目黒寄生虫館月報昭和37年5月10日発行・毎月 1回10日発行

第 四 号 昭和 37年 5月

Beltsville Parasitological Laboratory (B.P.L.) について(2 )

(前記)所要の原著は所定の Requestcards に記

入して Outgoingmailの箱の中に入れておくと，毎

日の定期便によって，居ながらにして入手出来ます。

もし本省の図書館や BeltsvillePlant Industory St

ationにある分館にもない場合には， Interlibrary 10-

an の方法によってどこかのもっている図書館から借

り出して送ってくれます。又貸出し不能のものはそこ

で Photocopyを作って無償で送ってくれます。この

様な手数は Be1tsvil!e皆の分館が代行してくれます

から，研究者にとっては，少しも手数がかかりません。

Subject indexは，吸虫は 1908年，条虫は 1912年，

線虫は 1920年まで Ind巴x-catalogueof Medical and

Veterinary Zoologyとして既に出版されてし、ますが，

その後の長い空虚を充すためには，前主任で最近退職

じた MissMilclred Dossが N.I.R の援助の下に自ー

をまとめて，年毎に出版する計画を研究所が考えてい

ますから，もしそれが実現すると，国外の研究者にも

索引カードが利用されることになります。従来の Au-

thor indexと同様， これも恐らく無償で頒布される

ことになりましょう。なおここの研究分室にも寄生虫

関係の Monographや，寄贈されてくる Reprints等

相当量をもっていますから，これは自由に使用出来ま

す。ただ遺感なことは，外国の著名な寄生虫専門雑誌

が完全な setとして保存されていないことです(欠け

ているものは勿論，本省の図書館から借り出せます

が)念のため小生等の研究所の正式の Adressは次の

通りです。

Beltsville Parasitological Laboratory

U. S. Agricultural Research Center

Il~1 tsvil!~; :Ma.ryl司!1c!，JJ，~. . A.. .._ ..::よ:と一

ー山 l:;;・4・ ~.B. !P..- ;L.滞在中の山用左仲博士の来信

← m ん}よ .~)~..、 '

‘ρ 町 一 4官ー

-2- 目黒寄生 虫館月報

Studies on Acanthocephala ( 9 )

On some Acanthocephala found in Marine fishes. (7)

SHUNYA KAMEGAI

(Meguro Parasitological Museum)

1) Bolbosoma sp.

(Fig 1)

This species extremely resemble to the mo-

stly related Bolbosoma vasculosuJn (Rudolphi，

1819)， B. thzmni 1王arada，1935， and unrelated

The body is 10.5mm long in male and 1l.5mm Diρlos戸川fersertP1zticola Fukui， 1929.

long in female. Bottle-shaped proboscis is 0.62 mm

long， armed with 20 longitudinal rows of 7-8 ho句

oks each. The fifth hook from the bottom of each

row is largest， 97μlong and it is as long as of

2) B. caenojorme (HEITZE) ?

(Fig 2)

it's root. Unarmed neck is O. 66mm long.Cylindrical The body is 9.7mm long. Subcylindrical pro-

trunk is 8. 9mm long. Anterior trunk is conspicious boscis 0.56 x O. 36mm， armed with 2210ngitudinal

swelling， and has small stout spines that were rows of 5 hooks each. Conical unarmed neck is

arranged in two broad bands. The first band of 0.24mm long. Anterior trunk up to 1. 2mm is wi-

::;pinens started from the anterior end of trunk. dly spreaded， and armed with some smaIl spines，

Double-walled proboscis sheath is 1. 88mm long by which is 15μlong. Proboscis sheath is 0.74mm

0.46mm wide. Two lemnisci are， 0.89-0. 9mm long. Two cylindrical lemnisci elongate 0.6-0.74

long， crumpling and including a number of large mm long. Vaginal sphincter is 50μin diameter.

nucleus. Ganglion situated at the middle of the Vaginal bulb is 37-40μin diameter. Other genital

trunk. Unriped two testes are elliptical， 110 x 55μorgans does not matured as can be measur巴d.

