日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関...

25
58:141 はじめに 原因病態研究においても,治療研究においても,また医療 行政施策においても世界をリードしている日本の amyotrophic lateral sclerosisALS)研究のさらなる発展を期するために, 日本において初期に ALS およびその関連疾患がどのように 見出され,その原因や病態がどのように解明され展開して来 たかについて今日的視点で纏めておくことは重要である.こ の目的のために,前報では ALS の初期歴史について,主とし て過去文献の再吟味と今日的意義について考察した 1.しかし ALS 研究は,多数の遺伝性 ALS FALS)遺伝子の解明や新し い病理診断マーカー TDP-43 の発見,ALS/PDC Parkinsonism dementia complex)の病型変化,新しい ALS/SCA (spinocerebellar ataxia) crossroad mutation Asidan 病の発見など枚挙に暇がな いほどの進展を示しており,認知症を伴う ALS や,紀伊半島 を中心とした地域で見られる ALS/PDCFALS,球脊髄性筋 萎縮症(SBMA),小脳失調など多系統に及ぶ ALS について は,前報では十分論じることが出来なかった.そこで今報で ALS 関連疾患として上記 5 項目に焦点を当てて,それらの 初期論文とその今日的展開について主要論文を中心に論ず る.なお前報同様に引用部分や一部地文の医学用語について は,当時の表現を尊重するため敢えてそのまま引用し,旧漢 字体は読み易さのために現代漢字体に改めている. 認知症を伴う ALS の初期論文とその今日的展開 Charcot JM Joffroy A(仏国)が ALS を明確に記載した 1869(明治 2)年 2から 23 年後の 1892(明治 25)年に第三 高等中学校医科(今日の岡山大学医学部)を卒業したばかり の新人医局員である渡邊榮吉は,「筋萎縮性側索硬変症ノ実 験」として本邦での完結された ALS 論文として第 3 報目を報 告している 3が,翌 1893 (明治 26)年に本邦における ALS 認知症合併の嚆矢論文とされる「皮質運動性失語症ト延髄球 麻痺及進行性筋萎縮ヲ合併セル一患者ニ就テ」を発表した 4Fig. 1).この論文中では,岡山県中庄村の男性が 1 年の経過 で進行性に言語不明,右手で箸を取れず,嚥下困難となり 41 歳で受診した.患者は常に笑い表情を呈し,口笛は吹けず, 指で鼻腔を閉鎖して灯火を吹き消し,舌は動きが悪く萎縮が 認められた.固体よりも液体での嚥下障害が強いが,舌の fasciculation の記載はない.両上肢共に拇指球と小指球,骨間 筋の甚だしい萎縮が見られ,次いで上腕,前腕,および肩甲 筋萎縮が認められた.上肢の腱反射についての記載はない. 一方,下肢については異常なく,腱反射も亢進していなかっ た(筆者注:正常)としている.また自発言語が不能で,書 字障害が特徴的であり,漢字より仮名の障害を強く認めるが, 読字や言語理解そのものは異常なかったとしている.記載は ないが,復唱は著明な球麻痺のため不可能であったろう. 書字と書き取りにおいてはパラグラフィー(筆者注: paragraphy,錯書)としている. 総  説 日本における amyotrophic lateral sclerosisALS)関連疾患の 初期論文とその今日的展開 阿部 康二 1* 要旨: 日本における進んだamyotrophic lateral sclerosis(ALS)研究の今後のさらなる発展を期するために,日 本において初期に ALS 関連疾患がどのように見出され,その原因や病態がどのように解明され展開して来たかに ついて今日的視点で纏めておくことは重要である.本稿では認知症を伴う ALS や,紀伊半島を中心とした地域で 見られる ALS/PDC,遺伝性 ALS(FALS),球脊髄性筋萎縮症(SBMA),小脳性運動失調など多系統に及ぶ ALS 5 項目に焦点を当てて,それらの初期論文とその今日的展開について海外論文とも比較検証しつつ主要論文を 中心に論じた.5 項目ともに日本からの論文が極めて重要な貢献を果たし,初期から 120 年以上に渡って大きな 今日的展開を継続していることを示した. (臨床神経 2018;58:141-165Key words: ALSALS/PDCFALSSBMAAsidan *Corresponding author: 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学〔〒 700-8558 岡山市鹿田町 2-5-11岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学 Received August 28, 2017; Accepted January 19, 2018; Published online in J-STAGE on February 28, 2018doi: 10.5692/clinicalneurol.cn-001095

Transcript of 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関...

Page 1: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

58:141

はじめに

原因病態研究においても,治療研究においても,また医療行政施策においても世界をリードしている日本の amyotrophic

lateral sclerosis(ALS)研究のさらなる発展を期するために,日本において初期に ALSおよびその関連疾患がどのように見出され,その原因や病態がどのように解明され展開して来たかについて今日的視点で纏めておくことは重要である.この目的のために,前報では ALSの初期歴史について,主として過去文献の再吟味と今日的意義について考察した 1).しかしALS研究は,多数の遺伝性 ALS(FALS)遺伝子の解明や新しい病理診断マーカー TDP-43の発見,ALS/PDC(Parkinsonism

dementia complex)の病型変化,新しいALS/SCA (spinocerebellar

ataxia) crossroad mutation Asidan病の発見など枚挙に暇がないほどの進展を示しており,認知症を伴う ALSや,紀伊半島を中心とした地域で見られる ALS/PDC,FALS,球脊髄性筋萎縮症(SBMA),小脳失調など多系統に及ぶ ALSについては,前報では十分論じることが出来なかった.そこで今報では ALS関連疾患として上記 5項目に焦点を当てて,それらの初期論文とその今日的展開について主要論文を中心に論ずる.なお前報同様に引用部分や一部地文の医学用語については,当時の表現を尊重するため敢えてそのまま引用し,旧漢字体は読み易さのために現代漢字体に改めている.

認知症を伴うALSの初期論文とその今日的展開

Charcot JMと Joffroy A(仏国)が ALSを明確に記載した1869(明治 2)年 2)から 23年後の 1892(明治 25)年に第三高等中学校医科(今日の岡山大学医学部)を卒業したばかりの新人医局員である渡邊榮吉は,「筋萎縮性側索硬変症ノ実験」として本邦での完結された ALS論文として第 3報目を報告している 3)が,翌 1893(明治 26)年に本邦における ALS+認知症合併の嚆矢論文とされる「皮質運動性失語症ト延髄球麻痺及進行性筋萎縮ヲ合併セル一患者ニ就テ」を発表した 4)

(Fig. 1).この論文中では,岡山県中庄村の男性が 1年の経過で進行性に言語不明,右手で箸を取れず,嚥下困難となり 41

歳で受診した.患者は常に笑い表情を呈し,口笛は吹けず,指で鼻腔を閉鎖して灯火を吹き消し,舌は動きが悪く萎縮が認められた.固体よりも液体での嚥下障害が強いが,舌のfasciculationの記載はない.両上肢共に拇指球と小指球,骨間筋の甚だしい萎縮が見られ,次いで上腕,前腕,および肩甲筋萎縮が認められた.上肢の腱反射についての記載はない.一方,下肢については異常なく,腱反射も亢進していなかった(筆者注:正常)としている.また自発言語が不能で,書字障害が特徴的であり,漢字より仮名の障害を強く認めるが,読字や言語理解そのものは異常なかったとしている.記載はないが,復唱は著明な球麻痺のため不可能であったろう. 書字と書き取りにおいてはパラグラフィー(筆者注:paragraphy,錯書)としている.

総  説

日本における amyotrophic lateral sclerosis(ALS)関連疾患の

初期論文とその今日的展開

阿部 康二1)*

要旨: 日本における進んだ amyotrophic lateral sclerosis(ALS)研究の今後のさらなる発展を期するために,日本において初期にALS関連疾患がどのように見出され,その原因や病態がどのように解明され展開して来たかについて今日的視点で纏めておくことは重要である.本稿では認知症を伴うALSや,紀伊半島を中心とした地域で見られるALS/PDC,遺伝性ALS(FALS),球脊髄性筋萎縮症(SBMA),小脳性運動失調など多系統に及ぶALSの 5項目に焦点を当てて,それらの初期論文とその今日的展開について海外論文とも比較検証しつつ主要論文を中心に論じた.5項目ともに日本からの論文が極めて重要な貢献を果たし,初期から 120 年以上に渡って大きな今日的展開を継続していることを示した.(臨床神経 2018;58:141-165)Key words: ALS,ALS/PDC,FALS,SBMA,Asidan

*Corresponding author: 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学〔〒 700-8558 岡山市鹿田町 2-5-1〕1)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学(Received August 28, 2017; Accepted January 19, 2018; Published online in J-STAGE on February 28, 2018)doi: 10.5692/clinicalneurol.cn-001095

Page 2: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:142

本症例で興味深い点は,漢数字を見せてその数だけ検者の手を指で圧するように命じると,正解のことも有り不正解のことも有り,特に患者にとって平素見慣れない文字の時に不正解が多いという.ここで渡邊は,もし患者が単に球麻痺のみによって発語が出来ないとするならば,この語数検査で不正解を示すことはない(ので,この患者は単なる球麻痺の為だけではなく,運動性失語症を呈しているのだ)と保証を取っている.本症例を今日的な意味での厳密な失語症ではないとする説はあるものの 5)~9),上述を鑑みれば少なくとも ALS+書字障害(paragraphyと漢字仮名乖離現象)であることは間違いないものであろう.この渡邊論文は 1861(文久元)年にBroca PP(仏国)が aphasia(本人は死ぬまで aphémieを使用した)を呈した 2例の連続報告 10)11)をしてから 32年後のことであり,Wernicke C(独国)が感覚性失語を発表した 1874(明治 7)年 12)13)から 19年後のことである.Broca失語における漢字仮名乖離症状については,国内において三浦謹之助の臨床講義録(1901=明治 34年)で紹介された脳卒中 2例が嚆矢とされている 5)14)が,もしこの渡邊症例を Broca失語とすれば,三浦の講義録より 8年先んじていたことになる.また渡邊症例はこれまで日本における失語症の嚆矢論文であるとされて来たが 6),ALS+認知症合併という点では(日本語論文ではあるが)世界での嚆矢論文に相当するということで,Ichikawa H・Kawamura Mらが英文で広く世界に存在を知らしめた功績は大きい 7)~9).本例の神経心理学的詳細については,既報に詳しいのでそちらを参考にされたい 5)~9).なおIshihara K・Kawamura Mらは ALS+認知症合併における失書の責任病巣が,左中前頭回脚部(Exnerʼs area)である可能性を指摘した初めての剖検例も報告している 15).渡邊論文の 2年後の 1895(明治 28)年に,川原汎は「筋萎

縮性側索硬結患者ノ供覧」のタイトルで 39歳男性患者を報告

している 16).尾張国東春日井郡在住で,父親が 2~3年前より老人性震顫あり.37歳時より鼻声で発症し,次第に言語障害,感情易変を来して来院した.診察上は,愁哀と驚愕を合併した顔貌,舌は皺襞多く繊維性攣縮あり,液体嚥下に障害あり,両上肢萎縮あり,下肢は膝蓋腱反射が非常に亢進していた以外は特変ない.項末で「唯言語ノ末梢的運動部麻痺ノ為メニ障害アルノミナラス,言談ヲ為スニ非常ニ労スル,発汗淋漓タリ」であるが,筆談は外来流暢であろうが震顫のため平安ならずと記載している 16).本論文当時とて痴呆症や失語症などといった明確な記載はないが,前述の渡邊論文 4)に続いて本邦第 2番目にALS+高次機能障害の存在を示唆した意義がある 16).

ALS+認知症合併という観点では,Table 1中段以下に示すようにその後幾つも報告がなされて来たが,基本的には ALS

に精神症状を合併した症例,あるいは逆に認知機能低下にALSを合併した症例という報告のされ方である.先ず日本においては,古川唯幸が「筋萎縮性側索硬化症の臨床的疫学的研究」において近畿地方在住の ALS患者多数例を調査し,既に 1959(昭和 34)年の段階で 7%の ALS患者に物忘れや計算困難,強迫笑などを認めたと報告しているが 17),同調査には ALS/PDC多発地域である和歌山県の患者が多く混在していることを考慮しなければならない.一方,症例報告としては渡邊論文から実に 70年後の 1963(昭和 38)年になり,久留米大学の小鳥居建らが第 3報として「高度痴呆を伴なう筋萎縮性側索硬化症の 1例」を発表した 18)19).本報告は 6人兄妹中の長男・次男(記載症例)・三男に類症あり,両親が従妹婚ということで常染色体劣性遺伝性も考えられる 19).翌 1964

(昭和 39)年には湯浅亮一が第 4報として「Dementiaを伴うALS」を 20)21),また 1965(昭和 40)年に三山吉夫と高松勇雄が第 5報として「筋萎縮を伴う高度痴呆」22)をという如く,その後は陸続として同様の報告がされた 23)~32).この中で竹迫らの家族性 ALS+知的低下 2例報告 23)については,常染色体劣性小児例であり,本項の趣旨からやや外れる.それにしても渡邊ならびに川原論文以降の約 70年間になぜこのような合併例報告の空白が生じたかという点は不思議である.筆者が推定するに,1963(昭和 38)年頃までは認知症自体が日本社会の中で余り注目されていなかったものの,高度経済成長に伴う長寿社会の到来と相俟って,両疾患の合併を臨床医が改めて認識するに至ったものと考えられる.次に,欧米においては既にMarie P(仏国)が 1892(明治 25)年にALSにおいてはしばしば知的活動性の低下を認め,情動障害に拡大すると指摘しており 33),1907(明治 40)年にはFragnito O(伊国)が精神症状を伴う ALS 3例のうち 1例は物忘れを呈している(dimentica=伊語動詞 dimenticareの 3

人称単数現在形)と初めて報告した 34).その後独国を中心とした 1922~1932年の一連論文 35)~37)に引き続いて,米国のWechsler ISと Davison C論文 38)のあと,報告は途切れがちに続き,1977(昭和 52)年の米国 Case Western Researve University

のFerguson JHとBoller Fによる agraphiaを伴った bulbar type

ALSの 2例に引き継がれた 39).このように断続的ながらも

Fig. 1 The first report of ALS + dementia by Eikichi Watanabe

(Ref. 4).

Page 3: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:143

一貫して継続されて来た臨床病理学的関連性の洞察は,2006

年に Neumann Mら 40)と日本の Arai Tら 41)からの transacting

response (TAR) DNA-binding protein 43 kDa(TDP-43)が FTD/

ALSで認められる ubiquitin陽性 /tau陰性封入体の重要な構成成分であるという報告によって急展開した.続く 2008(平

成 20)年には,ロンドンからこの TDP-43遺伝子変異が一部の孤発性ならびに遺伝性 ALSの原因であるという breaking

newsによって遺伝子レベルでの確証を得た 42).TDP-43は不均一核リボ核酸蛋白(heterogeneous nuclear ribonucleoprotein;

hnRNP)で,構造的には二つの RNA認識モチーフ(RRM1,RRM2)と核移行シグナル(NLS),核排出シグナル(NES)を有し,機能的には核内と細胞質を往来している.このTDP-

43は諸臓器に ubiquitousに発現しており,生理的には RNA

認識モチーフを用いた RNA安定化や splicingなどの転写調節,microRNA形成,apopstosis,細胞分裂,また NLSと NES

を用いた核細胞質間の物質輸送など多彩な細胞過程に関与している.この TDP-43遺伝子変異は世界中から同年にさらに

5施設から報告され 43)~47),その後も次々に確認されるに及んで 48)~50),変異 TDP-43や異常リン酸化された TDP-43が ALS

やユビキチン封入体を伴う前頭側頭型認知症(FTLD-U), Kii-Guam ALS/PDCなどに関与しており,所謂「TDP-43

proteinopathy」という疾患概念の一つのスペクトラム内にALSと FTDが位置づけられる画期的な展開を示した.その 3年後の 2011(平成 23)年になると,今度は新しく

C9orf72遺伝子異常が北欧のALS-FTD大家系の研究で発見された 51)52).この家系ではALSだけではなく,ALS-FTD,FTD,パーキンソン症状など広範な臨床スペクトラムを呈するのが特徴である.C9orf72変異は白人の FALSの原因として最も頻度が高いが 53),孤発性 ALSや孤発性 FTLDでも同遺伝子変異が発見されており,ALS+前頭型認知症状を来すことが最大の臨床的特徴となっている.この C9orf72遺伝子変異は,日本ではごく稀なケースとして FALSの 2.8%,SALSの 0.4%程度に認められ 54)55),紀州古座川・串本 2町から 3例が報告されている 56)57).C9orf72遺伝子変異は同遺伝子 intron 1上の

Table 1 Major publications for ALS with dementia in Japan and the world.

