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学芸文化課 令和元年度県庁舎跡地長崎西役所跡範囲確認調査結果について(概要) 1.遺 跡 名 長崎 ながさき 西役所 にしやくしょ あと 2.所 在 地 長崎県長崎市江戸町 2 番 13 号 3.調査主体 長崎県教育委員会 4.調査期間 令和元年 10 月 16 日(水)~令和 2 年 1 月 15 日(水) 5.調査面積 1,016 ㎡ 6.調 査 区 試掘坑(TP)18箇所(調査区配置図のとおり) 7.調査結果 (1)遺構について 〇TP1、2、4、6、14 で石垣もしくは石塀と思われる遺構を確認した。 〇TP5 で江戸時代前期の町屋の土坑等を確認した。 〇TP7~13 で 4 代目県庁舎の基礎杭を確認した。 〇TP8~16、18 で 3 代目県庁舎に関連する遺構を確認した。 〇TP9、13、15、17、18 で江戸時代の盛土もしくは整地土もしくは土 坑等の遺構を確認した。 (2)遺物について 遺物は、陶磁器、瓦片、金属製品、ガラス製品、貝類、獣骨などが 出土している。陶磁器については、16 世紀から 17 世紀前半期の 景徳鎮 けいとくちん 窯製 ようせい 磁器 、漳 州 しょうしゅう 窯製 ようせい 磁器 、東南アジア産陶器類や同時期の肥 前産陶磁器などが出土している。

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学芸文化課

令和元年度県庁舎跡地長崎西役所跡範囲確認調査結果について(概要)

1.遺 跡 名 長崎ながさき

西役所にしやくしょ

跡あと

2.所 在 地 長崎県長崎市江戸町 2番 13号

3.調査主体 長崎県教育委員会

4.調査期間 令和元年 10月 16日(水)~令和 2年 1月 15日(水)

5.調査面積 1,016㎡

6.調 査 区 試掘坑(TP)18箇所(調査区配置図のとおり)

7.調査結果

(1)遺構について

〇TP1、2、4、6、14 で石垣もしくは石塀と思われる遺構を確認した。

〇TP5で江戸時代前期の町屋の土坑等を確認した。

〇TP7~13で 4代目県庁舎の基礎杭を確認した。

〇TP8~16、18で 3代目県庁舎に関連する遺構を確認した。

〇TP9、13、15、17、18で江戸時代の盛土もしくは整地土もしくは土

坑等の遺構を確認した。

(2)遺物について

遺物は、陶磁器、瓦片、金属製品、ガラス製品、貝類、獣骨などが

出土している。陶磁器については、16 世紀から 17 世紀前半期の

景徳鎮けいとくちん

窯製ようせい

磁器じ き

、漳 州しょうしゅう

窯製ようせい

磁器じ き

、東南アジア産陶器類や同時期の肥

前産陶磁器などが出土している。

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調査区配置図

TP

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南 門

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(3)各試掘坑について

① TP1

この調査区からは石垣や近代の陶磁器や瓦片が出土した。

石垣検出状況(東から) 調査終了状況(西から)

② TP2

この調査区からは石垣、石塁状遺構を確認した。

石塁状遺構(上段)および石垣(下段)検出状況(東から)

③ TP3

4代目県庁舎建設後の配管敷設によるかく乱があり、遺構は確認できていない。

④ TP4

遺構として石垣を確認した。西側は切石を積み上げた石垣で、東側は自然石を積み上

げた石垣になる。自然石を積み上げた石垣については、江戸時代前期までさかのぼる可

能性があるとの専門家の所見を得ている。

石垣検出状況(南から)

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⑤ TP5

江戸時代前期と考えられる町屋の土坑を確認した。出土遺物は景徳鎮けいとくちん

青せい

花か

、漳 州しょうしゅう

窯よう

青せい

花か

、東南アジア製陶器、国産陶器、国産磁器、瓦である。陶磁器は、中国製青花と陶器類

が主体を占めており、国産磁器は極めて少数で、年代は 1630年代を下限とする。

出土陶磁器類 出土瓦

⑥ TP6

南北方向に石垣を確認した。3 代目県庁時代の江戸町側に通じるスロープ部分と考えら

れる。また、その内側にL字に曲がる江戸時代後期のものと考えられる石列を確認した。

遺構検出状況(北から) 石垣内側にある石列検出状況(南から)

⑦ TP7

4代目県庁舎建設後の配管敷設によるかく乱により遺構は確認できていない。

⑧ TP8

4代目県庁舎基礎杭と基礎の割栗石を確認した。

地山面検出状況(南から) 石敷検出状況(西から)

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⑨ TP9

井戸の可能性がある遺構を確認した。出土遺物は 1630~40年代を下限とする製品で

あった。また、縄文後期の土器が 1点出土した。

土層断面状況(東から) 出土遺物

⑩ TP10

4代目県庁舎の基礎杭と基礎の割栗石を確認した。

石敷検出状況(西から)

⑪ TP11

4代目県庁舎の基礎杭と基礎の割栗石を確認した。

石敷検出状況(東から) 溝状落ち込み完掘状況(西から)

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⑫ TP12

4代目県庁舎の基礎杭と基礎の割栗石を確認した。

基礎杭検出状況(南から)

⑬ TP13

3代目県庁舎と考えられるレンガ造構造物を確認した。

レンガ造構造物検出状況(南から)

このほかに、西端の一部で瓦と漆喰片が混じった土層を確認した。

少なくとも2面の遺構面を確認しており、上層からは肥前産ひぜんさん

見込み こ み

荒磯あらいそ

雲うん

龍りゅう

文もん

鉢片はちへん

や景徳鎮けいとくちん

窯産ようさん

の碗片など 1660 年代を下限とする遺物が確認された。下層に存在する出土遺物は

1630~40年代を下限とする。

検出状況(南から) 出土遺物

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⑭ TP14

石垣か石塀の一部が壊れていると考えられる石が並んでいる状況を確認した。

レンガ造構造物検出状況(東から)

⑮ TP15

3代目県庁舎の時代の建物跡と考えられるレンガ造構造物を確認した。

レンガ造構造物検出状況(北から)

また、このレンガ造構造物を除却した直下から瓦や漆喰、陶磁器などの遺物が包含する

土層を確認した。製作年代が 1610~30年代と考えられるものが多い。

サブトレンチ南壁土層断面状況(北から) サブトレンチ出土遺物

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⑯ TP16

3代目県庁舎の時代の建物跡と考えられるレンガ造構造物を確認した。

レンガ造構造物検出状況(北から)

⑰ TP17

瓦と漆喰片が混じった土層を確認した。また、土坑から瓦片や陶磁器を確認した。

掘削状況(西から) 出土遺物

⑱ TP18

3 代目県庁舎の時代の建物跡と考えられるレンガ造構造物や瓦と漆喰片が混じった土

層を確認した。

sレンガ造構造物検出状況(北から)