lied in tandem at the middle of the body. Cement 1 think this species may be identified with

glands and seminal duct contacted each other. B. caenofonne (Heitz巴)， but the material were

Unriped Safftigen's pouch is about 0.6mm long. only unmatur巴dfemales， so that it can not to say

Bulsa copulatrix is about 0.6mm long. Uterine exactly the species name.

bell could not obs巴rl'ed. Uterus is about l. 2mm

long. Vaginal sphincter is 140μin diameter. Habitat: Small intestine of Onclzorhynclws keta

1 obtained five encysted larva from TllIInnus Locality: Sea of Hokkaido vicinity

sp. in the outer wall of stomach， which was ca-

ught at the South Pacific Ocean. Material ar巴 や

three immature females and two immature males.

Unfix巴dfresh worms are orange red in color.

目黒寄生虫館月報 ー 3ー

Fig 1 Fig 2

p........ .Proboscis

N … ・ .Neck

P. S. ...Proboscis sh巴ath

L.・…..Lemniscus

Retr. ... Retracter

T ぃ・・...Testis

B. C. ..， Bulsa copulatrix

Lig.......Ligament

Sph....... Vaginal sphincter

Literature

FUKUI， T. (1929): On some Acanthocephala found in Japan

Annot. 200. Japan， Vol. 12 p255-270

HARADA， 1. (1935) : 2ur Acanthoc巴phalenfaunavon ]apan. Mem. Facul

Sci. Agr.， Taihoku Univ. 14(12)

+

.....訂右 手iT ::乙土主il.日 I寸学ts1.

ー'ー 噂巴 ・--，-.，'、，ー、--、.'、・ー、 ・ー'

鈎 虫特集(3 ) ' >合 - ~ ..- ".; 、、.，....ーー-.，ー母宅~-.・4島ー、多ぜ司，-噌ー ' 1"''''::.''" 号 ‘<...- ~ '"ーを宅J...，.. .. ，子 、，