報告年著者名 概要 文献

西暦年 元号年

1861 文久元 Broca PP(仏) 運動性失語を報告 Bulletins Société anatomique  p. 330-357

1869 明治 2 Charcot JM,Joffroy A(仏) ALS初記載 Arch Physiol Norm Pathol 2:354-369, 629-649, 744-760

1874 明治 7 Wernicke C(独) 感覚性失語を報告 Breslau, Max Cohn & Weigert(1冊)1892 明治 25 Marie P(仏) ALSに知的低下と情動障害あると指摘 Leçons maladies moelle pp. 461-472

1893 明治 26 渡邊榮吉(paragraphy) ALS+運動性失語合併(41歳男)本邦初 岡山医学会雑誌 5:138-144

1895 明治 28 川原 汎 ALS+高次機能合併(39歳男)本邦 2報目 愛知医学会雑誌 6号 :14-17

1901 明治 34 三浦謹之助(講),岡田榮吉(記) 脳卒中後の失語症 2例 医事新聞 584:249-256

1907 明治 40 Fragnito O(伊) ALS+認知症例初報告 Ann Nevrol (Napoli) 25:273-287

1929 昭和 4 Meyer A(独) ALSの精神障害例を記載,剖検写真あり Z Ges Neurol Psychiat 121:107-138

1932 昭和 7 Braunmühl Av(独) ALS+ Pick様認知障害症例,剖検記載のみあり Allg Z Psychiatr 96:364-366

Wechsler IS,Davison C(米) 精神症状を伴う ALS 6例報告,剖検 3例 Arch Neurol Psychiat 27:859-880

1959 昭和 34 古川唯幸(阪大精神科) 近畿地方の ALS調査で 7%に痴呆症状あり 阪大医誌 11:4087-4099

1963 昭和 38 小鳥居建ら(渡邊の 70年後) 高度痴呆を伴う ALSの 1例(本邦 3報目) 臨床神経 3:410(抄録 1 p)1964 昭和 39 湯浅亮一(大阪警察病院) Dementiaを伴なう ALS(47歳男)

4報目剖検後日と記載臨床神経 4:529-534

1965 昭和 40 三山吉夫,高松勇雄 筋萎縮を伴った高度痴呆(60歳女)5報目 九州神経精神医学 11:217-222

1966 昭和 41 原田憲一,平山惠造ら 日本初病理 神経進歩 10:804(抄録 1 p)1971 昭和 46 三山吉夫,高松勇雄 日本 5報目症例の剖検報告,8既報と比較表 脳と神経 23:409-416

1977 昭和 52 Ferguson JH,Boller F(米) Agraphia 2例+ALS Brain and Language 4:382-389

2008 平成 20 Sreedharan Jら TDP-43遺伝子変異発見 Science 319:1668-1672

2011 平成 23 Ichikawa H, Kawamura Mら 渡邊榮吉論文の海外紹介と評価(3月) Eur Neurol 65:144-149

DeJesus-Hernandez Mら C9orf72(G4C2)n遺伝子変異発見(9月) Neuron 72:245-256

Renton AEら 同上 Neuron 72:257-268

2012 平成 24 Abe Kら Asidan(G4C2)nの前頭葉機能低下報告 Eur J Neurol 19:1070-1078

2015 平成 27 Chew Jら C9orf72 Tgマウスで TDP-43病理再現 Science 348:1151-1154

(ALS/PDCは別項目で扱う)1977年以降は国際化が進んだので海外国名は記せず

Page 4: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:144

hexanucleotide (G4C2)n expansionであって,後述する Asidan病がNOP53遺伝子 intron 1上のhexanucleotide (G4C2)n expansion

として,小脳失調+ALS+前頭型認知症状を来す点と類似性があり病態の共通基盤を考えるうえで重要である 58)~60).逆に C9orf72症例では僅か 11.1%に小脳失調が見られたが 61),別の研究では小脳症状は見られないものの脳MRI上の voxel-

based morphometry(VBM)解析で小脳後部の灰白質に萎縮が認められたという 62).従って C9orf72患者で小脳失調がめだたないのは,ALS症状が前景に立つためにマスクされて臨床的に観察しづらい可能性もある.実際剖検上は,C9orf72患者脳では少数例でPurkinje細胞の著明な脱落があり 61),TDP-

43陽性封入体より p62陽性封入体の数が非常に多く存在し,特に小脳顆粒細胞では TDP-43陰性+p62陽性の神経細胞内封入体(NCIs)が全例で認められた 62).また C9orf72変異ALS患者において,伸長した G4C2配列から開始コドンを介さない翻訳産物(repeat-associated non-ATG = RAN translation)の神経細胞内凝集体が小脳,大脳皮質,海馬,脊髄前角などに認められた 63)64).同様に筆者らの検討によりAsidan病でもTDP-43は染色されず 59),ubiquitin(Ub)と p62陽性封入体が下オリーブ核神経細胞に認められ,特に巨大な (G4C2)n RNA

fociが本病の主病巣である小脳 Purkinje細胞や脊髄運動ニューロン,下オリーブ核に認められたことは注目に値する 65).

C9orf72の病態については,2014年以降 G-quadroplex(グアニン四量体)を形成して核内ストレスを惹起すること 66)や,核細胞質輸送(nuclear cytoplasmic transport; NCT)異常 67)68),ミトコンドリア酸化ストレスの増大 69),核小体や NPC

(nuclear pore complex),stress granuleなどの膜成分に乏しい細胞内オルガネラの構造・機能の障害 70)~74),細胞内 autophagy

への関与 75),TDP-43蛋白の核内への輸送障害 76),マウスでの TDP-43病理にも関与している 77)78)ことなどが次々と解明されるなど,ALS症状と認知症状双方の共通基盤病態が解明されつつある.さらにUrushitaniらはALSの non-cell autonomic

な運動神経細胞死の病態や免疫療法の可能性を追求して来た手法 79)80)を発展させて,核内の生理的 TDP-43とは結合せず異所性局在型あるいは凝集体形成した異常な TDP-43とのみ結合する分解型細胞内モノクローナル抗体を開発して ALS治療に新しい可能性を導き出している 81).このようにALS+認知症合併については,ALS自体の発症年齢高齢化だけではなく,臨床経過の長期化とも相まって今後ますます重要な研究テーマとして展開して来ている.

Kii-Guam ALS/PDCの初期論文とその今日的展開

本邦では古くから「牟婁病」として知られた地域偏在性ALS

があり 82),その後グアム島でも発見され,パーキンソン症状や認知症を伴う Kii-Guam ALS/PDCとして国際的にも広く知られている 83).そもそも「牟婁」とは「周りを囲まれた所」を意味する「室」に由来した古代紀伊国牟婁郡のことであり,これは現在の和歌山県西牟婁郡・東牟婁郡と三重県南牟婁郡・北牟婁郡を中心とした紀伊半島南部から三重県南西部に跨る

広大な地域に相当する.1689(元禄 2)年に出版された本朝故事因縁集に「紀州古座庄不孝人」の表題で,「父母ニ不孝ノ者ハ路ヲ歩ムコト叶ハズ終ニ蹇(筆者注:足萎え)ト成レリ」とあり,正保年間(1645~1648年)に古座の山本金兵衛が父親と中絶して上方に上ろうとしたが,奈智で足が萎えてしまい,泊まった旅宿が崩れ,代わりに泊まった寺堂も倒れたので,遂に古郷に帰らざるを得なかった不孝の罪を知るべきであるという教訓的な説話の中に登場してくるものである 82)

(Fig. 2).なおこの故事は 2018年に Kuzuhara Sと Yase Yによって,実に 329年を経て英文で世界に向けて発信される 84).海外では 1875(明治 8)年にスペイン陸軍工兵大佐であった de la Corte RCFがマリアナ諸島の記録として発表したものが嚆矢とされている 85)~87).一方我が国では,川原汎が 1896

(明治 29)年に愛知医学会雑誌の本会記事として「筋萎縮性側索硬給(筆者注:結の誤植)ノ二例」を報告している 88).この 2症例についての詳細は,既に筆者前報で考察しているが 1),要点としては当時とて牟婁病や痴呆症などといった明確な記載はないものの,1例目の 40歳 ALS女性も 2例目の32歳 ALS男性も共に南牟婁郡在住者であり,特に 1例目の右上肢が運動緩慢というのはパーキンソン症状との関連も否定しきれないことである 89).なお川原汎著「内科彙講」にある「定型的経過ノ稍速ナル一例」90)は,上記文献 88の 2例目 32歳男性患者と同症例である.本邦で初めて論文上で紀州尾鷲地域に ALSが多いことを指摘したのは,1911(明治 44)年の三浦謹之助による臨床講義録であり,その中で本症原因究明の重要性を指摘したことは,今日的展開への端緒として極めて重要なものである 91).この三浦の指摘は,その後 1925

(大正 14)年の平田梅治による東大三浦内科から島薗内科に

Fig. 2 The first record of “Muro disease” shown in Honchō Koji Inʼnen

Shū published in 1689 later known as Kii-Guam ALS/PDC (Ref. 82).

Page 5: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:145

渡る ALS入院患者 80例の解析でも,住所が明らかな 56例中東京市 8例に次いで三重県 7例,和歌山県・千葉県各 4例,以下 17府県で各 3~1例と三重・和歌山に多いことで確認された 92).第 2次世界大戦直前の 1936(昭和 11)年になり,南洋庁サ

イパン医院の南洋庁医官岡谷昇が「米領ガム島々民チャモロ族(ミクロネシア人)に於ける震顫麻痺症例」として東京医事新誌に貴重な報告をした 93)(Table 2).サイパン医院では神経系統の疾患は比較的少数であるが,脳卒中や顔面神経麻

痺,癲癇,進行性球麻痺,脳膜炎,側索硬化症(ALS)などを経験した.米領ガム島から岡谷のサイパン医院に来院したマルセル・ウジョアという男性は,青年時代には野球のピッチャーとして有名な選手であったが,40歳時に左前腕の筋痛と退力感ならびに下腿の倦怠と震顫で発症し,46歳時に受診した.診察中左手足が大きく震顫し,頭部と頤部にも軽度震顫あり,顔貌は無表情・仮面状で運動緩徐である.記憶障害はないが,言語は抑揚を欠き比較的低音である.起立歩行時は前屈位で左手の震顫を伴い,後方からの衝突によって比較的早く前進する.四肢は他動的に強剛と抵抗があり,膝蓋腱反射は両側共に亢進しているが,ババンスキー氏現象は認めず,チャモロ族島民で最初の震顫麻痺(パーキンソン病)として報告している.この報告では父母および同胞 7人中家族歴はなく,認知機能も正常範囲であり,両側膝蓋腱反射は亢進しているが,明らかな筋萎縮や舌萎縮,fasciculationなどの

記載はないので ALS様の症候は乏しかったものと推定される.従って本症例は,この時点では岡谷の報告した如くパーキンソン病と診断して差支えないと思われる.第 2次大戦後の混乱が一段落した 1969(昭和 44)年になり,和歌山医大の八瀬と Brody JAは千葉県佐倉市に帰国在住していた岡谷医師を訪問して当時の状況を詳しく調査した 94).次いで 1975(昭和 50)年になり八瀬と Chen KMはグアム島に往診し,マルセル・ウジョアが 52歳で亡くなったこと,4人の同胞(妹,3兄弟)とも神経疾患は見られないが,長兄子(マルセル甥)が若年発症 PDであることが判明した.またマルセル自身の4娘と 4息子共にパーキンソン症状はなく,癲癇であった息子 1人が 40歳で Schizophreniaを発症したことなどを突き止め 1978(昭和 53)年に報告をした 94).このマルセルが,後年の所謂 Guam ALS/PDCに相当するかについてはなお議論を要するところではあるが,少なくとも約 350例の全グアム島 PD患者に於いて,当時このマルセルの如く 10年以上生存した者はほんの 10例(2.9%)と珍しいこと,半側パーキンソン症状で発症すること,認知症がないこと,腱反射の全般的亢進があることなどの臨床的特徴を明らかにした功績は重要である 94).一方,第 2次世界大戦後半の 1944(昭和 19)年 7月に 2年

7ヶ月ぶりに日本軍から奪還して以来,米国医療調査チームはその後矢継ぎ早にグアム島における本症の家族性や病理学的特徴について世界に向けて発信した 95)~101).中でも Hirano

Table 2 Major publications for ALS/PDC I Japan and the world.

報告年著者名 概要 文献

西暦年 元号年

1689 元禄 2 本朝故事因縁集 説話集 古座の蹇(足萎え) 本朝故事因縁集 第 92話1875 明治 8 de la Corte RCF(西) マリマナ諸島の疾患を記録 Boletin Ministerio Ultramar

1896 明治 29 川原 汎 ALS症例報告(40歳女,32歳男)南牟婁郡 愛知医学会雑誌 14号 :38-40

1911 明治 44 三浦謹之助(講),及能謙一(記) PBP症例,尾鷲町付近の ALS多発に初言及 神経学雑誌 10:366-369

1925 大正 14 平田梅治 東大 ALS 80例統計,三重・和歌山出身多いと 精神経誌 25:418-424

1936 昭和 11 岡谷 昇(南洋庁医官) ガム島チャモロ族の振戦麻痺 東京医事新誌 2997号 :2517-2518

1945 昭和 20 Zimmerman HM ガム島の ALS報告 米軍月例報告書 6月 1日号1952 昭和 27 Koerner DR マリアナ諸島の ALSを報告,家族性指摘 Ann Int Med 37:1204-1220

1954 昭和 29 Kurland LT & Mulder DW マリアナ諸島の ALS病理 Neurology 4:355-378, 438-448

1959 昭和 34 古川唯幸(阪大精神科) 近畿地方の ALS調査で和歌山に多い 阪大医誌 11:4087-4099

1961 昭和 36 Hirano Aら グアム島の ALS/PDC報告 Brain 84:642-661, 662-679

Kimura K, YaseY, Yata Yら 牟婁の ALS報告(三尾川村,電解質言及) Proc Jpn Acad 37:417-420

1972 昭和 47 Yase Y Pathogenesis of ALS(電解質異常指摘) Lancet 300:292-296

1982 昭和 57 Gajdusek DC & Salazar AM 西ニューギニアでも同様症例発見 Neurology 32:107-126

1994 平成 6 吉田宗平,紀平為子ら Migration study 神経内科 41:369-376

1995 平成 7 吉田宗平,八瀬善郎ら 飲料水 Ca/Mg低と ALS死亡率高の相関 臨床環境 4:12-18

2000 平成 12 Kokubo Yら 三重県穂原地区 ALSの再調査報告 J Neurol 415:850-852

2001 平成 13 Kuzuhara Sら 臨床病理と tau解析 Ann Neurol 49:501-511

2011 平成 23 葛原茂樹(総説) 全戸調査,tau,TDP43,遺伝子総まとめ Brain & Nerve 63:119-129

2017 平成 29 角田慶一郎,山下 徹ら Migration case報告,タウ PET image J Clin Neurosci 46:64-67

Page 6: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:146

Aらの報告は同島における ALS/PDCの疾患単位確立に大きく貢献した 99)~101).他方,本邦に於いても牟婁病を中心に検討が進み,前述した古川唯幸は 1959(昭和 34)年に近畿地方を中心に広く中国四国や三重,九州も含めたデータとして,ALS患者の現住所別では和歌山県>九州>中部>四国の順に多いが,本籍地別では和歌山県>>京都=三重>その他の地域という如く圧倒的に和歌山県本籍地が多く,和歌山県内でもとりわけ牟婁郡在住と牟婁郡本籍地が多いと重要な報告をしている 17).その後の研究はむしろ米国より本邦からの方が進捗し,1962(昭和 37)年には東大第三内科の冲中重雄は和医大第二内科の楠井賢造教授と現地共同調査を実施した 102).また 1961~1995年にかけて Kimura Kら 103)104)や Yase Y105),吉田宗平ら 106)による古座川地域の電解質異常が指摘された.この間海外からは 1982年に,Gajdusek DCと Salazar AMは西ニューギニアでも同様症例が多発しており,電解質異常との関連を指摘した 107).また一時期提唱されたソテツ実毒については今日でも因果関係が不明のままである 108)109).吉田宗平らは 1994(平成 6)年に牟婁地域出身者の別地域での ALS/

PDC発症(migration study)について報告した 110).この中で1987~1991年に紀伊半島東西牟婁郡での新規発症 ALS患者は 15例で,そのうち 8例は同地方外移住後発症者(emigrant)であり,さらにそのうち 4例は古座川流域出身者であった.この 8例中,移住年齢が判明している 6名では,牟婁地方在住期間は 4~55歳で,この間全員が川水か井戸水を飲料水としており,その 17~58年後に発症している.一方Guam島から米国 Californiaへの移民(Chamorro emigrant)の調査では,Guam島と同等の高有病率(1.2%)であり,Guam島での最小暴露期間は18年で,その1~34年後に発症しているので 111)~113),最小暴露期間は牟婁地方が短く,incubation timeは牟婁地方が長いということになる.興味深いことにMuro emigrantもChamorro emigrantも,第 2世代には発症が認められないことから,遺伝因子に加えて環境因子の重要性も指摘された 110).

2000年に入り,Kokubo Yらや Kuzuhara Sらは三重県穂原地区の詳細な検討によって,この牟婁病が消滅したわけではなく,理由不明のまま発症率は下げ止まっていること,1969

年の調査と比較して 1997年の全戸調査を含めた 1996~1999

年の検討では発症者が約 10歳高齢化したこと,男性よりも女性発症者が増加していること,ALSでは初発症状が下肢脱

力から球麻痺が多くなり,臨床病型も ALSから PDCにシフトして来ていることなど重要な報告を次々に行った 114)~122).フィリピン人が Guam島へ移民してから 20年以上を経てALS/PDCを発症した報告 123)もある一方,小長谷陽子らは第2次大戦後 28年間グアム島南部に潜伏し続けて帰国した元日本兵が,その後パーキンソン病を発症したが剖検上は Lewy

小体を伴う通常の PDであって,ALS/PDC病理は呈さなかった興味深い報告をしている 124).また Konagaya Mらは,2歳まで南勢町穂原村に育ち,その後 10歳まで同町別地区に育った女性が 60歳時に左上肢振戦で PDを発症し,65歳から記憶障害や鬱症状と遠位優位の筋萎縮を示し始め,68歳で剖検された症例を報告している 125).発端者は 4人姉兄の 4番目で

あるが,長姉,次姉,兄ともに幼少時を穂原村で過ごし,60歳以降にパーキンソン症状と認知症状を来した.しかし両親は中年の一時期に同地区に移り住んだが,その後同病を発症することなく 72歳と 76歳にて胃癌と白血病で其々死亡していることから,幼少期における一定条件の環境暴露に脆弱な遺伝的要因が後年の発症に関与しているものと洞察している 125).筆者らは 3歳まで旧高池町(三尾川下流で古座川左岸,合併後現在の古座川町)に生まれ育ったのち,両親の死亡に伴って一時期大阪市内に移り,それからさらに 5歳時に岡山県に移住した emigrantが古座川を離れてから実に 73年を経た 76

歳になり ALD/PDCを発症した男性を 2015年に経験した 126).この症例は頻発地在住が最短の3年であり,その後の incubation

timeが実に 73年と最長である極めて稀なケースである.この症例はタウ imagingを撮影することが出来,脳内の広範なタウ沈着が生前に確認出来たことも貴重である.前述のKonagaya Mら 125)の報告と筆者らの症例を総合して考察すれば,やはり何らかの遺伝的脆弱性が背景にあって,その遺伝的要因に関連する幼少時の環境暴露の双方の存在が後年における本症発症の機序であろうと推定される.いずれにしても本症は今日の日本でもまだ発症を続けて今日的展開を示している on going病であり,その遺伝的脆弱性の本態も環境要因も特定されないまま発症は下げ止まっている.また生活環境の改善や高齢化社会の進行に伴って病型も男女比もシフトを続けており 116)~122),今後も引き続き本症の原因解明が求められるところである.

