平成29年度 -...

144
平成29年度 平成30年10月 (2018年) 岡山大学工学部

Transcript of 平成29年度 -...

  • 平成29年度

    教 育 年 報

    平 成 3 0 年 1 0 月(2018年)

    岡 山 大 学 工 学 部

  • ま え が き

    工学部長 冨田 栄二

    本年報は,平成29年度の教育に関する内容をまとめています。 教育に関する改善は,教務に関する活動とFD活動に大別できます。また,これらの活動

    内容に対してご指導やご意見を頂く機会として,工学教育外部評価委員会を設置し実施し,

    その内容を今後の活動に生かしています。 平成28年度から,全学的に4学期制になるとともに,授業時間が60分刻みになりまし

    た。基本的には,今までの90分授業相当分の内容に関して演習などを追加して120分で

    授業をすることになりました。かなり調整をしてより良くなってきたと考えております。 平成24年度後期から開始した経済学部との合同授業は,文理融合ということで,全学の

    みならず全国でも珍しいと思われる試みです。平成28年度まで1・2学期に実施していた

    「ものづくり経営論」は事情により取りやめにしました。3・4学期は継続して「実践コミ

    ュニケーション論」を行いました。工学部および経済学部は最も実社会に近い学部です。そ

    こで,両学部に共通的な話題を題材にして授業を実施しています。工学部と経済学部の学生

    の発想や考え方の相違があり,それが融合していくという面白い授業です。 さらに,留学生の受入および派遣に関しては例年以上に積極的に取り組み,人数は大幅に

    増加しました。今後,大学ではグローバル化がさらに進んでいくと思われます。 本年報に記載した項目以外に,教育に関する活動として,以下の項目も行いました。

    (1)岡山県工学教育協議会への参加 (2)オープンキャンパスにおける女子生徒を対象とした特別プログラムの実施 (3)夢ナビプログラムへの参画 (4)大学院生による母校訪問を通した広報活動

    (平成27年度(17校)から開始,平成28年度・29年度は20校) (5)高等学校進路指導担当教諭との懇談会(平成 29 年 6 月 23 日) (6)岡山県内工業系高等学校長との教育懇談会(平成 29 年 12 月 18 日) (7)enPiT-セキュリティ分野における人材育成 (8)学生フォーミュラ,ロボット研究会への支援 これらの多くの活動により,我々の教育を改革していきます。 工学部では,教育に関する賞として,3種類の賞を用意しています。卒業時の優秀な学生

    を表彰する優秀学生賞として9名を,また,1年~3年生で学業成績が優秀な学生27名を

    表彰しました。また,教育に貢献した教職員13名に教育貢献賞を贈りました。さらに,講

    義に関して学生から評価がよい教員11名にベストティーチャー賞を贈りました。ベストテ

    ィーチャー賞を受賞された教員には,公開授業をお願いしております。

    今後も,引き続き,さらなる改善に向けて頑張りたいと思います。

  • 工学部教育年報(平成29年度)目次

    まえがき

    1.工学部における教育改革

    1.1 FD委員会報告 ------------------------------------------------------------ 1

    1.2 教務委員会報告 ------------------------------------------------------------ 3

    1.3 工学教育評価外部委員会 ---------------------------------------------------- 9

    1.4 工学部共通科目7年間の取組みについて -------------------------------------- 14

    1.5 各学科における改革 -------------------------------------------------------- 18

    1.6 柔軟な専門分野の選択(転学科・転コース)------------------------------------ 25

    1.7 文部科学省教育プログラム enPiTについて ------------------------------------ 26

    1.8 経済学部との合同授業「実践コミュニケーション論」について

    ------------------------------------------------------ 32

    1.9 国際交流について(受入・派遣数)-------------------------------------------- 36

    2.ものづくりによる実践的な学生教育プログラム

    2.1 岡山大学フォーミュラプロジェクト ------------------------------------------ 40

    2.2 ロボコンプロジェクトの取り組み -------------------------------------------- 46

    3.インターンシップ実施状況 -------------------------------------------------------- 48

    4.工学教育の評価

    4.1 教育(入学生)アンケート報告

    4.1.1 工学部全体の概評 ---------------------------------------------------- 49

    4.1.2 アンケート内容(設問等)・集計結果 ---------------------------------- 50

    4.2 授業評価アンケート報告

    4.2.1 工学部全体の概評 ---------------------------------------------------- 61

    4.2.2 アンケート結果と授業改善 -------------------------------------------- 62

    4.2.3 アンケート内容(設問等)・集計結果 ---------------------------------- 70

    4.3 教育(卒業予定者)アンケート報告

    4.3.1 工学部全体の概評 ---------------------------------------------------- 85

    4.3.2 学科別アンケート考察 ------------------------------------------------ 87

    4.3.3 アンケート内容(設問等)・集計結果 ---------------------------------- 94

    4.4 同僚による授業評価(ピアレビュー)

    4.4.1 評価結果の概要 ------------------------------------------------------ 111

    4.4.2 評価結果と授業改善 -------------------------------------------------- 111

    5.高大連携事業(講師派遣・大学訪問)------------------------------------------------ 120

    6.工学部教育賞

    6.1 優秀学生賞 ---------------------------------------------------------------- 130

    6.2 学業成績優秀賞 ------------------------------------------------------------ 131

    6.3 教育貢献賞 ---------------------------------------------------------------- 132

    6.4 ベストティーチャー賞 ------------------------------------------------------ 133

    7.教務関係資料(学生の在学状況,進級状況) ---------------------------------------- 134

  • 1. 工学部における教育改革

    1.1 FD委員会報告

    平成29年度FD委員長 後藤 邦彰

    平成28年度から,岡山大学では60分の授業を単位とする「60分授業」,ならびに,「4学

    期制」に移行した。「4学期制」については,平成27年度より準備を進め,かつ,平成28年度

    入学生のカリキュラムは4学期制を考慮したものとしたため,昨年度は大きな混乱はなかった。し

    かし「60分授業」については,一部の教員の授業方法が対応できず,休憩を取らずに60分を超

    えて続く授業が散見された。これに対して教務委員会が対応し,注意喚起を行った結果,本年度は

    大きな問題はなかったと認識している。

    本年度の工学部おける教育改革については,従来からの教育改善に向けての取り組み,卒業予定

    者アンケートの分析,授業評価アンケートの実施と授業改善へのフィードバック,ピアレビューの

    実施,ベストティーチャー賞の授与と受賞者による授業公開を実施した。ベストティーチャー賞受

    賞者による授業公開について,昨年度の本委員会おいて認められたように,ピアレビューに併せて

    授業公開をした講義があった。その他の改革施策については,例年通り実施している。それぞれの

    概要については本年報の別章に記述する。

    なお,昨年度本委員会では,FD委員会と教務委員会との関係について議論し,現在の体制では

    実質的にFD委員会が機能しないため,学部長室会議において平成30年度以降に教務委員会とF

    D委員会を統合することを検討された。本件については学部長室会議にて検討することとなったが,

    検討の結果,FD 委員会は現行のまま存続することとなった。また,本年度委員会において平成30

    年度は平成30年度FD委員長と学部長室でFD委員会が取り組むべき案件を検討し,それを受け

    て平成30年度の早い時期にFD委員会を開催することが確認されたが,FD委員長と学部長室の

    協議により,早期開催は見送られている。その他,FD委員会での具体的な検討内容を委員会会議

    報告として以下に示す。

    <委員会会議報告>

    第1回FD委員会議事要旨(平成 30 年 2 月 13 日(木))

    審議事項:

    1 平成29年度ベストティーチャー賞受賞候補者の選出について

    議長より資料1に基づき説明があり,原案のとおり了承された。

    2 平成29年度年度計画最終報告(案)について

    議長の指名により学務課から資料2に基づき説明があり,協議の結果,最終実施状況の文案

    について一部修正・追記のうえ了承された。

    3 平成29年度教育年報の作成について

    議長より資料3に基づき説明があり,協議の結果,資料を一部修正のうえ了承された。また,

    【1.工学部における教育改革】に enPiT に関する項目を追加することとなった。

    4 学生による授業評価アンケートの質問項目の改定について

    - 1 -

  • 議長より資料4に基づき説明があり,本委員会でまとまった意見を教育開発センターへ提出

    することとなった。

    5 ベストティーチャー賞受賞者の授業公開結果について

    議長より資料5に基づき説明があり,協議の結果,新しく雇用された教員においてはベスト

    ティーチャー賞受賞者による授業公開へ積極的な参加を推奨することが確認された。

    6 平成29年度ピアレビュー実施結果について

    議長より資料6に基づき実施結果の報告があった。

    7 その他

    ・平成30年度以降のFD委員会と教務委員会との連携について

    議長より,平成30年度においてはFD委員会と教務委員会を統合しないことが報告された。

    また,FD委員会としての役割を明確にする必要があることについて議論の結果,平成30年

    度は平成30年度FD委員長と学部長室でFD委員会が取り組むべき案件を検討し,それを受

    けて平成30年度の早い時期にFD委員会を開催することが確認された。

    - 2 -

  • 1.2 教務委員会報告

    平成29年度教務委員長 坂倉 彰

    工学部教務委員会は,教育担当の副学部長,および各学科から4名または2名の計15名の

    委員で構成され,自然系研究科等学務課工学部担当の支援を受けながら活動している。平成2

    9年度の委員長は化学生命系学科の坂倉が担当した。教務委員会の主な役割は,全学教育推進

    委員会等の全学教務組織からの教養教育や全学教育に関連する諸事案への対応,当該年度およ

    び次年度以降の学部専門教育と教務の準備,実施,および改善である。

    工学部では,平成23年度からの4学科体制への改組に伴い,学部共通科目である専門基礎

    科目を1年次に重点的に配し,学科専門科目は2年次以降(一部の学科では1学期1単位程度

    を1年次から),コース専門科目は2年次3学期以降に配置したカリキュラムが適用されている。

    学びの強化と単位の実質化を具現化する教育改善として,平成28年度から60分授業・4学

    期制が始動した。年次進行ではなく,全学年が一度に新カリキュラムに移行するため,いくらか

    の問題の生じることは避けられないが,各学科の教務委員を中心とする各教員,および教務担

    当の事務職員の方々の努力により,工学部における60分授業・4学期制への移行は比較的円

    滑に行えたものと考えている。

    平成29年度の教務委員会では,SGUをはじめとする全学的な問題への対応や工学部内の

    教育改善に係る問題への対応,事務負担の軽減や経費削減に向けた検討などに多くの時間を費

    やし,議論を重ねた。また,平成29年度の教育見直しWGでは,主に,学部共通科目における

    TA雇用人数の検討を行った。

    以前から教務委員会とFD委員会とを統合してはどうかという意見が出されていたことを受

    け,平成29年度の教務委員会では,後藤FD委員長に出席していただいた。

    以下では,平成29年度の教務委員会の主な活動を項目別に整理して報告する。 (1) 60分授業・4学期制始動に関連した活動

    1)60分授業・4学期制始動に伴い生じた問題への対応 90分から60分×2と時間が長くなったことで,教員側は余裕をもって授業が行

    える,学生側は演習を実施することで理解が深まったなど好意的に評価する意見があ

    る一方,問題点もいくつか見られた。当初問題として挙がったのは,120分連続で休

    憩を取らないことや4限後に昼食休憩となる場合に生協の食堂が閉まっていることで

    あり,これらには早急に対応した。その後,教養教育科目の履修や専門教育科目の再履

    修がしにくいことが判明したが,これはカリキュラム移行時には避けられない問題で,

    個別に対処するより他なく,定常化に向かうにつれ次第に収束すると思われる。これに

    対し,休憩時間が10分となったことで講義室移動が困難になったこと(以前は15分

    であった)や,2年生では月曜と木曜に講義が集中し定期試験が過密日程で行われるこ

    となどは,直ちに改善することは難しい。問題は生じたものの,迅速に対応することで

    総じて大きな問題には至らなかったと思われる。 2)教育改善経費の配分

    60分授業・4学期制の始動を期に実施する授業改革・改善,学士課程教育の体系化

    に資する取組みとして,各学科から1件ずつ計4件の申請が認められ,合計 2,507 千

    - 3 -

  • 円が配分された。機械システム系学科では,大型液晶ディスプレイを導入することによ

    り,CAD における講義運営の効率化を目指す。電気通信系学科では,コース再編に伴い,プログラミングが得意でない学生に対する補助資料を作成ために TA を雇用する。情報系学科では,グループ型・参加型授業を促進するために教室レイアウトを変更す

    る。化学生命系学科では,学生実験を効率化することにより,少人数単位で安全に実施

    できるよう改善する。 3)教養教育科目の開講曜日における専門教育科目の開講

    1,2年生は週2日の教養教育科目の曜日が設定されたが,1年生で教養教育科目

    の大半を修得するため,2年次に空きコマが多く生じる問題が当初より指摘されてい

    た。これに対する検討が全学で行われ,平成29年度から2年次第3・4学期の火曜

    及び金曜の教養教育科目の時間帯において,専門教育科目を1週間あたり4時間まで

    開講することが可能となった。 4)学期末における特別研究の成績評価

    4学期制になり,従来の3月・9月末だけでなく,6月末および12月末にも卒業

    が可能である。これに対応するため,通年で評価される特別研究についても,1学期

    末,2学期末,および,3学期末に特別研究の成績評価を行えることにした。ただし,

    これは特別研究の履修期間が通算して1年以上の場合である。これは,4年次通年の

    演習科目にも同様に適用される。 5)保留評価の取扱い科目

    継続性のある講義内容で連続開講する科目に対し,前の学期での科目において保留

    と評価し,後の学期の成績を考慮して単位を与える(この場合には必ずC(60点)

    として評価する)ことができる。平成29年度は17科目で実施した。平成30年度

    は6科目増えて23科目となる。 6)副専攻コースの履修対象者判定基準

    履修可能な科目数が減少したため,副専攻コースの履修対象者判定基準を変更した。 (2)当該年度(平成29年度)および次年度(平成30年度)教務の準備・実施・改善に関する活動

    1)平成29年度行動計画とその実施 教務委員会が事業責任者となっている項目に関して,年度初めには平成29年度の

    行動計画を作成し,その計画に沿って該当項目を実施した。また,年度末にはその実

    施状況を報告した。 2)平成29年度新入生オリエンテーションの実施

    平成29年度新入生に対する各学科のオリエンテーションは,当該学科の教務委員

    が協力して実施した。この準備のため全学の教員研修(3月9日)に参加した。説明

    事項が多いため,平成29年度も例年と同様に2日間(4月1日,7日)に分けて実

    施した。岡山県警による申し出に基づいて,県警による指導(主に自転車マナーと生

    活マナー)を2日目のオリエンテーションで実施した。 3)グローバル人材育成特別コース

    平成25年度より開始されたグローバル人材育成特別コースの募集定員は,平成2

    7年度から全学で100名となったが,平成29年度の工学部新入生からは12名

    - 4 -

  • (機械システム系学科6名,電気通信系学科1名,化学生命系学科5名)の履修が決

    定した。なお,化学生命系学科の学生 1 名は,履修が決定したのちに,本人の意思により履修を取りやめた。

    グローバルスタディズ2については,平成27年度教務委員会において「履修生の

    研究室配属後の各指導教員にその内容を一任し,2単位相応の内容を実施する」と決

    定し,単位付与にかかる申し合わせが作成されている。グローバル人材育成特別コー

    スのカリキュラムが10月1日から改正され,入学年度にかかわらずグローバルスタ

    ディズ2が1単位での開講へと変更になったため,この変更に基づいてシラバスを改

    正した。ただし,年度途中でのカリキュラムの変更であることから,改正前のシラバ

    スに準じて2単位分の授業内容を履修している学生に対しては,担当教員と履修生と

    の相談に基づいて,2単位を修得することを認めることとした。グローバルスタディ

    ズ2は,学科専門科目(選択)の特別開講科目として実施した。 平成30年度より募集定員が全学で150名へと増やすこととなった。これを受け

    て,増員される50名に対する新プログラムついて工学部としてどのように対応する

    かを審議し,カリキュラムを作成した。 平成29年度の履修アドバイザーとして工学部からは,例年通り教務委員長(坂倉)

    と前年度教務委員長(豊田)の2名を登録した。 4)特別開講科目について

    特別開講科目として,例年通り平成29年度3・4学期の「実践コミュニケーショ

    ン論」を実施した。これ以外に,平成29年度では以下を特別開講科目として実施し

    た。 ・グローバルスタディズ2 ・4大学合同国際ワークショップ ・特別聴講学生を対象とした電気電子工学特別演習,機械システム工学特別演習 ・研究インターンシップ(派遣) ・研究インターンシップ(受入) ・工学部海外短期研修(DIG 台湾・台北,DIG バンコク 2018) ・化学生命系各論3 ・クロスサイトスクリプティング対策演習 ・安全性評価のための衝突型暗号攻撃演習 ・セキュリティ総論 E ・暗号ハードウェアセキュリティ演習 最後の4科目は,enPiT(高度IT人材を育成する産学協働の実践教育ネットワー