鈎虫症の治療とその駆虫薬

鈎虫症の治療としては，まづその病気の原因である

鈎虫そのものを除去することが，その第一条件である。

孝い鈎虫は腸管寄生虫であるから，かりに，これが完

全に殺し切れなくとも，寄生している虫体を体の外に

追い出してしまえば良いわけである。従来から，こう

した目的のために種Aな化学祭品が用いられてきてい

る。これがいわゆる「鈎虫駆除剤」である。

しかし，鈎虫寄生に基因して，貧血がはなはだしい

場合にはs 駆虫を行っただけでは，なかなか貧血やそ

の他一般症状などが，依復が，はかばかしくないこと

が多い。

そうした場合には 3・.$s虫と並行して，鉄剤の逮続投

与による，貧血自体の治療法をも，行う必要がある。

また，すでに，貧血がひじように強い患者などでは，

認虫にさきだって，造血鉄完jなどを按与し，ある程度

の貧血の快復を図ってから，駆虫を行うほうが良い。

O

鈎虫の駆除は，かつては，相当むづかしいように考

えられていた。鈎虫駆除としては，古くは，四塩化炭

素がよく用いられていた。これは，いちじるしい駆虫

効果はあるが，一方，いちじるしい副作用を呈する場

合が多く，したがって，駆虫の手つづをも充分慎重に

行う必要があった。まづz 前日に下剤をかけ，駆除剤

を与えてからも，後下剤が必要だし 3 また s その問の

慎重な監視も必要というわけで，原則としては，入院

駆虫を建て前としていたものである。

チモー)["へノポジj自の二つの鈎虫駆除剤も，以前

は好んで臨床医家!こ使はれていた。この二つの駆除刻

も， m虫効果は，なかなか宜しいのだが，やはり p 可

なりな程度の副作用がしばしば発現する。だから，こ

れらも四鹿化炭奈の場合と同慌に 3 前下剤z 後下剤百三

必ず必要とし，原則として s 入院治療を行ったもので

ある。副作用を恐れてのことでみる。特に後下)，'iIJ:ど与

えない場合，使用量が多い場合などには，へノポジ治

の場合では，難聴が後まで残る場合もある。筆者の知

っている学生で，これは，デモーノレを用いて自己駆虫

国立予防衛生研究所寄生虫部部長

片ロ口二号事=ー

否定 査v

を行って，約2時間ほど，人事不省に陥入った事例も~ ~

dつ-Q)。

O そこで駆虫効果が高く，一方，その副作用のおそれ

のない鈎虫駆虫剤の開発，ということが戦争前後の薬

業界の一つの重要な問題であった。

四塩化エチレンは，こうした観点のもとにアメリカ

で開発され，戦後間もなく，本邦でも，これが作られ，

発売されるにいたった。

ただ，四極化エデレシは分解すると，有毒なフォス

グγを発生する可能があるので，製品の安定性が厳に

要請される。

四塩化エテレγ製剤で，本邦でよく知れわたったも

のは，黒田製薬の「テトレン」であるが，これは紅く

着色した~球中におさめられ，中の四塩化エチレン自

身も紅く着色されている。これは日光などの影響を防

ぐためで，その安定性はよ く確保されていたが， 黒田

製薬がつぶれてしまったので，ここ 2~3 年以来，テ

トレγは市場に見当らないようである。

四塩化製剤jの他の製品も， 2~3 出廻っているよう

であるが，これらの何れも，紅く着色した!i'&球入りと

はなっているが，四塩化エチレγ 自体の着色はされて

いないようである。もっとも，この四塩化エチレ γ 自

体の着色方法は，特許になっている，とのことである。

が，着色のない場合の安定性は，どんなものであろう

か。 古い製品だと，その点懸念がなくもない。

O 四J;æ;!ヒエテレ γ の，成人での，一回投与量は 3~4

グラム s 上記テトレソないし類似の製品なら，一回15

錠。頓服してもいいが，副作用が若干多く出る傾向が

める。 これを， 2日に分服させるやり方もあるが， 2

日に分服させると駆虫効果が p やや低下する。筆者は，

l 時間間隔で 3回分版方式を好んで用いる，この場合 3

第1回目6球，第2回目 5球，第 3回目 4EFというふ

うに，初め多くi去に少くま支与すると，副作用がずっh と

少くなるγこの方式だと，副作用はあっても程度一過

目黒寄生虫館月報 -5ー

性のものでz 駆虫効果は落ちない。副作用としては詐

い，頭痛p 悪心，まれに~吐がある。

四思1ヒエテレジ技与は，なるべく，空服時に行うだ

けで，投与の前後とも必ずしも，下剤は与えなくとも

いい。以前は，アメリカでも前後下剤，といりわけ，

後下剤は必、ず与えたものだが 3 その後， Carrなどの

研究により，むしろ下剣は与えない方が，土fJぅて副作

用が少ししかも，効果には変りがないで声が分って，

その後，下剤ぬきが通例となっている，本邦のテトレ

γでも，吉田博士および筆者たちが，下剤ねき校与で

差支えないことをたしかめ，いまでは， fJjに築卜H段り

の場合には，下if!Jぬきが一般化さねている。

O

1・ブローム ・2・ナフトールは， i間後本邦で開発

された優秀な鈎虫駆除剤lである。金沢I豆大の三iill博 1:

が開発したもので，富山化学から「オーミン」という

名で発売されている。!領主立状のil'Jf衣錠となっており，

これも前，後下剤ともに，必ずしも必要としない。

成人l回置は，製品では6グラム(プロ ーム・ナフ

卜ーノレとして)となっているが 1回置として 8-10

グラムぐらい投守した方が効果はいい。頓服でもさし

っか え な い が 日 で 1時間間隔で， 2 - 3 問に分Jl~

させると，副作用もほとんどなし駆虫効果も頓服の

時と変りない。四海iヒエチレンおよび 1・プローム・

2・ナフトーノレの，上記標準量 1回設与時の駆虫Z容は，

ほほ同，隊で， 40~805百ぐらいの陰転率が期待できる。

臨床的には， 2~ 3 日の間隔で， 2~3 回の駆虫をお

こなえば，ほほ完全に，駆虫の目的を達成しうる。な

おs 右の 2つの薬剤は，ア j リカ鈎虫には，特によく

効くよう である。

O

おなじく本邦で開発された鈎虫駆虫楽に 4・ヨー

ド・チモールがある。静岡薬科大学の林|等士が開発し

たもので， rチモラン」という名称で s 中外製薬品、ら

発見されている。この奈の標準服用置は， 1日の l四

重は 4クラム (4・ヨード・テモーノレとして)であり，

服用時やはり前，後下剤1:1:，必ずしも必要でなL、a ぞ

はり，アメリ刃鈎虫の方が効きがよく，効果は統計的

には，前二者と有意差はないが，感じから云うと，前

二者に，やや劣るような気もする。副作用も大体似た

りょったりで，いずれも軽度， 一過性のものであるが，

ただ本剤使用時には，時として，数回にわたる下荊が

あることがあるのが，ちょっと気になる。

以上のものと逆に，特にヅピニ鈎虫によく効く鈎虫

駆除楽として I1最近開発されたものに，ベフェ こウム製

剤がある。これは，イギリスのウエノレカム・パロ 一社

が IJ~発したもので， Bephenium hydronaphtateとし

て発売され， アルコパール (Alcopar) という名前

で市販され，本邦では田辺製薬から売りだされている。

この :~fíIJの l 回の，標準服用車は，成人 2. 5 グラム(ベ

フュ ニウム ・イオン)と してで，やはり前，後下剤ね

きで差支えない。駆虫効果はヅピニ鈎虫の場合だと，

l回投与で40-80%ぐらいの陰転率が得られるが，ア

メリカ鈎虫の場合だと ，必ずしもそれほど良くない。

副作用はオ ー ミン ， テモランなどの場合と ， 大同小~?I~

である。下痢はない。

O 鈎虫駆除剤投与の場合に注意すべをは，その効果判

定のやり方である。効果判定の時期は，薬剤技与後 2

週~4週の問に行うのがよい。 これより早すぎると，

虫がまだ落ち切らないこともあり得る し，又これより

遅いと，後から感染した虫が産卵を初めてあやまる場

合がある。

効果判定のための検便方法は，飽和食寝水浮遊法か

I長後法がいい。ふつうの主主妹法では，これで検査して

卯陰性でも，まだ20匹内外の虫が残存している可能性

のあることは診断のところで述べたとおりである。厳

密を期するためには a 浮遊法を引きつづき 3回行い，

会例陰性の場合を，陰性とすれば，もっとも確実であ

る。

、，、、，崎、.、、，、円、.、、r、.、、，、.......・、、.. 、，司、J、戸、.・、..，、.ー、-、.. 、

質疑一 刻闘の間関程間 1) 質問は 200字以内

Fi5穴 … 2) 紙上匿名は自由ですが住所姓名は明記して下さい.固 め原稿について多少の盤術はご了示下さい.

(本聞の解答者は国立予防術生研究所寄生虫部長

小宮義孝隠士である)

(問)鈎虫を駆虫した場合に，駆虫実施後iili:ちに倦怠

感が消失する例を経験します。貧血が鈎虫症状の主因

とすれば 2 余りにも早く，自覚症の消失することが奇

異に感じます。その理由を説明して下さい。

(横浜・滝川生)

