No.417 June 2014 - FujitsuNo.417 June 2014 アジア地域経済統合における2つの潮流と...

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ISSN 1346-9029 研究レポート No.417 June 2014 アジア地域経済統合における2つの潮流と 台湾参加の可能性 主席研究員 金 堅敏

Transcript of No.417 June 2014 - FujitsuNo.417 June 2014 アジア地域経済統合における2つの潮流と...

ISSN 1346-9029

研究レポート

No.417 June 2014

アジア地域経済統合における2つの潮流と

台湾参加の可能性

主席研究員 金 堅敏

アジア地域経済統合における2つの潮流と台湾参加の可能性

主席研究員 金堅敏

[email protected]

【要旨】

これまでの 10年間にアジアでの自由貿易地域形成は主に 2国・地域間で行われてきてお

り、FTA のネットワークも完成されつつある。しかし、アジア地域には規模の小さい経済

が多く存在し、発展段階も多種多様であり、また外資企業の大量進出によってサプライチ

ェーンやバリューチェーンも多数国・地域間にわたって構築されつつある。したがって、

これまでのような 2国・地域間の FTAから地域全体をカバーする地域統合の機運が生まれ、

交渉の段階に入っている。特に TPPと RCEPは 2つ大きな潮流になってきている。

他方、政治的な障害や域内産業調整の遅れなどからアジア域内経済統合における台湾の

参加が遅れている。台湾の FTA カバー率は 9.6%で周辺諸国と比べ明らかに小さい。台湾

当局は、1)中台(両岸)ECA交渉の加速、2)バイの FTAの推進、3)広域経済統合であ

る TPPと RCEPへの加入を同時に推進するという 3つの対策を打ち出している。

本稿では、アジア地域経済統合の進展や、台湾にとって最大の通商相手である日本(最

大の輸入相手)、中国大陸(最大の輸出相手)、韓国(産業のライバル)の FTA戦略の現状

や、広域経済統合としての TPPと RCEPの進展を分析するとともに、アジア地域経済統合

に向けての産業界からの視点、つまり、本国を拠点とするグローバルビジネス展開の制約、

グローバルサプライチェーン・バリューチェーンの円滑化、「スパゲティ・ボール現象」へ

の対処、サービス分野の自由化政策の加速、FTA活用率とその阻害要因など、を見た上で、

台湾に(1)中国大陸との経済統合を加速させること、(2)WTO モデルを徹して無用な政

治対立を避けること、(3)「原産地」と関係する制度的な革新や手続きの簡素化の 3点の示

唆を提示した。

キーワード 自由化率 FTAネットワーク グローバルサプライチェーン

スパゲティ・ボール現象 原産地証明

目 次

ページ

はじめに:問題意識--------------------------------------------------------------1

1. アジアにおける貿易自由化の進展----------------------------------------------1

2. アジア市場における米国のプレゼンスの低下と TPP の推進------------------------5

3. 周辺化を懸念するASEANとRCEPの推進------------------------------------------7

4. RCEP vs TPPそれとも RCEP & TPPか---------------------------------------------10

5. アジア地域経済統合への台湾の参加について-----------------------------------12

5.1.台湾の FTA締結状況とさらなる推進の課題------------------------------------12

5.2.アジアメガ FTAへの参加に向けて検討されるべき事項--------------------------14

5.3.分析から得られる示唆-----------------------------------------------------20

主な参考文献------------------------------------------------------------------23

1

アジア地域経済統合における 2つの潮流と台湾参加の可能性

はじめに:問題意識

近年、世界中で地域経済統合あるいは自由貿易地域の形成が加速している。これは、2001

年に開始された WTO ドーハ・ラウンド交渉が、2008 年に妥協目前にまで至りながらも、

先進国と途上国との主張の隔たりを解消できず、2011 年末に、近い将来の妥協を断念した

反動であろう。

これまでの 10 年間にアジアでの自由貿易地域形成は主に 2 国間あるいは国・地域間ある

いは 2 地域の間(バイ)で行われてきた。FTA のネットワークも完成されつつある。しか

し、アジア地域には規模の小さい経済が多く存在し、発展段階も多種多様であり、また外

資企業の大量進出によってサプライチェーンやバリューチェーンも多数の国・地域間にわ

たって構築されつつある。したがって、これまでのような 2 国・地域間の FTA から地域全

体をカバーする地域統合の機運が生まれ、交渉の段階に入っている。環太平洋経済協定(TPP、

Trans-Pacific Partnership)と域内包括的経済連携 (RCEP、Regional Comprehensive

Economic Partnership)は、アジア地域経済統合の 2 大潮流として注目されている。TPP と

RCEP は、構成国・地域によって重なる部分もあるが、主要構成メンバーが異なっており、

自由化の方針やアプローチ方法にも相違がある。したがって、TPP と RCEP が対立的に見

られる側面もあるが、アジアを中心とする環太平洋経済統合へ発展していくことが期待さ

れている。

他方、両岸関係に由来する政治的な障害や、台湾内部の政治安定性、市場開放に対する

抵抗などの理由から、アジア経済統合プロセスへの台湾の参加は遅れてきた。2010 年にお

いて経済協力の枠組み協定(ECFA)の締結など、両岸関係が融和の方向に向かい、それに韓

国などの FTA 締結などに刺激され、台湾当局による FTA 締結への取組みが加速された。

2013 年にニュージーランド、シンガポールとの経済連携協定の締結にこぎつけた。さらに、

台湾は、上述した TPP や RCEP への参加をも目指しはじめている。最近では、ECFA の下

での両岸サービス貿易協定の締結に関して台湾内部で一部の反対意見が噴出し、アジア域

内経済統合への台湾の参加に影響が出るような出来事もあった。はたして台湾は、アジア

地域統合への参加に再び遅れることになるだろうか。

本稿では、以上のような問題意識を下に、アジア地域経済統合の 2 大潮流を検証すると

ともに、地域統合の流れに台湾が合流する可能性について検討し、通商当局や産業界に示

唆を提起する。

1.アジアにおける貿易自由化の進展

実際、欧州や北米地域の経済統合と比べ、遅れてきたアジア域内の経済統合は、2000 年

ごろから日中韓などのアジアの主要経済によって推進されてきた。

2

中国は、2000 年代に入ってから FTA 戦略を積極的に推進するようになってきている1。

その要因の 1 つは、WTO の下でのさらなる自由化プロセスが立ち往生しているとともに、

世界各国、とりわけ欧米諸国の中国製品に対するダンピング措置の多発や中国投資に対す

る抵抗が多く見られ、中国の貿易拡大に対する障害が生じているからである。より重要な

背景には、FTA の持つ経済的な意味に止まらず、アジア近隣地域における「中国脅威論」

の解消や、自国が経済開発に専念できるような周辺地域と安定した関係を構築するための

ツールとして FTA を活用しようとしているためである。つまり、中国の FTA 戦略は、自

国の経済的利益を追求する一方、対象国への利益供与・利益創出により自国の政治や安全

保障の実現を達成するために展開されている。いわゆる「カネで安全を買おう」という発

想である。これは米国の FTA 戦略思考に近い。

しかし、中国が締結した FTA も、自由化レベルが比較的低いといわざるを得ない。実際、

もっとも成果を上げていると評価される中国・ASEAN の FTA(ACFTA)についても数多く

