うつ病だと思っていませんか?違いを確認しましょ …Arch Gen Psychiatry 59...

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うつ病だと思っていませんか?違いを確認しましょう。 医療機関でもうつ病だと診断されがちです。見逃しがちなポイントを確認しましょう。 双極性障害にも種類があります。 発症時の症状を確認しましょう。 放置したままだと、様々な問題が発生します。 悩んでいるのはあなただけではありません。

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うつ病だと思っていませんか?違いを確認しましょう。医療機関でもうつ病だと診断されがちです。見逃しがちなポイントを確認しましょう。双極性障害にも種類があります。発症時の症状を確認しましょう。放置したままだと、様々な問題が発生します。悩んでいるのはあなただけではありません。

うつ病は憂うつな気持ち、意欲の低下など「うつ」の症状が続く病気ですが、双極性障害は「躁」と「うつ」の症状を繰り返す病気です。

「うつ」の症状を示す病気は、うつ病だけではありません。うつ病と見分けがつきにくい病気のひとつに「双極性障害」(躁うつ病)があります。双極性障害は「躁」と「うつ」の症状を繰り返す病気ですが、約3分の2の人が「うつ」から始まると言われており、うつ病との区別が医師にとっても難しい病気です。1)では、「双極性障害」と「うつ病」は、どういった所が違うのでしょうか?

双極性障害の特徴は、「躁」と「うつ」の症状を繰り返すことですが、双極性障害の「躁」の状態を、患者さんは「症状」と思わないことが多く、特に「躁」の症状が比較的軽い「軽躁」の場合、周囲も「張り切ってるな」とか、「性格」や「気分のムラ」と考え、病気とは思いません。「躁」の症状を見逃すと、「うつ病」と診断される場合が多いのですが、「双極性障害」と「うつ病」は経過も治療も異なります。患者さんも周囲も「躁」や「軽躁」の症状にも着目し、正しく主治医に伝えることが大切です。

うつ病と双極性障害の違い

うつになる前にこんな症状はありませんでしたか

なぜ診断が難しいのでしょう

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しかし、双極性障害の患者さんの多くは、ご自分が困っている自覚のある「うつ」の時に受診すると言われています。そのため最初は「うつ病」と診断される人が多く、「うつ病」と診断された人の中の約10%が、後から双極性障害と判明するとされています。1)

双極性障害の「うつ」の症状と、「うつ病」の症状は非常に似ていて診断が難しい病気なのです。

1)「双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本」野村総一郎監修(講談社)

一生のうちにうつ病を経験する人は、日本では100人に5人前後、欧米では100人に10人前後と言われ、マスコミなどでもよく取り上げられ、近年よく知られる病気となってきました。これに対し、一生のうちに双極性障害を経験する人は、100人に1人程度とされています。最近のアメリカでの調査によると、100人に2人~4人という報告もあり、「うつ病」よりは少ないですが、双極性障害も決して稀な病気ではありません。1)

双極性障害の発症は主に20代前半に多いとされ、うつ病の発症年齢より若いとされています。またうつ病の発症は女性が男性の2倍であるのに対し、双極性障害では男女差はほとんど見られません。2)

うつ病は「うつ」の症状だけが起こる病気ですが、双極性障害は「躁」と「うつ」の症状を繰り返す病気です。しかし、うつ病も双極性障害も「うつ」の症状はほぼ同じであるため、見分けがつきにくく、診断が難しい病気です。

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うつ病と双極性障害の違い

うつになる前にこんな症状はありませんでしたか

なぜ診断が難しいのでしょう

うつ病と双極性障害の違い

うつになる前にこんな症状はありませんでしたか

なぜ診断が難しいのでしょう

うつ病は「うつを良くする」ことが治療の目標ですが、双極性障害では、「躁とうつの波をどうやって小さくするか」が治療目標となります。したがって、患者さんの気構えとしても、「波に振り回されない」ということが重要です。2)うつ病と双極性障害では治療目標が違いますので、治療に使う薬も異なります。うつ病では主に「抗うつ薬」が処方されますが、双極性障害では主に「気分安定薬」や「抗精神病薬」が処方されます。双極性障害であるのにうつ病の治療を続けると、効果が低い場合があるだけでなく、病気が悪化する、特に躁とうつとの繰り返しが激しくなる恐れがあり、注意が必要です。2)

1)「躁うつ病(双極性障害)とつきあうために」日本うつ病学会双極性障害委員会2)「双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本」野村総一郎監修(講談社)

いくつか思い当たる場合は、「躁」や「軽躁」があったかもしれません。「躁」の症状を見逃して主治医に伝えなければ、「うつ病」と診断される場合が多くなります。では、なぜ診断が難しいのか確認してみましょう。

うつ病と双極性障害の違い

うつになる前にこんな症状はありませんでしたか

なぜ診断が難しいのでしょう

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うつ病と双極性障害の違い

うつになる前にこんな症状はありませんでしたか

うつ病では「うつ」の症状だけが現れるのに対し、双極性障害(躁うつ病)は「躁」と「うつ」の症状を繰り返します。しかし、うつ病も双極性障害も、「うつ」の症状はほぼ同じで区別がつきません。そのため、最初はうつ病と診断されるケースが多いのです。従って、うつ病と診断されても、「躁」の症状が出ないとわかるまでは、双極性障害である可能性が潜んでいますが、「躁」の症状が出てくるまで、数ヶ月~数年かかるといわれており、正確な診断を下すのは非常に困難なのです。1)

初めはうつ病だと思われている患者さんの約10人に1人が最終的に双極性障害と判明すると言われています。

1)

2)双極性障害の患者さんは、発症して以降の期間のうち、約1/3~半分を「うつ」で過ごすと言われています。「うつ」の時にしか受診しないことに加えて、「うつ」で過ごす期間が「躁」で過ごす期間よりも長いこともあり、うつ病と診断されることが多いようです。

なぜ診断が難しいのでしょう

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双極性障害の患者さんの3分の2は「うつ」のときに受診すると言われています。1)「躁」を経験していても、本人に「症状だ」という自覚がないため主治医には伝えません。そのためにうつ病と診断されてしまいがちです。一方、「躁」の症状があらわれているときは、患者さんは「調子が良い」と思っているため、受診しようとはしません。特に「躁」が比較的軽い「軽躁」である場合、周囲も見逃しがちで、主治医には伝わりません。

1) 「双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本」野村総一郎監修(講談社)2) 「躁うつ病(双極性障害)とつきあうために」日本うつ病学会双極性障害委員会3) Judd LL, Akiskal HS, Schettler PJ, Endicott J, Maser J, Solomon DA, Leon AC, Rice

JA, Keller MB: The long-term natural history of the weekly symptomatic status of

bipolar I disorder. Arch Gen Psychiatry 59 (6):530-7,2002

4) Judd LL, Akiskal HS, Schettler PJ, Coryell W, Endicott J, Maser JD,Solomon DA,

Leon AC, Keller MB: A prospective investigation of the natural history of the long-term

weekly symptomatic status of bipolar II disorder. Arch Gen Psychiatry 60 (3):261-9,

2003

うつ病が「うつ」の症状のみ現れるのに対し、双極性障害(躁うつ病)は「躁」と「うつ」の症状を繰り返す病気です。双極性障害は、「躁」の症状に応じて、大きく「双極Ⅰ型」と「双極Ⅱ型」に分けられます。

双極性障害の原因は、実はまだ完全には解明されていません。しかし様々な研究から、複数の要因が相互関係して起こるのではないかと考えられています。また、双極性障害の約2/3の人が「うつ」から始まることがわかってきました。1)

