 3 ) 5 5 )。MG 化タンパク質の蓄積は皮膚、網膜、腎臓、血

液で確認され 5 6 – 5 9 )、糖尿病、慢性腎疾患、アテローム性動脈硬化

症はカルボニルストレスとの関連が示唆されている 6 0 – 6 3 )。近年、

若年性アルツハイマー病やパーキンソン病のような神経変性疾患

においても、カルボニルストレスの関与が推測されている 6 4 , 6 5 )。

更に、A ra i らは難治性統合失調症患者の血漿中においてカルボニ

ルストレスマーカーが高値であることを報告している 6 6 )。

細胞内において M G は主にグリオキサラーゼ系と A K R ファミリ

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ーによる代謝を受けることが知られている ( F i g . 4 ) 6 7 )。更にグリオ

キサラーゼ系の律速酵素である G LO 1 や MG を還元することがで

きる AKR は Nrf 2 による発現制御を受けることが報告されている

4 0 , 4 2 )。また、グリオキサラーゼ系による代謝に必要な GSH の合成

も Nrf2 により制御されることが知られている 2 1 )。しかし、これ

らの MG 解毒における寄与の詳細は未だ不明である。

従って、本研究では神経細胞における MG の解毒に焦点を当て、

MG により誘導されるカルボニルストレス性の細胞毒性に対する

解毒応答として N rf2 /K eap1 系に注目し、検討を行った。

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11

CH

NH

(CH2)4 NH

CHCO 2H

CO

CH3

CH

NH

CO

(CH2)3 NH

NH

NO

CH3

H

CH

NH

CO

(CH2)3 NH

N

N

CH3

CH3

OH

CH3

O

O

MG

ARP

CEL

MG-H1

LysProtein

ArgProtein

ArgProtein

F ig . 3 . MG に由来する主な終末糖化産物 (AGEs )

MG, methylglyoxal; CEL, carboxyethyl lysine; MG-H1, methylglyoxal hydroimidazolone

isoform 1; ARP, argpyrimidine

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12

CH3O

O

OGS

CH3

OH

H

O

CH3

OH

H

OH

CH3O

OH

CH3

OH

OH

グルタチオン

(GSH) GSH

GLO1

AKR1B1

MG

D-乳酸

AKR7A2(?)

グリオキサラーゼ (GLO) 系による代謝

アルドケトレダクターゼ (AKR) による代謝

CH3O

OH

GS

H

GLO2

AKR1B1

ヘミチオアセタール

D-ラクトイルグルタチオン

プロパン-1,2-ジオールアセトール

Fig . 4 . グリオキサラーゼ、アルドケトレダクターゼによる MG の

代謝

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結果

第 1 節 SH-SY5 Y における MG 毒性と MG 化タンパク質の形成

まず、 SH-SY5Y 細胞が MG に曝露されたときの影響について、

細胞死の誘導と A GEs の形成を指標として評価した。 MG 曝露 24

時間後において、 prop id ium iod ide ( P I)で蛍光染色された細胞を死

細胞として判定し、その割合を測定したところ、 M G の濃度に依

存的な細胞死の誘導作用がみられ、0 .3 mM 以上の濃度で曝露した

とき細胞毒性が現れ、0 .5 mM 以上ではほとんどの細胞が死滅した

(F i g . 5 A)。また、 MG を曝露された SH-SY5Y 細胞について、MG

に由来する A GEs である CE L と MG -H1 の形成を Weste rn Blo t t i n g

にて検出したところ、 0 .5 mM MG 曝露することで遅くとも曝露 4

時間後には CE L、MG-H1 が形成されることが示された (F i g . 5B)。

従って、MG は神経細胞内においてタンパク質と反応して AGEs

を形成し、カルボニルストレスを引き起こすことで細胞毒性を発

揮することが示唆された。

Page 22: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

14

A

B

0 h

4 h

8 h

20

h

0.5 mM MG

β-actin

Anti-

CEL

Anti-

MG-H1

0

20

40

60

80

100

0 0.25 0.5 0.75 1

PI-

po

sitiv

e c

ells

[%

]MG [mM]

*

** ** **

20

30

40

50

60

80100120

220

[kDa]

20

30

40

50

60

80100120

220

[kDa]

0 h

4 h

8 h

20

h

0.5 mM MG

β-actin

Fig . 5 . SH-SY5Y における MG 曝露による影響

(A) SH-SY5Yに対し 0 ~ 1 mM MGを 24 時間曝露し、細胞毒性を Hoechst 33342/PI

staining assayにより評価した。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01, significantly

defferent from 0 mM MG. (B) 細胞に 0.5 mM MGを 0 ~ 20時間曝露し、MG修飾タ

ンパク質を抗 CEL 抗体(左)、抗 MG-H1 抗体(右)を用いた Western Blotting により

検出した。β-actin は loading control として用いた。

Page 23: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

15

第 2 節 Nr f2 活性化剤による MG 毒性軽減効果

神経細胞における MG 毒性と Nrf2 の関係を明らかにするために、

Nrf2 活性化剤として知られる carnos i c ac id (CA)または 1- [ 2 -c yano -

3 - ,12 -d iox oo lean a - 1 ,9 (11 ) -d i en -28 - o yl ] imidazo le (CDDO - Im)を用い

た検討を行った。 SH-SY5Y 細胞において 5 µ M CA を前処理する

ことにより MG による細胞毒性が軽減され、特に 0 .5 m M MG 曝露

においては v eh ic l e と 5 µ M CA 処理の間に有意な差が認められた

(F i g . 6A 左 )。また、 10 nM CDDO - Im 前処理では 0 .3 , 0 .5 mM MG

曝露において有意な MG 毒性軽減効果が得られた (F i g . 6A 右 )。さ

らに、MG 曝露による CE L、MG- H 1 の形成は CA、 C DDO- Im 前処

理により顕著に抑制された ( F i g . 6 B)。これらの結果より、SH-SY5Y

細胞において N rf 2 の活性化は MG による細胞毒性を軽減し、その

機序として A GEs 形成抑制作用の関与が示唆された。

Page 24: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

16

0

20

40

60

80

100

0 0.5 1

MG [mM]

vehicle

5 µM CA

A

**

0

20

40

60

80

100

0 0.5 1

MG [mM]

vehicle

10 nM CDDO-Im

PI-

positiv

e c

ells

[%

]

*

**

Anti-

CEL

β-actin

20

30

40506080

100120

220

[kDa]

0

veh CA

0.3

0.5

CDDO-

Im

MG

conc.

[mM

]

Anti-

MG-H1

20

30

40506080

100120

220

[kDa]

β-actin

0 0.3

0.5 0 0.3

0.5 0

veh CA

0.3

0.5

CDDO-

Im

0 0.3

0.5 0 0.3

0.5

MG

conc.

[mM

]

B

Fig . 6 . SH-SY5Y 細胞における Nrf2 活性化剤による M G 毒性軽減

効果

SH-SY5Y細胞に対し、5 µM CA または 10 nM CDDO-Im を 24 時間前処理し、培地

交換により CAまたは CDDO-Im を除去した後に MGを曝露した。(A) MG を 24時

間曝露後、細胞毒性について Hoechst 33342/PI staining assayにより評価した。Mean ±

SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01, significant defference between vehicle and CA or

CDDO-Im. (B) MGを4時間曝露後、MG修飾タンパク質を抗CEL抗体(左)、抗MG-H1

抗体(右)を用いた Western Blottingにより検出した。β-actin は loading control として

用いた。

Page 25: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

17

第 3 節 Nr f2 活性化剤による制御タンパク質及び代謝物の変動

SH-SY5Y 細胞において、CA、CDD O- Im 処理による Nrf2 系への

影響について検討を行った。各種 N r f2 活性化剤を処理した後、核

内に蓄積した N rf 2 について Weste r n Blo t t i n g による検出を行った

ところ、CA や CD DO- Im 処理によるバンド強度の顕著な増大が認

められ、 Nr f2 の核内移行・蓄積の促進が確認された (F i g . 7 A)。ま

た、Nrf2 活性化の指標として H O-1 の mRNA 発現量を解析したと

ころ、CA、CDDO - Im による有意な発現量の増大が認められた ( F i g .

7B)。神経細胞における Nr f2 活性化剤による MG 毒性軽減のメカ

ニズムを明らかにするために、 GSH 合成の律速酵素である GCLC

と GCLM、シスチントランスポーターである xCT 、グリオキサラ

ーゼ系の律速酵素として知られる G LO1、ヒトでの M G 代謝に関

わると考えられている AKR1B1、 AK R7A2 について m RNA 発現変

動を解析した。 G CLC と GCLM、 xCT の mRNA 発現量は CA、

CDDO- Im により有意に増大し (F i g . 7B)、それに伴い細胞内 GSH

量 が 増 大 し て い る こ と が 分 か っ た ( F i g . 7C )。 一 方 で 、 GLO 1、

AKR1B1、 AKR7A2 mRNA の発現の発現に有意な増加は見られなか

った (F i g . 7 B)。

Page 26: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

18

0

10

20

30

40

50

60

70

vehicle 5 µM CA 10 nMCDDO-Im

GS

H [nm

ol/m

g p

rote

in]

Nrf2

Lamin B1nucle

us

CA [µM]

0 1 2 5 10

A

C

B

****

100

CDDO-Im [nM]

0

10

20

30

40

50

HO-1

0

0.5

1

1.5

2

GCLC

0

1

2

3

4

GCLM

0

2

4

6

8

10

xCT

0

0.5

1

1.5

GLO1

0

0.5

1

1.5

AKR1B1

0

0.5

1

1.5

AKR7A2

Rela

tive m

RN

A e

xpre

ssio

n

*

**

*

* *

****

**

****

vehicle

5 µM CA

10 nM CDDO-Im

Fig . 7 . CA、 CDD O-I m の Nrf 2 / Kea p1 系や細胞内グルタチオン濃

度の変動に与える影響

(A) SH-SY5Y細胞に対し示された濃度の CAまたは CDDO-Im を 24時間処理し、分

画を行い、Western Blotting により核内 Nrf2 タンパク質発現量について解析した。

Lamin B1 は核画分の loading control として用いた。(B) 5 µM CA または 10 nM

CDDO-Im を 6 時間処理したときの HO-1、GCLC、GCLM、xCT、GLO1、AKR7A2、

AKR1B1 mRNAの相対発現量。RT-qPCR 法により測定した。Mean ± SD (n = 3), *P <

0.05, **P < 0.01. (C) 5 µM CAまたは 10 nM CDDO-Imを 24時間処理したときの細胞

内 GSH濃度。DTNB 法により測定した。Mean ± SD (n = 3), **P < 0.01.

