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2011年度 卒業論文

星空ツアーの実態

インタビュー調査による暫定モデルの構築

和歌山大学観光学部

27021102 森下 ほのか

指導教員名:尾久土 正己

<要旨>

本論文の目的は、誰もが日常生活において行うことが可能であるはずの「星空観測」を

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目的とした「星空ツアー」になぜ客が参加するのか、という疑問を解決するヒントを得

るため「星空ツアー」の実態を明らかにすることである。

まず、現在の国内観光において注目されている着地型観光旅行商品の中で「星空」をコ

ンテンツにしているオプショナルツアーを研究対象に事例調査を行った。国内における

数少ない星空ツアーの事例として、北海道・道東エリアに位置するてしかが

弟子屈町の旅行会社

ツーリズムてしかがと、同じ道東エリア北部の知床斜里にある斜里バス株式会社を調査

した。星空ツアーに関するデータを入手すべく、2社へ訪れ、インタビュー調査を行うと共に星空ツアーへの参加者数等のデータを提供してもらった。ツーリズムてしかがでは

「摩周湖☆星紀行」を参加者の視点から体験し「星空ツアー」の実態を探った。

提供されたデータから、「星空ツアー」の課題点が、天候と地域性であることが明らか

になった。それぞれ、ツアー目的が「星空」であるために催行の有無が天候に大きく左

右されること、田舎の観光地では観光客の見込めないシーズンが存在することである。

「星空ツアー」への参加者数は、それが行われる地域の入り込み客数に連動していた。

その後、質的研究法である構造構成的質的研究法の枠組みの中で、修正版グラウンデッ

ド・セオリー・アプローチを採用し、インタビュー調査のデータを分析し、それをもと

に「星空ツアー」のモデル構築と仮説生成を試みた。その結果「星空」を地域がもつコン

テンツの 1つと捉えることで、従来の田舎の観光地ではカバーできていなかった「観光客が夜にすることがない」という課題を解決し、オプショナルツアーとして集客の見込

めるナイトツアーを構成し得る可能性を示した。

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目次

はじめに................................................................................................3第 1章 星空観測の現状..........................................................................5

1―1星空観測ツアーの定義1‐2星空観測ツアーの事例(1)海外の星空観測ツアー(2)国内の星空観測ツアー

1‐3国内における星空観測(1)日本の公開天文台

第 2章 道東における星空ツアーの事例調査.............................................92‐1調査日程2‐2インタビュー内容(1)ツーリズムてしかが「摩周湖☆星紀行」(2)斜里バス株式会社「知床☆夜の大自然号」

2‐3実態調査「摩周湖☆星紀行」第 3章 星空観測ツアーが抱える課題.....................................................20

3‐1天候3‐2地域性第 4章 星空観測ツアーは何を売っているのか........................................24

4-1 モデル構築の方法4-2 星空ツアーの説明モデル結びに代えて........................................................................................29謝辞・文献目録.....................................................................................31付録(インタビューデータ)..................................................................32

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はじめに

 日本人の近年の観光の動向を観光白書 23年度版に沿って概観すると、海外旅行者数は平成 23年度で約 1664万人である。(1)海外旅行者数は昭和 39年の海外旅行自由化以来、現在まで増加傾向にある。昭和 60年頃の年間約 5000人から右肩上がりに急上昇し平成8年から昨年度までは約 17000人でだいたい横ばいになっている。ただし同時多発テロの影響で平成 13年度に減少していて、平成 15年度にはSAR Sの影響で 13000人まで急激に減っていた。他にも新型インフルエンザなどで 20年、21年度に 16000人を割り込んでいた。平成 20年の諸外国の海外旅行者数国際ランキングは世界 14位と、日本は上位に位置しているように感じられる。しかしアメリカ、中国、イギリスなどはさらに

上位にあり、先進国間で比較すると海外旅行者数はそこまで多くはないといえそうだ。

次に訪日外国人の旅行者数の推移を見ると、増加率は小さいものの昭和 39年頃から平成 14年度まで安定して増加している。「ビジット・ジャパン・キャンペーン1」が開始

された平成 15年度から平成 19年度までは訪日海外旅行者数が年間約 790人ずつ伸びていてその効果が表れていた。その翌年からは横ばいで、平成 20年後半からリーマンショック、先ほども述べた新型インフルエンザの流行などによる影響で平成 21年度は前年に比較し 20%も落ち込んでいた。 また、国内旅行では平成 22年度における国民 1人当たりの国内宿泊観光旅行回数は1.56回と少なく、さらに宿泊数でみると 2.39泊であった。平成 20年度~22年度の今後の生活で重点を置きたい分野のアンケートでは「レジャー・余暇生活」を挙げる人が約

34%でそれぞれの年でトップである。しかし近年では不景気の影響からか減少傾向にあり「所得・収入」「資産・貯蓄」との差が縮まっている。

 平成 19年、観光立国の実現を 21世紀のわが国の経済社会の発展には不可欠な課題と位置付け「観光立国推進基本法」が施行された。19年 6月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」では、観光立国の実現に関する施策についての基本的な方針や訪日外国人

旅行者数を平成 22年までに 1000万人にするなどの目標が掲げられている。その中で国内観光に関する「国内における観光力消費額を平成 22年度までに 30兆円にする」「日本人の国内旅行による一人当たりの宿泊数を平成 22年度までに年間 4泊にする」という目標がある。

1 観光庁による「訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)」の取り組みで、訪日外国人旅行者の多い 15の国・地域(韓国・中国・アメリカなど)を重点市場として定め、プロモーション活動を展開している。将来的に訪日外国人旅行者数を 3000万人にすることを目標に設定しており、その第 1期として 2013年までに 1500万人にすることを目標としている。当面は中国をはじめとする東アジア諸国を最重要市場とし、大規模かつ効果的な海外プロモーションを展開する。

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観光庁は地域の幅広い関係者が連携して、国内外観光客が2泊3日以上の滞在型観光を

できるような観光エリアの整備を促進する為「国際競争力の高い魅力ある観光地の形成」

を目指している。「ホテル・旅館の整備」や「街並み環境の整備」と並んで「地域独自の

魅力を生かした旅行商品の創出」という項目がある。この項目で述べられているのは旅

行者ニーズの多様化を踏まえ、地域固有の資源を活用した旅行商品の創出により新たな旅

行需要の創出と地域の活性化が期待されることである。

昨今、この地域独自の魅力を生かした旅行商品は従来の都市部の旅行会社から地域へと

送客する発地型観光に対して着地型観光と呼ばれ、定着しつつある。着地型観光のツアー

は地域によって多種多様であり、成功例としては長野県飯田市の「ほんもの体験」が有名

である。本物の農場体験ができるツアーなど飯田市だからこそ体験できる商品が人気に

なり、体験ツアー目的で飯田市に旅行する客も増加している。

それとは別に本論文で注目している「星空ツアー」も立派な着地型ツアーである。後

述するが、海外では星空ツアーが盛んに行われているのに対して日本ではあまり普及し

ていない現状がある。では、この星空ツアーは一体どのようなものなのか。そもそも星

空は私たちがどこにいても簡単に見上げることができる。その星空を見に行くこと自体

を目的とした星空観測ツアーが存在するのだ。誰もがいつでもどこでも無料で眺めるこ

とのできる星空を観測する為にお金を払い、ツアーに参加するのはなぜか。客は何を求

めて星空観測ツアーに参加するのか。本研究の最終的な目標はこの疑問に答えることで

ある。そこで本論文ではこの問題に対するヒントを得るため、道東地域で実施されてい

るツーリズムてしかがと斜里バス株式会社の事例を取り上げその実態を明らかにするこ

とを目的とする。

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第1章 星空観測ツアーの現状1-1 星空観測ツアーの定義

屋外で肉眼または望遠鏡などを使用し星を眺めることを目的としたツアーのことを星

空観測ツアーという。たいていはオプショナルツアーとして存在している。そもそもオ

プショナルツアーとは、旅行の自由行動時間(フリータイム)に希望者が別途料金を支

払って参加する観光やアクティビティのことである。ほとんどのパッケージツアーには

オプショナルツアーが用意されており、数時間から宿泊を伴うものまで様々である。ま

た、旅行会社で申し込むもの以外にも現地でオプショナルツアーを専門に扱っている会

社もある。着地型ツアーの場合、第 3種旅行業務の資格を取得しておればツアーの企画・造成が可能である。旅行業務取扱管理者には第 1種、第 2種、第 3種があり、それぞれ取り扱うことのできる旅行の範囲が限られている。第 3種では国内の、その旅行会社のある地域内でしか募集型企画旅行は行えない。

