Izumi, Kagoshima · Web view第9節 環境保全型農業や有機農業の推進 第10節...

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目 次 Contents                       

                             ページ

第1章  基本計画の基本的考え方                     1

第1節  基本計画策定の趣旨

第2節  基本計画の位置づけと役割

第3節  基本計画の対象

第2章  食料・農業・農村の現状と課題                 6

第1節  本市の特性

第2節  食料に関する現状と課題

第3節  農業に関する現状と課題

第4節  農村に関する現状と課題

第3章  食料・農業・農村の展望                   21

第4章  基本計画の目標                       22

第1節  目標とする食料・農業・農村像

第2節  基本計画の目標

第3節  目標達成のための基本的な考え方

第5章  基本的施策及び各主体の行動指針     28

第1節  本市で生産される農畜産物の信頼の確保

第2節  健全な食生活への理解の促進、地域特有の食文化の継承

第3節  農業・農村が持っている生産機能や多面的機能への理解

第4節  農業の生産基盤の整備、優良農地の確保

第5節  多様な担い手による安定的な農業経営体の育成、確保

第6節  収益性の高い農業経営、競争力のある産地の育成

第7節  地域で生産される農畜産物の地域内での流通、消費の推進

第8節  産学官共同による農業関連製品の研究開発、製品化の推進

第9節  環境保全型農業や有機農業の推進

第10節 農業・農村の持つ多面的機能を発揮するための環境整備の推進

第11節 農村における男女共同参画社会の確立

第6章  基本計画の推進体制                     40

第7章  資料編                           41

第1章 基本計画の基本的考え方

第1節 基本計画策定の趣旨          

1 国の動向

【食料・農業・農村基本計画】 

 国は、平成11年7月に「食料・農業・農村基本法」を制定し、これに基づいて制定した「食料・農業・農村基本計画」では、戦後農政の基本であった農業生産者を中心とする考え方を、消費者の視点に立った考え方へ大きく方向性を転換するなど、農業政策の大きな見直しを図っています。この基本計画は、平成27年3月末に「新たな食料・農業・農村基本計画」として見直しが行われ、「若者たちが希望を持てる強い農業と美しく活力ある農村の創出を目指す。」とされています。

施策の概要

1 食料の安定供給の確保に関する施策

  食品の安全確保と食品に対する消費者の信頼確保

2 農業の持続的発展に関する施策

  担い手の確保・育成、担い手への農地集積・集約化、農業生産基盤の整備

3 農村の振興に関する施策

  農地等の地域資源の維持・継承、都市住民との交流や移住・定住の促進

4 東日本大震災からの復旧・復興に関する施策

5 団体の再編整備等に関する施策

【農林水産業・地域の活力創造プラン】

平成25年12月に閣議決定された「農林水産業・地域の活力創造プラン」は、平成26年6月に改定され、農林水産業を産業として強くしていく「産業政策」と国土保全といった多面的機能を発揮するための「地域政策」を車の両輪として、農業・農村全体の所得を今後10年間で倍増させる目標を掲げています。

施策の概要

1 国内外の需要を取り込むための輸出促進、地産地消、食育等の推進

2020年までに農林水産物・食品の輸出額を1兆円に倍増

2 6次産業化等の推進

  2020年までに6次産業化の市場規模を10兆円に増加

3 農地中間管理機構の活用等による農業構造の改革と生産コストの削減

  今後10年間で、担い手の農地利用が全農地の約8割を占める農業構造の確立

4 人口減少社会における農山漁村の活性化

  2020年までに全国で交流人口を1300万人まで増加

2 鹿児島県の動向

  鹿児島県は、平成17年3月に「かごしま食と農の県民条例」を制定し、これに基づいて策定された「かごしま食と農の県民条例に基づく基本方針」は平成27年3月に改定されました。この基本方針では、条例に基づき「環境と調和した農業の持続的発展」、「活力あふれる心豊かな農村社会の建設」、「県民の健康で豊かな生活の向上」の3つの視点から、かごしま農業の目指す方向を掲げ、県の食、農業及び農村の振興に関し、総合的かつ計画的に推進する施策の実現に向けた展開方向として、9つの柱を設けています。

かごしま食と農の県民条例に基づく基本方針(平成27年3月策定)のポイント

1 県民の農業及び農村に対する理解促進に関する施策

2 食育及び地産地消に関する施策

 (1) 食育に関する施策

(2) 地産地消に関する施策

3 安全で安心な農畜産物の安定供給に関する施策

(1) 環境との調和に配慮した産地づくり等に関する施策

(2) 食の安全・安心対策に関する総合的施策

4 担い手確保・育成に関する施策

(1) 経営改善意欲のある農業者の確保・育成に関する施策

(2) 新たに就農しようとする者の確保・育成に関する施策

(3) 女性が農業経営において能力を発揮できる環境整備に関する施策

(4) 高齢者が活動しやすい環境整備に関する施策

(5) 集落を基礎とした農業者組織等の育成・活動促進に関する施策

5 農地利用、基盤整備等に関する施策

(1) 農地利用に関する施策

(2) 基盤整備等に関する施策

6 生産振興、販売・流通等に関する施策

(1) 需要に応じた収益性の高い農畜産物に係る情報の把握等に関する施策

(2) かごしまブランドの確立等に関する施策

(3) 農畜産物の生産振興及び銘柄産地の育成に関する施策

(4) 農畜産物の販路拡大等に関する施策

(5) 加工原料用農畜産物の安定供給体制の確立等に関する施策

(6) 観光産業及び外食産業との連携に関する施策

7 生産性向上に関する施策

(1) 農業技術の開発等に関する施策

(2) 普及指導活動の内容及び体制に関する施策

(3) 動植物の防疫体制に関する施策

8 農業災害防止等に関する施策

9 農村振興に関する施策

(1) 快適で魅力ある農村づくり

(2) 中山間地域の振興

(3) 離島地域の振興

3 本市の動向

本市は、農業者・消費者・商工業者・学識経験者等により構成される「出水市食料、農業及び農村基本条例策定検討委員会」において審議を重ね、平成23年3月に県内の市町村で初めてとなる「出水市食料、農業及び農村基本条例」(以下「基本条例」という。)を制定し、同年4月に施行しました。

基本条例では、食料・農業・農村それぞれについての基本理念を掲げ、基本理念を達成するため、市及び農業者・農業団体の役割並びに市民及び事業者の役割を示すとともに、市は10項目の基本的施策を総合的かつ計画的に推進するために、安全で安心な食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定することとしています。

出水市食料、農業及び農村基本条例の体系

基本条例では、本市の食料・農業・農村のあるべき姿を基本理念として示すとともに、農業者・農業団体、市民、食品産業の事業者、市のそれぞれの役割、市が実施する基本的施策等を定めています。

○食料、農業及び農村に対する市民の理解を深める

○性別・年齢を問わず農業者一人一人の持てる力が発揮される

○安全で安心な農畜産物の生産、流通及び消費が図られる

○本市の食料、農業及び農村が持続的に発展し、豊かで住みよい地域社会を実現する

【農業】 

○農地、農業用水等の農業資源と担い手の育成、確保等

○自然環境と調和した農業の持続的な発展

【農村】

○食料の生産のみならず多面的な機能を有する自然と人間との共生の場

【食料】

○安全で安心な農畜産物の安定的な生産と供給

○食料に対する市民の信頼の確保

○地域で生産される農畜産物の地産地消の促進

○食の重要性への理解促進、地域特有の食文化の継承

食品産業事業者

市 民

農業者・農業団体

○食料・農業・農村に関する基本的かつ総合

的な施策の推進

○食料、農業及び農村基本計画の策定

○農林業振興対策会議での審議

○食料・農業・農村が市民生活に果たす役割

の重要性についての理解

○安全で安心な食料の安定供給

○食料・農業・農村が市民生活に果たす役割

の重要性についての理解

○地域で生産される農畜産物の積極的な消費

○健康で豊かな食生活の実践

○安全な食料の生産者であり、農村における

地域づくりの主体であることの認識

○自ら生産する農畜産物の積極的な情報発信

○安全で安心な農畜産物の安定的な生産・供給

○農業・農村振興への主体的な取組

4 計画の基本的な考え方

基本計画は、本市の食料の安全・安心・安定供給及び農業・農村の持続的な発展を図るために、農業者だけでなく全ての市民が本市の食料・農業・農村について関心を持つとともに、本市の農業・農村が市民共有の貴重な財産でかつ農業・農村の振興が市民生活の充実につながることを認識し、本市の「食と農」を育むために市民が様々な形で参画する考え方を基本としています。