「双極性障害」は、精神障害の中で最も自殺企図が多い疾患です。実は、自殺企図率は「うつ病」よりも「双極性障害」の方が高いという報告があります。2)また、「躁」の症状がひどい時には、本人に自覚がないまま周囲に迷惑をかけることで、社会的・人間関係面での破綻が生じ、本人の失うものが大きすぎる非常にリスクが高い病気です。

「躁」の症状と双極性障害の種類を確認する

原因、発症のきっかけ

正しく治療しなかった場合のリスクを確認する

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1)「双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本」野村総一郎監修(講談社)2) C.L. Bowden / Journal of Affective Disorders 84 (2005) 117–125

単に元気すぎたり、やる気満々といった程度ではなく、気分が病的に高ぶっている状態が続くことです。

気分が良すぎたり、ハイになったり、興奮したり、調子が上がりすぎたり、時には怒りっぽく不機嫌になったり①して、他人から普段のあなたとは違うと思われてしまう

自分が偉くなったように感じるいつもよりおしゃべりになる色々な考えが次々と頭に浮かぶ注意がそれやすい活動性が高まり、ひどくなると全くじっとしていられなくなる後で困ったことになるのが明らかなのに、つい自分が楽しいことに熱中してしまう

②③④⑤⑥⑦(例えば、買い物への浪費・性的無分別・ばかげた商売への投資など)

上記②~⑦の症状のうち、少なくとも、①を含む4つ以上(①怒りっぽく不機嫌な場合は、5つ以上)の症状が、1週間以上続く場合、「躁状態(躁病エピソード)」の疑いが高くなり、さらに、仕事や人間関係に差し支えたり、入院が必要になるほどであれば、「躁状態(躁病エピソード)」と診断されます 。1)

躁と同じような状態が4日以上続き、他の人から見ても明らかに行き過ぎているが、仕事や家庭の人間関係に支障を来すほどではない場合は、「軽躁状態(軽躁病エピソード)」と診断されます。1)

「躁状態(躁病エピソード)」がはっきりしていて症状が重いのが特徴です。典型的な躁状態とうつ状態があらわれ、以前「躁うつ病」と呼ばれていた症状は、ほぼこのⅠ型に当てはまります。躁状態のときは、本人は病気と思っていません。他人への攻撃性が増して、そのためにトラブルで仕事を失ったり、離婚な

「躁」の症状と双極性障害の種類を確認する

原因、発症のきっかけ

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ど、深刻な損失をこうむるケースがあります。

Ⅰ型の「躁状態(躁病エピソード)」が重症であるのに対し、「軽躁状態(軽躁病エピソード)」とうつ状態を繰り返すタイプが双極Ⅱ型障害とされています。「軽躁状態(軽躁病エピソード)」は「持続的に高揚した開放的な気分が、少なくとも4日以上続く」というのが、ひとつの基準になっています。程度にかかわらず、本人は “調子が良い”と感じているので、なかなか問題に気がつきません。ほとんどの場合、トラブルも起こさないので、周りからも見過ごされがちです。しかし、摂食障害や不安障害、アルコール依存などが合併しやすく、じつは深刻です。

このほかに、「軽躁状態(軽躁病エピソード)」と「軽いうつ状態」をくり返す「気分循環症」。「躁状態(躁病エピソード)」と「うつ状態」を頻繁にくり返す、「急速交代型(ラピッドサイクラー)」もあります。抗うつ薬を双極性障害に使うと、この「急速交代型」になり、不安定化する場合があります。

双極性障害はこれまで、Ⅰ型、Ⅱ型という独立した疾患として診断されてきましたが、Ⅰ型とⅡ型の間には移行型もあるうえ、これらの診断を満たさなくても双極性障害に準じた治療が必要なケースもあることなどから、双極性障害の概念を連続的な「スペクトラム(七色の虹の様な状態を指す)障害」として考えようという動きが出てきました。

1)「躁うつ病(双極性障害)とつきあうために」日本うつ病学会双極性障害委員会2)「双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本」野村総一郎監修(講談社)

双極性障害は、「うつ」から始まることが多いといわれています。“「うつ」だけを数回繰り返したのちに、ある日突然、「躁」になる”というタイプがあり、最初は「うつ病」と思っていても、実は双極性障害だったということも多いようです。海外の報告によると、双極性障害に移行した「うつ」の症状の特徴として次のことを挙げています。1)1.「うつ」の発症が急性(急激に「うつ」に入ってしまう)2.「うつ」の状態が比較的重症3.「うつ」が幻覚・妄想などの精神病症状を伴ってスタートする

1)「躁うつ病はここまでわかった」加藤忠史、不安・抑うつ臨床研究会編(日本評論社)

双極性障害(躁うつ病)が発症する原因として、遺伝子の関与が考えられていますが、一つの遺伝子で起こる、いわゆる遺伝病ではなく、いくつかの遺伝子が組み合わさって発症すると考えられています。その理由は、遺伝子が基本的に同じである一卵性双生児と、遺伝子を半分だけ共有している二卵性双生児で、双極性障害発症の一致率を比較した結果、一卵性双生児が高いのですが、決して100%ではないことが判明しています。従って、双極性障害の発症に遺伝的要素は関係していますが、それだけで発症する病気ではないことがわかっています。

育った環境や、周囲から受ける慢性的なストレスなども、発症の要因の一つと考えられていますが、どの様な過程を経て発症につながるかは、はっきりわかっていません。

双極性障害の患者さんの発症前の性格を調査した報告では、社交的で、周囲に対して心配りができ、ユーモアがあり、現実的な志向性が強い性格の人が多い、とも言われています。

こういった発症の危険因子が相互にかつ複雑に関係し、過度のストレスや、生活リズムの乱れがきっかけとなって双極性障害を発症すると言われています。

「躁」の症状と双極性障害の種類を確認する

原因、発症のきっかけ

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約15,000人の双極性障害の患者さんを一定期間追跡した海外の研究では、約5人に1人(19.4%)が自殺で亡くなっています。1)

双極性障害(躁うつ病)では、「躁」から「うつ」に転じたタイミングが最も危険で、「躁」のときの自分の行動を思い返し、激しく自分を責めて自己破壊的な行動を起こしてしまいがちです。また、「躁」の症状と「うつ」の症状が同時期に入り混じって表れる「混合状態(気分は落ち込んでいるのに、焦る気持ちが生じて、じっとしていられない)」の人も自殺率が高いと指摘されています。

双極性障害は再発しやすく、「躁」のときには常識では考えられない行動をとってしまうため、トラブルを繰り返して社会的な損失や人間関係の破綻を引き起こしてしまいます。

双極性障害の患者さんが「うつ病」と診断されると、通常、抗うつ薬が処方されます。しかし、双極性障害の患者さんに抗うつ薬は効きにくく、場合によっては治療の効果が低くなったり、突然「躁」になる「躁転」を起こす可能性や、不安定な「急速交代型」に変化することがあるので注意が必要です。1)

双極性障害の治療は単極性のうつ病より難しいとされていますが、周囲のサポートを得ながら正しく治療を続ければ、症状に振り回されず、安定した社会生活を送ることができますので、早めに専門医を受診しましょう。

種「躁」の症状と双極性障害の類を確認する

原因、発症のきっかけ

正しく治療しなかった場合のリスクを確認する

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1)Osby et al. Arch Gen Psychiatry. 2001;58:844-850

双極性障害(躁うつ病)は、単極性うつ病よりも治療が難しく、長期化する傾向があります。治療を続けるには周囲の協力がとても大切です。治療は薬物療法が基本になりますが、精神療法等も有効です。どういった治療方法があるか、確認してみましょう。

一般的な双極性障害の症状と治療の流れを症例でご紹介します。具体的な「躁」や「うつ」の症状と、受診、そして治療経過を確認しましょう。

治療すれば改善できる病気です

症例紹介

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双極性障害(躁うつ病)は、きちんと治療すれば改善できる病気です。どんな治療方法があるか、確認してみましょう。