Page 27: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

19

第 4 節 Nr f2 活性化剤の MG 毒性軽減効果における G SH の関与

Nr f2 活性化剤による細胞内 GSH 量増大の MG 毒性軽減への関

与を明らかにするために、 GSH 合成酵素阻害剤である Buth ion ine

su fox imine ( BSO) を 用 い て さ ら な る 検 討 を 行 っ た 。 始 め に 、

SH-SY5Y 細胞に対し Nr f2 活性化剤と同時に 10 µM BS O を処理し、

細胞内 GS H 量を測定したところ、N rf2 活性化剤による細胞内 GSH

量の増大は有意に抑制されることが確認された ( F i g . 8 A)。この前

処理条件において MG を曝露し、細胞毒性を測定したところ、N rf2

活性化剤による M G 毒性軽減効果は BSO 処理により打ち消された

(F i g . 8 B)。従って、細胞内 GSH 量の増大は MG 毒性軽減に寄与し

ていることが明らかとなった。

MG は非酵素的に GSH と反応し、ヘミチオアセタールとなった

後、グリオキサラーゼシステムにより代謝されて D -乳酸となるこ

とが知られている。そこで、 N rf2 活性化による細胞内 GSH 量の

増大がグリオキサラーゼシステムを介した代謝系を活性化してい

るかを検証するため、細胞内 D-乳酸量の測定を試みた。0 .5 mM MG

曝露により約 40 n mol /mg p ro t e in の細胞内 D -乳酸が検出され、CA、

CDDO- Im 前処理により細胞内 D-乳酸の量は有意に増大していた

(F i g . 8 C)。この結果により、細胞内 GSH 量の増大により MG のグ

リオキサラーゼ系を介した代謝が促進されていることが示唆され

た。

Page 28: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

20

0

20

40

60

80

100

0 0.2 0.3 0.5

PI-

positiv

e c

ells

[%

]

MG [mM]

vehicle

CA

CDDO-Im

vehicle + BSO

CA + BSO

CDDO-Im + BSO

A

B

C

0

10

20

30

40

50

60

vehicle 5 µM CA 10 nMCDDO-Im

GS

H [nm

ol/m

g p

rote

in]

control

10 µM BSO

****

** **

0

10

20

30

40

50

60

vehicle vehicle CA CDDO-Im

D-lacta

te[n

mol/m

g p

rote

in]

****

0.5 mM MG

**

*

**

**

n.s.

n.s.n.s.

n.s.

n.s.

n.s.

n.s.

n.s.n.s.

n.s.

n.s.

n.s.

Fig . 8 . Nrf 2 活性化剤の MG 毒性軽減効果における GSH の関与

(A) SH-SY5Yに対し 5 µM CAまたは 10 nM CDDO-Imと同時に 10 µM BSOを 24時

間処理したときの細胞内 GSH濃度。Mean ± SD (n = 3), **P < 0.01. (B) SH-SY5Y に

対し 5 µM CA または 10 nM CDDO-Im と同時に 10 µM BSOを 24時間処理し、培地

交換した後に各濃度の MGを 24時間曝露した。その後、細胞毒性について Hoechst

33342/PI staining assayにより評価した。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01. (C)

SH-SY5Yに対し 5 µM CAまたは 10 nM CDDO-Im を 24時間処理し、培地交換した

後に 0.5 mM MG を 30 分間曝露した。その後、細胞内 D-乳酸の量を測定した。Mean

± SD (n = 3), **P < 0.01.

Page 29: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

21

考察

MG のようなタンパク質や核酸と反応し易いジカルボニル化合

物は糖や脂質、アミノ酸から形成される 6 8 , 6 9 )。反応性の高いカル

ボニル化合物の蓄積により引き起こされる状態はカルボニルスト

レスと呼ばれ 7 0 )、カルボニル化合物による修飾を受けたタンパク

質から AGEs が形成される。ヒトにおいて、糖尿病 6 0 , 6 1 )、腎不全

7 1 )、精神疾患 7 2 , 7 3 )等、様々な疾患を抱える患者の体内で AGEs が

増大していることが報告されている。従って、様々な疾患の原因

究明・治療法確立のために生体のカルボニルストレスに対する防

御機構の解明が望まれている。

近年、MG の解毒機構における Nr f2 系の関与が報告されたが 4 0 )、

そのメカニズムは未だ不明瞭であるため、 MG の解毒における

Nrf2 の役割を明確にすることが重要である。SH-SY5 Y 細胞におい

て Nrf2 を活性化することで MG の細胞毒性が低下することを示し

た先行研究があるが 7 4 )、その解毒メカニズムは不明瞭で、本研究

ではその解明を試みた。得られた結果から、神経細胞において

Nrf2 の活性化は M G の毒性を軽減し、その作用機序として、細胞

内 GSH 量の増大が重要であることが明らかとなった。

初めに、筆者は SH-SY5Y 細胞に対し MG を曝露して、濃度依存

的に細胞死が誘導されることを確認した ( F i g .5A )。本研究では P I

により蛍光染色された細胞を死細胞の指標として MG による細胞

毒性を評価した。一般的に細胞毒性の判定に汎用される方法とし

て 、 3- (4 ,5 -d imet h yl th i azo l -2 - yl ) - 2 , 5 -d iphen yl t e t razo l i um bromide

Page 30: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

22

(MTT)を用いて細胞内の還元力を指標とし評価する方法が知られ

ており、先行研究においても MG による細胞毒性を M TT Assa y に

より評価している報告が見受けられる 7 4 , 7 5 )。しかし、筆者の検討

では MG が直接 M TT と反応してホルマザンを生成し、正確な細胞

毒性を測定することができないことが判明した。一方で、 P I は

MG の 影 響 を 受 け る こ と な く 使 用 で き る こ と か ら 、 Ho echs t

33342 /P I s t a in in g a s sa y で細胞毒性を評価するに至った。また、

SH-SY5Y 細胞に対する MG の曝露により、AGEs の一種である CE L

と MG-H1 の明瞭な形成が確認された (F i g . 5 B)。神経細胞に対する

MG の毒性において AGEs の形成・蓄積が関与していることが報

告されており 7 6 )、本研究においても CE L や MG- H1 の形成による

タンパク質の機能的変化が、細胞毒性に寄与していることが予想

される。

本研究では、Nr f2 の活性化剤として CA と CDDO - Im を用いるこ

とで、MG による細胞毒性、 A GEs 形成に対する Nr f 2 系の関与を

明らかにした (F i g . 6 )。 CA はローズマリーに多く含有されるジテ

ルペンであり、 Keap1 による分解の抑制や、 Erk 1 /2、 P I3 K-Akt 経

路の活性化を介し Nrf2 の活性化を引き起こすことが報告されて

いる 4 3 , 7 7 )。また、 CA はマウスに経口投与された場合、脳へ移行

することが確認されており 4 3 )、i n v i vo で中枢神経の保護効果を発

揮し得ると考えられる。CDD O- Im は合成トリテルペノイドであり、

Keap 1 の C ys151 残基に結合し Keap1 を阻害することで Nr f2 の活

性化を引き起こすことが報告されている 7 8 , 7 9 )。 CA、 CDDO- Im は

Nrf 2 の核内蓄積、及び N rf 2 活性化の指標である H O-1 の mRNA

Page 31: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

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発現量の増大が認められる濃度において (F i g . 7 A, B)、MG に依る

AGEs の形成と細胞毒性を軽減した (F i g . 6 )。

Thorna l l e y らの報告では、MG は主にグリオキサラーゼ系により

代謝され 5 4 )、グリオキサラーゼ系の代謝酵素である G LO 1 は N rf2

による制御を受けることを報告している 4 0 )。また、哺乳動物にお

いて MG はアルドースレダクターゼ (ヒトでは A KR1B1 )による代

謝を受けることも以前から知られており 8 0 )、最近では AKR7A2

の MG 解毒への関与も報告されている 8 1 )。その一方で、AKR1B1、

7A2 は、いずれも Nrf2 による制御が報告されている 4 2 , 8 2 )。しか

し、本研究では、 SH-SY5Y 細胞において N rf 2 を活性化したとこ

ろ、 GLO1、 AKR1 B1、 AKR7A2 の mRNA 発現の誘導は認められな

かった ( F i g . 7B)。一方で、 GSH 合成に関わる xCT、 GC LC、 GCLM

の mRNA 発現は N rf2 活性化剤の処理により誘導され、細胞内 GSH

量が増大した (F i g . 7B, C)。これらの結果より、Nrf 2 の活性化によ

る MG 毒性軽減作用において、細胞内 GSH 量の増大が関与してい

る可能性が示唆された。筆者らはこれまでの研究において、神経

細胞における po l ysu l f ide による M G 毒性軽減効果の機序として、

GSH 量の上昇が一部関与していることを報告した 8 3 )。本研究でも、

GSH 合成阻害剤 BSO を用いた検討結果より、 N rf2 活性化による

MG 毒性軽減において、 GSH は重要な役割を果たしていることが

明らかとなった (F i g . 8 A, B)。

GSH は MG と非酵素的に反応し、 G LO1 の基質であるヘミチオ

アセタールを形成するため、GSH 量の増大はグリオキサラーゼ系

による MG の代謝を促進していることが予想された。結果に示す

Page 32: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

24

通り、MG 曝露後の細胞内 D -乳酸の生成は N rf2 活性化により促進

されており、この解釈が妥当であることを示唆している (F i g . 8C )。

この結果を支持する先行研究として、Li らは不死化ヒト脳毛細血

管上皮細胞株において、 M G 曝露後の D-乳酸への代謝は細胞内

GSH 量に依存することを報告しており 8 4 )、MG のグリオキサラー

ゼ系による代謝における GSH 量の重要性を示している。

以上のことから、Nrf2 の活性化は細胞内 GSH 量の増大を介して

MG のグリオキサラーゼ系による解毒代謝加速を促し、その結果

AGEs の蓄積と細胞毒性を抑制することが判った (F i g . 9 )。本研究

は Nrf2 のカルボニルストレスに対する主たる作用メカニズムを

示唆すると同時に、神経変性疾患のようなカルボニルストレスの

関与が考えられている疾患に対し、Nrf2 活性化剤が予防・治療薬

となる可能性を示すものである。

Page 33: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

25

Nrf2

CA

MG

GCL

GSH

カルボニルストレス

D-乳酸

xCT

(神経細胞)

(Nrf2活性化剤)

CDDO-Imor

AGEs

タンパク質

解毒

GLO1/GLO2

Fig . 9 . 神経細胞における Nrf 2 活性化による MG 毒性軽減メカニ

ズム

Page 34: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

26

第 2 章 急性前骨髄球性白血病細胞株 NB4 の三酸化ヒ素 (ATO )に対

する感受性における Nrf2 活性化の影響

背景・目的

近年、三酸化ヒ素 (ATO: As 2 O 3 )は再発・難治性の急性前骨髄球

性白血病 (AP L)の治療薬として認可され、 AP L 細胞に対し、高濃

度 (0 .5 ~ 2 µM)でアポトーシス誘導、低濃度 (0 .1 ~ 0 .5 µ M )で分化誘

導を引き起こすことが知られている 8 5 )。また、 ATO は AP L に対

する第一選択薬である a l l - t r ans r e t i n o ic a c id ( ATRA)感受性、耐性

細胞のどちらにも著効を示すことから、AP L 治療において非常に

有効な治療薬である 8 5 )。 Liu らは、ヒト肺胞基底上皮腺癌由来細

胞株 A549 において Nrf2 をノックダウンすると、ATO による細胞

生存率低下への影響が大きくなることを示した 8 6 )。また、マウス

初代肝細胞で N rf 2 活性化剤である su l fo raph ane の処理により、

NaAsO 2 の毒性を軽減することが報告されている 8 7 )。しかし、多

発性骨髄腫由来細胞において、s iRN A により N rf2 をノックダウン

しても ATO に対する感受性は変化しない、という報告もあること

から 8 8 )、 ATO に対する感受性と N rf2 の関係については未だ不明

瞭である。一方で AP L においては、ATRA が N rf2 系を抑制し、結

果として ATO の作用を増強する、という間接的な N rf2 の関与を

示唆する報告もされている 8 9 )。いずれにせよ、現在まで ATO に

よる化学療法が行われている AP L 細胞における ATO に対する感

受性と、 Nr f2 の ATO の薬効に及ぼす影響に関する研究は十分に

Page 35: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

27

行われていない。

筆者は AP L 細胞を用いて、Nr f2 系の活性化が ATO による化学

療法に与える影響と、そのメカニズムを明らかにするため、本研

究を行った。

Page 36: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

28

結果

第 1 節 N B4 の ATO に対する感受性

NB4 細胞の ATO に対する感受性について、 P I で蛍光染色され

た細胞を死細胞として判定し、その割合を測定することで評価し

た。NB4 に対し ATO を 0 ~ 4 µM の範囲で 48 時間処理したところ、

無添加の場合と比べ、1 .5 µM 以上の濃度において有意な死細胞の

増加が認められ、 1 µM ~ 4 µM において濃度依存的であった ( F i g .

