最近の沖縄の経済動向等について -...
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Ⅰ.最近の沖縄管内の経済情勢
Ⅱ.沖縄における新しい農業ビジネスの動き
平成25年4月沖縄総合事務局財務部
近の沖縄の経済動向等について
全国財務局長会議(平成25年4月24日開催)席上配付資料
前回(24年10-12月期) 今回(25年1-3月期) 前回比較 足下の動き
総括判断 緩やかに回復しつつある 回復しつつある観光関連の企業から、旅行需要が高
まるゴールデンウィークまでの予約も好調であるとの明るい声が聞かれている。
前回(24年10-12月期) 今回(25年1-3月期)前回比較
個人消費 持ち直している 持ち直している
観光 緩やかに回復しつつある 回復しつつある
雇用情勢厳しい状況が続くなか、
持ち直しつつある緩やかに持ち直している
設備投資 前年度を上回る見込み 前年度を上回る見込み
企業収益 増益見込み 増益見込み
Ⅰ. 近の沖縄管内の経済情勢
〔先行き〕先行きについては、経済対策や沖縄振興策を背景に、景気回復に向けた動きが本格化していくなかで、海外景気の下振れリスクや原材料価格の動向などに
ついて、注視していく必要がある。
1
観光 回復しつつある
なお、震災前を含め過去3ヶ年の水準を上回っている〔入域観光客数(前年比)〕
【出所】日本銀行、日本政府観光局(JNTO)、沖縄県
○ 1-3月期は全体としては良い。1月については旧正月が2月にズレ込んだため外国客は悪かった。2月は、中国は依然として落ち込んでいるが、台湾・香港から多く訪れていた。LCCも良い状況であり、沖縄観光を牽引している。(旅行業)
る○ 1-3月期は前年同期と比べ増加。1月、2月は本土が例年より寒かったことや、プロ野球キャンプの報道により本土で沖縄の露出が増えるなど国内客の誘客に効果があった。また、Webを使った予約が伸びており、LCCの影響も大きい。新石垣空港の開港も増加要因の1つとなった。 (旅行業)
○ 1-3月期は個人・団体ともに前期と比べ伸びている。団体は関東に次いで、東北からのツアーが多かった。2月は天気も良く、プロ野球キャンプにより集客できているといった印象。3月は個人や実業団のキャンプ受入れがあった。石垣のホテルでは、オーバーブッキングも発生し、順調な動き出しとなっている。(宿泊業)
。
3月は、卒業旅行などから個人旅行の動きが良かった。新石垣空港の開港も増加要因となる。ができ伸びた。
2月は、プロ野球キャンプの放送により本土で沖縄の露出が増えることや、1月同様に本土が例年よりも気温が低かったことから、観光客が多かったと思われる。
3月は、卒業旅行などから個人旅行の動きが良かった。新石垣空港の開港も増加
要因となる。
観光における円安の影響 円安を追い風として、外国客(特に韓国、台湾)が増加し、平成24年度の外国客は過去 高の38万人となっている。航空座席供給量の増加やプロモーション活動の効果などにより、更なる外国客の増加が期待されている。
○ 韓国は、前年よりも目立って増加した。航空路線の増加や、為替が円安に動いたことも影響していると考えられる。台湾・香港については、韓国ほど目立った動きではなかったが、円安の影響は少なからずあると思われる。
(宿泊業)
○ 円安は沖縄にとっては追い風となる。円安傾向になり、外国客が増加している。春節の影響もあるが、円安の影響も間違いなくある。円安基調が続けば、インバウンドは更に増加すると見込まれる。(宿泊業)
○ 今、販売している海外旅行の商品は半年前の為替レートで作成したものであるため、 海外旅行から沖縄旅行へシフトしている大きな動きは見受けられないが、円安を反映した価格となった場合に国内(沖縄)旅行を選択する動きが出ると予想される。感覚的なものだが、100円程度まで円安が進まないと消費者には円安になったというイメージは湧かないのではないか。
(旅行業)
2
観光における生の声
円安の影響に関する生の声
【出所】沖縄県
(千人) (%)
(%) (円)
(%) 個人消費における生の声
○ 暖冬の影響もあり冬物衣料が不調であったが、3月に入って春夏物衣料が出始めると売上は上昇。来店客数も増加しており、新規出店効果もあって前年をクリアしている。(スーパー)
○ 新規出店効果のほか、挽きたてコーヒーの展開による来店客数の
増加が大きい。(コンビニエンスストア)
○ テレビ、映像関連については売上は戻っていないものの、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の買取価格が引き下げられることから、太陽光発電設備の駆け込み需要が見られ、売上に貢献している。(家電販売)
3
〔乗用車新車登録・届出台数〕
(注)普通乗用車+小型乗用車+軽四輪乗用車の合計。【出所】日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会、沖縄県自動車販売協会
全国 ▲8.1
沖縄 ▲1.4
【出所】経済産業省、沖縄総合事務局
▲ 11.0▲ 9.0▲ 7.0▲ 5.0▲ 3.0▲ 1.0
1.03.05.07.09.0
