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20 4 Chapter 写真:赤松 孝 4 Chapter 使Development of LiB for Hybrid Vehicle with the World's Top Class Fuel Efficiency

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20

4Chapter

写真:赤松 孝

4Chapter

トヨタ自動車(株)

HVのための

バッテリは

どうあるべきか

トヨタはHVの市場投入以降︑

永年の実績で信頼性あるニッケル水素バッテリを使用してきた︒

しかし性能上利点の多いリチウムイオンバッテリの

研究・開発も進め︑現在二つの電池は共存している︒

ここで正電極にまったく新しいアイデアを盛りこんだ

二世代目のリチウムイオンバッテリが完成し︑

大幅な出力向上とコストの低減を図った︒

これはHVの普及に大きな役割を果たす開発だった︒

Developm

ent of LiB for H

ybrid Vehicle with

the World's T

op Class Fuel E

fficiency

世界トップクラスの低燃費を実現した

HV用リチウムイオン電池の開発

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21 AUTO TECHNOLOGY 2018

ニッケル水素電池で始まった

HVのバッテリ

 

トヨタ自動車がハイブリッド車(HV)プリウスを市

販したのは、1997年12月のことであった。小型ガソ

リンエンジン車の2倍の燃費性能を実現するため、ガソ

リンエンジンとモータを併用する駆動システムを開発し、

当時の10・15モードで28㎞/Lという驚くべき燃費性能

を実現した。それから20年を経て、最新のプリウスでは

JC08モードで最高40・8㎞/Lを達成するなど飛躍

的な燃費性能の向上を果たしている。

 

燃費性能の向上には、幾つかの技術的な革新がかか

わっているが、なかでも電池の開発が大きく貢献してお

り、これが受賞の栄誉を得た。

 

トヨタの量産用HV用電池は、ニッケル水素電池で始

まった。これは今日のプリウスでも継続して使用されて

いるが、同時に、2011年のプリウスαの7人乗りや、

同年の前型プリウスPHVから、リチウムイオン電池も

使われるようになっている。

 

リチウムイオン電池について、パワートレーンカンパ

ニー

HV電池ユニット開発部電池システム評価・電池

開発室長の高橋泰博は、

「今日までに、ニッケル水素電池をすでに何百万台とい

う車両に搭載してきましたが、これまでの市場実績から

信頼性が非常に高い電池であることが分かり、自信を持

てています。これが、現在もなおニッケル水素電池を使っ

ている理由の一つです。HV用として、今後もずっと使っ

ていく方針です。

 

リチウムイオン電池は、やはり小型・軽量化できると

ころに利点があります。これによって、車両への搭載性

が高まります。一方、家庭電化製品や携帯電話などの民

生用としては20年以上の歴史がありますが、クルマ用と

してはまだ10年にも満たない実績です。そこで、ニッケ

ル水素電池で経験したことを基にしながら、より安全に

という観点も加え、セル本体だけでなく、制御や冷却と

いったシステム全体の設計・開発に取り組み、お客様に

ご迷惑をお掛けしないことを大きな方針とし、みなの知

恵を結集して開発してきました。その過程で、最初の第

一世代の開発では、みんなの知恵を結集して臨みました」

 

淡々と語る高橋の口調ではあるが、HVにかかわる電

池の全体を掌握するユニット主査の立場からの話には、

深みと重みがある。

第二世代となる

リチウムイオン電池コンセプト

 

トヨタにとって初のリチウムイオン電池(第一世代)

が世に出てから5年、これを第一世代と称し、今回開発

されたリチウムイオン電池は第二世代と位置付けられ

る。核となるセル開発の主査を務めた先進技術開発カン

パニー電池材料技術・研究部電池先行開発室チーフプロ

フェッショナルエンジニアの佐藤広一は、第二世代につ

いて次のように説明する。

「第一世代のリチウムイオン電池は、ニッケル水素電池

で培ってきた市場品質確保を大前提とし、リチウムイオ

ン電池ならではの利点を最大限に活かすことを目指しま

した。

 

