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HA( )16 NA( )9 14420 1918

H1N1 2,000 4,00039 1957 H2N2 H3N2

H5N1,H7N9H5N1

H7N9560

HANature, 2012 H5N1

WHONature, 2012

H7N9 560 WHO

RNA 3 (PA, PB1, PB2)PA-PB1

PB1/PB2 Nature, 2008; EMBO J, 2009RNA

24 4 25 3

RNAPA-PB1 PB1/PB2

Nature, 2008; EMBO J, 2009

200in-silico

20 PA-PB1

RNA

96%

RNARNA

(1)RNA 3

(PA, PB1, PB2)

KAST 平成 25 年度研究概要 2014.8.26− 113 −

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PA-PB1 PA PB1

PA-PB1200

in-vitro

PA 200

. RNA PA-PB1

(2) RNARNA

. RNA

24 4 25 3

(1) RNA

PA-PB1

4 200PA

3

in-vivo

PA PB1

GST

(2)PA-PB1 A/H1N1

MDCK A/H3N2

H5N1 PA-PB1

25 (1) (2)

PA-PB1 200

RNA

1!

1! 37! 759 a.a!

716 a.a!1!

Nature. 2009

PA:50-256!

Endonuclease! domain

Nat.Struct.Mol.Biol. 2008 PB2:318-483Cap-binding! domain

PLoS Pathog. 2008

PB2:543-740RNA binding! domain

757 a.a!

Nature. 2008

PA:239-716!PB1:1-15

PA/PB1 complex

EMBO J. 2009

PB1/PB2 complex

PB1:678-757!PB2:1-37

PA!

PB1!

PB2!

KAST 平成 25 年度研究概要 2014.8.26− 114 −

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KAST 平成 25 年度研究概要 2014.8.26− 115 −

