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パルスレーザー堆積法による[ABO3/REMO3] (A=La, Ca B=Fe, Mn RE=Bi, La, M=Fe, Fe1-xMnx)人工超格子の作製と電気的磁気的特性 Fabrication and Electric / Magnetic Properties of [ABO3/REMO3] (A=La, Ca B=Fe, Mn RE=Bi, La, M=Fe, Fe1-xMnx) Superlattices Grown by Pulsed Laser Deposition Method 日本大学理工学部 理工学研究科 電子工学専攻 M2027 渡部雄太 Department of Electronics & Computer Science College of Science & Technology, Nihon University, M2027, Yuta Watabe Abstract :本実験の目的は、パルスレーザー堆積(Pulsed laser deposition : PLD)法により、原子レベルで制御された 清浄な界面構造を持つ酸化物人工超格子を作製することである。作製する酸化物人工超格子は[ABO3/REMO3] (RE=Bi,La M=Fe, Fe1-xMnx A=La, Ca B=Fe, Mn)である。[ABO3/REMO3]人工超格子を作製する前段階として、ABO3, REMO3 単相膜の成長速度と LFO バッファー層との成長速度から成膜速度比を算出し、ABO3, REMO3 に対してそれ ぞれ所望のユニット数が成長するように照射パルス数を決定して成膜を行った。超格子は各層 7units 14 回繰り返 して作製した [7-units ABO3 / 7-units REMO3]14 人工超格子を作製した。すべての人工超格子において薄膜表面像は STO 基板由来のステップテラス構造を示しており、XRD 測定結果からサテライトピークを確認し、基板全体に均一 な超構造が形成されたことが分かった。CMO シリーズ超格子においては面内格子定数が基板ピークと一致していな かったが、バルク値から 2.3%大きな値をとっており、内部歪を持って成長していた。[CFO/BFO]超格子の X 線反射 率測定のフィッティング結果から、CFO 6.94 ユニットというフィッティング結果を得た。ペチーニ法で作製した 超高密度ターゲットを用いることによって 0.84%の誤差で成膜することが出来た。[CFO/BFMO]超格子における BFMO 層内 Fe0.8Mn0.2 1 個あたりの飽和磁気モーメントは 300K においてバルク値の約 4 倍であった。また、キュリ ー温度は約 450K となり、室温以上で弱磁性であることが分かった。 1.背景 近年マルチフェロイック物質が注目を集めている。マ ルチフェロイック物質とは物質中の電子の持つスピン、 軌道、電荷、もしくは電気分極に関する自由度の複数が 同時に強的な秩序を示す物質群を指す。また、ほとんど の場合、これらの電子の自由度は、同時に格子の自由度 と結合している。例えば、強磁性、強誘電性、強弾性な どの性質を複数有する物質系である。マルチフェロイッ ク物質は、異なる秩序状態の相互作用により新奇な応答 現象が期待される。例えば、磁場による電気分極の応答 や電場による磁化の応答などである [1][2][3] 。強磁性と強誘 電性が共存する物質として BiMnO3 [4] , TbMnO3 [5][6][7] など がある。これらは新たな物質開拓や新たなセンサー・デ バイスへの応用など今後の展開が期待される [8][9] 代表的なマルチフェロイック材料である BiFeO3 (BFO) は室温で反強磁性、強誘電性を持つ。また、強誘電転移 温度(TC)1100K、ネール温度(TN)640K と室温よりも 非常に高い。そのため、BFO の磁性を反強磁性から強磁 性へ相変化させることで室温での強磁性強誘電性マルチ フェロイックが発現すると考えた。 BFO を用いた強磁性強誘電性マルチフェロイック発現 のため、ペロブスカイト構造を持つ SrTiO3(STO)基板上に 擬似ペロブスカイト構造を持つ BFOABO3(A=La, Ca B=Fe, Mn)を数層ごと交互に積層させる。BFO Fe の価 数は 3 価、 ABO3 Fe の価数は 4 価である。 BFO ABO3 との人工超格子構造を作製し、界面に位置する Fe 3+ Fe 4+ のイオン間で電界印加によって電子を移動させ、BFO Fe の電子軌道を Fe 3+ (3d) 5 から Fe 4+ (3d) 4 へと変化させる。 金森グッドイナフの法則 [10][11][12] より電子軌道が変化す ることで反強磁性から強磁性へ相変化すると考えた。こ のような電子移動による界面物性の変化は、両者とも絶 縁体の超格子構造(LaAlO3 / SrTiO3)界面で 2 次元伝導性を 示し、低温では超伝導にさえなること、さらに強磁性を 示唆する特性が発現していることからも期待できる。 [13]-[19] 本研究では[ABO3/REMO3]超格子を作製にすることによ り、強誘電性‐強磁性マルチフェロイック特性及び巨大 電気磁気効果を併せ持つ新機能材料を発現させることが 最終目的である。 2.目的 本研究の目的は、酸化物人工超格子を作製し、室温に おいて強磁性・強誘電性を示し、かつ巨大電気磁気効果 の発現を目指している。本論では、ペチーニ法による超 高密度ターゲットの作製、酸化物人工超格子の作製方法 の確立、パルスレーザー堆積(Pulsed laser deposition : PLD) 法により、材料”A”、”B”を交互に積層させた酸化物 人工超格子の作製、作製した酸化物人工超格子の結晶構 造の詳細な解析及び電気的・磁気的特性を測定したので 述べる。材料”A”は LaFeO3(LFO)BiFeO3(BFO)BiFe1-xMnxO3 (BFMO)、材料”B”は CaFeO3(CFO)CaMnO3 (CMO)LaMnO3(LMO)とした。 LFOCFO ター ゲットはペチーニ法により作製した。人工超格子作製前 7units LaFeO3 バッファー層を成膜し、その際の成膜速 度と BFO,BFMO, CFO, CMO, LMO それぞれの成膜速度 から成長速度比を算出した。所望のユニット数を得るた め、レーザーの照射パルス数をあらかじめ決定して超格 子の作製を行った。超格子は各層 7units 14 回繰り返し て作製した [7-units REMO3 / 7-units ABO3]14 人工超格子 を作製した。 3.実験方法・条件 3.1 ターゲット用粉末作製 3.1.1 秤量 硝酸カルシウム Ca(NO3)24H2O ( Assay:min.98.0[%], Lot STK3790 , 和光薬品)、硝酸鉄()九水和物をそれぞれ

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パルスレーザー堆積法による[ABO3/REMO3]

(A=La, Ca B=Fe, Mn RE=Bi, La, M=Fe, Fe1-xMnx)人工超格子の作製と電気的磁気的特性

Fabrication and Electric / Magnetic Properties of [ABO3/REMO3]

(A=La, Ca B=Fe, Mn RE=Bi, La, M=Fe, Fe1-xMnx) Superlattices Grown by Pulsed Laser Deposition

Method

日本大学理工学部 理工学研究科 電子工学専攻

M2027 渡部雄太

Department of Electronics & Computer Science

College of Science & Technology, Nihon University,

M2027, Yuta Watabe

Abstract:本実験の目的は、パルスレーザー堆積(Pulsed laser deposition : PLD)法により、原子レベルで制御された清浄な界面構造を持つ酸化物人工超格子を作製することである。作製する酸化物人工超格子は[ABO3/REMO3]

(RE=Bi,La M=Fe, Fe1-xMnx A=La, Ca B=Fe, Mn)である。[ABO3/REMO3]人工超格子を作製する前段階として、ABO3,