第二世代へ開発を進めるにあたっては、電池としての

品質と性能を維持しつつ、原価を下げることも目指しま

した。そのために行ったのが、材料の変更と、正極材料

の中空コンセプトと呼ぶ材料開発です。材料変更は、寿

命、作りやすさ、コストに関係します。中空コンセプト

は、電池の入出力性能の向上につながります」

 

リチウムイオン電池の特性を決める正極材料(活物

質)に、従来はニッケル酸リチウムが使われたが、第二

世代ではニッケル・コバルト・マンガン酸リチウムを使っ

た三元系と呼ばれる材料に変更された。負極側は、カー

ボンが使われることに変わりはない。ただ、改良は施さ

れている。そして、中空コンセプトというのが、今回の

HVのためのバッテリはどうあるべきか―トヨタ自動車(株)―

 リチウムイオン電池は、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う。正極にはリチウムイオンを含む金属酸化物(活物質)が用いられ、負極は炭素が使われている。今回の開発では、正極の活物質の粒子を中空化することにより、高出力を出せるようにした。ことに、ハイブリッド車(HV)での利用では、素早い充放電が求められ、その点が、大容量を求める電気自動車(EV)や民生の電気機器と異なる。開発されたリチウムイオン電池は、容量を減らしながら出力は従来と同等以上を実現することにより、車載における小型軽量化にも貢献している。中空の活物質の製造は車両用としてかつてないことであり、製造段階では電極に活物質を塗布した後の溶剤の乾燥に新たな生産技術を編み出すが必要であった。溶剤の使用量を減らし、中空粒子の中までしっかり乾燥させる手法などが開発されたことにより、世界トップクラスの低燃費を実現するHV用リチウムイオン電池が完成した。

正極の活物質を変更し、中空構造とした高出力開発

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受賞に大きくかかわる技術である。

 

佐藤は、

「正極の材料の使用量を減らすことができれば量的なコ

スト低減も追求できるわけで、容量を下げても性能を出

すために考え出したのが、中空コンセプトです」といき

さつを語る。

 

中空コンセプトとは、正極の活物質の粒子を中空にし、

粒子内の内部抵抗を減らしながら、電解液の接触面を増

やすことにより、容量を小さくしても出力を保持する新

発想である(図1)。これを編み出したのは、パワート

レーンカンパニーHV電池ユニット開発部電池システム

評価・電池開発室主幹の永井裕喜だ。

「小さな粒子が複合的に合体し、一体化しているのが活

物質であり、まず抵抗を少なくするためには粒子を小さ

くして、界面がしっかりくっついている状態がいいので

はないかと考えました。ところが、粒子を小さくしてい

くと、粒の詰まった粒子がなかなか作れず、粒子に孔が

開いてしまうのです。しかたなく逆転の発想で、孔を大

きくしたらどうかと考えました。大きな孔によって、表

面積が増え、リチウムの動きを良くしながら抵抗も下げ

られるのではないかと。

 

活物質の反応は、リチウムイオンが粒子の表面から中

へ移動していくので、容量を求める電池では粒子の中が

詰まっていることが容量の大小に結びつきます。しかし、

高出力を得たい今回の場合であれば、孔が開くことでか

えってリチウムイオンが移動する距離を短くすることが

でき、出力を出せるのではないかと思ったのです。この

考えから生まれたのが中空コンセプトであり、反応面積

が広く、中空粒子の殻の厚

みが薄いのが特徴です(図

2)」

 

孔が開いてしまうなら、

逆に大きく孔をあけてしま

おう。その大胆な発想は、

どこから生まれたのだろう。

永井は、

「小さな粒子を密に作れな

いなら、作れる範囲で一番

できることからやろうと考

えました。また、見た目に

面白いし、ほかの人のやる

ことと違った感じがまたい

いと思いました」と、平然

と語るが、第二世代のリチ

ウムイオン電池の量産でか

かわった電池・FC生技部

第2開発室長の棚橋隆幸は、

「永井は普段から大胆な発

想を恐れもなく言う人で

す」と笑う。

 