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抗体を用いた抗インフルエンザウイルス薬の開発

杉山佳奈子・浦野健

1.はじめに

インフルエンザはインフルエンザウイルスが感染する

ことによって発症する人畜共通感染症である。ウイルスが

感染すると、発熱、咳、関節の痛みなどの症状が現れ、た

いていの場合は 3 日~1 週間程度で完治する。通常の季節

性インフルエンザであれば、感染範囲も想定の範囲内でお

さまっており、多くの死者を出すこともなく数ヶ月程度で

感染は終息する。時折、非常に感染力や病原性の強いウイ

ルスが出現し、世界的な大流行(パンデミック)を起こすこ

とがある。近年、高病原性の鳥インフルエンザウイルスの

人への感染や、これまで用いられてきた薬剤に対して耐性

を持つウイルスの存在が確認されており、多数の死者を出

すようなパンデミックを引き起こすウイルスの登場が危

惧されている。起こりうるパンデミックに対応するため、

これまでに用いられてきた薬剤とは作用機序の異なる新

規の薬剤の開発が求められており、本研究室では、そのタ

ーゲットとしてインフルエンザウイルスのRNAポリメラ

ーゼに注目した。 インフルエンザウイルスは遺伝子として 1本鎖 RNAを持

つウイルスであるため、非常に変異を起こしやすい。実 際に、現在の薬剤のターゲットとなっている表面タンパ

ク質では、A 型インフルエンザウイルスの亜種の中でもそ

の相同性は 30%程度である。一方で、RNA ポリメラーゼ

の相同性は亜種間でも90%以上に保たれている。これは、

RNA ポリメラーゼがウイルス遺伝子の複製と転写を行う、

ウイルスの生存には必須なタンパク質であるためだと考

えられている。よって、このタンパク質を阻害することで、

ウイルスの増殖を高確率で阻害することができ、また、そ

の阻害剤はどのタイプのウイルスに対しても同様の効果

を発揮することができると期待されている。 本研究ではタンパク質の阻害方法として、モノクローナ

ル抗体を用いた。RNA ポリメラーゼを抗原として結合す

る抗体を作成し、その抗体が細胞内において RNA ポリメ

ラーゼの活性を阻害すれば、抗体そのものが薬剤となり得

るし、また、その結合部位が明らかになれば RNA ポリメ

ラーゼと抗体との結合に関与しているアミノ酸を用いた

ペプチド創薬研究や低分子化合物の in silico の構築も考

えられるためである。活性を阻害しなかった場合であって

も、結合が確認できればウイルスの検知や RNA ポリメラ

ーゼを用いた分子生物学的なマーカーとして研究に大い

に役立つ抗体を手に入れることができるため、非常に有効

な手段だと考えている。

2.実験及び結果

2.1 抗体の作成

抗原になる RNA ポリメラーゼとしては、本研究グルー

プで構造解析を行った PA-PB1 及び PB1-PB2のサブユニ

ット結合部位に加え、PA の Endonuclease ドメイン、PB1の C 末端側ドメイン、Cap 結合ドメインを用意した。

精製したRNAポリメラーゼをアジュバンドと共にマウ

ス(BALB/c、8週齢メス)に注射し、抗体価が上がってき

たところで脾臓を回収した。抗体を生産する B 細胞はそ

のままでは増殖できないため、増殖能を持つ細胞と融合さ

せ、HAT 培地で選択することで抗体生産細胞を作成し、

希釈法および ELISA、免疫沈降法を用いて、抗原に結合

する抗体を生産する単一クローンを分離した。分離した抗

体生産細胞をマウス腹腔内に注射することで、抗体を含ん

だ腹水を得た。結果として、PB1-PB2 や PB2 の Cap 結

合ドメインの抗体を得ることはできなかったが、PA-PB1の抗体が 13 個、PB2 の C 末端ドメインからは 7 個の抗体

が得られた。

Fig1. 抗体作成過程イメージ図 得られた腹水から、陰イオン交換カラム、ハイドロキシア

パタイトカラムなどを用いて抗体を精製した。得られた抗

体と抗原の結合を確認するために、各々精製したタンパク

質をモル比で 1:1 になるように混ぜ、超遠心分析を行っ た。超遠心分析によって結合が確認できたサンプルはゲル 濾過に通し、結合及び分子量の確認を行った。 超遠心分析、ゲル濾過の結果、PA-PB1 では 1 つ、Cap結合ドメインでは 2 つの抗体と抗原の結合が確認できた。

2.2 活性阻害能の確認

得られた抗体がRNAポリメラーゼの活性を阻害できるか

どうか確認するために、抗体を細胞に導入し、ウイルスの

感染を確認した。 まず、抗体そのものでは細胞に導入するには大きすぎる

ため、抗原結合部位(Fab)だけを切り出しビーズ法により

物理的に傷をつけた細胞に混ぜることで抗体を細胞内に

導入した。その後、インフルエンザウイルスを感染させ、

ウイルスの表面タンパク質である HA・NP・M1 を認識

する抗体を用いて、ウイルスを検出した。 その結果、抗体を組み込んでいない細胞と、Cap 結合

ドメインから作成した抗体を導入した細胞ではウイルス

が増殖したが、PA-PB1 に結合する抗体を導入した細胞で

は、ウイルスの増殖がみられなかった。このことからこの

PA-PB1 結合抗体は RNA ポリメラーゼの活性を阻害し、

ウイルスの増殖を防ぐことが明らかになった。 2.3 PA-PB1-Fab の構造解析

これまでの実験で得られたウイルスの増殖を阻害する

抗体が、実際にどのように PA-PB1 に結合し、その活性

を抑えているのかを解明するため、PA-PB1 および Fabの複合体の構造解析を目指し、実験を行った。 様々な条件での結晶化を行った結果、25%(w/v) PEG4,000、0.2M AmSO4を含む溶液中で結晶が得られた