の例外品目が設けられている。中国は 161 品目、ASEAN 諸国では 1,197 品目が指定され

ている。これらのセンシティブ品目で関税をなくす必要がなく、高度なセンシティブ品目

では 50%まで維持できる。しかも、これらのセンシティブには、数多くの工業製品が指定

されている。たとえば、カラーテレビや自動車、その他の家電製品を高度センシティブ品

目として指定している国が多い。したがって、ACFTA は、成果を収めているが、質の高い

自由貿易協定とは評価できない。

もちろん、中国当局は、低いレベルの貿易自由化に満足しているわけではない。習・李

政権になってから「高いレベルの自由化」を実現する政策が取られている。たとえば、米

中、中欧間の高水準の投資協定交渉開始が正式に合意された。高水準の投資協定で言う「高

水準」とは、「投資前の内国民待遇」(Pre-establishment National Treatment)と「ネガテ

ィブリスト方式」(Negative list)を原則とする約束をさす。中国は、WTO での約束や 150

以上の 2 国間・地域間投資協定において「投資前の最恵国待遇」(Pre-establishment Most

Favored Nations Treatment)は与えているが、内国民待遇については「投資後」

(post-establishment)しか与えていない。また、中国は外国直接投資に対して一部の産業を

除いた産業の自由化(「ポジティブリスト」)しか交渉していなかった。「ネガティブリスト」

を受け入れたことは、全産業への投資可能が基本でリストに載せる分野だけが例外とする

ことを意味する。つまり、中国は、日本の TPP 参加議論で言う「聖域無き投資自由化」(オ

ン・ザ・テーブル)に同意したのである。また、ACFTA のバージョンアップにも取り掛か

っている。中国当局は、将来の高い水準の自由化に備えてすでに国内の制度改革に着手し

ている。その代表的な事例は、2013 年 9 月 29 日に発足した「中国(上海)自由貿易試験

区」である。

2014 年 3 月に開催された全国人民代表大会で行われた李克強首相の「政府工作報告」に

て「高い基準の自由貿易区設立に積極的に参加し、中米、中欧投資協定の交渉を推進させ、

1 詳細は、金堅敏(2013)「中国のアジア統合戦略:FTA、RCEP、TPP」を参考されたい。

3

韓国、オーストラリア、湾岸諸国(GCC)等との自由貿易協定の交渉プロセスを加速させる」

ことを謳い、貿易・投資自由化の推進に一層力を注ぐことになっている。

他方、世界貿易の自由化による拡大のメリットを最大限活用して大きな経済発展を遂げ

てきた日本では、GATT/WTO 体制を重んじてきたが、WTO ドーハ・ラウンドの頓挫は、

日本を EPA/FTA のアプローチに向かわせた推進力となった。また、地域経済統合の代表

例として EU、NAFTA、AFTA が進展し、中国と ASEAN の自由貿易協定の締結は、日本

にとって大きな刺激となった。EPA/FTA は逆らえない世界の潮流であり、自由貿易協定

の遅れや自由化レベルの低さに対する認識は、産業界、政府を含む日本社会全体として共

有されていた。2010 年 11 月 9 日に日本政府は、「包括的経済連携に関する基本方針」を閣

議決定し、「世界主要貿易国との間で、世界の潮流から見て遜色のない高いレベルの経済連

携を進める」と定めた。特にアジア太平洋地域は日本にとって、政治・経済・安全保障上

の最重要地域であり、FTA の優先地域として取り組みはじめた。

安倍政権になってからは、経済連携 EPA に対する積極的な姿勢が一層明確になり、2013

年 6 月 14 日に閣議決定された「日本再興戦略」において「2018 年までに、貿易の FTA 比

率を現状の 19%から 70%に拡大することを目指す」と数字目標まで決定された。具体的に

は「TPP、RCEP、日中韓 FTA、日本 EU・EPA 等の連携交渉を推進し、世界の主要な国々

との経済連携を深めるとともに、投資協定の締結促進や、租税条約ネットワーク拡充のた

めの取組みを加速する」となっている。さらに、2018 年の数字目標(KPI)を達成させるため

には、中短期的な工程表まで作成して推進している。また、日・インドネシア EPA のよう

な自由化レベルの比較的低い既存の EPA をグレードアップする試みも行われている。

しかし、通商交渉の進展は、紙ベースでの戦略や工程表で日本側一方だけでは決められ

ない事情がある。TPP の合意が数回にわたって延期されたのは、その証となろう。また、

交渉の進展に比べ、日本国内の規制改革や構造改革が進んでおらず、国内の反対や抵抗に

より、主導的に妥協に踏み込めない事情もある。この意味で、基本合意に達した日本・豪

州 EPA は、これまで日本が踏み込めなかった農産物(特に牛肉)について関税の引下げに合

意したのは大きな前進であり、日本の EPA アプローチの転換点になるのを期待したい。

韓国も、日本と同様 1990 年代後半まで GATT/WTO 体制に重きを置いていた。欧州の

地域統合や北米自由貿易協定(NAFTA)の進展で、通商国家である韓国でも産業競争力維持

の観点から主要国と FTA を締結する思いは生まれたが、国内抵抗などから大きな進展はな

かった。しかし、アジア通貨危機に遭遇し、構造改革の一環として市場開放と FTA への取

り組みにシフトするようになった。つまり、IMF 支援体制の下で韓国は、自国産業競争力

と経済競争力の重要な政策手段として FTA の締結とそれに伴う貿易自由化を推進せざるを

得なかった側面がある。同時に、韓国は FTA 締結を通じて国内の経済制度やシステムを先

進国並みに整備していこうという国家近代化戦略さえ目論んでいる。

特に、中国と ASEAN の FTA 締結(2002 年)に刺激され、2003 年9月に「FTA 推進ロ

ードマップ」を作成し、「同時多発的」な FTA 交渉戦略が行われるようになった。FTA 交

4

渉の優先順位は、巨大経済圏、資源国、地域中心経済となっている2。このような FTA 戦略

は、韓国企業に世界主要市場へのアクセスを保障するとともに、同時に東アジアの FTA 中

心国家を目指す目標もあった。この戦略の下で、韓国は、米国や EU との大型 FTA を発効

させており、中国との FTA も精力的に行われている。韓国は、もはやアジアにおける FTA

締結先進国となった。日本や中国の FTA 締結優先順位と異なり、韓国の戦略は大型経済と

の FTA 締結を優先したのである。国民の理解と支持が FTA 戦略を成功に導くために必要

不可欠だと理解した韓国政府は、2004 年 6 月に「自由貿易協定締結秩序規則(大統領令)」

を制定して、FTA 推進過程の透明性確保や利害関係者を含む多様な意見・オピニオンを収

集して対話を積極的に行ってきている。2014 年 3 月には「通商条約国内対策委員会規則」

に基づく「通商条約国内対策委員会」を立ち上げ、FTA 締結にかかわる国内情報の収集・

提供、産業調整・競争力強化対策・支援制度などについて対策を充実させている。

図表 1 が示すように、日中韓の三国は、それぞれ異なる国や地域と FTA を締結している

が、ASEANが1つの重点的な取り組み地域としてFTAを締結しているのは共通している。

ただし、FTA 締結の数量では日本と中国は韓国より多いが、メガ FTA は締結していないの

で、国内外へのインパクトはプラスの意味でもマイナスの意味でも小さいと考えられる。

(出所)各国公開資料より

他方、図表 2 が示すように、全貿易額における FTA 適用貿易のシェアで表す FTA カバ

ー率で見ると、韓国は、主要国・地域の中でもカバー率が高いが、主要貿易相手国である

中国・日本との FTA を結んでいないので、FTA カバー率は思うほど高くはない。また、日

本の FTA 締結はかなり遅れていることが窺える。これは、日本が経済規模の大きい国(米

欧中国)や上位の貿易相手(韓国・台湾などの周辺国・地域、オーストラリア・サウジアラ

ビアなどの資源国)と FTA を結んでいないからである。したがって、日中両国にとって TPP

や RCEP、日中韓 FTA はともに市場統合のための重点であり、遅れた FTA 戦略を挽回で

2 Kim,Myoung Ah (2014) 「韓国的 FTA 促進現状和戦略」

5

きるかどうかの試金石となる。

(出所)日本経済新聞 2014 年 4月 26日(朝刊)