また佐藤は、永井が発想した中空コンセプトについて

次のように読み解く。

「活物質の粒子をできるだけ詰める考え方は、容量を稼

ぎたいという民生用のリチウムイオン電池での考え方で

す。一方、HV用リチウムイオン電池では高出力を出し

たいと目的が異なるとともに、永井に民生用リチウムイ

オン電池の経験があまりなかったことが、先入観をなく

し、かえって中空にする発想が出てきたのではないで

しょうか」

 

こうして生まれた新しい発想の活物質を使って、電池

を設計するのが先進技術開発カンパニー電池材料技術・

研究部電池設計室

グループ長の秋田宏之である。

「これだけ突飛な発想の材料は、扱いにくいので、どう

1st generation LiB cell 2nd generation LiB cell

Voltage 3.6V 3.7V

Capacity 5.0Ah 3.6Ah

Specific power 2950 W/kg 3920 W/kg

Weight 245g 204g

Dimensions 111(W)×14.1(T)×91.8(h)mm 137(W)×13.3(T)×63.3(h)mm

表1 第一世代と第二世代 LiB の諸元

Surface (×5k)

Cross-section

a) Cathode active material used in  1st generation LiB cell

b) Cathode active material used in  2nd generation LiB cell

Surface (×10k)

Cross-section

Thickness related todiffusion resistance Thickness

Increase active surface areaexposed to electrolyte to reducereaction resistance

Form a hollow area in the center of the secondary particle

Form thinner thickness shell toreduce diffusion resistance

図1 第二世代 LiB 用正極活物質の中空粒子化による出力向上コンセプト

図2 正極活物質の電子顕微鏡(SEM)画像比較

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23 AUTO TECHNOLOGY 2018

使えばいいか、どう使いこなすかを考えました。とはい

え、電池の設計は常にトレードオフの連続で、簡単では

ありません。活物質の特性と、電極に仕立てる物づくり

を両立するためには繊細さが必要で、そこが難しいので

す。なおかつ、使用状況に対する強靭さ、いわゆるロバ

スト性を備えなければ市販することができません。

 

目指した性能は、お客様が10〜15年HVを使い続けて

も、ご満足いただける性能にすることです。永井が編み

出した材料によって高い性能を出せる可能性が生まれた

わけですから、それをいかに長く維持できるかを成し遂

げるのが設計上のポイントでした。

 

性能とものづくりの両立、使用状況に対するロバスト

性、これらを実現するために生産技術と設計はもちろん、

制御を含め一丸となって取り組んだ結果、達成すること

ができました」

 

第二世代のリチウムイオン電池では、容量を第一世代

の5Ah(アンペア・アワー)から3.6

Ah

に減らしている。それでも出力は落と

していない(表1)。

 

佐藤は、

「容量を減らした分、より性能のバラ

ンスをとるのが難しくなっています。

何かが過剰になると、何かが足りなく

なる。したがって、第一世代に比べ格

段に難しい開発だったと言えます」と補足する。

荷室容量を確保するため

後席の下にレイアウトする

 

こうしてセル(正極と負極を持つ電池の最小単位)が

出来上がると、それを集めてスタック、電池パックに仕

立てていくことになる。ここで、高橋の仕事となる。

「前型では、荷室に電池パックを載せていましたが、新

型プリウスでは荷室を犠牲にしないよう、後席の下に搭

載することにしました。後席下への搭載は、小型HVの

アクアで先に経験がありました。後席の座面が高くなっ

てしまっては、頭上のゆとりがなくなりますから、でき

るだけ低く電池を搭載し、後席の座面を上げないことが

重要です。そのため、車体設計の担当者との調整が不可

欠でしたが、第二世代のリチウムイオン電池は、セル高

HVのためのバッテリはどうあるべきか―トヨタ自動車(株)―

棚橋 隆幸 Takayuki TANAHASHI

トヨタ自動車株式会社電池・ FC生技部第2開発室 室長

「会社の成果としては新車が発売されることで我々の仕事も完了ということになりますが、仕事そのものに対する賞として形が得られたことを、有難いと思いましたし、嬉しかったです。家では、娘の学校の担任の先生が、凄いですね、感動したとおっしゃってくださり、その言葉で家族が初めてやり遂げた仕事の凄さを認識してくれました(笑)」