    ク)セキュリティ分野科目である。 5)ノートPC必携化

    ノートPC必携化については,前年度までに覚書を作成するとともに,ノートPC

    必携化WGにおいて各学科が推奨するノートPCの仕様を決定した。これを受け,平

    成29年度の新入生に対して「個人用ノート型パソコンの準備に関するご案内」を教

    務委員会で作成(学科主任会議で承認)し,合格通知に同封することで,新入生や保

    護者らに対して学部の意図を伝えた。新入生や保護者らからの個別相談に対応できる

    - 5 -

  • よう,自然系研究科等学務課工学部グループを問い合わせ窓口に,学科ごとの問い合

    わせ担当者を決めるなどして態勢を整えた。問い合わせはほとんどななく,またノー

    トPCに関するトラブルもなかったことから,新入生に対してノートPCを授業で使

    用する準備は整ったものと考えられる。平成30年度の新入生に対して送付する案内

    も前年度と同様に準備した。平成30年度以降,講義や実験・実習においてノートP

    Cを使用する事例を増やしていく。 6)TA研修

    全学TA研修会には,前年度同様,第1・2学期は微分積分1・2および線形代数

    1・2のTA,第3・4学期はプログラミング1・2および微分方程式1・2のTA

    が参加した。 7)入学者対象のアンケート

    「入学時アンケート(工学部版)」は,例年通り新入生オリエンテーション時に平成

    29年度入学生を対象に実施した。 「教育(入学生)アンケート」は,平成28年度入学生を対象に平成29年1月に

    実施され,平成29年度教務委員会にて分析した。分析結果は,「4.1 教育(入学生)アンケート報告」に記載しており,ここでは割愛する。平成29年度入学生に対して

    も,回収率を上げるため,例年通り必修科目である「工学安全教育」の授業の際に実

    施することとし,授業担当者には直接回収を依頼することとした。 8)学部ガイダンス科目のクラス数について

    平成29年度までは,学部ガイダンス科目を4クラスに分けて実施した。講義の効

    率化と教員の負担の軽減を目的として,平成30年度は2クラスで実施するよう決定

    した。 9)共通科目(専門基礎科目)のクラス数について

    これまでは1クラスあたりの履修生数が60名を超えないように配慮してクラス

    数を決めており,平成29年度は合計37クラスで実施した。平成30年度は,教員

    の講義負担を軽減することを目的として,1クラスあたり60名をわずかに超えるの

    を許容することとし,合計36クラスで実施することとした。 10)他学部(他学科)履修許可願の様式変更

    旧様式では,履修を希望する授業科目ごとに「卒業要件科目」か「卒業要件外科目」

    を区別する書式になっておらず,また,許可願を提出する学生が自分で卒業要件科目

    に当たるかどうかを記入する書式になっていた。これの様式を,履修を希望する授業

    科目ごとに「卒業要件科目」か「卒業要件外科目」を区別して教員が記入するよう改

    めた。 11)単位認定願いの様式変更

    他大学で取得した科目名と認定を希望する科目名とが明確に区別されるように書

    式を改めた。 12)教養教育科目担当の学科負担の平準化

    平成29年度教養教育科目学科負担平準化について審議し,に工学部共通科目を含

    めた全体で負担を平準化することで合意がなされた。これに基づき,化学生命系学科

    の線形代数 1・2 の1クラス分を電気通信系学科が担当した。

    - 6 -

  • 13)教務委員会のペーパーレス化 事務負担と経費の削減を目的として,平成29年度の教務委員会より資料を電子媒

    体で配布している。平成29年度もこのやり方を踏襲し,当日配付とする議題用紙,

    およびA3版資料を除き,教務委員には委員会前日までにPDF化された資料を事前

    配信した。 14)工学部で制作・配布する冊子の見直し

    平成28年度に,経費削減を目的として工学部で制作し配布する冊子の廃止を含む

    見直しを行い,平成29年度から教養教育科目シラバス冊子と在学生向けの時間割冊

    子を廃止した。新入生向けの時間割表は学生便覧に含め,在校生向けには,学科毎に

    時間割表(1学期毎にA4横置)をA3両面印刷したものを配布した。また,時間割

    のPDFファイルを工学部HPに置き,各学科のページからリンクを張りダウンロー

    ドできるようにした。この対応に対し,学生や教員から特に反対意見が出なかったこ

    とから,問題なく運用できたものと考えられる。そのため,平成30年度も同様の対

    応を取ることにした。 15)追加登録の原則不可による履修登録の厳格化

    学生の自覚欠如で生じる追加登録に伴う作業が事務負担を膨大に増やしている現

    状を鑑み,履修登録期間外の追加登録を原則認めないことを平成28年度の教務委員

    会において決定し,平成29年度から実施した。これに伴い,履修科目の変更届(様

    式)は廃止した。平成28年度までと比べて追加履修登録の申請が大幅に減ったこと

    から,「追加履修登録の原則不可」の効果が十分にあったと言える。次年度以降もこの

    措置を継続する。 なお,やむを得ない事情により追加履修登録を希望する場合は,A4サイズ1枚程

    度の上申書(任意様式,平成30年度より名称を「嘆願書」に変更する)を提出させ

    た。上申書に基づいて追加履修の可否を教務委員会にて審議し,やむを得ない事情が

    あると判断されたもののみ追加履修を許可した。平成29年度1年間の教務委員会に

    おける審議を通じて,追加履修登録の可否判断基準を確立した。平成30年度以降は,

    この判断基準に基づいて,各学科の教務委員が追加履修登録の可否を判断し,教務委

    員会においてその結果を報告することにした。 ある講義に対して10名以上の学生から上申書が提出されたことがあった。集中講

    義であり,学生便覧や時間割表の記載にわかりにくい点があったために多くの学生が

    履修登録のミスをしたものと考えられる。複数の学生から追加履修登録の上申書が提

    出された講義については,学生便覧や時間割表の記載の仕方やオリエンテーションで

    の説明の見直しをすることにした。 16)グローバル・ディスカバリー・プログラム

    グローバル・ディスカバリー・プログラム学生の卒業研究を受け入れるための条件

    について審議し,学科ごとに条件を設定した。また,各学科における連絡窓口教員を

    設定した。 17)コンピテンシーの設定

    ディプロマポリシー(DP)を明確化することを目的として,学科ごとにコンピテ

    ンシー(日本語版および英語版)を設定した。

    - 7 -

  • 18)岡山大学工学部工学教育連絡会議 教員と学生がカリキュラムの設計,運営,評価に関して意見交換を行い,学生の教

    育への関与と参画を行うことを目的として,岡山大学工学部に工学教育連絡会議を設

    置した。これを受けて,10月18日に工学部の教員5名および学生5名が出席して

    工学教育連絡会議を開催し,意見交換を行った。 19)その他

    平成30年度の授業科目に関する以下の要請に回答したほか,桃太郎フォーラムへ

    の参加依頼などFD関連の要請に協力した。 ・専門教育科目の全学開放調査 ・「高校生が岡大キャンパスで大学生と共に受ける授業」の科目提供 ・「大学コンソーシアム岡山」単位互換授業科目

    以上,平成29年度の各活動は,下記に示す教務委員会を開催しながら実施することができ

    た。 ・第1回教務委員会 平成 29 年 5 月 1 日(月) 14 時 00 分~16 時 30 分 ・第2回教務委員会 平成 29 年 5 月 29 日(月) 16 時 15 分~19 時 00 分 ・第3回教務委員会 平成 29 年 7 月 4 日(火) 15 時 15 分~17 時 15 分 ・第4回教務委員会 平成 29 年 7 月 31 日(月) 16 時 15 分~18 時 45 分 ・第5回教務委員会 平成 29 年 10 月 11 日(水) 14 時 00 分~16 時 35 分 ・第6回教務委員会 平成 29 年 11 月 16 日(木) 16 時 15 分~19 時 20 分 ・講義室調整会議 平成 29 年 11 月 27 日(月) 16 時 30 分~18 時 10 分(議事録なし) ・第7回教務委員会 平成 29 年 12 月 11 日(月) 16 時 20 分~18 時 20 分 ・第8回教務委員会 平成 30 年 1 月 30 日(火) 16 時 15 分~18 時 45 分 ・第9回教務委員会 平成 30 年 2 月 22 日(木) 9 時 00 分~10 時 50 分 ・第 10 回教務委員会 平成 30 年 3 月 26 日(月) 16 時 15 分~17 時 40 分