気分安定薬を中心に、症状に応じて、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬などを組み合わせて用います。

双極性障害の治療の中心となるお薬です。躁やうつなどの気分の波を小さく、安定させるために使うお薬で、再発予防にも効果があります。治療を開始する時から使われることの多いお薬ですが、妄想を伴うなど、症状が重症になってきた場合は、抗精神病薬を追加したりします。

「躁」のいらいらをしずめ、気持ちを穏やかにする作用や、睡眠を助ける働きがあるものもあります。特に新しい世代の抗精神病薬は、海外では再発予防効果や抗うつ効果があるとの報告もあり、欧米では双極性障害のお薬として認められています。日本で双極性障害の適応症がある比較的新しい抗精神病薬は、現在2剤ありますが、躁症状及びうつ症状の改善の両方に適応がある薬剤は1剤のみとなっています。(2013年6月現在)

単極性うつ病で用いる抗うつ薬は、双極性障害の場合、「うつ」の症状から「躁」の症状へと躁転させる可能性もあるため、基本的に用いません。ただし、重症の「うつ」がある場合は、気分安定薬と抗うつ薬を併用することがあります。

不眠がある場合に用います。寝つきが悪い、朝早く目が覚めるなどの症状に合わせて、それに合ったお薬を使います。急にやめると眠れなくなることが多いため、やめるときはすこしずつやめなければなりません。

治療すれば改善できる病気です

症例紹介

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薬物治療とともに治療の中心となる精神療法にはさまざまな種類があります。その中から、主な精神療法をご紹介します。

医師からの一方通行の疾患教育ではなく、医師と患者さんがマンツーマンで患者さんの状態を話し合いながら、患者さんと同じ目線で、疾患に対しての情報共有や理解を深める方法です。また、夫婦など家族を交えて行うこともあります。医師と患者さんご家族が、病気や治療について、共通の理解を得て、ともに治療をしていくために必要な治療と言えます。先輩患者さんの経験をもとに、具体的な対処方法なども聞くことのできる集団療法も行われています。患者さんが、心理教育で得た知識をもとにして、自分の行動を変えることが目標です。

患者さんが陥りやすい否定的なとらえ方に、自分自身で気づいてもらい、否定的なとらえ方になるきっかけを、患者さんの行動について治療者と患者さんが一緒に検討し、その行動への受け取り方を変えることで、患者さん自らが適応的なとらえ方を選択できるようにします。日常生活の中での出来事をより適応的にとらえる考え方を学び、結果的に気分を調整していく治療法です。

最近患者さんが感じた「身近な人の死や離婚(重要な人の喪失)」「独立したいなど今の地位への不満(自分の役割への不満)」「結婚、出産、昇進など(自分の役割の変化)」の3つの対人関係上のテーマについて、その対処方法を治療者とともにシミュレーションなどで疑似体験する中で、対人関係の捉え方を変えていく方法を検討します。

患者さんの毎日の起床・入眠、食事、出勤などさまざまな活動時間を記録し、リズムの乱れの原因を検討し、その乱れを修正していく方法です。睡眠時間の修正などで、徹夜が躁転のきっかけになった患者さんが、ある時間になったら電気を必ず消す、という方法で症状が改善した例もあります。

他にも、下記のような治療方法があります

電極を頭皮上につけて脳内に刺激電流を流すことで治療に結びつける方法です。現在は、手術室で全身麻酔をして意識をなくし、筋弛緩薬を使いけいれんを起こさない状態で実施しますので、従来の方法より、副作用が少なくなっています。なかなか改善の得られない「うつ」の症状に用いられる治療方法のひとつです。有効率が高く、即効性であるなどメリットもある反面、麻酔が必要であったり、術後一時的に記憶が薄れるなどの副作用もあるため、十分な説明と同意のもと、心電図や血液検査を行い、患者さんの安全性に配慮して慎重に行う必要があります。

上記の治療方法のうち、患者さんそれぞれに合った方法を選択したり、組み合わせたりしますが、これらの治療方法を活かすためにも、しっかりと睡眠時間をとるなど、生活のリズムを整えることが欠かせません。

Bさんは、20代前半で結婚し、数ヶ月前に出産しました。出産後しばらくしてから、家事をする気がおきなくなり、育児に対する自信もなくなり、「こんな自分は母親失格だ」と思うようになりました。

治療すれば改善できる病気です

症例紹介

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きちんと子供の面倒を見なくてはとは思うのですが、気分が落ち込んで、何もできない日が1ヶ月以上続いていました。

ところがある日突然、急に派手な格好をして遊びに出かけるようになり、家事や育児を放棄して夜遊びを続けたり、異性とのトラブルを起こすようになったのです。

周りの人間は皆、自分の魅力に夢中なのだと思い込み、友人関係は崩れ、不健康な生活から健康を害し、結婚生活も破綻寸前の所までいってしまいました。

「自分は病気ではない」というBさんでしたが、母親がBさんを説得し、専門医の診察を受けることにしました。受診時の診断は「双極性障害」で、治療を始めることになりました。

Aさんは、これまで順調に会社でのキャリアを積み重ねてきました。仕事も順調に能率よくこなし、たまに強引なところはありましたが、周囲の評判も上々だったので、大規模プロジェクトのメイン担当をまかされることになりました。休みもなかなかとれない状態が続きましたが、それでも本人にとっては充実した日々でした。ところが、ある日を境に、周りが驚くほどテンションがあがり、実現性の乏しい企画の提案を次々と行うようになりました。あまりの突っ走りっぷりに、同僚や部下は「おかしい」と感じ始めました。しかし本人は「今の自分こそ、本来の自分だ」と言って取り合いませんでした。

プロジェクトの途中頃から、陽気だったはずのAさんは、急に人が変わったようにふさぎ込み、会社を休む日が多くなりました。家では新聞もテレビも見ず、寝込む日が2週間以上続きました。心配した奥さんが、精神科での受診を説得し、診断を受けることになりました。受診時の診断は「双極性障害」で、治療を始めることになりました。

周囲が異変を感じてから2週間。相変わらず「絶好調」といいはるAさんが提案す企画はいずれもまとまらず、プロジェクトは空中分解し、会社の机の上には、請求書と作成途中の書類が散乱した状態で残されていました。

双極性障害(躁うつ病)の治療を受ける場合は、「精神科医」にかかりましょう。

本人と家族や周囲の受け止め方にはギャップがあったり、性格ととらえられがちで病気と思われない事がよくあります。患者さんご本人、周りの人達はどういった悩みをかかえているのか、確認してみましょう。

「うつ」の症状は本人がつらさを自覚できますが、「躁」の症状は本人に病気の自覚が乏しいため、受診時になかなか医師へ正確な状況が伝わらない事があります。正しい治療をうけるために、受診時に気をつけるポイントを確認してみましょう。

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受診時のポイント

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双極性障害(躁うつ病)は一般的に長期化しやすい傾向があり、再発率も高い病気です。たとえ症状が治まっても、再発を予防するために治療を続ける必要があります。本人は症状が治まるとつい治ったと思いがちですが、自己判断で服薬をやめたり職場復帰しようと焦らず、時間をかけて治療することが大切です。

日常的な気分の揺れは誰にでもあるものです。誰でも楽しく幸せな気分や憂うつな気分になったりしますが、それらは病的な「躁」や「うつ」ではありません。思い当たることが何もないのに「躁」の症状が数日間から数週間に渡って続き、何らかの問題を起こし始めているときは双極性障害が疑われます。「うつ」に関しても同様です。その程度や持続時間、日常生活に支障をきたす点で、単なる気分の変化と病的な「躁」や「うつ」とは異なります。