高橋 泰博 Yasuhiro TAKAHASHI

トヨタ自動車株式会社HV電池ユニット開発部電子システム評価・電池開発室 室長

「入社以来ずっと電池にかかわる仕事をしてきました。立派な楯を戴くことができ、仕事の成果が手元に形として残って嬉しいです。また、受賞のことはとくになにも言っていなかったのですが、関係するメーカーの方から受賞したそうですねと言われ、こちらが感謝すべきところ、こうした表彰も気にかけて見ていてくれたことが嬉しく、今後も、関係するメーカー様や仕入れ先様含め、みんなで良いものをつくっていきたいと思いました」

永井 裕喜 Hiroki NAGAI

トヨタ自動車株式会社HV電池ユニット開発部電池システム評価・電池開発室電池設計2グループ 主幹

「受賞の嬉しさはもちろんですが、20 代で開発にかかわり、ようやくいま製品が出来上がったところで、それが形に残る賞としていただけたことが嬉しいです」

秋田 宏之 Hiroyuki AKITA

トヨタ自動車株式会社電池材料技術・研究部電池設計室 グループ長

「今回の受賞はこの電池の開発にかかわってきたメンバー全員の知恵・努力・団結のおかげです。改めてこの開発にかかわった皆さんに感謝します。個人的には、二人の子供が『ちゃんと仕事してたんだね、すごいね』と言ってくれたことも嬉しかったです」

佐藤 広一 Kouichi SATO

トヨタ自動車株式会社電池材料技術・研究部電池先行開発室チーフプロフェッショナルエンジニア・電池材料

「一番は、純粋に嬉しいということですが、企業の中で仕事をするなかで、賞という形で成果が残ることが喜びとして実感したことです。今回の受賞は開発に携わった関係者全員に頂いたものと思っており、この賞を糧にして、みんなで更に良いものを開発していきたいと思います。」

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さを低くしたため、後席下への搭載はニッケル水素に比

べ楽になりました(図3)。

 

さらに、ニッケル水素は内部抵抗が高いため冷却のた

めの電力消費が増えますが、リチウムイオンは内部抵抗

が低いので冷却ファンの消費電力を抑えることができま

す」

 

こうした電池搭載のための配慮のほかに、システム全

体としての目配りも必要になる。高橋は続けて、

「後席下に搭載するという電池の配置に加え、配線をど

のように通すかといった工夫も必要になります。後席下

は他の配線や配管も通るところで、場所を確保するのが

なかなか難しい位置です。

 

加えて、万一に備えた排煙のダクトも設けています。

これはまだ法規で規定されているわけではありませんが、

その先取りとして安全を考慮し、できる限り効果的に排

煙できるようにしました」

 

高橋が、高さが低

くて後席下への搭

載がニッケル水素

に比べ楽になった

という第二世代の

リチウムイオン電

池は、たしかに横長

形状で、それまでの

正方形に近い形と

はずいぶん様子が

違う。これを改めた

のは、佐藤である。

「将来の色々な可

能性を考えたとき、

セルの高さを低く

することが重要だ

と考えました。幾つ

かの候補の中から

今回の形状を選ん

だのですが、当初は、こんな格好で大丈夫だろうかと悩

みました。これまで世の中にない形でもあったからです。

最終的には、色々な観点からのデータを見ながら決めま

した。

 

この形にしたことで、設計寸法通りに物を作るのも難

しくなりました。精度よくセルが出来上がらなければ、

寸法通りのスタック、電池パックに仕上げることができ

ません。また、スタックの中でセルが動いても困ります。

セルの寸法精度を高めることはもちろんですが、スタッ

ク側で若干のバラツキは吸収できるような工夫もしても

らいました(表2)」

3ミクロンの穴の中を

どう乾燥させるか

 