2.アジア市場における米国のプレゼンスの低下と TPPの推進

ところで、アジア域内経済統合の進展や相互依存関係の進化とは裏腹に、2000 年代後半

から米国は、成長するアジアでの米国のプレゼンスが大きく低下し、高度成長を続けてい

る中国のプレゼンスが急拡大したのに気づいた。図表 3 が示すように、米国とアジア関係

国との貿易緊密度をあらわす指標として輸出貿易結合度で見れば、2000 年に 1.0 以上であ

った国々の大部分は、1.0 以下となってしまった。逆に、中国との貿易結合度は大幅に上昇

した。米国と対照的に、アジア域内への統合を強めた日本は、大きなプレゼンス低下は見

られなかった。

そこで米国は、2008 年 2 月に成長するアジアをつなぎ止める手段として TPP に参加す

る意思を表明し、サブプライム危機を脱却するために必要な雇用拡大や輸出拡大を目指し

て、アジア諸国の市場開放のための TPP を主導して推進するようになった。

米国のメディアは、TPP はアジア地域における中国の経済的影響力に対抗するために用

いられると示唆しており、オバマ大統領も選挙の演説で、中国に国際貿易ルール(米国の

設定するルールと解されよう)を遵守するようプレッシャーを与えるために TPP を推進す

ると言明している。例えば、米有力シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所(Peterson

Institute for International Economics)の貿易専門家は「将来の経済制度設計において中

国に対抗するため、米国はアジアで米国の「旗」(American flag)を掲げようとしている」

と中国の影響力を抑えるために TPP を利用しようとする考え方を表明している3 。

3 Bob Davis (2011) “In trade Talks, U.S.Targets State Subsidies” WSJ Oct 26,2011;

6

出所:「ジェトロ世界貿易投資報告」2011年版

(出所)IMF

日本経済新聞「TPP 日米首脳の決断:太平洋の経済・安保に寄与」2014 年 4 月 22 日(朝刊)

7

ただ、図表 4 が示すように、TPP 交渉参加メンバーのうち、北米 3 ヵ国と日本と豪州・

ニュージーランドの合計 GDP は約 96%に達し、TPP は先進国経済同士の FTA の性格を有

するが、北米 3 ヵ国だけでも約 72%を占めているので、TPP は北米自由貿易協定(NAFTA)

のアジア・太平洋先進国地域への拡大版であるとも評価できる。したがって、交渉されて

いる TPP のカバーする自由化の範囲やルールは、NAFTA に近いことがわかる。

他方、経済的な意味で米国が期待しているアジア新興国の活力を取り入れるに物足りな

いことは一目瞭然である。実際、TPP 交渉に参加しているシンガポール、マレーシア、ベ

トナム、ブルネイの 4 ヵ国の GDP(2013)は、7,950 億ドルしかなく、中国の 8.7%、イン

ドの 42.5%、インドネシアの 91%しかない。

TPP 交渉参加に当たって、日本の推進者もアジア新興国の活力を取り入れるためである

と理由付けをしているが、米国と同じように期待外れになる可能性が高い。日本の TPP 参

加の意味は、むしろ米国との FTA を通じて NAFTA 市場の攻略や自由化のルール設定とい

う意味合いが大きいと考えるほうがより現実に近い。もちろん、米国の同盟国である日本

には、安全保障の意味合いで TPP 参加を見送る余裕はない。

一方、米国による TPP の推進に関して中国の立場は複雑で微妙なものである。米国主導

の FTA には安易に乗れない現実と蚊帳の外に置かれた場合の不利益という懸念が交じり合

っている。詳細な論述は別稿を参考にされたいが、流れを静観するしかない立場にある4。

TPP 交渉の進展を睨んで、ここにきて中国は、TPP や後述する RCEP のメンバーをほとん

ど内包した APEC をベースとしたアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の設立を強力に主張し

始めている5。中国にとって FTAAP の推進は、アジア地域統合における TPP からの圧力を

緩和したい思惑が内包されているようである6。

韓国では、日本と違って米国とすでに FTA を締結しており、TPP に参加する経済的なイ

ンセンティブは見当たらないが、安全保障や大国バランスの意味合いで同盟国である米国

の動きに同調しないという余裕はなく、TPP 参加にむけて準備作業を進めている。

3.周辺化を懸念する ASEANと RCEPの推進

他方、比較的規模の小さい国々からなる ASEAN は、ASEAN 自由貿易地域(AFTA)を

1992 年に締結し、段階的な貿易自由化を行った。2007 年には 2015 年に ASEAN 経済共同

体(AEC、ASEAN Economic Community)を目指す合意文章も採択した。対外的に、中国

(2002 年 11 月)、韓国(2007 年 6 月)、日本(2008 年 12 月)、インド(2010 年 1 月)、オースト

ラリア・ニュージーランド(2010 年 1 月)とそれぞれ FTA を締結し、発効させている。つま

り、ASEAN は、ASEAN 地域を軸とするアジアの FTA ネットワーク(ASEAN+1FTA)を構

築したのである。

4 金堅敏(2013)「中国のアジア経済統合戦略:FTA、RCEP、TPP」 5 例えば、中国が議長国として 2014 年 APEC 通商大臣会議でまとめた”2014 Meeting of APEC Ministers

Responsible for Trade Qingdao Statement”(17-18 May 2014)は、FTAAP への取り組みを謳っている。 6 庄芮、王悦媛(2014)「東亜区域経済整合:困境與路径」