(答)鈎虫症の主徴は貧血であり，またこたに伴う随

伴症状でありますがs 右とならんで鈎虫の産出する毒

素の吸収による題点の神経症状が，発現することも再

定できません。

倦怠感は貧血にもとずく代謝阻害によっても発生し

ますが，また毒素のための神経症状である場合も多い

と存じます。それが後者に萎因する場合だとすれば，

-6- 目黒寄生虫館月報

説明もつまうると存じます。なお駆虫完了という安心 の全台湾の検査成績はないようですが，各地からの成

感に#ずく精神作丹iも3 これに影響を与える場合もあ 績はポツボツあります。たとえば，さいきん頼氏 (19

るかと存じます。 ・ 61年)が発表したところによると台北でも，約7000人

(問)台湾における鈎虫のまん延状況について概況を の学童を検査して，平均18%の保卵率を見ております。

おたづねします。刊にアメリカ鈎虫とヅピ=鈎虫との 学童でこれですから，成人を しらべれば50%以上ある

分布よの差異についてご説明下さい。(東京 .K生) 勘定になります。虫種としては，やはり本邦と同じよ

(答)台湾においては，本邦に劣らず鈎虫は時にj長山 うにアメリヵ，ヅピニの両方が入り混じって各地に分

村に分布しております。 終戦後にもまだ鈎虫に関して 布しているようです。

回 顧 50 年

大阪大学名誉教授

理学博士医学博士 吉 田 貞 雄

( 3 )経虜感染と宿主体内移行 は，自己の同虫感染は，過日あやまって手甲に落した

寄生虫の経腐感染と宿主体内移行の現象も，第 3期 水滴中の仔虫に基因するこ とを信じ，爾来多年に亘り，

になって，初めて発見されたことである。第 2期まで 幾多の実験を行った結果，遂に鈎虫の皮属感染を実証

は，経口感染で，例へば牛肉の中にある無銘翼虫を， し，さらに感染仔虫の宿主体内移行なる大偉業を完遂

経口的に摂取すると，無鈎条虫に感染するとか，鼠の し， 1904年これを公表するに至った。

肝臓に寄生する褒虫 (Cysticercusfasciolm'is)を猫 奨便とともに排出された鈎虫卵は，土中に散乱し，

に試食さすと，その11号1'']!こnEli'i条虫が育成する，とい 適当の温度および湿度にありては，約2日以内に，卯殻

うような感染方法だけ知られていたのが，第 3期にな 中に発育 した仔虫は婚化脱殻する。本仔虫は，長経的

って，初めて，寄生虫の或種には，皮踊ーから侵入し感 0.3ミリで，食道は途中に切れ込があり，所謂ラブデ

染することが発見さ札た。而して，経腐感染の方法に テス型であるが 1回脱皮の後，身長 0.5ミリ内外に

も，大別して 2種あることが判った。その一つは， 成長し，食道は同筒状に変り，所謂フィラリア型仔虫

寄生虫自身が自動的に宿主の皮膚内に侵入する方法で， となり，全身被膜を以て包まれた被霊状態となり，食

他の一つは，他動的に!以やダニの皮束IJにより，宿主体 餌を取らず，従って，生長もせず，湿地，7.K滴，革禁

内に注入せられるのである。この 2方法には，色々逮 等に附着して宿主体内に入る機会を待っている。宰に，

ったことがあるので，別々に述べて見たい。 宿主に摂取せられて経口的感染をなすか，又は宿主体

自動的経腐感染ー(体内移行) に接触するにおよび， 経路的に感染するのである。

自動的に，経腐感染を行うことを発見したのは，ロ ロースの研究に従えば，皮届に侵入する際 3 第二回

ース (A.Looss)で，従来，鈎虫の感染は， 1886年， の脱皮を行い，皮下に侵入するや，淋巴道或は小静脈

ライヒテンステノレン (Leichtenstern)が，経口的で に潜入し，血道を経て，心臓に入り，更に肺臓に移行，

あることを唱え，相次いで， 1887年グラ ッシ ー (Gra ここに於て，Jill遂を雌れ肺房，小気管枝等に入り

ssi)， 1888年ペロンチ卜 (E. Perroncito)，これを追 定の発育変化を完了し，初めて，気管枝より気管を遡

証して以来， 一般に示認せられている。 ところが， り， P侠頭，咽頭，食道，胃を経て十二指腸に至り，成

1896年ロ ー久はエジプト で，同虫の培養や感染試験を 畏して母虫となる。 これが，ロ一久の発見した鈎仔虫

行っている際，偶然に該仔虫を含む水滴が自分の手甲 の宿主体内移行の径路の大要である。その後，サンポ