REMO3単相膜の成長速度と LFO バッファー層との成長速度から成膜速度比を算出し、ABO3, REMO3に対してそれぞれ所望のユニット数が成長するように照射パルス数を決定して成膜を行った。超格子は各層 7units を 14 回繰り返して作製した [7-units ABO3 / 7-units REMO3]14人工超格子を作製した。すべての人工超格子において薄膜表面像はSTO 基板由来のステップテラス構造を示しており、XRD 測定結果からサテライトピークを確認し、基板全体に均一な超構造が形成されたことが分かった。CMO シリーズ超格子においては面内格子定数が基板ピークと一致していなかったが、バルク値から 2.3%大きな値をとっており、内部歪を持って成長していた。[CFO/BFO]超格子の X 線反射率測定のフィッティング結果から、CFO が 6.94 ユニットというフィッティング結果を得た。ペチーニ法で作製した超高密度ターゲットを用いることによって 0.84%の誤差で成膜することが出来た。[CFO/BFMO]超格子におけるBFMO 層内 Fe0.8Mn0.2 1 個あたりの飽和磁気モーメントは 300K においてバルク値の約 4 倍であった。また、キュリー温度は約 450K となり、室温以上で弱磁性であることが分かった。

1.背景

近年マルチフェロイック物質が注目を集めている。マルチフェロイック物質とは物質中の電子の持つスピン、軌道、電荷、もしくは電気分極に関する自由度の複数が同時に強的な秩序を示す物質群を指す。また、ほとんどの場合、これらの電子の自由度は、同時に格子の自由度と結合している。例えば、強磁性、強誘電性、強弾性などの性質を複数有する物質系である。マルチフェロイック物質は、異なる秩序状態の相互作用により新奇な応答現象が期待される。例えば、磁場による電気分極の応答や電場による磁化の応答などである[1][2][3]。強磁性と強誘電性が共存する物質として BiMnO3

[4] , TbMnO3[5][6][7]など

がある。これらは新たな物質開拓や新たなセンサー・デバイスへの応用など今後の展開が期待される[8][9]。

代表的なマルチフェロイック材料である BiFeO3 (BFO)

は室温で反強磁性、強誘電性を持つ。また、強誘電転移温度(TC)が 1100K、ネール温度(TN)は 640K と室温よりも非常に高い。そのため、BFO の磁性を反強磁性から強磁性へ相変化させることで室温での強磁性強誘電性マルチフェロイックが発現すると考えた。

BFO を用いた強磁性強誘電性マルチフェロイック発現のため、ペロブスカイト構造を持つ SrTiO3(STO)基板上に擬似ペロブスカイト構造を持つ BFO、ABO3(A=La, Ca

B=Fe, Mn)を数層ごと交互に積層させる。BFO の Fe の価数は 3 価、ABO3の Fe の価数は 4 価である。BFO と ABO3

との人工超格子構造を作製し、界面に位置する Fe3+と Fe4+

のイオン間で電界印加によって電子を移動させ、BFO のFeの電子軌道を Fe3+(3d)5 から Fe4+(3d)4へと変化させる。金森グッドイナフの法則[10][11][12]より電子軌道が変化することで反強磁性から強磁性へ相変化すると考えた。このような電子移動による界面物性の変化は、両者とも絶縁体の超格子構造(LaAlO3 / SrTiO3)界面で 2次元伝導性を示し、低温では超伝導にさえなること、さらに強磁性を

示唆する特性が発現していることからも期待できる。[13]-[19]

本研究では[ABO3/REMO3]超格子を作製にすることにより、強誘電性‐強磁性マルチフェロイック特性及び巨大電気磁気効果を併せ持つ新機能材料を発現させることが最終目的である。

2.目的

本研究の目的は、酸化物人工超格子を作製し、室温において強磁性・強誘電性を示し、かつ巨大電気磁気効果の発現を目指している。本論では、ペチーニ法による超高密度ターゲットの作製、酸化物人工超格子の作製方法の確立、パルスレーザー堆積(Pulsed laser deposition : PLD)

法により、材料”A”、”B”を交互に積層させた酸化物人工超格子の作製、作製した酸化物人工超格子の結晶構造の詳細な解析及び電気的・磁気的特性を測定したので述べる。材料”A”は LaFeO3(LFO)、BiFeO3(BFO)、BiFe1-xMnxO3 (BFMO)、材料”B”は CaFeO3(CFO)、CaMnO3 (CMO)、LaMnO3(LMO)とした。LFO、CFO ターゲットはペチーニ法により作製した。人工超格子作製前に 7units LaFeO3バッファー層を成膜し、その際の成膜速度と BFO,BFMO, CFO, CMO, LMO それぞれの成膜速度から成長速度比を算出した。所望のユニット数を得るため、レーザーの照射パルス数をあらかじめ決定して超格子の作製を行った。超格子は各層 7units を 14 回繰り返して作製した [7-units REMO3 / 7-units ABO3]14人工超格子を作製した。

3.実験方法・条件

3.1 ターゲット用粉末作製

3.1.1 秤量

硝酸カルシウム Ca(NO3)2・4H2O ( Assay:min.98.0[%],

Lot STK3790 , 和光薬品)、硝酸鉄(Ⅲ)九水和物をそれぞれ

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純水で十分に溶解させた後、それらをトールビーカに移して混合させた。その後、クエン酸 C6H8O7を別のビーカで純水に溶解させたものとエチレングリコール C-

2H4(OH)2を、それぞれ Ca: Fe: C6H8O7=1:1:2 Ca: Fe: C-

6H8O7 :C2H4 (OH)2=1:1:2:4 の割合でトールビーカに投入し混合させた。

3.1.2 加熱処理

混合させた溶液が入ったトールビーカをマントルヒーター(TYPE:GBR-30 , NO.H22MA24 , 100V , 600W , 大科電器株式会社)で加熱処理を行った。急激に温度を上げることによる熱衝撃によって、ビーカが破損しないように20 分ごとに一メモリずつ(約 65°C)、最大 450°C まで上昇させていき、水分が蒸発して無くなるまで加熱した。その後、送風して発火させて有機物を飛ばした。トールビーカを十分冷やした後、試料をメノウ乳鉢にて 1 時間粉砕し粉末にした。

3.1.3 仮焼き 1 回目

作製した粉末をるつぼ(アルミナ丸こう鉢 SAM-999)に移し、電気炉を用いて仮焼を行った。このときの温度勾配の条件を表 1 に記す。さらにその後、仮焼した粉末をメノウ乳鉢にて 1 時間粉砕した。

3.1.4 仮焼き 2 回目

3.1.3 にて作製した CaFeO3の 800, 850 , 900°C をそれぞれ同じ仮焼温度で、さらに仮焼時間を 48 時間追加し仮焼を行った。さらにその後、メノウ乳鉢にて粉末の粉砕を2 時間行った。

表 1 仮焼条件

表 2 仮焼条件

3.2[ABO3/REMO3]人工超格子の作製

3.2.1 SrTiO3(STO)基板表面処理

本実験では STO(001)の 5mm×5mm の基板を用いた。アセトン、エタノールで超音波洗浄を行った。これらのプロセスにおいて、その都度終了するごとに光学顕微鏡を用いて基板表面を観察し、付着物等の汚染の有無を慎重に確認した。バッファードフッ酸(BHF, pH=5.0, 関東化学株式会社)にてエッチング処理し TiO2層を終端面とした。BHF 処理の前に、純水中において 30 分超音波洗浄を行った後、BHF(pH=5.0)にて 60sec 超音波洗浄を行った。BHF