8

しかし、図表 5 が示すように、ASEAN を軸に、5 つの「ASEAN+1FTA」が結ばれてい

るが、ASEAN は関税同盟ではないので関税削減レベルは国によってかなりの差がある。ま

た、FTA ごとに原産地ルールなど、多様な自由化ルールが内包されているので、実際の運

用上複雑で効率が悪いという現場の声も多く聞かれる。むしろ、5 つの「ASEAN+1FTA」

を束ねて統一されたルールの統合体であるほうが効率的であるという思惑が ASEAN にあ

る。

図表 5 「ASEAN+1」FTA における関係国の関税撤廃カバー率

単位:%

豪州・ニュージーランド 中国 インド 日本 韓国 平均

ブルネイ 99.2 98.3 85.3 97.7 99.2 95.9

カンボジア 89.1 89.9 88.4 85.7 97.1 90.0

インドネシア 93.7 92.3 48.7 91.2 91.2 83.4

ラウス 91.9 97.6 80.1 86.9 90.0 89.3

マレーシア 97.4 93.4 79.8 94.1 95.5 92.0

ミャンマー 88.1 94.5 76.6 85.2 92.2 87.3

フィリピン 95.1 93.0 80.9 97.4 99.0 93.1

シンガポール 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

タイ 98.9 93.5 78.1 96.8 95.6 92.6

ベトナム 94.8 n.a. 79.5 94.4 89.4 89.5

豪州 100.0

ニュージーランド 100.0

中国 94.1

インド 78.8

日本 91.9

韓国 90.5

平均 95.7 94.7 79.6 92.8 94.5

出所:Fukunaga & Isono (2013) “Taking ASEAN+1 FTAs towards the RCEP:A Mapping Study”