    平成29年度教務委員会の運営に当たりましては,副学部長(教育担当)の依馬先生,各学科

    の教務委員の皆様,自然系研究科等学務課工学部担当の皆様にたいへんお世話になりました。

    1年を大過なく終えられましたのは,偏に皆様のご支援の賜物と深く感謝申し上げます。平成

    30年度教務委員長を始めとする教務委員の皆様におかれましては,引き続き適切な改善と強

    力な運営をどうぞよろしくお願い申し上げます。

    - 8 -

  • 1.3 工学教育外部評価委員会

    副学部長 依馬 正

    平成29年度は,岡部一光委員長のもと,10月10日に第19回岡山大学工学部工学教育外部評価委員

    会が開催された。その概要を以下に示す。

    第19回岡山大学工学部 工学教育外部評価委員会 議事要旨

    日 時:平成29年10月10日(火)12:30~16:00

    場 所:岡山大学工学部1号館1階 大会議室

    出席者:19名

    外部評価委員(11人)

    岡部 一光(両備教育センター)

    乙部 憲彦(岡山県立瀬戸高等学校)

    加藤 珪一(株式会社アルマ経営研究所)

    櫻井 和光(旭化成株式会社 水島製造所)

    鈴木 幹久(三井造船株式会社 玉野事業所)

    高田 俊介(西日本電信電話株式会社 岡山支店)

    土家 槇夫(岡山県立倉敷青陵高等学校)

    野村 泰弘(三菱自動車工業株式会社 水島製作所)

    正木 朋康(株式会社中電工 岡山統括支社)

    三宅 新二(株式会社両備システムズ)

    吉田 寛(元財団法人岡山県産業振興財団)

    敬称略

    工学部教員(8人)

    冨田 栄二(工学部長,機械システム系学科 教授)

    依馬 正(副工学部長,化学生命系学科 教授)

    阿部 匡伸(副工学部長,情報系学科 教授)

    坂倉 彰(教務委員会委員長,化学生命系学科 教授)

    平田健太郎(機械システム系学科長 教授)

    豊田 啓孝(電気通信系学科長 教授)

    名古屋 彰(情報系学科長 教授)

    大槻 高史(化学生命系学科長 教授)

    陪席者:近常学務課長,岩本総括主査,江良主査,小田主任

    - 9 -

  • 【開 会】

    冨田工学部長から,出席に対する謝辞の後,忌憚のないご意見を伺い教育改善に役立てたい旨の挨拶が

    あった。

    【委員長及び議長選出】

    議事に先立ち委員長選出があり,岡部委員が委員長に選出された。続いて,議長の選出があり,岡部委

    員長が議長に選出された。

    岡部議長から挨拶の後,外部委員の自己紹介が行われた。

    【議 事】

    1 カリキュラムの現状と今後について

    依馬副工学部長から,資料1に基づき説明の後,質疑応答を行った。

    〔意見・質疑等〕

    ○アクティブラーニングの効果の把握を行っているか

    →アクティブラーニングの割合は増えているものの,現状においては,その効果の検証は行えてい

    ない。

    →これまで紙媒体により1対1で相互に評価を行うといったアクティブラーニングを行い好評で

    あったが,ノート PC を利用することで複数人から意見をもらうことが可能となり,よりよい状況

    となっている。

    ○資料中の学部卒業生はどのような割合か?また,その評価は?

    →学部卒業生は約30%だが、この資料では大学院修了者を含めての評価となっているため、学部

    卒業生に限った評価ではない。

    ○転学科の理由またその基準について

    →例年十数名が第2希望,第3希望の学科へ入学する受験生がいるが,転学科の実績では,例年1

    ~2名程度となっている。

    ○60分授業・4学期制は,岡山大学オリジナルか国立大学全体のことか?また従来の90分授業

    制,60分授業制の両方を体験した学生の反応はどうか?

    →4学期制を導入する大学は拡がっているが,60分授業制は岡山大学独自のものであり,全国初

    のケースである。また,学生への効果については,全学で調査をすすめている。

    ○アクティブラーニング(企業ではワークショップと呼んでいる)を用いることで理解し,意識が

    変わり,行動するという方向に向かうよう意識の変革を期待している。一方で,フリーライダーが

    発生するというデメリットもあるので,前向きに取り組む者とそうでない者との差がより顕著とな

    る傾向がある。

    2 各学科における教育改善への取組状況について ・改善へ向けての検討と課題

    資料2-1~2-4に基づき,機械システム系学科について平田教授から,電気通信系学科につい

    て豊田教授から,情報系学科について名古屋教授から,化学生命系学科について大槻教授から説明

    を行い,質疑応答を行った。

    - 10 -

  • 〔意見・質疑等〕

    ○過去の経験では,「壊れたテレビを直せ」という課題があった。つまり,DOが先にあり,PLANが

    あった。何らかの強制的な課題を与える方法はどうか?

    →最近の学生は,興味が多少あるといってもスキルが無いため,何らかの導入(お膳立て)をしな

    いと能力が発揮できない。強制的な課題を課すという方法は,今後検討したい。ただし,従来の学

    生と比べると違いがあるので,柔軟に対応していかなければならいので苦慮している現状がある。

    ○学修に対する動機付けという意味で1年次の研究室インターンは必要と考えられる。

    →機械システム系学科は,研究室インターンシップの導入について検討をすすめたい。また,制御

    工学を担当する者の観点からみて,モーターを見たことがない(印象に残っていない)学生が多い

    と感じる。仕組みに対してどのように興味を抱かせるかということが重要であるので検討をすすめ

    たい。

    ○自分自身が18,19歳の頃は,何をやりたいのかは明確ではなかった。第3志望制及び転学科

    制度の導入は,評価できるものと考えられる。

    ○志願する者が少ないのか?入学後のモチベーションが低いのか?

    また,前出の学生の性質の変化というものは,社会の変化が原因であるため仕方がない。ただし,

    小学校時代からコンピューターを使用している者が多数いるので,これらの能力は高いものの,機

    械をいじることであったり,プラモデルを作ったりしてきたという生徒の声を聞いていない。

    進路選択にあたり,目的意識がはっきりしている者としては,看護師,工学系ではバイオをした

    い,情報をしたい(生徒本人が想像する内容とは異なっていることを指導する)という声を聞くが,

    機械系と電気系が最後まで決まらないまま一般入試を受験している。さらに機械系と電気系を比較

    すると電気系は目的意識が若干高い。このため,1年次インターンシップは効果的と思われる。

    このほか生徒は,パンフレットを大変よく見ている。特に,オープンキャンパスに参加できない

    場合は,パンフレットのみを志望理由書を作成する際に参考とするケースが見受けられる。

    機械システム系学科ではコース名が大きく分かれているため,将来どうなるのかという疑問の解

    決につながりにくいコース名であるように感じる。電気通信系学科のコース名は,比較的わかりや

    すく感じる。

    →資料では志願者倍率の低下を示しており,入学後のモチベーションが低調であるという意味では

    ない。

    ○60分授業・4学期制の検証・評価方法が知りたい。また,近年の若手社員の特長として,得た

    情報を収集しまとめるという能力は育成されているものの,そこから何を考えるかという部分が不

    足していると思われる。その他,国際性涵養(グローバルに活躍できる研究者・技術者養成)のた

    めの英語教育としては、TOEIC400点の閾値は低すぎるので,点数を引き上げることは検討して

    いるか?

    →閾値を上げることを検討したが,留年する学生が増えるというデメリットが見込まれるため実施

    していない。具体的には,第3年次編入学生にとってはハードルが高くなり過ぎると考えられるた

    めである。ただし4年生にはTOEIC講座を無料で開講し,英語教育には力を入れているつもりであ

    る。しかしながら英語力の低い者を切り捨てることについては今しばらく検討する時間を要した

    い。

    - 11 -

  • ○女性教員,外国人教員の人数が少ないので増加を促進し,例えば広島大学との違いを明確化する

    ことはどうか?

    →女性教員の増加策については,割合は増えているものの,大学院博士課程へ進学する女子学生が

    非常に少ないという全国的な問題がある。

    →外国人教員の増加策については,割合は増えているものの,学内の各種会議は日本語で行われる

    ため,言語の壁がある。

    ○工学部パンフレットにおいて,材料,設計,加工,熱,流体,振動は,機械工学の基本であるが,

    世の中のハードウェアのほとんどが,機械工学の設計により出来ているということを何か上手にPR

    することができればよいと思われるため,上記の分野を並べることが高校生にとって取っつきにく

    くさせている原因になっているのかもしれない。

    ○必修科目を配置しない3年次2学期にどのようなプログラムを開発していますか?また,プロジ

    ェクトマネジメント,品質,生産性の管理についてはどのように教育していますか?