が、その構造を解析した結果、結晶中に含まれていたのは

Fab のみであった。結合部位は明らかにできなかったが、

Fab の構造及び、抗原認識部位に位置するアミノ酸の候補

を特定することができた。 さらに、PA-PB1-Fab 複合体の溶液小角散乱を測定した

ところ、Fab は PA の Head ドメイン側に結合しているこ

とが示唆された。 2.4 ScFv(Single chain Fv)の作成及び複合体結

晶化 抗体をヒトに用いる薬剤として、また、PA 側をワクチ

ンとして活用するためには、抗体と抗原の結合部位の詳細

なアミノ酸情報が必要になってくるため、複合体構造は薬

剤の開発には必須である。 しかしながら、現在得られている PA-PB1 及び Fab で

は結晶が得られず、その構造が明らかにできないため、

Fab および PA-PB1 の改良を行うことにした。 Fab は Fig3 図に示すとおり、抗原結合部位(Fv)とその

台座となる部位に分かれており、その間は非常に自由度が

高く任意の角度を取れるようになっている。 タンパク質の結晶化において、こうしたタンパク質の動

きは難しい要素となるため、抗原結合部位だけを大腸菌発

現系を用いて作成した。 ScFv は Fv の H 鎖と L 鎖を Linker でつないだ物であ

る。これまでに構造等が解析された他種の ScFv では、こ

の Linker にグリシンとセリンが連続した 15 アミノ酸が

用いられている。そこで、当初はその条件に倣って作成し

、リフォールディング条件の検討を行ったが、可溶化タン

パク質を得ることができなかった。そこで、様々な条件検

討の結果、Linker を 17 残基に伸ばすことで、Refoldingにより、安定かつ PA-PB1 に強固に結合する ScFv を得る

ことができた。 しかしながら、ここで得られたサンプルからは結晶が得

られず、構造を解析するには至らなかった。

Fig2. 増殖実験結果 ウイルス感染 8 時間後に撮影 PA-PB1 抗体を緑、HA 抗体を赤で染色してある。

緑色の細胞の周囲には赤色のウイルスが出てきていない事がわかる。

KAST 平成 25 年度研究概要 2014.8.26− 116 −

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抗体を用いた抗インフルエンザウイルス薬の開発

杉山佳奈子・浦野健

1.はじめに

インフルエンザはインフルエンザウイルスが感染する

ことによって発症する人畜共通感染症である。ウイルスが

感染すると、発熱、咳、関節の痛みなどの症状が現れ、た

いていの場合は 3 日~1 週間程度で完治する。通常の季節

性インフルエンザであれば、感染範囲も想定の範囲内でお

さまっており、多くの死者を出すこともなく数ヶ月程度で

感染は終息する。時折、非常に感染力や病原性の強いウイ

ルスが出現し、世界的な大流行(パンデミック)を起こすこ

とがある。近年、高病原性の鳥インフルエンザウイルスの

人への感染や、これまで用いられてきた薬剤に対して耐性

を持つウイルスの存在が確認されており、多数の死者を出

すようなパンデミックを引き起こすウイルスの登場が危

惧されている。起こりうるパンデミックに対応するため、

これまでに用いられてきた薬剤とは作用機序の異なる新

規の薬剤の開発が求められており、本研究室では、そのタ

ーゲットとしてインフルエンザウイルスのRNAポリメラ

ーゼに注目した。 インフルエンザウイルスは遺伝子として 1本鎖 RNAを持

つウイルスであるため、非常に変異を起こしやすい。実 際に、現在の薬剤のターゲットとなっている表面タンパ

ク質では、A 型インフルエンザウイルスの亜種の中でもそ

の相同性は 30%程度である。一方で、RNA ポリメラーゼ

の相同性は亜種間でも90%以上に保たれている。これは、

RNA ポリメラーゼがウイルス遺伝子の複製と転写を行う、

ウイルスの生存には必須なタンパク質であるためだと考