他方、近年、一部の加盟国による TPP 参加の動きは地域の結束を弱める方向に作用する

と ASEAN は懸念していた。つまり、米国による TPP 推進は、アジア経済統合の主導権を

取られ、ASEAN 自身は周辺化されてしまうのではないかという ASEAN の弱体化懸念を増

幅させている。実際、ASEAN10 のうち、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシア

の 4 ヵ国は TPP メンバーになっており、米国の勧誘でタイやフィリピンも TPP 参加の意

向を表明した。ASEAN 事務局や域内大国であるインドネシアは、TPP で ASEAN が真二

つに割れることに大きな懸念を抱き始めた。本来なら、ASEAN は 1 つの地域として TPP

に参加する選択も可能だと思われるが、TPP が要求する「例外なき自由化」は ASEAN 諸

国を二分させてしまった。インドネシアやカンボジア、ラオス、ミャンマーなど開発の遅

れたメンバーは TPP のアプローチ方法には賛同しなかったのである。まさに、米国による

TPP 推進が ASEAN の RCEP を提案するきっかけともなっている。

このように、大国の狭間で中庸の態度を取ってきた ASEAN は、TPP を警戒しながら

9

CEPEA と EAFTA の流れをうまく汲み上げ、アジア経済統合の主導権を握り、推進役とな

った。ただし、図表 6 が示すように、ASEAN の GDP は、RCEP 参加メンバーの 11.32%

しかなく、ASEAN 自身の狙いどおりに RCEP 交渉を運ばせたのは、世界経済規模第 2 位

の中国と 3 位の日本のサポートが深くかかわっている。特に、GDP シェアの 43%以上を占

めている中国のサポートは極めて積極的である。

中国が東アジア経済統合において長年主張してきた「ASEAN+3」の枠組みを放棄して

でも日本の主張に近い「ASEAN+6」(=RCEP参加国16ヵ国)の交渉に同意したのは、RCEP

が、アジア太平洋地域統合における様々なサブ地域協定を統合して市場の一体化を図れる

に止まらず、TPP を借りてアジア太平洋経済統合の主導権を取ろうとする米国に対してバ

ランサー、あるいは制約ツールになり得ると分析されているからであろう7。ただし、中国

では、「ASEAN+1FTA」間の調整は困難を内包しており、特に ASEAN 内部のガバナンス

メカニズムが弱く、アジア経済地域統合を主導する能力に期待しがたい側面があり、RCEP

にすべてをかけているわけではない。RCEP を積極的にサポートしていくと共に、ASEAN

中国 FTA の深化や、前述したように APEC をプラットフォームとするアジア太平洋自由貿

易協定(FTAAP)を推進しようとしている。

(出所)IMF

7 庄芮、王悦媛(2014)「東亜区域経済整合:困境與路径」

金堅敏(2013)「中国のアジア経済統合戦略:FTA、RCEP、TPP」

10

日本は、メガ EPA に対するマクロ経済効果の推計では、TPP と RCEP 参加によって等

価変分(equivalent variation)の GDP 比で関税撤廃のみの場合は 0.8%と 1.7%、関税撤廃

と非関税障壁削減の場合では 1.6%と 2.8%をそれぞれ享受できそうである8。したがって、

TPP 参加は、経済効果と政治外交の側面をミックスした要因によるが、RCEP への積極的

な参加は、経済的な要因が大きかったと推測されよう。また、韓国の立場も、日本と似た

ようなものだと言えよう。

4.RCEP vs TPPそれとも RCEP & TPPか

以上で見てきたように、アジア地域経済統合がバイから範囲の拡大した地域の自由貿易

協定締結へ変化していく中で、TPP と RCEP は 2 大潮流になっている。TPP と RCEP は

共に交渉段階にあり、参加メンバーや自由化の度合いなどについて妥協の結果を見なけれ

ばならないが、予測を含めてまとめると、図表 7 が示すように両枠組みは互角のように見

える。本来、TPP の交渉は RCEP よりも早く開始し、2013 年末の合意を宣言されたが、

日米を含む各国の主張や利害関係の調整に時間がかかり、延期せざるを得なくなった。ま

た、国内政治情勢などにも影響されるので、2014 年中の合意も流動的になっている。

出所:IMF、ジェトロなどにより筆者まとめ

8 川崎研一(2014)「動き出すメガ EPA:経済効果の比較検討」。等価変分とは、輸出入価格の変化による公

益条件の効果も考慮したマクロ的な所得、支出の変化を捉えた指標である。

11

他方、TPP と RCEP は、2 つのアプローチが対立する関係になるか、それとも相互補完

関係になるか、見方は分かれる。ジェトロのヒアリングによると、インドネシアの通商政

策担当幹部は、RCEP は TPP に対抗するものとなるだろうと言及しており、また、WSJ

誌は、RCEP の台頭は、「米国主導の TPP プロセスをスローダウンさせ、引いては破壊さ

せる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。特に、RCEP には米国が含まれていないのに

対して、TPP には中国が含まれていないので、特にメディアでは、TPP vs RCEP を中国

vs 米国に写して報道されている。

しかし、米中両国の通商担当大臣はともに、TPP と RCEP は補完的な枠組みであり、

両方とも、太平洋地域全体の経済統合に寄与するとコメントしている。また、経済分析に

通じた専門家も、両枠組みは相互補完関係にあると評価している9。

出所:関係資料により著者作成

RCEP は TPP に刺激された側面が大きく、競合する側面も否めないが、TPP と RCEP

の進展でアジアの経済統合はむしろ加速されていくと考える。アジア・太平洋地域は、両

枠組みとも前進し、図表 8 が示すように、APEC で目指している環太平洋地域経済統合

9 同注 5

12

(FTAAP)が実現されることさえ期待される。域外経済にとっては、たとえば EU にとって

は、FTAAP が実現されると、TPP と RCEP より遥かに大きな不利益をこうむるが、域内

経済にとってはTPPやRCEPの単独よりも数倍も大きな経済効果が得られると試算されて

いる。例えば、Peter ら(2012)の研究によると、関税の撤廃や非関税障壁の削減を条件に

米国と中国の経済効果はそれぞれ、0.8% (TPP の効果 )、0.01%(RCEP の効果 )、

1.31%(FTAAP の効果)と-0.27%(同)、1.35%、3.93%となる。したがって、米国と中国は、

意図的に相手を排除しようとしない限り、共通の利益が得られ、常識では FTAAP をともに

推進すると言えよう。

5.アジア地域経済統合へ台湾の参加について

図表 8 が示すように、アジア太平洋地域経済統合のプロセスにおいて中国大陸を除く香

港、マカオ、台湾の中華圏経済は、WTO メンバー(単独関税地域)でありながら取り残され

ている。地域経済統合のプロセスにいかに参加していくかは、差し迫った検討課題となっ

ている。特に、製造業の盛んな台湾は、ライバルである韓国の産業との国際競争に晒され

ており、早急に地域経済統合へ参加する意欲を見せている。

5.1.台湾の FTA締結状況とさらなる推進の課題

アジア地域における FTA 締結活動に刺激され、2003 年以降台湾当局もバイの自由貿易協

定締結に動き出した。これまで、外交関係のあるパナマ(2004 年 1 月)、グアテマラ(2006

年 7 月)、ニカラグア(2008 年 1 月)、 エルサルバドル・ホンジュラス(2008 年 3 月、7 月)、

非国交国であるニュージーランド(2013 年 12 月)との間で FTA を発効させているほか、非

国交国であるシンガポールとは FTA(2013 年 11 月)に署名した。中国との間では、枠組み協

定(2010 年 9 月)、投資協定(2013 年 2 月)を発効させ、サービス協定(2013 年 6 月)の署名を

終えているほか、モノの協定を交渉している。その他、一部の国々と FTA 締結の交渉や共

同研究を行っている。

しかし、台湾と FTA を締結している国々は、経済規模が小さく貿易量も少ない。実際、

今現在、台湾の貿易総額における FTA カバー率は、9.69%しかなく、図表 2 が示すアジア

周辺諸国の FTA カバー率と比べかなり低い。台湾からの輸出品においてかなりの不利益を

被っている。

台湾が FTA 締結競争でかなり遅れている要因はいくつか考えられるが、台湾の通商政策

専門家は、外部要因と内部要因に分けて整理している10。外部要因としては、①国際政治問

題が存在すること、②台湾の関税が低く、経済規模も小さいので経済的なインセンティブ

が欠如していること、③ASEAN のカンボジア、ラオス、ミャンマーには民間経済交流の代

表部でさえ設立されていないことがあげられている。ここでいう「国際政治問題」とは、

台湾と外交関係のない諸国・地域(逆に中国とは外交関係を結んでいる国・地域)との FTA

10 2014 年 3 月 3 日~5 日に筆者のヒアリングによる

13

締結を阻止しようと、これらの国・地域が中国と台湾の重要性を天秤にかけて計った結果、

台湾との間で FTA 締結をするのをためらうことを指していると推測される。

他方、内部要因としては、①政治や民意の支持力が弱いこと、②部門間・産業間の調整が

難しいこと(つまり、貿易自由化で利益を得る部門・産業と、自由化で不利益を蒙る部門・

産業との間での政策調整が難しいこと)、③農産物を含む高関税をかけている製品が存在し

ていること11、④一部分野の技能者の移動(例:弁護士、看護師、マッサージ師など)を厳

しく制限していること、⑤中国大陸との貿易正常化を実現させていないこと(注:WTO ル

ールと整合しない対中国大陸の輸入制限を数多く実施していること)などが存在している。

ところで、TPP と RCEP の進展は、台湾社会にアジア地域経済統合に取り残される危機感

を膨らませている。TPP と RCEP が台湾経済に与える経済効果について、台湾の研究者は

図表 9 が示すような推計結果を出している。結果を見ると、TPP に参加しないロスは比較

的小さく、RCEP に参加する利益がもっとも大きく、望ましい選択であると考えられる。

また、川崎(2014)の推計では、関税撤廃と非関税障壁の削減において台湾が TPP に不参

加の場合に GDP 比で-0.2%と-0.8%、RCEP に不参加の場合では-2.5%と-3.6%とい

う結果を得ており、台湾研究者の推計よりも深刻な不利益を蒙る可能性がある12。

図表 9 TPP と RCEP が台湾経済に与える影響推計

TPP RCEP

GDP 成長率

(%)

輸出額変動

(百万ドル)

輸入額変動

(百万ドル)

GDP 成長率

(%)

輸出額変動

(百万ドル)

輸入額変動

(百万ドル)

非加入 -0.91 -687.00 -481.53 -2.61 -6318.69 -8644.61

加入 1.98 6158.16 8828.72 4.36 13422.09 16304.19

出所:許博翔(2013)「TPP及 RCEP対我国経済衝撃之量化分析」

以上の状況を踏まえて、台湾当局は、1)中台(両岸)ECA 交渉の加速、2)バイの FTA

の推進、3)広域経済統合である TPP と RCEP への加入を同時に推進するという 3 つの対

策を取り出しているという13。TPP と RCEP の加入に関しては、経済的な視点からすれば

RCEP への参加を優先させるべきとの意見も多かった14。これは、2003 年から 2012 年に

おける台湾の平均的な輸出入比率で対 TPP メンバー国はそれぞれ 32.25%と 43.33%であ

ったのに対して、対 RCEP メンバーの輸出入比率はそれぞれ 67.83%と 57.39%であった。

また、直接投資では、同時期に対 TPP メンバー国は 15.38%しか占めていなかったが、対

11 WTO 事務局によると、2013 年 9 月末現在、台湾の全商品の関税率は 6.1%で、農産物は 16.4%(非農

産物は 4.5%)となっている。 12 Kawasaki (2014) “The Relative Significance of EPAs in Asia-Pacific” 13 2014 年 5 月 3 日~5 日、筆者のヒアリングによる。ECA は経済協力協定を指すし、実質 FTA に相当す