双極性障害の「躁」の症状は“絶好調”や“陽気な性格”に見えることがあり、病気の可能性に気づきにくいものです。また、「うつ」から躁転することで“気分が変わりやすい性格”と思われることもあります。さらには、「双極性スペクトラム」のところでご説明しましたように、性格から双極性障害まで切れ目がないように思えるところもあります。しかし、病的な「躁」や「うつ」が生じている場合には、様々な問題が生じ、治療が必要になります。

多くの双極性障害の患者さんは、「躁」の症状のときは“調子がいい”、“エネルギッシュに活動できる”と感じ、それが病気だという意識がありません。しかし、双極性障害の「躁」の症状は、周囲に迷惑をかけるだけでなく、本人が深刻な社会的損失を被る恐れがあります。早期の治療のために、周囲が病気に気づき、受診させることも重要です。

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受診時のポイント

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「うつ」や「躁」の症状に長年苦しめられ悪戦苦闘してきた人も少なくありません。しかし、病気との付き合い方を知ることで、症状をコントロールし、その方の能力を発揮することが可能です。そのためには正しい治療計画を立て、生活リズムを整える、薬を飲むなど病気を悪化させない、症状を再発させないよううまくコントロールしていきましょう。また、周囲に協力してもらうことも大切です。

家族歴(双極性障害など精神疾患になったことがあるか)「躁」の症状だったことがあるかもしれないと思い当たることがある以前にも「うつ」の症状になったことがある以前に抗うつ薬を飲んだとき、気分が高まった様子があった

などの経験がある場合は、治療の選択肢を決める際、どの薬を使えばよいかなどの手がかりになりますので、正確に伝えましょう。

「躁」の症状でも「うつ」の症状でも、患者さん本人と周りの方では、感じ方が異なります。「うつ」の症状は本人がつらさを自覚できますが、「躁」の症状は本人に病気の自覚がない事から、受診時になかなか医師へ正確な状況が伝わらない事があります。したがって、患者さんからの情報だけでなく、周りの人(家庭や職場など)からの情報も、治療する上では欠かせない情報となります。ご家族の方は、事前に職場など、家庭以外での本人の様子を聞いておくことができれば、診断に役立ちます。また、受診時の情報として

「うつ」の症状の患者さんの場合「うつ」の症状の患者さんは、本人から調子が悪いといわれた時に受診を勧めると、同意は得られやすい傾向にあります。ただ、「うつ」がひどく、自分の殻にこもってしまい、周囲と何も話そうとしない場合もあります。元気がない、朝起きられないなど、周りから見て様子がおかしい状態が2週間くらい続くようであれば、受診を勧めてみましょう。

「躁」の症状の患者さんの場合「躁」の症状の患者さんは、気分が良く、自分はどこも悪くないと思っていますので、病院に行くこと自体になかなか同意してもらえません。だからといって、患者さんを取り押さえて連れて行ったり、だまして連れて行くことは禁物です。最初にこうしたことで信頼関係を失うと、その後の治療に大きく影響します。同意が難しい場合、まずはご家族の方が医師に相談することから始めてみてください。

多くの方が悩んでいます

受診時のポイント

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患者さん本人は、「うつ」の時は自分を情けなく思い、「躁」の時には好調ととらえ、自覚がありません。逆に家族や周囲は、「躁」の時は暴言をはいたり、社会的信用を失う行動など、周囲はたいへんな迷惑を被ることがあり、「うつ」の時は患者さんがおとなしく落ち着いている分、ありがたいとさえ感じる事があります。患者さんは、家族や周囲の協力によって、治療を続けることができます。ご家族は、「躁」や「うつ」の症状にふりまわされることなく、治療の協力者となることで患者さんの症状改善への大きな手助けとなります。

ご家族の方へ

患者さんへ-あせらず治療しましょう

病気との付き合い方~私の経験~

お役立ち情報

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「うつ」や「躁」の症状に長年にわたって苦しめられてきた人の中には、なかなか病気を受け入れられない方もいらっしゃいます。しかし、病気との取り組み方しだいでは、症状をコントロールし、その方本来の能力を発揮することが可能です。そのためには、症状のないときの自分の生活を思い出し、新たに生活を立て直しながら、あせらず、しっかり、治療を行なっていくことが重要なポイントとなります。

双極性障害の患者さんとご家族に役立つ情報を提供しています。利用可能な社会的サポート、患者支援団体・患者会の情報、関連するウェブサイトへのリンクなどをご紹介していますので、是非ご活用下さい。

第8回 O.Yさん第7回 M.Yさん第6回 S.Sさん第5回 M.Nさん第4回 芳賀佳奈恵さん第3回 藤臣柊子さん第2回 宇田川健さん第1回 出口詩乃さん

双極性障害と上手につきあっている方に、ご自身の経験や病気について思うことをお話いただきました。

「うつ」の症状の患者さんへの接し方

今の状態を責めない話を聞いてあげる:良いアドバイスをしようと焦らず、「まず聞こう」という姿勢が大事家族の病気を恥じない一緒に居る時間を多くする世話をやく

してはいけないこと

「躁」の症状のときの言動を後々まで責める急性期(うつや不安の症状が強い時期)に、「頑張れ」などの励まし急性期(興味・関心がなく、楽しく思えない時期)に、「外出しよう」などという患者さんの意思に反した、気晴らしの誘い「なまけている」、「治す気があるのか」と責める「薬に頼ってばかりいる」(再発防止期には特に)

「躁」の症状の患者さんへの接し方

双極性障害(躁うつ病)は、症状を繰り返す間に、さまざまな形で社会生活に障害が生じます。従って、症状自体を治療することに加えて、患者さんの社会生活を守ることが重要です。それにはご家族のサポートが不可欠です。ご家族の方は、トラブルがあっても、病気の症状であることを理解し、感情的にならないようにしましょう。また、「躁」「うつ」それぞれの時期の患者さんへの接し方や「してはいけないこと」を知っておきましょう。

「うつ」の症状の患者さんは、まず休息で心・脳と体をしっかり休めることが大切です。今まで患者さんが楽しいと感じていたことも、楽しいと感じなくなっています。ですから、励ましたり、気晴らしに無理に誘ったりすることは控え、そっと見守ってあげてください。また、「うつ」の症状がひどいと、患者さんは「この世から消えてなくなりたい」と考えることがあります。もしも自殺をほのめかされたら、すぐに否定するのではなく、まずは患者さんの話をよく聞いてあげましょう。そのうえで、患者さんを大切に思っている、ということを伝えていただくと共に、すぐに主治医に相談するようにしてください。

「躁」の症状の患者さんは、いろいろなことに手を出し、活動が過多になるため、ご家族も患者さんとつき合うことに疲れ切ってしまいがちです。中には、ご家族にあたったり、暴力をふるったりする患者さんもいます。ご家族は、「私が我慢すればよい」と思って受診をうながすことをためらわれることがあります。しかし、ご家族の我慢が治療の遅れにつながると、患者さんのためになりません。また、患者さんとご家族との関係が悪くなってしまっては、長期的な治療に悪い影響を与えます。ご家族が一人で問題を抱え込まず、早めに受診させることが必要です。

ご家族の方へ

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(感情的にならず)行き過ぎた行為は注意する特別扱いはしない受診をうながす気持ちを落ち着かせる手立てを一緒に考える

してはいけないこと

言うことを鵜呑みにして、真に受けてしまう「正常じゃない」、「また困ったことを」などとバカにする腫れ物にさわるように接する躁の状態を利用する(買い物をさせるなど)