1-2 星空観測ツアーの事例

(1)海外の星空観測ツアー

星空観測ツアーの例としてハワイのマウナケア山やキラウェア山、ニュージーランド

やオーストラリアで行われているツアーがある。中でもハワイが多い。ホテルから現地

までの送迎、食事、防寒具の貸出等がツアー料金に含まれていて、夕焼けとセットに

なっているものがほとんどだった。ツアー代金は 150ドルと少し高めだがハワイという観光地ブランドと、システム化した信頼できるオプショナルツアーであると考えると妥

当な値段である。

それから海外の星空ツアーで私が気になったのは、ニュージーランドの「サザンクロ

ススターウォッチングツアー」。ニュージーランド南島で日本人ガイドが星の解説付き

ツアーを行っている。料金はハワイの約半額で 60ドルである。町から郊外まで車で 15分ほど離れた場所まで行き、星を見てまたホテルまで送迎してくれるシンプルなツアー

だ。まれにオーロラが観測できることもあるらしい。

インターネットに世界中のオプショナルツアーを予約することができる「Alan1.net」というサイトがあるのだが、ここでは 61カ国 146都市の約 5000件のオプショナルツアーを取り扱っている。そのうち星空に関するものは 28件であった。他には HISが 2件、JTBが 2件、るるぶが 10件の星に関するツアーを紹介していたが、いずれにしても決して多いとは言えない。

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(2)国内の星空観測ツアー

ここまでは海外の星空観測ツアーについて例をあげてみたのだが、日本国内の現状は

どうだろうか。近畿日本ツーリストと角川グループが共同出資している「旅の発見」と

いうWEBサイトでは北海道、沖縄、長野を始め 21件のツアーが掲載されていた。(3)そこで紹介されているツアーは合計約 13500件あったのでその中で星空観測ツアーの占める割合は 0.15%くらいになる。海外のように送迎付きで、ある場所まで星を見に行く内容のツアーはあまり見られなかった。例を挙げると熱気球に乗って夜空と北アルプスの

景色を楽しむ「熱気球係留ナイトフライト」(長野)やホタルを探しながらの散策と

ビーチで生物を観察する「ナイトツアー夜の探検」(沖縄)などがある。このように動

物や昆虫観測、キャンプやカヌーなど他のアクティビティに星空観測をセットにしてい

るものが半分ほどで、残りの半分のほとんどは星空観測を主体とするツアーであった。

後者はすべて天文台で行われていて望遠鏡を使用した星空観測であった。なぜ日本では

星空観測といえば天文台という概念が根付いているのか。

1-3 国内における星空観測

(1)日本の公開天文台

日本には日本公開天文台協会と公開天文台白書編集委員会が発行している公開天文台白

書という日本国内の天文台に関するデータをまとめた文章がある。調査目的は公開展望台

が時代とともに今後どのように変化していくのか、社会の中でどのような役割を担って

いくべきなのかという現状を把握し未来への展望を見いだすことだ。公開天文台白書

2006によれば日本には望遠鏡を持つ施設が全部で 412施設ある。望遠鏡を有する施設とは天文台、博物館を始め科学館や社会教育施設、宿泊施設などを含んでいる。全国 47都道府県すべての地域にそのような施設がある。

このような施設では望遠鏡を使った体験学習会や観望会が行われている。夜間観望会の

開催頻度は施設によって異なり、最も開催頻度が高いのは天文台で週 3~4回行われている。料金は 6割の施設で有料であり、参加者が来るたびに連続的に実施されていることが多い。参加者層は家族連れ、次いでカップルが多い傾向にある。博物館・科学館では開

催頻度は月 1~2回以下で、参加者は家族連れの次にシニア層が多くなっている。さらに、これらの施設では約 7割が野外での星座案内を行っている。このようなデータから、日本には数多くの天体観測ができる施設があり星を見る環境

が整っている国であると言える。しかし環境が整っているがゆえの欠点としては観光と

いう視点から見ると教育色が強いところにある。これらの施設には学校から授業の一環

として訪れる場合も多い。またそれらの施設は高い割合で自治体の教育部局によって設

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置されており「生涯学習や学校教育」を意識している施設が多くみられることも、教育

のイメージが強い要因である。

日本には公開天文台が数多くあり、わざわざ星を見るためにツアーに出かけるという

ことが少ない。また星空観測に対して教育のイメージをもつ人が多く、星空ツアーは観

光の一つのコンテンツとしてとらえられにくい。これらは日本に星空観測ツアーが少な

い理由の 1つである。

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第2章 道東における星空観測ツアーの事例調査

2011年 11月 2日(火)~11月 7日(月)の 5泊 6日で道東調査を計画した。目的は、星空ツアーに参加することと、ツアーを作っている方へのインタビューを行うこと。北

海道で星空ツアーを行っているのは道東、弟子屈町の旅行会社「ツーリズムてしかが」と

知床の「斜里バス株式会社」の 2社。以下、調査の実際について、その概略を記す。位置関係については図☆を参照されたい。

図‐1 道東調査の位置関係(Google Mapsより)

2-1 調査日程

11月 3日(水)

まず、始めに私が訪れたのは弟子屈町の川湯温泉という地域。「ツーリズムてしか

が」をメインに調査したかったので、今回の道東調査の拠点もここに決めた。弟子屈町

は道東の西側中心あたりに位置し、面積約 775平方キロメートル、人口約 8000人の町である(図‐1)。透明度で有名な摩周湖と、もう 1つ屈斜路湖の 2つの湖がある。川湯温泉では冬になると空気中の水分が凍ってできるダイアモンド・ダストを見ることができ

る。

11月 2日(火)に釧路に到着し、その日は釧路で 1泊した。3日の朝弟子屈町川湯温

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泉に向かう。川湯温泉まではJRで釧路駅から川湯温泉駅まで電車で 1時間半。駅前から15分くらいバスに乗って役場支所前で下車した。そこから歩いて 10分ほどの所に「ツーリズムてしかが」本社がある。建物は以前信用金庫が使用していたものを再利用

している。そこのメイン商品として販売されている星空ツアーが「摩周湖☆星紀行」で

ある。私は実際に 11月 3日(木)と 4日(金)に参加した。休日の方が客は多いだろうと見込み土日を挟んだが、あいにくの天候で中止になったため 2日間しか調査はできなかった。しかしインタビューや昼間に行っている商品への参加、データの収集などを会

社で行わせてもらえた。

「ツーリズムてしかが」でのインタビューは 3日のお昼 2時ころから 4時過ぎまで行った。会社で社長の白石さんの話を伺った。

図‐2 ツーリズムてしかが外観

11月 4日(木)

4日は朝から快晴で気持ちのよい日だった。午前中ホテルで作業をしてすごすつもりにしていたが、白石さんから電話があり急きょ「摩周湖トレッキングツアー」に同行させ

てもらえることになった。他のホテルの客と一緒に、ホテルのロビーで説明を受けてハ

イエースに乗り込み、摩周湖へ出発。摩周湖の周りのウォーキングコースを少し歩いた。

ガイドは 1人で客は私を含めて 7人だった。ツアーが終わると「摩周湖☆星紀行」までの間ホテルに戻って待機した。昼は晴れていたのに、夜になると雲が出てきた。ツアー

は催行できたが満天の星空は見られなかった。

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図‐3 昼間の摩周湖

図‐4 トレッキングツアーの様子

11月 5日(土)知床斜里訪問

 朝からバスと電車を乗り継ぎ、知床斜里に向かった。この日は 13:00斜里バス本社でインタビューの約束をしていた。川湯温泉駅から約 45分で知床斜里駅に到着した。時間があるので少し散策していると道の駅と土産物屋が近くにあった。お昼ごはんを食べよ

うと思ったが駅前は店が少なく、コンビニ1軒とパン屋1軒、美容室とホテルがあるだ

け。飲食店がいくつか入った建物もあったが営業していなかった。仕方なくコンビニで

お弁当を買って駅で食べた。知床斜里駅は2007年に町の観光センターとの複合駅舎に

改築されていて新しくて綺麗だった。待合室には知床のパンフレットが並べられていて

観光案内カウンターもあった。シーズンオフでカウンターは閉鎖されていた。時間にな

り斜里バス株式会社に行った。駅を出てすぐそこだ。お話をして下さったのは「知床☆

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夜の大自然号」を担当している下山さん。丁寧に対応して下さり優しい方だった。1時間

半程お話をうかがった。帰りは 17:30まで電車がなかったのだが、時間をつぶす場所が無くて困った。散策していたが、雨が降っていて寒かったので駅の待合室で過ごした。

知床斜里は寂しい雰囲気の印象が残っている。

図‐5 駅前の様子(道の駅)

11月 6日(日)

 この日は朝から 1人で「川湯エコミュージアムセンター」を訪ねた。エコミュージアムは全国各地にあり、その地域の自然や文化、歴史を展示、公開している施設だ。施設内

には川湯付近で見られる動物のはく製を展示していたり、カルデラ湖の成り立ちや摩周

湖の説明のコーナーがあったりした。無料で施設の周りを探索する自然体験も行ってい

るそうだ。館内の客は私 1人だった。その後は昼食をとり、ツーリズムてしかがさんに伺ってデータ集計をさせていただいた。この日は午前中弟子屈町のイベント「かくし芸

大会」が開催されていたため、お昼過ぎまでツーリズムてしかがには社員 1人だけだった。午後から私は「摩周湖☆星紀行」の日程別のホテル別参加者人数が書いた紙のデータ

をもとに、数字をノートへ移す作業を行った。データは 1日 1枚に記入されていて、ツアー時にガイドが参加人数を確認する為のものであった。21年度の 7月までと 22年度、23年度の 2年分を 1日ずつ記入していった。天候が悪いため「摩周湖☆星紀行」は中止になり、社員の帰宅する時間まで作業を続けた。しかしこの日は全ての記入には間に合

