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回 製品アーキテクチャから見る競争環境の変化パート1 ~モジュール化の影響~ 神戸大学経済経営研究所 教授 延岡健太郎

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Copyr ight(c) NEC Corporat ion 200601 ものづくり経営革新

ものづくり経営革新~価値創造のための企業戦略~

2 電機と自動車の明暗

1 日本企業のものづくりに大きな影響を あたえる製品アーキテクチャ

片寄らない知識・幅広い知識

モジュラー・デジタル

インテグラル・アナログ

標準・オープン 専用・クローズド

標準化特性

部品間特性

インテグラル型(擦り合わせ型)

モジュラー型(組み合わせ型)

自動車

コピー・プリンター

TVゲーム・カーナビ超薄型

パソコンデジカメ

薄型TV携帯電話

DVDプレイヤ

デスクトップパソコン

図1 製品アーキテクチャの枠組み

 前回は、すばらしい技術や商品を開発しても、

利益をあげることが難しくなったことを説明しま

した。特に、産業間での差異が目立ちます。自

動車や鉄鋼などの機械・材料系の産業は、好

景気にも後押しされ、高い業績をあげています。

一方で、半導体やデジタル家電などの電機・電

子系の産業は、活発なイノベーションが見られ

るにもかかわらず、なかなか儲かりません。

  これらを統合的に説明するために最も有用

なのが、今回焦点をあてる「製品アーキテクチャ」

の概念枠組みです。製品のアーキテクチャには、

モジュラー型とインテグラル型の2つがあります。

これら2つでは、産業構造が異なるだけでなく、

市場競争での勝ち負けを決める基準や企業戦

略、マネジメントのあり方まで大きく異なってき

ます。特に重要なのは、近年、モジュラー型の

商品が増えたことによって、日本企業のものづ

くりの強みが発揮できなくなってきたことです。

  日本語で表現するとすれば、モジュラー型は

組み合わせ型、インテグラル型は擦り合わせ

型と呼ぶことができます。特に、インテグラル型

を「擦り合わせ型」と翻訳したのは、私の共同

研究者でもある東京大学の藤本隆宏先生です

が、大変ぴったりとくる言葉だと思います。

  一般的に、製品アーキテクチャは、図1に示

すように2つの基準によって分類できます。縦

軸は、製品を構成する部品間の特性で、横軸

は部品の標準化特性です。右上がインテグラ

ル型(擦り合わせ型)、左下がモジュラー型(組

み合わせ型)の商品になります。

  組み合わせ型商品の代表はパソコンです。

CPUやハードディスクなど、ほとんどのデバイ

スが業界標準に準じており、しかもそれらを購

入して組み合わせれば、比較的簡単に優れた

商品を開発・製造できます。誰もがある程度の

資金さえあれば、「パソコンメーカー」になれるで

しょう。DVDプレイヤや、シンプルな携帯電話な

どもそのような傾向が強い商品です。DVDプレ

イヤで日本企業が全く利益をあげることができ

なかったのは、百社以上の中国企業が簡単に

参入できたからです。

  ただし、DVDプレイヤでも、光ピックアップの

ような中核部品は日本企業が技術的な優位性

を維持しています。それを販売しなければ、中

国企業が参入することはできません。しかし、

多くの中核部品を販売しているのは、松下・ソニー・

NECなどの日本企業です。自分で自分の首を

絞めているとも言えますが、事業戦略としてそ

の罠から脱出する良い手段がなかなか見つか

りません。

 一方で、擦り合わせ型商品の代表は自動車

です。サスペンションから、インパネやシートなど、

ほとんどが専用部品です。また、数百億円以上

の開発投資が必要とされるエンジンの開発も、

ほとんど各社別々に行っています。標準化・共

参入企業相次ぐ携帯型音楽プレー

ヤ市場

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第2回

製品アーキテクチャから見る競争環境の変化パート1 ~モジュール化の影響~ 神戸大学経済経営研究所 教授 延岡健太郎