に落ちたのを，そのままにしていた処，水滴が乾くに γ(Sambon) は肺中の幼虫の一部は，再び心臓に帰

つれ，同虫の感染は，経口的であることを信じていた り，全身循環により腸壁に至り，腸管内に移行し，傍

氏は，何等意に介するところもなかった。後日，同虫 虫となる とし，氏の血管移行説を唱えた。かくして，

に感染したいことを知るに及び，慧眼なるこの研究家 鈎虫の移行路につドては，ロースの気管食道移行説と

-7ー目黒寄生虫館月報

['.: さ t[i ") ロ - 7.・r.~ ゴー

の切なる .ttUI~i(こよリて， 1896{1ニエチフト，カイ ロにあ

る医学校の数nとなり，生物学および従生虫学を担任

することになった。削来 18{下!日]，同地にあり主とし

て人(，];f，j生虫の r~f ~'i;をなし，主.~\.m 医学者として，偉大

なる -~;tIW，、 を政したのは，このJ切川のJ長約である。 1914

年，第一次W: ;III)、 iF~の ~hRに辿i出し， IIU回以乙に%1ら

ねばな 1)ぬ身となり ‘ 訟に |、判こも，氏のチーヲ~(r.ゴ生命

は ri:li~v) :IK悲と なリ :!，~f llJに州立政は，いとも i!l: 惨な

生泌で;')つ f二 (つづく)

サンポンのJ血管移行説があり ， フュノレレポン (Fulle-

born)の如さは，この両説の存在を認めている。

この鈎(子虫の宿主体内移行は，経口感染の場合に於

ても，全く同一である。かくて，ローズの鈎虫研究に

於ける経j薗'感染と体内移行の発見はz 誠に前人未踏の

大偉業であるのみならず，これが導火線となり，爾後，

幾多の重要事項が発見せられ，寄生虫学研究が，現今

の盛運を来たしたことを思うとき，口氏の偉勲を讃l政

せずにはし、られね。

ロースのこの業績に，誘導されたこ三の重要な例を

挙ぐればs 人畜に寄生する多くの鈎虫の感染移行経路

は，もちろん之に近似する東洋毛様線虫の如iき，論点

縁遠い葉線虫の如き，感染経路も移行路も全く鈎虫に

等しきことが追証せられ，また経口感染をする鯛虫の

如きが，思いもよら肉体内移行を行うが如き，会く口

氏の研究に誘致されたものである。また全く郎門を異

にする住血吸虫の感染が，経属的であると云う新発見

や3 経口的に摂取せられた肺吸虫の幼虫が，体内移行

をすると云う新発見も s 多少口氏の所説に関係がある

かも知れね。さいきん米国の P.Beaver一派により，

盛に研究されている Viscerallarva migrationなど

も，之に関巡し興味多きものである。

口氏の鈎虫研究についての功績を知らない者はない

が，口氏のその他の偉績については，知られてないの

が多いと思うから，口氏の生涯を偲ぶ一端として，少

しく述べておこう。

ロースは， 1861年(飯島先生と同年) 6月13日独乙

サク τ ンのケムニ γツ(Kemnitz)fこ生まれ， 1880年か

ら1884年まで(飯島先坐と同時期)ライブチヒ大学に

て，ロイカノレ卜教授の下に学び， 1885年 Beitrag巴zur

Kenntniss der Trematodenなる論文により 学l立を

it}，爾来主として，寄生虫動物学の研究に没頭せしが，

1893年一皮エデフトに遊ぶや，其の豊富なる寄生虫の

材料は氏の熱烈なる研究，心を刺激誘発し，また英政府

'一ム博蚕下主主大阪大学名誉教民

国立予防衛生研究所寄生虫部部長

慶応大学医学部教授

τ'7文部省刊行合〔助成費出版一

兵三~;hïl 土博

博士

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議

メー/¥

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林、j

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第 2巻「日本における寄生虫学の研究ー

B 5， 600頁，総アー ト紙

器更 目黒寄生虫館

医 歯 案出版株式会社

定価 3，000円

発行所

発売所

-8一￥.20 目 黒寄生虫館 月 報 昭和37年5月10日発行(毎月 1回10日発行)