わなかった。

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図‐6 川湯エコミュージアムセンター外観

11月 7日(月)

 いよいよ最終日。お昼前の電車で帰らないと飛行機に間に合わないため、朝早く起き

てツーリズムてしかがさんに行き 6日に記入しきれなかったデータを書きうつした。デスクを貸してくれたので社員さんに混ざって作業をしていると、たまたま白石さんを取

材に来ていた記者の方に社員と間違えられた。写真に私も写ってくれということで社員

さんに混ざって撮影してもらった。帰る時間が近づき、昨晩書いていたツーリズムてし

かがさん宛の手紙を渡すと喜んでくれ、ホワイトボードに飾ってくれた。白石さんは

ツーリズムてしかがで販売しているはちみつをお土産にと手渡してくれた。そのあとも、

川湯温泉駅までバスで帰る予定だったが会社のハイエースで社員の 2人が電車から見えなくなるまで見送ってくれた。ツーリズムてしかがの人たちの温かさに触れた 1週間だった。

2-2 インタビュー内容

(1)ツーリズムてしかが「摩周湖☆星紀行」

摩周湖☆星紀行ができるまで

かつて、25年~30年前川湯をふくめ北海道は団体観光客数のピーク時を迎えていた。北海道のハネムーン全盛期であり、川湯にもハネムーンの客が多かった。しかしそこから

徐々に観光客が減少してゆく。川湯温泉としても危機感を覚えた。この地域でなにか仕掛

けていかなければ、このまま川湯温泉はすたれてしまう。そう考え、当時ホテルに勤務

していた白石さん(現・ツーリズムてしかが社長)を含む川湯温泉地区の各ホテル支配人

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が集まった。地域をリードしていくために支配人会を結成しイベントや地域のセールス

プロモーション、旅行会社へのプレゼンなどを行った。川湯温泉地区のキーマンであっ

た。その活動の中で 1998年 9月 13日、十五夜に摩周湖での観月会を企画する。このイベントは川湯温泉への宿泊客を対象に1日限りで行われた。内容は、大型バス2台で摩周

湖へ案内し、月を見るだけというシンプルなもの。天気に恵まれ、客は夜の摩周湖と月

を楽しんだ。北国の良く澄んだ大気のおかげで星も綺麗に見えた。そこである客が「月

が無かったらもっと星がみえただろうな」とつぶやく。これを聞き、支配人会幹事で

あった白石さんと吉田さんという方は星空ツアーを思いつく。さっそく翌年の 6月 1日~10月末まで、期間限定で星空ツアーを開始した。バスは地元の阿寒バスを利用し、料金は大人 1人 1000円。添乗員は各ホテルでの交代制からスタートした。添乗員は当時、星の知識がまったくなくガイドとしての役割は果たさなかった。体験商品ではないため、

1000円全てバス料金であり添乗員はボランティアで行っていた。これをワンシーズン行ったところ結構客が集まり、旅館組合の資金源になるほどだったため継続することに

決定。やはりガイドが必要だということで、2000年 6月~ガイド付きで行うことを目標に、白石さんと吉田さんは自己流で勉強を始めた。ツアー料金はガイド料も含め 1200円に値上げした。ガイドは当番制であったが、もともと星に興味のあった白石さんは知識

が豊富になり、メインガイドとして添乗。星よりも宇宙に関心があったため、人口ロ

ケットや人工衛星の話などもされていたそうだ。そんな中、2002年の夏ツアー後の

バスから降りて来た客の1人が「面白かったです。私はこういうものですが。」と白石

さんに名刺を渡した。日本宇宙事業団、通商NASDA(現・JAXA)の専務理事であった。「田舎にも、宇宙のことをお話ししてくれる人がいてうれしいです。」ここから交

流が始まり、その秋、白石さんはNASDA筑波を訪問した。2002年度の星空ツアーが無事終わったことの報告をすると、このツアーが始まったのが 1999年スリーナインということで、名誉理事の松本零士さん(漫画家)に「銀河鉄道の夜」の名前の使用許可をも

らえるよう頼んでくれるという。そうして 2003年から「銀河鉄道摩周湖星紀行」に生まれ変わる。この年はしし座流星群が 33年に1度のピークの年。川湯では NASDAとタイアップし、北海道で 3番目の日本宇宙少年団摩周湖分団を結成。その設立記念として 6月に弟子屈町で摩周宇宙フェスティバルを企画していた。NASAから宇宙服を借り、道東で初のモデルロケットの打ち上げを行った。宇宙飛行士の若田光一さんの招待や、KDDIと協力して宇宙ステーションとの光通信も企画していたが、コロンビア号事件のために中

止となる。星空ツアーはこの当時はまだ、旅館組合が行っていた。軌道に乗り始めた星紀

行は1~3月の冬バージョンも行うようになる。2008年、白石さんが満期でホテルを退職。37年間ホテルに勤めていたそうだ。ホテルをやめてからも、継続してガイドの仕事は行っていた。この年白石さんは宇宙教育リーダーのライセンスを取得。これは、「一

般の人に宇宙のことを教育、知識を広める」指導者を育成する目的で JAXAが行っている。現在では千人ほど取得しているらしいが、白石さんは 32番目の取得者。そして 2009年。

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4月に川湯の町でお金を出し合い、ツーリズムてしかがを設立した。適任者がいないため白石さんが社長に就任。商品は着地型旅行をメインとし、地域の自然や産物を活かした商

品作りを行う。設立時は商品が無かったため、今まで旅館組合として行っていた「銀河鉄

道摩周湖星紀行」をツーリズムてしかがに譲渡してもらう。こうして「摩周湖☆星紀行」

はツーリズムてしかがの初めての商品となった。このツアーは評判が良く、会社設立の

2009年からは通年で 365日、休むことなくツアーを催行している。

ツアー中止の場合

このツアーにとって一番肝心なのが天候。曇りで星の見えない日や雨天時はやむをえず

中止となってしまう。そこで以前はツアー中止時に「星と宇宙のスライドショー」を

行っていた。一か所にお客さんを集めて行う 1時間のトークショーだ。これはせっかく申し込んでくれたお客様を楽しませるという目的であると同時に、ツアーを中止にする

ことで発生する返金の手間を省くためでもある。というのも、摩周湖☆星紀行のツアー

料金はお客様の宿泊するホテルのフロントで管理してもらっている。そのため、ツアー

が中止になって返金となると、忙しいホテル側の仕事をさらに増やしてしまうのだ。そ

の点でスライドショーを行うというのは名案であったが、一か所にお客様を集める手間

や場所の問題でなくなった。今では団体等での希望がある場合のみ行っている。現在で

は曇りの場合「にこにこガイドといく暗闇探検ツアー」に変更とパンフレットに記載さ

れている。川湯エリアの近場にある硫黄山と屈斜路湖をバスで周って自然と触れ合うツ

アー。昔は摩周湖に行っていたが面白みがなかったために変更したそうだ。硫黄山に移

動する間、火山の成り立ちの説明があり、暗闇の中で熔山の音を聞く。それからバスに

乗って屈斜路湖に移動。そこでは紙芝居を使った日本最大の屈斜路カルデラの話を聞く。

土を掘るとお湯が出る砂場で実際に温泉を掘る体験ができる。2010年度前半は悪天候の場合が多く、暗闇探検ツアーでも結構稼いでいるらしい。とはいっても星空ツアーから

暗闇探検ツアーに変更になると参加者は 10分の 1に減るそうだ。雨天時はどちらのツアーも中止。

広報活動

「地域密着の商品は、地元の人に理解してもらい協力してもらうことが重要である。」

と白石さんは言う。大きい旅行会社のように広告を出すお金が無い。地元の人の推薦があ

ると観光客も素直に受け入れるし、お金もかからない。ホテル側も「摩周湖☆星紀行」付

きのプランの作成や、HPや口コミ、チラシで宣伝してくれる。先ほど、ツアー中止時の返金の話の中で、フロントでツアー料金を預かってもらうということだったが、ボラン

ティアで頼んでいるわけではない。ホテルに宿泊しているお客様から「摩周湖☆星紀

行」の申し込みがあると 1人あたり 10%をホテルに還元している。大人 1人 2000円のツアーなので、お客様 1人につき 200円がホテルに支払われる。こうして手間に対する

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お礼をホテルに還元することで結束も強まり地域に一体感が生まれる。それから、大手