るが、主権国家の意味を無くすために ECA を使うという。 14 陳浩政(2014)「台日策略連盟:新機会還是新挑戦」

14

RCEP メンバーの比率は 81.87%を占めたので、RCEP 優先の主張は利に適っているように

思われる15。

ただし、経済、政治、外交などの要素を総合的に考えると、同時に取り組むべきである

という意見も見られる16。実際、台湾の指導者である馬英九も 2014 年の新年挨拶で TPP

と RCEP への参加を同時に推進するという「双軌並進」の政策を提起している17。

5.2.アジアメガ FTAへの参加に向けて検討されるべき事項

以上で見てきたように、アジア地域経済統合において台湾は大きく遅れており、台湾当

局や知識層には焦燥感さえ漂っている。ただ、FTA 締結という枠組みの議論も重要である

が、産業界あるいは企業の視点からは以下の検討課題も残っているのではないかと考える。

5.2.1台湾を拠点とするグローバルビジネス展開の制約解消

近年、台湾の産業界から政府に自由貿易協定締結を促す働きかけが強くなってきている

が、台湾当局がまず考えなければならないのは、産業の空洞化を止めさせる立地優位性を

高めるため、台湾を拠点とするグローバルビジネス展開に必要な制約の解消であると言え

よう。なぜなら、台湾企業は、FTA 締結の遅れによって自社がグローバル競争において不

利な立場を解消するために、例えばライバルである韓国産業との国際競争において不利益

を解消するために、経営資源を目標市場に移転すれば目的は達成されるのである。だが、

域内の産業の空洞化は引き起こされてしまうことになる。

実際、1990 年代後半から台湾域内の産業の空洞化は、他に例を見ないほど進んでいた。

図表 10 は、ジェトロ所属のアジア経済研究所が行った貿易相手国・地域(上欄)の最終需要

によって誘発された各国・地域(左列)の雇用数のシミュレーション結果である。2000 年の

台湾の雇用流入は 162 万人で流出は 319 万人であったので、雇用の純流出は、157 万人だ

った。2005 年の雇用の純流出は 222 万人までに拡大した。中でも中国大陸への流出は 2000

年の 44.7%から 2005 年の 61.5%へ高まった。このような雇用の海外移転は、台湾企業や

グローバル企業の生産ネットワークを通じて引き起こされる側面が大きい。生産の海外移

転による産業空洞化は先進国の共通課題であるが、国内の雇用対策がうまくできなければ

大きな社会問題に発展してしまう。実際、台湾の失業率は、1980 年代から 1990 年代にか

けては 2%前後に安定していたが、1990 年代末ごろから次第に拡大し、2002 年には 5.2%

まで高まった。2000 年代は 4%前後で推移している。もちろん、失業率の上昇は IT バブル

の崩壊など様々な要因もあろうが、産業空洞化に大きな要因があるのは間違いなく、自由

貿易協定を締結していれば、少なくとも産業空洞化のスピードは緩和されよう。

もちろん、一般的に、自由貿易協定の遅れにより、当該国の企業は、輸出に際して FTA

15徐遵慈(2014)「専題分析:論我国「双軌併進」参與 TPP 與 RCEP 之策略與準備」 16 同上 17 http://www.president.gov.tw/Default.aspx?tabid=131&itemid=31546(2014 年 5 月 9 日参考)

15

締結国の企業には課されない関税に直面するだけでなく、目的市場において、投資・知的

財産権保護などの面においても不利益な扱いを受けやすいなど、グローバルなビジネス展

開において、自国を拠点とするサプライチェーン、バリューチェーンの円滑な構築が制約

あるいは阻害される状況が生じる可能性がある。

図表 10 東アジア関係国・地域の雇用機会の国際移転

2000 年、2005 年(単位:千人)