    →来年の6月から実施予定で,現在開発中である。

    →ソフトウェア工学,システムプログラミングで実施している。このほか大学院の科目で開講して

    いる。

    3 特色有る取り組みについて

    1)経済学部との合同授業

    阿部副学部長から,資料3-1に基づき説明を行った。

    〔意見・質疑等〕

    ○受講者に対して教員が多いが,負荷はいかほどか?

    →ご意見の通り,手厚い教育となることから教員の負担がかかる。

    ○よい取組であるので,さらに履修者数を増やすことを検討しては?

    →少人数グループの構成で全体人数は20名で固定している。これ以上の教員負担(コスト)をか

    けるのは困難である。

    ○資料によりますとコミュニケーションスキル,プレゼン発想法,論理的思考法、ファシリテーシ

    ョン技法の全てを教育していますか?

    →昨年は富士通LMが行った。詰め込みすぎの感があるため,内容の絞り込みを進めている。

    ○最終的には企画・提案まで行うことになっており,会社では30歳代でやっと対応できるので,

    非常に高度な研修であると思うが。

    →あくまでこの授業はプロセスを教育するものであり企画・提案は主目的ではない。

    2)在学生の母校訪問とプレゼンテーションを通じた実践型自己啓発教育

    依馬副学部長から,資料3-2に基づき説明を行った。

    〔意見・質疑等〕

    ○予算どれほどか?また,続けて拡大してはいかがか?

    →予算は約50万円で,旅費・謝金に充てている。拡大するよりは絞り込んで実施したい。

    ○受入側としては,生徒を集めること及び生徒を1時間拘束することになるし,逆にPRにならい

    ケースもある。受け入れる側の意見を聞き判断することも必要では?

    →受入高校の意見を聞きながら進めており,断られるケースもある。継続してPRしていきたい。

    - 12 -

  • ○派遣する学生の選抜方法は?また,高校側の対象者は何名程度か?また志願者数の増加等の効果

    はあったか?

    →候補者の中から良い人材を選択し,学生の意向も踏まえて決定している。また,分析は進めてい

    ない状況であるので,今後検討したい。

    ○対象者は1,2年生と思われる。実施年度の志願者倍率には影響しないので,対象者を2年生の

    理系か,1年生か等を比較して分析を進めればよい。

    4 留学生の受入と派遣について

    阿部副学部長から,資料4に基づいて説明を行った後,質疑応答を行った。

    〔意見・質疑等〕

    ○受け入れた留学生の進路としては,日本国内での就職か帰国しての就職か?

    →確定的なことは言えないものの,半々であると思われる。

    5 研究について

    冨田学部長から資料5に基づいて説明を行った後,質疑応答を行った。

    〔意見・質疑等〕

    なし。

    6 その他

    ・全体についての意見等

    ○広島大学は10万円の給付型奨学金を行っていると聞いている。岡山大学はどのような状況か?

    →現在のところ給付型奨学金制度はない。

    ・次回開催について

    阿部副学部長から,次回本委員会を来年度のこの時期に計画したい旨の提案があり,了承された。

    【閉 会】

    冨田工学部長から,長時間に亘る意見交換に対する謝辞,並びに,これら多方面の意見を今後の活動

    に反映させ,教育改善を図りたい旨の挨拶があった。

    - 13 -

  • 1.4 工学部共通科目7年間の取組みについて

    平成29年度教務委員長 坂倉 彰 (1) カリキュラム編成方針と工学部共通科目

    岡山大学工学部では,工学・技術を幅広い基礎から専門まで,学生がスムーズにステップアッ

    プして勉学できるように,平成23年度から4学科9コース体制へと改組した。また,平成29

    年度からは電気通信系学科が3コースとなり4学科10コース体制となった。これらの改組に伴

    い,以下のような方針のカリキュラムへと切り替えられている。

    ・ 1年次には学部共通科目として全学科共通の専門基礎科目とガイダンス科目(科目区分上

    は教養教育科目)を主として配置し,工学部の学生として修得すべき基本知識と工学部の全

    体像を学習する。

    ・ 細分化された各コースへの振り分けは2年次後期(平成28年度から2年次第3学期)開始

    時とし,基礎知識を蓄えてからの学生の選択希望を反映させる。ただし,一部の入試成績上

    位者は入学時のコース指定を可能とする。

    ・ 学科専門科目は2年次以降,コース専門科目は2年次後期(平成28年度から2年次第3学

    期)以降に配置し,また,他学科,他コースの専門科目も一定の範囲で受講できるようにする。

    ・ 全学科共通の専門基礎科目のうち,学科単位の題材で学習する方が効果的な科目は主とし

    て3年次に配置し,学科毎のクラス構成とする。

    ・ 上記により,学生の転学科,転コース希望に対する妨げを軽減する。

    具体的な工学部共通科目は,教養教育科目の一部と専門基礎科目であり,図1のように分類で

    きる。なお,平成28年度からの60分授業・4学期制への移行に伴い,従来の前期,後期で2

    単位修得の科目は1学期で1単位修得の科目に分割され,科目名の最後に1,2が付されて継続

    性のあることが示されている。また,ガイダンス科目の概論4科目は各1単位から各0.5単位

    となった。

    図1には,必修科目と選択科目の分類,学科混在のクラス構成かどうかの分類のほか,各科目

    の履修時期の例(概論4科目の第1学期前半,後半の配置は平成28年度のものであり,3年次

    の専門基礎科目の配置は学科によって異なる)も示している。

    図 1 工学部共通科目の分類と履修時期

    - 14 -

  • (2) 平成29年度までの実施状況

    図1に示した科目のうち必修科目は,配当年次の学生全員,すなわち約500名が受講する。

    ガイダンス科目の概論4科目は4クラス構成,微分積分,線形代数,情報処理入門(平成28年

    度からはそれぞれ微分積分1・2,線形代数1・2,情報処理入門2)は8クラス構成で実施し

    たが,担当教員数や配置可能な時限の制限からクラスにより2種の異なる時限での配置となった。

    工学基礎実験実習は実験室等の状況に応じて学科により異なるクラス分け方法と時限配置に,工

    学安全教育に関しては前半と後半とでクラス分けを変える構成にしている。

    選択科目に関して,平成23年度から平成29年度までの1年生における選択科目登録者の割

    合の学科別推移を図2に示す。凡例は平成29年度の科目名で示している。また,平成28年度

    および平成29年度に関して,科目の1と2で人数の違いはあるものの差は数名のため平均値を

    使用した。推奨科目として4科目以上を指定している機械システム系学科と電気通信系学科では,

    指定された科目以外をほとんど履修しておらず,年度による選択科目の履修割合の変動は,両学

    科ともそれほど大きくない。一方,推奨科目が2科目の情報系学科と化学生命系学科では,科目

    の選択が分散する傾向にある。平成28年度に,化学基礎が2学期に配置され,また60分授業・

    4学期制への移行に伴う教養教育科目の履修状況の変化があったため,これら2学科において物

    理学基礎(力学)1・2,化学基礎,微分方程式1・2の履修割合が増加した。 図3は,平成23年度から平成29年度までの1年生における選択科目登録者数の推移を示し

    ているが,各科目ともおおむね横ばい傾向にあると言える。また,図3の凡例にある[ ]内の数字

    は平成29年度の開講クラス数を示す。選択科目の開講クラス数,予測される履修登録者数に基

    づいて前年度に教育見直しWGならびに教務委員会において検討し,必要に応じて見直している。

    図 2 選択科目履修登録者の割合の学科別推移(実線は各学科の推奨科目)

    - 15 -

  • 平成29年度は,前年度から微分方程式1・2および物理学基礎(電磁気学)1・2を1クラス

    ずつ増やし,計37クラスで開講した。

    工学部共通科目の実施にあたり,異なる学科の学生間の交流が生まれやすくすることも目的と

    し,クラス構成はできるだけ学科混在となるようにしている。図1では実際に学科混在でクラス

    を構成している科目を示しているが,これらの科目のクラス構成方法に関しては,各年度で以下

    のような見直しを加えながら実施している。

    平成23年度

    工学部の新入生全員を50音順に並べ,科目毎のクラス人数に応じて,先頭から順番にクラ

    スを構成する方法を採用した。しかし,この方法では,規模の小さな学科ではクラス内に同じ

    学科の学生が極めて少なくなる場合があること,女子学生や留学生が1クラスに1名だけと

    いう状況も生じて孤立する恐れがあることなどの問題点が提起された。

    平成24年度

    上記の問題を改善すべく,まずは学科毎に8グループ(1グループあたり8から20名程度)