旅行会社や代理店に「摩周湖☆星紀行」を組み込んだインクルード商品を販売してもらう

よう直接頼みに行くという広報活動も行う。

参加者の傾向

夏季シーズン、お客様は 6月 20日ごろから一気に増加する。団体旅行も 6月中旬ころから予約が入り始め、10月の終わりまではお客様の多い観光シーズンが続く。11月に入ると急に数字は落ち、参加者は日に 2,3人になる。1月からはまた少し増加し始め、2月が冬季のピークとなる。2月に観光客の多い理由は、冬は星がきれいに見えるということと、雪まつり、流氷ツアーが始まることがあげられる。また 2月は旧正月の時期であるため、香港、シンガポール等東南アジアからのツアー客も多いそうだ。海外の客数につ

いては空の便との絡みと密接に関係している。夏秋は香港系の観光客が多いそうだが、

これは香港~千歳直行便があるということから納得できる。また、海外の旅行者につい

ては円高や景気の状況にもかかわってくる。また前後が休みの祝日は多い傾向にある。

観光客が少ないのは 11、12、3,4月のオフシーズンである。星空ツアー目的の客はまだ少なく、弟子屈町自体のいりこみ人数に大きく左右される傾向にある。これがリゾー

ト地の着地型の商品のリスクである。地域に来る客数が多いとその分需要も増えるとい

うメリットを持つ反面、少ない時期にもそれに連動して少なくなってしまう。また、星

空ツアーの催行はその日の天候次第である。そのため曇っていると申し込みも少なく、

晴れていると多くの申し込みがある。そのため申込数が一概にこのツアーに対するお客

様の興味とイコールにはならない。例えば 2010年 6月参加者が多いのは、夏季シーズンであることと天候が良かったためであるといえる。満月だと見える星が少ないために参

加しないという方もいるそうだ。出身地は本州の関東が多くみられる。このツアーでは

アンケートを取るのが難しく、きちんとしたデータはないが白石さんは積極的に参加者

とコミュニケーションをとるようにしていた。摩周湖☆星紀行参加者数は、この街への

いりこみ人数と天候に左右されている。

ガイドの問題

一番の課題は次世代のガイドがいないということ。ほかにガイドがいないため白石さん

は週間天気予報を見て雨の日に休みをいれている。摩周湖☆星紀行には接客能力、星や宇

宙に関する知識、判断力などを兼ね備えた人物が必要だ。弟子屈町にも星の知識のある人

はいるそうだが、お客様の前に立つのが苦手である等適任者がいないらしい。現在白川

さんが不在の場合、別の社員がガイドを担当しているが星は季節で移り変わる上に、曇

りの場合見える星の数が減る。そのため幅広く知識を身につけていないとガイドが務ま

らない。ガイド育成には長い期間がかかるだろう。また、現場で臨機応変に対応する判

断力も重要なポイントである。私が実際にツアーに参加した日も、白石さんの長年の勘

と判断力が発揮されていた。晴れて星のたくさん見える日には何も話さなくてもお客様

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は満足してくれる。だが逆に曇った日にはたくさん話を提供して星が見えない分をカ

バーしなくてはいけない。

判断力

摩周湖は屈斜路カルデラにあるため、太平洋からの雲がカルデラ壁に当たり左右に分か

れ、それがカルデラ壁に沿って流れてくる。さらに星紀行が始まる時間はちょうど雲が

入り込み、気象条件の変わる時間帯である。特に冬場は 18時半の申し込み締め切りから、ツアー開始時間の 20時半まで 2時間もある。雲があるので中止にしたのに 21時頃には星が見えていたり、星が見えていたので安心しているとツアー開始時には雲が出ていた

りする。また、川湯エリアからは星が見えているが摩周湖の上は雲が厚いというケース

もある。摩周湖で霧の場合はすぐに川湯付近まで降りてきて星をみるのだそうだ。

(2)斜里バス株式会社「知床☆夜の大自然号」

ツアー内容

斜里バス株式会社が行っている「夜の大自然号」。これは、バスに乗って知床に生息して

いる野生動物の観察をするツアー。基本的にはバスの中で車内の照明を消し、窓から動物

の姿を観察する。バスの中には専門のガイドが乗車し、案内を担当する。距離数にして

約 40キロを 1時間半かけてゆっくりとまわるツアーだ。バスの車内の照明を消すと、山には街灯が全くないため月の明かりで外の景色が見える。動物は物音に敏感なので声を

出してはいけないが、光にはそれほど敏感でなく、窓を開けてのフラッシュ撮影も可能

ということだ。観察できるのは基本的にエゾシカやキタキツネ、まれにヒグマが見られ

る。春には小鹿を発見することができ、お客様を感動させているそうだ。最近では、天

然記念物のシマフクロウに出会える時もあるという。しかしそのような動物にはプレッ

シャーを与えないように毎日観察することは避けるなど、ガイドが工夫をしている。動

物の見つけ方はガイドが懐中電灯で外を照らすと目が光るため、居場所を確認できると

いうことだ。実は動物たちは昼間でも多く見つけられるそうだが、慣れていない観光客

は運転していても気がつかないのだ。特に北海道は道路のわきがえぐられているので動

物たちが見えにくい。さらに春先秋口は毛の色と地面の色が似ているため発見が難しい。

なので、その説明をガイドに聞いて昼間にも動物はいるということを発見するのも楽し

みの一つになっているのだろう。発売当初から運行に関する苦情はゼロ、運行上の課題

はない。23年中 1匹も動物が見られなかった日はないそうだ。

客の傾向

お客様が多いのは 7,8,9月でピークは 8月 10日~17日辺り。知床観光のピーク時である。夏休みなので家族連れが多い。最大催行人数はバス 4台。最近は 1台 30~35名程

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度でストップしている。昔は 1日にバス 8台で運行した日もあったとか。8月は比較的個人の客が多く、夏季シーズン前後の 6月、10月は団体客が目立つ。団体で知床に来たツアー客からオプショナルとして参加希望者を募る。夜に参加できるツアーは暇つぶしに

もなるのでついでに参加するお客さんは多い。また 1度来た客がほかの人を連れてくることはあるが、リピーターはほとんどいないそうだ。圧倒的に道外からの客が多く、全

体の 8,9割を占めている。その中でも比較的関東の客が多い。道民は動物を日ごろ見慣れているので参加する人は少ないが、転勤族など札幌圏の人はたまにいるらしい。普段

見えない満天の星空を期待して参加している客もいる。大自然号のツアー自体は海外のお

客様は多くないが、斜里バス定番の定期観光バスはアジア人が多い。台湾を中心に、シン

ガポール、北京や上海、韓国など。人気の理由は乗っているだけで主要観光地に行くこと

ができるからであると考えられる。2011年は震災の影響で減少したが、前年までは利用者全体の 1~2割をアジア客が占めていた。全国的にも国内旅行客が減り、地方に乗り入れる飛行機が撤退したり機体を小さくしたりして、知床への観光客も減っている。知床

は観光客のまさに 9割が飛行機利用という統計が出ている。また世界遺産登録以降、いろいろな規制によって訪れることのできる場所も減っている。しかしアジアから訪れる客

とのトータルで見ると減ってはいない。このことからもアジア客の獲得がとても重要で

あることがわかる。

星空ツアーとしての要素

主なコースは 2パターンあり、メインはウトロ温泉~知床五湖のふもとを往復するコース。これが 8割程度をしめるそうだが、まれに知床峠へ行くコースも使用するらしい。このツアーは動物観察がメインだが晴れていれば星の観測も行っている。初年度からガ

イドを務めるまえのゆうじさんは星に詳しく、星空の説明もしてくれる。コースを変更

する理由は、この星空観測にある。月が明るいと見える星の数が少なくなるのだが、知

床五湖のコースだと知床連山がちょうど月を隠してくれる。そのために星を観測するに

はベストなのだ。一方知床峠は月を隠す場所がないのだが、晴れていて月明かりの少な

い日には、高い場所から高密度の星空を辺り一面見渡すことができる。そういった状況

に応じてコースを使い分けている。また、参加者が多くバスの台数が増える場合には広

めの知床峠へ案内する。決定するのはガイドと運転手だ。実は昔このツアーは「知床☆星

のロマン号」という名前で、川湯温泉でやっている「摩周湖☆星紀行」と同じようなツ

アーであった。期間は 6月 1日~9月 30日で雨天と曇りは中止、参加者には星空マップを配っていた。始まりはウトロホテルからの要請で、正式なツアー開始以前約 1年間は貸しバスで運行。人気が出たので元年から定期観光バスとして固定化し平成 2年からは期間を延長した。しかし天候に左右されるため運行日が少なく、参加者数も少なかったた

め平成 5年「夜の大自然号」に改名。動物観察を主体にすると少しずつ参加者が増加し、平成 6年にピークを迎える。改定後も基本的には雨天、強風時は動物が警戒するため中止

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であるが、運行日数は星空メインの時に比べて確実に増加したといえる。数年前から斜