11.013.015.017.0
91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2
20年 21年 22年 23年 24年 25年
沖縄全国
個人消費 持ち直している
〔大型小売店販売額(全店舗ベース)〕(%)
全国 ▲2.9
沖縄 11.1
設備投資 24年度は前年度を上回る見込み
【出所】財務省、沖縄総合事務局
〔設備投資計画(前年(同期)比)〕
雇用情勢 緩やかに持ち直している
〔有効求人倍率(季節調整値)〕 〔完全失業率(原数値、前年同期差)〕
【出所】厚生労働省、沖縄労働局
【出所】総務省、沖縄県
(倍)
(注)23年1-3月期から7-9月期の全国は、補完推計値を用いた参考値。
(注)各都道府県「毎月勤労統計(地方調査)」
財務局所在都道府県の名目賃金指数から算出。
4
賃金改善の動向
賃金改善の具体的内容
※複数回答
親会社の動向等
(社)
※複数回答
賃金を改善しない理由
賃金を改善する理由 ※複数回答
(社)
賞与
定期昇給ベース
アップ
〔 現金給与総額 ・定期給与(前年同月比) 〕
(%) (%)
有り無し
未定
為替・株価動向等
販売価格環境
○ 沖縄では、製造業の割合が低く、輸出企業が少ない産業構造の中で、観光関連で円安傾向による沖縄観光への好影響を期待する声のほか、原材料や原油の輸入価格上昇等により影響があるとの声が聞かれるものの、引き続き全体的に影響は軽微とする企業が多い。
○ 株価の動向については、ほとんどの企業で影響はないとしている。
○ 海外進出については、輸出や販売連携等による販路の拡大が中心となっている。
・ 近の円安の影響で豚、牛、鶏肉などは昨年と比較すると15~20%程度仕入価格が上昇している。燃油等の上昇も懸念され、今後、販売価格等の変更を検討しなければならない。(製造業)
・ 円安の影響で原材料価格が年末から10%近く値上がりしており、今後、価格転嫁せざるを得ない状況になると思われる。(製造業)
・ 燃料の原油価格は高止まりしていることに加えて、円安になりコストは増えている。(運輸業)
・ 円安により燃料費の割高感がある。(運輸業)
・ 円安が進んでいるが、輸入物などの食料品に影響はまだ出ていない。(小売業)
○ 企業からの生の声としては、原材料価格や原油価格等が上昇しているものの、他社との競合などから、コスト上昇分をそのまま販売価格に転嫁できる状況にないとの声が聞かれている。
・ 原材料価格やガソリン価格の上昇で仕入環境は増々厳しくなってきているが、他社との競合もあり、販売価格には簡単に転嫁できない。(小売業)
・ 原材料価格が上がっても販売価格にはなかなか転嫁できないため、サイズ調整等でコスト抑制を検討している。(小売業)
・ 県内向けの市場は低価格競争などの影響で業界が疲弊しているような印象がある。この流れを変えるように業界でも努力が必要と思う。(製造業)
5【出所】沖縄総合事務局 法人企業景気予測調査(1-3月期)
為替動向に関する生の声
販売価格環境に関する生の声
2
7
5
3
(13)
(4)
(6)
(4)
▲ 11.2
3.1
▲ 1.0▲ 1.0
▲ 15
▲ 10
▲ 5
0
5
10
24年
10~12月
25年
1~3月
25年
4~6月
25年
7~9月
前回調査 現状判断 見通し 見通し
製(商)品・サービスの販売価格
上昇(社数)低下(社数)
BSI
(社、%ポイント)
13
21
10
6
(1)(1) (2)
(1)
13.5
23.5
9.4
5.9
▲ 5
0
5
10
15
20
25
24年
10~12月
25年
1~3月
25年
4~6月
25年
7~9月
前回調査 現状判断 見通し 見通し
原材料・製(商)品の仕入れ価格
上昇(社数)
低下(社数)
BSI
(社、%ポイント)
Ⅱ.沖縄における新しい農業ビジネスの動き
◇ 全国において植物工場が普及しつつある中、沖縄においても室内で安定して野菜を生産できる植物工場での生産・販売事業の動きがみられており、産業イノベーション地域制度を活用した地域資源活用型新産業としての展開が期待される。
沖縄における野菜生産を取り巻く環境
夏場は高温のほか、台風が多く襲来するため、野菜生産には厳しい栽培条件となっており、市場の取扱量に占める県産野菜の割合は低く、県外産や外国産に依存している状況にある。
近年、県内においても、天候に左右されずに野菜の周年安定生産ができる『植物工場』での生産・販売が展開されつつある。
【植物工場】 光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を人工的に制御し、 適な条件下で栽培することができることから、安定供給が可能。
このようなことから、野菜事情が天候の影響を受けて悪化した場合には、産地からの出荷が減少し、品薄による高値傾向となる。
6次産業化の取組
➢ 六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画は、これまで42件が認定されている。県内総生産が全国の約1%という経済規模に比べて認定件数が多く(全国比3.2%)、6次産業化への期待度は高い。