    を編成し,各学科のグループを組み合わせることによりクラスを構成する手法を採用した。グ

    ループの編成にあたっては,各学科の学生の50音順を基本とするが,女子学生や留学生はそ

    れぞれ複数人が同一グループに所属するよう配慮することとした。これにより前年度指摘さ

    れた問題点は軽減されたと思われる。

    平成25~27年度

    教養教育科目の英語必修科目が総合英語と名前を変え時間数が倍増したことにより,1年

    次の時間割配置に余裕がなくなるという問題が生じた。そこで,前期の情報処理入門,後期の

    プログラミングの2科目に関して,それぞれクラスに応じて2種の異なる時限を割り当てる

    ことで全学科混在のクラス構成を実現していた前年度までの実施方法はあきらめ,それぞれ

    2学科のみ混在のクラス構成とし,学科によりこれら科目の履修時限を特定化することで,残

    りの時限を総合英語に割り当てることとした。

    平成28,29年度

    60分授業・4学期制の実施に伴い第1学期の授業開始日が例年より1週間程度早まった

    ことから作業時間の確保が困難となったため,従来通り学科ごとのグループ編成基づく学科

    混在のクラス構成ではあるが,女子学生や留学生に対する配慮は行わなかった。ただし,各ク

    ラスの受講者数がなるべく均等になる配慮を行った。

    図 3 選択科目履修登録者数の推移

    - 16 -

  • 同一内容の授業をクラスにより異なる教員が担当することに関しては,担当教員間による意識

    合わせを十分行うことで,進度や評価基準に差異がでないよう配慮することとし,とりまとめ役

    として各科目には主査を定めている。

    (3) 今後の課題

    工学部共通科目の実施における問題点やその改善については教務委員会で,また,カリキュラ

    ム編成の問題点や今後のあるべき姿については,教育見直しWGでも議論された。それらの結果

    や論点のいくつかを以下に示す。

    ・ 平成23年度からの現行カリキュラムでは学科専門科目は2年次以降に配置されている。

    しかし,これは一部の転学科希望者への配慮のため専門の技術者・研究者を目指して入学し

    た多くの学生の勉学意欲を削ぐことが指摘され,従前より見直しの要望があった。開始から

    4年が経過した平成27年度から1年次前後期に各1科目まで学科専門科目を配置するこ

    とが認められ,平成27年度には電気通信系学科と化学生命系学科が前後期に各1科目を,

    平成28年度からは情報系学科が第1・2学期に学科専門科目を配置している。この他,平

    成28年度から60分授業・4学期制が開始し,さらに,化学基礎が2学期に配置されてい

    る。これらが工学部共通科目の履修や転学科に対しどのように影響するか,今後注視する必

    要がある。

    ・ 履修登録者数の増加に伴うクラス数の増加は,講義負担増に直結する。しかも,学科内で教

    員を確保できず多くの非常勤講師に頼っているのが現状である。工学部共通科目の開講ク

    ラス数はひとクラス辺りの履修者数が60名を超えないのを原則としていたが,非常勤講

    師の確保も困難な現状をも考慮し,平成30年度は,履修者数が60名をわずかに越えるの

    を許容して計36クラス(平成29年度から1クラス減)で開講することにした。この対応

    が講義の進行にどのような影響を与えるか,注視したい。今後も,将来を見据えてどのよう

    に対応していくかを慎重に検討していく必要がある。

    改組後の最初の入学者は平成26年度に卒業し,平成29年度は4期生を送り出したことにな

    る。工学部共通科目を履修した効果について,卒業生アンケートなどを活用して具体的に検証し,

    さらなる改善につなげることが,今後の課題として求められる。

    - 17 -

  • 1.5 各学科における改革 1 機械システム系学科

    (1)機械工学コース

    平成29年度FD委員 堀部 明彦

    機械システム系学科としての教育については,継続的に学科やコースの講義や学部全体の共通

    教育の現状を踏まえて改善しており,さらに平成 28 年度からの 60 分授業4学期制に対応してき

    た。全学や工学部共通の教務委員会等における教育改善に加えて,機械システム系学科機械工学

    コースとして独自の取り組みを継続的に進めており,それについて以下に述べる。

    1. 留学生-教員懇談会(開催日 2017 年 6 月 15 日)

    グローバル化に対応して,留学生が持つ問題点を把握するために,留学生との懇談会を継

    続的に開催している。これまでに生活や学業に関して意見を聞き可能な点は改善している。

    今年度の学生の参加人数は2名であり,岡山大学への進学理由,各国の状況,および講義や生活

    に対する要望などを聴取した。今後も,学生が学業に打ち込みやすいようにするとともに,

    岡山大学がグローバル化を進めるためのニーズや方法に関して情報を収集する予定である。

    2. 女子学生-教員懇談会(開催日 2017 年 6 月 15 日)

    機械系においても女子学生の割合を増やすべく,意見交換の場としての女子学生との懇談会を

    継続的に開催している。今年度の学生の参加人数は 12 名であった。学年を越えて学生生活の状況

    等について学生同士の意見交換を行うとともに,大学,学科やコースの講義などに関する要望な

    どを聴取した。さらに,コース選択や講義履修などに関する情報交換などを行い,女子学生のネ

    ットワーク構築の場になるように呼びかけをした。

    3. 就職に関する取り組み

    機械工学コースでは,「学校推薦」による就職割合が多く,学生の進路について非常にきめ

    細やかな指導をしている。2018 年 1 月 12 日には,「機械系エンジニアの歩き方 2018」を開催

    し,98 社の企業・卒業生等と在学生との交流を行った。この交流会は,企業で活躍されてい

    る機械系エンジニア(本学卒業生)と在校生が参加する実践型教育として今回で 12 回目の

    開催となる。現在取り組んでいる研究内容を先輩に発表しコメントや働き方を教えていただ

    いている。さらに,機械工学コースのインターンシップなども行い,非常に熱心に学生の進

    路に対するサポートをしている。

    なお,例年留年学生を少なくするために,次年度に進級出来ない学生とその保護者を対象にし

    た懇談会を開催していたが,今年度は該当学生数が少なかったことにより,アドバイザー等の個

    別対応を行った。

    - 18 -

  • (2)システム工学コース 平成29年度FD委員 五福 明夫

    システム工学コースでは,学生による授業評価アンケート,授業のピアレビュー,教育シ

    ステム学生懇談会,教室会議での教育改善に関する議論などの活動を実施して,継続的に教

    育改善を行っている。それぞれの平成 29 年度の活動とそれらによる改善点は以下の通りである。

    1. 授業評価アンケート 平成 29 年度の各学期の開講科目すべてに対して実施した。詳しくは4.2節で述べるが,回答率が 70%未満の科目はほとんどなく,また学生の評価も良好であった。

    2. ピアレビュー 詳しくは4.4節で述べるが,システム工学総合1(亀川哲志講師担当,5/16(火),微分方程式(崎山朋子助教担当,10/17(火)),知的制御システム(松野隆幸准教授担当,12/20(水))の 3 科目に対して実施し,授業担当者とピアレビューワが相互に授業改善について考えた。

    3. 教育システム学生懇談会 平成 29 年 12 月 5 日(火)18:30〜20:00 に,学生 14 名(1 年次生 3 名,2 年次生 3 名,3 年次生 4 名,4 年次生 4 名)と,コース長(平田健太郎教授),教務委員(松野隆幸准教授),学生生活委員(脇元修一准教授,中村幸紀講師)の出席により開催された。ア

    ンケートとその後の懇談により学生の意見を収集し,コースの考えや状況を説明した。 主な意見は以下の通りであった。

    学科・コース選択に関しては,ものづくりに興味があって学科選択した場合が多い,

    「システム工学で何ができるか」での研究室見学は好評であるが,受講者以外の見学機

    会の要望もあった。4 学期制については,大きな問題はないが賛否が分かれ,また休憩時間の取り方についての要望があった。また,講義に関しては,「専門英語」の専門性

    への疑問,旋盤による製作実習がシステム工学コースを選択すると途中終了となり不満

    などの意見があり,研究室配属については,研究室見学の方法に関する要望や配属にお

    ける面談の要望が出た。 その他としては,アドバイザー面談の日時の設定や RCCS 室の PC のログイン方法に

    関する意見があった。 4. 教室会議での教育改善に関する議論

    平成30年1月17日(水)のコースの教室会議において,学生生活委員より教育システム学生懇談会での学生意見が報告され,意見への対応策を検討し,例年2月中旬に開催の研究室紹介に引き続いて実施される研究室見学の時間が重複しないよう調整するこ