での洗浄処理後、アルミナ坩堝(新和科学株式会社:RESCO 純度 99.98% 20ml)に入れ高温電気炉を用いて 920°C、6 時間アニールを行った。

3.2.2 成膜条件

成膜条件を表 3 に示す。成膜には PLD 法を用いた。使用レーザーは KrF エキシマレーザーを用いた。基板は基

板ホルダーに Ag ペースト(Leitslber200:No.15035)を用いて、基板ホルダー中央に固定した。ターゲット‐基板間距離は 50mm とした。レーザーアブレーションによって発生したプルームの中央が基板と当たるようにレーザー位置、ターゲット位置を調整した。RHEED の反射光強度をモニタリングしながら原子層レベルの成長制御を行った。PLD 成膜では、同じセッティングであっても成膜ごとに成長速度に数%の誤差がある。そのため、安定したRHEED 振動が得られる LFO の成膜速度を基準として、その他薄膜の成長速度を微調整した。図 1 (b)のように超格子作製直前にバッファー層として LFOを 7ユニット成長させて成膜速度を確認し、ABO3, REMO3に対して所望のユニット数が成長するように照射パルス数を算出して成膜を行った。作製した人工超格子の組み合わせは、[REMO/CMO]14, [REMO/LMO]14,を STO 基板上に、

[REMO/CFO]14を Nb-STO 基板上に成膜した。また、Nb-STO 基板上に成膜した人工超格子については、薄膜成膜後に Au を PLD 法にて成膜した。表 4 の条件で Au を成膜した後、表 5 の条件でさらに Au の成膜を行った。

表 4 Au 成膜時の成膜条件 1

成膜雰囲気 Ar

成膜時圧力[Pa] 2.0

ガス流量[ccm] 3.0

ヒーター温度[°C] 100

使用レーザー KrF

レーザー波長[nm] 248

レーザー周波数[Hz] 1

レーザーエネルギー密度[J/cm2] 4.5

レーザー照射回数[pulses] 20

表 3 成膜条件

成膜雰囲気 O2

成膜時圧力[Pa] 20

ヒーター温度[°C] 670

使用レーザー KrF

レーザー波長[nm] 248

レーザー周波数[Hz] 4

レーザーエネルギー密度[J/cm2] 2.7~2.8

基板-ターゲット距離[mm] 50

物質名 仮焼温度[°C]

時間

[h]

温度勾配[°C/min]

雰囲気

CaFeO3

500

24

5

大気中

600

700

800

850

900

物質名 仮焼温度

[°C]

時間 温度勾配

[°C/min] 雰囲気

[h]

800 48

CaFeO3

850

48 5 大気中

900 48 表 5 Au 成膜時の成膜条件 2

成膜雰囲気 Ar

成膜時圧力[Pa] 2.0×10-4

ガス流量[ccm] 0.4

ヒーター温度[°C] 100

使用レーザー KrF

レーザー波長[nm] 248

レーザー周波数[Hz] 1

レーザーエネルギー密度[J/cm2] 4.5

レーザー照射回数[pulses] 80

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4.評価方法・条件

4.1 反射高速電子回折 (Reflection High Energy Electron

Diffraction : RHEED)

図 1 に(a)RHEED の概略図、(b)STO 基板の RHEED パターンを示す。基板に対して極低角に電子線を入射することで図 1(b)のような RHEED パターンが現れる。RHEED パターンの反射スポットの強度を成膜中に測定することで基板表面状態を明らかにできる。強度比が振動した場合、ピーク頂点で膜膜が一層形成されたことを意味し、振動ピーク頂点から次の振動ピーク頂点までの時間間隔が薄膜一層の形成時間となり Layer by Layer 成長していることを示す。

本実験では、成膜中に RHEED振動の解析を行い、ABO3,

REMO3単相膜と LFO との成膜速度比の算出に用いた。強度比が低下して観測しにくくなった場合は加速電流を上昇させ、強度比を上げた。図 1(b)においては 65~70sec

の間で強度比を上昇させている。

4.2 原子間力顕微鏡 (Atomic Force Microscope : AFM)

基板表面及び成膜後の薄膜の表面形状像を、原子間力顕微鏡 (Veeco Icon) のタッピングモードで行った。サンプルをそれぞれ 1、2、5 μm で 3 点観測した。

5.結果

5.1 ターゲット用粉末作製

5.1.1XRD 測定結果

ペチーニ法により作製した CFO(仮焼温度:500~900°C,仮焼時間:24 時間)の XRD 測定結果を図 2 に示す。図 5.1 より、焼成温度 800°C 以下の場合、クエン酸、エチレングリコールの炭酸塩が残留していることを確認した。CFO は 850°C以上で仮焼を行うことが必要であるとわかった。また電気炉の仮焼温度を 800°C, 850°C, 900°C として仮焼時間をそれぞれ 24 時間行い、その後さらに 48 時間仮焼を追加した時のXRD結果を図 3に示す。図 3より、それぞれの仮焼温度で Ca2Fe2O5の粉末のピークが確認できたが、800°C では Intensity(a.u.)が低く結晶性が良くない。また、2Theta が 39°付近で CaCO3の粉末のピークが表れており、炭酸塩の残留を確認できる。

5.1.2 粒度分布測定結果

図 4 に CFO(仮焼温度 800°C , 850°C , 900°C , 仮焼時間24+48 時間)の粒度分布測定結果を示す。図 4 から仮焼時間を 24+48 時間としたとき、仮焼温度が 800°C の場合、粒径が 1[μm]付近をピークとして分布しており、850°C ,

900°C では、粒径は 2~5[μm]付近がピークとなった分布となっている。これから、仮焼温度が高いほど粒成長をし、粒径が大きくなることを確認できた。また、仮焼時間が 24 時間の場合、粒径が 200[μm]付近をピークとした分布となっているが、1[μm]程度の粒径のものも確認できる。さらに 48 時間仮焼を行ったことで粒径が小さくなることが分かった。

X線解析及び粒度分布測定結果より、仮焼温度 850°C、仮焼時間 72 時間の場合が CFO ターゲット用粉末作製の最適条件であることが分かった。

10 20 30 40 50 60 70 80 90

Inte

nsi

ty (

a.u

.)

2Theta (degs)

図 1 (a)RHEED の概略図。振動周期のピークが上昇しきったところで薄膜が一層形成されたことを示している。(b)基板表面処理後の SrTiO

3基板の RHEED パターン

(a)

Incident

Beam

Diffracted

Beam

Substrate

RHEED

pattern

RHEED Oscillation

Substrate

Substrate

Substrate

Substrate

(b)

10 20 30 40 50 60 70 80 90

2Theta (degs)

Inte

nsi

ty (

a.u

.)

図 3 仮焼後の CFO 粉末の XRD 測定結果(仮焼温度

800, 850, 900°C, 仮焼時間 24+48 時間)

0.1 1 10 100 10000

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

分布

(%

)

粒径 (μ m)CFO(仮焼温度800℃, 仮焼時間72h)

0.1 1 10 100 10000

2

4

6

8

10

12

CFO(仮焼温度900℃, 仮焼時間72h)

分布

(%

)

粒径 (μ m)0.1 1 10 100 1000

0

2

4

6

8

10

12

CFO (仮焼温度850℃, 仮焼時間72h)

分布

(%

)

粒径 (μ m)

0.01 0.1 1 10 100 10000

5

10

15

20

25

30

分布

(%

)

粒径 (μ m)CFO(仮焼温度800℃)

0.01 0.1 1 10 100 10000

5

10

15

CFO(仮焼温度850℃)

分布

(%

)

粒径 (μ m)0.01 0.1 1 10 100 10000

2

4

6

8

10

CFO(仮焼温度900℃)

分布

(%

)

粒径 (μ m)

図 4 仮焼後の CFO粉末の粒度分布測定結果

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5.2 [ABO3/REMO3] (A=La, Ca B=Fe, Mn RE=Bi, La, M=Fe,

Fe0.8Mn0.2)人工超格子の作製

5.2.1 LFO バッファー層の RHEED 振動

図 5 に LFO 薄膜の RHEED 振動の図を示す。レーザー周波数は 2Hz にて行った。明瞭な RHEED 振動が確認でき Layer-by-Layer 成長していることがわかった。右縦軸に振動のピーク間隔を示す。図 5 より、薄膜成長時間が安定してきた 5 層目から 7 層目の成長速度から、BFO,BFMO, CFO,CMO,LMO それぞれの成長速度との成長速度比を算出した。表 6 に LFO に対する各薄膜の成長速度レートをまとめた。

