linkin park cs4 1 - gekirock · 2013-07-05 · linkin...

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最高傑作『Living Things』が来日記念盤としてライヴDVD付きで再登場! Chesterにとって、STPは13歳の頃から聴いてきた大好きな バンドだそうだ。LINKIN PARKにはないセクシーさとクラシッ ク・ロックのフィーリングが彼には魅力的に聴こえるという。 “大好きなバンドで歌えるチャンスが目の前にあるのにも関わ らず、指をくわえて、それをただ見ている奴がどこにいる?!” Chesterに言わせると、そういうことらしい。 ひょっとしたら“STPって誰?”という若いリスナーもいるかも しれない。サンディエゴで活動を開始したSTPはグランジの波 と共にシーンに現れたバンドだった。1992年にリリースしたデ ビュー・アルバム『Core』はいきなり全米2位の大ヒットを記録 した。デビュー当時こそ、ブームに便乗してたまたまヒットを飛ば したNIRVANA、PEARL JAMの二番煎じなどと過小評価され たものの、その後、グランジに止まらない――LED ZEPPELIN、 David Bowie、THE BEATLESの影響が1つに溶け合ったと も言える音楽性をアピールしながらヒット作を連発……いや、 もしかしたらヴォーカリストと他のメンバーがいつもモメている バンドとしてのほうが有名かもしれない。 実際、彼らの歴史はScottと他の3人のメンバーの軋轢による、 お家騒動の連続だった。Scottに愛想を尽かした3人が無名の シンガーと新バンドを組み、それに対抗してScottがソロ・アル バムをリリースしたこともあったし、ScottがGUNS N' ROSES のメンバーとVELVET REVOLVERを組み、バンドが解散状態 LINKIN PARKのフロントマン、Chester Benningtonが STONE TEMPLE PILOTS(以下STP)に電撃加入!!いや はや、5月の中旬に世界中を駆け巡ったこのニュースには驚かず にいられなかった。 今年2月、最高のヴォーカリストにして、(バンドにとっては)最悪 のトラブルメーカー(とも言える)Scott Weilandをクビにして、 新しいシンガーを探していたSTPがChesterに白羽の矢を立 てたのか、Scottに負けないヴォーカリストを見つけられずに 困っている先輩バンドを、Chesterが助けようと思ったのか。 なぜ、そういうことになったのか経緯はわからないが、いずれ にせよChesterとSTPの共演はセンセーションと呼ぶにふさ わしいインパクトがあった。 共にいまだロック・シーンの第一線で活躍している人気バンドだ。 LINKIN PARKがいくらメンバーによるサイド・プロジェクトも 含め、他のアーティストとのコラボレーションに積極的に取り 組んできたとは言え、活動を休止しているなら、その間のバンド 外活動として理解もできる。しかし、LINKIN PARKは現在、 6作目のアルバムの制作に取り組みはじめたところらしいし、 8月にはSUMMER SONIC出演という形で2年ぶりとなる来日 公演も実現する。そのタイミングでなぜ?! LINKIN PARKと 掛け持ちしてまで、なぜ?! ChesterはよっぽどSTPで歌いた かったらしい。 になったこともあった。 Chesterだってそのへんの事情はちゃんとわかっているに違い ない。Scottと他のメンバーの腐れ縁……いや、4人が一緒に なった時の化学反応を理解したうえで、あくまでもバンドが和解 するまでのピンチヒッターと考えているのだろう。Chesterを 迎えたSTPは、すでに何度かライヴも行い、「Out Of Time」 という新曲も発表している。アルバムのリリースを視野に入れ、 今後も新曲のレコーディングを続けていこうと考えていると いう。 STPのヴォーカリストはScott以外ありえないと思いながら、 ChesterとSTPの共演がどんな成果を残すのかが楽しみでも ある。もちろん、成果とはSTPのアルバムだけに止まらない。 Chesterが言うようにLINKIN PARKにはないセクシーさと クラシック・ロックのフィーリングを持ったSTPで歌った経験は 今後、LINKIN PARKが作るサウンドにどんなふうに反映される んだろうか?特に今回、来日記念盤としてライヴDVDをカップ リングしたヴァージョンがリリースされる『Living Things』が 彼らの集大成と言える作品だっただけに、Chesterのバンド外 活動がそこからの一歩にどう影響するか世界中のロック・ファン が期待しているに違いない。 メタルでも、グランジ/オルタナでも、単なるミクスチャー・ ロックでもない――00年代にふさわしいラウドロックという新 たなサウンド・スタイルを提示してみせた『Hybrid Theory』 『Meteora』という2枚のアルバムを発表後、歌にぐっと寄った うえでオーガニックなロック・サウンドを追求した『Minutes To Midnight』、そしてそれとは逆にヒップホップおよびエレク トロニックなサウンドが 脱ロック”すら思わせた『A Thousand Suns』という野心作を作り、物議を醸してきた彼らが辿りつい た『Living Things』。ハードかつヘヴィなギター・サウンドや アジテーションを思わせる激しいラップが聴けるからと言って、 それは決して原点回帰などと言える単純な作品ではなかった。 『Hybrid Theory』と『A Thousand Suns』のハイブリッド、 あるいは『A Thousand Suns』から『Minutes To Midnight』 に戻ってそこから飛躍した作品など、いろいろな捉え方がある ようだが、要するに彼らの人気を決定づけた最初の2枚、ファン 層を広げつつバンドのさらなるポテンシャルをアピールした2枚 の野心作――どのアルバムのファンが聴いても、“これぞLINKIN PARK!このアルバムを待っていた!”と思える作品だったところ に『Living Things』の意義がある。 もし、聴こうと思いつつ聴き逃しているという人がいたら、ぜひ この機会に『Living Things』を手に取っていただきたい。 同アルバム発表後、初めての来日公演となる今回のSUMMER SONICのステージではきっとそこからの曲を多めに演奏する はずだ。それを考えれば、絶好のタイミング。 今回、プラスされたライヴDVDには『Living Things』をリリー スする直前に行ったドイツ、ベルリン公演からの19曲が74分に わたって収録されている。『Meteora』からのヒット・シングル 「Faint」で幕を開けたライヴは、その後、『Living Things』 からの「Lies Greed Misery」他、ヒップホップ色濃い中盤の パートを経て、「Leave Out All The Rest」「Shadow Of The Day」「Iridescent」と歌を聴かせつつ、ファンとシンガロング する後半の流れが「What I've Done」で一気に爆発。そこから 「One Step Closer」、最後の「Bleed It Out」までたたみか ける流れが圧巻だ。 LINKIN PARKにしては割と小ぶりと言える会場での親近感にあ ふれたライヴ映像は、スタジアムで演奏するSUMMER SONIC とはまた違った見ごたえもある。 前述したとおり、バンドはすでに6作目のアルバムの制作に取り 掛かっているそうだが、バンドのミュージック・ビデオを手掛け てきたJoe Hahn(DJ)による初めての長編映画『Mall』(現 在、ポスプロの真っ最中らしい)のサウンドトラックもバンドに よるものだそうだ。ChesterのSTP加入と同じようにサントラ を手掛けた経験がLINKIN PARKのこれからにどう反映される かが気になるところだ。彼らはこれからもまだまだ我々をびっく りさせ続けるに違いない。 山口 智男 Hybrid Theory (2000) Meteora (2003) Minutes to Midnight (2007) A Thousand Suns (2010) Living Things (2012) LINKIN PARK 『Living Things+』 [WARNER MUSIC JAPAN] NOW ON SALE!! WPZR-30611/12 \3,480(税込)