えられている。よって、このタンパク質を阻害することで、

ウイルスの増殖を高確率で阻害することができ、また、そ

の阻害剤はどのタイプのウイルスに対しても同様の効果

を発揮することができると期待されている。 本研究ではタンパク質の阻害方法として、モノクローナ

ル抗体を用いた。RNA ポリメラーゼを抗原として結合す

る抗体を作成し、その抗体が細胞内において RNA ポリメ

ラーゼの活性を阻害すれば、抗体そのものが薬剤となり得

るし、また、その結合部位が明らかになれば RNA ポリメ

ラーゼと抗体との結合に関与しているアミノ酸を用いた

ペプチド創薬研究や低分子化合物の in silico の構築も考

えられるためである。活性を阻害しなかった場合であって

も、結合が確認できればウイルスの検知や RNA ポリメラ

ーゼを用いた分子生物学的なマーカーとして研究に大い

に役立つ抗体を手に入れることができるため、非常に有効

な手段だと考えている。

2.実験及び結果

2.1 抗体の作成

抗原になる RNA ポリメラーゼとしては、本研究グルー

プで構造解析を行った PA-PB1 及び PB1-PB2のサブユニ

ット結合部位に加え、PA の Endonuclease ドメイン、PB1の C 末端側ドメイン、Cap 結合ドメインを用意した。

精製したRNAポリメラーゼをアジュバンドと共にマウ

ス(BALB/c、8週齢メス)に注射し、抗体価が上がってき

たところで脾臓を回収した。抗体を生産する B 細胞はそ

のままでは増殖できないため、増殖能を持つ細胞と融合さ

せ、HAT 培地で選択することで抗体生産細胞を作成し、

希釈法および ELISA、免疫沈降法を用いて、抗原に結合

する抗体を生産する単一クローンを分離した。分離した抗

体生産細胞をマウス腹腔内に注射することで、抗体を含ん

だ腹水を得た。結果として、PB1-PB2 や PB2 の Cap 結

合ドメインの抗体を得ることはできなかったが、PA-PB1の抗体が 13 個、PB2 の C 末端ドメインからは 7 個の抗体

が得られた。

Fig1. 抗体作成過程イメージ図 得られた腹水から、陰イオン交換カラム、ハイドロキシア

パタイトカラムなどを用いて抗体を精製した。得られた抗

体と抗原の結合を確認するために、各々精製したタンパク

質をモル比で 1:1 になるように混ぜ、超遠心分析を行っ た。超遠心分析によって結合が確認できたサンプルはゲル 濾過に通し、結合及び分子量の確認を行った。 超遠心分析、ゲル濾過の結果、PA-PB1 では 1 つ、Cap結合ドメインでは 2 つの抗体と抗原の結合が確認できた。

2.2 活性阻害能の確認

得られた抗体がRNAポリメラーゼの活性を阻害できるか

どうか確認するために、抗体を細胞に導入し、ウイルスの

感染を確認した。 まず、抗体そのものでは細胞に導入するには大きすぎる

ため、抗原結合部位(Fab)だけを切り出しビーズ法により

物理的に傷をつけた細胞に混ぜることで抗体を細胞内に

導入した。その後、インフルエンザウイルスを感染させ、

ウイルスの表面タンパク質である HA・NP・M1 を認識

する抗体を用いて、ウイルスを検出した。 その結果、抗体を組み込んでいない細胞と、Cap 結合

ドメインから作成した抗体を導入した細胞ではウイルス

が増殖したが、PA-PB1 に結合する抗体を導入した細胞で

は、ウイルスの増殖がみられなかった。このことからこの

PA-PB1 結合抗体は RNA ポリメラーゼの活性を阻害し、

ウイルスの増殖を防ぐことが明らかになった。 2.3 PA-PB1-Fab の構造解析

これまでの実験で得られたウイルスの増殖を阻害する

抗体が、実際にどのように PA-PB1 に結合し、その活性

を抑えているのかを解明するため、PA-PB1 および Fabの複合体の構造解析を目指し、実験を行った。 様々な条件での結晶化を行った結果、25%(w/v) PEG4,000、0.2M AmSO4を含む溶液中で結晶が得られた