患者さんへ-あせらず治療しましょう

患者さんが職場などの社会に復帰する時は、ご本人も「今まで家族に迷惑をかけた」という気持ちが強く、つい必要以上にがんばりがちで、復帰への不安やつらさをご家族に伝えられないこともあります。一歩ずつ段階的に進んで行くこと、各時点での目標をはっきりさせ、今何をやるのが良いのか(何はやらなくとも良いのか)を確認することが必要です。復帰後しばらくは、患者さんの気分の安定が維持出来ていることが、大事です。特に、住宅の購入、妊娠、出産などの大きな出来事は、患者さんに大きな負担がかかり、再発のきっかけにもなりやすいので、気分の安定が十分維持できるまで、しばらく待つことも重要です。回復期にも、可能な限りご家族が診察に同行し、大きな出来事の選択については、主治医に事前に相談しながら計画していきましょう。

患者さんの不調は、その態度や行動に現れます。ご家族が気づいた場合は、早めの受診を勧めましょう。

また、ご家族が一緒に受診することは、患者さんにとって治療の大きな支えとなります。

双極性障害の患者さんは、「躁」の症状からくる言動により、周囲との関係が悪くなり、孤立しがちです。患者さんが孤立してしまうと、「躁」の時の損失を止められないばかりか、「うつ」の症状も悪化してしまい、最悪の事態も招きかねません。患者さんが一人になりたがっても放っておかず、いつも気に掛けているというメッセージを伝えることで、本人の孤立感をやわらげるようにしましょう。

双極性障害(躁うつ病)は、入院し適切な治療を受けると、症状は軽快します。患者さんも家族も、治ったと思い、「薬はもういらない」、「もう仕事に復帰できるのでは」と自己判断してしまうこともよくあります。しかし、双極性障害はとても再発率が高く、90%以上が再発するとの報告もあります。1)自己判断で薬をやめたり、通院しなくなると再発の恐れが高まります。再発を繰り返すと、次第に病相の間隔が短くなる(急速交代型)傾向があり、そのたびごとに周囲との信頼関係が悪くなり、仕事や家族を失うケースも出てきます。治療の方針や薬については、主治医とよく話し合いましょう。

双極性障害の患者さんの中には、10年、20年たっても再発せず、問題なく生活している方もいらっしゃいます。再発予防上、重要なのは、ご自身の病気を知り、症状の波をコントロールしようという積極的な姿勢なのです。そのためには、再発の予兆をとらえるとともに、しっかりとした再発予防の対策を立て、それを実行できるかということが、とても大切になってきます。とくに、「躁」になり始めた時に、気分にまかせて行動していると症状が激しくなり、周囲の説得を聞かなくなってしまい、薬を飲まないままさらに症状が悪化する場合があります。本人だけでなく、周囲も再発の予兆にはどのようなものがあるかを知っておき、こんな症状が出たらすぐに受診する、と本人、家族、医師の間で決めておくのもよいでしょう。

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「躁」や「うつ」の症状が改善したあと、どのようなタイミングで復職をすればよいか、というのはとても重要な問題です。しかし、どのような方法がよいのか、一定した見解はなく、ケースバイケースで主治医と相談することが必要です。

「躁」の症状からの復職は、慎重に行う必要があります。本人に病気の認識がないことに加え、「躁」の症状からの回復途上で刺激を受けると症状が再燃することも考えられます。症状が完全になくなり、しっかりと睡眠がとれるようになってから復職を検討しましょう。

「うつ」の症状からの復職も、回復が不十分なまま復職すると再発する可能性があります。周りから見てすっかりよくなったように見えても、短時間勤務から始めて、少しずつ時間を長くして慣らしていきましょう。

あせらず治療を続けるためには、社会的なサポートを活用したり、同じ境遇の方々との情報交換も大切です。双極性障害の患者さんとご家族に役立つ情報へのリンクをまとめました。

1)「双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本」野村総一郎監修(講談社)

■双極性障害と診断されるまで

22歳の時、大声を出して暴れて、両親に両脇を抱えられ病院へ。そのまま入院しました。統合失調症と診断されたようですが、両親は僕を傷つけまいとして僕には病名を知らせませんでした。

■診断が変わったきっかけ

38歳の時に街で大声を出してしまい、措置入院。その時の先生が、これまでの入院歴や言動などを見て、統合失調症から双極性障害に診断名が変わりました。

■病気とのつきあい方

私は双極I型障害なので、躁転した途端、バーンと跳ね上がって、自分が神様になっちゃうんですね。そうならないように薬で心の波を抑えているのですが、その抑え加減が実に難しいんです。最近はいい具合になっているのですけど、あまり抑え過ぎていると寝てばかりになっちゃうし、低めに抑えていると、ちょっとしたストレスで上がって、周りに迷惑をかけてしまう。ちょっとしたストレスでも躁転せずに、寝てばかりでもない、普通に暮らしができれば一番良いのですが本当に難しいのです。減薬して躁転したこともあるので、病のために飲んでいる薬との兼ね合いを慎重に考える必要があると思っています。

時間があるときは、就寝前に、妻とティタイムを取るようにしています。それが結構、夫婦のコミュニケーションとしては大事で、幸せを感じる時間です。それから、子供たちと遊ぶことも、私にとっては大切な時間です。

2015年6月 掲載

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O.Yさん

第8回 O.Y さん

第7回 M.Y さん

第6回 S.S さん

第5回 M.N さん

第4回芳賀佳奈恵さん

第3回藤臣柊子さん

第2回宇田川健さん

第1回出口詩乃さん

第8回 O.Yさん

M.Yさん■双極性障害と診断されるまで

■診断が変わったきっかけ

■双極性障害を疑った4つの根拠

■病気とのつきあい方

2015年6月 掲載

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病気との付き合い方~私の経験~

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うつ病として約20年間ずっと治療を受けてきました。頑張れない自分が、とても嫌でした。自殺は図らなかったけど、生きているのが苦痛でした。

うつ病から双極性障害に診断が変わったのは、主治医が転勤で、別の人に変わったことがきっかけです。私が双極Ⅱ型障害ではないかと疑った4つの根拠があると教えてくれました。

一つ目は、「下がっていると言っても、時々ハイな時期もあるように思った」というものです。最初のうつ病の診断のもとになったのが、受験のプレッシャーで、焦りはありながらも、気持ちが落ち込んで、生活に支障が出た事です。浪人してからは、しばらく勉強を頑張れた。しかし、燃え尽きて、ぱたっと、本を読む事すらできなくなった。勉強できなかったのに、際どいところで、進学した。しばらく大学生活を送った。かと思ったら、不調で休学した。なんとか、卒業した。調子がぐずぐず悪くて、就職活動自体ができなかった。デイケアに通いはじめて病気の体験と自分なりの工夫をまとめて、冊子を作って福祉のイベントで売ったら、少し売れたり……長い期間で客観的に見れば波があるとわかりますが、本人にとっては、ずっと苦しいし、診察室では、苦しい話ばかりしていました。

け飲んでいて、状態が改善されないのは、なぜだろう」それが、うつ病なのかどうか、疑った二つ目の根拠だったそうです。3つめは家族歴で、父が双極性障害のⅠ型だったのです。もう一つは、「非定型の特徴がある」という事でした。うつ病でも、不眠ではなく、過眠な傾向があったり、通常のうつ病とは違う特徴を、主治医は、いくつか感じたのだそうです。

生きていれば様々な事が起こります。激しく気候が変わるときや、親類が事故にあったり、人間関係がこじれてしまう事もある。そういうときは、掛け算の九九が出てこないくらい、酷い状態になる事もあります。以前は、それで、何週間も寝たきりになっていた。でも、回復が早くなりました。主治医にも「薬を飲んで、波は完全には無くなりません。波乗り上手になってください。サーファーになってください」と言われています。