  

第2節 基本計画の位置づけと役割          

基本計画は、基本条例第8条に基づく計画であり、市総合計画に基づき実施される本市の食料・農業・農村に関する施策及び事業を総合的かつ計画的に推進するためのマスタープランです。

  基本計画の位置づけイメージ

出水市総合計画

                              

出水市食料、農業及び農村基本条例

連携

農政以外の分野計画

    

出水市食料、農業及び農村基本計画

                                  

農政の分野計画  

計画策定

アクションプラン(基本計画・実施計画)

第3節 基本計画の対象            

1 基本計画の対象地域

基本計画の対象地域は、市全域とします。

2 基本計画の期間 

基本計画(第Ⅰ期前期計画)の期間は、平成24年度を初年度とし、前期計画の目標年度を平成28年度、後期計画を平成29年度から平成33年度までの10か年とします。

第Ⅰ期 計画期間

平成24~33年度

第Ⅰ期 前期計画

平成24~28年度

第Ⅰ期 後期計画

平成29~33年度

第2章 食料・農業・農村の現状と課題

第1節 本市の特性              

1 位置・交通

 本市は、鹿児島県の北西部に位置し、陸の三方を阿久根市、薩摩川内市、さつま町、伊佐市及び熊本県水俣市に接しています。また、市北西部は八代海(不知火海)に面しています。

面積は、329.98km2で、鹿児島県の約3.6%を占めています。

本市は、国道3号、328号、447号、504号をはじめとする広域幹線道路網、JR九州新幹線、肥薩おれんじ鉄道などの鉄道網に恵まれた交通の要衝に位置しています。また、南九州西回り自動車道の野田ICが平成27年12月に、高尾野北ICが平成29年3月に供用開始され、平成29年度には出水ICが供用開始予定であり、北薩横断道路も含め、高速交通網の整備進展により、トラック便などを中心に県内はもとより首都圏や京阪神地区などの大消費地に多くの農畜産物が出荷されることが期待されています。

2 地勢・気候

 市域の北東部に矢筈山系(矢筈山687m)、東部に朝日岳山系(朝日岳617m)、紫尾山系(紫尾山1,067m)によって三方を山地部で囲まれており、米ノ津川、高尾野川、野田川が市域を貫流しており、八代海(不知火海)へ注いでいます。これらの河川は、扇状地と沖積面を形成しながら、近世の干拓地とともに出水平野を造り出しています。

 気候は、北西部が八代海に面し、その黒潮の影響などから比較的温暖な気候を有しており、年間平均気温は17~18℃、年間降水量は2,201㎜前後(気象庁観測値、平成18~27年の10か年平均)で、降雨は梅雨期に集中しています。また、数年に一度、台風の接近により収穫期を迎えた農畜産物が被害を受けることがあります。

3 人口

 本市の人口は54,663人[住民基本台帳(平成29年1月1日現在)]で、減少傾向にあります。世帯数は25,017世帯で、一世帯当たりの人数は2.19人となっています。また、65歳以上の高齢者の割合は、30.5%で、年々増加しており、今後の本市の社会構造に大きな影響を与えることが危惧されています。

 2015年世界農林業センサス(確定値)によると、本市の農業就業人口は2,892人で市民に占める割合は5.3%となっています。農業就業者の性別では、男性が54.0%を占め、年齢別では、65歳以上が61.3%を占めています。

 農業就業人口は、平成17年(4,507人)から10年で1,615人減少し、65歳以上の割合は、平成17年(57.7%)からの10年で3.6ポイント上昇しています。

農業就業人口(総数、女性比率、65歳以上比率)

農業就業人口(農林業センサス)

総数(人)

女性比率(%)

65歳以上比率(%)

平成12年

5,155

53.3

49.9

平成17年

4,507

50.7

57.7

平成22年

3,772

49.3

59.1

平成27年

2,892

46.0

61.3

4 産業

 本市の農業は、豊かな自然環境など諸条件に恵まれて、普通作をはじめ、野菜、果樹、植木・緑化樹、畜産等の多様な生産活動が行われ、本市の基幹産業となっています。工業は、電気機械器具・飲食料品・飼料等の製造を行う多種多様な誘致企業や地元企業が本市経済に多大な貢献をしています。特に、地域で生産された農畜産物を利用した食品製造業が多くみられます。商業は、既存の商店街の商業集積や幹線道路沿いに集積している大規模小売店舗等による活発な商業活動が行われています。観光は、特別天然記念物のツルや国の重要伝統的建造物群の武家屋敷等の様々な観光資源を活用しており、地域の活性化やイメージアップに大きな役割を果たしています。

5 土地利用

 平成27年度の本市の土地利用状況は、総面積329.98km2のうち農地59.73km2

(18.1%)、宅地17.10km2(5.2%)などとなっています。

 土地は、個人の貴重な財産であるとともに、市民生活や産業振興の根幹となるものであるため、バランスのとれた有効的な土地利用を進めていく必要があります。

 本市は、市街化区域及び用途地域を除く地域の大部分について、農業振興地域の指定を受けており、このうち、特に農業振興のために重要と位置づけられる農地等を農用地区域  (42.82km2:市域の約13.0%)に指定して、農業公共投資による農業振興を図る一方で優良農地の農業以外への土地利用を大きく制限しています。

第2節 食料に関する現状と課題              

1 食の安全・安心

食料は、私たちが生きていくために欠くことのできない大切なものです。農畜産物や食品の不正表示や輸入食品による中毒事件が発生したことなどによって、食の安全が大きく脅かされ、食の安全・安心に対する消費者の関心は大きく高まっています。

国は、生鮮食品の生産地の表示を義務付けるなど産地情報を正確に伝えるための法整備を進め、平成15年5月に食品の安全性の確保に関する基本理念等を定めた「食品安全基本法」を制定しています。

また、食品衛生法では、平成18年5月にポジティブリスト制度が導入され、リストに載っていない農薬の食品への残留が厳しく規制され、残留が検出された食品の流通が禁止されました。さらに、リストに載っている農薬でも一定限度以上の残留が検出された場合は、その食品の流通が禁止されるなど、食品衛生における残留農薬の規制が強化されています。

一方、牛肉の安全対策として、肉牛の飼育、加工、流通などの生産履歴を確認することができる「トレーサビリティ」が導入されています。このトレーサビリティは、野菜や米などの農産物においても導入が始まっており、生産履歴を管理することで農畜産物の安全・安心について消費者の信頼を確保することを目指しています。

本市の農業者・農業団体では、減化学肥料や減農薬を一体的に推進し、農畜産物でのトレーサビリティやGAP(農業生産工程管理)の導入、市場や直売所で販売する農畜産物への生産者表示など食の安全・安心に関する取組を進めており、これらの取組の拡大が課題となっております。

2 食育

我が国は、近年、社会経済構造が大きく変化する中で「食」の多様化が進展し、好きなものをいつでもどこでも入手できる便利な食生活が実現した反面、食べ残しなど「食」を大切にする心の欠如などが問題となっています。

我が国の食生活は、伝統的な米を中心に、魚、野菜、大豆などを組み合わせたものに、昭和30年代以降の経済成長とともに摂取されるようになった肉、牛乳、乳製品、油脂、果物などの食材が加わって、昭和50年代には、多様性があり栄養バランスの優れた日本型食生活が行われるようになりました。

しかしながら、その後の私たちの食生活は、米、野菜、果物の摂取量が減少する一方で、脂質の摂り過ぎ、ファストフードやインスタント食品の摂取量の増加など偏食による栄養バランスの偏りがみられています。