里バスHP上ではツアーパンフレットをアップしている。このHPを見る人はたいてい

路線バス利用で知床に来られるので効果があるという。だがなんといっても現在はマイ

カーやレンタカーを利用する客が多い。ホテルに協力してもらい、部屋にパンフレット

を置いたりシーズンオフの時期に合わせて宿泊パックに大自然号を組み込んで売りだし

たりしている。またロビーでのツアー受付・申し込みも行っている。それから広報活動

としてパンフレットを旅行会社に持ち込み、ツアーをオプションで使ってもらえるよう

に頼みに行く営業も行っている。

ツアーの分析

このツアーの良い点は、夜に行っているツアーがあまりないためお客様に喜ばれる点。

札幌の夜景や東京のはとバスとはまた違って、何かをしに行くツアーはあまりない。ま

たバスの中から照明を消した状態で外を見ることは珍しくて好評である。商売上の課題

としては客の減少があげられるがツアー運行上の課題はない。雨や風で中止になった時

に何か代替案がないか模索中だそうだ。それから、最近同じような商売をしている競合

者が増加しているらしい。ワゴン車を使用するという点以外はほぼ同じ内容で、1人3000円程度以上で行っている。ワゴン車では人数が知れているが脅威と言えば脅威である。動物はあちこちにいるので取り合いは起こらないようだ。斜里バスでは対抗策とし

てエコをコンセプトに差別化を図っている。ハイブリッドバスを使用し、それをパンフ

レットにも記載。排気ガスも乗用車何台かで行くよりもバス 1台の方がエコ。騒音も少なく、動物の生態にも優しい。それにバスの方が低価格で参加できるのもメリットの一

つである。このアドバイスをしたのは知床ネイチャーガイドとしても先駆的な、まえの

さん。この他にも、お客様が満足できるよう 1台のバスに定員いっぱいは詰め込まないというアドバイスも。お客様がバスの両側に移動しながら、動物を間近で楽しめるよう

にという、長年ツアーガイドを務める方ならではの配慮だ。これらを含め客がニーズに

応じて選択すればよいと考えている。知床は自然が豊富で、動物も植物もたくさんある

のでその野生の姿を見て楽しんでもらえるようなコースづくりをしたいそうだ。現在は

訪れる場所の少ない知床の冬の観光も、観光協会と協力しながら課題をクリアし新たな魅

力にしてゆきたい。1年を通して知床を盛り上げていきたいと話されていた。

2-3 実態調査「摩周湖☆星紀行」

(1)ツアーの流れ

ツアーは当日 18:30申し込み締め切り 20:00スタートで 1時間半のツアー。ガイドを務めるのは「ツーリズムてしかが」社長の白石さんだ。ガイドはまず、各ホテルから

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送られてくるFAXで当日の参加者人数を確認する。その次にバスを手配するのだが、

参加者数が少ない場合はホテルに小さめのバスを借りている。さらに少ない場合は会社

のハイエースで運行する。それから参加人数分の「今日の星座マップ」を印刷して準備完

了。参加者は私を含めて 1日目が 15名、2日目が 16名だったのでホテルのバスを借りて運行していた。

ツアーの流れは、まず「ツーリズムてしかが」を出発して各ホテルで客をピックアッ

プする。料金は先にホテルで支払ってもらっているのでチケットを回収し、ガイドはあ

らかじめ用意していた参加者リストにチェックをつけていく。川湯のどのホテルにも宿

泊していない客は会社に集合しツアー料金を払ってガイドと一緒にバスに乗り込む。4日は 0人、3日は 2人の客が会社から一緒に出発した。摩周湖展望台までは片道約 30分で、ガイドの白石さんの星と宇宙に関するトークを聞きながら移動する。展望台に到着した

らバスを降り、30分ほど外で星空を観測。ガイドの話を聞きながらその星を自分の目で確認する。そのあとまたバスに乗り込んで 30分ほどで川湯温泉に帰ってくる。トータル1時間半程のツアーで料金は大人 1人 2000円。子どもが 1000円だ。私はツアーの流れの把握のため、会社を出発するところから参加させてもらった。白

石さんが話されていた内容は当日見えていた月の説明や展望台でこれから見る星の話な

どで、マイクを使って明るく話されていた。山道を走る為バスは多少の揺れがあった。

途中、月を見るためにバスの車内の照明を消すと、外は本当に真っ暗だった。摩周湖展望

台に到着すると、駐車場からは弟子屈の町の夜景が見えた。湖の見える所まで階段を上る

と街灯がなくて真っ暗な夜空が見られた。

1日目は雲っていて雲の切れ間から見える星の説明を少しだけ聞いた後、少し下った第3展望台にバスで移動した。すると先ほどの第 1展望台よりも晴れていて星を見ることができた。白石さんはレーザーポインターで星を指し示しながら説明していた。双眼鏡を

貸してくれて、私たちはそれですばるを見た。じっとしていると外はかなり寒く、客は

みんな上着のフードを頭にかぶって寒さに耐えていた。2日目は 1日目よりも天候が悪く、第 1展望台からはほとんど星が見えない状態だった。偶然にも 4日から道路が規制され、展望台まで 3日とは違うルートで来ていた。第 3展望台への道も通行止めのため山のふもとまでバスで下り、広い草原で星を観察した。しかし雲が厚くなってきたので途中か

らもう 1度移動し、川湯付近まで帰った。道路のわきが少し広くなっているところでバスを降りて続きの説明を聞いた。こちらの方が星の数が多く見えた。帰りのバスでは行

きと同じでガイドの説明があった。帰りのバスでは星の写真を見せながら宇宙のことや

私たちの生活とのかかわりについて話していた。各ホテルに順番で客を送迎してツアー

は終了。1時間半というツアーの長さはちょうどよく満足感もあった。ただし曇っていたので、晴れた日の綺麗な星空だと時間が足りないと思うかもしれない。

(2)参加者の傾向

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バスの移動時間、車内では客の私語は少なく、静かに白石さんのガイドを聞いていた。

1日目は会社から一緒にバスに乗った女性 2人組のグループと仲良くなり、少し話した。1人は道内に住んでいて、もう一人は関東出身。2人はメキシコに留学していたそうだ。帰りも会社からホテルまで「車で送ってあげようか。」と言ってくれ、とてもよい感じ

の人たちだった。1人は星に興味があり詳しかった。他の参加者の内訳は、女性 2人グループもうひと組と、夫婦が 3組、カップルが 1組、1人で来ている男性と女性が一人ずついた。どの夫婦も熟年層だった。個人で来ている客も私の親と同じか年上だろうと

思った。私が最年少で、最も若そうなカップルで 20代後半くらいだった。あまり賑やかな人はいなかった。2日目は男性 3人のグループ、女性 4人のグループ、女性 3人のグループ、母と娘と息子の家族連れ、カップルが 1組だった。家族連れの娘が私より少し年上くらいで、息子が高校生くらいだった。それを除くと、1日目と同じように年齢層は高めであった。男性 3人のグループは 20代後半くらいだったが、星に詳しいようで 3人で色々な星の話をしていた。家族連れの娘は 1眼レフで星座を撮っていた。

1日目と 2日目で違っていた点は、2日目の 4人組の女性が賑やかだったこと。4日の昼間「摩周湖トレッキングツアー」で一緒になり、仲良くなった。埼玉から来ていたの

だが、親戚同士で 4人のうち 2人が本当に賑やかだった。とても接しやすく、旅中の写真をみせてくれたり、お昼にはソフトクリームを私に買ってくれたりした。夜もガイド

の説明に返事をしてリアクションも大きかった。他の人たちは似たような感じで静かな

人たちが多かった。2日目はもうひと組、お昼と夜の両方参加している夫婦がいた。1日目は帰りの山道で鹿の親子が飛び出してきた。その時はさすがにみんな驚いて「かわい

い」と声を出して感動していた。送迎の際にはほとんどの人がガイドの白石さんにお礼

を言っていた。

それから、北海道の寒さはやはり厳しい。私の訪れた 11月でも、外に出るには上着とマフラーが必要不可欠で、夜星空観測をするにはとても寒かった。1月 2月はさらに寒いので外で長い間星を見ているのは辛いだろう。その点で 30分という時間は適当である。

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第3章 星空観測ツアーが抱える課題3-1 天候

事例調査から星空ツアーの抱えている課題について考察する。すると、大きく分類し

て 3つの課題があることに気付いた。まず一つ目に、必然的に考えざるを得ないのが天候の課題である。当たり前だが、星空観測ツアーにおいて最も厄介なのは星が見えない

ことである。それがゆえに参加者は天候の状況で参加の有無を決定する。「摩周湖☆星紀

行」を例にとると、午前中曇っていて申し込みが少ない日であってもツアー締め切り時

間前に晴れていると急に申し込みが増えることがあるらしい。また、参加者数の月別

データを見ると同じ月でもある年だけ大きく数値が上がっていたり、反対に下がってい

たりする。

この例として「摩周湖☆星紀行」の 15年度~22年度の月別参加者数のデータをグラフ化した(図‐7)。グラフでは、7月は雨天時が多く毎年参加者数は伸び悩んでいるのだが、16年度と 21年度のグラフだけが 7月のところで他のグラフと逆方向に曲がっている。この年の 7月は晴れが多く例年に比べてツアー催行日が多くなった結果である。それからもう一つ、「摩周湖☆星紀行」の 21年度~23年度における 3年分の 7月の日別参加者数をグラフ化した(図‐8)。これを見ると参加者の人数が多いところが見事にばらばらである。このことからも、星空観測ツアーが天候によって大きく左右されてい