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最高傑作『Living Things』が来日記念盤としてライヴDVD付きで再登場!Chesterにとって、STPは13歳の頃から聴いてきた大好きな

バンドだそうだ。LINKIN PARKにはないセクシーさとクラシッ

ク・ロックのフィーリングが彼には魅力的に聴こえるという。

“大好きなバンドで歌えるチャンスが目の前にあるのにも関わ

らず、指をくわえて、それをただ見ている奴がどこにいる?!”

Chesterに言わせると、そういうことらしい。

ひょっとしたら“STPって誰?”という若いリスナーもいるかも

しれない。サンディエゴで活動を開始したSTPはグランジの波

と共にシーンに現れたバンドだった。1992年にリリースしたデ

ビュー・アルバム『Core』はいきなり全米2位の大ヒットを記録

した。デビュー当時こそ、ブームに便乗してたまたまヒットを飛ば

したNIRVANA、PEARL JAMの二番煎じなどと過小評価され

たものの、その後、グランジに止まらない――LED ZEPPELIN、

David Bowie、THE BEATLESの影響が1つに溶け合ったと

も言える音楽性をアピールしながらヒット作を連発……いや、

もしかしたらヴォーカリストと他のメンバーがいつもモメている

バンドとしてのほうが有名かもしれない。

実際、彼らの歴史はScottと他の3人のメンバーの軋轢による、

お家騒動の連続だった。Scottに愛想を尽かした3人が無名の

シンガーと新バンドを組み、それに対抗してScottがソロ・アル

バムをリリースしたこともあったし、ScottがGUNS N' ROSES

のメンバーとVELVET REVOLVERを組み、バンドが解散状態

LINKIN PARKのフロントマン、Chester Benningtonが

STONE TEMPLE PILOTS(以下STP)に電撃加入!!いや

はや、5月の中旬に世界中を駆け巡ったこのニュースには驚かず

にいられなかった。

今年2月、最高のヴォーカリストにして、(バンドにとっては)最悪

のトラブルメーカー(とも言える)Scott Weilandをクビにして、

新しいシンガーを探していたSTPがChesterに白羽の矢を立

てたのか、Scottに負けないヴォーカリストを見つけられずに

困っている先輩バンドを、Chesterが助けようと思ったのか。

なぜ、そういうことになったのか経緯はわからないが、いずれ

にせよChesterとSTPの共演はセンセーションと呼ぶにふさ

わしいインパクトがあった。

共にいまだロック・シーンの第一線で活躍している人気バンドだ。

LINKIN PARKがいくらメンバーによるサイド・プロジェクトも

含め、他のアーティストとのコラボレーションに積極的に取り

組んできたとは言え、活動を休止しているなら、その間のバンド

外活動として理解もできる。しかし、LINKIN PARKは現在、

6作目のアルバムの制作に取り組みはじめたところらしいし、

8月にはSUMMER SONIC出演という形で2年ぶりとなる来日

公演も実現する。そのタイミングでなぜ?! LINKIN PARKと

掛け持ちしてまで、なぜ?! ChesterはよっぽどSTPで歌いた

かったらしい。

になったこともあった。

Chesterだってそのへんの事情はちゃんとわかっているに違い

ない。Scottと他のメンバーの腐れ縁……いや、4人が一緒に

なった時の化学反応を理解したうえで、あくまでもバンドが和解

するまでのピンチヒッターと考えているのだろう。Chesterを

迎えたSTPは、すでに何度かライヴも行い、「Out Of Time」

という新曲も発表している。アルバムのリリースを視野に入れ、

今後も新曲のレコーディングを続けていこうと考えていると

いう。

STPのヴォーカリストはScott以外ありえないと思いながら、

ChesterとSTPの共演がどんな成果を残すのかが楽しみでも

ある。もちろん、成果とはSTPのアルバムだけに止まらない。

Chesterが言うようにLINKIN PARKにはないセクシーさと

クラシック・ロックのフィーリングを持ったSTPで歌った経験は