また、欠食などの不規則な食事の増加がみられ、例えば、朝食をほとんど食べない市民が増えており、特に20代に多く見られます。偏食や欠食などの食生活は、肥満や生活習慣病を増加させ、医療費を増大させているほか、子どもたちの心身の成長への影響が指摘されており、健全な食生活の実現に向けた取組が必要となっています。

国は、平成17年6月に「食育基本法」を制定し、これに基づき平成18年3月に「食育推進基本計画」を策定し、食育への取組を本格的にスタートしており、平成28年度から第3次計画がスタートしています。

本市では、平成21年3月に策定した「出水市食育推進計画」を平成24年3月に「第2次食育推進計画」として改定しました。

本計画では、「出水市民一人一人が、望ましい食生活を送り、食における感謝の念と地域の食に関する理解を深め、生涯にわたって健康な心と身体づくりを目指します。」を基本理念とし、①心身の健康の増進と心豊かな人間形成②食への感謝「いただきます」「ごちそうさまでした」の推進、③出水市の未来を担う元気な子どもの育成、④出水市の地域資源を活用した食育の推進、⑤市民との協働による食の安全・安心の推進の5項目を基本方針に掲げて推進することとしています。

3 流通・消費

我が国は、多くの食料を外国からの輸入に頼っており、カロリーベースの食料自給率は39%(平成27年度:農林水産省調べ)となっており、国の食料・農業・農村基本計画では、平成37年度までに食料自給率を45%とする目標を掲げています。

本市で生産された農畜産物の多くは、農業協同組合などを通じて、市場規模が大きく安定した取引量、取引価格が確保できる首都圏や京阪神地区などの大規模消費地へ出荷されています。最近では、生産者が商社や量販店と直接取引を行う(契約栽培等)一方、農畜産物直売所や量販店等において、生産者が消費者に直接販売するなど、農畜産物の流通形態の多様化がみられます。

また、地産地消やスローフードの意識の高まりとともに、安全で安心な地元の農畜産物を購入したいという消費者ニーズに応えるために、農畜産物直売所や朝市施設の開設、地産地消やスローフードをアピールした商品開発や販売方法が注目されており、本市においても、「特産館いずみ」、「新鮮市場たこの」、「野田郷村おこし屋」などの農畜産物直売所、量販店内の地産地消コーナー及び出水駅観光特産品館「飛来里(ひらり)」が人気となっています。

本市で生産された農畜産物を全て市民だけで消費することは、量的に不可能であり、また、農業生産者の所得をより多く確保するためにも取引量が多く、取引価格の高い大消費地へ農畜産物を出荷していくことが必要です。

他方、農業に対する市民の理解を促進し、顔の見える農業、地産地消、スローフードなどの市民のニーズに応えるために、農畜産物を地域に供給していく姿勢が求められており、これまでの大消費地への出荷に加えて、農業者・農業団体、流通をはじめとする食品産業事業者及び消費者の連携強化によって地域での流通及び消費を促進していくことが課題となっています。

野田郷村おこし屋

第3節 農業に関する現状と課題              

本市の農業は、恵まれた自然環境と農業に携わる人々の高い営農意欲によって、古くから地域の基幹産業として発展してきました。戦後は、食料増産を目的として、農地、農業用排水路、農道などの農業生産基盤を順次、整備するとともに、機械化、省力化を推進し、本市のみならず周辺地域の食料生産を担ってきました。

しかしながら、これまで、幾度も厳しい状況を乗り越えてきた農業は、経済の国際化などの情勢変化に伴う急激な食生活の変化や農畜産物輸入増加に伴う価格低迷などの影響を受け、農家所得が急激に減少するなど全国の生産地同様厳しい状況に陥り、農業後継者の不足や耕作放棄地の増加など、農村地域の活力が低下しています。

そこで、本市では、機械及び施設の導入による農業生産基盤の整備を支援し、また、担い手対策に関しては、土地利用型農業における国の政策が大きく変化する中で、地域の実情に応じた認定農業者、集落営農組織などの基幹的な農業者の経営力を高める支援をしています。このほか、後継者育成、農畜産物ブランド化、地産地消、遊休農地対策、産学官・農商工連携などの事業を実施しています。

ところで、人口減少等により国内市場は縮小傾向にあるなど、本市においても農業経営は極めて厳しい状況にあります。今後、厳しい経済環境の中で農業を維持、発展させるため、国・県と連携した効果的な支援施策を打ち出すとともに、農業者・商工業者・消費者と連携した農業の振興を目指していく必要があります。

(1)農業経営体(数値は農林業センサス)

  本市には、農家が2,769戸あります。このうち、主に農業所得で生計を立てている主業農家は533戸(総農家数の19.2%)、兼業農家で主に農業以外の所得で生計を立てている準主業農家及び副業的農家は1,187戸(総農家数の42.9%)、主に自己消費する農畜産物だけを生産している自給的農家は1,049戸(総農家数の37.9%)となっています。

  農家数は、平成17年から平成27年までの10年間で1,154戸減少し、特に主業農家は223戸減少しており、農業経営を継続・継承していくことが非常に厳しい状況を示しています。

  本市の農業経営は、家族単位での経営が主流ですが、経営規模の拡大や家族労働力の減少に伴い、家族以外の労働者を雇用して農業経営を営む経営体、法人化を行って社会的信用を高めた経営を行う経営体、集落単位で共同して経営を行う経営体など様々な経営体が存在しています。

農家数の推移                               (戸)

平成12年

平成17年

平成22年

平成27年

主業農家

860

756

619

533

準主業農家・副業的農家

2,032

1,791

1,484

1,187

自給的農家

1,215

1,376

1,343

1,049

総農家

4,107

3,923

3,446

2,769

主業農家 :農業所得が主(農家所得の50%以上が農業所得)で、65歳未満の農業従事者がいる農家

準主業農家:農業以外の所得が主で、65歳未満の農業従事60日以上の者がいる農家

副業的農家:農業以外の所得が主で、65歳未満の農業従事60日以上の者がいない農家

自給的農家:経営耕地面積が30a未満かつ農畜産物販売金額が50万円未満の農家

 市では、農業経営基盤強化促進法に基づいて、効率的で安定した農業経営を目指す農業者を本市の基幹的な農業者である認定農業者として認定しており、平成29年2月末現在で  507経営体を認定しています。

 一方、法人組織で農業経営を行っている経営体は市内に78法人が設立されています。

 また、農業経営基盤強化促進法の改正により、平成26年10月から青年等就農計画制度が始まり、新たに農業経営を営もうとする青年等(新規就農者)を、認定新規就農者として認定しています。

 今後の本市農業の持続的な発展を図るためには、法人化の促進、意欲ある認定農業者、認定新規就農者などが、経営規模を拡大し、より効率的で安定的な経営への転換を図るとともに、新規就農者を育成し、安定的な経営を促す制度や高齢農業者や女性農業者など多様な農業者が活躍できる場を整備していくことが課題となっています。

認定農業者数(平成29年2月末現在)                (経営体)

総 数

個 人

共 同

法 人

出水市

507

386

43

78

出水地域

249

196

18

35

高尾野地域

206

150

23

33

野田地域

52

40

2

10

    (出水市調べ)

共同:共同申請のことで、家族経営協定を締結している家族が共同で経営者となっている場合に、農業経営改善計画の認定申請を共同で行うことができ、協定を締結している家族も認定農業者になることができます。

認定農業者数の推移                         (経営体)

平成12年

平成17年

平成22年

平成27年

出水市

254

354

505

511

個人

228

309

422

391

共同

-

-

21

45

法人

21

45

62

75

認定新規就農者農業者数(平成29年2月末現在)            (経営体)

総 数

青 年

中高年

共 同

法 人

出水市

14

13

0

0

0

出水地域

12

11

0

1

0

高尾野地域

1

1

0

0

0

野田地域

1

1

0

0

0

    (出水市調べ)

青 年:18歳以上45歳未満の者

中高年:65歳未満の者であって、かつ、商工業その他の事業の経営管理に3年以上従事した者など。

認定新規就農者:農業経営基盤強化促進法(昭和55年法律第65号)第14条の4第1項に規定する青年等就農計画の認定を受けた者。

(2)農地(数値は農林業センサス)