ることがわかる。

3-2 地域性

星空観測ツアーの課題の 2つ目は、ツアーが行われている地域の特徴が挙げられる。本論文で事例として取り上げた 2つの地域に共通していることは、田舎の観光地である点だ。観光地としては成り立っているのだが、都会のような便利さがない。それに、観

光地であるがゆえに観光客でにぎわうオンシーズンとオフシーズンが存在する。観光客

の入り込み客が無ければ、オプショナルツアーに参加する客を得ることができない。

「摩周湖☆星紀行」の月別参加者数のグラフをみると、オフシーズンの時期が明らかであ

る(図‐9)。グラフを見てみると年に 2回オフシーズンがある。11月に入ってから 1月後半までの期間と、3月から 5月までの期間である。知床もまた同じような観光地なので、オフシーズンの時期が存在する。斜里バス株式会社で入手した「知床☆夜の大自然号」の運行デー

タを見てみる(図‐10)。このツアーは元々 5月~10月の期間限定で催行している。月別参加者数のデータをグラフ化すると 5月と 10月の両端部分が下がり山型のようになっている。つまりこの山のふもとの部分がオフシーズンの終わりと始まり地点になっている。

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オンシーズン・オフシーズンは田舎に限らずたいていの観光地には存在するものであ

るが、事例のような田舎でオプショナルツアーをする場合に入り込み客数が関わってく

るため重要な課題である。都会や人の出入りの多い場所ならば、季節によって客数が急減

することはないだろう。

解決策は、簡単に述べると地域自体の集客を増やすこと。こうなると地域全体の問題に

なってくる。この問題については知床株式会社でのインタビュー調査のところで記載し

たが、「冬の集客を増やして、もっと知床を盛り上げていきたい。」と下山氏も話され

た。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月0

100200300400500600700800900

15年度16年度17年度18年度19年度20年度21年度22年度

図‐7 「摩周湖☆星紀行」月別参加者数

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1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 310

5

10

15

20

25

30

35

40

23年度22年度21年度

図‐8 「摩周湖☆星紀行」日別参加者数

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月0

100200300400500600700800900

15年度16年度17年度18年度19年度20年度22年度

図‐9 「摩周湖☆星紀行」月別参加者数

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5月 6月 7月 8月 9月 10月0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

H7年度 H8年度H9年度 H10年度H11年度 H12年度H13年度 H14年度H15年度 H16年度H17年度 H18年度H19年度 H20年度H21年度 H22年度H23年度

図‐10 「知床☆夜の大自然号」月別参加者数

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第4章 星空ツアーは何を売っているのか

 ここで本論文の主題である「星空ツアーは何を売っているのか」について考察してゆ

く。本論文で事例調査を行った 2つのツアーにおいて地域・会社側から見た星空ツアーの必要性と参加する客側のツアーに求める必要性に着目して星空ツアーをモデル化するこ

とを試みる。

4-1 モデル構築の方法

 録音したインタビューをテキストに起こし、これをデータとする。このテキストデー

タを用いて作業を行う。ここで用いた調査方法は質的研究法である「構造構築的質的研究

法」を参考にした。「構造構成的質的研究法」は SCQRM(Structure-Construction Qualitative Research Method)と略称される。この SCQRMの枠組みの中で、今回は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を採用し、モデルの構築を試みた。この方法は西條(2007)で提示されている。今回は星空ツアーがどのように成り立っているかを知るため、テキストデータの中か

ら星空ツアーを取り巻く地域側の思いと参加者側の要望について書かれている箇所を探

した。地域側は星空ツアーに何を期待しているのか、またそれを行う必要性は何かを理

解するために役立つ箇所を抜き出した。参加者側においては星空ツアーに参加する理由

や動機に繋がる部分を探した。そしてそれぞれの分析ワークシートを作成した(表‐1・表‐2)。このように分析シートを作成していくと、核となる部分がだんだんと見えてくる。分

析ワークシート 1の地域・会社側の星空ツアーに対する課題では、「減少し始めて川湯温泉としては、危機感を少しずつ感じてきましてね、ただ黙っていたらお客様が来るとい

うことはなくなってきたので、なにか地域で仕掛けをしなきゃならない」と「ウトロの

ホテルさんから要請」の 2つを地域・会社側の星空ツアーをはじめるきっかけとするように、同じ概念でありそうな部分をまとめていく。その後、それぞれの概念の関係を示

してモデルを構築していった。

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表‐1 分析ワークシート 1概念名 地域・会社側の星空ツアーに対する課題

定義 地域・会社側が星空ツアーに求めるもの

ヴァリエーション

(具体例)

ツーリズムてしかがインタビューより

減少し始めて川湯温泉としては、危機感を少しずつ感じてきま

してね、ただ黙っていたらお客様が来るということはなくなっ

てきたので、なにか地域で仕掛けをしなきゃならない

せっかく川湯には摩周湖というブランドがありますから、夜止

まっているお客さんを摩周湖に連れて行って

十分夜の摩周湖と星を楽しんでください

結構お客さんが集まる、旅館組合の資金源にもなってきたんで

すよ。

私の場合星が好きだった

メインは着地型旅行商品を造成する会社ですので、地域の自然

や産物を生かした商品を作るのがメイン

できたばっかりで売るものが何もない

このツアーは非常に評判がいい

斜里バス株式会社インタビューより

ウトロのホテルさんから要請

結構人気

運行日数も少ないし参加者人数も少ない。これじゃあちょっと

よくないな

意外とこういう風な夜何かをしに行くっていうのはあまりない

バスの中を暗くして外を見るっていうのは好評

理論的メモ 地域側やツアーを行う会社の視点から見た「星空ツアー」を行って

いる理由や、それを始めるきっかけとなっている部分。「星空ツ

アー」に求めているもの。

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表‐2 分析ワークシート 2概念名 参加者の星空ツアーに対する課題

定義 参加者が星空ツアーに求めるもの

ヴァリエーション

(具体例)

ツーリズムてしかがインタビューより

お月さんなかったら、お星さんきれいでしょうね

しし座流星群が来ている、33年に 1回のピークの時で、結構一般の人も星とか宇宙に瞬間的に興味を持とうとしてたんですね

折角これ評判もいいし通年でやろう

このツアーは非常に評判がいい

商品にインクルーズされているから、お金を払っている感覚が

ない

退屈しのぎ

いかに観光客の方って夜退屈しているか

今日星みえるなと思ったらわっと入ってくる

リゾート地ですから、夜やることない

星が見えているときはもう見えているだけでお客さん満足なん

です。下手するともう話なんかいいよ

斜里バス株式会社インタビューより

結構人気

意外とこういう風な夜何かをしに行くっていうのはあまりない

満天の空をぜひ、都会の人がやっぱり多いんで、そういうのは

見えていないだろうっていう発想

バスの中を暗くして外を見るっていうのは好評

理論的メモ 参加者側の視点から見た「星空ツアー」に参加する必要性、または

「星空ツアー」に求めているもの。

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4-2 星空ツアーの説明モデル

 図‐4にモデル図を示す

図‐4 星空ツアーをモデル化したもの

まず地域・会社側を主体に見てみると、「摩周湖☆星紀行」は川湯温泉の集客と、摩周

湖のブランド、地域の自然を生かすことが課題である。そして「夜のロマン号(現:知

床☆夜の大自然号)」では、知床ウトロのホテルによる、宿泊客のために何かしてほし

いという要請がツアーを始めるきっかけになっている。

また図‐4では、参加者側の課題を「都会では星が見えない」としている。北海道の澄み切った空気の中で、都会では見ることのできない満天の星空を客は期待しているのだ

地域・会社側の「集客が少ない」という課題と、参加者側の「都会では星が見えない」と

いう課題から星空ツアーが成立している。

しかし星空ツアーには切っても切れない天候の問題が存在する。観光目的が星空なの

で、運行日数に天候が大きく関わってくるのだ。

それから、田舎の観光地で過ごす夜の時間を持て余しているということが 2つ目の「夜にすることがない」という課題である。都会の観光地では夜でも遊べる場所が充実

しているし、退屈することはない。しかし今回の 2つの事例のような観光地では、かつ

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ては宿の中や近くのスナックでの飲食が夜の遊びの代表的なものであったが、現在の観