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■双極性障害と診断されるまで

■診断が変わったきっかけ

■病気とのつきあい方

2015年6月 掲載

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S.Sさん

私が発症したのは17歳、高校生の時でした。19、20歳のときに、一回、再発しました。始めは、不眠だったり、食欲が無かったり。あと、漠然と物凄く恐怖感というか、不安感がありました。授業中に、先生の言っている事が頭に入って来ない。ノートも取れない。黒板を見ているのだけど、それを写す事ができない。「こんなんじゃダメだ、こんなんじゃダメだ」と思うのですけれど、タイヤがぬかるみで空回りしているような感じ。焦るけれど、身体は全然ついて行かない。それで、病院に行きました。一回目にうつ状態になった時、薬を出されて、飲みました。普通のうつ病の説明にあるみたいに、1, 2週間でだんだん教科書的に効いてきて、学校にも行けるようになって、しばらく経って飲まなくなりました。でも、再発した時に同じ薬を飲んでみたけれども、今度は、なんだか、どうも変わらない。

何回かのうつ状態を再発したとき、最初効いたと思った薬が、二回目に出してもらっても、必ずしも効くとは限らず、別の抗うつ薬にすると、最初はちょっと効いた感じもしたけれど、結局は良くなりませんでした。薬が効いたとき調子が良いと思い、診察でも「最近絶好調です!」と報告。主治医は詳細を聞いて、少し、変だなと感じていたようです。この辺りから双極性障害の疑いが出てきました。浪費、徹夜、携帯ゲームをする頻度が多くなるような躁を疑わせる状態もあったことから病名が“双極性障害”に変わりました。好調のとき・自分に都合の悪いこと・些細と感じること、を自ら進んでは話しませんが、浪費や人間関係の破綻、睡眠の変

わたしにとって、幸せ感ってなんだろうと思った時に思い浮かんだのは二つあって、ひとつは、自分のこれまでの人生を振り返ってみると、本当にどん底で、寝込んでいて、死んでしまおうと思っている時でも、いつも止めてくれる家族がいた。あの時はすごく辛かったけれど、最悪の状況ではないなと思った、というのがひとつ。もうひとつは、世間で言われている幸せと自分の幸せ感がずれていてもいいと思えることでしょうか。例えば、以前働いていた時の収入と今得ているお金を比べたら、経済的にはだいぶ差はあるけれど、自分で、ああこの仕事は良いなって思える事をやれているので、とても満足していたりします。いま、うつ病といわれていて、なかなか良くならない人の中では、躁うつ病のひともいるかもしれないし、いろんな人がいると思うのですけれど、自分は絶対にうつ病で治らないんだ!とか、自分は絶対に双極性障害に違いないっていう“絶対”と決めつけることはしないで欲しいなと。また、今日出来る事は明日に延ばすなって、わたしもよく言われるんですけど、先延ばしにしてもいいんじゃないかって思います。

第6回 S.Sさん

■双極性障害と診断されるまで

■診断が変わったきっかけ

■病気とのつきあい方

2015年6月 掲載

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TOP > 病気との付き合い方 > 病気との付き合い方~私の経験~ > 第5回 M.Nさん

M.Nさん

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第5回 M.N さん

第4回芳賀佳奈恵さん

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第2回宇田川健さん

第1回出口詩乃さん

11年前、仕事で残業が続いたり、徹夜があったり、パワハラもあったり、様々なことが重なって、それで眠れなくなってしまいました。とにかく元気が出ない、やる気も出ない。眠れないので疲れもたまり、頭の回転も鈍くなったりで全くやる気が出なくなりました。そんな時に、雑誌にうつ病チェックみたいなのがあって、やってみたら全部当てはまり、今の現状がよくなればという一心で、精神科へ行きました。その時にうつ病と診断され、抗うつ薬と睡眠薬を処方されて休職しました。うつ病の薬を飲んで、落ちている気分を無理やり上げられているのかなという思いはありました。活動的にはなっているのですけれど、ハッピー感みたいなものはあまり無かったです。

二度自殺未遂をして運ばれた病院で、これまで飲んでいた薬が全くがらっと変わりました。それがうつ病ではなく他の病気で使用されると知り、先生に尋ねたところ、双極性障害と診断されました。うつ病にしては、不自然な行動がいくつかあったし、双極性障害症状を聞いた時にあてはまる行動が多かったので、自然と納得できました。例えば、毎日仕事が終わる時間になると夜な夜な派手に遊びたいという思いがあったり、ギャンブルにのめり込んだりしたんです。自分はうつ病と診断された時は、双極性障害という言葉を知らなかったので、気分の波が上がっている状態が病気につながるということも知りませんでした。上がっている(躁状態)のエピソードを話すってしないじゃないですか。どうしても落ちているエピソードばかり話してしまうので、些細なことでもいいので、先生に話す事が大事なのかなと思います。

今まではどん底生活か、派手な生活かの両極端。激しい生活は散々してきたので、波瀾万丈はもう十分かなと思います。親にこの病気を理解してもらうのに10年かかりましたが、今は、マイペースで治っていけばいいね、と言ってくれます。理解者がいて、結構今は幸せといえば幸せです。そのためには薬を飲んでもいいと思っています。

Q:双極性障害かなと思ったきっかけは、なんですか?

Q:「双極性障害」と診断されて、どのように思いましたか。

Q:病気をコントロールしながらの生活のコツを教えてください。

Q:周囲の人にわかってほしいこと、サポートしてほしいことは何ですか。

2012年7月 掲載

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芳賀佳奈恵さん(50代、女性)

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第7回 M.Y さん

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第5回 M.N さん

第4回芳賀佳奈恵さん

第3回藤臣柊子さん

第2回宇田川健さん

第1回出口詩乃さん

第4回 芳賀佳奈恵さん

最初はうつで発症しました。40歳のとき、離婚がきっかけで、夜眠れなくなったり、食欲がなくなったり、希死念慮は出てくるし、うつの典型的な症状でした。うつの症状が悪くなると1週間程度から2カ月ぐらい入院していました。うつになって3年目、入院中に、いきなり高揚感が湧き上がってきて、すごくハッピーでウキウキしてて、病室の中で音楽をかけて1人で踊りだしていたのを院長先生に見つかって、「躁転したんじゃないか」と言われ、その後、躁うつ病と診断されました。それが12年くらい前です。

すごく印象に残っているのは、とにかく寝込んで・・うつがより重くなった気がしたことです。ハイテンションになった時期がやがて終わって、すごく重いうつになってしまって、本当に布団から出られない。それまではうつ症状のときも働いていて、うつでも頑張りはきいていたのですが、その頑張りみたいなのが、双極性障害になってからきかなくなってしまいました。ずっとうつではなくて、気分が上がってくると活動的になるので、寝込むと、「怠けている」とか、「仮病を使っている」とか思われて、理解されなかったです。また、家族から「うつだけのときのほうが安心していられる。ちょっと良くなると、すぐすっ飛んでどこか行っちゃう」とか、「寝ててくれたほうがいい」と言われたこともあります。

日記とかは長続きしなかったんですが、それでも、やっぱり本を読んだりとか、ネットで知識を得たりとかして、知らない間に参考にしていました。私は、早くからネットの中で、オフ会というかたちでリアルに共通の友達が出来たので、そういう人達から、いろいろ工夫していることとかを取り入れたりしました。あとは、病院の先生とのお付き合いも長くなってきたので、信頼関係が築けて、お薬も先生と相談して決めることができたのも、すごく良かったですね。言われるままに何を飲んでいるかわからないよりも、自分で「お薬110番」とかで調べたりして、自分で飲んでいる薬が何であるかをちゃんと意識しているほうが良いと思います。私にとっては、コントロールというのはやっぱり主治医との関係が良いふうになることですね。生活のコツとしては、例えば、うつの時に備えて、簡単に食べられるように冷凍食品を用意しておくとか、カップラーメンを買っておくとか、レトルトのご飯を準備しておくとかしています。