    とが提案された。また,「システム工学で何ができるか」で行う見学の形態も併せて引

    き続き議論することとした。 5. 各研究室における改善活動

    卒業研究を充実したものとするために,例えば,以下のように,それぞれの研究室が

    研究の分野や体制に応じた独自の工夫をしている。 研究活動に関連する導入教育

    ・ 研究室へ配属の学生に対して,5 月から 6 月にかけて博士前期 1 年次学生を講師とし て,研究室の研究分野に関連するセミナーを導入教育として実施。

    - 19 -

  • ・ 配属されたばかりの学生に対して,学生がスムーズに研究活動へ取り組める素養を養 うために,ロボット研究に必要な基礎知識に関する勉強や,その内容をもとにしたシ

    ミュレーションの作成及び課題発表までを行うゼミを実施している。 論文執筆やプレゼンテーションの指導

    ・ 配属された 4 年生には毎月研究報告書の執筆を義務付け,教員・大学院生が報告書を 確認・添削している。

    ・ 学会などにおいて発表がある際,学生のみでの質疑応答を含むリハーサルを行う。 ・ 年に 2 回,学会形式の研究発表会を実施し,論文執筆とプレゼンテーションを鍛錬。 ・ 2回の中間発表会に加えて6月に原稿およびスライドの書き方を身につけるための

    発表会を行った。 学生同士の切瑳琢磨の体制づくり

    ・ 学部生と院生でチームを構成し,日常的に学生同士で討議できる環境を整え,学生自 らが考える体制をとっている。

    学外者との議論の機会の設定 ・ 企業との共同研究の場を学生指導の一環として活用し,学外者と議論する機会を積極

    的に設けている。

    2 電気通信系学科(エネルギー制御コース,知能エレクトロニクスコース,ネットワーク工学コース)

    平成29年度FD委員 塚田啓二,横平徳美

    本学科では,電気電子工学コースと通信ネットワークコースの2コース制であったものを平成

    29年度からはエネルギー制御コース,知能エレクトロニクスコース,ネットワーク工学コース

    の3コースに分け,より専門性が明確になるとともに,科目選択性の自由度を高め,電気通信系

    全体の分野をいままで以上に幅広く学習できるようにした。そうした教育体制の編成を整えた中

    で,学科として取り組んだいくつかの項目について報告する。

    1.学生実験・演習の改革

    平成 27 年度入学生から,4 学期制導入とコース間の融合を意識し,学科専門科目の「電気通信

    系実験Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」で実施する実験テーマおよび実施方法について改編を行った。平成 28 年度に

    は 2 年生向けの「電気通信系実験Ⅰ,Ⅱ」が実施され,平成 28 年度の教育年報にて報告した。平

    成 29 年度では,3 年生向けの「電気通信系実験Ⅲ」が実施されたので,この内容について報告す

    る。本実験は,3 年生の 3,4 学期に配当し,3 年生の 1,2 学期までに座学で学んだ高度な知識や

    技術に関する実験が行えるようにした。また,実験テーマとして,個別テーマと創成テーマを準

    備した。個別テーマにおいては毎週(3~7 限)異なるテーマにて実験を行い,より多くの実験を

    経験できるようにした。従来は,1 テーマに 2 週の時間をかけ,1 週目に実験,2 週目にレポート

    指導としていたが,2 年生の「電気通信系実験Ⅱ」までにおけるレポート指導にて,学生は十分

    にレポート作成について学べているため,多くの実験を実施することを重視した実施方法とした。

    具体的なテーマとしては「同期機」,「誘導機」,「半導体電力変換」,「フィードバック制御」を実

    施した。「フィードバック制御」は,今回の改編にて新規に立ち上げたものであり,今日のあらゆ

    る電気機器・通信機器に広く利用されている自動制御に関する実験であり,電気系技術者として

    - 20 -

  • 重要なこの技術を身につけさせるためのテーマである。また,創成テーマでは新規に立ち上げた

    2 テーマについて,1 テーマあたり 4 週の時間をかけて 1 つの課題に取り組む方法で実施した。具

    体的には「ネットワークプログラミング」,「FPGA と CPU」である。前者ではインターネットにお

    ける機能あるいはサービスを,後者では論理回路を対象として,4 週の時間をかけて所望のもの

    を作り出す内容であり,創造性やデザイン能力を養うものである。個別テーマ,創成テーマとも

    に,おおむね良好に実施することができた。しかしながら,学生から難易度が高いなどの意見も

    出た。学生がより理解を深められるよう,教示方法などについて引き続き改善に取り組んでいき

    たい。

    2.特別講義の実施

    外部から招聘した講師による先端の研究について特別講演を実施してきた。いままで電気電子

    コースと通信ネットワークコースで別々に構成されていた特別講義を共通の講義科目として平成

    29 年度より実施した。この特別講演は,岡山大学の中にとどまらず,広く世の中でどのような研

    究開発の流れがあるかを,講義の聴講により電気通信技術に関する知識を深めることを目的とし

    ている。平成 29 年度は下記の 5 件の特別講義を実施した。

    (1)「大学のグローバル化とエネルギーや環境問題にまつわる触媒の話」長崎大,田辺秀二氏

    (2)「広がる光科学の地平線 RIKEN テラヘルツ波研究の最先端」理化学研究所,南出泰亜氏

    (3)「建築分野における電磁環境技術の適用について」環境調査事務所,吉野涼二氏

    (4)「先端無線情報通信エネルギー技術を用いた小型衛星による宇宙惑星探査」JAXA 宇宙科

    学研究所,川﨑繁男氏

    (5)「ニューラルネットワーク,深層学習,人工知能」名古屋大学,時田恵一郎氏

    特別講義の受講に当たって,時間割の目立たないところに記載してあるため,周知が十分でな

    く履修登録漏れが発生したので,オリエンテーション等で機会あるごとに学生への周知を徹底す

    ることとした。また,レポート提出期限を守らない学生もいて,今後開催毎に世話役の教員から

    の管理と当日の周知を徹底することにした。

    3. 会社見学会

    学生が多いため一つの会社での受け入れの混乱をさけるため,2 グループに分けてそれぞれ 40

    名程度で平成 29 年 10 月 18 日に見学会を実施した。

    (1)山陽電子工業 通信放送事業分野,産業機器事業分野

    (2)レクザム

    見学会を通して製品が世の中にでるための開発,生産などの流れを学生が理解するとともに,

    会社の方たちと技術開発や仕事の意味など多くのことに関して意見交換を行うことができた。

    4.「UNIX プログラミング」における演習環境の改善 平成 26 年度までのカリキュラムでは,科目「情報処理」において UNIX 系オペレーティングシ

    ステム(OS)の利用方法を,科目「プログラミング言語演習 I」において C++言語を用いたプログラ

    ミングをそれぞれ教えていたが,4 学期制に伴うカリキュラム改革により,平成 27 年度以降のカ

    リキュラムでは,これら 2 つの科目を 1 つの科目「UNIX プログラミング」に統合することとなっ

    た。平成 29 年度に科目「UNIX プログラミング」を初めて開講した。この科目では,まず,UNIX

    系 OS におけるファイルやディレクトリの概念の理解,テキストエディタの利用方法の習得,テキ

    - 21 -

  • スト処理方法の習得,シェルスクリプトの作成方法の習得に取り組み,その後,C++言語を用いた

    オブジェクト指向プログラミングの理解と C++言語による基本的なプログラムの作成方法の習得

    に取り組む。

    科目「情報処理」では UNIX 系 OS の利用環境として仮想化ソフトウェア VirtualBox 上の仮想マ

    シンを利用していた。しかし,平成 28 年度に行われた情報実習室 PC の刷新に伴い,情報実習室

    PC で VirtualBox を利用できなくなったため,かわりに平成 29 年度の科目「UNIX プログラミング」

    ではUNIX系 OSの利用環境として仮想デスクトップ環境(VDI)で稼働する仮想マシンを利用してい

    る。その結果,教員が設定した UNIX 系 OS の雛形を簡潔に受講生へ配布できるようになり,また,

    UNIX 系 OS が起動しない等のトラブルの発生頻度を減少させることができた。

    3 情報系学科(計算機工学コース・知能ソフトウェアコース)