表 6 LFO の成長速度比に対する各薄膜の成長速度比

CMO CFO LMO BFO BFMO

0.532 0.699 0.563 1.01 0.720

5.2.2 [CMO/BFMO]人工超格子の作製

5.2.2.1 薄膜表面像

図 6 (a)に CMO/BFMO 人工超格子の表面像を示す。この表面像は 2 μm × 2 μm 範囲で測定した。ステップテラス構造が確認できた。しかし 10~13nm の微粒子が多数存在

しており、基板全体に粒子が分布していることが分かった。RHEED パターンはストリーク上にスポットを確認し、微粒子由来の島状成長を示していることが分かった。

5.2.2.2 XRD 測定結果

図 7 に[CMO/BFMO]人工超格子の XRD パターンとSTO(002)周辺を拡大した XRD 像を示す。STO(001),(002)

周辺に超格子構造を示すサテライトピークが確認できた。

STO(002)周辺では基板ピーク周辺に-2~+1 のサテライトピークが確認できた。サテライトピークの間隔から算出した [CMO/BFMO]1格子の膜厚は 4.1211 nmであること、

図 7 の STO(002)周辺を拡大した XRD 像の 0 次ピークから格子定数が 0.39889 nm であると分かった。また、ロッキングカーブの半値幅は 0.07490º と非常に結晶性が高いことがわかった。

図 8 に低角で測定した X 線反射(XRR)測定を示す。この結果をフィッティングして計算を行った結果、BFMO、CMOの膜厚はそれぞれ 2.1385 nm (5.2537 unit)、2.0423 nm

(5.4824 unis)と見積もった。併せて[CMO/BFMO]格子の 1

周期あたりの膜厚は 4.1808 nm、平均格子定数は0.38942nm となった。

図 9 に CMO/BFMO 人工超格子の逆格子マップ測定結果を示す。STO(003),STO(103),STO(113)周辺を測定した。STO(003)周辺では、基板と薄膜のピークが面内方向で一致しているが、STO(103), (113)では、基板ピークから薄膜ピークがずれていることがわかった。

5.2.3[CMO/BFO]人工超格子の作製

20 40 60 80 100 12010

0

101

102

103

+1

-1

+1

-2

-2

0

-1

0

ST

O(0

04)

ST

O(0

03)

ST

O(0

02)

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

01)

40 42 44 46 48 50 5210

0

101

102

103

-1

+1-2

0

Inte

nsi

ty (

arb.

unit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

02)

ST

O(0

02

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

04

)

図 7 CMO/BFMO人工超格子の XRD測定結果

図 8 CMO/BFMO人工超格子の低角 X線反射率法による

振動周期の結果

1 2 3 4 5 6 710

0

101

102

103

Measurement

Fitting

Inte

nsi

ty (

arb.

unit

s)

2 (degrees)

図 9 CMO/BFMO人工超格子の逆格子マップ

-0.1 0.0 0.17.25

7.30

7.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

7.95

q[110]

(nm-1)

q[0

01] (

nm

-1)

2 = 72.5718 / 36.2884

2 : 66.0 ~ 86.9572, 0.04396016step, 270steps, 12sec

w : 33.5 ~ 38.5, 0.05 step, 100 steps

taken by D8 with Line Detecter 20120925

CMO-BFMO_001 (003)s phi=-45

3.0005.56710.3319.1735.5766.00122.5227.3421.7782.5145226955000

2.5 2.6 2.77.25

7.30

7.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

7.95

q[0

01

] (n

m-1)

q[-100]

(nm-1)

2 = 46.4820 / 23.241

2 : 46.0 ~ 52.5572, 0.04396016step, 270steps, 7sec

w : 20.55 ~ 26.0, 0.05 step, 108 steps

CMO-BFMO_001 (103)+ phi=+180 taken by D8 with Line Detecter 20120925

4.000

7.701

14.83

28.55

54.97

105.8

203.8

392.3

755.3

1454

2800

3.5 3.6 3.7 3.87.25

7.30

7.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

7.95

q[0

01

] (n

m-1

)

q[110]

(nm-1)

2 = 81.7336 / 66.1062

2 : 75.0 ~ 86.9572, 0.04396016step, 270steps, 12sec

w : 65.0 ~ 68.6, 0.05 step, 71 steps

CMO-BFMO_001 (113)+ phi=-45 taken by D8 with Line Detecter 20120925

4.00

6.48

10.5

17.0

27.6

44.7

72.5

117

190

309

500

STO(003) STO(103) STO(113)

STO Sub.

BFMO/CMO Superlattice

0 20 40 60 80 100 120 140 1600

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

Time (sec)

12

14

16

18

20

22

24

Tim

e f

or

on

e u

nit

gro

wth

(s)

図5 LFOをSTO基板上に7ユニット成長させた際のRHHED振動像

右軸は1ユニット成長する時間を示した。

0.0 15.2[nm] 0.0 15.2[nm] 0.0 15.2[nm]

(a) (b) (c)

図6 (a) [CMO/BFO], (b) [CMO/BFMO], (c) [CMO/LFO]人工超格子のRHEEDパターン

及び薄膜表面像。RHEEDの入射方向はSTO[100]方向とした。

Page 5: パルスレーザー堆積法による[ABO /REMO (A=La, Ca B=Fe ...yamanoya.ecs.cst.nihon-u.ac.jp/Thesis/ShortThesis...社:RESCO 純度99.98% 20ml)に入れ高温電気炉を用い

5.2.3.1 薄膜表面像

図 6 (b)に BFO/CMO 人工超格子の表面像を示す。この表面像は 2 μm × 2 μm 範囲で測定した。ステップテラス構造が確認できるが、11~14nm の微粒子が多数基板全体に存在していることがわかった。

5.2.3.2 XRD 測定結果

図 10 に CMO/BFO 人工超格子の XRD パターンとSTO(001)周辺を拡大した XRD 像を示す。STO(001),(002),(003,(004)周辺に超格子構造を示すサテライトピークが確認できた。

STO(001)周辺の XRD 像から、基板ピーク周辺に-2~+2

のサテライトピーク、その周辺に Laue 振動が明瞭に現れた。サテライトピークの間隔及び、Laue 振動の間隔から算出した [CMO/BFO]1格子の膜厚は 4.779 nm、[CMO/BFO]14格子の膜厚は 67.4090 nm であること、0 次ピークから格子定数が 0.3846 nm であると分かった。また、ロッキングカーブの半値幅は 0.0736º と非常に結晶性が高いことがわかった。

図 11 に低角で測定した X 線反射(XRR)測定を示す。この結果より、BFO、CMO の膜厚はそれぞれ 2.4137 nm

(5.930 unit)、2.3597 nm (6.334 unis)と見積もった。併せて[BFO6/CMO6]格子の 1 周期あたりの膜厚は 4.1808 nm、平均格子定数は 0.38942nm となった。

図 12にCMO/BFO人工超格子の逆格子マップ測定結果を示す。STO(103),STO(113)周辺を測定した。基板と薄膜のピークが面内方向で一致していないことがわかった。

5.2.4[CMO/LFO]人工超格子の作製

5.2.4.1 薄膜表面像

図 6 (c) に STO 基板表面及び CMO/LFO 人工超格子の表面像を示す。この表面像は 2 μm × 2 μm 範囲で測定した。ステップテラス構造が確認できた。しかし図(a),(b)に比べて微粒子の数及び高さは減少してはいるが(c)では細かい粒子が存在しており、基板全体に粒子が分布していることが分かった。