FALS の初期論文とその今日的展開

海外における FALSの嚆矢論文は,1850(嘉永 3)年の Aran

FA(仏国)による臨床報告とされている(Table 3)127).即ち進行性筋萎縮症を纏めたこの症例報告集にある 11例中の第 7

例目は「遺伝性」として取り上げられ,父母についての記載はなく,母方叔父 2名と妹 1名が同病で死亡しているが,他の 3兄弟と 2姉妹は正常であると記載されている.遠洋航海船長である 45歳男性発端者は怒りっぽい性格であるが梅毒はない.2年前から上肢特に前腕筋の突張り(crampe)と痙攣(secousse)で発症し,萎縮脱力と進展し,家系に同病者が居たので受診したものである.全身は筋萎縮のため骨ばっており,寝返りや仰臥位からの起座は出来ないが,立位は可能で支持によって歩行も可能であった.拇指対立は不可で,右足指の屈曲も不可であった.通電療法(galvanisation)により脱力は少し改善したが,軽い気管支炎なのに喀痰排出出来ず,自宅へ希望退院して数時間後に死亡した.本家系はやや浸透率の低い常染色体優性遺伝性(AD)進行性筋萎縮症であり,1869(明治 2)年の Charcot JMによる ALSの疾患概念確立 2)に先立つ 19年前のことであり,剖検も得られなかったので,当時としては成人発症型進行性筋萎縮症としか記載出来なかったのではあるが,AD遺伝形式や症状進行を鑑みれば今日的には FALSといって差し支えないものと考えられている 128)~130).

Page 7: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:147

Aran FAから約 40年を経た 1889(明治 22)年になり,独国のBernhardt MはFALS1家系について臨床報告をしている 131).この報告では 32歳,37歳,40歳発症のいずれも男性患者 3

例が,頸肩部から始まる進行性脊髄性筋萎縮症に舌の萎縮とfasciculationを伴う球麻痺があるが,精神は 3例とも正常であり剖検は得られなかったとある.進行性筋 dystrophyや慢性polio脊髄炎との鑑別についても論じている.続いて 1904

(明治 37)年には蘭国ライデン大学の Bruining Jが「慢性 polio

脊髄炎の父子例」として独医学誌に報告している 132).この父親は 43歳時に右下肢萎縮で初発し,全身筋萎縮と fasciculation

あり,腱反射は上下肢共に弱く,Babinski反射も陰性であった.次第に球麻痺へと進展し,発症 18ヶ月後に肺炎で死亡

した.一方,息子は 22歳で頸部脱力から発症し,次第に上半身に広がり呼吸障害のため 24歳で死亡した.この父子例で

は 45歳父親から脊髄のみ取り出せた世界初の貴重な FALS

剖検所見記載があり,脊髄前角細胞数の減少と錐体路(Pyramidenbahn)変性もあり,ALSとして良いと述べている 132).次いで 1918(大正 7)年に米国の Hamilton ASは FALSに

関する多くの過去文献 15報の簡単な論考を行った上で,自験1家系の臨床記載と共にその剖検 1例について脊髄,末梢神経,筋組織の光顕所見を写真入りで初めて報告した 128).この

自験 1家系では進行性筋脱力のため 55歳で死亡した母方祖母と,その子 4男 5女のうち乳児死した 3名を除いて成人した 3男 3女のうち,発端者の母親を含む 3女とも 40歳代に下肢脱力で発症し,次第に上行し上半身麻痺,球麻痺へと進行した.発端者はWiscosin生まれの 30歳消防士(男)で,母親と同じく下肢に始まり上肢に広がる筋萎縮を示し,腱反射は全般的に低下していた.発症 1年 1ヶ月後に呼吸筋麻痺で死亡したこの発端者の剖検所見は,先ず脊髄では前角細胞数の著しい減少と側索の変性が確認されたが,後索障害は軽度であった.末梢神経は変性が強く,筋組織も強い変性が認められた.脊髄前裂と脊髄内前根部並びに筋組織内血管周囲に炎症性リンパ球浸潤が認められ,側索に血管増生が認められたことは ALSにおける免疫学的関与という点で今日的にも興味深い 128).1955(昭和 30)年には同じ米国から Kurland LT

とMulder DWが,不連続 2報において欧米での過去 100年間における FALS18家系既報(米,仏,独,スペイン,スコットランド,スウェーデン)の詳細な臨床総括を行い 129),続いて米国中西部の自験 6家系 34症例について詳細な臨床解析をし,3剖検所見についても報告し,このうち 1家系分については脊髄と筋の病理写真を提示している 130).ここで注意すべき点は,この自験 6家系の発端者は平均 47.8歳(34~57

Table 3 Major publications for familial ALS (FALS) in Japan and the world.

報告年著者名 概要 文献

西暦年 元号年

1850 嘉永 3 Aran FA(仏) 遺伝性筋萎縮症初記載(45歳男,剖検なし) Arch Gén de Méd 24:5-35, 172-214

1869 明治 2 Charcot JM, Joffroy A(仏) ALS初記載 Arch Physiol Norm Pathol 2:354-369, 629-649, 744-760

1884 明治 17 Schultze(独)(姓のみ名記載なし) 小児 FALS 3例を初報告(3,5,8歳) Berl Klin Wochenschr No. 41, p. 1-3

1889 明治 22 Bernardt M(独) FALS 3例報告(32~40歳男,剖検なし) Arch Pathol Anat 115:197-216

1904 明治 37 Bruining J(蘭) FALS父子例(慢性ポリオと報告,父 FALS初剖検) Deut Ztshr f Nerfenh 27:269-290

1918 大正 7 Hamilton AS(米) 過去文献と自剖検写真提示(脊髄末梢神経筋) J Nerv Ment Dus 48:127-150

1932 昭和 7 佐野梅太郎(京大小児科) FALS日本初記載(京大小児科)常劣 4姉弟児 乳児学雑誌 12:121-158

1934 昭和 9 霞 春海(東大二内) FALS同胞 3例(東大呉内科)常劣 3兄弟児 日内会誌 22:1017-1031

1949 昭和 24 岡本重一(京大精神科) FALS成人 AD 4例(京大精神科)48~65歳発症 精神経誌 51:25-29

1955 昭和 30 Kurland LT, Mulder DW(米) 過去文献と自験 6家系 34例,成人のみ Neurology 5:182-196, 249-268

1963 昭和 38 五島雄一郎,富田 稔ら FALS成人 AD1家系 6例(慶大内科,日本初剖検) 脳と神経 15:1011-1015

椿 忠雄,中村晴臣ら FALS成人 AD1家系 4例(東大脳研中尾内科) 脳と神経 15:1137-1141

1993 平成 5 Rosen DR, Siddique Tら(米) FALS/SOD1遺伝子変異発見(ボストン) Nature 362:59-62

Deng HX, Hentati Aら(米) FALS/SOD1遺伝子変異発見(シカゴ) Science 261:1047-1051

Aoki M, Abe Kら(日) 日本 FALS/SOD1遺伝子変異発見(仙台) Nature Genetics 5:323-324

2008 平成 20 Sreedharan Jら(英 London) TDP-43遺伝子変異発見 Science 319:1668-1672

2009 平成 21 Kwiatkowski TJ Jrら(米MGH) FUS/TLS遺伝子変異発見 Science 323:1205-1208

Vance Cら(英 London) 同上 Science 323:1208-1211

2010 平成 22 Maruyama H, Kawakami Hら(日) Optineurin遺伝子変異発見 Nature 465:223-226

2011 平成 23 DeJesus-Hernandez Mら(米) C9orf72(G4C2)n遺伝子変異発見 Neuron 72:245-256

Renton AEら(米 NIH) 同上 Neuron 72:257-268

(遺伝性なので国名などを入れている),AD(autosomal dominant)

Page 8: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:148

歳)の発症で,家族も含めて全て成人発症 AD型 FALSである.因みに欧米での小児期(juvenile)発症 FALSは,1884(明治 17)年に独国ハイデルベルグ大学の Schultze(論文中名不記載)が報告した 3歳,5歳,8歳発症の 3姉弟妹例とされている 133).上述のような欧米からの報告に対して,本邦におけるFALS

の嚆矢論文は,上述したAran FAから 82年後に京大小児科の佐野梅太郎が 1932(昭和 7)年に乳児学雑誌に報告した 1家系 4症例であり 134)(Fig. 3a),第 2報は東大第二内科(入沢達吉教授の後を襲った 2代目呉健教授)の霞春海が 2年後の1934(昭和 9)年に日内会誌に報告した 1家系 3症例である 135)

(Fig. 3b).しかしこの 2報とも常染色体劣性遺伝性(AR)でそれぞれ同胞 4姉弟児と同胞 3兄弟児の juvenile FALSである.「家族性ニ現レタル小児筋萎縮性側索硬化症ノ一例」と題する佐野の 4姉弟児は血族婚ではない無症状両親の 4患児共に台湾基隆市で出生生育し,いずれも処女歩行が 1歳 2ヶ月~2歳 6ヶ月と遅延し,1歳 4ヶ月~5歳に強硬性歩行あるいは爪先歩行で発症し,進行性に四肢筋萎縮と構音障害,知的障害が顕在化して来たものである(Fig. 3a).診察上,球麻痺があり,腱反射は亢進か正常で,fasciculationは認めず,Babinskiなど病的反射は陰性である.従って確かに臨床的には上下位運動ニューロン共に障害されているが,明らかな知的障害が存在している 134).本報告の冒頭で佐野が「家族性ニ現レタルモノハ至ツテ鮮シ,殊ニ本邦ニテハ未ダソノ報告ニ接スルニ至ラズ」とした点は正しいが,考按及び総括の項で

「本症ハ成人ニテハ家族性ニアラワルヽコトナク,少年期ニ

発病スルモノニ於テノミ家族性ナルコトアリ」とした点は,今日的に振り返れば欧米論文について成人患者家系を見逃し小児患者家系のみを認識していたということになるが,当時の医学文献検索状況を鑑みれば致仕方ないであろう.霞の同胞 3兄弟児も血族婚ではない無症状両親の 6兄妹中

で 3男児(17歳,13歳,7歳)のみが発症し,3女児(15歳,9歳,3歳)は無症状である.これらの 3患男児は 6~11歳発症で進行性に四肢筋萎縮を呈し,舌萎縮あり,四肢腱反射は

著しく亢進し,繊維性攣縮を認めBabinski反射も陽性である.処女歩行と知的機能についての記載はない 135)(Fig. 3b).因みに本論文の末尾には「呉教授ノ御指導ニ満腔ノ謝意ヲ表ス,尚当教室ノ冲中博士ノ御助力ヲ感謝ス」と記してあり,これは冲中重雄が 1946年に第二内科(3代目佐々貫之教授)から第三内科の坂口康蔵教授の後任(4代目教授)として就任する 12年前のことである.同様の小児 FALSについては,30年後の 1963~1964(昭和 38~39)年に小鳥居らや竹迫らも報告している 18)19)23).本邦における上述の佐野や霞,小鳥居ら,竹迫らの家系は今日的には juvenile AR-FALSと考えられ,Table 4

に示す FLAS一覧の中では FALS2,5,16などが該当する可能性がある.また小児 ALSという点では AD遺伝形式ではあるが senataxin遺伝子変異を伴う FALS4や,ALS様に筋萎縮と反射亢進を伴い遺伝性運動感覚 neuropathy5型(HMSN-V)に分類される所謂「痙直を伴う Charcot-Marie-Tooth(CMT)症候群」のなかで,seipinopathy(BSCL2遺伝子変異関連神経障害)136)137),Troyer症候群(spartin遺伝子変異関連 SPG20)138)

などが鑑別疾患に挙げられるものの(Table 5),2016~2017年現在でこれら家系の原因遺伝子が解明されたかどうかは不明とされている(岡山大学小児神経科小林勝弘教授 2016年

1月,東京女子医大小児科大澤真木子名誉教授 2016年 9月,京大小児科平家俊男教授・吉田健司助教 2017年 3月,東大神経内科辻省次名誉教授 2017年 4月いずれも私信).一方,本邦における成人 FALSの嚆矢論文は第 2次大戦後の 1949(昭和 24)年に,京大精神科の岡本重一が精神経誌に報告した「筋萎縮性脊髄側索硬化症の遺伝性に就いて」である 139).本報告では 2世代 4名の男性患者が 48~66歳に下肢硬直で発症し,四肢筋萎縮,繊維性攣縮,四肢腱反射亢進,Babinski反射陽性などの所見を呈しながら,14~19年の経過で緩徐に進行していくと記載している.続いて 1963(昭和 38)年に五島雄一郎らと椿忠雄らが相次いで成人 FALS家系を

報告した 140)141).慶應義塾大学内科の五島らの報告は 1家系

3世代 6例の臨床特徴をまとめ,平均 32.3歳発症で死亡まで平均 2.7年という急速進行性であるが,本邦初の FALS剖検報

Fig. 3 The first familial ALS (FALS) reports in Japan.

(a) Three ALS patients of the four brothers (Ref. 134), and (b) three ALS patients of the six brothers (Ref. 135).

Page 9: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:149

Table 4 Lists of familial ALS (FALS).

疾患 遺伝子 遺伝形式 遺伝子産物 蛋白生理機能 特記事項

FALS 1 SOD1 AD, AR

(D90A)

Cu/ZnSOD 抗酸化 日本人 FALSの 30~45%

FALS 2 ALS2 AR alsin 蛋白輸送 Juvenile-onset,チュニジア,中東

FALS 3 (18q21) AD ? ? 仏 1家系のみ

FALS 4 SETX AD senataxin DNA-RNA helicase 英国,日本でも稀に

FALS 5 SPG11 AR spatacsin 膜結合蛋白 Juvenile-onset,本邦 SSPに多い

FALS 6 FUS/TLS AD, AR fused in sarcoma/translocated

in liposarcoma

RNA代謝調節 日本人 FALSの 7~15%,SALSでも

FALS 7 (20q13) AD ? ? 1家系のみ

FALS 8 VAPB AD vesicular-asscociated

membrane p.B

小胞体輸送 ブラジル 7家系のみ

FALS 9 ANG AD,

sporadic

angiogenin 血管新生,神経保護 アイルランド・スコットランド,日本でも稀に

FALS 10 TARDBP AD TDP-43 RNA代謝調節 日本人 FALSの 2~14%,SALSでも

FALS 11 FIG4 AD PI5-phosphate 小胞体輸送 10患者のみ

FALS 12 OPTN AD, AR optineurin NFkB制御 日本人 FALSの 1~7%

FALS 13 ATXN2 AD ataxin 2 遺伝子制御 小脳失調症 SCA 2,SALS危険因子

FALS 14 VCP AD p97 (valosin-containing p.) 蛋白分解 MSAにも関与

FALS 15 UBQLN2 XD ubiquilin 2 蛋白分解 1家系のみ

FALS 16 SIGMAR1 AR s intranuclear receptor 1 分子シャペロン Juvenile-onset, サウジ 1家系のみ

FALS 17 CHMP2B AD charged multivesicular p. 2B 蛋白輸送分解,オートファジー ALSの 1%,SPMAの 10%

FALS 18 PFN1 AD profilin 1 細胞骨格 極めて稀,中国人のみ

FALS 19 ErbB4 AD avian oncogene homolog 4 受容体型チロシンリン酸化 極めて稀,4患者のみ

FALS 20 hnRNPA1 ? heterogeneous NRP TDP-43と結合 極めて稀,2患者のみ

FALS 21 MATR3 AD matrin3 TDP-43と相互作用 極めて稀,distal myopathyや喉頭異常,distal myopathy

FALS 22 TUBA4A AD tubulin α 4A 細胞骨格 FTD合併することあり

FTD-FALS 1 C9orf72 AD G4C2 expansion 核細胞質輸送,オートファジー 白人に多い,台湾以外アジア稀

FTD-FALS 2 CHCHD10 AD CHCHD10 酸化的リン酸化に関与 認知症,小脳失調合併

FTD-FALS 3 SQSTM1 AD p62 (sequestosome) オートファジー 認知症合併,骨 Paget病

FTD-FALS 4 TBK1 AD TANK結合キナーゼ 1 OPTNをリン酸化 認知症合併

IBM-PFD 2 hnRNPA2B1 AD heterogeneous NRP TDP-43と結合 極めて稀,2患者のみ,IBMと Paget病,認知症

AD (autosomal dominant), AR (autosomal recessive), IBM (inclusion body myopathy)

Table 5 Lists of juvenile familial ALS (FALS) and related diseases.

疾患 筋萎縮 反射亢進 球麻痺 遺伝子形式 特記事項

FALS 2 + + + AR チュニジア・中東,日本でも稀にFALS 4 + + -/+ AD 英国多い,日本少しFALS 5 + + AR 10家系のみFALS 16 + + AR サウジアラビアSeipinopathy + ++ -? AD SPG17 (Silver synd.), dHMN-V (CMT), ER stress

Troyer syndrome + ++ 構音障害 AR SPG20

Page 10: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:150

告として脳および脊髄の病理写真を提示している点は貴重である 140).この家系の第 III世代同胞 6名のうち剖検のない長男については関東逓信病院の加瀬と吉益が日本神経学会関東地方会で報告し 142),剖検された次男と 3男はそれぞれ順天堂大学の佐久間と赤松 143),ならびに慶應義塾大学の五島ら 144)

によって同じ地方会で並んで口頭発表されている.五島らの報告した 3男は,30歳発症で 1年 5ヶ月で死亡した秋田県出身の男性患者で,剖検所見として脊髄前角細胞の強い脱落と前側索変性に加えて,血管周囲のリンパ球浸潤が認められたことは上述の Hamilton論文 128)との共通性があり,免疫機序や血管性因子との観点で今日的にも意義深い.東大脳研と第三内科(5代目中尾喜久教授)の椿らによる報告 141)では,1

家系で父,姉,発端者(41歳男),弟の 2世代 4名の臨床的特徴を纏め,24~40歳に発症し 3~5年で死亡している.この 4患者はいずれも下肢から発症し,次第に上肢に広がり,錘体路徴候や fasciculationを認め,発端者の左 gastrocnemius

生検で小線維群の出現を特徴とする神経原性筋萎縮を呈していたが,脳脊髄の剖検までは得られていない 141).それから丁度 30年を経た 1993(平成 5)年になり,米国ボ

ストン(MGH)とシカゴ,日本(仙台)の 3グループから相次いでこれら FALSの原因遺伝子として Cu/ZnSOD(SOD1)の変異が報告されたことは,Charcot JM以来 120年以上に渡る ALS研究史上の一大 breakthroughとなった 145)~147).その後は遺伝子解析技術の進歩と共に,坂道を転げ落ちる雪だるまのように次々と新しい原因遺伝子が解明されてきており,2008(平成 20)年の TDP-43遺伝子変異の発見 42)~47)に続いて,2009(平成 21)年には FUS/TLS(fused in sarcoma, translated

in lyposarcoma)遺伝子に missenseや deletion/insertion変異が報告された 148)149).この FUS/TLS遺伝子は元々癌関連遺伝子として知られており,通常は主として核内におけるRNA処理に関与しているが,FUS変異を持ったALS患者の脊髄前角細胞内には好塩基性封入体を認め,これは同時に FUS/Ub陽

性かつ TDP-43陰性で 150),核内 RNA処理機構の破綻と核細胞質輸送(NCT)障害が病態として考えられている.このFUS/TLS変異はイタリアでは FALSの 4.4%,SALSの 0.7%を占めたが 151),日本 ALSコンソーシアム(JaCALS)の 2016

年データでは,39名の本邦 FALS患者の原因遺伝子としてSOD1が 35.9%,次いで FUS 7.7%,TDP-43 2.6%,VCP 2.6%の順となっており,469名の SALS患者でも SOD1が 2.3%,次いで FUS 0.4%,TDP-43が 0.2%に認められた 152).一方,次世代 sequencerによる本邦FALS111家系の解析では,SOD1

変異が 32%,次いで FUS変異 11%,TDP-43が 2%,SETX

2%,angiogenin(ANG)1%,optineurin(OPTN)1%,ALS2

が 1%の順番となっている 153).また岡山大学のmotor neuron

disease(MND)406名の解析では,ALSが 96.0%,SBMA

2.2%,SPMA 1.8%の順となっており,この ALS 390名のうち SALSが 95.6%で FALSは 14家系 17名で 4.4%である.このFALS 17名のうち,SOD1変異患者数は52.9%,FUS 11.8%,TDP-43が 11.8%,OPTN 5.9%,未同定 17.6%となっており,家系数で換算すれば SOD1が 42.9%,FUS 14.3%,TDP-43が14.3%,OPTN 7.1%,未同定 21.4%となる 154).従って施設による多少の差異はあるにせよ,本邦においては SOD1 >> FUS >

TDP-43というのが FALSならびに SALSの一般的頻度であると考えて構わない(Fig. 4).いずれにしろこの FUS/TLS変異を持つ FLAS患者の臨床的特徴は,40歳代で発症し,下位運動神経(LMN)優位で進行が速いためか上位運動神経(UMN)徴候はめだたず,多くは 3年程度で球麻痺か呼吸筋麻痺で死亡する.