こうして電池開発が一つの節目を迎えると、次は量産

開発に場面は移る。棚橋が、これを担う。

「正極を構成する粉が2種類あります。活物質と導電材

です。これをうまく電極のアルミ箔に並べていかなけれ

ばなりません。一番いいのは、粉を一粒ずつアルミ箔の

上に置いていくことですが、現実的ではありません。そ

こで、液体を使って粉を溶かし、塗るという工程で実現

します。

 

ここで問題になるのが、塗った後に液をいかに除去す

るかです。簡単に言えば、乾燥させるのですが、丸い粒

であれば比較的簡単に乾燥できますけれども、中空の粒

子ですので、中に液が残ってしまう懸念があります。そ

の粒子は、わずか3ミクロン(1000分の3ミリメー

トル:0・003㎜)ほどの孔が開いていて、その中に

液が残らないようにするのですから、簡単ではありませ

ん。

 

対策は二つあり、一つは、液の量を少なくすること。

もう一つは、乾燥をいかに効率的に行うかです。液その

ものの量を少なくすると言っても、水分を減らせばドロ

ドロの粘りが出て、均一に粉を塗れなくなります。そこ

で、ある物質を加えることによりサラサラな液の状態を

保つようにしました。乾燥の仕方については、中空粒子

に対応するため、ノズル、熱源、給排気のシステムを一

から見直した乾燥炉を内製で製作し、風の当たり具合を

見える化することにより、効率的に乾燥させるプロセス

開発と設備化によって解決しました。

 

生産工程は全自動で人が介在することはありませんが、

効率的に乾燥させるための温度や流量の管理が必要です。

もちろん、液の残り具合は見えませんし、粒子の形も一

粒ずつ違いますから、実験データから仮説を立て、乾燥

の具合を分析し、また、出来上がった電池性能とも比較

しながら、工程を組み立てていきました」

 

棚橋の仕事に対して、秋田は、

「電池容量が小さいので、生産も苦労したと思う」と語

り、永井も、

「電池性能の許容範囲が小さいので、生産技術で補って

図3 第一世代(右)と第二世代 LiB セルの高さの比較

表2 第二世代 LiB パックの諸元

2nd generation LiB cell

Cell quantity 56 cells (28 cells × 2 stacks)

Voltage 207.2 V

Energy 0.75 kWh

Weight 24.5 kg

Volume 30.5 L

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もらっている」とも語る。

第三世代のリチウムイオン電池は

どうあるべきか

 

こうして完成した第二世代のリチウムイオン電池は、

第一世代に比べ単位面積当たりの出力を40%以上向上さ

せた(図4))。

 

そしてすでに、佐藤はこの先の開発に目を向けている。

「第一世代のリチウムイオン電池、そして第二世代のリ

チウムイオン電池の市場実績を通して、新技術を入れた

我々の開発に自信を持つことができましたし、次の開発

につなげていくことができると思っています。

 

これを基に、さらに性能を上げていくこと。また、H

Vがガソリンエンジン車並みの価格で販売することがで

きるよう、より安くしていかなければならないと思って

います。HVはトヨタの強みなので、ゆくゆくはガソリ

ンエンジン車と価格差のないHVを出せるようにしてい

きたいです」

 

秋田は、

「電池では、電極の面積を減らすと性能が下がるという

のが常識でしたが、材料や形を工夫することによって性

能を上げられることが今回の開発で分かりました。一方、

車両に搭載したときの課題も見えてきていますので、次

にやるべきことは既に見えています」と、技術者として

見据える次を語るのであった。

HVのためのバッテリはどうあるべきか―トヨタ自動車(株)―

1st generation LiB cell

40% improved

1.6

Output Power ration per unit electrode area

(1st generation=1)

1.4

1.2

1

0.8

0.6

0.4

0.2

02nd generation LiB cell

図4 第一世代と第二世代 LiB の単位電極面積当たりの出力特性比較