5.2.4.2 XRD 測定結果

図 13 に CMO/LFO 人工超格子の XRD パターンとSTO(002)周辺を拡大した XRD 像を示す。STO(001),(002),(003),(004)周辺に超格子構造を示すサテライトピークが確認できた。

STO(002)周辺の XRD 像を図 16 に示す。基板ピーク周辺に-2~+1 のブロードなサテライトピークが現れた。サテライトピークの間隔から算出した [CMO/LFO]格子の 13

膜厚は 4.75688 nm であること、図 16 の 0 次のピークから格子定数が 0.38215 nm であると分かった。また、ロッキングカーブの半値幅は 0.09739º と非常に結晶性が高いことがわかった。

図 14 に低角で測定した X 線反射(XRR)測定を示す。この結果より、LFO、CMO の膜厚はそれぞれ 2.4355 nm

(6.1389 unit)、2.0001nm (5.3691 unis)と見積もった。併せて[LFO6/CMO5]格子の 1 周期あたりの膜厚は 4.4356 nm、平均格子定数は 0.38544nm となった。

図 15に CMO/LFO人工超格子の逆格子マップ測定結果を示す。STO(103),STO(113)周辺を測定した。基板と薄膜のピークが面内方向で一致していないことがわかった。

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

101

102

103

104

Inte

nsi

ty (

arb.

unit

s)

2 (degrees)

-4

-2

-1-3

0

-3

+2

-2+1

-1

+1

-2

+2

0

-1

0

ST

O(0

04)

ST

O(0

03)

ST

O(0

02)

ST

O(0

01)

-3-2

-1 0

18 20 22 24 26 28

102

103

104

105

+2

+1

-1

-2

0

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

01)

ST

O(0

01)

ST

O(0

03)

ST

O(0

04)

図 10 CMO/BFO人工超格子の XRD測定結果

1 2 3 4 5 6 7 810

0

101

102

103

104

105

106

Measurement

Fitting

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

図 11 CMO/BFO人工超格子の低角 X線反射率法による

振動周期の結果

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

101

102

103

104

-2

Inte

nsi

ty (

arb.

unit

s)

2 (degrees)

+1 +1

-1

+2

-2

+2

0

-10

42 44 46 48 50 5210

1

102

103

104

-2

ST

O(0

02

)

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

+1

-10

ST

O(0

02

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

04

)

図 13 CMO/LFO人工超格子の XRD結果

20 40 60 80 100 120

101

102

103

104

105

ST

O(0

04

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

02

)

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

01

)

101 102 103 104 105 106 10710

1

102

103

104

ST

O(0

04

)

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

04

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

04

)

図 12 CMO/BFO人工超格子の逆格子マップ

2.5 2.6 2.77.30

7.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

7.95

8.00

8.05

2 = 77.2839 / 57.6771

2 : 71.3 ~ 83.2572, 0.04396016step, 270steps, 8sec

w : 55.35 ~ 59.5, 0.05 step, 82 steps

taken by D8 with Line Detecter 20120922

CMO-BFO_001 (103)+ phi=-90

5.00

10.7

22.9

48.9

105

224

478

1.02k

2.19k

4.68k

10.0k

q[0

01

] (n

m-1

)

q[010]

(nm-1)

3.5 3.6 3.7 3.87.30

7.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

7.95

8.00

8.05

4.00

8.75

19.1

41.8

91.5

200

437

956

2.09k

4.57k

10.0k

2 = 81.8206 / 66.1478

2 : 75.7 ~ 87.6572, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 64.0 ~ 68.4, 0.05 step, 88 steps

taken by D8 with Line Detecter 201209

CMO-BFO_001 (113)+ phi=+45

q[0

01] (

nm

-1)

q[1-10]

(nm-1)

STO(103) STO(113)

STO Sub.

BFO/CMO Superlattice

Page 6: パルスレーザー堆積法による[ABO /REMO (A=La, Ca B=Fe ...yamanoya.ecs.cst.nihon-u.ac.jp/Thesis/ShortThesis...社:RESCO 純度99.98% 20ml)に入れ高温電気炉を用い

5.2.5[LMO/BFMO]人工超格子の作製

5.2.5.1 薄膜表面像

図 16(b)に LMO/BFMO 人工超格子の表面像を示す。この表面像は 2 μm × 2 μm 範囲で測定した。ステップテラス構造が形成されていることが確認できるが、STO のステップテラス構造に比べて不均一な形となっていた。

5.2.5.2 XRD 測定結果

図 17 に LMO/BFMO 人工超格子の XRD パターンとSTO(004)周辺を拡大した XRD 像を示す。STO(003),(004)

の低角側にピークが現れた。

また、ロッキングカーブの半値幅は 0.19748º であることがわかった。

図 18に LMO/BFMO人工超格子の逆格子マップ測定結果を示す。STO(103),STO(113)周辺を測定した。基板と薄膜のピークが面内方向で一致していることがわかった。

5.2.6[LMO/BFO]人工超格子の作製

5.2.6.1 薄膜表面像

図 16 (a)に LMO/BFO 人工超格子の表面像を示す。この表面像は 2 μm × 2 μm 範囲で測定した。ステップテラス構造を確認できるが、(a)と同様に STO のステップテラス構造に比べて不均一な形となっていた。

5.2.6.2 XRD 測定結果

図 19 に LMO/BFO 人工超格子の XRD パターンとSTO(004)周辺を拡大した XRD 像を示す。基板ピークの低角側にピークが現れた。また、ロッキングカーブの半値幅は 0.10972º であることがわかった。

図 20に LMO/BFO人工超格子の逆格子マップ測定結果を示す。STO(103),STO(113)周辺を測定した。基板と薄膜のピークが面内方向で一致していることがわかった。

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

10-5

10-4

10-3

10-2

10-1

Measurement

Fitting

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)図 14 CMO/LFO人工超格子の低角 X線反射率法による

振動周期の結果

図 15 CMO/LFO人工超格子の逆格子マップ

2.5 2.6 2.7

7.4

7.5

7.6

7.7

7.8

7.9

8.0

8.1

3.00

5.88

11.5

22.6

44.2

86.6

170

332

651

1.28k

2.50k

2 = 77.3179 / 57.0941

2 : 73.44 ~ 85.3972, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 56.15 ~ 62.0, 0.05 step, 117 steps

CMO-LFO_001 (103)+ phi=+90 taken by D8 with Line Detecter 20120925

q[0

01

] (nm

-1)

q[0-10]

(nm-1)

3.55 3.60 3.65 3.70 3.75

7.4

7.5

7.6

7.7

7.8

7.9

8.0

8.1

q[0

01

] (n

m-1

)

q[1-10]

(nm-1)

3.00

5.00

8.35

13.9

23.2

38.7

64.6

108

180

300

500

2 = 81.7955 / 66.1372

2 : 75.7 ~ 87.6572, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 64.5 ~ 68.2, 0.05 step, 74 steps

CMO-LFO_001 (113)+ phi=+45 taken by D8 with Line Detecter 20120925

STO(103) STO(113)

LFO/CM e

STO Sub.