光客は趣味・嗜好が多様化しているため、夜に出かける場所が無い人たちが増えている。

言い換えるとこのような地域において、従来のツアーではこの空白の夜の時間帯をカ

バーできていないのである。

これらの問題を解決するべく両社は星空ツアーが催行できない場合にも対応できるよ

う新たにツアーを作成した。斜里バス株式会社では元のツアーを「知床☆夜の大自然号」

と改名しツアーの目的自体を動物観察に変更した。一方「摩周湖☆星紀行」においては

曇っている場合の代替ツアーとして「にこにこガイドと行く暗闇探検ツアー」を作成し

た。これにより運行日が増加した。この 2つの代替ツアーは、その地域でしか体験できないツアーであるという点で「地域の自然を生かしたい」課題が解決されている。さら

に夜の時間帯に行っているので「夜にすることがない」という客のニーズにも応えてい

る。

この新しい星空ツアーが売っているものは、結局のところ星空だけではなく、それを

含む地域特有の自然や文化を生かしたそこでしかできない体験である。そして客が求め

ているものもそれと一致している。そこに客側のニーズである夜の暇な時間帯にツアー

が行われているという要素がプラスされている。

以上をまとめるとこのようになる。星空をその地域の持つコンテンツの一部と捉えな

おすことによって「星空ツアー」を田舎の観光地では今までカバーできていなかった

「夜」のニーズに応えられ、且つそこでしか体験できない集客の見込めるナイトツアー

とすることができるということが明らかになった。

このモデルの適用可能な範囲を考える。このモデルの前提は、「都会ではない観光地

で星がある程度きれいに見られる場所であるか、もしくは近くにそのような場所がある

地域であること」と、「ナイトツアーとして成り立つコンテンツの存在」である。また、

そもそもオプショナルツアーとしての「星空ツアー」を成立させるために、パンフレッ

トをホテルのフロントに置いてもらうなど、広報の面において地域との強い連携が必要

である。

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結びに代えて

本論文は、現在の国内観光において注目されている着地型観光旅行商品の中でも「星

空」をコンテンツにしているツアーを対象に絞った事例研究である。国内における数少

ない星空ツアーの事例として、北海道道東エリアに位置する弟子屈町のツーリズムてし

かがと、同じ道東エリアにある斜里バス株式会社の 2社を選定した。星空ツアーのデータを入手するべく 2社へ訪れ、インタビュー調査を行うとともにツアー参加者数等のデータを提供してもらった。ツーリズムてしかがでは「摩周湖☆星紀行」を参加者とし

て体験し「星空ツアー」の実態を探った。

 参加者数の推移とインタビュー調査により「星空ツアー」の課題点が、天候と地域性

であることが明らかになった。前者は、ツアー目的が「星空」であるため、催行の有無

が天候に大きく左右されることである。これは実態調査においても筆者が体験している。

もう一つの地域性とは、田舎の観光地では観光客の見込めないシーズンが存在するとい

う課題点を表している。第 3章でも述べたように「星空ツアー」への参加者数は、それが行われる地域の入り込み観光客数に連動するのである。

それから、インタビュー調査で入手したデータをもとに質的研究法である SCQRM(修正版M-GTA)を採用して「星空ツアー」のモデル構築を試みた。本論文では、星空を、その地域が持つコンテンツの一つとして捉えることにより、田舎の観光地で従来ではカ

バーできていなかった夜の時間帯にナイトツアーという形でオプショナルツアーを行う

ことで観光客のニーズに応えられ、集客を見込めるナイトツアーと成し得ることを明ら

かにした。このモデルの有効範囲を考える。このモデルが前提としている条件は「都会

ではない観光地で星がある程度きれいに見られる場所であるか、もしくは近くにそのよ

うな場所がある地域であること」と、「ナイトツアーとして成り立つコンテンツの存

在」である。また、オプショナルツアーとしての「星空ツアー」を成立させるため、パ

ンフレットをホテルのフロントに置いてもらうなど、広報の面において地域との強い連

携が必要である。

現在日本国内で実施されている星空ツアーの数は少ない。あるとすれば、星空と他の

コンテンツと組み合わせているもの、もしくは天文台を利用した観望会のような、どち

らかというと教育よりのツアーが多い。しかし諸外国では第 1章で見たように、オプショナルツアーのメインコンテンツとして、星空ツアーは広く認知されている。よって、

今後日本国内において星空ツアーが注目される可能性はある。本研究で得られたモデル

は、そのような条件を満たす地域で、どのような形で星空ツアーをプロデュースするべ

きかについて重要な視点を提供するものである。

なお、このモデルは暫定的なものであり、今後さらに検討していく必要がある。また、

星空ツアーやその他のナイトツアーの参加者へのアンケート調査を実施し、参加者がナ

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イトツアーに求めるコンテンツやその課題等について詳しく研究することで、さらに新

たな視座を得られる可能性も考えられる。

 今回、星空ツアーの本質を探るうちに、国内のオプショナルツアーとしての星空ツ

アーはナイトツアーの一つのコンテンツとして位置付け得ることが明らかになった。観

光庁が様々な施策を実施している中、われわれ国内旅行者の平均宿泊数は世界的にみると

少ない。入り込み客の中で、宿泊者数の割合を増やすことは重要である。星空ツアーをは

じめとするナイトツアーが国内旅行者の宿泊数増加に貢献できる可能性はあるだろう。

そもそも私が星空ツアーを研究テーマに選んだ理由は単純に星が好きだからであった。

夜空に瞬く星を眺めると大きなパワーを感じ、落ち込んでいる時でもポジティブになれ

る。だからこそ、これからは星空ツアーが日本でさらに広まっていってほしい。本論文

のテーマで取り上げた星空ツアーをはじめとするナイトツアーがさらに広まっていくこ

とで、国内旅行者の宿泊数も増加していくことを期待している。観光客の宿泊数を増加さ

せるためには、夜の時間帯に行う観光コンテンツを充実させることが重要である。それ

を実現させる可能性を持つのが、以上で述べた「星空ツアー」を含むオプショナルツ

アーである。従来のオプショナルツアーではカバーできていなかった、夜間に楽しめる

ツアーが充実することで観光客の宿泊数の延びが見込めるだろう。その答えこそがナイ

トツアーである。

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<謝辞>

本論文を執筆するにあたりご協力いただいた多くの方々に感謝の意を表したい。お忙

しい中、ひがし北海道観光事業開発協議会事務局長の野竹鉄蔵氏には、下山氏と野竹氏を

紹介していただき、また道東への事例調査についての助言をいただいた。

また、斜里バス株式会社の下山誠氏には、道東における星空ツアーの事例調査において

インタビュー調査および星空ツアーに関するデータの提供にご協力いただいた。ツーリ

ズムてしかがの白石悠治社長には、インタビュー調査および星空ツアーに関するデータ

の提供や、実際に参加者として星空ツアーに同行させていただくなど、大変お世話に

なった。さらに、社員の皆さまの温かいご協力にも感謝している。

この場をお借りして、全ての方々にお礼申し上げると共に、3回生時から親身に研究指導をして下さった、指導教員の尾久土正己教授・中串孝志准教授にはここに深く感謝の意

を表す。

 

文献目録国土交通省観光庁. (平成 23年). 観光白書 23年度版. 日経印刷株式会社.西条剛央. (2007). ライブ講義・質的研究とは何か SCQRMベーシック編. 株式会社新曜社.西條剛央. (2008). ライブ講義・質的研究とは何か SCQRMアドバンス編.

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<付録1> ツーリズムてしかが 白石社長へのインタビュー

以前はですね、今から 25年 30年くらい前は川湯はもう団体のお客様で真っ盛り。お客様が毎日あふれるぐらい来てたんです。いわゆるエスコートツアー。その時はまだ、

ハネムーンも結構来てました。ハネムーンの北海道。全盛期のころでして、これが徐々

に団体のお客様がすこーし減少し始めました。減少し始めて、川湯温泉としては、危機感

をすこーしずつ感じてきましてね、ただ黙ってたらお客様が来るということはなくなっ

てきたので、なにか地域で仕掛けをしなきゃならない。まあこれはどこの地域でもそう

ですけれども。その中で、私はホテルの支配人やってまして、地域のホテルの、私はホ

テルに 37年間いたんですけれども、支配人だけで、ここの地区をリードしていこうと支配人会という会を作ったんです。この支配人会の組がありまして、そこでいろんなイベ

ントをやったりですねセールスプロモーションをやったり、旅行社へ行ってプレゼン

テーションをやったりいわゆるこの川湯地区のキーマンだったんですね。

その中で 1998年 9月 13日、この日が満月だったんです。十五夜ですね。せっかく川湯には摩周湖というブランドがありますから、夜泊っているお客さんを摩周湖に連れて

行って、観月会をやろうというプランが持ち上がってこの日に、バス 2台で行ったかな、大型バス 2台で摩周湖にご案内したんです。当然私も一緒に行きました、ただ、月を見るだけ。月が美しいから摩周湖も綺麗に見えて、お客さんも月を見てて、天気も良かっ