10 )。

Page 37: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

29

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 0.1 0.2 0.5 1 1.5 2 4

PI-

po

sitiv

e c

ells

[%

]

ATO [µM]

**

**

**

Fig . 1 0 . NB4 における ATO に対する感受性評価

NB4 に対し 0 ~ 4 µM ATO を 48 時間処理し、死細胞の割合を Hoechst 33342/PI

staining assayにより測定した。Mean ± SD (n = 3), **P < 0.01, significantly different

from 0 µM ATO.

Page 38: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

30

第 2 節 N B4 における CA による N r f2 系の活性化

NB4 細胞に対して Nrf2 活性化作用が知られている CA を処理し、

Weste rn Blo t t i ng により核内 N rf2 の検出を行った。その結果、5 µM

CA 処理 2 ~ 24 時間後における核内 Nrf2 量の有意な増大が認めら

れた (F i g . 11B)。次いで、 5 µM CA 処理による N rf2 により制御さ

れることが報告されている遺伝子の発現変動を解析したところ、

HO-1、GCLM、xCT mRNA の有意な発現誘導が認められたが、GCLC、

GSTP1 mRNA の発現に変動は認められなかった ( F i g . 11A)。また、

細胞質における H O-1、GC LM タンパク質について Weste rn Blo t t i n g

による解析を行ったところ、それぞれ 6 ~ 24 時間と 1 2 ~ 2 4 時間

において有意に増大していることが確認された ( F i g . 11B)。さらに、

細胞内 GSH 量の変化について調べたところ、5 µM CA 処理した後

6 ~ 24 時間において有意に上昇し、その上昇は CA 濃度依存的で

あった ( F i g . 11 C , D )。

Page 39: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

31

Nrf2

Lamin B1

GCLM

β-actin

HO-1

0

1

2

3

4

5

0 6 12 18 24

[h]

vehicle

5 µM CA**** ** **

0

20

40

60

80

100

120

0 6 12 18 24GS

H [nm

ol/m

g p

rote

in]

[h]

vehicle5 µM CA

**

** **

0 h 2 h 6 h 24 h

5 µM CA

12 h

++++- - - - -

nucle

us

cyto

pla

sm

0

0.5

1

1.5

0 6 12 18 24[h]

vehicle

5 µM CA

** *

0

2

4

6

0 6 12 18 24[h]

vehicle

5 µM CA** *

*

0

20

40

60

80

100

120

0 1 2.5 5GS

H [nm

ol/m

g p

rote

in]

CA [µM]

****

*

A

B

C D

0

1

2

3

12

15

rela

tive m

RN

A

expre

ssio

n

vehicle

5 µM CA

HO-1 GCLC GCLM xCT GSTP1

**

** **

Band Inte

nsity

(Nrf

2/L

am

inB

1)

Band Inte

nsity

(GCLM/β

-actin)

Band Inte

nsity

(HO

-1/β

-actin)

Fig . 11 . NB 4 において carnos i c a c id (C A)が N rf 2 /Kea p1 系と細胞

内グルタチオンレベルに与える影響

(A) NB4 に対し 5 µM CA を 24時間処理したときの HO-1、GCLC、GCLM、xCT、

GSTP1 mRNAの相対発現量。RT-qPCR 法により測定した。Mean ± SD (n = 3), **P

< 0.01. (B) NB4 に対し 5 µM CA を 0 ~ 24 時間処理し、分画を行い、Western Blotting

により核内 Nrf2、細胞質内 HO-1、GCLM タンパク質発現量について解析した。

Lamin B1 は核画分の、β-actin は細胞質画分の loading control としてそれぞれ用い

た。下のグラフは Western Blottingの結果を densitometryで数値化、解析したもの

である。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01, significant defference between

vehicle and 5 µM CA. (C) NB4における 5 µM CA 処理(0 ~ 24 時間)による細胞内

Page 40: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

32

GSH量の経時変化。GSH量は DTNB法により測定した。Mean ± SD (n = 3), *P <

0.05, **P < 0.01, significant defference between vehicle and 5 µM CA. (D) NB4 に対し

0 ~ 5 µM CA を処理したときの細胞内 GSH 量測定。Mean ± SD (n = 4), *P < 0.05,

**P < 0.01.

Page 41: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

33

第 3 節 Nr f2 活性化による ATO に対する感受性の減弱と、細胞内

ヒ素濃度への影響

NB4 において、C A による N rf2 の活性化が ATO に対する感受性

に与える影響を明らかにするために、 5 µM CA 前処理を行った後

に 0 ~ 2 µM ATO を曝露した場合の細胞毒性について調べた。ATO

を処理する 24 時間前に 5 µM CA を処理することで、 2 µM ATO

処理による死細胞の増加が有意に抑制された ( F i g . 12 A )。次いで、

NB4 において認められた Nrf2 の活性化が ATO の細胞毒性を軽減

する作用と、ATO 処理後の細胞内ヒ素濃度との関係について検討

を行った。 N B4 に対し CA を前処理せずに 2 µM ATO を添加した

とき、細胞内ヒ素濃度は上昇し、 1 2 時間後に最大 (約 1 .2 nmol / mg

p ro t e in )となり、その後減少した (F i g . 1 2 B)。しかし、 5 µM CA を

前処理することにより、ATO 処理による細胞内ヒ素濃度の上昇は

およそ 6 時間付近で見かけ上一定となり、細胞内ヒ素の蓄積が抑

制された ( F i g . 1 2 B)。5 µM CA 前処理により最大濃度に達するまで

の時間が短縮されたことから、 CA 前処理はヒ素の排出に関して

影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、 CA による細胞

内ヒ素濃度の減少作用は CA 濃度に依存的であった (F i g . 1 2C )。

Page 42: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

34

A

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

0 6 12 18 24

Intr

acellu

lar A

s[n

mol/m

g p

rote

in]

[h]

vehicle

5 µM CA

*

*

**

** **B

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 0.5 1 1.5 2

PI-

positiv

e c

ells

[%

]

ATO [µM]

vehicle

5 µM CA

**

*

****

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

0 1 2.5 5In

tracellu

lar A

s[n

mol/m

g p

rote

in]

CA [µM]

**

****

C

Fig . 12 . NB4 に対する ATO 処理において CA 前処理が与える影響

(A) NB4 に対し 0 ~ 5 µM CAを 24時間前処理し、次いで 0 ~ 2 µM ATOを 48時間

処理後の死細胞の割合を測定した。Mean ± SD (n = 4), *P < 0.05, **P < 0.01. (B)

NB4に対し vehicle または 5 µM CAを 24 時間処理し、次いで 2 µM ATOを各時間

処理後、細胞内ヒ素濃度について ICP-MS による測定を行った。Mean ± SD (n = 4),

*P < 0.05, **P < 0.01, significant differences between vehicle and 5 µM CA. (C) 0 ~ 5

µM CAで 24時間前処理し、次いで 2 µM ATO を 12時間処理したときの細胞内ヒ

素濃度について測定した。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01, significantly

different from non-treated controls (CA: 0 M).

Page 43: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

35

第 4 節 トランスポーターMRP 阻害による細胞内ヒ素濃度への影

NB4 におけるヒ素排出のメカニズムとして、MRP ファミリーの

関与を調べるために、MRP 阻害剤として知られる MK - 571 を用い

検討を行った。 C A 前処理を行わない場合、 ATO の単独での添加

時に MK-571 を同時に処理することで細胞内ヒ素濃度上昇の傾向

が認められた (F i g . 13A)。その一方で、5 µM CA 前処理を行った後、

ATO と M K-571 を同時に処理した N B4 細胞内では、ヒ素濃度が明

らかに上昇し、その濃度は CA 未処理における ATO と MK-571 を

併用した場合と比べ同程度であった (F i g . 1 3 A)。このとき、 ATO

の細胞死誘導作用に MRP 阻害剤が与える影響について検討を行

ったところ、MK-5 71 は ATO と併用するとき ATO の細胞毒性を増

強し、また、 CA 前処理による ATO の細胞毒性減弱効果を打ち消

した (F i g . 1 3 B)。一方、CA による MR P1,2 ,4 mRNA の発現量につい

て解析したところ、いずれも有意な変動は認められなかった ( F i g .

4C)。

Page 44: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

36

0

0.5

1

1.5

2

0 50

Intr

ace

llula

r A

s[n

mo

l/m

g p

rote

in]

MK-571 [µM]

vehicle

5 µM CA

A B

0

10

20

30

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60

70

0 5 10 50

PI-

po

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[%

]

MK-571 [µM]

vehicle

5 µM CA

**

*

0

0.2

0.4

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1

1.2

1.4

MRP1 MRP2 MRP4

rela

tive m

RN

A level

vehicle

5 µM CA

C n.s. n.s. n.s.

**

n.s.

n.s.n.s.

Fig . 13 . CA 前処理 ATO 処理 NB4 の細胞外へのヒ素排出おける

MR P の関与

(A) NB4 に対し vehicle または 5 µM CA を 24時間処理し、次いで vehicleまたは

50 µM MK-571と 2 µM ATO同時に添加し 12 時間培養した後、細胞内ヒ素濃度に

ついて ICP-MS による測定を行った。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01. (B)

NB4に対し vehicleまたは 5 µM CAを 24時間処理し、次いで vehicleまたは 50 µM

MK-571と2 µM ATO同時に添加し 24時間培養した後、死細胞の割合を測定した。

Mean ± SD (n = 4), *P < 0.05, **P < 0.01, n.s. not significant. (C) NB4 に対し vehicle

または 5 µM CA 24 時間処理したときの MRP1, 2, 4 mRNAの相対発現量。Mean ±

SD (n = 3), n.s. not significant.