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

101

102

103

104 S

TO

(00

4)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

02

)

Inte

nsi

ty (

arb.

unit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

01

)

44 45 46 47 48 49

102

103

104

105

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

02)

ST

O(0

02)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

04

)

図 19 LMO/BFO人工超格子の XRD測定結果

-0.1 0.0 0.17.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

q[0

01

] (nm

-1)

q[100]

(nm-1)

10.0

18.2

33.1

60.3

110

200

364

663

1.21k

2.20k

4.00k

2 = 72.9149 / 36.4574

2 : 64.5 ~ 76.4572, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 33.0 ~ 37.7, 0.05 step, 94 steps

taken by D8 with Line Detecter 20120927

LMO-BFO_002 (003)s phi=0

2.50 2.55 2.60 2.657.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

q[0

01

] (n

m-1

)

q[100]

(nm-1)

10.0

19.4

37.6

72.9

141

274

531

1.03k

2.00k

3.87k

7.50k

2 = 77.5350 / 57.20224

2 : 70.0 ~ 81.9572, 0.04396016step, 270steps, 8sec

w : 55.5 ~ 58.7, 0.05 step, 64 steps

LMO-BFO_001 (103)+ phi=0 taken by D8 with Line Detecter 20120927

3.55 3.60 3.65 3.707.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

q[0

01] (

nm

-1)

q[110]

(nm-1)

2 = 82.0717 / 66.2752

2 : 74.0 ~ 85.9572, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 64.1 ~ 68.0, 0.05 step, 78 steps

LMO-BFO_001 (113)+ phi=-45 taken by D8 with Line Detecter 20120927

5.00

9.98

19.9

39.7

79.2

158

315

629

1.26k

2.51k

5.00k

STO(003) STO(103) STO(113)

図 20 LMO/BFO人工超格子の逆格子マップ

3.55 3.60 3.65 3.707.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

q[0

01] (

nm

-1)

q[1-10]

(nm-1)

2 = 81.7489 / 66.1138

2 : 75.7 ~ 87.6572, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 64.2 ~ 68.2, 0.025 step, 160 steps

LMO-BFMO_001 (113)+ phi=+45 taken by D8 with Line Detecter 20120922

3.00

6.30

13.2

27.8

58.3

122

257

540

1.13k

2.38k

5.00k

2.45 2.50 2.55 2.60 2.657.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

q[0

01

] (n

m-1

)

q[100]

(nm-1)

2 = 77.2122 / 57.0410

2 : 71.3 ~ 83.2572, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 55.2 ~ 58.8, 0.025 step, 144 steps

LMO-BFMO_001 (103)+ phi=0 taken by D8 with Line Detecter 20120922

5.00

9.98

19.9

39.7

79.2

158

315

629

1.26k

2.51k

5.00k

STO(103) STO(113)

図 18 LMO/BFMO人工超格子の逆格子マップ

0.0 0.4[nm] 0.0 3.3[nm] 0.0 5.0[nm]

(a) (b) (c)

図16 (a) [LMO/BFO], (b) [LMO/BFMO], (c) [LMO/LFO]人工超格子のRHEEDパターン

及び薄膜表面像。RHEEDの入射方向はSTO[100]方向とした

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5.2.7[LMO/LFO]人工超格子の作製

5.2.7.1 薄膜表面像

図 16 (c)に LMO/LFO 人工超格子の表面像を示す。この表面像は 2 μm × 2 μm 範囲で測定した。STO のステップテラス構造が確認できた。

5.6.2XRD 測定結果

図 21 に LMO/LFO 人工超格子の XRD パターンとSTO(002)周辺を拡大した XRD 像を示す。STO(002)の周辺にサテライトピークが現れ、-1~0 ピークの間に Laue 振動が現れた。サテライトピーク間隔から算出した[LMO/LFO]格子の膜厚は 4.96559 nm であること Laue 振動の間隔から算出した [LMO/LFO]14格子の膜厚は69.5182 nm であることが分かった。

また、ロッキングカーブの半値幅は 0.07527º と非常に結晶性が高いことがわかった。

図 22に LMO/LFO人工超格子の逆格子マップ測定結果を示す。STO(103),STO(113)周辺を測定した。基板と薄膜のピークが面内方向で一致していることがわかった。

5.2.8[CFO/BFMO]人工超格子の作製

5.2.8.1 薄膜表面像

図 23 (b)に CFO/BFMO 人工超格子の表面像を示す。この表面像は 5 μm × 5 μm 範囲で測定した。STO のステップテラス構造が確認できた。

5.2.8.2 XRD 測定結果

図 24 に CFO/BFMO 人工超格子の XRD パターンとSTO(002)周辺を拡大した XRD 像を示す。STO(001),(002),

(003),(004)周辺に超格子構造を示すサテライトピークが確認できた。

STO(002)周辺では基板ピーク周辺に-1~+1 のサテライトピーク、その周辺に Laue 振動が明瞭に現れた。サテライトピークの間隔及び、Laue 振動の間隔から算出した

[CFO/BFMO]格子の膜厚は 5.86056 nm であること、[CFO/BFMO]14格子の膜厚は 76.9688 nm であることが分かった。図 20 の STO(002)周辺を拡大した XRD 像の 0 次ピークから格子定数が 0.37842 nm であると分かった。また、ロッキングカーブの半値幅は 0.05724º と非常に結晶性が高いことがわかった。

図 25 に CFO/BFMO 人工超格子の逆格子マップ測定結果を示す。STO(003), STO(103), STO(113)周辺を測定した。STO(003), STO(103), STO(113)のいずれも基板と薄膜のピークが面内方向で一致していること、サテライトピークが明瞭に確認することができた。

5.2.9[CFO/BFO]人工超格子の作製

5.2.9.1 薄膜表面像

図 23 (a)に CFO/BFO 人工超格子の表面像を示す。この表面像は 5 μm × 5 μm 範囲で測定した。STO のステップテ

20 40 60 80 100 120

101

102

103

104

105

+1

-1

0 ST

O(0

04

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

02

)

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

01

)

43 44 45 46 47 48 4910

1

102

103

104

105

+1

-1

0

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

02)

ST

O(0

02

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

04

)

図 21 LMO/LFO人工超格子の XRD測定結果

2.5 2.6 2.77.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

q[0

01] (

nm

-1)

q[100]

(nm-1)

5.00

10.7

22.9

48.9

105

224

478

1.02k

2.19k

4.68k

10.0k

2 = 77.2298 / 57.05

2 : 71.0 ~ 82.9572, 0.04396016step, 270steps, 8sec

w : 55.0 ~ 59.5, 0.05 step, 90 steps

LMO-LFO_001 (103)+ phi=0 taken by D8 with Line Detecter 20120922

3.55 3.60 3.65 3.707.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

q[0

01] (

nm

-1)

q[110]

(nm-1)

4.00

8.16

16.7

34.0

69.3

141

289

589

1.20k

2.45k

5.00k

2 = 81.7665 / 61.1227

2 : 75.5 ~ 87.452, 0.04396016step, 270steps, 9sec

w : 64.0 ~ 68.5, 0.05 step, 90 steps

LMO-LFO_001 (113)+ phi=-45 taken by D8 with Line Detecter 20120922

STO(103) STO(113)

図 22 LMO/LFO人工超格子の逆格子マップ

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

101

102

103

104

105

+3

ST

O(0

04

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

02

)

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

01

)

+3

-1

0+2

+1

-1+1

-2

0

-1

0

+2+1

0

+2

+1

44 45 46 47 48 49 50 51

102

103

104

105

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

02

)

+1-1

0

ST

O(0

02

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

04

)

図 24 CFO/BFMO人工超格子の XRD測定結果

-0.1 0.0 0.1

7.4

7.5

7.6

7.7

7.8

7.9

8.0

8.1

8.2

8.3

q[0

01

] (nm

-1)

q[100]

(nm-1)

2 = 72.6161 / 36.3080

2 : 69.17 ~ 81.1272, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 35.0 ~ 40.0, 0.05 step, 100 steps

taken by D8 with Line Detecter 20120927

CFO-BFMO_001 (003)s phi=0

7.00

12.6

22.7

40.8

73.5

132

238

429

772

1.39k

2.50k

2.5 2.6

7.4

7.5

7.6

7.7

7.8

7.9

8.0

8.1

8.2

8.3

q[0

01

] (n

m-1

)

7.00

15.9

35.9

81.5

185

418

948

2.15k

4.87k

11.0k

25.0k

2 = 77.2312 / 57.053

2 : 72.04 ~ 83.9972, 0.04396016step, 270steps, 8sec

w : 55.6 ~ 59.0, 0.05 step, 67 steps

CFO-BFMO_001 (103)+ phi=0 taken by D8 with Line Detecter 20120927

q[100]

(nm-1)

3.5 3.6 3.7

7.4

7.5

7.6

7.7

7.8

7.9

8.0

8.1

8.2

8.3

q[0

01

] (n

m-1)

q[110]

(nm-1)

2 = 81.7729 / 66.1258

2 : 77.17 ~ 89.1272, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 64.6 ~ 68.2, 0.05 step, 71 steps

CFO-BFMO_001 (113)+ phi=-45 taken by D8 with Line Detecter 20120927

7.00

15.9

35.9

81.5

185

418

948

2.15k

4.87k

11.0k

25.0k

STO(003

)

STO(103

)

STO(113

)

図 25 CFO/BFMO人工超格子の逆格子マップ

CFO/BFMO Superlattice STO Sub.