FUS/TLS以降の特筆すべき展開としては,2010(平成 22)年にMaruyama Hや Kawakami Hらが発見した OPTN遺伝子異常 155)と,翌 2011(平成 23)年に発見された上述の C9orf72

遺伝子異常 51)52)であろう.OPTNはもともと広隅角緑内障の責任遺伝子として見つかったが,本邦で FALSの原因遺伝子にもなることが解明されたものである 155).即ち同一遺伝子の別

Fig. 4 Subtype frequencies of Japanese FALS among JaCALS, Tohoku University and Okayama University.

Page 11: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:151

部位の変異により緑内障あるいは ALSを発症することになるので,FUS/TLSとの類似性も考えられて重要である 148)149).その後欧米の FALS解析では,OPTNは FALSの 1.2%,SALS

の 3.5%に認められる稀な変異であり,民族間頻度差の高いALS関連遺伝子であることも分かった 156).一方 C9orf72遺伝子変異は白人 FALSの約 35%,白人 SALSの約 7%を占めるなど白人に多いが,アジアでは台湾(FALSの 20%)を除いて数%以下と低い 53).また C9orf72変異は ALSや ALS-FTD,FTD,一部の孤発性 FTLDなど広範な臨床スペクトラムを呈することが特徴であるが 53),前述した如く本邦では FALSの2.8%,SALSの 0.4%程度に過ぎず 54)~57),唯一紀州古座川・串本 2町のみ 20%と高率に認めた 56)57).

Table 4に示すように今日では FALSの原因遺伝子は 22以上に及び,その生理的機能は多岐に渡るといえるが,主として抗酸化機能や神経保護機能,細胞内での蛋白・小胞体輸

送,NCT機能,RNA代謝調節機能,蛋白分解と処理機構(autophagyなど)などに関与している遺伝子異常であると総括することが出来よう.1993年以降の 18年間に渡る相次ぐFALS遺伝子異常の発見は,確かに飛躍的な ALSの病態解明へと展開した 51)~57)145)~156).しかし一方,その同じ 25年間でALSの治療法で唯一臨床効果が認められたのは,1994年の興奮毒性+酸化ストレス抑制薬である riluzole157)と,2017年の酸化ストレス抑制薬 edaravone158)~160)のみである.しかしこの両薬ともその臨床効果は極めて modestであって,未だ病態修飾療法(disease modifying therapy; DMT)には至っていないのが遺伝子発見から今日に至る 25年間の展開である.一方,幾つかの遺伝子変異については遺伝子改変実験モデルも作成されて来ており 161)~164),また FALS患者や SALS患者からの iPS細胞樹立も進捗して来ているので 165)167),autophagy・mitophagy異常 168)169)や他疾患でも認められる細胞間伝播メカニズム 170)など詳細な病態解明と,より高効率な薬剤スクリーニング法 171)や幹細胞治療 172)~174)などによって,DMTが実現される日が待たれている.実際,脊髄性筋萎縮症(spinal muscular

atrophy; SMA)については,SMA2遺伝子の異常 splicingを是正する新しい anti-sense oligonuceotide(ASO)が,核酸医薬品nusinersenの髄注療法として 2017年 8月に認可され,乳児型(Werdnig-Hoffmann病)のみならず主として神経内科が担当する Kugelberg-Welander病(SMAIII型)の治療上画期的なDMTが実現されたことは特筆に値する 175)~177).

球脊髄性筋萎縮症の初期論文とその今日的展開

球脊髄性筋萎縮症(bulbo-spinal muscular atrophy; BSMA)は日本では川原病,川原・向井病,あるいは Kennedy-Alter-

Sung(KAS)病とも呼ばれて来た.本症の嚆矢論文は 1897

(明治 30)年 1月愛知医学会雑誌に発表した川原汎による

「進行性延髄麻痺ノ血族的発生ノ一例」である 178)(Fig. 5).この論文中で川原は愛知県知多郡の兄弟 2例を報告しており,44歳の兄は 2年前に生命保険の審査を受けた際に本疾患のため謝絶されたので受診したものである.顔面下半部が異常に

平沢しており,顔面諸部に繊維性攣縮あり,また口唇で吹くなどが不完全で,特に舌は軽度萎縮し,表面皺襞多数で繊維性攣縮を盛んに呈した.しかし言語自体はやや不明瞭な程度であり,四肢所見の記載はない.一方,38歳の弟は 30歳頃より上肢強剛し,35歳より下肢と喉頭に絞搾感あり,繊維性攣縮は顔面に認めず舌にのみ活発に認めた.上下肢筋は全く弛緩しているが(四肢筋萎縮所見は記載なく),腱反射は正常であった.従って両例とも単純な進行性延髄麻痺であって,「猶未タ筋萎縮性側索硬化ト做ス事能ハス」として,ALSと一線を画している.また本症の遺伝及び血族的発生は稀有なので一実験ながら報告の価値ありとし,続いて 13疾患に及ぶ鑑別診断を示している.この報告では母方伯父に歩行跟蹌(筆者注:踉蹌=ろうそう=よろめき走る意,の誤植)があったと記載しているだけで,遺伝形式にまでは言及していない.川原汎は愛知医学校(現在の名古屋大学医学部)の在職中に様々な症例報告をしているが,本報告は 1896(明治 29)年12月の愛知医学会常会で演説した 4例を,「実験一束」として翌 1897(明治 30)年 1月号の愛知医学会雑誌に掲載した第2例目である.因みに第 1例目は糞便悪臭に悩む 53歳女性糖尿病患者について述べ,第 3例目は左前額部の顔面神経枝麻痺の 18歳患者,第 4例目は閃雷性舞踏病の 53歳女性患者について記載している 178).従ってこの時点で川原は,この遺伝性と思われる進行性延髄麻痺だけを特別扱いして報告していた訳ではなかったのであり,後に本症が一疾患単位とされ本報告がその嚆矢論文となることは想像していなかったに違いない.実際,同年 6月発行の有名な教科書「内科彙講」の慢性進行性延髄麻痺の項目には,「男女ノ差ハ甚シカラス,遺伝作用は詳ナラス」とのみ記している 179).この論文は日本語で書かれており剖検所見の記載もないが,一線を画したALSとの相違と(伴性劣性も推定される)遺伝性を指摘した 2点は,嚆矢論文とするに値する重要なポイントであった(Table 6).髙橋昭の詳細な調査によれば,長崎県大村市出身の川原汎は東京帝大在籍中に von Baelz Eに内科学と病理学を学んだが,学生生活の後半は肺結核の闘病生活となり,一時期入院した東大病院では Baelz指導の治療を賜わったという 180).1883(明治 16)年に東大を卒業した川原は,同年 10月 15日に愛知医学校の一等教諭(教授)として赴任し,14年間奉職して,1897(明治 30)年 2月 7日に肺疾治療のため退職した.即ち本報告は川原が持病悪化によって,止むなく愛知医学校を退職せざるを得なかった直前の状態で演説し(明治 29年12月),執筆し,公表(明治 30年 1月号)された貴重なものであることが分かる.2月に愛知医学校を退職した川原はそのまま名古屋市内で療院を開業し,同年 6月 14日には「内科彙講」を出版している 179)~181).その後,川原療院で自らの療養と患者の診療を行い,1918(大正 7)年に死亡するまで 21

年間地域医療に貢献した.病身の生命を削るようにひたすら後世に残る貴重な論文を書き続け,日本初の神経内科教科書を出版した川原の姿は,東大生時代の恩師であり主治医でもあった Baelzを通してその高祖師である Hufeland CW(Berlin

大学)180)の有名な遺訓「毎日夜間に方て更に昼間の病按を再

Page 12: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:152

考し,詳に筆記するを課定とすべし.積て一書を成せば,自己の為にも病者のためにも広大の裨益あり.(扶氏医戒第 5

条)」 182)を忠実に継承したものといえよう.また本邦初の神経内科教科書であるにも関わらず,殆ど忘れ去られ掛けていたこの「内科彙講」を,発刊 100年記念として 1997(平成 9)年に復刻版を出版した名古屋大学神経内科の髙橋昭教授の日本ならびに世界の神経内科学に与えた功績は計り知れないものがある 179).2001年以降も Takahasi Aは海外に向けて川原汎の業績を発信し続けている 183)184).確かにひとり進行性球麻痺だけを取り上げてみれば,「進行

性球麻痺兼進行性筋萎縮ノ実験」として寺尾國平が,川原論文の 9年前にあたる 1888(明治 21)年 8月 18日号の東京医

事新誌に既に報告している 185).この論文中で寺尾は,本邦での報告を聞いたことがないのに,神田にあった山龍堂病院クリニーキ(筆者注:外来)で僅か 1年の間に 2例を経験したのでその 1例を読者に供するとしている.東京在住のこの 37

歳男性患者は,3年前より夜間睡眠中や歩行中に四肢震動し時々左半あるいは全頭痛あり,言語渋滞を発症した.2年前の 11月に雲州松江へ出張途中の山中で 2日間風雨寒湿に遭遇した際に構音障害が悪化し左手も運動不随となった.この出張から帰京後に嚥下困難や右手足麻痺も強くなったので受診したものである.現症としては,「容貌痴呆ノ如ク」であり,閉れない口から常に流涎し,舌は震動して口外に提出出来ず,言語渋滞と嚥下困難が著しい.顔面筋は著しく刺激性

Fig. 5 The first paper on SBMA in Japan and the world.

Page 13: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:153

で,僅かな刺激で攣縮する.全身は羸痩し,手筋も下肢も著しく萎縮し,膝蓋腱反射は亢進し,歩行は蹣跚(筆者注:まんさん=よろめき歩く意)であった.しかし「血族中遺伝ノ疾病ナシ」とあるので,本例は今日的診断としては PBP型ALSであり,川原のケースとは異なるとして良いであろう.その川原論文から 56年を経た 1953(昭和 28)年に,滝川

晃一は川原とは別の知多郡一大家系を以って,「進行性球麻痺」として本症が伴性劣性遺伝形式であることを日本語論文で初めて証明した 186).次いで 1957(昭和 32)年のMurakami

Uは,滝川と同一家系について世界で初めて英語で家系図と臨床写真など多数掲載した一大総説を発表した 187).このMurakami Uと同年に米国 NIHの Kurland LTは,遺伝性 ALS

に関する論文の末尾 addendumにおいて名古屋訪問の際に診

察した日本人 2家系 2例を「非定型MND」として補追記録し,他にも 4例居ると名古屋大学の村上氏広・日比野進両教授から聞き,遺伝形式は伴性劣性で良いとしている 188).一方,1960(昭和 35)年に米国ミシガン大学のMagee KRは,BSMAとして本症の世界初病理所見を報告した 189).このMagee KRの論文では,1家系 5兄妹中のうち 3兄弟が進行性に遠位筋萎縮と球麻痺を呈した詳細な臨床記録によってALS

とは臨床的に区別され,遺伝形式も常染色体劣性か伴性劣性が推定されるとした.また 40歳で発症し 55歳で死亡した末弟の剖検所見では,脳幹脊髄の運動ニューロン脱落が著明だが側索は保たれているとし,本症の lower motor neuron障害を病理学的に確認して ALSと異なる一つの疾患単位確立に大きく貢献した 189).因みにこのMagee KRに続く剖検報告は

Table 6 Major publications for SBMA in Japan and the world.

報告年著者名(病名など) 概要 文献

西暦年 元号年

1897 明治 30 川原 汎(知多半島患者) (進行性延髄麻痺)

1月号:兄弟 2例,世界初記載,ALSと一線画す 愛知医学会雑誌 16号 :3-4

2月 7日:愛知医学校退職(肺疾療養のため)6月 14日:内科彙講出版 内科彙講 pp. 243-246

1953 昭和 28 滝川晃一(知多半島患者) (進行性球麻痺)

一大家系で伴性劣性遺伝形式を証明,剖検なし(名大環境研,1内)(後のKurland診察 1例目家系)

遺伝学雑誌 28:116-125

1957 昭和 32 Murakami Uら(知多半島患者) (進行性球麻痺)

家系図・臨床写真など 208点報告(名大環境研,一内)剖検なし(巨大総説)

Folia Psychiat Neurol Jpn 1 (suppl. 1):pp. 1-209

Kurland LT(非定型MNDかと) Addendumで日本人 2家系 2例を報告,村上・日比野両教授から他 4例有りと聞く,伴劣で良い

Mayo Clinic Proc 32:449-462

1960 昭和 35 Maggie KR (BSMA) 3兄弟臨床,世界初剖検報告 1例 Neurology 10:295-305

1965 昭和 40 Tsukagoshi Hら(東大三内) (神経原性近位筋萎縮)

4家系 5男性患者,Muscle biopsy + EMGも,剖検なし,遅発性 KW病と指摘(1970年でも KWと再報告)

Arch Neurol 12:597-603

1966 昭和 41 荒木淑郎,杉本亘邦(九大) 九州から 1家系 5名報告 臨床神経 6:13-19

Becker von PE (独,Bulbärparalyse)

独語で川原・滝川・村上・Kurland報告を紹介 Humangenetik pp. 398-399

1968 昭和 43 Kennedy WR, Alter M, Sun JH (近位筋 SBMA)

2家系 11例報告,伴劣と明記,SBMAと初呼称,剖検 1例あり

Neurology 18:671-680

1976 昭和 51 飯田光男ら(SBMA) SBMA1家系 2兄弟(前のKurland診察 2例目家系) 臨床神経 16:794(抄録 1 p)1979 昭和 54 向井栄一郎ら(BSMA) 川原・滝川・Kurland・飯田家系を総まとめ 神経内科 11:252-258

1980 昭和 55 向井栄一郎(BSMA) 自験 31症例の臨床特徴まとめ 臨床神経 20:255-263

1981 昭和 56 向井栄一郎ら(BSMA) BSMA本邦初剖検 1例報告 臨床神経 21:228-233

1991 平成 3 La Spada AR, Fischbeck KHら Androgen receptor遺伝子変異を発見 Nature 352:77-79

1992 平成 4 Doyu M, Sobue G, Takahashi Aら 異常伸長 CAGリピート数が重症度を規定 Ann Neurol 32:707-710

1993 平成 5 Doyu Mら(X-BSNP) 最高齢 84歳患者報告(CAG数 40) JNNP 56:832-833

1996 平成 8 Tanaka F, Sobue Gら 日本人で founderあり Hum Mol Genet 5:1253-1257

1997 平成 9 高橋 昭,川原哲夫 内科彙講 復刻版発行(100年振り)1998 平成 10 Li M, Sobue Gら Androgen receptorの核内凝集体を発見 Ann Neurol 44:249-254

2003 平成 15 Katsuno M, Sobue Gら モデルマウスで AR抑制薬の効果を証明 Nature Med 9:768-773

2006 平成 18 Atsuta N, Watanabe H, Sobue Gら SBMAの自然歴を明らかにした Brain 129:1446-1455

2010 平成 22 Katsuno M, Sobue Gら SBMA患者で AR抑制薬の嚥下改善効果を示唆 Lancet Neurol 9:875-884

2013 平成 25 Morimoto N, Yamashita Tら インピーダンス喉頭計で喉頭機能保持を実証 J Neuro Sci 324:149-155

2016 平成 28 Hijikata Y, Katsuno Mら neuromuscular degenerationであると病態解明 Ann Clin Transl Neurol 3:537-546

Page 14: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:154

海外では,後述する 1968(昭和 43)年の Kennedy WRら 190),続いて 1980(昭和 55)年の Paulson GWら 191)である.日本における剖検報告は,1981(昭和 56)年の向井栄一郎ら(名古屋大学)の 1例報告 192)を嚆矢として,1988(昭和 63)年の Nagashima T(都立神経病院)らからの兄弟 2剖検報告 193),1989(平成元)年の Sobue Gらからの 3剖検+ 6 sural nerve

biopsy報告 194)と続く.Magee KRに続いて 1965(昭和 40)年に日本の Tsukagoshi

Hらは東京から遺伝性神経原性近位筋萎縮症として 4家系

5男性患者について英文で報告した 195).本報告では針筋電図で神経原性所見があり,筋生検でも神経原性萎縮を示し,4

家系とも各 2発症者あるので遺伝性の可能性は有るが,遺伝形式までは特定出来ないと記載している.しかし家族歴も含めた全 8例のうち case 4男性患者の母親を除いた 7例が男性患者であり,この case 4の残りの同胞 5名全ての女性が未発症であることから,伴性劣性で一部女性(case 4の母)に症状発現する場合か,浸透率の低い常染色体優性遺伝性の可能性が指摘出来るはずである.本論文では下肢脱力で発症し,数年後に上肢脱力に進展する経過を辿り,四肢に fasciculation

は認めるものの,球麻痺は 5例中 3例のみに観察されたこともあってか,「球麻痺の存在が非典型的ではあるものの,Magee KRらの遠位筋萎縮とも異なるので,遅発性Kugelberg-