子どもは、「ごめんね、ご飯作れないんだ」と言うと、「具合悪いのなら寝てて」という感じで言ってくれて、その代わ

Q:これからの目標を教えてください。

り、良くなると、「ご飯、ご飯」とか、「お弁当じゃ嫌だ」とか、「冷凍じゃ嫌だ」と言って甘えてきます。やっぱり、そこは見ているのですよね、私の状態を。躁のときにほいほいと出かけてしまったりだとか、お友達の家に何日も泊まりに行ってしまったりすると「連絡ぐらいはちゃんとしてよね」とか、「気をつけて行ってきてね」とか言われます。

再発防止ということでは、双極性障害は明日が見えない病気だと自分では思っています。明日の具合が落ちているのか、上がっていっているのか、わからない病気だと。上がりすぎないようにとかは、なかなか防ぐのは難しいです。睡眠というのはひとつの目安になっているかなと思いますね。躁の最中は睡眠時間が短いです。何か取り返したいような気持ちになるのです。うつで、ずっと家にこもっていたから。あれもしたかった、これもしたかったということを取り返したいから出ていってしまうというようなことがありますね。でも、確実に体は疲れがたまっているので、ドーンと落っこっちゃうんですよね。疲れていないというより、疲れを感じない状態になっているだけで。ちょっと行動的にあまりにもハイ過ぎた、普通とは違うこと、そういうことはしないようにと思ってます。とくに子どものことを思うと、同じ様なことを繰り返してはいけないと、その都度思ってきました。それが私のコントロールとか再発防止なのだと思います。

これからの目標は、やっぱり私たちの病気は、寛解ということだと思います。自分は価値のない人間だと、未だに思ったりするときもあります。未だにそういう弱い部分が残っているので、やっぱり寛解を目指したい。また、私は当事者の会の仕事をしていて、ときどきやっぱり家庭と仕事、両方は無理なんだと思うこともあります。でも、必要とされている間は一生懸命やっていこうかなと思って。そこで確かにやりがいみたいなのを感じている自分もいるので、ちょっとでもお役にたてる間は頑張っていこうかなとは思っています。そして、もうちょっと子供もかまってあげたいなと思っています。

2012年6月 掲載

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第8回 O.Y さん

第7回 M.Y さん

第6回 S.S さん

第5回 M.N さん

第4回芳賀佳奈恵さん

第3回藤臣柊子さん

第2回宇田川健さん

第1回出口詩乃さん

第3回 藤臣柊子さん

藤臣柊子さん(40代、女性)漫画家

Q:双極性障害かなと思ったきっかけは、なんですか?

Q:「双極性障害」と診断されて、どのように思いましたか。

Q:病気をコントロールしながらの生活のコツを教えてください。

Q:周囲の人にわかってほしいこと、サポートしてほしいことは何ですか。

Q:これからの目標を教えてください。

実は、私が双極性障害かな、と思ったワケではなく、当時かかっていた心療内科の先生が「あなたはもしかしたら、うつ病ではなくて、双極性障害のⅡ型ではないか?」との診断を下されたのでありました。うつ病から発生するパニック障害的症状、と思っていたら、ハイになる(つまり躁病)ため、苦しくなるのでは?という事で、うつ病とは違う薬を出していただいたところ、かなり効いたので「双極性障害Ⅱ型」という事になったのであります。

特になんとも思わなかった、というか。元々、幼少時から大騒ぎして走り回るか、無言で室内で本を読んでいるかのどちらかだったし(授業中に暴れるような事はありませんでした。礼節はきちんとするべき、と冷静に思って行動していたようです)自分には裏表がある、と、高校生くらいの頃にははっきりわかっていたので、びっくりもしなかったと言うか。ある種納得が行きました。

私の場合は適宜薬を使いながら生きるというのが一番のようです。時々量を増やしたり減らしたりしてもらいながらバランスを取っています。周囲にもこういう症状があるので、長い時間話し続けるとか、仕事にしても、時間通りにできず遅れてしまう事もあります、申し訳ございません、と先に説明すると、理解していただけるようになりました。普通にごく当たり前と思われている事がまったくできない事も多々あるので、それも説明するようにしています。(説明できないほど調子の悪い時は、メールでのやりとりにしていただいております)

身近な人々に理解してもらえない事がありますが、精神的にかなり微妙な人間なので、時々体調も脳調もよろしくない時には誰にも会えないとか、説明をするようにしています。多分、今現在、周囲にいる人々は、なんとなくわかってくれていると思います。イマイチ理解されてない部分は確実にあるので、かなりくたびれる事もありますが、そういう時のために、いつも薬を持ち歩いています。やはり、信用できる病院があって、なんでも話せる医師がいてくださるのはとてもありがたい事です。

いろいろやりたい事があるのですが、まだイマイチですね。でも、間違いなくいろいろな事が変化して行くと思うので、きっとうまい具合にピタッとタイミングが合う時が近々やって来ると勝手に信じ込んでおります。その時にはきっと道が見えると思うし。なんとなくですが、全部がつながっていいカンジで流れて行けるという気がするので、自分の感覚を信じて、全部がうまく行くのだと信じて行動しています。(動けない時や、動くべきではない時には動かない、という事をはっ

きり理解する事も大事です)

2012年6月 掲載

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第2回宇田川健さん

第1回出口詩乃さん

第2回 宇田川健さん

宇田川健さん(40代、男性)

Q:双極性障害かなと思ったきっかけは、なんですか?

Q:「双極性障害」と診断されて、どのように思いましたか。

Q:病気をコントロールしながらの生活のコツを教えてください。

Q:周囲の人にわかってほしいこと、サポートしてほしいことは何ですか。

Q:これからの目標を教えてください。

特定非営利活動法人地域精神保健福祉機構(コンボ)共同代表

大学1年生の夏休みが終わったころから、だんだんうつっぽくなってきて、内科にかかっていたのですが、内科の先生に「死にたい」と言っても「精神科に行ってください」と言われるだけでした。でも、精神科の先生にかかるのは怖いので、かからないでずっといたら、ある日突然、ストンと躁状態になったんですね。その高く上がったまま2週間か3週間ぐらいしていたうちに、だんだんまた落ちてきて、秋ぐらいになって、もっとうつ状態になったんです。2度目のうつだったのですが、そのときは、まだ自分が病気だと思わなかったんです。そのあとスポンと躁状態に春ごろになって、そのときに初めてなんかこれは病気で、自分が本来の自分とは違うということに気が付きました。

精神病って治るものだと思っていたので、自分は重度なんだろうなとは思ったけど2年か5年で治ると思っていた。でも、大学でお世話になっていた先生に、「君はこれからこの病気と長い間付き合っていかなくてはいけないのだけど、いろんな生き方があるから」と言われました。その後、入退院を4回ぐらい繰り返した後に、デイケアから帰ってくる電車を降りて、トコトコ家に歩いているときに、「ああ、自分は一生薬を飲むんだ」というふうに思って、そしたらその時夕日がすごくきれいに見えて、だけどすごく切ない気持ちになったのを覚えています。治療に関しては、以前は、自分の病気の症状を、うつだったら持ち上げる、躁だったら押さえつけるように思って、自分を薬でコントロールしているつもりでいました。ですが、いまは、薬はなるべく、自分がうつであっても、躁であっても、活動性を上げるために邪魔にならない程度に症状をコントロールするのを手伝ってくれるようなものだと思うようになりました。自分で自分をコントロールしたり、周りの人からいろんな意見を聞いて休んだりすることで、自分の活動性が上がって、社会の中に入っていければなと、そういう薬の使い方をしたいというふうに思っています。先生もそれを納得してくれていて、そこはいいと思います。