本市の経営耕地面積は、農業以外の土地需要の増加、農業経営悪化による経営規模の縮小や農家数の減少及び消費者の米離れによる実質的な農地余りによって、平成17年(3,282ha)から平成27年(3,135ha)の10年間で147ha減少しています(農林業センサスに掲載されている経営耕地面積は、所有者による集計のため、市外で耕作している農地面積を含んでいます。)。

  農地は一度転用して非農地にすると、再び農地に戻すために労力や費用が大きくかかるため、優良農地を確保することを目的とした農地法に基づく農地転用許可制度が設けられています。農地転用制度では、市街化区域内農地は届出、農業振興地域のその他農地は許可がそれぞれ必要となっていますが、農業振興地域内の農用地は、原則として農地転用を許可しない農地とされています。

  一方、耕作放棄地は病害虫や有害鳥獣の誘因、農業用施設の管理作業への影響等、周囲の農地に対して悪影響を及ぼすことから、耕作放棄地の発生自体を抑止する施策が求められています。その解決策として、農地の有効利用を図るため、意欲ある経営体による耕作放棄地の解消や農地利用集積を図る取組が進められており、減少傾向となっています。

経営耕地面積、耕作放棄地面積、農地転用面積の推移              (ha)

平成12年

平成17年

平成22年

平成27年

経営耕地面積

3,661

3,282

3,208

3,135

耕作放棄地面積

459

592

569

517

農地転用面積

35

94

※農地転用面積の平成22年数値は、平成19年度からの3年分である。

(3)農業生産

本市の農業産出額(平成26年)は、244億円(国推計値)で県内シェアの約5.8%を占めており、県内でも有数の農業産出額を誇る農業生産都市です。

農業産出額の内訳は、畜産180億円(73.8%)、普通作物〈米類、麦類、いも等〉19億6千万円(8.0%)、果実16億円(6.6.%)、野菜16億円(6.6.%)、工芸作物〈茶、葉たばこ〉2億7千万円(1.1%)、花き1億7千万円(0.7%)、その他作物(植木・緑化樹を含む。)7億6千万円(3.1%)及び加工農産物5千万円(0.2%)となっています。

(農林水産省大臣官房統計部 市町村別農業産出額【推計】より)

本市の農業生産は、干拓地域、畑かん地域、中山間地域等に区分され、それぞれの地域環境に応じて、畜産、普通作物〈水稲、麦、いも等〉、果実、野菜、工芸作物〈茶、葉たばこ〉、花き、植木・緑化樹などが生産されています。

  本市の農業振興を図る上では、農業・農村に対する市民の理解が必要不可欠であり、農業に対する市民の認知度の向上は、大きな課題となっています。

  本市で生産される農畜産物の消費拡大、農業の情報発信などを図るため「出水市出水駅観光特産品館/飛来里(ひらり)」や「出水市農畜産物直売所/特産館いずみ」などを整備しています。また、市教育委員会は本市で生産される農畜産物を消費するための運動として「学校給食等における地産地消の推進」に取り組んでいます。

  地産地消については、事業所の取組(直売所、市場の取組、量販店内の地場産コーナー設置等)を含め、市内で生産される農畜産物を市民が購入しやすい環境作りがある程度進んでおり、基本計画に示す<農業像>の具体的な姿として例示している「地産地消の取組が盛んに行われている」についての達成度は、かなり高くなっています。

  今後も、基本計画の実現に向けて、市内で生産される農畜産物を市民が購入しやすい環境作りを進める事業を充実し、強化する必要があります。

  また、本市では、「出水市大産業祭」、「JA鹿児島いずみ農業祭」など市民が食と農について関心が持てる事業への市民参加に努めています。

市民の食と農の理解を促進するためには、今後も市民参加を促す事業及び市民(消費者)を意識した事業を充実し、強化する必要があります。

 また、農業生産では消費者・実需者のニーズに沿ったマーケットインの発想による高付加価値化、品質や生産性の向上、コストの低減などが課題となっています。

1 普通作物(米類・でん粉原料用かんしょ)

本市の主力農産物である主食用米は、ヒノヒカリ、あきほなみ、イクヒカリなどの品種を中心に安全・安心に配慮し生産されています。

米生産の中心である主食用米(米粉用・飼料用・加工用以外の米)は、需要と生産の均衡を保つため、国による生産数量目標の配分を基に需給調整が行われていますが、平成30年産米からは、生産数量目標の配分による需給調整がなくなるため、米価の安定のためにも、生産者や集荷業者・団体が中心となって需要に応じた生産を行う必要があります。

主食用米以外にも需給調整のための転作作物として、加工用米(焼酎麹等)、飼料用米及びWCS用稲も生産されています。

農業生産基盤の整備を行った水田などでは、安定的で効率的な生産を図るために、米を作るエリアと転作作物を作るエリアを定期的にローテーションさせるブロック・ローテーション方式による計画的な生産が行われている地域もあります。

今後、主食用米の需要減少が見込まれる中、生産者の所得確保のため、中・外食産業を中心に拡大する業務用米の需要に適合する品種への転換、流通及び販路拡大に向けた取組、2毛作体系の確立、取水量を守りながら水系による団地化及び品種選定、用途別に応じた多収品種の導入、気候条件の変化に合わせた品種開発などが課題となっています。

本市で生産される米類等の出荷量等及び収穫時期(平成27年)

  項目

品目

栽培面積

(ha)

出荷量(t)

産出額

(百万円)

収 穫 時 期

主食用米

1,570

7,360

1,520

早期(8月中旬~下旬頃)

普通期(10月上旬~下旬頃)

加工用米

235

1,072

135

飼料用米

143

702

14

WCS用稲

187

2,908

93

早期~普通期

(7月下旬~11月上旬頃)

でん粉原料用かんしょ

79

2,160

82

10月上旬~11月下旬頃

②野菜

野菜は、ビタミン、ミネラル、食物繊維等の重要な供給源であるばかりでなく、生活習慣病予防にも効果があるとされており、国民が健康的な食生活を送る上で基礎的な食品です。

しかしながら、全国的な傾向によれば、野菜の摂取は全ての世代で不足し、特に若年層の野菜離れが顕著となっており、野菜の消費量は年々減少しています。 

また、近年の輸送技術や冷凍・加工技術等の進展によって、低い関税、国内消費の周年化・多様化傾向と相まって、野菜の輸入量は年々増加する傾向にあります。

 野菜の生産は、比較的、収益の高い農業経営が見込まれるため、主業農家の多くが米と野菜による複合経営に取り組んでいます。

  本市では、ばれいしょ、そらまめ(かごしまブランド産地指定)、さやいんげん、ミニトマト、いちご、にがうり、オクラ、かぼちゃ、メロン、ブロッコリーなど多種多様な野菜が生産されています。

  生産された野菜は、JAなどを通じて首都圏や京阪神地区などの大消費地を中心に出荷されています。

  野菜は、国内だけでなく国外を含めた激しい産地間競争にさらされており、優良品種の導入、品質の向上、生産性の向上、消費者のニーズを的確に捉えた特徴的な品目づくり、 安全・安心・安定的な生産供給体制の確立などが課題となっています。

本市で生産される主な野菜の出荷量等及び収穫時期(平成27年) 

     項目 

品目

栽培面積

(ha)

出荷量

(t)

産出額

(百万円)

収 穫 時 期

ばれいしょ

142

3,747

440

秋作(12月上旬~下旬頃)

春作(4月下旬~5月下旬頃)

そらまめ

43

462

113

4月中旬~5月下旬頃

さやいんげん

3

38

15

普通(5月中旬~7月下旬頃)

抑制(10月中旬~12月中旬)

ミニトマト

6

554

236

11月上旬~6月中旬頃

いちご

4

132

128

12月上旬~4月下旬頃

にがうり

12

303

65

5月上旬~7月下旬頃

オクラ

4

60

57

7月上旬~9月下旬頃

かぼちゃ

14

235

63

促成(6月上旬~8月中旬頃)

抑制(11月上旬~12月中旬)