が、その構造を解析した結果、結晶中に含まれていたのは

Fab のみであった。結合部位は明らかにできなかったが、

Fab の構造及び、抗原認識部位に位置するアミノ酸の候補

を特定することができた。 さらに、PA-PB1-Fab 複合体の溶液小角散乱を測定した

ところ、Fab は PA の Head ドメイン側に結合しているこ

とが示唆された。 2.4 ScFv(Single chain Fv)の作成及び複合体結

晶化 抗体をヒトに用いる薬剤として、また、PA 側をワクチ

ンとして活用するためには、抗体と抗原の結合部位の詳細

なアミノ酸情報が必要になってくるため、複合体構造は薬

剤の開発には必須である。 しかしながら、現在得られている PA-PB1 及び Fab で

は結晶が得られず、その構造が明らかにできないため、

Fab および PA-PB1 の改良を行うことにした。 Fab は Fig3 図に示すとおり、抗原結合部位(Fv)とその

台座となる部位に分かれており、その間は非常に自由度が

高く任意の角度を取れるようになっている。 タンパク質の結晶化において、こうしたタンパク質の動

きは難しい要素となるため、抗原結合部位だけを大腸菌発

現系を用いて作成した。 ScFv は Fv の H 鎖と L 鎖を Linker でつないだ物であ

る。これまでに構造等が解析された他種の ScFv では、こ

の Linker にグリシンとセリンが連続した 15 アミノ酸が

用いられている。そこで、当初はその条件に倣って作成し

、リフォールディング条件の検討を行ったが、可溶化タン

パク質を得ることができなかった。そこで、様々な条件検

討の結果、Linker を 17 残基に伸ばすことで、Refoldingにより、安定かつ PA-PB1 に強固に結合する ScFv を得る

ことができた。 しかしながら、ここで得られたサンプルからは結晶が得

られず、構造を解析するには至らなかった。

Fig2. 増殖実験結果 ウイルス感染 8 時間後に撮影 PA-PB1 抗体を緑、HA 抗体を赤で染色してある。

緑色の細胞の周囲には赤色のウイルスが出てきていない事がわかる。

KAST 平成 25 年度研究概要 2014.8.26− 117 −

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2.5 PA の改良

抗体側では Fab 及び ScFv 以上に安定な構造が考えら

れないことから、結晶作成にむけ、PA を改良することに

した。これまでに用いていた PA-PB1 結合部位は RNA ポ

リメラーゼの中では比較的安定な構造体ではあったが、

PB1 なしではすぐに沈殿してしまうことや、結晶構造中

でも動きが大きく構造が定まっていない部分もあるなど

不安定な部分も見えていたため、PA のより安定な構造を

得ることは今後の研究にとっても非常に有意義なことだ

と思われる。安定な PA の候補として、小角散乱の結果か

ら、抗体が PA の Head ドメインに結合することがわかっ

ていたため、PA の Head ドメインのみの作成を目指した。

また同時に、H7N9 などの亜種への変更によって安定なタ

ンパク質を得られるとも考えている。すでに得られている

PA の構造を参考に、アミノ酸番号で 277-371_453-581 残

基、277-423_451-581 残基だけを発現させたもの(Fig4)を Head ドメインとして作成した。

まず、PA277-371_453-581 の発現及び精製を試みた。

371 残基と 453 残基は距離が離れており、1 本のタンパク

質としては作成できないことから、RBS(Ribosome Binding Site)を組み込んだ pCold Vector や pETDuet Vector 等を用いて 277-371 および 453-581 の 2 つのタン