Welander(KW)病の可能性がある」と結んでおり,剖検は得られていない 195).この Tsukagoshi Hらは 1970(昭和 45)年の段階でも同様の結論を報告しており 196),先行していた川原 178)・滝川 186)・Murakami U187)報告との関連については言及していない一方で,Kurland LT188)・Magee KR189)・Kennedy WRら 190)

の論文は引用論究して「似ている(resemble)」としている.しかしそれでも,発症年齢が 15~38歳と若いのでそれらとは異なるのであって,伴性劣性で球麻痺を伴う遅発性 KW病亜型であろうと結論したのは,恐らく神経原性であるにも関わらず近位筋萎縮しているという点に拘泥したためであろ

う 196).因みにその後も本邦では山本耕平らが 1975(昭和 50)年の時点で「稀な徴候を伴った KW病」として報告しており 197),海外でも前述のオハイオ州 Paulson GWらが 1980(昭和 55)年時点で同様に「伴性劣性遅発性 KW病」としている 191).Tsukagoshi Hらに続いて 1966(昭和 41)年に荒木淑郎と杉本亘邦は,九州から 1家系 5名の男性患者を報告した 198).この報告では臨床写真,針筋電図,腓腹筋生検写真,舌写真,症状表など貴重な所見が多数掲載されており,遺伝形式についても詳細な家系図を元に伴性劣性 probableとして差支えないとしている.また筋萎縮に近位躯幹側と四肢末端部の二つの異なった型を示すこと,ならびに瞳孔左右不同症と pes cavus

が 2例に認められたことも併せて指摘している 198).この荒木・杉本論文と同じ 1966(昭和 41年)年に独国

Göttingenの von Becker PEは前述したKawahara H,Takikawa

K,Murakami U,Kurland LTの報告を「Chita-Halbinsel(知多半島)」とまで言及して世界に向けて紹介してくれた 199).しかし惜しむらくは独語だったことと人類遺伝学に関するハンドブックの 1節記述であっために広く英語圏の神経内科世界

には流布しなかった 180)199).このことは初期の貴重な日本発original論文の国際的認知という点で,今日的にも極めて惜しまれる.案の定それから 2年後の 1968(昭和 43)年に,米国ミネソタ大学の Kennedy WRと Alter M,Sung JHの 3人は進行性近位性脊髄球筋萎縮症(SBMA)として剖検 1例を含めた 2家系 11例を纏めて報告した 190).このKennedy WRらが,論文中で顔面下半部の脱力と fasciculationが特徴的であると記しているのは奇しくも川原の原著 178)と一致しており,また 11年前の Kurland LT論文 188)中に記載された日本人 2男性患者は自験例と類似している(similar)と記している 190).この論文は表題上も伴性劣性遺伝と明記し,またこれまでBSMAとして記載されて来た本症について初めてSBMAと表現を改めたもので,本症の疾患単位としての確立ならびにその後の国際的通用病名の嚆矢となった 190)(Table 6).それから 23年を経た 1991(平成 3)年に La Spada ARや

Fischbeck KHらは本症の原因として androgen receptor(AR)遺伝子の第 1 exon内の CAGリピート数の異常増大であることを発見した 200).即ち本症は川原の初報告から 94年を経て遂に遺伝子が特定されたのである.この遺伝子変異はその後全世界で追認され,2017年現在では正常では 10~36リピートであるが,SBMA患者では 38~62リピートとされてい

る 201).その後本症は名古屋大学の祖父江元らの研究グループによって,先ず Doyu Mらから 1992(平成 4)年に異常伸長した CAGリピート数が重症度や発症年齢を規定し 202),翌1993(平成 5)年には 70歳代半ばに昇段困難で発症した最高齢 84歳患者の CAGリピート数は病的下限の 40と報告された 203).次いで Tanaka Fらから日本人において遺伝的 founder

が存在すること 204),さらにLi Mらから核内凝集体の発見 205),Katsuno Mらからモデルマウスにおいてテストステロン抑制薬の臨床効果を証明したこと 206),Katsuno Mらから同病患者においてテストステロン抑制薬の効果も検証されたこと 207)

などの報告が相次いだ.この間 Atsuta Nらは本症の自然歴も明らかにして来た 208).このように本症は日本で初めて発見記載され,遺伝子の特定こそ米国に譲ったが,その後の病態解明や治療法開発など基礎的ならびに臨床的研究については

一貫して名古屋大学グループが国際的にリードして来た分野である.このような祖父江元・勝野雅央らのグループによる動物モデルの開発と解析(前臨床),三つの医師主導治験,7

年間の投与群と自然歴群の長期比較試験など継続的研究が実って,2017年 8月にテストステロン抑制薬(leuprorelin)が本疾患への効能追加を世界で初めて日本で認可され,本疾患における画期的な展開を示した.ここで本病名の歴史的変遷について考察してみると,当初川原は進行性延髄麻痺とし 178),滝川は進行性球麻痺とし 186),Murakami Uも同様に進行性球麻痺とし 187),Magee KRもBSMA

と報告している 189).名古屋大学からは Kennedy WR報告 190)

の 8年後である 1976(昭和 51)年の飯田らの報告のみが例外的に SBMAと呼称している 209).実際その後においても名古屋大学の向井栄一郎らは 1979(昭和 54)年において BSMAとして報告しており 210),1989(平成元)年の Sobue Gらや 1993(平

Page 15: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:155

成 5)年のDoyu Mらの報告でも同様に bulbospinal neuronopathy

としている 194)203).上述の向井らは,川原家系 178),滝川家系 186),Kurland症例 188),飯田らの家系 209)を追跡して纏め上げ,またKurland LTが名古屋で診察した 2例が滝川家系と飯田家系の各 1例であったことも突き止めた 210).また自験 31症例の臨床特徴を纏め 211),国内初剖検 1例も報告する 192)など,本症が川原・向井病とも呼ばれるまで詳細に解明した功績は大きい.一方,米国では当初Magee KR189)の BSMAから呼称が変化し,1968(昭和 43)年の Kennedy WRらの報告 190)以降は SBMA名が主流となっている 212).しかし今日でも本病については,他にも Kennedy diseaseや Kennedy spinal and bulbar

muscular atrophy,BSMA,Bulbospinal neuronopathyなどと様々な呼称が並行使用されて統一されてはいない 201).川原 178)や滝川 186)報告では球麻痺が強調されたが,その後日本においても四肢優位のケースが稀ならず存在し 195)198)211),Kennedy

WRらの報告ではむしろ四肢麻痺が先行して球麻痺が後続

するかあるいは軽症であるために SBMAとしたものであろう 190).従って球症状先行型も四肢麻痺先行型も,今日的には共に一疾患の clinical variationと考え,本病名を SBMAとしても BSMAとしても構わないと考えられる 201).本症の病態については祖父江元の総説 213)に既に詳しく述

べられている通り,今後ますます解明が進んで本病の根本的な治療法確立も間近いものと期待される 207).また舌萎縮がめだつ割に,ALSと比較して誤嚥性肺炎が少なく余命が長い点については,Morimoto Nらの研究により本症では ALS同様舌圧は低下しているものの,インピーダンス喉頭計によってALSよりも喉頭機能が保持されているためであることも明らかになった 214).平山正昭らは 1988年に 1剖検例において薄束変性を指摘し,本症が純粋な運動ニューロン疾患ではないことを臨床的・神経病理学的に立証した 215).その後,末梢

感覚神経において電気生理学的な活動電位低下と F波出現率低下を認め 216),病理学上も腓腹神経障害が確認される 193)194)

など運動ニューロン以外の病変の広がりが確認され,発症

以前から筋組織自体も障害されることも解明され,今日で

は neuromuscular degenerationという疾患概念に展開している 217)218).ただ本病の遺伝子異常によってなぜ下位運動ニューロンが障害されるのかという病態は著しく解明されて来たが,逆にALSと異なり本病ではなぜ上位運動ニューロンが障害されないのかという点についてはまだ充分解明されていないともいえる.この点の解明はALSとの病態異同とも関連して,治療法確立の観点からも今後の研究の進展が期待される.

ALS の多系統障害性 ~小脳系障害を中心とした初期論文とその今日的展開~

ALSはmotor system内のclinical variationは有るものの 219)220),臨床的にはほぼ motor neuron selectiveな変性疾患であるといって良い.しかし病理学的にあるいは人工呼吸器による長期生存例ではmotor system以外に病変の拡がりを見出すことが出来るので 221)222),本質的にはmotor neuron predominantな

多系統障害性疾患であるというべきである.実際例えば中脳黒質は ALS患者でも遺伝子導入 ALSモデルマウスでもしばしば病理学的には障害されるが 223)224),ALS患者が臨床的にパーキンソン症状を来すことは上述の ALS/PDC79)を除いて一般的ではない 225)226).また多系統萎縮症(multisystem

atrophy; MSA)は小脳症状とパーキンソン症状,自律神経症状の 3要素が異なる割合で混在しつつ進行して行くが,motor

systemが腱反射亢進以外で 4番目の主要臨床要素となることも通常ない.これら ALSにおける motor system以外の多系統障害性については既に ALS-Plus syndromeなどとして多数報告されており 227)228),認知症合併についても上述した通りである.しかしながら ALSあるいはMNDにおける小脳障害性や

末梢知覚神経障害性については,これまで十分検討されて来たとはいえない 227)228).このうち ALS剖検例において,日本で初めて小脳系の異常に着目したのは 1902(明治 35)年の

三浦謹之助論文「筋萎縮性側索硬化症ニ就テ」である 1)229)

(Table 7).ALSと小脳性運動失調の臨床的合併については,1940(昭和 15)年に東インド会社管轄で蘭国植民地だったジャワ島からVerhaart WJCによる報告が嚆矢とされている 230).下肢脱力で発症し後に小脳性運動失調を呈して 10年の経過で 45歳で死亡した原住民男性患者の剖検所見は,ALS病理に加えて淡蒼球視床下核黒質系と小脳歯状核の障害を認め

た 230).それに続いて日本から 1956(昭和 31)年に東大の

中村・黒岩らは OPCA(olivoponto cerebellar atrophy,今日でいうMSA-C)症例の 2剖検で motor systemの障害を確認した 231).次いで 1958(昭和 33)年に東北大学精神科の萱場・前田が球麻痺で発症し経過 14ヶ月で死亡した ALS+小脳性運動失調患者の剖検でALS病理に加えてOPCAの定型的病理所見を合併した 1例を報告した 232).1986(昭和 61)年には東大の Hayashi Y・Iwata Mらは,52歳時に小脳性運動失調

で発症し ALS症状を続発して 58歳で死亡した男性剖検例を報告し,典型的な ALS病理に加えて spino-ponto-cerebellar

systemの障害を指摘した 233).その後も日本からは,名古屋から村上・吉田・橋詰・高橋ら 234)が,福岡から堀内・古谷・小林・楠ら 235)が,また岡山からManabe Y・Abe Kら 236)が同様の報告を重ねて来た.しかしこれらはいずれも孤発例であり,遺伝性の症例ではない.一方,遺伝性 SCAにおける motor systemを含んだ多系統障害性については,古く 1891(明治 23)年のMenzel P 237)まで遡ることが出来,その後も 1950(昭和 25)年の Schut JW 238),1977(昭和 52)年の倉知ら 239),1982(昭和 57)年の Sachdev

HSら 240),1983(昭和 58)年のMizutani Tら 241)が続いた.特に 1982(昭和 57)年の米国 Stanford大学 Sachdev HSらはポルトガル移民の遺伝性家系で,当時まだ遺伝子が同定される以前であった Joseph病(今日でいうMachado-Joseph病=MJD,SCA3)の 2剖検で脊髄小脳路(spinocerebellar tract; SCT)や脊髄前角細胞,黒質障害を報告し,MJD/SCA3は単一疾患であるとしその多系統障害性も指摘した 240).その後遺伝性SCAの遺伝子が続々と同定された前後には,SCA1-3それぞ

Page 16: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:156

Table 7 Major publications for ALS + cerebellar ataxia in Japan and the world.

報告年主著者名 概要 文献

西暦年 元号年

1891 明治 24 Menzel P(独) 遺伝性 SCAで多系統障害を初指摘 Arch Psychiatr Nervenkr 22:160-190

1902 明治 35 三浦謹之助 ALS剖検例で初めて小脳系異常を指摘 神経学雑誌 1:1-5

1940 昭和 15 Verhaart WJC(ジャワ島) 孤発 1例報告 Arch Neurol Psychiatr 44:1262-1270.

1950 昭和 25 Schut JW(米) 遺伝性 SCAで多系統障害第 2報 Arch Neurol Psychiatr 63:535-568

1956 昭和 31 中村,黒岩ら(東大) OPCA2剖検で多系統障害報告 神経進歩 1:207-218

1958 昭和 33 萱場,前田(東北大精神科) 孤発性 ALS + OPCA,症状と病理も 内科の領域 6:404-409

1977 昭和 52 倉知ら(金沢大精神科) 遺伝性 SCAで多系統障害第 3報 精神経誌 79:1-25

1982 昭和 57 Sachdev HSら(米) SCA3での多系統障害報告 Neurology 32:192-195

1983 昭和 58 Mizutani Tら 遺伝性 SCAで多系統障害第 4報 Clin Neuropathol 2:147-155

1986 昭和 61 Hayashi Y, Iwata M ら(東大) SCA + ALS孤発 1例剖検例 Acta Neuropathol (Berl) 70:82-85

1989 平成 1 村上,吉田,橋詰,高橋ら(名大) SCA + ALS孤発 1例剖検例 臨床神経 29:1116-1121

1992 平成 4 Spadaro Mら(伊) SCA1剖検で錘体路障害指摘 Acta Neurol Scand 85:257-265

1995 平成 7 Kameya T, Abe Kら SCA1での筋萎縮 Neurology 45:1587-1594

1996 平成 8 Abe K, Tobita Mら SCA1での舌萎縮 Muscle & Nerve 19:900-902

Watanabe M, Abe Kら SCA3での筋萎縮と舌萎縮 J Neurol Sci 136:101-107

1997 平成 9 堀内,古谷,小林,楠ら(九大) SCA + ALS孤発 1例報告 臨床神経 37:123-126

2000 平成 12 Manabe Y, Abe Kら SCA + ALS孤発 1例報告 Neurol Res 22:567-570

2007 平成 19 Ohta Y, Abe Kら 遺伝性 SCA + ALS1家系報告(後の Asidan) Intern Med 46:751-755

2011 平成 23 Kobayashi H, Abe Kら Asidan(SCA36)の遺伝子発見 Am J Hum Genet 89:121-130

2012 平成 24 Ikeda Y, Abe Kら Asidan(SCA36)の臨床特徴報告 Neurology 79:333-341

Abe K, Ikeda Yら Asidan(SCA36)の認知能低下報告 Eur J Neurol 19:1070-1078

Garcia-Murias M, Sobrido MJら(西) スペインでも Asidan(SCA36)ありと報告 Brain 135:1423-1435

2013 平成 25 Morimoto N, Yamashita T, Abe Kら Asidan(SCA36)の嚥下障害特徴報告 J Neurol Sci 324:149-155

2014 平成 26 Liu W, Ikeda Y, Abe Kら Asidan(SCA36)の初病理 Giant RNA foci Eur J Neurol 21:1377-1386

2016 平成 28 Lee YC, Soong BWら 台湾でも Asidan(SCA36)ありと報告 Neurol Genet (ePub) 2:e68

Zeng S, Wang Jら 中国本土でも Asidan(SCA36)ありと報告 Clin Genet 90:141-148

2017 平成 29 Ohta Y, Yamashita T, Abe Kら Asidan(SCA36)の多系統障害報告 J Neurol Sci 373:216-222

Fig. 6 The first paper of Asidan in Japan and the world.

Page 17: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:157

れで錘体路障害を中心に多系統障害性が指摘された 242)~246).それらに続いて家族性 SCA + ALSとしては,日本で 2007

(平成 19)年に岡山大学神経内科から初症例報告され 247)(Fig. 6),患者多発地域の地名(広島県芦田川)に因んで筆者が Asidan

病と命名し,2011(平成 23)年に同研究グループによって遺伝子異常が発見された疾患が嚆矢である 58)~60).この Asidan

病は小脳性運動失調を初発として,初期から腱反射は亢進しているが,SCA1やMJD/SCA3と比べても小脳症状進行と共に舌萎縮や四肢萎縮 fasciculationが高頻度で顕在化してくる極めてユニークな症状を呈するのが臨床的特徴である 59)

(Table 8).その翌 2012(平成 24)年にスペインから長く Costa

da Morte(死の海岸)と呼ばれていた疾患が同じ遺伝子異常であったこと 248),さらに 2016(平成 28)年になり台湾と中国からも少数例の報告 249)250)との今日的展開を示し,民族を越えた症状の共通性と共に本疾患の創始者効果への関心が高まっている.

Asidan病ではこの主要 2症状以外に,聴力低下や前頭葉

機能軽度低下,特徴的嚥下機能障害などを来し,病理学的には小脳 Purkinje細胞や歯状核,舌下神経核,脊髄運動神経

の脱落が見られ,神経細胞内封入体と巨大 RNA fociも認められた 60)65)251)252).この Asidan病は NOP53遺伝子 intron 1上のhexanucleotide (G4C2)n expansionであり 58)59),様々な意味で類似性の認められる C9orf72遺伝子変異が同遺伝子 intron 1

上の hexanucleotide (G4C2)n expansionである点 51)52)は両疾患の多系統障害性という観点から極めて興味深い.同様にC9orf72

遺伝子異常を伴う ALSで認められる RAN translation63)64)が本疾患でも認められるかどうかという点について症状と病態の類似性という観点から注目されている 253).また一般にAsidan

病では殆どパーキンソン症状を来さないが 59),一部の症例で大脳基底核における dopamine transporter(DAT scan)が低下することがある 254)255).これはパーキンソン症状が有るにも関わらずDAT scanが低下していない所謂SWEDD(scans without

evidence of dopaminergic deficit 256)257))と全く反対の現象であり,筆者は DWEP(decreased DAT without evident parkinsonism)と命名した 254)255).Asidan病では DAT scanの SBR(specific

binding ratio)値が正常範囲の 30%以下になってもパーキンソ

ン症状を来さず 255),この現象については SCA2やMJD/SCA3

剖検で顕著な黒質障害が有るにもかかわらず生前全くパーキンソン症状を呈していなかったのは,視床下核の障害が存在していたためだとする報告もあり 258),今後の研究展開が期待されている.次いで ALSあるいはMNDにおける末梢知覚神経障害性

については,近位筋萎縮に始まり末梢知覚障害に広がって

いく臨床症状を特徴とする hereditary motor and sensory

neuropathy with proximal dominant involvement(HMSN-P)が本邦で臨床報告もされ原因遺伝子も特定されたことは特筆に値する 259)260).この疾患は,病理学的には FALS類似の脊髄前角に強い障害と後索や側索,脊髄小脳路障害を来し,原因

遺伝子として Kaji R + Tuji Sらのグループが 2012年に TRK-

fused gene(TFG)遺伝子異常(P285L)を発見したものである 259).この HMSN-P患者から作成した iPS細胞を用いた研究により,TFG-P285L変異細胞が細胞内変性蛋白処理機構である ubiquitin-proteasome系(UPS)の障害を示し,同様機序が想定されているプリオン病やTDP-43,タウ蛋白異常などと関連して多系統変性機序の共通性も示唆していて今後の展開が期待されている 260).