5×5 [μm2]

0.0 5.0[nm] 0.0 1.4[nm] 0.0 3.9[nm]

(a) (b) (c)

図23 (a) [CFO/BFO], (b) [CFO/BFMO], (c) [CFO/LFO]人工超格子のRHEEDパターン

及び薄膜表面像。RHEEDの入射方向はSTO[100]方向とした。

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ラス構造が確認できた。

5.2.9.2XRD 測定結果

図 26 に CFO/BFO 人工超格子の XRD パターンとSTO(002)周辺を拡大した XRD 像を示す。STO(001),(002),

(003),(004)周辺に超格子構造を示すサテライトピークが確認できた。

STO(002)周辺では基板ピーク周辺に-3~+2 のサテライトピークが確認できた。サテライトピークの間隔から算出した [CFO/BFO]格子の膜厚は 6.06983 nm であること、図22 の STO(002)周辺を拡大した XRD 像の 0 次ピークから格子定数が 0.38260 nm であると分かった。また、ロッキングカーブの半値幅は 0.07761º と非常に結晶性が高いことがわかった。

図 27 に CFO/BFO 人工超格子の逆格子マップ測定結果を示す。STO(003), STO(103), STO(113)周辺を測定した。いずれも基板と薄膜のピークが面内方向で一致していること、STO(103)ではサテライトピークを明瞭に確認することができた。

5.2.10[CFO/LFO]人工超格子の作製

5.2.10.1 薄膜表面像

図 23 (c)に CFO/LFO 人工超格子の表面像を示す。この表面像は 2 μm × 2 μm 範囲で測定した。ステップテラス構

が確認できた。しかし、およそ 70nm の粒子と 5~15nm の微粒子が薄膜全体に成長していることがわかった。

5.9.2XRD 測定結果

図 28 に CFO/LFO 人工超格子の XRD パターンとSTO(002)周辺を拡大した XRD 像を示す。STO(001),(002),

(003),(004)周辺に超格子構造を示すサテライトピークが確認できた。

STO(002)周辺では基板ピーク周辺に-2~+2 のサテライトピークが確認できた。サテライトピークの間隔から算出した [CFO/LFO]格子の膜厚は 6.72299 nm であること、図 24の STO(002)周辺を拡大した XRD像の 0次ピークから格子定数が 0.38018 nm であると分かった。また、ロッキングカーブの半値幅は 0.06248º と非常に結晶性が高いことがわかった。

5.3 [ABO3/REMO3] (A=La, Ca B=Fe, Mn RE=Bi, La, M=Fe,

Fe0.8Mn0.2)人工超格子の電気的磁気的特性

5.3.1 [LMO/REMO], [LMO/REMO]人工超格子のシート抵抗測定結果

図 29 に LMO シリーズ、CMO シリーズ超格子のシート抵抗を示す。いずれも半導体的挙動を示しており、それぞれのギャップエネルギーを図中に示した。LMO、CMO

単層膜のギャップエネルギーは、0.17 eV、0.076 eV であった。図中矢印の温度でギャップエネルギーが変化しており、単層膜と超格子のギャップエネルギーが同程度であることが分かった。LMO シリーズ超格子よりも CMO

シリーズ超格子のシート抵抗のほうが小さな値を示した。REMO の材料の違いから、LMO、CMO のシート抵抗の大きさが大きく変化した。界面での磁気的相互作用の影響でギャップエネルギーが変化していると考えている。

5.3.2 [CFO/BFMO]人工超格子の飽和磁化依存性

図 30に[CFO/BFMO]超格子に関する磁性原子 1個(BFMO

層内 Fe0.8Mn0.2)あたりの飽和磁化の温度依存性を示す。300K、10K で測定した磁化曲線を示す。これらの結果より、弱強磁性が発現していることが分かった。飽和磁化は、それぞれ 0.055μB、0.077μB であった。バルク値と比較すると 4~5 倍の値であった。また、Brillouin 関数を用い

てフィッティングするとキュリー温度は約 450K であった。

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

101

102

103

104

105

-3

+3

-3

ST

O(0

04

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

02

)

Inte

nsi

ty (

arb.

unit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

01

)

-2-1-3

0-3

+2 -2

+1

-1

+1

-2 +2

0

-1

0

-2-1 +10+2

+1

40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51

102

103

104

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

02)

ST

O(0

02

)

ST

O(0

03)

ST

O(0

04

)

+1+2

0

-1

-2

図 26 CFO/BFO人工超格子の XRD測定結果

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

101

102

103

104

105

+3

ST

O(0

04

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

02

)

Inte

nsi

ty (

arb.

unit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

01

)

-1 0

+2-2

+1-1 +1

-2

+2

0 -1

0

+2

-1

+10+2

+1

42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 5210

0

101

102

103

104

105

Inte

nsi

ty (

arb

. u

nit

s)

2 (degrees)

ST

O(0

02

)

-2

+1

+2

-1

0ST

O(0

02

)

ST

O(0

03

)

ST

O(0

04

)

図 28 CFO/LFO人工超格子の XRD測定結果

-0.1 0.0 0.17.25

7.30

7.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

7.95

8.00

8.05

q[0

01

] (n

m-1

)

q[100]

(nm-1)

7.00

14.5

29.9

61.9

128

265

547

1.13k

2.34k

4.84k

10.0k

2 = 72.6677 / 36.334

2 : 66.0 ~ 77.9572, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 33.8 ~ 38.2, 0.05 step, 87 steps

taken by D8 with Line Detecter 20120927

CFO-BFO_001 (003)s phi=0

2.5 2.6 2.77.25

7.30

7.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

7.95

8.00

8.05

q[0

01] (

nm

-1)

q[100]

(nm-1)

10.0

23.4

54.9

129

302

707

1.66k

3.88k

9.10k

21.3k

50.0k

2 = 77.2878 / 57.0791

2 : 70.8 ~ 82.7572, 0.04396016step, 270steps, 10sec

w : 55.2 ~ 58.6, 0.05 step, 67 steps

CFO-BFO_002 (103)+ phi=0 taken by D8 with Line Detecter 20120927

3.5 3.6 3.77.25

7.30

7.35

7.40

7.45

7.50

7.55

7.60

7.65

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

7.95

8.00

8.05

q[0

01] (

nm

-1)

q[110]

(nm-1)

2 = 81.8245 / 66.1518

2 : 75.0 ~ 86.9572, 0.04396016step, 270steps, 12sec

w : 64.0 ~ 68.0, 0.05 step, 80 steps

CFO-BFO_002 (113)+ phi=-45 taken by D8 with Line Detecter 20120927

5.00

10.7

22.9

48.9

105

224

478

1.02k

2.19k

4.68k

10.0k

STO(003) STO(103) STO(113)