流入国

流出国

中国 台湾 インドネシア 日本 韓国 マレーシア フィリピン シンガポール タイ 米国 合計

中国 2000 1,425 911 18,817 3,406 916 362 839 992 28,509 56,177

2005 2,617 1,934 23,266 5,521 1,055 480 844 2,032 51,542 89,301

台湾 2000 373 22 318 59 42 25 21 38 722 1,620

2005 818 31 308 83 32 33 13 55 593 1,966

インドネシア 2000 1,138 591 3,733 702 612 244 525 399 5,406 13,350

2005 1,795 417 3,032 746 610 166 686 508 4,422 12,382

日本 2000 420 285 66 264 112 63 94 123 1,816 3,244

2005 1,003 349 110 425 62 57 46 204 1,754 4,009

韓国 2000 340 88 32 373 30 31 25 29 736 1,685

2005 727 71 44 330 20 18 12 45 599 1,866

マレーシア 2000 201 111 47 569 109 50 260 84 1,051 2,484

2005 1,030 156 170 776 221 62 185 300 2,044 4,944

フィリピン 2000 314 213 30 1,506 228 127 52 98 2,780 5,348

2005 1,565 204 107 1,249 282 101 34 238 1,606 5,385

シンガポール 2000 33 20 8 43 18 31 14 16 146 328

2005 82 15 59 69 58 27 12 23 110 456

タイ 2000 473 243 149 1,539 182 278 123 247 2,516 5,751

2005 1,203 213 422 1,568 246 249 94 122 2,418 6,536

米国 2000 250 214 38 822 237 69 45 65 61 1,801

2005 406 147 56 661 245 40 48 69 82 1,753

合計 2000 3,543 3,190 1,303 27,720 5,206 2,221 956 2,128 1,839 43,682 91,787

2005 8,629 4,189 2,942 31,258 7,827 2,195 973 2,010 3,486 65,089 128,598

出所:アジア経済研究所 (2005)「2005年国際産業関連表の作成と利用:第 6章 統合された多様性―

アジア・米国経済圏の生産システムと雇用」により筆者調整作成

5.2.2グローバルサプライチェーン、バリューチェーンの円滑化が必要

ビジネスのグローバル展開に伴い、国境を越えた企業活動の実態において、部品・中間

財などを含んだモノの流れである「グローバルサプライチェーン」が形成されたことに止

まらず、各ビジネス・プロセス(調達、開発、製造、販売、サービス、知的財産権の移転・

情報の伝達、人的移動、資本移転・利益の回収などを含む)全体のグローバルサプライチ

ェーンも重要性が増してきている。

たとえば、中国大陸は早くから「世界の工場」になっているが、しかし東アジア諸国・

地域から部品・中間財・製造設備を輸入して組み立てて再輸出するように、グローバルサ

プライチェーンが形成されている。また、日本の輸出を付加価値ベースで見ると、中国よ

16

りも米国向けの方が大きいことがわかる。2009 年の日本の輸出では、米国向けの 19%に対

して、中国大陸向けはトップで 24%となっているが、付加価値ベースでは米国向けが 19%

でトップとなり、中国大陸向けは 15%で 2 位となった。したがって、日本と中間財を輸入

する国・地域との間のモノの流れのみに着目した関税撤廃だけでは、上述したグローバル

サプライチェーンやバリューチェーン全体を円滑化することはできない。2 国間の FTA を

超えて、サプライチェーン・バリューチェーンを完結させられるような広域経済統合戦略

が求められる。図表 11 が示すように、台湾の状況も日本や大陸と同じである。

(出所)OECD

グローバルサプライチェーン、バリューチェーンのアプローチは、TPP や RCEP の推進

において非常に重要な戦略となっている。

5.2.3.「スパゲティ・ボール現象」への対処が必要

前述したように、アジアではすでにFTAのネットワークが形成されつつある。既存のFTA

に加え、2 国・地域間や多数国・地域間の FTA も数多く同時進行されている。しかし、企

業側から見れば、個々の FTA に合意されているルールは、全体としていわゆる「スパゲテ

ィ・ボール現象」を引き起こしてしまい、コストや手間隙がかかり、FTA をビジネスに生

かせない弊害がおこっている。

災いが福に転ずることは、台湾はこれまでアジア各国・地域と個別の FTA をあまり締結

しておらず、もし TPP あるいは RCEP のような広域地域統合の枠組みに加われば、「スパ

ゲティ・ボール現象」を経験せずにすむ。さもなければ、個々の国や地域と個別的に交渉

17

して締結した FTA は台湾の産業界にとって非常に使いにくく、コストの高いシステムにな

ってしまう。したがって、台湾当局は、エネルギーを広域地域統合の枠組みに注ぐべきで

あろう。

したがって、FTA のルール設定は WTO 協定と整合するように、かつ WTO ルールの一

部に統合していくように考えなければならない。経済統合のプロセスも、バイから多数国

間・地域間、そしてグローバルへの自由化へ結びつけていくよう広げていくべきである。

5.2.4.サービス分野の自由化政策を加速されるべき

図表 12 が示すように、グローバル化の進展に伴い、サービス貿易、あるいはモノと一体

化したサービス(アフターサービスを含む)貿易のウェイトが急速に高まってきている。技

術の革新やビジネスモデルの変化により国境を越えたサービスの取引は益々増えていくと

考えられる。実際、日米欧など 23 ヵ国・地域の有志者による、21 世紀型の高レベルの自由

化を目指す「サービス貿易新協定」(TiSA: Trade in Services Agreement)の交渉が 2013 年

3 月に開始されたのも、サービス分野での自由化の重要性が高まっているからであろう。今

後の地域経済統合プロセスにおいてもサービス分野のさらなる自由化が求められよう。

(出所)OECD

しかし、2014 年 3 月に台湾で中国とのサービス貿易協定に反対する運動が学生によって

引き起こされた。台湾の馬英九政権による中国大陸との自由貿易推進に反対する側面もあ

ろうが、中国資本の台湾進出に危機感を感じる台湾企業の懸念も存在する。なぜなら、サ

ービス貿易はモノの貿易と違って、現地拠点の設立を伴う方式が主流で、中国大陸からの

18

サービス提供は台湾で拠点設立が必要となり、中国資本が台湾の中小企業を圧迫する恐れ

があるからであろう。

実際、中台サービス貿易協定に反対する学生運動以降、台湾の対外 FTA 交渉のテンポは

遅くなってしまい、ロイターは「台湾の貿易自由化の道は立ち往生している」という特別

記事を配信して、台湾社会の迷いを報道している18。

台湾現地における筆者のヒアリングでは、中台間のサービス協定では台湾側により有利

(中国側は 80 のサービス項目を開放するのに対して、台湾側は 64 項目の開放に止まる)に

なっているにもかかわらず、台湾の住民は、当該協定に関する内容を理解しておらず、台

湾当局の情報公開や啓発活動も不十分である。むしろ、十数年来、台湾経済が順調に成長

しておらず、雇用問題も深刻なので、域内で蓄積されている不満がサービス貿易協定に向

けられた側面も確認できる。

したがって、台湾の自由化政策は、台湾当局によるサービス貿易自由化知識の啓発や内

部対策の充実によって継続すると期待される。

5.2.5.必要となる産業の視点からのアプローチ

前述したように、FTA 締結の目的には政治的な側面と経済的な側面が存在するが、昨今

の台湾の社会・経済情勢を考えると、台湾にとって FTA 締結におけるもっとも重要な要素

は、経済停滞をいかに脱出させるかにあると考える。つまり、締結される FTA は実質的に

産業界(企業)のグローバル展開に役に立つような制度設計でなければならない。この意味

で、日韓両国の企業における FTA 活用状況がひとつの参考になる。

(出所)JETRO

18 http://cn.reuters.com/article/CNAnalysesNews/idCNCNEA3K09320140421 (2014 年 5 月 21 日参照)