メロン

9

189

78

5月上旬~5月下旬頃

ブロッコリー

55

432

46

12月中旬~3月中旬頃

③果樹

果樹は、私たちに豊かで潤いのある食生活をもたらすとともに、野菜と同様に健康に欠くことのできないビタミン、ミネラル等の重要な供給源です。しかしながら、果物の摂取量は、生活スタイルの多様化等による食の外部化、簡便化志向が進展する中で、厚生労働省と農林水産省が作成した「食事バランスガイド」による1日当たりの果物摂取量目標200gを満たしておらず、特に若年層では極端に少ない状況にあります。

 本市の果樹は、山沿いの緩傾斜地を中心に、温州みかん、甘夏(紅甘夏を含む。)、不知火(大将季を含む。)、ぶどうなどの生産が行われており、施設(ハウス、かん水施設、園内道等)を積極的に導入し、付加価値の高い栽培が展開されています。果物生産は、輸入果物の流入による価格下落や、品目及び果物加工食品の多様化への対応の遅れから大きな影響を受け、荒廃園の増加や担い手の高齢化による生産基盤の脆弱化が進んでいます。

 今後は、このような状況の下、多様な消費者ニーズに的確に対応した生産・販売活動が行えるよう、競争力のある品種への改植、土づくりや減農薬による安全性の向上及び高性能機械の導入を積極的に推進するなど、品質と生産性の向上を目指した生産を行っていくことが課題となっています。

本市で生産される主な果樹の出荷量等及び収穫時期(平成27年) 

    項目

品目

栽培面積

(ha)

出荷量(t)

産出額

(百万円)

収 穫 時 期

温州みかん

442

9,701

1,504

ハウス(7月上旬~9月下旬頃)

早生(9月中旬~11月下旬頃)

普通(11月中旬~12月下旬頃)

甘夏みかん

(紅甘夏を含む。)

167

6,246

1,091

12月中旬~2月上旬頃

不知火

(大将季を含む。)

63

583

285

11月下旬~5月下旬頃

ぶどう

9

141

163

8月上旬~9月下旬頃

④植木・緑化樹類

本市では、イヌマキ、ラカンマキ、サツキ、ツツジ、クスノキなど多種多様な植木・緑化樹が生産され、個人出荷や卸売市場等を通じて全国に出荷されており、全国有数の植木・緑化樹の産地となっています。特に、出水市の市木である「イヌマキ」や「ラカンマキ」の仕立物の生産技術は、全国でもトップクラスであり、全国の生産地から技術研修に訪れるほどです。

また、本市には2つの植木市場があり、毎年10月~5月に出水の植木市場が2の付く日、高尾野の植木市場が7の付く日にそれぞれ植木市が開催され、植木・緑化樹関係の業者だけでなく、一般客(身分証明書の提示が必要)でもセリに参加することができます。

しかしながら、街路樹や公共施設への植栽などの公的需要の減少や消費者・実需者のニーズの変化によって植木・緑化樹の販売額は近年大きく減少しており、需要の多様化に対応した良質樹木の生産への転換や、中国を中心とした海外向けの樹木の生産を増加させることが課題となっています。

 今後は、各研究機関との連携強化による新品種の導入、高品質化、生産性の向上や消費者実需者ニーズを的確に捉えた特徴的な品目づくり、イヌマキ及びラカンマキを中心とした植木・緑化樹の産地の活性化が課題となっています。

⑤花き

花は、市民の生活に豊かさと安らぎを与える品目です。本市では、きく類、シンビジウム、ヒマワリなどが生産されています。

花は、ガーデニングが国民生活の中で定着するなど、家庭内での需要拡大がみられるものの、景気低迷により業務用の需要が低下し、花の総需要量は微減傾向が続いております。

また、燃油価格高騰等による生産コストの上昇、生産者の高齢化等の多くの課題に直面しています。

さらに、輸入花は、価格の安さに加え、国際的マーケティング(国産花が対応しきれていない消費者ニーズ)に対応した供給を行うことにより、取扱数量を大きく伸ばしています。

このような状況の下、新品種の導入や日持ち性や値頃感など、消費者・実需者ニーズに応える高品質で個性的な花の生産技術や経営の充実、強化が課題となっています。

本市で生産される主な花きの出荷量等及び出荷時期(平成27年)

  項目 品目

栽培面積

(ha)

出荷量

(千本)

産出額

(百万円)

出 荷 時 期

きく類

1.6

617

26

5月中旬~12月中旬

シンビジウム

1.5

120

28

11月上旬~5月下旬頃

ヒマワリ

0.2

96

9

周年

鉢もの類

2.9

835

166

周年

⑥工芸作物(茶、葉たばこ)

(1)茶

茶は、昔から「百薬の長」や「養生の仙薬」と言われ、その中に含まれているカテキン、カフェイン、ビタミンB類など数多くの成分が体調を整え、健康を保つために大いに役立っています。しかしながら、茶の摂取量は、昭和40年代後半から食生活の変化や各種飲料の進出等の影響によって減少傾向にあり、リーフ茶の消費が伸び悩む中で、平成17年以降頭打ちであったドリンク飲料は、健康志向の高まりにより平成23年以降は微増の状況です。

本市は、霧が深く土質が「茶」の生育に適しており、また、健康のために減農薬栽培を積極的に行っているため、美味で香り高い銘茶の産地となっています。茶生産は、長引く荒茶価格の低迷や生産資材価格の高騰により、大きな影響を受けています。

今後は、温暖な気象条件や広大な畑地等恵まれた立地条件を最大限に生かしながら、生産・加工施設の整備、環境に配慮した栽培技術の普及等に取り組み、低コスト・高品質茶生産技術の一層の向上に努めるとともに、「安全・安心でクリーンなかごしま茶づくり」の徹底や大消費地等における販路拡大対策に積極的に取り組んでいくことが課題となっています。

             

本市で生産される茶の出荷量等及び収穫時期(平成27年)

  項目 品目

栽培面積

(ha)

出荷量

(t)

産出額

(百万円)

収 穫 時 期

茶(一番茶)

54

245

81

4月上旬~5月上旬頃

   

(2)葉たばこ

葉たばこは、畑地の高度利用や水田営農体系の確立等の観点からも本市の農業振興にとって重要な作物です。

しかしながら、近年の葉たばこを取り巻く情勢は、健康増進法の施行など喫煙をめぐる社会環境の変化による消費者の減少や、耕作者の高齢化等により、年々、耕作面積が減少するなど、厳しい状況となっており、将来に向けて意欲の持てる産地体制を構築することが求められています。

このため、本市では、経営感覚の優れた地域の核となる担い手農家の育成・確保をはじめ、機械化や共同利用施設の有効活用等による低コスト・高品質化に取り組むほか、環境に配慮した葉たばこづくりを推進し、「生産性が高く足腰の強い担い手農家による葉たばこ経営」の確立を図っていくことが課題となっています。

本市で生産される葉たばこの出荷量等及び収穫時期(平成27年)

  項目 品目

栽培面積

(ha)

出荷量

(t)

産出額

(百万円)

収 穫 時 期

葉たばこ

35

71

160

5月上旬~8月中旬頃

⑦畜産

  本市は、広大な土地、豊富な水など地理的な利点を活かして、古くから畜産が盛んな地域であり、肉用牛・乳用牛、肉用豚、採卵鶏・肉用鶏などの飼育が行われています。

  しかしながら、全国的な傾向と同様に、本市でも畜産業に従事する農家の高齢化が進んでおり、特に比較的小規模の農家で廃業が増加し、戸数は減少の一途をたどっています。

その一方で、供給量の低下により、牛肉をはじめとした各畜産物は高値を維持しており、販売面では好成績となっていますが、減産が著しかった肉用牛の子牛相場は未曽有の高騰を起こし、肥育牛農家の経営を圧迫する状況となっています。

また、口蹄疫やPED(豚流行性下痢)、高病原性鳥インフルエンザなどの家畜伝染病の発生により、畜産事業者だけでなく、小売業者や消費者までもが大きな打撃を受けている事例が国内外で報じられており、疾病の発生と伝染の防止は現代の畜産業における重要な課題となっています。本市としても、高病原性鳥インフルエンザが市内の野鳥に発生した際などは、関係機関の中心となってその対策にあたっているほか、機会あるごとに、農家に対して飼養衛生管理基準の遵守を呼びかけているところです。