Copyr ight(c) NEC Corporat ion 2006

ものづくり経営革新~価値創造のための企業戦略~

02 ものづくり経営革新

観察眼を鍛える

メタ認知は特殊な能力ではない

図2 部品間特性の違い

2 擦り合わせ型 アーキテクチャの役割

①組み合わせ型 ②擦り合わせ型

部品A 部品B 部品A 部品B

通化がすすんでいません。パソコンの心臓部

であるCPUとは対照的です。また、情報機器の

中でも、事務用コピー機は、紙送りの技術など

アナログ的な技術が多く、擦り合わせが重要で

す。結果的に、キヤノンやリコーなどの日本企

業が高い競争力をもち、中国や韓国企業にも

簡単には模倣されません。

  日本企業は、デジタル家電などの組み合わ

せ型の商品では、利益をあげることが苦手で、

モジュール化がすすまない自動車などでは、

大きな利益をあげています。近年は、商品の多

くが、電子化・デジタル化することによって、モ

ジュール化がすすみ、組み合わせ型になって

きました。結果的に、日本のものづくりを全体

的に見た場合には、前回、データを示したように、

利益率が低下し続けているのです。

 組み合わせ型と擦り合わせ型の違いを象徴

的に、図2のように表すこともできます。組み合

わせ型の場合は、部品間のインタフェイスがシ

ンプルで、簡単に組み合わせることができます。

デジタル的ということもできるでしょう。このよう

に組み合わせ方をシンプルにするためには、

事前に、部品間のインタフェイスについて取り

決めが必要です。この取り決めのことは、「設

計ルール(Design Rule)」と呼ばれます。事前

に設計ルールをつくって、簡単に組み合わせる

ことができるようにすることがモジュール化です。

これは標準化へもつながります。

 一方で、擦り合わせ型は、事前に設計ルール

を設定しません。結果的に、商品開発の最中

に擦り合わせが必要となります。部品Aと部品

Bは、複雑なインタフェイスをもっているので、

独立して考えることができません。両部品を組

み合わせる際には、実際に合わせてみて、隙

間が開き過ぎている部分や、逆に干渉してしま

う部分を調整しなくてはいけません。つまり、擦

り合わせが必要なのです。

 このように擦り合わせが必要なのは、部品間

の相互依存性が高いからです。特に、両部品

が統合的にある機能を実現しなくてはならない

場合に、相互依存性が高くなります。これを説

明しているのが図3です。組み合わせ型の場合

は、商品のある重要な機能を実現する場合に、

ひとつの部品システムが独立してその機能を

実現します。たとえば、パソコンでは、計算はC

PU、保存はハードディスク、表示はモニタといっ

たように、それぞれが、主に独立して機能を果

たします。そのため、商品機能を実現しようと

するときに、部品間の調整があまり必要ありま

せん。これは、複数の部品の間で相互依存的

な関係をもたないように、事前に設計ルールを

定めているからです。

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回2 製品アーキテクチャから見る競争環境の変化パート1

~モジュール化の影響~ 神戸大学経済経営研究所 教授 延岡健太郎

Copyr ight(c) NEC Corporat ion 200603 ものづくり経営革新

※EQ(情動知能:Emotional Intelligence Quotient)理論

米国のエール大学心理学部教授ピーター・サロベイ博士

とニューハンプシャー大学心理学部教授ジョン・メイヤー

博士によって 1989 年に論文で発表された。

ジャーナリストのダニエル・ゴールマンの著書「 Emotional

Intelligence( 邦題:心の知能指数 ) 」によって紹介され、

米国はもとより世界中で教育やビジネスフィールドから注

目を浴びることになった。

ヒデキ・ワダ・インスティテュート取締役代表

和田 秀樹(わだ ひでき)

ヒデキ・ワダ・インスティテュート取締役代表

和田 秀樹(わだ ひでき)