Page 45: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

37

第 5 節 ATO に対する感受性における GSH の役割

先に示した結果から、 NB4 細胞に対する CA 前処理により細胞

内 GSH 量が上昇することが示された (F i g . 11C , D )。そこで、 N B4

細胞に対する ATO 処理における G SH 濃度変化の影響を明らかに

するため、 GS H 合成阻害剤である BS O を用いた検討を行った。

まず、 N B4 に対し BS O を処理することで細胞内 G SH 量が減少す

ると共に、 C A 処理による細胞内 G SH 量の増大も抑制することが

見出された ( F i g . 1 4 A)。そこで、 BSO 前処理による ATO 添加時の

細胞内ヒ素蓄積量への影響を観察したところ、 CA 前処理による

細胞内ヒ素排出促進効果は BSO 前処理により消失し、BSO のみを

前処理した場合と有意差のないヒ素濃度となった (F i g . 14 B)。また、

細胞毒性試験では、 BSO 前処理後に 2 µM ATO 処理するとき ATO

による細胞毒性が増強され、 CA 前処理による ATO の毒性軽減効

果も、 BSO 前処理により消失した (F i g . 14 C)。以上の結果より、

Nrf 2 活性化による細胞内 GS H 量の増大はヒ素排出促進に寄与し、

ATO の作用を減弱していることが示唆された。一方、ヒ素と GSH

の複合体形成促進に GSTP1-1 が関与することが報告されているが

9 0 )、本検討においては、 CA による GSTP1 mRNA の発現上昇は認

められなかった (F i g . 11A)。

Page 46: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

38

00.20.40.60.8

11.21.41.6

0 µM BSO 2 µM BSO

Intr

acellu

lar A

s[n

mol/m

g p

rote

in]

vehicle

5 µM CA

**

n.s.

0

20

40

60

80

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120

0 1 2 3 4 5GS

H [

nm

ol/m

g p

rote

in]

BSO [µM]

vehicle5 µM CA

A

C

B

**

**

***

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 1 2 5

PI-

positiv

e c

ells

[%

]

BSO [µM]

vehicle

5 µM CA

**

** n.s. n.s.

Fig . 1 4 . C A 前処理、ATO 処理された NB4 における GSH 合成阻害

による影響

(A) NB4に対し vehicle または 5 µM CA と 0 ~ 5 µM BSOを同時に 24時間処理し、

GSH量についてDTNB法により測定した。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01,

significant differences between vehicle and 5 µM CA. (B) NB4 に対し vehicleまたは 5

µM CAと 2 µM BSO を 24 時間同時処理し、次いで 2 µM ATO を添加し 12時間培

養した後、細胞内ヒ素濃度について ICP-MS による測定を行った。Mean ± SD (n =

3), **P < 0.01, n.s. not significant. (C) NB4に対し vehicleまたは5 µM CAと 0 ~ 5 µM

BSOを 24 時間同時処理し、次いで PBS または 2 µM ATO を添加し 48 時間培養

した後、死細胞の割合を測定した。Mean ± SD (n = 4), **P < 0.01, n.s. not significant.

Page 47: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

39

第 6 節 CA 前処理 ATO 処理における Nr f2 ノックダウンの効果

これまで、 N B4 細胞において、 CA 処理による N rf2 系の活性化

が ATO に対する感受性に与える影響とそのメカニズムの解明を

目的に検討を行ってきた。その結果を踏まえて、 CA 処理による

様々な効果が実際に Nrf2 を介しているということを証明するた

めに、 RNAi により Nrf 2 の発現をノックダウンすることで更なる

検証を試みた。 N B4 に対し Nr f2 t a rge t s iRN A (s iNrf2 )をトランス

フェクションした場合、 CA 処理の有無にかかわらず Nrf 2 の核内

蓄積がほとんど観られなくなった事から、充分なノックダウン効

果が確認された (F i g . 1 5 B)。次いで、C A 処理による HO- 1、GCLM、

xCT mRNA レベルの上昇、細胞質内 HO-1、GC LM タンパク質量の

発現について調べたところ、N rf2 のノックダウンによりいずれの

発現増大も抑制された (F i g . 1 5A, B)。このとき、 CA 前処理による

細胞内 GSH 量の増大についても、明らかに抑制されることが示さ

れた (F i g . 15C )。また、CA 前処理による ATO 処理時に観られる細

胞内ヒ素排出促進効果についても、 s iNrf2 の導入により抑制され

ることが分かった (F i g . 1 5 D)。以上の結果より、 CA により引き起

こされる GSH 量の増大とヒ素排出促進効果は N rf2 依存的である

ことが証明された。

Page 48: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

40

B

DC

0

1

2

3

4

5

--

-+

+-

++siNrf2

5 µM CA

**

** ****

Nrf2

Lamin B1

siNrf25 µM CA - - + +

- + - +

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GCLM

β-actin

nucle

us

cyto

pla

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0

1

2

3

4

--

-+

+-

++

0

0.5

1

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--

-+

+-

++

* ** ***

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1

2

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10

Rela

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RN

A e

xpre

ssio

n

siCtrl, vehicle

siNrf2, vehicle

siCtrl, CA

siNrf2, CA

HO-1 GCLC GCLM xCT GSTP1

* **

** **

** **

- - + +- + - +

siNrf2

5 µM CA

siNrf2

5 µM CA

siNrf25 µM CA

A

Band Inte

nsity

(Nrf

2/L

am

inB

1)

Band Inte

nsity

(GCLM/β

-actin)

Band Inte

nsity

(HO

-1/β

-actin)

0

20

40

60

80

100

120

siCtrl siNrf2

GS

H [nm

ol/m

g p

rote

in] vehicle

5 µM CA**

n.s.

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

siCtrl siNrf2

Intr

acellu

lar A

s

[nm

ol/m

g p

rote

in]

vehicle5 µM CA**

n.s.

Fig . 15 . C A 前処理、 ATO 処理 NB4 における、 Nrf 2 ノックダウン

による細胞応答への影響

NB4に対し 100 nM の nonspecific siRNA (siCtrl)または Nrf2 target siRNA (siNrf2)を

トランスフェクションし、その後の細胞応答の変化を解析した。(A) siCtrl または

siNrf2 をトランスフェクションした NB4 に対して vehicle または 5 µM CA を 24

時間処理したときの HO-1、GCLC、GCLM、xCT、GSTP1 mRNA発現量を RT-qPCR

により解析した。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01. (B)トランスフェクショ

ン後の NB4に対し、vehicleまたは 5 µM CA を 24時間処理したサンプルについ

て分画を行い、Western Blottingにより核内 Nrf2、細胞質内 HO-1、GCLM タンパ

ク質発現量を解析した。Lamin B1 は核画分の、β-actin は細胞質画分の loading

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controlとしてそれぞれ用いた。下のグラフはWestern Blottingの結果を densitometry

で数値化、解析したものである。Mean ± SD (n = 3), *P < 0.05, **P < 0.01, significant

defference between vehicle and 5 µM CA. (C) siCtrlまたは siNrf2をトランスフェクシ

ョンした NB4に対して vehicleまたは 5 µM CA を 24時間処理したときの、細胞

内 GSH量を測定した。Mean ± SD (n = 3), **P < 0.01, n.s. not significant. (D) siCtrl

または siNrf2 をトランスフェクションした NB4に対して vehicleまたは 5 µM CA

を 24時間処理し、次いで 2 µM ATOを 12時間処理後、細胞内ヒ素濃度の測定を

行った。Mean ± SD (n = 3), **P < 0.01, n.s. not significant.

Page 50: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

42

考察

Nr f2 /K eap 1 系の巧妙な制御メカニズムに基づいて、N rf 2 は様々

なストレスに応答して活性化し、細胞保護的に働く。この生体反

応は健常人の細胞内で恒常的に起きている。さらに、これまでの

研究より、 N rf2 依存的な応答が、抗酸化応答配列である ARE を

介して薬物代謝や抗酸化に関わる遺伝子の発現を制御することで、

異物による肝毒性に対し保護的に働くことが示されている 9 1 )。加

えて、Nr f2 欠損マウスはヒ素による酸化ストレス、アポトーシス

誘導により、その感受性が高くなることが知られている 9 2 )。この

ような背景から、近年ではサプリメントや医薬品による Nrf2 に依

存する細胞保護的な応答の活性化を介した疾病の予防に関する研

究は、動物実験のみならず、ヒトに対する臨床試験も活発に行わ

れている 9 3 , 9 4 )。

その一方で、最近、Nrf 2 /Keap1 系の負の側面として、薬剤耐性

との関わりが指摘されている 4 6 )。がん細胞においては、 KRas や

cM yc などのがん遺伝子の活性化や Keap1 の遺伝子変異などによ

って Nr f2 は恒常的に活性化しており、抗酸化酵素や解毒酵素の産

生や活性が亢進していることが明らかとなっている 4 7 – 4 9 , 9 5 , 9 6 )。そ

れ故に、がん細胞は酸化ストレスや細胞傷害性物質に対する抵抗

性が亢進しており、それが抗がん剤や放射線治療に対する抵抗性

の原因になっていると考えられる。即ち、細胞ががん化した状態

で CA や su l fo r aph ane などの Nrf 2 活性化剤を多く摂取した場合、

がん細胞の N rf2 制御因子が強化され、抗がん剤や放射線治療に対

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43

する抵抗性を高める可能性がある。従って、がん細胞においては、

Nrf2 の活性をむしろ阻害する物質が、がん治療に役立つという可

能性、即ち N rf2 を標的分子とする研究に注目が集まり始めた 4 6 )。

いずれにせよ、がんの予防や治療のターゲットとしての転写因子

Nrf2 には二面性があり、がん予防の場合とがん治療の場合では全

く異なる対処が必要であると考えられる。2006 年に Bi swal らは、

細胞内解毒に関わる遺伝子のブレーキを外す働きが、一般的な肺

がん細胞における薬剤耐性を引き起こしているのではないかとい

うことに気づいた 4 7 )。培養細胞を用いた研究においても、KEAP1

遺伝子の変異を起こしているがん細胞は、正常な肺組織の細胞よ

り抗がん剤への耐性度が高くなっていることが解っている 4 7 )。し

かし、薬剤耐性が問題になっている血液がんは多く存在するにも

かかわらず、血球系がん細胞における Nrf2 系と薬物感受性との関

わりについて研究した報告は極めて少ない。

今回、筆者は血球系細胞として N B4、抗がん剤として ATO を用

いて研究を行い、以下の知見を得た。

CA は第 1 章考察で述べた通り、 Keap1 による N rf2 の抑制を解

除することで N rf 2 を活性化することが知られており、 Nrf2 活性

化剤として繁用される 4 3 , 7 7 )。CA 処理によって、N B4 細胞内で Nr f2

は核内に移行し、GSH 合成の材料であるシスチンの取り込みに関

与する x CT、 GSH 合成律速酵素の活性調節サブユニットである

GC LM の発現が増大した後、細胞内 GSH 量が 2 倍近く上昇した ( F i g .