国内における家畜飼養頭羽数の減少に歯止めをかけるため、国では意欲と能力のある農家に対する規模拡大の推進を打ち出していますが、この施策は徐々に成果を上げており、再び増加に転じる畜種も出ています。大規模化においては1農場当たりの家畜糞尿の排出量も増加することとなりますが、堆肥化施設の整備や、耕畜連携による耕種農家への堆肥供給も一体として事業計画を作成するなど、地域内でのサイクル化を目指した取組が進められています。

本市畜産業のさらなる発展のためには、飼養管理の徹底や先進技術の導入又は地域内の連携により、品質と安全性の向上及び生産コストの低減を進め、畜産農家の経営基盤を強化していくことが課題となっています。

本市における畜産物の出荷量及び産出額(平成27年)

     項目 

品目

出荷量

産出額(百万円)

肉用牛(枝肉)

3,738t

8,882

肉用牛(子牛)

1,152頭

753

乳用牛(牛乳)

2,735t

273

肉用豚

4,022t

2,107

採卵鶏(鶏卵)

51,705t

11,426

肉用鶏(鶏肉)

6,594t

2,967

第4節 農村に関する現状と課題              

農村は、食料を生産する場に加え、生活・就業の場の提供、国土の保全、水資源のかん養など多面的な役割を果たしており、農業などそこに居住する人々のためだけでなく、市民のくらし・財産を守る貴重な空間になっています。また、農村には、水や緑等の自然や伝統文化などの多様な地域資源が存在し、子どもの情操教育やゆとり・潤い・やすらぎ体験の場として、市民の要請にも応えられる教育・文化空間であるなど市民共有の財産となっています。

最近では、ゆとりある余暇を過ごしたいと願う都市の住民が、ふるさとの安らぎを求めて農村を訪れ、その自然や文化に触れながら、農業体験や地元の人々との交流を通して心身をリフレッシュする「グリーン・ツーリズム」の考え方が大きく注目されており、2014年度の農業白書では、都市住民の31.6%が農村などへの定住願望が「ある」「どちらかといえばある」と回答し、都市と農村を行き来する「田園回帰」の動きが若者を中心に出始めており、「住民自らが地域資源の有効活用や新規就農者の育成などに取り組むことで、人口減少や高齢化に伴う問題の解決を図る地域が増加している」としています。

本市の農村地域においても、先人の残した貴重でかけがえのない文化遺産(有形・無形文化財等)が数多く存在しており、これらの遺産を後世に残していくために、その保存・活用が行われています。また、農村地域に伝承されている行事や芸能などの伝統文化についても、引き続き保存・継承が必要です。

本市の農村地域の一部では、防除作業や野焼き作業に対する苦情などの問題が発生しています。また、農村地域の人口の減少、高齢化の進行に伴い、これまで農村地域の住民によって維持管理されてきた用排水路、ため池、農道、里山などの持続的な維持が難しくなるとともに、農村地域のコミュニティ活動の維持が困難になることが危惧されています。

農村は、その地域に居住する住民のみならず、市民共有の貴重な財産です。これらの役割や機能を充分に発揮させ、次の世代に良好な形で継承するための環境整備を進めるとともに、農村地域への新たな住民の転入を促す施策を進めるため、農地や農道・用排水路などを地域(集落等)で管理する市民運動や住民参加による農村環境維持活動の「多面的機能支払交付金」、「中山間地域等直接支払交付金」を市内の多くの地域で導入しており、これらの安定的な継続が課題となっています。

さらに、農村地域の活性化を図るためには、農村における男女共同参画社会の実現が必要不可欠であり、農業や農村を支える女性の役割を正しく評価し、女性農業者が農業経営や地域活動に参画する機会を確保するための条件整備を図り、対等なパートナーとして男性とともに農業を担うことができる農村社会を実現していくことが課題となっています。

第3章 食料・農業・農村の展望

本章では、国の食料・農業・農村基本計画において示される農業構造、農業経営の展望及び各種統計情報をもとに、平成33年度における本市の食料、農業及び農村の姿について展望します。

                                

農業者

現 状 (平成27年度)

○農業就業人口

 (平成22年)3,772人

 (平成27年)2,892人

○65歳以上農業者比率

 (平成22年)59.1%

 (平成27年)61.3%

○経営耕地面積

 (平成22年)3,304ha

 (平成27年)3,135ha

○農業産出額

 (平成21年)252億円

 (平成26年)244億円

※農林水産省 センサス結果等を活用した推計結果

○主業農家数

(平成22年)619戸

(平成27年)533戸

○販売金額1千万円以上の農家数

(平成22年)245戸

(平成27年)272戸

経済・社会の急激な変化

市民・事業者

       ○漠然とした農畜産物への不安

       ○農業への市民理解度の不足

       ○農業への新規参入制限

       ○農業の公共財としての認識不足

       ○農業情報発信の不足

       ○消費者ニーズの把握不足 

       ○少ない地元向け出荷

                              

○基本計画に基づき市が実施する事業

○基本計画(行動指針)に基づく農業者・農業団体、市民及び事業者の行動

                             

農業者

目標年度(平成33年度)

■収益性の高い農業経営体への転換

 品質向上、コストダウン、高付加価値化、ブランド化、環境配慮、土づ

 くり、商品開発

■農村地域の活性化

 農村環境維持活動の充実及び農村における男女共同参画社会の確立

○農業就業人口

 (平成33年)2,900人

○65歳以上農業者割合

 (平成33年)65.0%

○経営耕地面積

 (平成33年)3,200ha

○農業産出額

 (平成33年)250億円

○主業農家数

 (平成33年)540戸

○販売金額1千万円以上の農家数

(平成33年)280戸

市民・事業者・農業者の

意識向上と主体的な行動

       ■農業・農村維持活動への参加

市民・事業者

       ○農畜産物の安全・安心感の確保

       ○農業への市民理解の向上

       ○農業への新規参入促進

       ○農業の公共財としての認識向上

       ■農業情報の積極的な発信

       ○消費者ニーズの的確な把握 

       ○地産地消の推進

第4章 基本計画の目標

第1節 目標とする食料・農業・農村像              

 本市は、食料・農業・農村に対する市民の理解を深めるとともに、性別・年齢を問わず農業者一人一人の持てる力が発揮され、安全で安心な農畜産物の生産、流通及び消費が図られ、もって本市の農業及び農村が持続的に発展し、豊かで住みよい地域社会の実現に寄与することを目的に基本条例を制定しています。基本条例第2条では、食料・農業・農村について基本理念を踏まえた10項目からなる基本的施策を相互に有機的に連携を図りながら、総合的かつ計画的に推進することを示しています。

 基本条例の基本理念及び上位計画である出水市総合計画の基本理念や都市像、さらに本市の食料・農業・農村の基本特性と課題などを踏まえ、市民にとって望ましい本市の目標とす

る食料・農業・農村像を次のように設定します。

 

 

《 目標とする食料・農業・農村像 》

食 料 像

 健康で豊かな食生活が実践されるまち

本市で生産された安全で新鮮な農畜産物が安定的に市民に供給されています。

本市で生産された農畜産物を市民は大いに信頼しており、本市で生産された農畜産物によって健康で豊かな食生活が実践されています。また、市民は食の重要性について良く理解し、地域特有の食文化を誇りに思っています。

農 業 像

 多様な担い手による持続的な農業経営が確立されるまち

  市民は本市の農業・農村を良く理解し、地産地消の取組が盛んに行われています。農業は、農地、農業用水などの農業資源や多様な担い手が効果的に組み合わされ、環境に配慮した高い生産力と販売力を兼ね備えた持続的な農業経営が確立されるなど、若者にとっても「職業として選択できる魅力ある農業」として展開されています。

農 村 像

  農村が有している食料生産、良好な景観の形成、水源のかん養、洪水の防止、

 生物多様性、文化の伝承等、市民生活の充実に資するための環境整備が進められています。また、性別・年齢を問わず農村地域に暮らす住民が生き生き生活する農村社会づくりが進められています。