図 27 CFO/BFO人工超格子の逆格子マップ

STO Sub. CFO/BFO Superlattice

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6.考察

6.1 ターゲット用粉末作製

ペチーニ法により作製した CFO(仮焼温度:500~900°C,

仮焼時間:24 時間)の XRD 測定結果より、焼成温度 800°C

以下の場合、クエン酸、エチレングリコールの炭酸塩が残留していることを確認した。CFO は 850°C 以上で仮焼を行うことが必要であることが分かった。また、仮焼時間をそれぞれ 48 時間追加した時の XRD 結果より、それぞれの仮焼温度で Ca2Fe2O5の粉末のピークが確認できたが、800°C では X 線回折強度が低く結晶性が良くない。また、2Theta が 39°付近で CaCO3の粉末のピークが表れており、炭酸塩の残留を確認できた。CFO の粒度分布測定結果から、仮焼時間を 24+48 時間としたとき、仮焼温度が高いほど粒成長をし、粒子径が大きくなることを確認した。また、48 時間仮焼を追加したことで粒径が小さくなることが分かった。

6.2 CaMnO3/REMO3/LFO//STO 人工超格子の作製

すべての CMO シリーズ超格子の表面像測定においてステップテラス構造を確認できた。また、高低差およそ10nm の微粒子を確認できた。RHEED パターンは[CMO/LFO]超格子においてはストリーク状を示しており、薄膜が平坦な二次元成長していることを確認した。また[CMO/BFO], [CMO/BFMO]においてはストリーク上にスポットを確認し、微粒子由来の島状成長を示していることが分かった。

XRD(2θ-θパターン)及び XRR の結果より、[CMO/BFO]

超格子については STO(001)周辺に-2 から+2 のサテライトピーク及びラウエ振動を確認した。[CMO/REMO]14格子の膜厚及び平均格子定数はサテライトピーク、0 次と示したピークを Nelson-Riley 関数でフィッティングした値からそれぞれ算出した。[CMO/BFO]1格子の膜厚は

4.78nm、平均格子定数は 0.3847nm、[CMO/BFO]14格子の膜厚は 66.9nm、FWHMは 0.0736であることが分かった。XRRのフィッティング結果から算出した 1サイクルあたりのユニット数はそれぞれCMOが 6.33 units, BFOが 5.93

units であることが分かった。

逆格子マップ測定より、サテライトピーク及びラウエ振動を確認できた。超格子ピークの in-plane はバルクCMOの 0.373nmよりも長い 0.382nmであることが分かった。CMO 単相膜の場合、Out-of-plane 及び in-plane の格子定数はバルク CMO と一致しており、リラックスして成長していた。しかし CMO を超格子にすることによって、格子定数は基板よりも 2.3%長く、逆格子マップ測定結果より Cube-on-Cube 成長していることが分かった。

6.3 LaMnO3/REMO3/LFO//STO人工超格子の作製

すべての LMO シリーズ超格子の表面像測定においてSTO 基板由来のステップテラス構造を確認できた。RHEED パターンはストリーク状を示しており、薄膜が平坦な二次元成長していることを示している。

XRD(2θ-θパターン)及び XRRの結果より、[LMO/BFO],

[LMO/BFMO]については薄膜ピーク、低角反射による反射周期振動を得ることができなかった。[LMO/LFO]についても低角反射周期振動は得られなかったが、超格子構造が形成されていることを示すサテライトピークを-1 から+1 まで確認することができた。さらにラウエ振動が確認でき、それらのピークから[LMO/LFO]1格子及び[LMO/LFO]14格子の膜厚は 4.97nm, 69.5nm であることが分かった。

逆格子マップ測定より、すべての LMO シリーズ超格子からサテライトピークを確認できた。超格子ピークのin-plane の格子定数は基板の in-plane と一致しており、Cube-on-Cube 成長していることが分かる。

6.4 CaFeO3/REMO3/LFO//STO 人工超格子の作製

すべてのCFOシリーズ超格子の表面像測定においてステップテラス構造を確認できた。RHEED パターンはすべてのCFOシリーズ超格子においてストリーク状を示しており、薄膜が平坦な二次元成長していることを確認した。

XRD(2θ-θパターン)及び XRR の結果より、[CFO/BFO]

超格子については STO(001)周辺に-4 から+4 のサテライトピーク及びラウエ振動を確認した。[CFO/REMO]14格子の膜厚及び平均格子定数をサテライトピーク、0 次と示したピークを Nelson-Riley 関数でフィッティングした値からそれぞれ算出した。[CFO/BFO]1格子の膜厚は 4.75nm、平均格子定数は 0.3848nm、[CFO/BFO]14格子の膜厚は66.5nm、FWHM は 0.0733 であることが分かった。XRR

のフィッティング結果から算出した 1 サイクルあたりのユニット数はそれぞれCFOが 6.94 units, BFOが 5.32 units

であることが分かった。

逆格子マップ測定より、すべての CFO シリーズ超格子からサテライトピーク及びラウエ振動を確認できた。すべての CFOシリーズ超格子は超格子ピークの in-plane の格子定数は基板の in-planeと一致していることが分かる。STO(100)基板上に成膜した BFO,BFMO 単相膜はmonoclinic, tilted orthorhombic もしくは rhombohedral構造であり、超格子構造を形成することによって基板のストレスを強く受けて成長していることが分かった。

7.まとめ

パルスレーザー堆積(Pulsed laser deposition : PLD)法により、酸化物人工超格子[ABO3/REMO3] (RE=Bi,La M=Fe,

Fe1-xMnx A=La, Ca B=Fe, Mn)を作製した。超格子は各層 7

ユニットを 14 回繰り返した [7-units ABO3 / 7-units

REMO3]14人工超格子を作製した。

すべての人工超格子において薄膜表面像は STO基板由

0 50 100 150 200 250 30010

3

104

105

106

107

S

hee

t R

esis

tan

ce (

/sq

.)

Temperature (K)

CMO /

LMO /

LFO

LFO

BFO

BFMO

BFO

BFMO

(0.076 eV)

(0.17 eV)

図7.1 LMOシリーズ、CMOシリーズ超格子のシート抵抗温度依存性。LMOシリーズ超格子の方が大きな抵抗を示した。矢印で示した温度でギャップエネルギーが変化した。

図 29 LMO シリーズ、CMO シリーズ超格子のシート抵抗温度依存性。矢印で示した温度でギャップエネルギーが変化した。

-6 -4 -2 0 2 4 6-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

300K

Mag

net

izat

ion (

B/F

e 0.8M

n0.2)

Magnetic Field (kOe)

-6 -4 -2 0 2 4 6-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

10K

Mag

net

izat

ion (

B/F

e 0.8M

n0.2)

Magnetic Field (kOe)

図7.2 300K、10Kにおける[CFO/BFMO]超格子のBFMO層内磁性原子Fe0.8Mn0.21個あたりの磁気モーメントの磁化曲線。図 30 300K, 10K における[CFO/BFMO]超格子の磁気モーメントの磁化曲線。

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来のステップテラス構造を示しており、XRD 測定結果からサテライトピークを確認し、基板全体に均一な超構造が形成されたことが分かった。CMO シリーズ超格子においては面内格子定数が基板ピークと一致していなかったが、バルク値から 2.3%大きな値をとっており、内部歪を持って成長していた。[CFO/BFO]超格子の X 線反射率測定のフィッティング結果から、CFO が 6.94 ユニットというフィッティング結果を得た。ペチーニ法で作製した超高密度ターゲットを用いることによって 0.84%の誤差で成膜することが出来た。[CFO/BFMO]超格子におけるBFMO 層内 Fe0.8Mn0.2 1 個あたりの飽和磁気モーメントは 300K においてバルク値の約 4 倍であった。また、キュリー温度は約 450K となり、室温以上で弱磁性であることが分かった。

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