六次産業化・地産地消法に基づく認定件数(25年3月29日現在) 【出所:農林水産省】
【産業高度化・事業革新促進(産業イノベーション)地域】
・ 改正沖縄振興特別措置法(平成24年4月)において、産業振興を目的として創設
・ 県知事が産業高度化・事業革新促進計画を策定し、対象地域(産業高度化・事業革新促進地域)を指定(県全域指定)・ 県知事が事業者の「産業高度化・事業革新実施計画」を認定・ 計画認定に係る設備投資について、税額控除又は特別償却制度を適用
県産野菜の流通
➢ ハンバーガーをメインにチェーン展開している大手ファーストフード企業に対して、施設栽培の県産レタス、キャベツ、タマネギ、トマト等を出荷している取組もみられる。
野菜の価格推移(平成24年)
資料:沖縄県中央卸売市場月報資料:沖縄県中央卸売市場「平成24年市場年報」
卸売市場の野菜取扱量に占める県産野菜の割合
60.9
8.6
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
24/1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
(%)
(月)0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
いんげん
こまつな
ほうれん草
(注)年間平均価格を1.0とした。
(月)
6
農畜産物 林産物 水産物全国 1,321 1,190 54 77
沖縄 42 40 0 2
計
沖縄における植物工場の現状(H25年3月末現在)
●
●
●
●
●
● ●
完全人工光型:7か所太陽光利用型:1か所進出予定:2か所
●●
①インターナショナリー・ローカル
②りゅうせき建設
③ぐしけん
④中城デージファーム
⑤北中城デージファーム
⑥エスペレ
●
●●
⑨沖縄村上農園
⑩オオバ
⑦野菜ランドみやこ
⑧初穂
●
資料:「平成23年度高度環境制御施設普及・拡大事業(環境整備・人材育成事業)報告書」等を参考に作成
沖縄における主な植物工場の展開状況
◇ 県内においては、主に8工場が稼働しており、今後、県外等から2社が進出予定となっている。
◇ 栽培品目としては、レタスやアイスプラントなどの葉物野菜が中心となっているほか、ハーブ類などもつくられている。
➣ パン製造メーカー➣ フリルレタス、グリーンリーフ、サニーレタス、ベビーリーフを栽培
➣ 県内生協への出荷のほか、自社のサンドイッチ等に使用
㈱ぐしけん 異業種からの参入
➣ 「キレイやさい」としてブランド化➣ アイスプラントをメインに、ベビーリーフ、バジルなどの高級野菜を主に栽培
➣ 県内のスーパー、リゾートホテル、コンビニ、県外 (関東、 関西)への出荷のほか、海外(香港)へも出荷
➣ 海外への進出も視野に入れ、業務を拡大している
㈱インターナショナリー・ローカル 物流ハブを活用した移・輸出
㈱オオバ㈱沖縄村上農園
県外からの進出
➣ 総合建設コンサルタント業(東京)➣ 県内において実施されてきた赤土流出対策、良質の農業土壌生成のノウハウを活用し、レタスなどを栽培(今夏稼働予定)
➣ 大20人の雇用を計画
大宜味村企業支援賃貸工場への入居
㈱オオバ
㈱沖縄村上農園
➣ ㈱村上農園(広島市)と㈱沖縄物産企業連合が出資し設立➣ 国内 大手の㈱村上農園の栽培技術を全面導入し、豆苗を栽培(今夏稼働予定)
➣ 新規雇用10人程度でスタート予定
7
使用料の減額
◇ 産業イノベーション地域制度の対象業種の追加◇ 新事業立ち上げのための円滑な資金供与・投資促進◇ 環境学習・農業観光等を含めた事業モデル など
課題
展望
◇ 農作物の安定生産◇ 幅広い業種への波及効果◇ 6次産業化等の推進による
「植物工場」化
付加価値額比較(1㎏あたり)
沖縄における植物工場のベンチマーク
植物工場の普及への取組【出所:沖縄県海洋深層水研究所】
【沖縄県海洋深層水研究所】
久米島町においては、海洋深層水の冷熱を利用(冷却コストは買電の1/5以下という試算
がある)し、夏場に栽培が困難であるホウレンソウなどの葉もの野菜について根域冷却栽培を行うことで年間を通じた安定生産を行えるよう、農業での実用化に向けて実証実験を実施している。
◇栽培された農産物は、ロッテルダム港やスキポール空港のハブ機能を活用して輸出
◇輸出額(3,712億ユーロ)のうち、農産物は約2割(665億ユーロ)を占め、米国に次ぐ世界第2位の農産物輸出国(2010年)
◇ロッテルダム港・長さ40Kmにわたる欧州 大のコンテナ港・貨物取扱量:約4.3億t(2011年)で欧州1位・コンテナ取扱個数:約1,190万TEU(2011年)◇スキポール空港・6本の滑走路を有する欧州のハブ空港・旅客数:約4,975万人(2011年)で欧州4位・貨物取扱量:約155万t(2011年)で欧州4位 出典:経済産業省「平成23年度地域経済産業
活性化対策調査」
-持続可能なオランダ型農業ビジネス-
沖縄型産業の革新に期待
【沖縄型植物工場研究会】
コスト削減に向けた実証研究等に取り組んでいる。
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