自然と人間が共生する豊かな農村社会を創造するまち

第2節 基本計画の目標              

 本市の食料・農業・農村に関する課題を踏まえ、望ましい食料・農業・農村像である「健康で豊かな食生活が実践されるまち」、「多様な担い手による持続的な農業経営が確立されるまち」、「自然と人間が共生する豊かな農村社会を創造するまち」を実現するために、以下に示す11項目の基本目標を設定するとともに、その項目ごとに目標指標を設定します。

 

(1)食料に関する基本目標  基本条例第7条(1)、(2)、(7)に対応する項目

   本市で生産される農畜産物の信頼の確保

   ○安全で安心な農畜産物づくりを推進するとともに、本市の食と農の情報を積極的に発信し食と農に対する市民の信頼の向上を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成27年度)

目標

(平成33年度)

地産地消郷土料理教室の数

本市が開催している教室

学校給食で地場産物(出水産)を使用

する割合(米を除く重量ベース)

本市調査(平成28年度)

49.5

52.0

イベント等における食育推進活動

市民健康まつり等

  健全な食生活への理解の促進、地域特有の食文化の継承

○農業生産都市である特色を活かしながら、学校、家庭、地域社会等と連携した食育に取り組むことにより、健全な食生活及び食文化への市民理解の向上を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成27年度)

目標

(平成33年度)

食育に関心のある市民の割合

食育アンケート

75.0

80.0

朝食をほとんど食べない市民の割合

食育アンケート

小中高生   9.6

成人20代 25.9

成人30代 29.7

小中高生 0.0 

成人20代 15.0

成人30代 20.0

食事バランスガイドを知っている人の割合

食育アンケート

68.9

80.0

食事バランスガイドを参考に食生活を

送っている人の割合

食育アンケート

%

23.4

60.0

食育関係者等の実践活動の情報交換等

食に関する生涯学習講座の数

講座

7以上

食に関する指導の全体計画を策定して

ている小中学校の数

21(全校)

21(全校)

教育ファーム等の農業体験のイベント

21(全校)

21(全校)

食育や食の安全性についての広報誌等での紹介

1

2以上

(2)農業に関する基本目標  基本条例第7条(4)、(5)、(6)、(8)に対応する項目

農業・農村が持っている生産機能や多面的機能への理解

   ○生産者と消費者等の交流等を進め、農業・農村が持っている生産機能や多面的機能に対する市民の理解向上を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成27年度)

目標

(平成33年度)

多面的機能支払交付金の対象面積

ha

1,920

2,480

農業関連イベントへの来場者数

出水市大産業祭入場者数

万人

6.5

農業の生産基盤の整備、優良農地の確保

○農地、農道、農業用用排水路、ため池などの農業生産基盤を整備するとともに、意欲のある担い手への農地の利用集積を進め、農地中間管理機構を活用して耕作放棄地の発生を抑制し、優良農地の確保を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成27年度)

目標

(平成33年度)

農業生産基盤整備率(平成25年度)

農業農村整備事業におけるほ場の整備水準

96.0

96.0

経営耕地面積

農林業センサス

ha

3,135

3,200

耕作放棄地面積

農林業センサス

ha

517

450

    多様な担い手による安定的な農業経営体の育成、確保

○認定農業者、集落営農、農業生産法人等の効率的で安定的な農業経営体の育成及び確保を行うとともに、次世代を担う農業者の育成及び確保を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成27年度)

目標

(平成33年度)

認定農業者数

本市が経営改善計画を認定した農業者数

経営体

511

500

認定新規就農者数

本市が青年等就農計画を認定した農業者数

経営体

20

45歳未満の担い手農家の割合

45歳未満の担い手農家(認定農業者、

認定新規就農者)の占める割合

22.1

22.0

集落営農数

団体

農作業受託組織

団体

10

11

担い手が経営する農用地面積の占有率

耕作面積のうち、担い手農家(認定農業者、新規就農者)に集積された農地が占める割合

43.4

50.0

新規就農者数(後継者を含む。)

鹿児島県が把握する年間新規就農者数

8

10

収益性の高い農業経営、競争力のある産地の育成

    ○品質の高い売れる農畜産物の計画的な生産及び生産コストの抑制により収益性の高い農業経営を促進し、特徴ある農畜産物やブランド化による競争力のある産地育成を目指すとともに、新たな販路開拓による販売力の強化を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成27年度)

目標

(平成33年度)

農業産出額

農林水産省の推計値(平成26年)

億円

244

250

販売金額1千万円以上の農家戸数

農林業センサス

272

280

販売金額2千万円以上の農家戸数

農林業センサス

200

210

地域で生産される農畜産物の地域内での流通、消費の推進

   ○農業者・農業団体、食品産業の事業者及び消費者が相互に連携して、地域で生産される農畜産物の地域内での流通及び消費の増加を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成28年度)

目標

(平成33年度)

学校給食で地場産物(出水産)を使用する割合(米を除く重量ベース)

本市調査

49.5

52.0

特産館いずみでの年間販売額

施設運営者が公表する販売金額

億円

3.9

4.5

市内のかごしま地産地消推進店登録

店舗数

19

20

産学官共同による農業関連製品の研究開発、製品化の推進

  ○産学官や農商工の連携によって、農業関連製品の研究・開発を進め、本市の農業振興につながる事業化を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成27年度)

目標

(平成33年度)

農商工連携関連の研修会等の数

本市が関わる研修会等

農業関連製品開発等の産学官連携事業数

本市が把握する連携事業の数

事業

0

1

環境保全型農業や有機農業の推進

   ○農薬や肥料が適正に使用されるとともに、堆肥を有効に利用した土づくり等による

環境保全型農業や有機農業の普及を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成27年度)

目標

(平成33年度)

特別栽培農作物

エコファーマー認定計画書申請の作付面積

ha

102

140

エコファーマー認定者数

エコファーマー認定農業者数

62

74

有機農業者数

有機農業実施者数

13

15

(3)農村に関する基本目標  基本条例第7条(3)、(9)、(10)に対応する項目

農業・農村の持つ多面的機能を発揮するための環境整備の推進

○農村環境を保全し、生活排水処理などの農村生活の基盤整備により、本市の農業・農村の持つ多面的な機能の発揮及び交流人口の増加を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成27年度)

目標

(平成33年度)

生活排水処理人口普及率

公共下水道、農業集落排水、合併処理浄化槽を合わせた生活排水処理人口

90.3

95.0

農家民泊による交流人口

本市調査における宿泊人数

3,014

3,200

農村における男女共同参画社会の確立

○女性農業者の社会的で経済的な地位の向上、就業条件の整備、農業政策の意思決定等への参画を促進する環境整備によって、農村における男女共同参画社会の確立を目指します。

数値目標項目及び概要

単位

現状

(平成27年度)

目標

(平成33年度)

家族経営協定締結数

家族経営協定を締結している認定農業者の戸数

78

85

女性の認定農業者数(共同申請を含む。)

38

39

女性農業経営士認定者数

15

18

農政関連協議会等における女性の登用率

市農政課、市農業委員会が所管する農政関連協議会等の女性会員比率

15.4

30.0

第3節 目標達成のための基本的な考え方              

(1)全ての主体の協働による施策展開

  目標を達成するためには、市が11項目の目標ごとに設定する事業を農業者・農業団体、市民及び事業者と協働して実施するとともに、農業者・農業団体、市民及び事業者が第5章に示す行動指針に沿って主体的に行動することが必要です。市、農業者・農業団体、市民及び事業者ごとの行動についての基本的な考え方は、以下のとおりです。

  また、本市には、「食と農」をテーマに活動している農業者団体、市民団体などがあり、

 これらの活動のネットワークを有機的に連携することで、さらに広がりを持った食と農に関する市民運動への展開を図っていきます。

○市は、11項目の目標に基づいた事業を農業者・農業団体、市民及び事業者と協働しながら計画的かつ効果的に実施するとともに、その結果や効果を定期的に検証し、事業の改善を図っていきます。