    平成29年度FD委員 太田 学

    (1) 授業の改善

    平成29年度は,60分授業・4学期制へ移行して2年目の年である。情報系学科ではこの移

    行に合わせ,3年生が受講する実験科目を再編し実験テーマも一部見直した。平成28年度は移

    行初年度ということもあり,授業評価アンケートにおいて実験科目について複数の改善点が指摘

    されたが,平成29年度には改善され指摘された問題はおおよそ解消された。通常2年生までに

    履修する演習系科目については,情報系学科では1年生の時に,情報処理入門 1,2(工学部1年

    生が対象)やプログラミング 1,2(工学部1年生が対象)で WINDOWS 系,工学基礎実験実習(情

    報系学科1年生が対象)で UNIX 系を並行して学ばせている。60分授業・4学期制においても,

    このように異なる環境を早い時期に体験することは学生にとって有益と考えている。

    平成29年度もまた,入学したばかりの1年生に情報系学科の各研究室を訪問させ,各研究室

    の教員の指導のもとでグループワークとその成果発表を行わせるコンピュータ科学基礎 1,2 を実

    施した。平成28年度から導入したこの科目の主な狙いは,大学入学後の早い段階での主体的な

    学びの体験や,研究の一端に触れることによる将来の研究室配属を見すえた勉学の動機づけなど

    である。この授業はまた,工学部共通科目が多く学科独自の科目の少ない1年生が,情報系学科

    の教員や同級生と最初に繋がりを築く貴重な機会となっていることも分かってきた。ひきつづき

    新入生に対する教育効果を見守りたい。

    (2) 設備・環境の改善

    工学部情報系学科および大学院自然科学研究科計算機科学講座にふさわしい計算機環境を整え

    ることに注力している。学部の計算機設備については,平成25年度末に教育用計算機システム

    を更新し,大容量メインメモリ(512 GB)搭載計算用サーバ・高速通信路結合 PC システム・LSI 設

    計支援用計算機群などを専門教育などで使用している。一方,大学院における教育・研究環境の

    整備のため,平成27年度末に研究・教育用電子計算機システムを更新し,学科内で共用する高

    度情報教育用統合サーバシステムや,ビッグデータ処理のための GPGPU ワークステーションなど

    を設置している。

    情報系学科の学生が実験や演習で利用するプログラミング演習室や自習などで利用する図書閲

    覧室などの環境整備も継続的に行っている。平成29年度は,主に学生実験で使用する実験室の

    再整備をすすめた。大型の実験用作業机などを廃棄して講義室と同様の机と椅子を整備し,また

    - 22 -

  • プロジェクターとスクリーンを備え付けることで,この部屋を講義や講演会など学生実験以外に

    も使用できる多目的な講義室へと変えた。なお平成29年度に数が揃えられなかった机や椅子に

    ついては来年度以降整備していく予定である。

    4 化学生命系学科(材料・プロセスコース・合成化学コース・生命工学コース)

    平成29年度FD委員 後藤 邦彰

    化学生命系学科は,平成23年度の工学部改組に伴い,旧学科(物質応用化学科と生物機能工

    学科)の2体系のカリキュラムを融合して1体系にまとめる化学生命系学科第一期カリキュラム

    への移行を平成23年4月から平成27年3月までの4年間かけて完了した。第一期カリキュラ

    ムに完全移行後,平成28年度から始まるクォーター制および60分授業の開始を見越し,主に

    専門科目のカリキュラム変更を行った第二期カリキュラムが平成27年度から始まった。専門科

    目はほとんど2年生以降に実施するため,第二期カリキュラムは実質的には平成28年度から始

    まり,平成29年度は特別研究(いわゆる卒業研究)が中心となる4年生を除き,全ての学生の

    カリキュラムが第二期に移行した。なお,平成28年度からのクォーター制導入では,夏休みと

    合わせて学生の海外留学を促進するため,3年生2学期に必須科目を設定しないことが求められ

    たが,平成29年度はその移行期間として,化学生命系学科では一部科目が1・2学期通して実

    施されるセメスター科目も存在する。その科目も含めて,クォーター制に対応した第二期カリキ

    ュラムに完全に移行するのは平成30年度となる。

    平成28年度にはクォーター制よりも,90分授業から60分(×2)授業に初めて移行した

    ことで,90分続けて話す癖が治らない一部教員が休み時間を取らずに120分講義をしてしま

    ったことへの学生からの改善依頼があったが,本年度は工学部全体でこの点に対する注意喚起が

    行われたこともあり,特にこの第二期カリキュラムへの移行についての問題は生じていない。平

    成28年度には,90分授業が60分×2になり1科目につき 1.33 倍の時間をかけることができ

    るようになったことから,各科目が含む範囲の調整と,それに見合った科目名の変更をし,かつ,

    演習問題など行う時間を増やすといった改善を行った。平成29年度は,この改善が学生の理解

    を深める好結果をもたらしたことが,学生による授業評価アンケートの自由記述内容の変化から

    見て取れた。これは,大学全体での改革と,それに起因したカリキュラムの改善がもたらした良

    い面であると思われる。一方で,これら大きな改革に要する時間が,日常的な教育・研究の時間

    (身近な学生達と向き合う時間)を割いて生み出されている点は考慮すべきであり,改革を高頻

    度で行うと逆効果になりかねない。やはり,改革と定常状態とのバランスを考えるべきだと思わ

    れる。

    当学科の授業については,従来どおり,学生の記載した授業アンケートの結果に基づく改善と,

    ピアレビューにおいて指摘された個々の教員の問題の改善を行っている。本年度も,前年度の授

    業アンケート結果において,評価の低かった部分については原因を考察し,善処が行われた。ま

    た,ピアレビューの結果に基づいて,講義の聞き取りやすさ・プロジェクターの使い方・板書・

    講義資料などについて,当該教員による改善が行われた。また,当学科では時折,教員会議にお

    いて,学科全体の教育状況とカリキュラムについて振り返りを行っている。本年度,その振り返

    りの中で,平成23年度の工学部改組に伴う,前述の第一期カリキュラム実施以降と,それ以前

    の学生気質についての話となった。議論の中で,現在のカリキュラムを受けている学生は以前の

    学生と比べ,学科,および,所属コースへの帰属意識が希薄となっており,そのことが専門科目

    - 23 -

  • を学ぶ際のモティベーションの低下につながっているのはないかとの意見が出た。本年度は,こ

    の帰属意識の醸成を図るため,同一内容を複数クラスで実施する並行して実施する授業科目につ

    いて,これまでの学生番号順のクラス編成から所属コースに基づくクラス編成に変更した。この

    変更が学生意識に影響を与えるかは,今後注視していく。

    - 24 -

  • 1.6 柔軟な専門分野の選択(転学科・転コース)

    副学部長 田野 哲

    工学部では大学入学後における柔軟な専門分野の選択を可能にするため,1年次の学生に対し

    ては所属学科に関わりなく,ほぼ同一の教育を行っている.すなわち,1年次で習得する学習内

    容は学科に関わりなくほぼ同一であるため,1年次終了時であれば他学科に転学科したとしても,

    転学科先の学習に大きな支障がでないカリキュラムを提供している.これにより,学生は1年次

    終了時に一年間の大学教育で習得した学習内容を鑑みたうえで,より興味のある,あるいは自ら

    に適した学科に転学科することができる.但し,真摯に学問に向かい合った上での転学科検討を

    学生に促すため,1年次の学業成績だけに基づいて,希望先の学科が受け入れの可否を判断する.

    即ち,入学時の成績は一切加味しない.

    一方,各学科に所属する学生は2年次の第2学期終了後に,各学科に置かれたコースの一つに

    進むことになる.基本的には,学生の希望および大学入学後の1年半の学習成績に基づいて,コ

    ース配属が決定される.但し,3年進級時あるいはそれ以降でも,転学科と同様のポリシーに基

    づき,学生の希望と成績に応じて,転コースを許可している.

    平成 29 年度は1年から2年への進級時に3名の転学科希望者がいた.因みに,この3名のう

    ち2名は電気通信系学科の1年生であり情報系学科を希望,もう1名は機械システム系学科の学

    生でこちらも情報系学科を希望していた.しかし,いずれも転コースは許可されなかった.ちな

    みに,平成28年度に転学科を希望した学生は3名であり,1名は転学科希望学科に受け入れら

    れている.工学部として転学科できる体制を整えているが,転学科を希望する学生は減少し,こ

    こ数年は3名程度が続いている.又,実際に転学科が許可される学生数はここ数年1〜2名であ

    る.一方、転コースはここ数年来希望が出ていなかったが,平成29年度には電気通信系学科の

    2名が3年進級時に,電気電子コースから通信ネットワークコースへ転コースの希望が出された.

    そして,2名とも許可された.転コースに関しては平成29年度が特異的だったのか、今後増え

    て行くのか、動向を注視する必要がある.