終わりに

本稿では ALS関連疾患の 5テーマについて,それらの初期論文とその今日的展開について主要論文を中心に論じたが,この 5テーマとも 120年以上に渡るALS研究の着実な進歩として確認することが出来た.これらの研究が今後ますます進展し,ALSがなぜ発症し,なぜ進行し,なぜ多系統に拡大していくのかが解明され,治療法確立に資するような将来的展開を期待するものである.謝辞:本稿を執筆するに当り,ご指導ならびにご校閲を賜りまし

た(年齢順に)平山惠造先生,萬年徹先生,髙橋昭先生,岩田誠先生,葛原茂樹先生に心より深謝申し上げます.また執筆に際してご教示を賜りました(記載順に),昭和大学河村満教授,三重大学小久保康昌教授,岡山大学小児神経科小林勝弘教授,東京女子医大小児科

大澤真木子名誉教授,京大小児科平家俊男教授・吉田健司助教,東大

Table 8 Major clinical comparisons among SCA1, MJD/SCA3, and Asidan (SCA36).

SCA1 MJD/SCA3 Asidan (SCA36)

Number of patients 20 20 25

Onset age 39.4 ± 10.7 35.4 ± 11.0 53.0 ± 4.7

Repeat number 47.3 ± 4.4 72.2 ± 3.1

Disease duration (y) 11.9 ± 5.4 11.4 ± 5.4 14.0 ± 8.0

Gender M14/F6 M7/F13 M/F

Muscle atrophy 45% 45% 44%Hyperreflexia 75% 80% 64%Tongue atrophy 15% 35% 80%

fasciculation 20% 35% 68%

Page 18: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:158

神経内科辻省次名誉教授,名古屋大学の祖父江元教授,勝野雅央教授,渡辺宏久教授,愛知医科大学道勇学教授,徳島大学梶龍兒教授に感謝申し上げます.最後に本項執筆に当たり多数の貴重な原著検索

にご協力を頂いた岡山大学医学同窓会(鶴翔会)事務局長の妹尾行

恭氏,岡山大学附属図書館鹿田分館の藤井香子さんに深謝申し上げ

ます.※本論文に関連し,開示すべき COI状態にある企業,組織,団体

はいずれも有りません.

文  献

ALS + dementia 文献 1) 阿部康二.日本における amyotrophic lateral sclerosis(ALS)

の初期論文とその今日的考察.臨床神経 2017;57:153-162.

2) Charcot JM, Joffroy A. Deux cas d’atrophie musculaire

progressive avec lésions de la substance grise et des faisceaux

antéro-latéraux de la moelle épinière. Arch Physiol Norm Pathol

1869;2:354-369, 629-649, 744-760.(孫引き文献:平山惠造著.《古典を顧みる》Jean-Martin Charcot.筋萎縮性側索硬化症(1).内科 1961;8:178-186より)

3) 渡邊榮吉.筋萎縮性側索硬変症ノ実験.岡山医学会雑誌

1892;4:223-231.

4) 渡邊榮吉.皮質運動性失語症ト延髄球麻痺及進行性筋萎縮ヲ合併セル一患者ニ就テ.岡山医学会雑誌 1893;5:138-144.

5) 山鳥 重.漢字仮名問題の歴史的展開.岩田 誠,河村 満編著.神経文字学.東京:医学書院;2007.pp. 24-26.

6) 河村 満.日本語の読み書きと漢字仮名問題.岩田 誠,河村 満編著.神経文字学.東京:医学書院;2007.pp. 45-46.

7) Ichikawa H, Miller MW, Kawamura M. Amyotrophic lateral

sclerosis and language dysfunction: kana, kanji and a prescient

report in Japanese by Watanabe (1893). Eur Neurol 2011;65:

144-149.

8) Ichikawa H, Hieda S, Ohno H, et al. Language impairment in

amyotrophic lateral sclerosis from an historial review: kana and

kanji versus alphabetical languages. In Strong MJ ed. Amyotrophic

Lateral Sclerosis and the Frontotemporal Dementia. London:

Oxford University Press; 2012. Chapter 6, pp. 93-106.

9) Kawamura M, Ichikawa H. Amyotrophic lateral sclerosis with

dementia: neuropsychological aspects. In Strong MJ ed. Amyo-

trophic Lateral Sclerosis and the Frontotemporal Dementia.

London: Oxford University Press; 2012. Chapter 7, pp. 107-121.

10) Broca PP. Remarques sur le siège de la faculté du langage

articulé suivies dʼune observation dʼaphémie. Paris: Bull Soc

Anat. 2e série, t, VI, 1861 p. 330-357.(孫引き文献:萬年 甫,岩田 誠編訳.神経学の源流 3.ブロカ.東京大学出版会;1992. p. 63より)

11) Broca PP. Nouvelle observation dʼaphémie produite par une

lesion de la troisième circonvolution frintale. Paris: Bull Soc

Anat. 2e série, t, VI, 1861 p. 398-407.(孫引き文献:萬年 甫・岩田 誠編訳.神経学の源流 3.ブロカ.東京大学出版会;1992. p. 90より)

12) Wernicke C. Der aphasische Symptomen complex. Eine

psychologische Studie auf anatomischer Basis [The aphasic

symptom complex: a psychological study from an anatomical

basis]. Breslau, Max Cohn & Weigert, 1874.(孫引き文献:Boston Studies in the philosophyof Science. 1934; p. 34より)

13) Wernicke C. The symptom complex of aphasia. In Church A ed.

Diseases of the Nervous System. New York: D. Appleton and

Co; 1908. pp. 265-324.(孫引き文献:Boston Studies in the

philosophyof Science; 1969. pp. 34-97より)14) 三浦謹之助(講義),岡田榮吉(筆記).臨床講義.医事新聞

1901;584:249-256.

15) Ishihara K, Ichikawa H, Suzuki Y, et al. Is lesion of Exner’s area

linked to progressive agraphia in amyotrophic lateral sclerosis

with dementia? An autopsy case report. Behav Neurol 2010;

23:153-158.

16) 川原 汎.筋萎縮性側索硬結患者ノ供覧.愛知医学会雑誌

1895;6号 :14-17.

17) 古川唯幸.筋萎縮性側索硬化症の臨床的疫学的研究.阪大医誌 1959;11:4087-4099.

18) 小鳥居建,久原一男,松岡正二.高度痴呆を伴なう筋萎縮性側索硬化症の 1例.臨床神経 1963;3:410 (抄録 1 p).

19) 小鳥居建,長森 敬,広瀬就信.高度痴呆を伴う筋萎縮性側索硬化症の 1例.九神精医 1964;10:89-92.

20) 湯浅亮一,蔭山 登,小池 淳ら.Dementiaを伴う amyotrophic

lateral sclerosisについて.臨床神経 1964;4:218(抄録 1 p).47男 1例報告

21) 湯浅亮一.痴呆を伴う筋萎縮性側索硬化症について.臨床神経 1964;4:529-534.

22) 三山吉夫,高松勇雄.筋萎縮を伴った高度痴呆の一症例.九神精医 1965;11:217-222.

23) 竹迫三也,山下昌洋,岡田高明.家族性 ALSの 2例.臨床神経 1964;4:219 (抄録 1 p).

24) 原田憲一,小坂井昇,平山惠造ら.脊髄性筋萎縮を伴う従来の分類の範疇に属せしめがたい初老期痴呆の 1剖検例.神経進歩 1966;10:804 (抄録 1 p).

25) 辻山義光,茂田 優,工藤みゆきら.非定型 Pick病の 1例.脳と神経 1967;19:927-931.

26) 大森 勇,洲崎日出一,森吉利弘.痴呆その他の精神症状を伴う脊髄性進行性筋萎縮症の 1症例.精神経誌 1968;70:252

(抄録 1 p).27) 木村進匡,武市裕雄,児玉 久ら.痴呆のある筋萎縮性側索硬化症の疑われる 1症例.臨床神経 1969;9:108 (抄録 1 p).

28) 貝谷久宣.痴呆を伴った進行性脊髄性筋萎縮症の 1例.精神経誌 1969;71:1010 (抄録 1 p).

29) 湯浅亮一.痴呆を伴う筋萎縮性側索硬化症.臨床神経 1970;

10:569-577.

30) 三山吉夫,高松勇雄.筋萎縮を伴った高度痴呆の 1剖検例.脳と神経 1971;23:409-416.

31) 貝谷久宣.ALS様症状を伴った初老期痴呆の臨床と病理解剖.精神経誌 1972;74:381-398.

32) 由利和雄,岩村 久,村田 章ら.運動ニューロン疾患を伴う初老期痴呆の一剖検例.関西医大誌 1990;42:155-162.

33) Marie P. Sclérose Latérale Amyotrophique. In Masson G ed.

Leçons sur les maladies de la moelle. Paris: Libraire de

L’académie de Médecine de Paris; 1892. pp. 461-472.

34) Fragnito O. I disturbi psichici nella sclerosi laterale amiotrofica.

Ann Nevrol (Napoli) 1907;25:273-287.

35) Büscher J. Zur Symptomatologie der sog. amyotrophischen

Lateralsklerose. Arch F Psychiatr 1922;66:61-145.

Page 19: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:159

36) Meyer A. Über eine der amyotrophischen Lateralsklerose

nahestehende Erkrankung mit psychischen Störungen. Z Gesamte

Neurol Psychiatr 1929;121:107-138.

37) Braunmühl Av. Picksche Krankheit und amyotrophische

Lateralsklerose. Allg Z Psychiatr 1932;96:364-366.

38) Wechsler IS, Davison C. Amyotrophic lateral sclerosis with

mental symptoms: A clinicopathological study. Arch Neurol

Psychiatr 1932;27:859-880.

39) Ferguson JH, Boller F. A different form of agraphia: Syntactic

writing errors in patients with motor speech and movement

disorders. Brain Lang 1977;4:382-389.

40) Neumann M, Sampathu DM, Kwong LK, et al. Ubiquitinated

TDP-43 in frontotemporal lobar degeneration and amyotrophic

lateral sclerosis. Science 2006;314:130-133.

41) Arai T, Hasegawa M, Akiyama H, et al. TDP-43 is a component

of ubiquitin-positive tau-negative inclusions in frontotemporal

lobar degeneration and amyotrophic lateral sclerosis. Biochem

Biophys Res Commun 2006;351:602-611.

42) Sreedharan J, Blair IP, Tripathi VB, et al. TDP-43 mutations in

familial and sporadic amyotrophic lateral sclerosis. Science

2008;319:1668-1672.

43) Gitcho MA, Baloh RH, Chakraverty S, et al. TDP-43 A315T

mutation in familial motor neuron disease. Ann Neurol 2008;

63:535-538.

44) Yokoseki A, Shiga A, Tan CF, et al. TDP-43 mutation in familial

amyotrophic lateral sclerosis. Ann Neurol 2008;63:538-542.

45) Kabashi E, Valdmanis PN, Dion P, et al. TARDBP mutations

in individuals with sporadic and familial amyotrophic lateral

sclerosis. Nat Genet 2008;40:572-574.

46) Van Deerlin VM, Leverenz JB, Bekris LM, et al. TARDBP

mutations in amyotrophic lateral sclerosis with TDP-43 neuro-

pathology: a genetic and histopathological analysis. Lancet Neurol

2008;7:409-416.

47) Kühnlein P, Sperfeld AD, Vanmassenhove B, et al. Two German

kindreds with familial amyotrophic lateral sclerosis due to

TARDBP mutations. Arch Neurol 2008;65:1185-1189.

48) Corrado L, Ratti A, Gellera C, et al. High frequency of TARDBP

gene mutations in Italian patients with amyotrophic lateral

sclerosis. Hum Mutat 2009;30:688-694.

49) Chiò A, Calvo A, Moglia C, et al. Amyotrophic lateral sclerosis-

frontotemporal lobar dementia in 3 families with p.Ala382Thr

TARDBP mutations. Arch Neurol 2010;67:1002-1009.

50) Chiò A, Borghero G, Pugliatti M, et al. Italian amyotrophic

lateral sclerosis genetic (ITALSGEN) consortium. Large

proportion of amyotrophic lateral sclerosis cases in Sardinia due

to a single founder mutation of the TARDBP gene. Arch Neurol

2011;68:594-598.

51) DeJesus-Hernandez M, Mackenzie IR, Boeve BF, et al. Expanded

GGGGCC hexanucleotide repeat in noncoding region of C9ORF72

causes chromosome 9p-linked FTD and ALS. Neuron 2011;72:

245-256.

52) Renton AE, Majounie E, Waite A, et al. A hexanucleotide repeat

expansion in C9ORF72 is the cause of chromosome 9p21-linked

ALS-FTD. Neuron 2011;72:257-268.

53) Rademakers R, van Blitterswijk M. Motor neuron disease in

2012: Novel causal genes and disease modifiers. Nat Rev Neurol

2013;9:63-64.

54) Ogaki K, Li Y, Atsuta N, et al. Japanese Consortium for

Amyotrophic Lateral Sclerosis research (JaCALS). Analysis

of C9orf72 repeat expansion in 563 Japanese patients with

amyotrophic lateral sclerosis. Neurobiol Aging 2012;33:2527.

e11-e16.

55) Konno T, Shiga A, Tsujino A, et al. Japanese amyotrophic lateral

sclerosis patients with GGGGCC hexanucleotide repeat expan-

sion in C9ORF72. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2013;84:398-

401.

56) Ishiura H, Takahashi Y, Mitsui J, et al. C9ORF72 repeat

expansion in amyotrophic lateral sclerosis in the Kii peninsula

of Japan. Arch Neurol 2012;69:1154-1158.

57) 富山弘幸.わが国の ALSにおける C9ORF72.臨床神経

2013;53:1074-1076.

58) Kobayashi H, Abe K, Matsuura T, et al. Expansion of intronic

GGCCTG hexanucleotide repeat in NOP56 causes SCA36, a

type of spinocerebellar ataxia accompanied by motor neuron

involvement. Am J Hum Genet 2011;89:121-130.

59) Ikeda Y, Ohta Y, Kobayashi H, et al. Clinical features of SCA36:

a novel spinocerebellar ataxia with motor neuron involvement

(Asidan). Neurology 2012;79:333-341.

60) Abe K, Ikeda Y, Kurata T, et al. Cognitive and affective impair-

ments of a novel SCA/MND crossroad mutation Asidan. Eur J

Neurol 2012;19:1070-1078.

61) Pearson JP, Williams NM, Majounie E, et al. Familial

frontotemporal dementia with amyotrophic lateral sclerosis

and a shared haplotype on chromosome 9p. J Neurol 2011;258:

647-655.

62) Mahoney CJ, Beck J, Rohrer JD, et al. Frontotemporal dementia

with the C9ORF72 hexanucleotide repeat expansion: clinical,

neuroanatomical and neuropathological features. Brain 2012;

135:736-750.

63) Ash PE, Bieniek KF, Gendron TF, et al. Unconventional

translation of C9ORF72 GGGGCC expansion generates insoluble

polypeptides specific to c9FTD/ALS. Neuron 2013;77:639-646.

64) Mori K, Weng SM, Arzberger T, et al. The C9orf72 GGGGCC

repeat is translated into aggregating dipeptide-repeat proteins

in FTLD/ALS. Science 2013;339:1335-1338.

65) Liu W, Ikeda Y, Hishikawa N, et al. Characteristic RNA foci of

the abnormal hexanucleotide GGCCUG repeat expansion in

spinocerebellar ataxia type 36 (Asidan). Eur J Neurol 2014;21:

1377-1386.

66) Haeusler AR, Donnelly CJ, Periz G, et al. C9orf72 nucleotide

repeat structures initiate molecular cascades of disease. Nature

2014;507:195-200.

67) Zhang K, Donnelly CJ, Haeusler AR, et al. The C9orf72 repeat

expansion disrupts nucleocytoplasmic transport. Nature 2015;

525:56-61.

68) Freibaum BD, Lu Y, Lopez-Gonzalez R, et al. GGGGCC repeat

expansion in C9orf72 compromises nucleocytoplasmic transport.

Nature 2015;525:129-133.

69) Lopez-Gonzalez R, Lu Y, Gendron TF, et al. Poly(GR) in

C9ORF72-Related ALS/FTD compromises mitochondrial function

and increases oxidative stress and DNA damage in iPSC-derived

motor neurons. Neuron 2016;92:383-391.

Page 20: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:160

70) Lee KH, Zhang P, Kim HJ, et al. C9orf72 dipeptide repeats

impair the assembly, dynamics, and function of membrane-less

organelles. Cell 2016;167:774-788.

71) Monahan Z, Shewmaker F, Pandey UB. Stress granules at the

intersection of autophagy and ALS. Brain Res 2016;1649(Pt

B):189-200.

72) Molliex A, Temirov J, Lee J, et al. Phase separation by low

complexity domains promotes stress granule assembly and

drives pathological fibrillization. Cell 2015;163:123-133.

73) Maharjan N, Künzli C, Buthey K, et al. C9ORF72 regulates

stress granule formation and its deficiency impairs stress

granule assembly, hypersensitizing cells to stress. Mol Neurobiol

2017;54:3062-3077.

74) Dafinca R, Scaber J, Ababneh N, et al. C9orf72 hexanucleotide

expansions are associated with altered endoplasmic reticulum

calcium homeostasis and stress granule formation in induced

pluripotent stem cell-derived neurons from patients with

amyotrophic lateral sclerosis and frontotemporal dementia.

Stem Cells 2016;34:2063-2078.

75) Corbier C, Sellier C. C9ORF72 is a GDP/GTP exchange factor

for Rab8 and Rab39 and regulates autophagy. Small GTPases

2016;ePub (Aug 5):1-6.

76) Khosravi B, Hartmann H, May S, et al. Cytoplasmic poly-GA

aggregates impair nuclear import of TDP-43 in C9orf72 ALS/

FTLD. Hum Mol Genet 2017;26:790-800.