11 )。CA は、血球系がんである AP L に対する抗がん剤として用い

られるヒ素製剤 ( ATO)によるアポトーシス作用が発揮される前に、

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ヒ素をトランスポーターである MR P を介して細胞外への排出を

促進することで、その効果を減弱した (F i g .12 , 13 A)。即ち、その

感受性減弱効果は、ヒ素排出の促進による細胞内ヒ素の蓄積の抑

制が関与していることが明らかとなった (F i g . 13 B)。ヒ素は細胞内

で GSH と の 複 合 体 ( a r sen i c t r i g lu t a th ion e [ A S (GS) 3 ] 、

monometh yl a r so n ic d ig lu t a th ion e [ AsCH 3 (GS) 2 ] )となり、MRP1, 2

を介して細胞外へ排出されることが知られている 9 0 , 9 7 , 9 8 )。さらに、

MRP4 過剰発現 HE K293 細胞を用いた研究より、MRP 4 もヒ素排出

に関与していることが報告されている 9 9 )。筆者らが得た結果より、

ヒ素排泄は MRP 依存的であることが示されたが、C A 処理によっ

て、MRP1、MRP2 及び MRP4 の mRN A 発現量自体には変化は認め

られなかった (F i g . 13 C)。ヒ素と GSH の複合体の形成は抱合酵素

である GSTP1 -1 により促進されることが報告されている 9 0 )。また、

GSTP1-1 の発現に Nrf2 が関与しており、GSTP1-1 の活性化が ATO

によるアポトーシス誘導を阻害することも報告されている 1 0 0 , 1 0 1 )。

しかし、本研究において、 CA 処理による細胞内 G STP1 mRNA の

発現上昇 ( F i g . 11 A )、GST 活性の上昇 (データ未掲載 )は認められな

かったため、N B4 細胞における CA によるヒ素排出の促進におい

て、GST 活性は関与しないものと考えられる。一方で、BSO によ

る細胞内 GSH 合成阻害は、 C A によるヒ素排出促進作用を消失さ

せたことから、 C A 処理による Nr f 2 系の活性化によって起こる、

ヒ素排泄の促進におけるエッセンシャルな因子は、細胞内 GSH 濃

度であることが強く示唆された (F ig . 14 )。即ち、細胞に取り込ま

れたヒ素は、GST 非依存的かつ GS H 濃度依存的に複合体 A S ( GS) 3

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を形成し、その複合体、もしくはメチル化を受けた形 (AsCH 3 (GS) 2 )

が MRP によって基質として認識され、細胞外に排泄されるものと

考えられる。また、s iRNA による検討から、CA による細胞内 GSH

増大を介したヒ素排出促進は N rf2 系に依存した効果であり、N B4

細胞において、 Nr f2 系は ATO に対する感受性に関して重要な役

割を担っていることが明らかとなった (F i g . 15 )。本研究で得られ

た結果は、GSH 濃度が上昇すると、ヒ素との複合体形成が促進さ

れるという報告 1 0 2 , 1 0 3 )、及びヒ素 -G SH 複合体の濃度が上がると

き、それを基質とする MRP によって As(GS) 3 の排出が促進すると

いう報告によって支持されるものである 9 0 , 9 8 )。

以上のことから、 AP L 細胞において、 Nrf2 の活性化は細胞内

GSH 量の増大を介し、ヒ素の細胞外への排出を活性化することで、

AP L 治療薬である ATO の作用を減弱してしまうことが明らかと

なった ( F i g . 16 )。

この研究成果は、がんの予防において Nrf2 の活性化は有効であ

るとして注目されている一方で、がんの治療においては ATO 等の

化学療法の妨げとなることを強く示唆している。

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Nrf2

CA

As3+

GCL

GSH apoptosis

As-GSH conjugate

exclusion

xCT

(APL細胞)

(Nrf2活性化剤)(ATO)As3+

MRPs

GST

Fig . 1 6 . NB4 における CA による Nrf 2 活性化と、それに伴う ATO

に対する感受性減弱のメカニズム

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総括

Nr f2 /K eap1 系は細胞のストレスに対する防御機構を司る主経路

として認識されており、環境中の有害物質や内因性異常代謝物か

ら細胞を守り生体の恒常性を維持する上で非常に重要な機能を担

うシステムである。また、N rf2 を活性化することによる疾患治療

への応用も行われており、今後、臨床研究の領域において発展し

ていくことが期待される。しかし、その詳細なストレス応答メカ

ニズムについて、解明されていない点が残されており、更なる基

礎研究が行われることも望まれている。筆者は神経細胞における

カルボニルストレスに対する防御機構と Nrf2 の関係に着目し研

究を行った。その結果、MG によるカルボニルストレスは Nr f2 の

活性化により軽減され、特に細胞内 GSH 量の増大がカルボニルス

トレスの抑制において重要な因子であることを明らかにした。ま

た、本研究結果は Nrf2 を標的とした神経変性疾患治療の可能性を

示すものである。

Nr f2 の活性化は、化学物質による発がんを防ぐ一方で、がん治

療において抗がん剤の作用を減弱したり、がん細胞の増殖に有利

な還元的環境を作り出すことで、がん治療の妨げとなる可能性が

危惧されている。しかし、あらゆる化学療法において Nrf2 の活性

化が悪影響を及ぼすとは限らず、新たな発がんの抑制や正常細胞

の保護作用を同時にもたらすと考えられる。従って、がん治療に

おける Nr f2 の活性化については、個々のがん治療におけるエビデ

ンスの蓄積とともに、更なる研究が必要とされているのが現状で

ある。

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筆者は急性前骨髄球性白血病 (AP L)に対し、治療薬として用い

られる三酸化ヒ素 (ATO )と N rf2 の関係に注目した。AP L の治療は

全トランスレチノイン酸製剤が第一選択薬であるが、再発・難治

例では ATO が第一選択薬として用いられる。 AP L に対する ATO

による治療は最後の砦とも言えるもので、がん細胞の薬物に対す

る感受性を確保し、治療効率を上げることは重要な課題である。

Nrf2 は前述したようにがん細胞の薬剤耐性に関与し、ある種のサ

プリメントや医薬品により活性化されることがある。そこで、筆

者は AP L 細胞における ATO に対する感受性が、 Nr f2 の活性化に

より、どのような影響を受けるかという点に焦点を当て、研究を

行った。結果として、 Nrf 2 を活性化することで MRP を介したヒ

素の細胞外への排出を促進することで、ATO の抗がん作用を妨害

することが示された。また、細胞内 GSH 量の増大が Nrf2 活性化

による薬効減弱作用の鍵となる応答であることを明らかにした。

この事実は、多種多様な抗がん剤の中でも GSH による解毒を受け

る薬剤の作用は、Nrf2 活性化による効果の減弱を受けやすい可能

性を示唆している。

以上の研究から、Nrf2 の活性化には両刃の剣ともいうべき側面

があることが改めて認識されると共に、 GSH 濃度の上昇が Nr f2

関連のストレス応答において大きく寄与するものであることが明

らかとなった。更に、Nr f2 活性化作用を持つ医薬品やサプリメン

トを服用する際には、併用される他の医薬品の効果を低下させる

可能性を考慮し、統合的な薬物治療計画において N rf 2 が適切にコ

ントロールされることが期待される。

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また、本研究は N r f2 制御系の 1 つの側面を明確にしたが、今後

Nrf2 活性化の有用性とリスクについて更なる研究が行われ、N rf2

制御系をより深く理解することで健康維持と薬物治療の両面で有

効活用されることが望まれる。

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実験の部

材料

・ SH-SY5Y 細胞は ATCC より購入した。

・Dulb ecco ' s mod i f i ed Eagl e ’s med ium (DMEM)/ Ham 's F - 12 (F1 2) は

L i f e Tech no lo gies より購入した。

・ウシ胎児血清 (FBS)は S IG MA (第 1 章 )または J RH (第 2 章 )より

購入した。

・ Pen ic i l l i n -S t rep tom ycin , Liqu id (pen ic i l l i n 10 000 Uni t / m L,

s t r ep tom ycin 1 0000 µg/m L) は Li fe Techno lo gies より購入した。

・ 0 .5 g / L トリプシン / 0 .53 mmol / L EDTA 溶液はナカライテスクよ

り購入した。

・ Dimeth yl su l fox ide ( DMSO )はナカライテスクより購入した。

・ Carnos i c ac id ( C A)は EN ZO より購入した。

・ 1- (2 -C yano-3 ,12 , 28 - t r i ox oo lean a -1 ,9 (11) -d i en -28- yl ) -1 H- imidazo le

(CDDO - Im)は R &D S ys tems より購入した。

・ Buth ion in e su l fo x imine ( BSO)は Si gma -Ald r i ch より購入した。

・ Meth yl g l yox a l は Rabban i ら に よ り 報 告 さ れ た 方 法 に 従 い

Meth yl g l yox a l 1 ,1 - d imeth yl a ce t a l (S i gma -Ald r i ch より購入 )から

合成した 1 0 4 )。

・ Hoechs t 33 342 は同仁化学研究所より購入した。

・ Prop id ium iod ide は Sigm a- Aldr i ch より購入した。

・ 10 × R IPA buffe r は Merck Mi l l i po r e より購入した。

・ 100 × プロテアーゼインヒビターカクテルはナカライテスクよ

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り購入した。

・ NE-PER ® Nuc l ea r and C ytop l asmic Ex t rac t ion Reagen t は Thermo

Fi she r Sc i en t i f i c より購入した。

・ Pie rce BC A Pro t e in Assa y Ki t は T hermo Fi she r Sc i en t i f i c より購

入した。

・ 6×SDS Sample Buff e r はナカライテスクより購入した。

・ Pre -S ta in ed P ro t e in Mark ers ( Bro ad Range) はナカライテスクよ

り購入した。

・ Magi cMark™ X P Wes te rn P ro t e in S t anda rd は Th e rmo Fi she r

Sc i en t i f i c より購入した。

・ Ez Fas t Blo t は ATTO より購入した。

・ Tween20 はナカライテスクより購入した。

・ブロックエースは DS ファーマバイオメディカルより購入した。

・ Can Get S i gn a l ® So lu t ion 1、 2 は東洋紡より購入した

・ Lumin a ta Cr escendo Wes te rn HRP s ubs t ra t e は Merck Mi l l i po re よ

り購入した。

・ St r ipp ing So lu t io n は和光純薬工業より購入した。

・ Tr i ronX- 100 はナカライテスクより購入した。

・スルホサリチル酸は和光純薬工業より購入した。

・グルタチオン還元型 (GSH)は和光純薬工業より購入した。

・ 5 ,5 ’ -d i th iob i s ( 2 - n i t robenzo ic a c id ) ( DTN B)は和光純薬工業より購

入した。

・ Q Iazo l Lys i s Reagen t は Q IAGE N より購入した。

・ Rever Tr a Ace ® q PCR RT Mas te r Mi x は東洋紡より購入した。

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・ THUN DERB IRD ® P rob e qPCR Mix は東洋紡より購入した。

・ TaqMan ® G ene E x pres s ion Mas t e r M ix は Appl i ed Bios ys t ems より

購入した。

・ D-lac t a t e Co lo r i met r i c Assa y Ki t は BioVis ion より購入した。

・ N B4 細 胞 は Deut sch e Samm alu ng von Mik roorgan i smen und

Ze l lku l tu ren より購入した。

・ RPM I164 0 培地は和光純薬工業より購入した。

・三酸化ヒ素 (ATO )は米山薬品工業より購入した。

・ヒ素標準液 (As1 000 )は和光純薬工業より購入した。

・ Ul t rapu r ® 60%硝酸は Mer ck より購入した。

・N eon™ Tr ans f ec t ion S ys t em 100 µ L Ki t (Neon ® チューブ、Neo n®

チ ッ プ 、 Res uspens ion Bu ff e r R 、 Elec t ro l yt i c Bu ffe r E2 ) は

In v i t ro gen より購入した。

そ の 他 一 般 試 薬 は ナ カ ラ イ テ ス ク 、 和 光 純 薬 工 業 ま た は

Sigma- Aldr i ch より購入した。

方法

第 1 章 神経細胞株における Nrf 2 の活性化がメチルグリオキサー

ル誘導性のカルボニルストレスに与える効果

1 -1 . SH-SY5 Y 細胞の培養

SH-SY5Y 細胞は 25 cm 2 または 75 cm 2 培養フラスコ (TPP)に

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DMEM/F12 培地 (1 0% FBS、 25 U/m L ペニシリン、 25 µ g/m L ストレ