ものづくり経営革新~価値創造のための企業戦略~

3 製品アーキテクチャと 組織能力の相性

付加価値創造の3要素

図3 部品システムと機能の関係

部品システム1

部品システム1

部品システム1

機能1

機能1

機能1

部品システム1

部品システム1

部品システム1

機能1

機能1

機能1

①組み合わせ型 ②擦り合わせ型

 他方、擦り合わせ型では、ある機能を実現す

るために、複数の部品が統合的に関与します。

たとえば、自動車であれば、主要な機能として

は乗り心地や走行安定性などがありますが、

それらの機能は、エンジン、ボディ、サスペンショ

ン、シートなど多くの部品システムが複雑に合

わさりながら決まります。たとえば、高度な走行

安定性を達成するためには、エンジンの出力

特性、ボディのねじれ特性、サスペンションの

硬さなどの微妙な擦り合わせが必要です。擦り

合わせ方が微妙で複雑なために、高度な機能

を実現しようと思えば、事前に設計ルールを定

めてしまうことはできません。もし設計ルールを

つくってモジュール化すると、十分な機能は実

現できません。

 製品アーキテクチャに対応して、組織につい

てもアーキテクチャの概念で考えることができ

ます。図4は企業組織で、四角で表している各

部門がそれぞれ一つの部品の商品開発を担

当しているとしましょう(小さい黒丸は技術者)。

組み合わせ型の商品開発であれば、それぞ

れの部門内では調整が必要ですが、部門を

超えて、他の部品を担当する部門との調整は

必要ありません。一方、擦り合わせ型の商品

開発であれば、部門内での調整に加えて、部

門間(および企業間)でも調整が必要です。

 このように、組み合わせ型は事前に設定さ

れた設計ルールのおかげで、組織調整にか

かるコストの低減ができます。しかし、事前に

定めるルールや事前調整には限界があります。

商品開発を始めなければわからない問題が

少なくありません。複雑な統合性を実現して、

完璧な設計を追求する場合には、擦り合わせ

型の方が適しています。しかし、擦り合わせ型

であれば、組織的に多大な調整が必要になる

のです。

 つまり、事前に設計ルールを設定することに

よって、商品開発段階でのコスト低減を追及

するのが、組み合わせ型商品です。一方、個

別の商品開発の中で、最適な調整を実施する

ことによって、完璧な統合性を目指すのが、擦

り合わせ型商品なのです。

  図4からわかるように、擦り合わせ型であれば、

組織の壁を超えた多くの調整が必要となり、そ

の良し悪しが商品開発の成果を大きく左右しま

す。商品の機能や品質、および商品性を高め

るためには、部品間の擦り合わせが重要な役

割を果たします。企業内だけでなく、部品供給

企業との擦り合わせも重要です。また、部品間

だけでなく、製品設計と生産技術やテスト・解

析部門など複数の機能・職能間でも、多くの擦

り合わせが必要になります。日本企業は、それ

らの擦り合わせ能力が高いので、擦り合わせ

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Copyr ight(c) NEC Corporat ion 200604 ものづくり経営革新

ものづくり経営革新~価値創造のための企業戦略~

4 擦り合わせ型に残る条件

①組み合わせ型 ②擦り合わせ型

型商品における商品開発力がきわめて高いの

です。

 一方、組み合わせ型では、部品間の調整は

あまり必要ないので、世界規模で最適な部品

を選択・調達し組み合わせる能力が鍵をにぎり

ます。そのような選択・組み合わせ能力につい

ては、米国企業や中国・台湾企業が強いのです。

組み合わせ型商品における日本企業の弱い

点は、具体的には次の3点に集約できます。

 第一にコストの問題です。市場で部品を購入

して組み合わせれば開発・製造できるとなると、

製造コストの安い中国企業を相手に勝ち目は

ありません。工場の製造コストだけであれば、

日本企業でも中国工場の活用などによって大

幅に低減できます。しかし、「販売費及び一般

管理費」などのオーバーヘッドが大きな負荷と

なる日本企業は、中国企業と競うことは不可能

に近いのです。

 第二に、グローバルな仕組みづくりです。パソ

コンのデル社のように世界で最適な部品を探

索して組み合わせ、顧客の注文に合わせてカ

スタマイズしつつも迅速に届けるという「真にグ

ローバルな仕組み」は、なかなか日本企業に

は真似ができません。

 第三に、プラットフォーム・リーダーの問題です。

組み合わせ型商品では、大きな意味での設計

ルール、つまり、業界標準を決めるプラットフォー

ム・リーダーが市場競争の主導権をにぎります。

パソコンであればインテルやマイクロソフトです。

日本企業は高度な部品技術を持っていても、

世界の業界標準を牽引するプラットフォーム・リー

ダーにはなかなかなれません。

 ここまでの説明でわかるように、日本企業とし

ては、擦り合わせ型商品の方が組織能力の強

みを発揮できるので好ましいのです。しかし、

多くの商品がモジュール化してしまいます。そ

れは、モジュール化は、商品の供給側(企業)

にとっても、需要側(顧客)にとっても、メリット

が大きいからです。

 供給側としては、組み合わせ型にすることによっ

て、コスト低減ができます。標準化することによっ

て、共通化や汎用化が進み、部品コストは格

段に低下します。さらに、企業内でも企業間でも、

調整があまり必要ないので、調整コストが削減

でき、これもコスト低下に結びつきます。また、

組み合わせ方がシンプルになり、製造におけ

る生産性や品質も向上します。

 需要側、つまり顧客にとっても、モジュール化

のメリットは大きいのです。モジュール化により

価格が大幅に低下します。また、多様な組み

合わせを自由に選択することができます。たと

えば、パソコンでは、顧客はCPUのクロック数

やハードディスクの容量を自由に選択して組み

合わせて購入することができるのです。

 このような背景の下、商品の誕生から衰退ま

でのライフサイクルを見ると、たとえ初期には

図4 製品アーキテクチャに対応した組織のアーキテクチャ

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ものづくり経営革新~価値創造のための企業戦略~

05 ものづくり経営革新

ヒデキ・ワダ・インスティテュート取締役代表

和田 秀樹(わだ ひでき)