19

韓国では、輸出における FTA 利用率は、平均で 66.9%になっており、図表 13 が示すよ

うに、輸出ではペルー、EU、米国の利用率が高く、ASEAN とインドの利用率は低い。輸

入では、チリ、ペルーの利用率がもっとも高く、EFTA やインドは低い。韓国では、FTA

の利用率が低くなっている理由について、情報が少ないこと、手続きのコストが高いこと、

人材が少ないこと、原産地規則が煩雑であることなどが挙げられている。

前述したように、現在、日本は 13 ヵ国・地域との間で FTA を締結しているが、ジェト

ロの調査によると、日本企業はこれらの協定を何らかの形で利用しており、その利用率は

2009 年の 36.2%から 2013 年の 42.9%まで年々高まってきている。そのうち、輸出は 29.4%

から 37.7%に高まったが、輸入では 32.0%から 42.7%に高まっている。図表 14 が示すよ

うに、企業の視点からは、自由化率の高い国あるいは産業集積の進んでいる国との貿易で

FTA の活用率は高い。輸出分野では、チリとタイとの FTA の利用率が比較的高い。背景に

は、当該国の産業の集積や貿易構造にも影響を受けている。たとえば、タイやインドネシ

アでは日系の自動車などの製造業が集積しており、関税の漸進的な引き下げを企業が活用

していると考える。他方、利用率の低いマレーシアとの FTA に関しては、日本からマレー

シアへの輸出主要品目を IT 関連が占めており、これらの IT 製品は、すでに WTO の情報

技術協定により関税が無税化されている品目が多い。FTA を活用するインセンティブが弱

くなっている。

(出所)JETRO

ジェトロの調査によると、輸出において FTA を利用している企業が感じている問題点に

は、①輸出のたびに証明書発給申請が必要であり手間がかかる、②原産地基準を満たすた

めに事務的負担が生じる、③品目ごとに原産地判定基準が異なり煩雑である、④原産地証

20

明書発給に手数料がかかる、⑤原産地判定/証明書発給までの時間が長い、などがあげら

れており、「原産地証明」が企業による FTA 活用の主要な障害になっていることが判明し

た。

したがって、台湾はアジア地域統合への参加において日韓の経験を十分参考にしてアプ

ローチしていくべきである。

5.3.分析から得られる示唆

図表 8 が示すように、両岸関係に由来する政治的な障害や、台湾内部の政治安定性、市

場開放に対する抵抗などの理由から、アジア経済統合プロセスへの台湾の参加は遅れてき

た。2010 年において経済協力の枠組み協定(ECFA)の締結など、両岸関係は融和の方向に向

かい、それに加えて韓国などの FTA 締結に刺激され、台湾当局による FTA 締結への取組

みが加速され、2013 年にニュージーランドとシンガポールとの経済連携協定の締結にこぎ

つけた。最近では、両岸サービス貿易協定の締結に関して台湾内部で反対意見も噴出した

が、全体としてアジア域内経済統合への参加は加速されると考えられる。

ここでは、前述の分析を踏まえて、その示唆として以下の 3 点を提起したい。

5.3.1中国大陸との経済統合を加速させること

(出所)JETRO

21

台湾では、中国大陸との経済統合に関する制度的整備は、大陸依存に偏り、台湾の産業

や雇用が空洞化してしまうのではないかという懸念が聞かれる。しかし、日米欧の多国籍

企業から見れば、台湾は、大中華圏市場を理解する上で有用な参考事例であり、中国大陸

とグローバル市場をつなぐ有力な中継基地であると考えられる。もし台湾がこのような仲

介機能を果たせなければ、台湾の魅力は半減してしまう可能性が高い。したがって、台湾

は、中国大陸と結ばれた ECFA などの制度的優位性を活かすべきである。

実際、図表 15、図表 16 が示すように、ECFA が早期収穫段階に止まっているにもかかわ

らず、すでに日系企業はこの枠組みを活用する手立てを講じている。両岸の間のパイプが

流れるようになれば、大陸にビジネス拠点を移す必要がなく、特に高付加価値ビジネスは

台湾に残る決定をするだろう。さもなければ、日米欧の多国籍企業は、中国大陸と制度的

に結ばれている韓国や ASEAN 諸国を活用することになるだろう。台湾社会に意識変化を

促すよう努力するとともに、市場開放に備えて台湾内部での構造改革や競争力強化政策を

早急に進めていくべきである。

出所:筆者作成

5.3.2.WTOモデルで無用な対立を避けること

アジア地域経済統合への参加に台湾地域が遅れた 1 つの要因は、両岸関係の融和が足り

なかったことであると言えよう。これは、大陸側が台湾地域と他国・地域との経済連携協

定に反対したというよりも、相手国側が両岸関係を鑑み、台湾側のアプローチに躊躇して

22

連携を控えたのではないかと考えられる。ただし、馬英九政権以降、両岸関係は積極的な

方向に向かい、これまで控えていた国や地域も台湾地域との経済連携強化に動き出したの

である。日本(投資取り決め)、ニュージーランド(貿易自由化取り決め)、シンガポール(貿

易自由化協定取り決め)はその代表例と言えよう。

重要なのは、台湾側と他国・地域との間で取り決めを締結したときの名義上の処理モデ

ルである。図表 17 が示すように、「民間交流」と WTO 方式で処理されてきた台湾側と外

交関係のない日本、ニュージーランド、シンガポールとの方式は、今後も堅持すれば波風

が立たないで済み、アジア地域経済統合への台湾参加も加速されるだろう。

「民間交流」と「WTO モデル」に徹すれば、中国大陸側に台湾と他国・地域と FTA を

締結するのを反対する理由もなく、反対すべきではないと考える。実際、筆者のヒアリン

グでは、アジア地域経済統合に両岸(中台)が同時加入することは、中国側の通商専門家か

らの提言としてもよく聞かれる。健全なアプローチと評価されよう。

出所:関係資料により筆者作成

5.3.3.「原産地」と関係する制度的な革新や手続きの簡素化を

前述したように、日本企業の経験から FTA を活用する上で最大の障害は、「原産地」に

関連するルールや手続きである。したがって、台湾がアジア地域経済統合に取り組んでい

く場合には、産業界や企業の視点を十分に取り入れ、制度設計の提言を行っていくべきで

ある。

23

また、台湾企業による既存 FTA の活用を促進するためには、「原産地」関連ルールの普

及やノウハウの蓄積、人材育成などを大いに推進するべきである。

24

主要参考資料

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https://www.keidanren.or.jp/policy/2013/034.html

3 日本内閣府(2013)「日本再興戦略」

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http://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0390.html

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の生産システムと雇用」

http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Books/Sonota/pdf/201110/SNT001100_009.pdf

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富士通総研 オピニオン 2009 年 11 月 30 日

http://jp.fujitsu.com/group/fri/column/opinion/200911/2009-11-4.html

9 金堅敏(2012)「韓国企業の競争力と残された課題」

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10 金堅敏(2013)「中国のアジア経済統合戦略:FTA、RCEP、TPP」

富士通総研 研究レポート No.412

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12 馬 濤、劉仕国(2013) “全球価値連下的増加値貿易核算及其影響“

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14 許博翔(2012)「TPP 及 RCEP 対我国経済衝撃之量化分析」

中華台北亜太経済合作(APEC)研究中心 APEC 通信 No 159

15 陳浩政(2014)「台日策略連盟:新機会還是新挑戦」

国際会議「FTA、東亜区域経済整合與台湾角色:機会與挑戦」資料

2014 年 5 月 3 日、台北政治大学

16 徐遵慈(2014)「専題分析:論我国「双軌併進」参與 TPP 與 RCEP 之策略與準備」

http://www.aseancenter.org.tw/CenStudyDetail.aspx?studyid=25&natstudyid=1

17 Kawasaki Kenichi(2014) “The Relative Significance of EPAs in Asia-Pacific”

25

RIEIT Discussion Paper Series 14-E-009

18 Fukunaga & Isono (2013)

“Taking ASEAN+1 FTAs towards the RCEP:A Mapping Study”

http://www.eria.org/ERIA-DP-2013-02.pdf

19 Peter A.P and Michael G.P(2012)

“The Trans-Pacific Partnership and Asia- Pacific Integration: Policy Implications”

Peterson Institute for International Economics “Policy Brief” PB12-16

20 OECD (2013) “the OECD-WTO Trade in Value-Added (TiVA)”(Web)

http://stats.oecd.org/index.aspx?queryid=47807

21 Singapore Government (2013)

“Agreement Between Singapore and the Separate Customs Territory of Taiwan,

Penghu, Kinmen and Matsu on Economic Partnership”

22 New Zealand Government(2013)

“Agreement Between New Zealand and the Separate Customs Territory of Taiwan,

Penghu, Kinmen and Matsu on Economic Cooperation”

研究レポート一覧

No.417 アジア地域経済統合における2つの潮流と台湾参加の可能性

金 堅敏 (2014年6月)

No.416 空き家対策の最新事例と残された課題 米山 秀隆 (2014年5月)

No.415 中国の大気汚染に関する考察 -これまでの取り組みを中心に-

趙 瑋琳 (2014年5月)

No.414 創造性モデルに関する研究試論 榎並 利博 (2014年4月)

No.413 地域エネルギー事業としてのバイオガス利用に向けて 加藤 望 (2014年2月)

No.412 中国のアジア経済統合戦略:FTA、RCEP、TPP 金 堅敏(2013年11月)

No.411 我が国におけるベンチャー企業のM&A増加に向けた提言-のれん代非償却化の重大なインパクト-

湯川 抗木村 直人

(2013年11月)

No.410 中国における産業クラスターの発展に関する考察 趙 瑋琳(2013年10月)

No.409 木質バイオマスエネルギー利用の現状と課題 -FITを中心とした日独比較分析-

梶山 恵司(2013年10月)

No.408 3.11後のデマンド・レスポンスの研究 ~日本は電力の需給ひっ迫をいかにして克服したか?~

高橋 洋 (2013年7月)

No.407 ビジョンの変遷に見るICTの将来像 Innovation and

Technology Insight Team(2013年6月)

No.406 インドの消費者・小売業の特徴と日本企業の可能性 長島 直樹 (2013年4月)

No.405 日本における再生可能エネルギーの可能性と課題 -エネルギー技術モデル(JMRT)を用いた定量的評価-

濱崎 博 (2013年4月)

No.404 System Analysis of Japanese Renewable Energy Hiroshi Hamasaki

Amit Kanudia(2013年4月)

No.403 自治体の空き家対策と海外における対応事例 米山 秀隆 (2013年4月)

No.402 医療サービス利用頻度と医療費の負担感について 高年齢者の所得と医療需要、負担感に関するシミュレーション

河野 敏鑑 (2013年4月)

No.401 グリーン経済と水問題対応への企業戦略 生田 孝史 (2013年3月)

No.400 電子行政における外字問題の解決に向けて -人間とコンピュータの関係から外字問題を考える-

榎並 利博 (2013年2月)

No.399 中国の国有企業改革と競争力 金 堅敏 (2013年1月)

No.398 チャイナリスクの再認識 -日本企業の対中投資戦略への提言-

柯 隆(2012年12月)

No.397 インド進出企業の事例研究から得られる示唆 長島 直樹(2012年10月)

No.396 再生可能エネルギー拡大の課題 -FITを中心とした日独比較分析-

梶山 恵司 (2012年9月)

No.395 Living Lab(リビングラボ) -ユーザー・市民との共創に向けて-

西尾 好司 (2012年9月)

No.394 ドイツから学ぶ、3.11後の日本の電力政策 ~脱原発、再生可能エネルギー、電力自由化~

高橋 洋 (2012年6月)

No.393 韓国企業の競争力と残された課題 金 堅敏 (2012年5月)

http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/research/

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