プトマイシン含有 ) 中 1 × 10 4 c e l l s / cm 2 となるように播種し、37 °C、

5% CO 2 に設定したインキュベーター内で培養を行った。SH-SY5Y

細胞は 60 ~ 80 % conf lu en t となった時点で次の方法で継代を行っ

た。まず、培養培地を全量 50 m L 遠沈管に移し、 120 × g で 5 分間

遠心分離後、上清を除去し、元の培地液量と同程度の DMEM/F1 2

培地で懸濁した。培地除去後のフラスコに対し PBS を静かに加え

て細胞の洗浄を行った。フラスコ内の PBS をアスピレーターで除

去した後、 0 .025 %トリプシン溶液を細胞全体に広がるように加え

て、 37 °C で 3 分間インキュベートした。顕微鏡で SH-SY5Y 細胞

がフラスコから剥離しているのを確認後、 50 m L 遠沈管の懸濁液

をフラスコに加え、ピペッティング操作により注意深く細胞を完

全に剥離させ、細胞塊をほぐした。この細胞懸濁液の 15 µ L を採

り、等量のトリパンブルー細胞染色液と混合し、血球計算盤にて

セ ル カ ウ ン ト を 行 っ た 。 そ の 後 、 DMEM/F12 培 地 で 1 × 10 4

ce l l s / cm 2 となるように細胞懸濁液を希釈して、 25 cm 2 または 75

cm 2 細胞培養フラスコに播種した。

1 -2 . SH-SY5 Y 細胞に対する CA、 CD DO- Im、 BSO、M G 処理

SH-SY5Y 細胞を D MEM/F12 培地中 4 × 10 4 ce l l s / cm 2 となるよう

に 96 wel l p l a t e、6 wel l p l a t e、6 cm d i sh または 10 cm d i sh (The rmo)

に播種し、 24 時間、 37 °C、 5% C O 2 に設定したインキュベーター

内で培養を行った。培養培地を除去し、 DMEM/F12 培地、または

各種濃度の CA、CDDO- Im、 BSO を含有する DMEM/ F12 培地を細

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胞が剥離しないように注意深く添加した後、実験毎に設定した時

間 (0 .5 ~ 2 4 時間 )、 37 °C、 5% CO 2 に設定したインキュベーター内

で培養を行った。更に MG を曝露する場合、培養培地を除去し、

DMEM/F1 2 培地を細胞が剥離しないように注意深く添加した後、

103 mM MG 水溶液を PBS で適宜希釈して培地中に添加し、一定

の時間 37 °C、 5 % CO 2 に設定したインキュベーター内で培養を行

った。

1 -3 . 蛍光染色法による細胞毒性の評価 (Hoechs t 33342 / P I s t a in in g

as sa y)

96 w el l p l a t e (培地 100 µ L)中で各条件にて培養した S H-SY5Y 細

胞に 2 µ g/m L Hoechs t 33342 / 2 µ g/m L prop id ium iod ide (P I)含有 PBS

を加え、プレートミキサー (MPX -96 ; IWAK I)で混合した後、 37 °C

で 30 分間インキュベートし た後、 IN Ce l l An a l yz er 220 0 (GE

Hea l th car e )により解析した。Ho echs t 33342 は全細胞を、P I は死細

胞を染色するので、 P I-pos i t i ve ce l l s [ %] (死細胞の割合 )を下に示

す式で算出した。

PI‐ positive cells [%] = PI‐ positive cells

Hoechst 33342‐ positive cells × 100

1 -4 . Wes te rn Blo t t i ng 用全細胞タンパク質抽出サンプルの調製

6 cm d i sh 中で各条件にて培養した SH-SY5Y 細胞について、上

清を除去し、 2 m L の P BS を 6 cm d i sh に添加し、オートピペット

の 1 m L 用チップの裏側を使って細胞を剥離させ、15 m L 遠沈管に

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回収した。 6 cm d i sh を 2 m L の P BS で洗い込み、 15 m L 遠沈管に

加え、細胞懸濁液を 1000 × g で 4 ° C、 5 分間遠心分離した。上清

を除去し、 PBS 1 m L 沈殿を再懸濁後、 1 .5 m L チューブに移した

後、1000 × g で 4 ° C、5 分間遠心分離を行った。上清を除去し、P BS

を 1 m L 加えて再懸濁し、再度 1000 × g で 4 °C、5 分間遠心分離を

行い、丁寧に上清を除去した。残った沈殿に対しプロテアーゼイ

ンヒビター含有 R IPA buffe r を 50 µ L 添加し、 10 秒間 vor t ex を行

った後に氷上で 1 0 分間静置した。 14000 × g で 4 °C、 15 分間遠心

分離を行い、上清の細胞抽出液を新しい 1 .5 m L チューブに移し、

これを Weste rn Bl o t t i ng 用細胞全タンパク質抽出サンプルとした。

1 -5 . 細胞質画分及び核画分の調製

6 cm d i sh 中で各条件にて培養した SH-SY5Y 細胞について、上

清を除去し、 2 m L の P BS を 6 cm d i sh に添加し、オートピペット

の 1 m L 用チップの裏側を使って細胞を剥離させ、15 m L 遠沈管に

回収した。 6 cm d i sh を 2 m L の P BS で洗い込み、 15 m L 遠沈管に

加え、細胞懸濁液を 1000 × g で 4 ° C、 5 分間遠心分離した。上清

を除去し、 PBS 1 m L で沈殿を再懸濁後、 1 .5 m L チューブに移し

た後、 1000 × g で 4 °C、 5 分間遠心分離を行った。上清を除去し、

PBS 1 m L で再懸濁し、再度 1000 × g で 4 °C、 5 分間遠心分離を行

い、丁寧に上清を除去した。この沈殿について、N E-P ER ® Nu c lea r

and C ytop lasmic E x t rac t ion Reagen t の推奨プロトコールに従って

細胞質 と 核画 分 の抽出 を行っ た 。 得ら れた 各 抽 出液を West e rn

Blo t t i n g 用の細胞質及び核画分サンプルとした。

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1 -6 . タンパク質の定量

タンパク質の定量は Pie rce BC A Pro te in Ass a y Ki t を用いた BCA

法で行った。 BS A 標準液とサンプルの希釈系列を調製し、 10 µ L

ずつ 96 wel l p l a t e の各 wel l に入れ、そこに Reagen t A : Reagen t B

(50 : 1 )の混合液を 200 µ L ずつ添加し、 30 分間 37 °C にてインキ

ュベート後 M ICROP LATE READ ER Ben chmark ( B IO- RAD)により

570 nm の吸光度を測定した。BSA 標準液の吸光度から検量線を作

成し、各サンプルのタンパク質濃度を求めた。

1 -7 . Wes te rn B lo t t i ng

泳動用サンプルを全タンパク質では 8 ~ 10 µg p ro t e i n / Lane、核

画分では 3 µ g p ro t e in / Lan e となるように各抽出に用いた buff e r と

Mil l iQ 水で希釈し、 6×SDS Sample b u ff e r 1 .67 µ L を加えて全量を

10 µ L に調製し、9 5 °C で 3 分間加熱した。この泳動用サンプルを

5 ~ 20%グラディエントポリアクリルアミドゲル ( e -パジェル ® 5 ~

20% 18 検体用 ; ATTO)で展開した。分子量マーカーは Pre -S ta in ed

P ro te in Marke rs (Broad Ran ge )と M agicMark™ XP Wes te rn P ro t e in

Standard を使用した。

泳動後のゲルから PVDF 膜 ( Immo bi lon -P ; Merck Mi l l i po re )への

タンパク質の転写はセミドライ式転写装置 (W SE- 4020 ホライズ

ブロット 2M -R; ATTO)を用いて行った。 PVD F 膜はメタノールに

約 1 分間浸した後、転写 bu ff e r ( Ez Fas t Blo t )に 30 分間以上浸すこ

とで平衡化した。泳動終了後、セミドライ式ブロッティング装置

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上に陽極側から順に、転写 buffe r に浸したろ紙 3 枚、 PVDF 膜、

ポリアクリルアミドゲル、転写 buff e r に浸したろ紙 3 枚を重ね、

均等に気泡を抜いた後、陰極をセットして 4 mA/cm 2 となるように

30 分間通電し転写を行った。

転写終了後、 PVD F 膜を 0 .1 % Tween 20 含有 PBS (TPBS)中で 10

分間振とうし、その後 4%ブロックエースで 1 時間ブロッキング

を行った。ブロッキング後、 TPBS 中で 10 分間振とう洗浄した

PVDF 膜を Can Ge t S igna l ® So lu t ion 1 で一定濃度に希釈した一次

抗体に浸し、 4 ° C で一晩または室温で 1 時間反応させた。 PVD F

膜を TPBS 中で 1 0 分間の振とうを 3 回行うことで洗浄し、Can G et

S igna l ® So lu t ion 2 で一定濃度に希釈した二次抗体に浸し、室温で

1 時間振とう攪拌しながら反応させた。 PVD F 膜を T PBS 中で 10

分間の振とうを 3 回行うことで洗浄した後、発光試薬 ( Lumin a ta

Crescendo Wes te rn HRP subs t r a t e )に均一に浸した後に ChemiDoc

Touch ( B IO-RA D)にて検出を行った。

β - ac t in によるリプロービングでは、検出後の PVD F 膜を TPBS

にて 10 分間振とう洗浄し、15% H 2 O 2 /PBS 溶液中で 3 0 分間振とう

することで HRP を失活させた。PV DF 膜を TPBS にて 10 分間振と

う洗浄した後、ブロッキング以降の操作を行った。

Lamin B1 によるリプロービングでは、検出後の PVDF 膜を TPBS

にて 10 分間振とう洗浄し、 St r ipp i ng So lu t ion 中で 1 0 分間強めに

振とうした。 PVD F 膜を TPBS 中での 5 分間の振とうを 3 回行う

ことで洗浄した後に、ブロッキング以降の操作を行った。

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以下に用いた抗体を示す。カッコ内は希釈倍率を示している。

一次抗体

・ Ant i -CE L, mous e monoc lona l (1 :200 ) Cosmo Bio

・ Ant i -MG- H1, mo use monoc lon a l (1 : 1000) Ce l l Bio l abs

・ Ant i -β - ac t in , mo noc lona l , p e rox idas e -co n ju ga ted (1 :10 000) Wako