77) Chew J, Gendron TF, Prudencio M, et al. C9ORF72 repeat

expansions in mice cause TDP-43 pathology, neuronal loss, and

behavioral deficits. Science 2015;348:1151-1154.

78) Liu Y, Pattamatta A, Zu T, et al. C9orf72 BAC mouse model with

motor deficits and neurodegenerative features of ALS/FTD.

Neuron 2016;90:521-534.

79) Urushitani M, Sik A, Sakurai T, et al. Chromogranin-mediated

secretion of mutant superoxide dismutase proteins linked to

amyotrophic lateral sclerosis. Nat Neurosci 2006;1:108-118.

80) Urushitani M, Abou Ezzi S, Julien JP. Therapeutic effects of

immunization with mutant superoxide dismutase in mice models

of ALS. Proc Natl Acad Sci U S A 2007;104:2495-2500.

81) Shodai A, Ido A, Fujiwara N, et al. Conserved acidic amino acid

residues in a second RNA recognition motif regulate assembly

and function of TDP-43. PLoS ONE 2012;7:e52776.

ALS/PDC文献82) 本朝故事因縁集.紀州古座庄不孝人.1689,第 92話.83) 葛原茂樹,小久保康昌,成田有吾.パーキンソニズム痴呆複

合―グアム,西ニューギニア,紀伊半島の地域性神経変性痴呆症候群―.Dementia 1996;10:378-390.

84) Kuzuhara S, Yase Y. The earliest article on ALS of Kii Peninsula

of Japan in Honchō Koji In’nen Shū published in 1689.

Neurology 2018 (in submission)

85) de la Corte RCF. Memoria descriptive é histórica de las Islas

Marianas, in Boletín del Ministerio de Ultramar. Spain: National

Printing Office; 1875.

86) Rogers RF. A history of Guam. Destiny’s Landfall (Revied

edition). Honolulu: U. Hawaii Press; 1996. pp. 87-96.

87) Garruto RM. Lessons from the study of natural experiments of

hyperendemic foci of neurodegeneration. In Strong MJ ed. ALS

and FTD. 2012. pp. 1-26.

88) 川原 汎.筋萎縮性側索硬給(筆者注:結の誤植)ノ二例(本会記事).愛知医学会雑誌 1896;14号 :38-40.

89) 川原 汎.震蘯麻痺.内科彙講,神経係統編 完.東京:半田屋醫籍商店;1897.高橋 昭,川原哲夫.復刻版.刈谷市:(株)クイックス社発行;1997. pp. 201-204.

90) 川原 汎.定型的経過ノ稍速ナル一例.内科彙講,神経係統編 完,東京:半田屋醫籍商店;1897.高橋 昭,川原哲夫.復刻版,刈谷市;(株)クイックス社発行;1997. pp. 314-315

(上段部).91) 三浦謹之助(講),及能謙一(記).筋萎縮性側索硬化症にして所謂延髄球麻痺を呈するもの(臨床講義).神経学雑誌

1911;10:366-369.

92) 平田梅治.筋萎縮性側索硬化症ノ統計的観察.精神経誌

1925;25:418-424.

93) 岡谷 昇.米領ガム島々民チャモロ族(ミクロネシヤ人)に於ける震顫麻痺症例.東京医事新誌 1936;2997号 :2517-2518.

94) Yase Y, Chen KM, Brody JA, et al. An historical note on the

Parkinsonism-dementia complex of Guam. 神経内科 1978;8:

583-589.

95) Zimmerman HM. Monthly report to medical officer in command.

USN Medical Research Unit No. 2, June 1, 1945(米軍月例報告書)Zimmerman, Lt. Cmdr. H.M. (1 June 1945). “Progress

Report of Work in the Laboratory of Pathology During May

1945” (Letter). Letter to Medical Officer in Command.(孫引き文献:後掲文献 103 Hirano A, Malamud N, Kurland LT, et al.

1965. pp. 51-60より)96) Koerner DR. Amyotrophic lateral sclerosis on Guam: A clinical

study and review of the literature. Ann Int Med 1952;37:

1204-1220.

97) Kurland LT, Mulder DW. Epidemiologic investigations of amyo-

trophic lateral sclerosis, 1. Preliminary report on geographic

distribution, with special reference to the Mariana islands,

including clinical and pathologic observations. Neurology 1954;

4:355-378.

98) Kurland LT, Mulder DW. Epidemiologic investigations of

amyotrophic lateral sclerosis, 1. Preliminary report on geographic

distribution, with special reference to the Mariana islands,

including clinical and pathologic observations. Neurology 1954;

4:438-448.

99) Hirano A, Kurland LT, Krooth RS, et al. Parkinsonism-dementia

complex, an endemic disease on the island of Guam, I. Clinical

features. Brain 1961;84:642-661.

100) Hirano A, Malamud N, Kurland LT. Parkinsonism-dementia

complex, an endemic disease on the island of Guam, II.

Pathological features. Brain 1961;84:662-679.

101) Hirano A, Malamud N, Kurland LT, et al. A review of the

pathologic findings. In Norris FH ed. Amyotrophic lateral

sclerosis. NY and London: Grune & Stratton; 1965. pp. 51-60.

102) 冲中重雄,平山惠造,楠井賢造ら.紀伊半島における筋萎縮性側索硬化症およびその類症の疫学的研究.臨床神経 1962;

2:295 (抄録 1 p).

103) Kimura K, Yase Y, Higashi Y, et al. Epidemiological and

geomedical studies on ALS and allied diseases in Kii peninsula

(Japan), Preliminary report. Proc Japan Acad 1961;37;417-420.

104) 木村 潔,八瀬善郎,半田順俊.ALSの臨床遺伝学的研究.

Page 21: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:161

臨床神経 1964;4:218 (抄録 1 p).

105) Yase Y. The pathogenesis of amyotrophic lateral sclerosis. Lancet

1972;300:292-296.

106) 吉田宗平,上林雄史郎,松本宣光ら.筋萎縮性側索硬化症(ALS)―紀伊半島河川の Ca, Mg含有量と死亡率の関連について.臨床環境 1995;4:12-18.

107) Gajdusek DC, Salazar AM. Amyotrophic lateral sclerosis and

parkinsonian syndromes in high incidence among the Auyu and

Jakai people of West New Guinea. Neurology 1982;32:107-126.

108) Vega A, Bell EA. Alpha-amino-beta-methylaminopropionic acid,

a new amino acid from seeds of cycas circinalis. Phytochemistry

1967;16:759-762.

109) Spencer PS, Nunn PB, Hugon J, et al. Guam amyotrophic lateral

sclerosis-parkinsonism-dementia linked to a plant excitant

neurotoxin. Science 1987;237:517-522.

110) 吉田宗平,紀平為子,河本純子ら.紀伊半島筋萎縮性側索硬化症(ALS)の最近の疫学像―Migration studyを中心として―.神経内科 1994;41:369-376.

111) Torres J, Iriarte LLG, Kurland LT. Amyotrophic lateral sclerosis

among Guamanians in California. Calif Med 1957;86:385-388.

112) Eldridge R, Ryan E, Rosario J, et al. Amyotrophic lateral

sclerosis and parkinsonism dementia in a migrant population

from Guam. Neurology 1969;19:1029-1037.

113) Garruto RM, Gajdusek DC, Chen KM. Amyotrophic lateral

sclerosis among chamorro migrants from guam. Ann Neurol

1980;8:612-619.

114) Kokubo Y, Kuzuhara S, Narita Y. Geographical distribution of

amyotrophic lateral sclerosis with neurofibrillary tangles in the

Kii Peninsula of Japan. J Neurol 2000;415:850-852.

115) Kuzuhara S, Kokubo Y, Sasaki R, et al. Familial amyotrophic

lateral sclerosis and parkinsonism-dementia complex of the Kii

peninsula of Japan: clinical and neuropathological study and tau

analysis. Ann Neurol 2001;49:501-511.

116) 小久保康昌,葛原茂樹.紀伊半島多発地域の筋萎縮性側索硬化症とパーキンソン痴呆複合の臨床神経学的および神経病理学的検討.臨床神経 2001;41:769-774.

117) Kuzuhara S, Sasaki R, Kokubo Y, et al. Amyotrophic lateral

sclerosis/parkinsonism-dementia complex of the Kii peninsula

of Japan (Kii ALS/PDC) may be a familial tauopathy. Epidemio-

logical trends, clinical features, neuropathology and molecular

genetics. In Tanaka C, McGeer PL Ihara Y, eds. Neuroscientific

Basis of Dementia. Basel; Birkhäuser: 2001. pp. 85-93.

118) Kuzuhara S, Kokubo Y. Atypical parkinsonism of Japan:

Amyotrophic lateral sclerosis-parkinsonism-dementia complex

of the Kii peninsula of Japan (Muro disease): An update. Mov

Disord 2005;20(suppl. 12):s108-s113.

119) 葛原茂樹.紀伊 ALS 再訪―ALS-parkinsonism-dementia

complexとしての新しい概念,疫学,原因についての考察.Brain Nerve 2007;59:1065-1074.

120) 葛原茂樹(インタヴュアー村田美穂).パーキンソン病研究と紀伊の牟婁病.PD today 2008;23:3-11.

121) 葛原茂樹.紀伊半島の風土病―ALS・Parkinsonism/Dementia

症候群.老年期認知症研究会誌 2010;16:1-6.

122) 葛原茂樹.牟婁病―紀伊 ALS・パーキンソン認知症複合.Brain Nerve 2011;63:119-129.

123) Garruto RM, Yanagihara R, Gajdusek DC. Disappearance of

high-incidence amyotrophic lateral sclerosis and parkinsonism-

dementia on Guam. Neurology 1985;35:193-198.

124) 小長谷陽子,吉田眞理,橋詰良夫ら.グアム島密林に 28年間孤独生活を送り 20年後にパーキンソニズムを呈した一剖検例.脳神経 2000;52:167-171.

125) Konagaya M, Kato T, Sakai M, et al. A clinical and pathological

study of a Japanese case of amyotrophic lateral sclerosis/

parkinsonism-dementia complex with family history. J Neurol

2003;250:164-170.

126) Tsunoda K, Yamashita T, Shimada H, et al. A migration case of

Kii amyotrophic lateral sclerosis/parkinsonism dementia complex

with the shortest stay in the endemic area and the longest

incubation to develop the disease. J Clin Neurosci 2017;46:

64-67.

FALS の文献127) Aran FA. Recherches sur une maladie non encore décrite du

système musculaire (Atrophie Musculaire Progressive), Archives

Générales de Médicine 1850;24:5-35, 172-214.

128) Hamilton AS. Familial progressive muscular atrophy in adults,

J Nerv Ment Dis 1918;48:127-150.

129) Kurland LT, Mulder DW. Epidemiologic investigations of

amyotrophic lateral sclerosis (Part I), Neurology 1955;5:182-196.

130) Kurland LT, Mulder DW. Epidemiologic investigations of

amyotrophic lateral sclerosis (Part II), Neurology 1955;5:249-268.

131) Bernhardt M. Uber eine hereditäre Form der progressiven

spinalen mit Bulbärparalyse complicirten Muskelatrophie. Arch

Pathol Anat Physiol Med 1889:115:197-216.

132) Bruining J. Zwei Fälle von sog. Poliomyelitis anterior chronica

bei Vater und Sohn, Deutsch Z Nervenheilkd 1904;27:269-290.

133) Schultze (姓のみ記載あり,名無し). Uber eine eigenthümliche

progressive atrophische Paralyse bei mehreren Kindern derselben

Familie. Berl Klin Wochenschr 1884;No. 41:1-3.

134) 佐野梅太郎.家族性ニ現レタル小児筋萎縮性側索硬化症ノ一例.乳児学雑誌 1932;12:121-158.

135) 霞 春海.同胞三人ニ現ハレタル筋萎縮性側索硬化症ニ就キテ.日内会誌 1934;22:1017-1031.

136) 伊東大介,八木拓也,鈴木則宏.Seipinopathy/Seipin/BSCL2

関連運動ニューロン疾患―神経変性における小胞体ストレスの重要性―.臨床神経 2011;51:1186-1188.

137) Ito D, Suzuki N. Seipinopathy: a novel endoplasmic reticulum

stress-associated disease. Brain 2009;132:69-75.

138) Patel H, Cross H, Proukakis C, et al. SPG20 is mutated in

Troyer syndrome, an hereditary spastic paraplegia. Nat Genet

2002;31:347-348.

139) 岡本重一.筋萎縮性脊髄側索硬化症の遺伝性に就いて.精神経誌 1949;51:25-29.

140) 五島雄一郎,斉藤佳雄,富田 稔ら.家族性筋萎縮性側索硬化症の 1家系.脳と神経 1963;15:1011-1015.

141) 椿 忠雄,梶沼 宏,中村晴臣.遺伝性筋萎縮性側索硬化症の 1例.脳と神経 1963;15:1137-1141.

142) 加瀬正夫,吉益暢夫.家族性に発現した特異な筋萎縮症の 1

例.臨床神経 1963;3:157 (抄録 1 p).

143) 佐久間勝美,赤松孝之.兄弟に見られたMotor neuron disease

の 1剖検例.臨床神経 1963;3:156-157 (抄録 2 p).

144) 五島雄一郎,富田 稔,斎藤佳雄ら.家族性筋萎縮性側索硬

Page 22: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:162

化症とおもわれる 1剖検例.臨床神経 1963;3:157 (抄録 1 p).

145) Rosen DR, Siddique T, Patterson D, et al. Mutations in Cu/Zn

superoxide dismutase gene are associated with familial amyotrophic

lateral sclerosis. Nature 1993;362:59-62.

146) Deng HX, Hentati A, Tainer JA, et al. Amyotrophic lateral

sclerosis and structural defects in Cu,Zn superoxide dismutase.

Science 1993;261:1047-1051.

147) Aoki M, Ogasawara M, Matsubara Y, et al. Mild ALS in Japan

associated with novel SOD mutation. Nature Genet 1993;5:

323-324.

148) Kwiatkowski TJ Jr, Bosco DA, Leclerc AL, et al. Mutations in

the FUS/TLS gene on chromosome 16 cause familial amyotrophic

lateral sclerosis. Science 2009;323:1205-1208.

149) Vance C, Rogelj B, Hortobágyi T, et al. Mutations in FUS,

an RNA processing protein, cause familial amyotrophic lateral

sclerosis type 6. Science 2009;323:1208-1211.

150) 青木正志.FUS変異による ALS臨床病理と病態.臨床神経

2013;53:1080-1083.

151) Corrado L, Del Bo R, Castellotti B, et al. Mutations of FUS

gene in sporadic amyotrophic lateral sclerosis. J Med Genet

2010;47:190-194.

152) Nakamura R, Sone J, Atsuta N, et al. Japanese Consortium

for Amyotrophic Lateral Sclerosis Research (JaCALS). Next-

generation sequencing of 28 ALS-related genes in a Japanese

ALS cohort. Neurobiol Aging 2016;39:219.e1-8.

153) Nishiyama A, Niihori T, Warita H, et al. Comprehensive targeted

next-generation sequencing in Japanese familial amyotrophic

lateral sclerosis. Neurobiol Aging 2017 ePub (Jan 10). doi:

10.1016/j.neurobiolaging.2017.01.004.

154) Abe K. Mechanism of ALS and the clinical neuroprotection in

Japan. International Education Session 06, 第 57回日本神経学会学術大会プログラム,p. 106.

155) Maruyama H, Morino H, Ito H, et al. Mutations of optineurin

in amyotrophic lateral sclerosis. Nature 2010;465:223-226.

156) Del Bo R, Tiloca C, Pensato V, et al. SLAGEN Consortium.

Novel optineurin mutations in patients with familial and sporadic

amyotrophic lateral sclerosis. J Neurol Neurosurg Psychiatry

2011;82:1239-1243.

157) Bensimon G, Lacomblez L, Meininger V. A controlled trial of

riluzole in amyotrophic lateral sclerosis. ALS/Riluzole Study

Group. N Engl J Med 1994;330:585-591.

158) Abe K, Yuki S, Kogure K. Strong attenuation of ischemic and

postischemic brain edema in rats by a novel free radical

scavenger. Stroke 1988;19:480-485.

159) Abe K, Itoyama Y, Sobue G, et al. Confirmatory double-blind,

parallel-group, placebo-controlled study of efficacy and safety of

edaravone (MCI-186) in amyotrophic lateral sclerosis patients.

Amyotroph Lateral Scler Frontotemporal Degener 2014;15:

610-617.

160) The Writing Group on behalf of the Edaravone (MCI-186) ALS

17 Study Group (Abe K, Itoyama Y, Tsuji S et al.). Safety and

efficacy of edaravone in well defined patients with amyotrophic

lateral sclerosis: a randomised, double-blind, placebo-controlled

trial. Lancet Neurol. 2017;16:505-512.

161) Ikenaka K, Kawai K, Katsuno M, et al. Dnc-1/dynactin 1

knockdown disrupts transport of autophagosomes and induces

motor neuron degeneration. PLoS One 2013;8:e54511.

162) Gurney ME, Pu H, Chiu AY, et al. Motor neuron degeneration

in mice that express a human Cu,Zn superoxide dismutase

mutation. Science 1994;264:1772-1775.

163) Yamashita T, Chai HL, Teramoto S, et al. Rescue of amyotrophic

lateral sclerosis phenotype in a mouse model by intravenous

AAV9-ADAR2 delivery to motor neurons. EMBO Mol Med

2013;5:1710-1719.

164) Shiihashi G, Ito D, Yagi T, et al. Mislocated FUS is sufficient for

gain-of-toxic-function amyotrophic lateral sclerosis phenotypes

in mice. Brain 2016;139:2380-2394.

165) Higelin J, Demestre M, Putz S, et al. FUS mislocalization and

vulnerability to DNA damage in ALS patients derived hiPSCs

and aging motoneurons. Front Cell Neurosci 2016;10:e290.

166) Kondo T, Funayama M, Tsukita K, et al. Focal transplantation of

human iPSC-derived glial-rich neural progenitors improves

lifespan of ALS mice. Stem Cell Reports 2014;3:242-249.

167) Egawa N, Kitaoka S, Tsukita K, et al. Response to comment on

“Drug screening for ALS using patient-specific induced pluripotent

stem cells”. Sci Transl Med 2013;5:188lr2.

168) Tian F, Morimoto N, Liu W, et al. In vivo optical imaging of

motor neuron autophagy in a mouse model of amyotrophic

lateral sclerosis. Autophagy 2011;7:985-992.

169) Matsuda N, Tanaka K. Cell biology: Tagged tags engage

disposal. Nature 2015;524:294-295.