パク質として共発現を行った。発現の結果、その多くが不

溶性であり、可溶性タンパク質として得られたものも精製

の間に 277-371 と 453-581 が分離してしまい、安定な構

造は形成していないことがわかった。 現在、より安定な PA を得るために残りの Head ドメイ

ンや亜種のPAPB1に関しての実験を進めている段階であ

る。 3.まとめと今後の予定

新規抗インフルエンザウイルス薬のターゲットとして

RNA ポリメラーゼとその抗体に注目して研究を行った結

果、ウイルスの増殖阻害能を持つ抗体を得ることができた。 また、増殖は阻害しないが、強固に結合する抗体に関して

は RNA ポリメラーゼ結合抗体として、特許を取得中であ

る。 今後、これらの抗体と RNA ポリメラーゼの複合体構造

を明らかにすることによって、新規抗インフルエンザウイ

ルス薬の開発を進めていくことができると考えている。

Fig4. 発現させた PA Head ドメイン部位 Head ドメインとして発現させた部位をリボン図で示した A)PA277-371、453-581 B)PA277-423-451-581

Fig3. Fab、PA-PB1 結合部位の構造 この図で PAの上半分にあたる部位はその形からHeadドメイ

ンと呼ばれており、小角散乱の結果から Fab はこちら側に結

合していることが明らかになった。

KAST 平成 25 年度研究概要 2014.8.26− 118 −

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【口頭発表】1. Sam-Yong Park,

Structural Studies of the Influenza RNA-polymerase for Novel Drug Design Meeting of the Italian, Spanish and Swiss

2.RNA

CBI 20132013 10

【特許】国内特許出願 1 件

2.5 PA の改良

抗体側では Fab 及び ScFv 以上に安定な構造が考えら

れないことから、結晶作成にむけ、PA を改良することに

した。これまでに用いていた PA-PB1 結合部位は RNA ポ

リメラーゼの中では比較的安定な構造体ではあったが、

PB1 なしではすぐに沈殿してしまうことや、結晶構造中

でも動きが大きく構造が定まっていない部分もあるなど

不安定な部分も見えていたため、PA のより安定な構造を

得ることは今後の研究にとっても非常に有意義なことだ

と思われる。安定な PA の候補として、小角散乱の結果か

ら、抗体が PA の Head ドメインに結合することがわかっ

ていたため、PA の Head ドメインのみの作成を目指した。

また同時に、H7N9 などの亜種への変更によって安定なタ

ンパク質を得られるとも考えている。すでに得られている

PA の構造を参考に、アミノ酸番号で 277-371_453-581 残

基、277-423_451-581 残基だけを発現させたもの(Fig4)を Head ドメインとして作成した。

まず、PA277-371_453-581 の発現及び精製を試みた。

371 残基と 453 残基は距離が離れており、1 本のタンパク

質としては作成できないことから、RBS(Ribosome Binding Site)を組み込んだ pCold Vector や pETDuet Vector 等を用いて 277-371 および 453-581 の 2 つのタン

パク質として共発現を行った。発現の結果、その多くが不

溶性であり、可溶性タンパク質として得られたものも精製

の間に 277-371 と 453-581 が分離してしまい、安定な構

造は形成していないことがわかった。 現在、より安定な PA を得るために残りの Head ドメイ

ンや亜種のPAPB1に関しての実験を進めている段階であ

る。 3.まとめと今後の予定

新規抗インフルエンザウイルス薬のターゲットとして

RNA ポリメラーゼとその抗体に注目して研究を行った結

果、ウイルスの増殖阻害能を持つ抗体を得ることができた。 また、増殖は阻害しないが、強固に結合する抗体に関して

は RNA ポリメラーゼ結合抗体として、特許を取得中であ

る。 今後、これらの抗体と RNA ポリメラーゼの複合体構造

を明らかにすることによって、新規抗インフルエンザウイ

ルス薬の開発を進めていくことができると考えている。

Fig4. 発現させた PA Head ドメイン部位 Head ドメインとして発現させた部位をリボン図で示した A)PA277-371、453-581 B)PA277-423-451-581

Fig3. Fab、PA-PB1 結合部位の構造 この図で PAの上半分にあたる部位はその形からHeadドメイ

ンと呼ばれており、小角散乱の結果から Fab はこちら側に結

合していることが明らかになった。

KAST 平成 25 年度研究概要 2014.8.26− 119 −