・ Ant i -Nr f2 , r abb i t po l yc lona l (1 :200) San ta Cruz Bio t echno log y

・ Ant i - Lamin B1 , r abb i t monoc lo na l , (1 :1000) Ce l l S igna l in g

Techno lo g y

二次抗体

・ HRP an t i -mous e IgG (1 :10 000) Vec to r Labo ra to r i es

・ HRP an t i - r abb i t IgG (1 :10000 または 1 :4000) Vec to r Labor a to r i es

※ Nrf2 検出では 1 : 10000、Lamin B1 検出では 1 :4000 の希釈倍率

にて行った。

1 -8 . 細胞内 GSH 量の定量

細胞内 GSH 量は DTN B 法によって測定した 1 0 5 )。6 wel l p l a t e 中

で各条件にて培養した SH-SY5Y 細胞について、上清を除去し、0 .6

m L の PBS を各 w el l に添加し、オートピペットの 1 m L 用チップ

の裏側を使って細胞を剥離させ、1 . 5 m L チューブに回収した。wel l

を 0 .6 m L の PBS で洗い込み、 1 .5 m L チューブに加え、細胞懸濁

液を 1000 × g で 4 ° C、5 分間遠心分離した。上清を除去し、PBS 500

µ L で沈殿を再懸濁後、1000 × g で 4 °C、5 分間遠心分離を行った。

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上清を除去し、 P BS 100 µ L で再懸濁し、 10000 rpm で 4 °C、 5 分

間 遠 心 分 離を 行い 、 丁 寧 に上 清を 除 去 し た 。 この 沈 殿 を Lys i s

bu ff e r [プロテアーゼインヒビター、 0 .5% Tr i ro nX -1 00、 0 .5 mM

EDTA 含有 20 mM HEPES (pH =7 .0 ) ] 5 5 µ L で懸濁し、 1 分間 vor t ex

により撹拌した後、15000 rpm で 4 ° C、5 分間遠心分離した。上清

を 10 µ L 分取し、タンパク質定量用のサンプルとした。残りの溶

液に対し、 25 %スルホサリチル酸を 5 µ L 加え、 10 秒間 vor t ex し

た後、15000 rpm で 4 °C、 5 分間遠心分離した。 96 w el l p l a t e に 2 0

mM EDTA 含有 0 . 25 M Tr i s -HCl Buff e r (p H=8 .2 )を 150 µ L 入れ、こ

こに遠心分離後の溶液または 100 µ M GSH 標準液 (1 mM GSH/PBS

溶液 10 µ L、 Lys i s Buffe r 81 µ L、 2 5 %スルホサリチル酸 9 µ L の混

液 )を 30 µ L 加え混合した。この混液に 10 mM DTNB/メタノール

溶液を 3 µ L 添加、 p la t e mix er で混和し、 15 分間室温で放置した

後、M ICROP LAT E READER Benchmark ( B IO-RA D)により 415 nm

の吸光度を測定し、 100 µM GSH 標準液の吸光度との比からサン

プル中 GSH 濃度を求めた。

1 -9 . t o t a l RNA の調製と、 rev ers e t r ansc r ip t ion -定量 P CR (RT-qPCR)

による遺伝子発現量の解析

6 we l l p l a t e 中で各条件にて培養した SH-SY5Y 細胞について、

上清を除去し、 0 . 6 m L の P BS を各 wel l に添加し、オートピペッ

トの 1 m L 用チップの裏側を使って細胞を剥離させ、 1 .5 m L チュ

ーブに回収した。 wel l を 0 .6 m L の PBS で洗い込み、 1 .5 m L チュ

ーブに加え、細胞懸濁液を 1000 × g で 4 °C、5 分間遠心分離した。

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丁寧に上清を除去し、沈殿に Q Iazo l Lys i s Reagen t 500 µ L を添加

し、テルモ注射針 26G× 1 / 2 ”を付けたテルモシリンジ 1 m L を用い

て 7 回吸排することによってホモジナイズした。クロロホルムを

100 µ L 添加し、 1 5 秒間激しく混合した後 2 分間室温で静置した。

12000 × g で 4 °C、1 5 分間遠心分離後、上清 200 µ L を慎重に取り、

新しい 1 .5 m L チューブに移した。この上清に 2-プロパノール 250

µ L を加え、十分に vor t ex で撹拌し、10 分間室温で静置後、12000

× g で 4 °C、1 0 分間遠心分離し、上清を除去した。この沈殿を 75%

エタノール 500 µ L で懸濁し、75 00 × g で 4 °C、5 分間遠心分離後、

上清を除去することで洗浄した。この洗浄を 2 回行った後、沈殿

を Nuclease F ree 水 30 µ L で溶解し、 t o t a l RNA 溶液とした。得ら

れた t o t a l RN A 溶液の 260 nm における吸光度を N an o -200 Nuc l e i c

Ac id Ana l yze r (A R BROWN)で 測 定 し 、 RNA の 定 量 (RNA 濃 度

[ µg/m L] =A2 60×40 )を行った。

得られた t o t a l RN A から Rev er Tr a Ace ® qPCR RT Mas t e r Mix を用

いた逆転写反応により cDN A を合成した。 t o t a l RN A は使用前に

65 °C で 5 分間インキュベートし、その後氷上で急冷した。 PCR

用サンプルチューブに Nucl eas e F ree 水で 12 .5 n g/µ L となるように

希釈した t o t a l RN A 16 µ L と 5 × RT Mas te r Mix 4 µ L を入れ、サー

マ ル サ イ ク ラ ー ( GeneAmp PCR S ys t em 2400 ; Perk in Elmer )に て

37 °C で 15 分間、 50 °C で 50 °C で 5 分間、 98 °C で 5 分間反応さ

せ、最後に 4 °C に冷却し、これを Nuclease Fr ee 水で 1 /10 希釈し

たものを PCR 用 cDNA 溶液として用いた。

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定量 PCR は TaqMan プローブを用いたリアルタイム P CR 法で行

った。PCR 用 8 連チューブ内に T HU NDERB IRD ® P robe qPCR Mix 5

µ L、50x ROX r e f e rence d ye 0 .2 µ L、N uc lease Fr ee 水 1 .8 µ L、TaqM an ®

Gene Ex pres s ion M as te r Mix 0 .5 µ L、 cDN A 2 .5 µ L となるように入

れ、PCR 反応を行った。PCR 反応は 7300 Fas t Rea l - Time PCR S ys t em

(App l i ed Bios ys t em s)装置にて、95 °C 1 分間、 [ 94 °C 15 秒間、60 °C

1 分間 ] を 40 サイクルで行った。

使用した TaqMan ® Gene Ex pres s ion Mas te r Mix を以下に示す。

HO-1 ( a s s a y ID , Hs 01110251_m1 )

GCLC ( a s sa y ID, H s00155249_m1)

GCLM ( a s s a y ID , H s00978073_m1

xCT ( a s sa y ID, Hs0 0921938_m1)

GLO1 ( a s s a y ID , H s00198702_m1)

AKR1B1 ( a s s a y ID, Hs00739326_m1 )

AKR7A2 (Ass a y ID , Hs00761005_s1 )

GAPDH ( a s s a y ID , Hs02758991_ g1 )

1 -10 . D -乳酸の測定

10 cm d i sh 中で各条件にて培養した SH-SY5Y 細胞について、上

清を除去し、 3 m L の P BS を 10 cm d i sh に添加し、オートピペッ

トの 1 m L 用チップの裏側を使って細胞を剥離させ、1 5 m L 遠沈管

に回収した。10 cm d i sh を 3 m L の PBS で洗い込み、15 m L 遠沈管

に加え、細胞懸濁液を 1000 × g で 4 °C、 5 分間遠心分離した。上

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清を除去し、P BS 500 µ L で沈殿を再懸濁後、1 .5 m L チューブに移

した後、1000 × g で 4 °C、5 分間遠心分離を行った。上清を除去し、

PBS 200 µ L で再懸濁し、再度 100 0 × g で 4 °C、 5 分間遠心分離を

行い、丁寧に上清を除去した。この沈殿を Assa y Bu ff e r (プロテア

ーゼインヒビター含有 ) 100 µ L で懸濁し、氷上で Hand y Son i c

(TOM Y SE IK O)により超音波破砕 (p ower 8、 1 秒間 1 0 パルス、イ

ンターバル 1 秒間 )を行った後、 100 00 × g で 4 °C、 10 分間遠心分

離を行った。この上清を D-乳酸測定用のサンプルとした。また、

その一部を分取しておき、タンパク質定量を行った。

D-乳酸の測定は D -lac t a t e Co lo r imet r i c Assa y Ki t ( BioVis ion)によ

り行った。 D -乳酸標準液の希釈系列を作成し、 50 µ L ずつ 96 wel l

p l a t e の各 w el l に入れ、別の w el l に Assa y Buffe r で 1 /5 希釈した

サンプルを 50 µ L に入れた。これらに D-lac t a t e Ass a y Buffe r 46 µ L、

D-lac t a t e Subs t r a t e Mix 2 µ L、 D-lac t a t e Enz ym e Mix 2 µ L を加え、

30 分間室温でインキュベートした。ネガティブコントロールは

D-lac t a t e E nz yme Mix を入れず、D-l ac t a t e Ass a y Buffe r を 48 µ L を

加えた。インキュベート後、 M IC ROP LAT E READE R Ben chmark

(B IO-RA D)により 450 nm の吸光度を測定した。D-乳酸標準液の吸

光度から検量線を作成し、各サンプルの D-乳酸濃度を求めた。

1 -11 . 統計処理

デ ー タ は 平 均 値 ±標 準 偏 差 で 表 示 し た 。 有 意 性 の 検 定 に は

Tuke y- K ramer 検定を用い、 P < 0 .05 を統計的に差異があるものと

した。

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第 2 章 急性前骨髄球性白血病細胞株 NB4 の三酸化ヒ素 (ATO)に

対する感受性における Nr f2 活性化の影響

2 -1 . N B4 細胞の培養

NB4 細胞は TPP 製培養フラスコに RPM I164 0 培地 ( 10% FBS、50

U/m L ペニシリン、50 µ g/m L ストレプトマイシン含有 )中にて 37 °C、

5% CO 2 に設定したインキュベーター内で培養を行った。細胞の密

度が 0 .5 ~ 10 × 10 5 ce l l s /m L となるように維持した。

2 -2 . N B4 細胞に対する CA、 ATO、 BSO、MK-571 処理

NB4 細胞を RPM I1 640 培地中 0 .5 ~ 1 × 10 5 ce l l s /m L となるよう

に 96 wel l p l a t e、6 wel l p l a t e、6 cm d i sh または 10 cm d i sh (The rmo)

に播種し、CA、BS O を適宜希釈して培地中に添加し、指定の時間

37 °C、 5% CO 2 に設定したインキュベーター内で培養を行った。

その後、 ATO や M K-571 を適宜希釈して培地中に添加し、指定の

時間 37 °C、 5% CO 2 に設定したインキュベーター内で培養を行っ

た。

2 -3 . 蛍光染色法による細胞毒性の評価 (Hoechs t 33342 / P I s t a in in g

as sa y)

96 wel l p l a t e (培地 100 µ L)中で各条件にて培養した NB4 細胞に

2 µ g/m L Ho echs t 33342 / 2 µ g/m L p ro p id ium iod ide (P I)含有 PBS を

加え、プレートミキサーで混合した後、37 °C で 30 分間インキュ

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ベートした。混液 100 µ L を新しい 96 wel l p l a t e に移し、 20 分間