目黒区内小中学校へ標本の寄贈

当館では，昭和 33年以来，目黒区内小中学校 34校

に，毎年寄生虫に関係した;標本の寄贈を行ってをた。

36年度も『肝iJrの生活史』の標本を組み合はせて寄贈

した。これには一般のデストマ生活史の説明材料も使

用されるものと期待している。

なお参考のために今年までのものを列挙すると次の

ようになる。

昭和33年度 .姻虫，鈎虫，焼虫の合成樹』齢j入標本

昭和34年度:毒蛾の生態

昭和35年度 :中間宿主となる貝類，シャイリカイ，

マメタニシ，カワ ニナ。

であった。

第31回寄生虫学会総会開催さる

4月 1日， 2日には千葉大学医学総で，第31回日本

寄生虫学会総会が開催され当館からも 3題の演題を呈

山した。なお当日亀谷館長は評議員に推選され，学会

と一層緊密な連絡をもって当館の事業を進めることが

111来るようになった。

「エキノコ ックス」パネル更新

開館以来，北大教授山下次郎博士によって企画され

以示していた 「エキノコックス」の資料が，既に改変

を要する段階にきたので，今回同教授の新しい構想に

より 2枚のパネノレが作製された。

標本および文献の寄贈(3 . 16-4 . 15)

3.17 相撲市米軍医学l肝究所より 「カニクイザノレ」の

内l臓ほか 6点

:3.22 干IJ問的一氏よりフ fリピン j立「カニクイザノレ」

自申告リ材料2点

3.27 上野科学社より「シロ チド リ」ほか 7点

3.29 新潟脊生虫予防会永崎忠彦氏より「新潟県にお

ける学校寄生虫の実態」ー縮。

3. 30 '({;U.J::E夫|事士より 「活性汚泥中の原生動物に関

する分JJi学 1~1'~{if[究第-.WJ

3.30 創期12広報課より「目梨区勢概要J1部

4. 3 宮崎一日151¥!]土より九州大学医学部 「待生虫教室

sfj，il1ilO也年記:よみL純 11鍬J11::1;

'1. :5 徳島大学Li1 LI寓!ii;I¥IJ:Lより「四国の風土病ー苛

生虫病を中心に一」ほか 8部

4. 9 小河原氏より「カレイ 」ほか19点

4.13 金沢文庫より 「金沢文庫研究」第8巻第 3号

4.13 広島松田鎖雄博士より「学童の寄生虫症の管

理J2部

短

3.16 館長，東京都術生局公衆術生部長目黒勝郎氏を

訪問。

3.16 亀谷俊也研究員，米軍医学研究所へ出張。

3.21 目黒寄生虫館集談会午後7時開始。

3.24 アメリカ科学財団 「白木における寄生虫学の研

究」第 2巻寄贈のためアメリカ大使館へ持参す

る(野k部理事)

3.29 「単包条虫および多包条虫」ノJ才、ノレ取替のため

デザイナー伊藤嘉久雄氏作業開始。

3.30 亀谷館長は野k部理事同伴で，目黒区教育委員

会小林教育長を訪問。区内小中学校へ標本34点

および寄贈目録を呈上する。

4. 1 日本寄生虫学総会(千葉大学医学部)目黒寄生

虫会館より全買出席。

4. 5 共同通信社原功氏来館。

4. 5 目黒保建所長渡辺清網博士来館。

4. 7 鹿児島大学医学部教授河部博士，北海道衛生研

究所大野博士，来館。

4. 9 日本寄生虫予防会事務局長国井氏厳父の逝去の

ため弔電を送る。

集 談 .6.. =

4.FJ 21日午後 71時より当館研究室にて開催。館の研

究活動，.tlli1i当・状況について各自忌僚のない意見の交挽

を行なった。ついで抄t流会にうつった。

「ツェツ ェパエについて」 亀谷 了

先般スーダンのカ ーノレクウムゴ、学で教搬をとってお

られる荘保博士から忠送された。 GlossiuaρalPalis，

G. mOl'sitansの1原不や，Trytalloso口7a gambiellsc

の謀本を利用して，アフリカにおける陸限病について

概況の説明を1Jった。

次回は 5月 四日 の予定。

東京都目黒区下目黒3ノ557・電話 (712)4432 財団法人 ・目黒寄生虫館 ・発行

開館 ・午前 11時~午後4時 ・月曜 ・祭日休館 館長 ・医博亀谷了，..編集野六部春登

ー&品手ーーー -ー 一一- J