自分のどの症状が躁状態の典型的なもので、どの症状がうつ状態の典型的なものでとか、どういうサインが身体から出るかとか、先生がひとつひとつ教えてくれました。症状が出るたびに、そのたびに自分で「これは躁の前触れだ」とか「これはうつの前触れだ」とか思って薬でコントロールして、自分との病気との付き合い方の対処法みたいなものを、前もって手を打つという感じでやっています。

躁状態は周りから見たら、気分がいいような感じだけど、本人はつらい状態なんですね。だから、躁状態のときには、周りの人は、本当に薬を飲んでいるかというのをチェックしてほしい。薬を飲まないで躁になってしまったら本当に誰も手が付けられないから。うつの時はなるべく放っておいてもらって、家族の人はいろんな趣味とか、いろんな自分の職場で、しっかり仕事とかしてもらって、離れて見守っていてくれて、朗らかでいてくれる方がいいと思うけれど、どっちにしろ躁うつの人のそばに居る人はものすごい疲れると思う。だからリフレッシュしてほしいと思います。

これまで、自分はストレスに対して誠実であり過ぎたと思う。これからは、自分を大切にしたい。ストレスに対しては認知行動療法的な対応をしたい。そうやって、薬を使ったり、認知行動療法を使ったりしながら、激しいそう状態でも、うつ状態でも穏やかでいたい。これからは、迷惑をかけた周りの人に対して、誠実でありたいと思う。薬にコントロールしてもらうのではなく、主治医との協働体制で、自分の分をわきまえて、アクティブに生きていきたい。

2012年6月 掲載

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第8回 O.Y さん

第7回 M.Y さん

第6回 S.S さん

第5回 M.N さん

第4回芳賀佳奈恵さん

第3回藤臣柊子さん

第2回宇田川健さん

第1回出口詩乃さん

第1回 出口詩乃さん

出口詩乃さん(20代、女性)

Q:双極性障害かなと思ったきっかけは、なんですか?

Q:「双極性障害」と診断されて、どのように思いましたか。

Q:病気をコントロールしながらの生活のコツを教えてください。

Q:周囲の人にわかってほしいこと、サポートしてほしいことは何ですか。

Q:これからの目標を教えてください。

原因不明の不眠や胃痛、頭痛、微熱などの体調不良が表れたことから、当初は単なるストレスと思い、内科に通ったり漢方に頼ったりしていましたが治らず、当時マスコミに取り上げられつつあった「うつ病」という病気の存在を知り、それについての文献を調べました。その際、うつ病と並んで「双極性障害」の説明があり、うつと躁のどちらの症状も見られていた自分には、うつ病という診断よりも双極性障害の方が正しいのではないか、と疑ったのがきっかけです。躁状態は軽めでしたが、うつ状態で体調を崩し気分も酷く落ち込んだ後には、必ずその反動で心身共に絶好調になる時期が来て、その差が周囲も自分も驚く程大きかったことも、双極性障害を疑うきっかけとなりました。

心身の不調の原因が、「双極性障害」という病気にあるのだと分かってほっと安心しました。その反面、いつ治るのか、そもそも完治するのか、治療中や完治後に社会復帰できるのかなど、未知数の病気に対して大きな不安を感じました。特に、気分の上下が激しい病気であると主治医から伺っていたため、日々の生活に支障をきたさないかどうか、また、家族以外の人々と上手く接して生活できるのかどうかなど、悩みが尽きませんでした。さらに、服用薬の中に睡眠導入剤があり、常用することで自然入眠できなくなるのでは、という不安が大きく、薬への抵抗感がありました。

起床や就寝、食事などの時間を、毎日同じ時間にするなどして、適切な生活リズムを身に付けるよう努力しています。特に、体力保持のため、一定の睡眠時間をとるように心がけています。このようにきちんとしたリズムで生活出来ているかどうかを自ら確認する手段として、手帳と日記を活用しています。手帳や日記に毎日の行動記録をつけ、後日見返したり、病院の診察時に主治医の先生に経過を伝える手段とすることで、自身の気分の波や体調を把握し、体調や気分の調子を自己管理するようにしています。このように、常に自分の状態を、第三者的な立場から客観的に把握することが、この病気と上手く付き合うコツであり、寛解へと向かう手助けとなると思います。

私の病気の一番の理解者は両親と相方です。彼らは、常に私の心身の調子を気にしてくれて、具体的な質問で私の様子を把握するよう心がけてくれています。私の病気に対して過敏に考えたり接したりすることはなく、病気も個性の一つというくらいの心持で、気軽にいつも通り接してくれ、とても助かっています。また、うつの症状が出て酷く落ち込み、体調が悪くなった時には、すぐに休める環境を整えてくれ、逆に躁の症状が出た時には、調子に乗り過ぎないように気付かせ、落ち着くように促してくれます。その他の周囲の方々(友人や仕事場の方々等)には、必要がある場合に自身の現状をその都度伝え、理解してもらっています。

双極性障害という病気と敵対するのではなく、共存しながら、普通に社会の中で生活をおくれるようになりたいと思っています。そのために、引き続き薬をきちんと服用し、生活リズムを崩さないように努力しながら、ちょっとした近所への用事や友人・知人との会食等の外出を積極的に行い、内に篭るだけでなく、外との繋がりを大切にして生きていきたいと考えています。そして、一番の社会復帰の目標である就職や、結婚などの新生活を叶えられるよう、その時その時の自分に出来ることに一歩ずつ取り組んでいくつもりです。そして、多くの方々にこの病気について理解していただけ、また、同じ病気で苦しんでいる方々の助けとなれるような活動に参加していきたいです。

「躁うつ病のホームページ」http://square.umin.ac.jp/tadafumi/

精神科医、加藤忠史先生による、双極性障害(躁うつ病)に関する情報ページです。

「日本うつ病学会双極性障害委員会」http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/sokyoku/index.html

躁うつ病(双極性障害)の患者さんとそのご家族に、躁うつ病(双極性障害)を正しく理解していただくための解説書「躁うつ病(双極性障害)とつきあうために」が配布されています。また、参考文献情報一覧も掲載されています。

「標準精神医学 第5版」の「気分障害」の項目医学生向けの教科書ですが、最近のデータに基づいて書かれており、読みやすさにも配慮されています。気分障害の項目ではうつ病とともに、双極性障害に関する情報がバランスよくまとめられています。

「特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ」http://www.comhbo.net/

精神障害をもつ人たちが主体的に生きて行くことができる社会のしくみをつくるために、地域で活動するさまざまな人たちと連携し、科学的に根拠のあるサービスの普及活動を行っています。

「精神保健福祉センター」※下記URLは、全国精神保健福祉センター長会サイト内にある、都道府県別のセンター一覧へのリンクです。http://www.zmhwc.jp/centerlist.html

精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進を目的とした各地域の中心的機関です。都道府県単位、または政令指定都市に設置され、各種相談業務をはじめ、普及啓発、自立支援、社会復帰支援など地域の実情に沿った様々な活動を行っています。

「保健所」※下記URLは、全国保健所長会サイト内にある、都道府県別のセンター一覧へのリンクです。http://www.phcd.jp/03/

最寄の精神科専門医の情報や、利用可能な社会的サポートの問合せをする事ができます。

「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』」http://kokoro.mhlw.go.jp/index.html

厚生労働省委託事業として(財)産業医学振興財団が開設。職場のメンタルヘルス対策(自殺予防対策を含む)及び過重労働対策について、事業者、労働者、家族等からの基本的な問いかけに対し、迅速に、かつ、的確に対応できる基盤を整備することを目的としています。

「NPO法人 障害年金支援ネットワーク」http://www.syougai-nenkin.or.jp/

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障害年金の請求に関する電話相談に応じることを目的としたNPO法人で、手続等の代行依頼の要望があれば、全国に配備している専門の社会保険労務士を紹介し支援します。