静置した後、IN Ce l l Ana l yz er 2200 により解析した。Ho echs t 33342

は全細胞を、P I は死細胞を染色するので、P I-pos i t i ve ce l l s [ %] (死

細胞の割合 )を下に示す式で算出した。

PI‐ positive cells [%] = PI‐ positive cells

Hoechst 33342‐ positive cells × 100

2 -4 . 細胞質画分及び核画分の調製

6 cm d i sh 中で各条件にて培養した NB4 細胞を 15 m L 遠沈管に

回収した。 6 cm d i sh を 1 m L の P BS で洗い込み、 15 m L 遠沈管に

加え、細胞懸濁液を 500 × g で 4 °C、 5 分間遠心分離した。上清を

除去し、 PBS 1 m L で沈殿を再懸濁後、 1 .5 m L チューブに移した

後、500 × g で 4 °C、3 分間遠心分離を行った。上清を除去し、PBS

1 m L で再懸濁し、再度 500 × g で 4 °C、 3 分間遠心分離を行い、

丁寧に上清を除去した。この沈殿について、N E-PER ® Nuc lea r and

C ytop lasmi c Ex t rac t ion Reagen t の推奨プロトコールに従って細胞

質と核画分の抽出を行った。得られた抽出液を Weste rn Blo t t i n g

用の細胞質及び核画分サンプルとした。

2 -5 . タンパク質の定量

第 1 章 1-7 .に準じて行った。

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2 -6 . Wes te rn Blo t t i ng

基本的に第 1 章 1- 8 .に準じて行った。泳動用サンプルを細胞質

画分では 10 µ g p r o t e in /8 .3 µ L、核画分では 3 µ g p ro t e i n / 8 .3 µ L と

なるように各抽出に用いた buffe r と Mil l iQ 水で希釈し、 6×SDS

Sample bu ffe r 1 .67 µ L と合わせて全量を 10 µ L に調製したものを

各レーンにアプライした。

以下に用いた抗体を示した。カッコ内は希釈倍率を示している。

一次抗体

・ Ant i -Nr f2 ※第 1 章 1-8 .参照

・ Ant i - Lamin B1 ※第 1 章 1-8 .参照

・ Ant i -HO -1 , r abb i t po l yc l ona l (1 :100 0) Enzo Li fe Sc i en ce

・ Ant i -GC LM, rab b i t po l yc l ona l ( 1 :5 00) San ta C ruz Bio t echno lo g y

・ Ant i -β - ac t in ※第 1 章 1-8 .参照

二次抗体

・ HRP an t i - r abb i t IgG (1 :10000 または 1 :4000) ※第 1 章 1-8 .参照

※ Nrf2、 GC LM の検出では 1 :10000、 Lamin B1、 H O- 1 の検出で

は 1 :4000 の希釈倍率にて行った。

2 -7 . 細胞内 GSH 量の定量

細胞内 GSH 量は DTN B 法によって測定した。 6 wel l p l a t e 中で

各条件にて培養した NB4 細胞について、 1 m L ずつ 1 .5 m L チュー

ブ 2 本に回収し、 500 × g で 4 °C、 3 分間遠心分離した。上清を除

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去し、 PBS 1 m L を用いて沈殿を懸濁させ、細胞を 1 本の 1 .5 mL

チューブにまとめ、 500 × g で 4 °C、 3 分間遠心分離を行った。上

清を除去し、 P BS 100 µ L で再懸濁し、 10000 rpm で 4 °C、 5 分間

遠心分離を行い、丁寧に上清を除去した。抽出以降の操作は第 1

章 1-9 .に準じて行った。

2 -8 . 誘導結合プラズマ -質量分析計 ( ICP -MS )による細胞内ヒ素の

定量

6 we l l p l a t e 中で各条件にて培養した NB4 細胞について、 1 m L

ずつ 1 .5 m L チューブ 2 本に回収し、 500 × g で 4 °C、 3 分間遠心

分離した。上清を除去し、 PBS 50 0 µ L を用いて沈殿を懸濁させ、

細胞を 1 本の 1 .5 m L チューブにまとめ、500 × g で 4 °C、3 分間遠

心分離を行った。上清を除去し、 P BS 500 µ L で再懸濁し、 500 × g

で 4 °C、3 分間遠心分離を行い、上清を除去することで洗浄した。

この洗浄操作を 2 回行った。この沈殿に 0 .1% SDS、1% Tr i ton X -100、

プロテアーゼインヒビター含有 50 m M Tr i s - HCl (pH =7 . 4 ) を 50 µ L

添加し、撹拌後、氷上で 10 分間放置した。 15000 × g で 4 °C、 10

分間遠心分離を行い、上清を新たな 1 .5 m L チューブに移した。こ

の抽出液をヒ素測定用のサンプルとし、同時にその一部を分取し、

タンパク定量を行った。

ヒ素標準液の希釈系列を作成し、ヒ素標準液またはサンプルを

15 m L チューブに 20 µ L 入れた。6 0 %硝酸を 100 µ L 添加し、80 °C

で 90 分間加熱した後、Mil l iQ 水を 2 .88 m L と混和し、この混液中

の総ヒ素濃度を ICP -MS (E lan DRC I I , Pe rk inElmer )で測定した。

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ICP -MS の条件を下に示す。

プラズマ条件 ICP R F 出力 1500 W

プラズマガス流速 17 L/ min

補助ガス流速 1 .1 L/ min

ネ ブ ラ イ ザ ー ガ ス 流 速

(Ar )

0 .9 ~ 1 .0 L/ min

(毎回最適化する )

レンズ電圧 5 .25 V

DRC 条件 セルガスの種類 O 2

セルガスの流量 0 .6 m L/ min

2 -9 . t o t a l RNA の調製と、 rev ers e t r ansc r ip t ion -定量 P CR (RT-qPCR)

による遺伝子発現量の解析

6 we l l p l a t e 中で各条件にて培養した NB4 細胞について、 1 m L

ずつ 1 .5 m L チューブ 2 本に回収し、500 × g で 4 °C、3 分間遠心分

離した。上清を除去し、PBS 1 m L を用いて沈殿を懸濁し、細胞を

1 .5 m L チューブ 1 本にまとめ、 500 × g で 4 °C、 3 分間遠心分離を

行った後、上清を除去した。Q Iazo l の添加以降の操作は第 1 章 1- 10 .

に準じて行った。

使用した TaqMan ® Gene Ex pres s ion Mas te r Mix を以下に示す。

HO-1 ※第 1 章 1- 10 .参照

GCLC ※第 1 章 1- 10 .参照

GCLM ※第 1 章 1 -10 .参照

Page 76: 転写因子 Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答転写因子Nrf2 の活性化により誘導される細胞応答 ~保護効果の増強と、化学療法に対する感受性の変化~

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xCT ※第 1 章 1-1 0 .参照

GSTP1 ( a s s a y ID , Hs00168310_m1 )

MRP1 ( a s sa y ID, H s00219905_m1)

MRP2 ( a s sa y ID, H s00166123_m1)

MRP4 ( a s sa y ID, H s00988717_m1)

GAPDH ※第 1 章 1-10 .参照

2 -10 . smal l i n t e r fe r ing RN A (s iRN A)トランスフェクションによる

Nrf2 ノックダウン

NB4 細胞に対しエレクトロポレーション法により s iRN A を導入

した。 4 .4 × 10 6 c e l l s に相当する N B4 細胞培養液を 5 0 m L 遠沈管

に採取し、 120 × g で 5 分間遠心分離を行った後、上清の培地を除

去した。PBS 1 m L で懸濁し、 1 .5 m L チューブに移した後、 120 × g

で 5 分間遠心分離を行い、上清を除去した。Resusp ens ion Bu ffe r R

209 µ L で懸濁した NB4 細胞に 1 0 0 µM s iRNA ( Nrf 2 t a rge t 及び

non-spec i f i c )を 11 µ L 添加し、ピペッティングすることで混和した。

この懸濁液を Neo n t i p s (100µ L) ( Inv i t rogen) により 100 µL 採取し、

Micro Por a to r MP - 100 ( Inv i t ro gen )を用い 1400V, 10msec , 3 pu l s e の

条件で電気刺激により s iRNA の導入を行った。s iR N A 導入後の細

胞懸濁液をあらかじめ抗生物質不含の 10% FBS 含有 R PM I1640 培

地 10m L を入れておいた 10 cm d i sh に添加した。1 枚の 10 cm d i sh

当たり s iRNA 導入細胞が 200 µ L となるようにこの操作を 2 回繰

り返した後、 s iRN A 導入後の細胞を 37 °C、 5% CO 2 に設定したイ

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ンキュベーター内で 24 時間培養を行い、各実験に用いた。使用し

た s iRNA を以下に示す。

・ Nrf2 t a rge t s iRN A

S i l encer ® Se l ec t P r e -des i gned s iRN A ( Ambion)

- Ta rge t Gen e S ymb ol : NFE2 L2

- s iRNA ID# : s949 3

- Sense : 5 ´ CAG UCUUCAUU GCUACU AAt t 3 ´

- An t i s ense : 5 ´ UU AGUA GCAAU GAA GACUG gg 3 ´

・ non-spec i f i c s iRNA

S i l encer ® Se l ec t Nega t ive Con t ro l #1 s iRNA ( Ambion)

2 -11 . 統計処理

データは平均値 ±標準偏差で表示した。有意性の検定において、

2 群間の比較では対応のない t 検定を、3 群以上の比較では一元配

置分散分析と Dun ne t t 法による事後検定または Tuke y- Kram er 検定

を用い、 P < 0 .05 を統計的に差異があるものとした。

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謝辞

本研究を遂行し学位論文をまとめるに当たり、終始懇篤なる御

指導、御鞭撻を賜りました、明治薬科大学分析化学研究室教授

小笠原 裕樹 先生に深く感謝申し上げます。

本稿作成に際し、懇切なる御指導、御教鞭を賜りました、明治

薬科大学衛生化学研究室教授 石井 一行 先生、同大学生体機能分

析学研究室教授 兎川 忠靖 先生に深く感謝致します。

本研究の遂行に当たり、貴重な御指導、御助言を賜りました、

明治薬科大学分析化学研究室准教授 鈴木 俊宏 先生に心より感

謝申し上げます。また、日々の研究だけでなく多岐にわたり御懇

意なる御指導、御助言を賜りました、同研究室助教 小池 伸 先生

に厚く御礼申し上げます。

共同研究を行うに当たり、御助言、御激励を賜り、また、細胞

を御恵与して頂きました、東京薬科大学薬学部応用生化学教室教

授 高木 教夫 先生、同教室講師 袁 博 先生に深謝致します。

本研究を遂行するに当たり、御配慮、御激励を賜りました明治

薬科大学衛生化学研究室講師 服部 研之 先生、同研究室助教

大山 悦子 先生に心から感謝の意を表します。

本研究を進めるに当たり、多くの御協力を頂きました、明治薬

科大学分析化学研究室 大学院生、卒業研究生の皆様に心より御礼

申し上げます。

最後に私事になりますが、大学院への進学に理解を示し、終始

温かく御支援を頂きました両親に心より感謝します。

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