170) Takeda S, Wegmann S, Cho H, et al. Neuronal uptake and

propagation of a rare phosphorylated high-molecular-weight tau

derived from Alzheimerʼs disease brain. Nat Commun

2015;6:8490 (本文 1 p).171) Egawa N, Kitaoka S, Tsukita K, et al. Drug screening for ALS

using patient-specific induced pluripotent stem cells. Sci Transl

Med 2012;4:145 ra104.

172) Shakhbazau A, Potapnev M. Autologous mesenchymal stromal

cells as a therapeutic in ALS and epilepsy patients: Treatment

modalities and ex vivo neural differentiation. Cytotherapy 2016;

18:1245-1255.

173) Alsuliman A, Appel SH, Beers DR, et al. A robust, good

manufacturing practice-compliant, clinical-scale procedure to

generate regulatory T cells from patients with amyotrophic

lateral sclerosis for adoptive cell therapy. Cytotherapy 2016;

18:1312-1324.

174) Czarzasta J, Habich A, Siwek T, et al. Stem cells for ALS: An

overview of possible therapeutic approaches. Int J Dev Neurosci

2017;57:46-55.

175) Hua Y, Sahashi K, Rigo F, et al. Peripheral SMN restoration is

essential for long-term rescue of a severe spinal muscular

atrophy mouse model. Nature 2011;478:123-126.

176) Finkel RS, Mercuri E, Darras BT, et al. Nusinersen versus

sham control in infantile-onset spinal muscular atrophy. N Engl

J Med 2017;377:1723-1732.

177) Mercuri E, Finkel R, Kirschner J, et al. Eficacy and safety of

nusinersen in children with later-onset spinal muscular atrophy

(SMA): end of study results from the phase 3 CHERISH study.

Neuromus Disord 2017;27 (suppl 2):s210 (1 p abstract).

Page 23: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:163

球脊髄性筋萎縮症の文献178) 川原 汎.進行性延髄麻痺ノ血族的発生ノ一例.愛知医学会

雑誌 1897;16号 :3-4.

179) 髙橋 昭,川原哲夫,復刻版「内科彙講」.東京:半田屋医籍商店発行;1897.復刻版.刈谷市:(株)クイックス発行;1997. pp. 243-246.

180) 髙橋 昭.神経学の祖―Rombergと川原汎.臨床神経

1995;35:1313-1322.

181) 髙橋 昭.日本の神経学―過去・現在・未来―.Brain Medical

2014;26:315-334.

182) 緒方洪庵.適塾「扶氏医戒之略」全 12ヶ条.1857年.183) Takahashi A. Hiroshi Kawahara (1858-1918). J Neurol 2001;

248:241-242.

184) Takahashi A. Chapter 47: History of clinical neurology in Japan.

Handb Clin Neurol 2010;95:769-779.

185) 寺尾國平.進行性球麻痺兼進行性筋萎縮ノ実験.東京医事新誌 1888;542号 :118-120.

186) 滝川晃一.伴性潜性遺伝の様式で発現した進行性球麻痺の

1家系.遺伝学雑誌 1953;28:116-125.

187) Murakami U. Clinico-genetic study of hereditary disorders of

the nervous system, especially on problems of phenogenesis.

Folia Psychiat Neurol Jpn 1957;1(Suppl. 1):1-209.

188) Kurland LT. Epidemiologic investigations of amyotrophic lateral

sclerosis, III. A genetic interpretation of incidence and geographic

distribution. Mayo Clinic Proc 1957;32:449-462.

189) Magee KR. Familial progressive bulbar-spinal muscular atrophy.

Neurology 1960;10:295-305.

190) Kennedy WR, Alter M, Sung JH. Progressive proximal spinal

and bulbar muscular atrophy of late onset: A sex-linked

recessive trait. Neurology 1968;18:671-680.

191) Paulson GW, Liss L, Sweeney PJ. Late onset spinal muscle

atrophy-a sex linked variant of Kugelberg-Welander. Acta Neurol

Scand 1980;61:49-55.

192) 向井栄一郎,石原好弘,祖父江元ら.成人男子にみられる球脊髄性筋萎縮症の 1剖検例.臨床神経 1981;21:228-233.

193) Nagashima T, Seko K, Hirose K, et al. Familial bulbo-spinal

muscular atrophy associated with testicular atrophy and sensory

neuropathy (Kennedy-Alter-Sung syndrome): autopsy case report

of two brothers. J Neurol Sci 1988;87:141-152.

194) Sobue G, Hashizume Y, Mukai E, et al. X-linked recessive

bulbospinal neuronopathy: a clinicopathological study. Brain

1989;112:209-232.

195) Tsukagoshi H, Nakanishi T, Kondo K, et al. Hereditary proximal

neurogenic muscular atrophy in adult. Arch Neurol 1965;12:

597-603.

196) Tsukagoshi H, Shoji H, Furukawa T. Proximal neurogenic

muscular atrophy in adolescence and adulthood with X-linked

recessive inheritance: Kugelberg-Welander disease and its

variant of late onset in one pedigree. Neurology 1970;20:1188-

1193.

197) 山本耕平,武上俊彦,伊藤不二夫ら.Kugelberg-Welander

Syndromeの 2症例にみられた,いくつかの稀な徴候について.神経進歩 1975;19:172-181.

198) 荒木淑郎,杉本亘邦.遺伝性進行性球脊髄性筋萎縮症の一家系.臨床神経 1966;6:13-19.

199) von Becker PE. Humangenetik. Ein kurzes Handbuch in fünf

Bänden. Stuttgart; Georg Thieme: 1966. pp. 398-399.

200) La Spada AR, Wilson EM, Lubahn DB, et al. Androgen receptor

gene mutations in X-linked spinal and bulbar muscular atrophy.

Nature 1991;352:77-79.

201) OMIM® (Online Mendelian Inheritance in Man), OMIM entry

#313200 by Victor A. McKusick at https://www.omim.org/about.

202) Doyu M, Sobue G, Mukai E, et al. Severity of X-linked recessive

bulbospinal neuronopathy correlates with size of the tandem

CAG repeat in androgen receptor gene. Ann Neurol 1992;32:

707-710.

203) Doyu M, Sobue G, Mitsuma T, et al. Very late onset X-linked

bulbospinal neuronopathy: mild clinical features and a mild

increase in the size of tandem CAG repeat in androgen receptor

gene. J Neurol Neurosurg Psychiat 1993;56:832-833.

204) Tanaka F, Doyu M, Ito Y, et al. Founder effect in spinal and

bulbar muscular atrophy (SBMA). Hum Mol Genet 1996;5:

1253-1257.

205) Li M, Miwa S, Kobayashi Y, et al. Nuclear inclusions of the

androgen receptor protein in spinal and bulbar muscular

atrophy. Ann Neurol 1998;44:249-254.

206) Katsuno M, Adachi H, Doyu M, et al. Leuprorelin rescues

polyglutamine-dependent phenotypes in a transgenic mouse

model of spinal and bulbar muscular atrophy. Nat Med 2003;9:

768-773.

207) Katsuno M, Banno H, Suzuki K, et al. Japan SBMA

Interventional Trial for TAP-144-SR (JASMITT) study group.

Efficacy and safety of leuprorelin in patients with spinal and

bulbar muscular atrophy (JASMITT study): a multicentre,

randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Neurol

2010;9:875-884.

208) Atsuta N, Watanabe H, Ito M, et al. Natural history of spinal and

bulbar muscular atrophy (SBMA): a study of 223 Japanese

patients. Brain 2006;129:1446-1455.

209) 飯田光男,向山昌邦,祖父江逸郎ら.Progressive proximal spinal

and bulbar muscular atrophy of late onsetの一家系.臨床神経

1976;16:794 (抄録 1 p).

210) 向井栄一郎,飯田光男,祖父江逸郎.球脊髄性筋萎縮症に関する川原,滝川および Kurlandの報告の紹介とその報告症例の追跡調査.神経内科 1979;11:252-258.

211) 向井栄一郎.球脊髄性筋萎縮症―自験 31症例の臨床特徴.臨床神経 1980;20:255-263.

212) Kennedy’s Disease Association [Internet] Coarsegold (CA):

Kennedy’s Disease Association: [Cited 2018 Feb 21]. Available

from: http://www.kennedysdisease.org/index.php/about-kennedys-

disease/what-is-kennedys-disease

213) 祖父江元.運動ニューロン病研究の進歩と治療への展望.日内会誌 2012;101:2479-2487.

214) Morimoto N, Yamashita T, Sato K, et al. Assessment of

swallowing in motor neuron disease and Asidan/SCA36 patients

with new methods. J Neurol Sci 2013;324:149-155.

215) 平山正昭,橋詰良夫,高木維治ら.球脊髄性筋萎縮症の 1剖検例―特に薄束変性との関連に関して―.臨床神経 1988;28:

1131-1136.

216) Suzuki K, Katsuno M, Banno H, et al. CAG repeat size

correlates to electrophysiological motor and sensory pheno-

types in SBMA. Brain 2008;131:229-239.

Page 24: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

臨床神経学 58巻 3号(2018:3)58:164

217) Iida M, Katsuno M, Nakatsuji H, et al. Pioglitazone suppresses

neuronal and muscular degeneration caused by polyglutamine-

expanded androgen receptors. Hum Mol Genet 2015;24:314-

329.

218) Hijikata Y, Katsuno M, Suzuki K, et al. Impaired muscle uptake

of creatine in spinal and bulbar muscular atrophy. Ann Clin

Transl Neurol 2016;3:537-546.

ALS の多系統の文献219) Sasaki S, Iwata M. Atypical form of amyotrophic lateral

sclerosis. J Neurol Neurosurg Psychiatry 1999;66:581-585.

220) Rajabally YA, Hbahbih M, Abbott RJ. Hemiplegic ALS: Mills

syndrome. Neurology 2005;64:1984-1985.

221) Hayashi H, Kato S. Total manifestations of amyotrophic lateral

sclerosis: ALS in the totally locked-in state. J Neurol Sci

1989;93:19-35.

222) Sasaki S, Tsutsumi Y, Yamane K, et al. Sporadic amyotrophic

lateral sclerosis with extensive neurological involvement. Acta

Neuropathol 1992;84:211-215.

223) Takeda S, Yamada M, Kawasaki K, et al. Motor neuron disease

with multi-system involvement presenting as tetraparesis,

ophthalmoplegia and sensori-autonomic dysfunction. Acta

Neuropathol 1994;88:193-200.

224) Kostic V, Gurney ME, Deng HX, et al. Midbrain dopaminergic

neuronal degeneration in a transgenic mouse model of familial

amyotrophic lateral sclerosis. Ann Neurol 1997;41:497-504.

225) Guillain MMG, Alajouanine T. Sclérose latérale amyotrophique

avec contracture intense du type extrapyramidal (hypertonie

plastique et exagération des réflexes de posture). Descussion

de son étiologie encéphalitique. Rev Neurol (Paris) 1926;33:

337-342.

226) 西中哲也,黒田重利,林 泰明ら.パーキンソン病を合併したMotor neuron diseaseの1剖検例.臨床神経 1990;30:1252-1255.

227) Schimke N, Krampfl K, Petri S, et al. Cerebellar symptoms in

motor neuron diseases: Special form of amyotrophic lateral

sclerosis plus syndrome. Nervenarzt 2002;73:751-753.

228) McCluskey L, Vandriel S, Elman L, et al. ALS-Plus syndrome:

non-pyramidal features in a large ALS cohort. J Neurol Sci

2014;345:118-124.

229) 三浦謹之助.筋萎縮性側索硬化症ニ就テ.神経学雑誌 1902;

1:1-15.

230) Verhaart WJC. An unclassified degenerative disease of the

central nervous system, Arch Neurol Psychiatr 1940;44:1262-

1270.

231) 中村晴臣,黒岩義五郎,椿 忠雄ら.オリーブ・橋・小脳萎縮症の二剖検例,神経進歩 1956;1:207-218.

232) 萱場徳子,前田 進.筋萎縮性側索硬化症に合併せるオリーブ・橋・小脳萎縮症の 1剖検例.内科の領域 1958;6:404-409.

233) Hayashi Y, Nagashima K, Urano Y, et al. Spinocerebellar

degeneration with prominent involvement of the motor neuron

system: autopsy report of a sporadic case. Acta Neuropathol

(Berl) 1986;70:82-85.

234) 村上信之,吉田眞理,橋詰良夫ら.小脳性運動失調を初発とし,筋萎縮性側索硬化症類似の病像を呈する症例に関する検討.臨床神経 1989;29:1116-1121.

235) 堀内 泉,古谷博和,由村健夫ら.著明な運動ニューロンの

障害を伴った脊髄小脳変性症の 1例.臨床神経 1997;37:123-

125.

236) Manabe Y, Shiro Y, Takahashi K, et al. A case of spinocerebellar

ataxia accompanied by severe involvement of the motor neuron

system. Neurol Res 2000;22:567-570.

237) Menzel P. Beitrag zur Kenntniss der hereditären Ataxie und

Kleinhirnatrophie. Arch Psychiatr Nervenkr 1891;22:160-190.

238) Schut JW. Hereditary ataxia: Clinical study through six

generations. Arch Neurol Psychiatry 1950;63:535-568.

239) 倉知正佳,柴田 樹,小山善子ら.核性外眼筋麻痺と下肢筋萎縮を伴ったMarie失調症の 1剖検例とその家系.精神経誌

1977;79:1-25.

240) Sachdev HS, Forno LS, Kane CA. Joseph disease: a multisystem

degenerative disorder of the nervous system. Neurology 1982;

32:192-195.

241) Mizutani T, Oda M, Abe H, et al. Hereditary multisystemic

degeneration with unusual combination of cerebellipetal,

dentato-rubral, and nigro-subthalamo-pallidal degenerations.

Clin Neuropathol 1983;2:147-155.

242) Spadaro M, Giunti P, Lulli P, et al. HLA-linked spinocerebellar

ataxia: a clinical and genetic study of large Italian kindreds. Acta

Neurol Scand 1992;85:257-265. (SCA1で pyramidal)

243) Kameya T, Abe K, Aoki M, et al. Analysis of spinocerebellar

ataxia type 1 (SCA1)-related CAG trinucleotide expansion in

Japan. Neurology 1995;45:1587-1594.

244) Abe K, Kameya T, Tobita M, et al. Molecular and clinical

analysis on muscle wasting in patients with spinocerebellar

ataxia type 1. Muscle Nerve 1996;19:900-902.

245) Furtado S, Payami H, Lockhart PJ, et al. Profile of families with

parkinsonism-predominant spinocerebellar ataxia type 2 (SCA2).

Mov Disord 2004;19:622-629.

246) Watanabe M, Abe K, Aoki M, et al. Analysis of CAG trinucleotide

expansion associated with Machado-Joseph disease. J Neurol

Sci 1996;136:101-107.

247) Ohta Y, Hayashi T, Nagai M, et al. Two cases of spinocerebellar

ataxia accompanied by involvement of the skeletal motor

neuron system and bulbar palsy. Intern Med 2007;46:751-755.

248) García-Murias M, Quintáns B, Arias M, et al. ‘Costa da Morte’

ataxia is spinocerebellar ataxia 36: clinical and genetic characteri-

zation. Brain 2012;135:1423-1435.

249) Lee YC, Tsai PC, Guo YC, et al. Spinocerebellar ataxia type 36

in the Han Chinese. Neurol Genet 2016;2:e68.

250) Zeng S, Zeng J, He M, et al. Genetic and clinical analysis of

spinocerebellar ataxia type 36 in Mainland China. Clin Genet

2016;90:141-148.

251) Ikeda Y, Ohta Y, Kurata T, et al. Acoustic impairment is a

distinguishable clinical feature of Asidan/SCA36. J Neurol Sci

2013;324:109-112.

252) Morimoto N, Yamashita T, Sato K, et al. Assessment of

swallowing in motor neuron disease and Asidan/SCA36 patients

with new methods. J Neurol Sci 2013;324:149-155.

253) Loureiro JR, Oliveira CL, Silveira I. Unstable repeat expansions

in neurodegenerative diseases: nucleo- cytoplasmic transport

emerges on the scene. Neurobiol Aging 2016;39:174-183.

254) Abe K. Discovery of Asidan/SCA36 and potential multisystem

involvement with DWEP. Proceeding of the 1 st International

Page 25: 日本における amyotrophic lateral sclerosis ALS)関 …...(昭和39)年には湯浅亮一が第4 報として「Dementia を伴う ALS」を20 )21 ,また1965(昭和40)年に三山吉夫と高松勇雄

日本における ALS関連疾患の初期論文とその今日的展開 58:165

Asidan Symposium on Asida River/Japan. Okayama: Asahi

Press; 2016. p. 8.

255) Ohta Y, Yamashita T, Hishikawa N, et al. Potential multisystem

degeneration in Asidan patients. J Neurol Sci 2017;373:216-222.

256) Marshall VL, Reininger CB, Marquardt M, et al. Parkinson’s

disease is overdiagnosed clinically at baseline in diagnostically

uncertain cases: A 3-year European multicenter study with

repeat (123I) FP-CIT SPECT. Mov Disord 2009;24:500-508.

257) Marek K, Seibyl J, Eberly S, et al. Longitudinal follow-up of

SWEDD subjects in the PRECEPT Study. Neurology 2014;82;1

791-1797.

258) Schöls L, Reimold M, Seidel K, et al. No parkinsonism in SCA2

and SCA3 despite severe neurodegeneration of the dopaminergic

substantia nigra. Brain 2015;138:3316-3326.

259) Ishiura H, Sako W, Yoshida M, et al. The TRK-fused gene is

mutated in hereditary motor and sensory neuropathy with

proximal dominant involvement. Am J Hum Genet 2012;91:

320-329.

260) Murakami N, Imamura K, Izumi Y, et al. Proteasome impair-

ment in neural cells derived from HMSN-P patient iPSCs. Mol

Brain 2017;10:7.

Abstract

An early history of Japanese amyotrophic lateral sclerosis (ALS)-related diseases and the current development

Koji Abe, M.D., Ph.D.1)

1)Department of Neurology, Okayama University Medical School

The present review focuses an early history of Japanese amyotrophic lateral sclerosis (ALS)-related diseases and the current development. In relation to foreign previous reports, five topics are introduced and discussed on ALS with dementia, ALS/Parkinsonism dementia complex (ALS/PDC), familial ALS (FALS), spinal bulbar muscular atrophy (SBMA), and multisystem involvement especially in cerebellar system of ALS including ALS/SCA (spinocerebellar ataxia) crossroad mutation Asidan. This review found the great contribution of Japanese reports on the above five topics, and confirmed the great development of ALS-related diseases over the past 120 years.

(Rinsho Shinkeigaku (Clin Neurol) 2018;58:141-165)Key words: ALS, ALS/PDC, FALS, SBMA, Asidan