○市は、農業者・農業団体、市民及び事業者を結びつけるコーディネーターとして食料、農業及び農村に関する総合的な情報発信を行うとともに、各主体で実施する催しや事業を相互に連携させ、より広がりのある取組になるよう支援していきます。

農業者・

農業団体

○農業者・農業団体は、自らが安全な食料の生産者であって、農村における地域づくりの主役であることを認識し、主体的に行動します。

○農業者・農業団体は、安全で安心な農畜産物を安定的に生産するとともに、自らが生産する農畜産物について積極的な情報発信を行い、消費者ニーズや事業者の新しい技術などの情報を積極的に入手して、自らの農業経営に活かしていきます。

市民、

事業者

○市民及び事業者は、食料、農業及び農村に関する問題は、市民生活や事業者活動に密接に関係していることを踏まえ、食料、農業及び農村に対して、常に関心を持ち、正しく情報を理解し、消費者のニーズを的確に農業者・農業団体に伝えるとともに、市民共有の貴重な財産である本市の農業及び農村を支える取組に各々の立場で参加していきます。

(2)農業・農村資源の適正な利用、保全

  食料を生産する農業・農村は以下のような特徴を持っています。本市には、多くの農業・農村資源があり、これらの有用な農業・農村資源を適正かつ有効に利用するとともに、豊かな農業・農村資源をその役割に応じて保全することで、本市の貴重な財産である農業・農村資源を守り育てていきます。

① 農業・農村資源は有限であり、一度汚染されたり破壊された場合、再び元の状態に戻すためには多大な時間、経費及び労力を要します。

  ② 農業・農村資源は、それぞれが相互に関連し、微妙なバランスのもとに成り立っています。

③ 農業・農村資源は、将来の世代を含めた全ての市民が共有しているものです。

第5章 基本的施策及び各主体の行動指針

 第4章に掲げる11項目の目標ごとに、市が実施する基本的施策及び農業者・農業団体、市民、事業者それぞれの主体が取り組むべき行動指針を示します。

《 施策体系 》

目標とする

食料・農業・農村像

基本目標

市が実施する主な事業(項目)

健康で豊かな食生活が実践されるまち(基本条例第7条(1)、(2)、(7))

1 本市で生産される農畜産物の信頼確保

2 健全な食生活への理解の促進、地域特有の食文化の継承

・食と農についての情報発信

・安全で安心できる農畜産物づくりへの支援

・農業生産都市の特色を活かした食育の推進

多様な担い手による持続的な農業経営が確立されるまち(基本条例第7条(4)、(5)、(6)、(8))

3 農業・農村が持っている生産機能や多面的機能への理解

・農業による市民生活の充実についての情報発信

・生産者と消費者の交流による相互理解の促進                  

4 農業の生産基盤の整備、優良農地の確保

・計画的な農業生産基盤整備         

・優良農地の確保・農村活性化のため

の有効な土地利用              

・耕作放棄地の発生抑制・解消      

5 多様な担い手による安定的な農業経営体の育成、確保

・多様な農業経営体の育成・確保     

・次世代を担う農業者の育成・確保     

6 収益性の高い農業経営、競争力のある産地の育成

・収益性の高い農業経営の確立・生産

力の向上

・6次産業化の推進

・出水産農畜産物の販売力強化(マー

ケティング活動)

7 地域で生産される農畜産物

の地域内での流通、消費の

推進

・出水産農畜産物の市内での流通・消費の促進

・学校給食における出水産農畜産物の促進

8 産学官共同による農業関連製品の研究開発、製品化の推進

・地域農業関連研究機関等の連携による農業関連製品の研究開発・事業化への支援

・農商工連携による農業の活性化

9 環境保全型農業や有機農業の推進

・堆肥などによる土づくりの推進   

・減農薬・減化学肥料などによる環境保全型農業の推進

自然と人間が共生する豊かな農村

社会を創造するまち(基本条例第7条(3)、(9)、(10))

10 農業・農村の持つ多面的機能を発揮するための環境整備の推進

・農村環境の保全

・農村生活基盤の整備

・都市と農村の交流(グリーン・ツーリズム、観光農業)

11 農村における男女共同参画社会の確立 

・女性農業者の活動支援

・家族経営協定の推進 

第1節 本市で生産される農畜産物の信頼の確保                   

(1)市が実施する主な事業

   市は、安全で安心できる農畜産物づくりを行う農業者を支援するとともに、本市の食と農の情報を積極的に市民に向けて発信し、食と農に対する市民の信頼の向上に努めます。

食と農についての

情報発信

・市は、本市の「食と農」に関する情報を、広報いずみ等の広報物、ホームページその他の媒体を利用して市内外の消費者へ分かりやすく発信します。

安全で安心できる

農畜産物づくりへの支援

・市は、農業者・農業団体が実施する安全な農畜産物を生産するために必要な環境整備(トレーサビリティ、GAP(農業生産工程管理)など)の取組を支援し、本市で生産される農畜産物の安全・安心を確保します。

(2)農業者・農業団体、市民、事業者の行動指針

   農業者・農業団体、市民及び事業者は、市が実施する事業施策に協力するよう努めるとともに、以下のとおり行動に配慮します。

農業者・農業団体

・自ら生産する農畜産物について積極的な情報発信に努めます。

・トレーサビリティ、GAP(農業生産工程管理)等に取り組み、安全で安心な農畜産物及び農畜産加工品の生産と供給に努めます。 

市民

・本市の「食と農」について関心を持ち、その理解及び信頼の向上に努めます。

・農畜産物の安全について正しい理解に努めます。

事業者

・本市の「食と農」について関心を持ち、その理解及び信頼の向上に努めます。

・安全で安心な農畜産物や農畜産加工品の流通及び消費者への提供に努めます。

第2節 健全な食生活への理解の促進、地域特有の食文化の継承

(1)市が実施する主な事業

   市は、農業生産都市である特色を活かしながら、学校、家庭、地域社会等と連携した食育を計画的に推進することにより、健全な食生活及び食文化への市民理解の向上に努めます。

農業生産都市の

特色を活かした

食育の推進

・市は、安全で安心な食材を選択する知識の広報周知に取り組みます。また、食文化を尊重する心と食べ物への感謝の心を育む体験学習に取り組みます。

・市は、健康的な食生活を身につけ、生活習慣病を予防することを目的に、乳幼児期から高年期までのライフステージに応じた栄養バランスや食事量を理解し、実践できる食育に取り組みます。

・市は、私たちの食習慣が形成される乳幼児期から義務教育期を対象とした生きる力を育む食育に取り組みます。また、子どもたちを教育・指導する大人の啓発に取り組みます。

・市は、「ものを大切にする心」を育てることを目的とする食のリサイクル体験学習に取り組みます。

     

(2)農業者・農業団体、市民、事業者の行動指針

農業者・農業団体、市民及び事業者は、市が実施する事業施策に協力するよう努めるとともに、以下のとおり行動に配慮します。

農業者・農業団体

・食育について関心を持ち、その正しい理解に努めます。

・食育について積極的な協力に努めます。

・農村地域特有の食文化の素晴らしさについて情報の発信に努めます。 

市民

・食育について関心を持ち、その正しい理解に努めます。

・健康的な食習慣を身につけ、実践に努めます。

・地域特有の食文化について関心を持ち、その正しい理解に努めます。

・地域特有の食文化の素晴らしさについて次の世代に伝えるよう努めます。

事業者

・食育について関心を持ち、その正しい理解に努めます。

・地域特有の食文化について関心を持ち、その正しい理解に努めます。

第3節 農業・農村が持っている生産機能や多面的機能への理解

(1)市が実施する主な事業

   市は、出水市大産業祭をはじめとする生産者と消費者の交流による相互理解を促進するとともに、農業・農村が持っている生産機能や多面的機能によりもたらされる市民生活の充実についての市民の理解向上に努めます。

農業・農村による市民生活の充実についての情報発信

・市は、農業・農村が持っている生産機能や多面的機能が市民生活にどのように役立っているか、農業・農村からもたらされる市民生活の充実について情報発信し、農業・農村への市民の理解を促進しま