今後、LINKIN PARKが作るサウンドにどんなふうに反映される

んだろうか?特に今回、来日記念盤としてライヴDVDをカップ

リングしたヴァージョンがリリースされる『Living Things』が

彼らの集大成と言える作品だっただけに、Chesterのバンド外

活動がそこからの一歩にどう影響するか世界中のロック・ファン

が期待しているに違いない。

メタルでも、グランジ/オルタナでも、単なるミクスチャー・

ロックでもない――00年代にふさわしいラウドロックという新

たなサウンド・スタイルを提示してみせた『Hybrid Theory』

『Meteora』という2枚のアルバムを発表後、歌にぐっと寄った

うえでオーガニックなロック・サウンドを追求した『Minutes

To Midnight』、そしてそれとは逆にヒップホップおよびエレク

トロニックなサウンドが“脱ロック”すら思わせた『A Thousand

Suns』という野心作を作り、物議を醸してきた彼らが辿りつい

た『Living Things』。ハードかつヘヴィなギター・サウンドや

アジテーションを思わせる激しいラップが聴けるからと言って、

それは決して原点回帰などと言える単純な作品ではなかった。

『Hybrid Theory』と『A Thousand Suns』のハイブリッド、

あるいは『A Thousand Suns』から『Minutes To Midnight』

に戻ってそこから飛躍した作品など、いろいろな捉え方がある

ようだが、要するに彼らの人気を決定づけた最初の2枚、ファン

層を広げつつバンドのさらなるポテンシャルをアピールした2枚

の野心作――どのアルバムのファンが聴いても、“これぞLINKIN

PARK!このアルバムを待っていた!”と思える作品だったところ

に『Living Things』の意義がある。

もし、聴こうと思いつつ聴き逃しているという人がいたら、ぜひ

この機会に『Living Things』を手に取っていただきたい。

同アルバム発表後、初めての来日公演となる今回のSUMMER

SONICのステージではきっとそこからの曲を多めに演奏する

はずだ。それを考えれば、絶好のタイミング。

今回、プラスされたライヴDVDには『Living Things』をリリー

スする直前に行ったドイツ、ベルリン公演からの19曲が74分に

わたって収録されている。『Meteora』からのヒット・シングル

「Faint」で幕を開けたライヴは、その後、『Living Things』

からの「Lies Greed Misery」他、ヒップホップ色濃い中盤の

パートを経て、「Leave Out All The Rest」「Shadow Of The

Day」「Iridescent」と歌を聴かせつつ、ファンとシンガロング

する後半の流れが「What I've Done」で一気に爆発。そこから

「One Step Closer」、最後の「Bleed It Out」までたたみか

ける流れが圧巻だ。

LINKIN PARKにしては割と小ぶりと言える会場での親近感にあ

ふれたライヴ映像は、スタジアムで演奏するSUMMER SONIC

とはまた違った見ごたえもある。

前述したとおり、バンドはすでに6作目のアルバムの制作に取り

掛かっているそうだが、バンドのミュージック・ビデオを手掛け

てきたJoe Hahn(DJ)による初めての長編映画『Mall』(現

在、ポスプロの真っ最中らしい)のサウンドトラックもバンドに

よるものだそうだ。ChesterのSTP加入と同じようにサントラ

を手掛けた経験がLINKIN PARKのこれからにどう反映される

かが気になるところだ。彼らはこれからもまだまだ我々をびっく

りさせ続けるに違いない。 山口 智男

Hybrid Theory(2000)

Meteora(2003)

Minutes to Midnight(2007)

A Thousand Suns(2010)

Living Things(2012)

LINKIN PARK『Living Things+』[WARNER MUSIC JAPAN]

NOW ON SALE!!WPZR-30611/12 \3,480(税込)