5 価値獲得(Value Capture)の条件 6 価値創造重視の日本企業、 価値獲得重視の米国企業

図5 製品アーキテクチャの選択

擦り合わせ型であっても、通常は徐々にモジュー

ル化がすすみます。ただし、自動車のように、

モジュール化があまりすすまない商品もあります。

結果的に、自動車では日本企業が国際競争力

を維持できています。それでは、なぜ自動車は

モジュール化して、組み合わせ型商品にならな

いのでしょうか。

  結論から言うと、擦り合わせ型として留まる

条件は、モジュール化するメリットよりも、擦り

合わせによって創造される価値の方が高い場

合です。モジュール化のメリットとして代表的な

のは低コストです。それと比較して、擦り合わ

せ型の方が、標準部品を使わないことや部品

間の調整コストが必要なことから高コストになり

ます。つまり、高コストでもあえて擦り合わせ型

にした場合に、そこで付加的にかかったコスト

以上の対価を顧客が支払うのであれば、擦り

合わせ型商品として残してもよいのです。

  この点を自動車とパソコンで比較して、概念

的に表したのが図5です。顧客が支払う価格と

コストの差が商品の価値なので、それが大きい

ほど良いのです。組み合わせ型よりも擦り合わ

せ型の方が、コストは高くなります。そのコスト

上昇以上に、擦り合わせ型にする価値を顧客

が評価しなければ意味はありません。パソコン

の場合、擦り合わせ型にすれば、薄型・軽量化

などによって多少の顧客価値向上が期待でき

るかもしれませんが、コスト上昇分を補うことは

できない場合が多いのです。一方で、自動車

はうまくやれば擦り合わせ型を採用する追加コ

スト以上の顧客価値を実現できる可能性が高

いのです。

 トヨタや日産の2~300万円以上もする乗用車、

さらにはBMWやベンツのようなきわめて高価な

輸入車でも、ごく少数の特殊な人だけが購入し

ているわけではありません。比較的多くの顧客

が、このような高価な自動車に対して単なる移

動手段としての機能をはるかに超えた対価を

支払っています。擦り合わせによって実現でき

ている、高級品質感や走行安定性に対して、

高い対価を支払っているのです。自動車が「単

なる移動ツール」であれば、そのような高価な

価格を支払う顧客は、もっと限定されるでしょう。

顧客は、多くの場合、BMWのようなブランドに

対して対価を支払っていますが、それも、長年

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ものづくり経営革新~価値創造のための企業戦略~

06 ものづくり経営革新

ヒデキ・ワダ・インスティテュート取締役代表

和田 秀樹(わだ ひでき)

の擦り合わせを徹底することによって高い性能

や品質を追求してきた結果なのです。

 一方で、パソコンについては、仕事や家庭で

必要とされる機能に対する対価を超えて、何万

円もの付加的な対価を支払う顧客はあまりい

ません。たとえば、モバイル・パソコンで、専用

部品を使った擦り合わせによって数十グラム

軽量化しても、なかなか数万円の付加的な対

価を支払ってくれません。日本ではそれでも擦

り合わせに対価を支払う顧客が比較的多いで

すが、世界的にみると、ワープロやインターネッ

トがきちんとできれば十分だと考えるユーザー

が多勢なのです。つまり、汎用部品を使用して、

組み合わせ型商品として販売した方が、付加

価値は高いのです。

 このようにデジタル家電は、差別化が難しい

上に、差別化できたとしても、なかなか顧客が

それを評価して対価を払ってくれないところが

問題なのです。擦り合わせや造りこみ能力の

高い日本企業は、商品を擦り合わせ型にして、

機能を高めたり、小型化したりすることが得意

です。しかし、問題は、いかにそれに対して顧

客に追加的な対価を支払ってもらうかです。そ

の点が難しいために、一見すばらしい商品が

開発できても、付加価値創造には結びつかな

いのです。

 ここでは、デジタル家電と自動車という、製品

アーキテクチャの概念からは両極に位置する

産業を題材にして説明してきましたが、他産業

にとっても学ぶことは多いはずです。他産業の

ほとんどは、これら2つの産業の間に位置づけ

られます。また、日本のものづくり全体としては、

より多くの産業がモジュラー型に近づいている

点が大きな問題になっています。

 次回は、商品がモジュール化することによって、

いかにコモディティ化が進んでいるのか、その

メカニズムを明らかにします。同時に、この環

境の中で、日本企業がどのようにして付加価

値を創出すべきかについて、対策を考えていく

ことにしましょう。