たですから、お月さん綺麗だねって、その時に満月ではあるんですけど、実はあの北

国って大気が非常に澄んでますから、星も見えてたんですよ。そしたら、あるお客さん

が「お月さんなかったら、お星さんきれいでしょうね」っていうことをつぶやいたんで

すよ。それで、このイベントは一日限りのイベントでしたから、戻ってきて私ともう一

人吉田さんっていう支配人会の幹事役、私も幹事役やってましたんで、星を見に行くツ

アーを作ったらいいんじゃないかと、よしぜひやろうということで、来年 6月から、1999年 6月 1日~10月までやりました。それで、星なんて、僕も含めてみんなちんぷんかんぷん。だから、説明なんか一切ない、ただ連れてってみてもらう。これだけで

いったんです。ただ私らはガイドじゃなくて、いわゆる添乗員。人数チェックして、連

れてって、その時始めたのは 1000円でスタートしました。それでやって、僕らはあの、各ホテルからお客さんピックアップして、連れてって、バスは阿寒バス。添乗員は各ホ

テル持ち回りでスタートする。バスの中で、まず私たちはボランティアです。と。です

から、この 1000円はバス料金ですよと。これは体験商品じゃないですよ。体験商品ってゆうくくりにするとガイド必要ですよね。私どもただ連れてってあげるだけですよと。

ということは、質問はしないでくださいねっていうことですよ。それはもうバスの中で、

私たちはボランティアでやってますので十分夜の摩周湖と星を楽しんでください。ただ

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連れてって帰ってくるだけ。これを 1年間やったんです。ま、1年間っていっても 1シーズンですね。結構ねお客さんが集まる、旅館組合の資金源にもなってきたんですよ。

これはいけるということでこれをずっと継続してやっていこうということになりました。

この時はまだ銀河鉄道という名前はついていません。1シーズン終わりました。これからは、ただこれだけだとお客さんは満足しないからやっぱりちゃんと星をガイ

ドしないとだめってなったけど、誰も尻込みしちゃって、難しいですから。それで、僕

とあともう一人、今はいないんですけれども、彼と 2人で、それなりに星のことはですね、自己流で。誰も教えてくれる人がいないから自己流で、覚えて来年に備えようとい

うことでやりまして、2000年 6月 1日~スタートしました。ガイドができるのは私ともう1人の彼と 2人だったんですけれども、私の場合星が好きだったということもあって、他の人より多少知識が増えていって、私がどっちかというとメインで、これも当番制で

ずっとやっていって、この年に、僕は星より宇宙の方が好きでしたから、これやる前か

ら、ちょっと学校でそっちの方かじってましたんで、それでこの 2000年の夏に終わって降りてきたある 1人のお客さんが、「結構おもしろかったですよ、実は私こういうものですけど」って名刺くれたんです。で、その名刺の相手はどなたかっていうと、日本

宇宙事業団、通称 NASDA。今の JAXAの前身ですね。でそこの、専務理事だったんです。で、僕はバスの中で、人工衛星だとかロケットのことだとかを、星の知識がまだしっか

り入ってないからそっちでカバーしようと思ってしゃべってたんで、「いやー大変おも

しろかったですよ。田舎にそういう宇宙のことをお話ししてくれる人がいてうれしいで

すよ。」それからその人とねもう懇意になったんですよ。それで、これが 2000年で、当時の NASDAも何かあったら協力しますから言ってくださいね、って結構親しくなりまして、その年の秋に私NASDA筑波に行きまして、無事、ひとまず終わりましたよ、これからもまた続けて行きますからまた何かあったら NASDAも協力してくださいねつって、お話しているときに、その NASDAの名誉理事のまつもとれいじさんに、せっかくこういう風に良いプランやっているんだから、できたのが 1999年のスリーナインで銀河鉄道の夜でお許しを得るからということで、この 2001年から銀河鉄道摩周湖執行したんですよ。

でこの年にですね、しし座流星群が来てる、33年に 1回のピークの時で、結構一般の人も星とか宇宙に瞬間的に興味をもとうとしてたんですね。それで、2001年にNASDAとタイアップして、北海道で 3番目に道東で日本宇宙少年団、摩周分団を作った。ただ今はお休み中ってなってますけど。私が作って、それの記念で、2001年 6月宇宙フェスティバルを弟子屈で行ったんです。宇宙服をかりたり、道東では初めての、モデルロ

ケットのデモンストレーションをやったりですとか、若田幸一さんを呼んでこようと、

それから摩周湖の展望台から宇宙ステーションに光通信をやろうと、下はこうパネル、

コイルを作ったパネルで大きな電灯をあててですね、上とこれでやると、これには KDDIそして NASAと日本の宇宙飛行士と交信したらね、で、こういうプランニングが全部で

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きたんですよ。で、プランニングをしている最中にコロンビア号がドーンといったんで

すよ。大気圏に入ってくる時に燃えて 7人の宇宙飛行士が死んで、この事故で若田さんは来られなくなっちゃった。それと KDDIの宇宙通信衛星を使って宇宙ステーションと交信をやる予定もだめになっちゃいました。でも、もう企画は進んでましたから、日本宇

宙少年団摩周分団の設立と合わせて 2日間宇宙フェスティバルをやったんですよ。これが 2001年の年ですね。そして、ずーっとやってきました。この間はですから、この時もずっと私はホテルの支配人をやってましたから、このツアーの主催は旅館組合なんで

すよ。それで、旅館組合でずーっとやってきて、途中から 1~3月だけ冬バージョンを始めたんですよ。そうこうしているうちにですね、2008年にわたくしホテルを、満期になりましたので退職しました。でも、この星ガイドだけは、退職しても旅館組合から依頼

をうけてやってました。この年にやっと僕もホテルから解放されて暇ができたものです

から、JAXAともずっとお付き合いしてましたから、こういうライセンスをとったんですよ。はやぶさを打ち上げた責任者の、はやぶさ映画の西田さん役の人からセミナーをう

けて。ライセンスの目的っていうのは、「あなたは、一般の人に宇宙のことを教育して

いいですよ。それと、宇宙の知識を広めて」だからこれはあくまでもボランティアなん

ですよ、そして私は 32番目。いま一千人くらいいるんですけれども。2009年に取得しまして、このころは 1200円になってました。ちゃんとガイドもあるていどできるようになっていたので。このあとにいったん 1500円になりました。ホテルを退職した 1年後に、みんなでお金を出し合ってこの会社を作ったんですね。2009年の 4月に。誰もやる人いないからとりあえずやりなさいよ、ということでやるようになったのが 4月~。うちは旅行会社ではあるんですけれども、メインは着地型旅行商品を造成する会社です

ので、地域の自然や産物を生かした商品を作るのがメインでしてね。そういう会社がで

きたんですけれども、できたばっかりで売るものがなんもないんですよ。それで、旅館

組合にいきまして、このツアーを作る際に携わっていたので、うちの会社に譲渡してく

ださいということで、4月~旅館組合からうちの会社にかわったんですね。これが大筋の流れなんですよ。で、うちは一応は民間会社ですから、せっかくこれ評判もいいし、通

年でやろうということで、4月から 365日、通年でやりました。大晦日の夜もやりました。それで、今に至っているんです。

これもね、いまちょっとほんとに、駆け足でご説明しましたがその間にはね、たくさ

んの紆余曲折がありましたよ。お金ないから広告なんか出せませんから、旅行会社にお

願して JTBとか JALとかエージェントもこのツアーが非常に評判がいいというのはやはりお客様からのアンケートでちゃんとあるんです。もってるんですね。ですからこうい

う所に行って、これをツアーに組み込んでくださいと。いわゆるインクルード商品です

ね。組み込み商品をつくってくださいとあっちこっちに事あるごとにお願いして、それ

が例えば JTBの団体がねこの商品を組み込んだ、えー今年もやってますけど賞品であったり、JALが個人のお客様に、摩周湖星紀行付きの商品を売ったり、それよりも何よりも

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いちばん肝心なのは地元の宿泊施設が協力してくれないと。ぱっとここで伸びた一つの

要因としては、うちの会社の取り締まり役ですね。各ホテルのオーナーが出資してくれ

るんですよ。そこで、これがついた宿泊プランをつくってくれてり、旅行者に PRしてくれた。これがね、やはり着地型旅行商品というのは、うちの会社だけでは、なかなかお

金もないし広告出せませんし、着地型旅行商品の会社って今全国的にやろうとしてるけ

ど、僕の感じでは、着地型旅行商品だけでは 100%食べていけないです。例えば NPO法人ですとか、サンセクみたいなとこでしたら、人もね、行政から来てある程度マンパ

ワーは確約されますが、株式会社ですから、社員は全部うちの商品で出た利益で食べさ

せていかなきゃならないですよね。そういう意味から言ったらね、100%といっても過言じゃないですけども、無理ですね。あなたもご存じだと思いますが、星のリゾートの

ピッキオや伊勢志摩にある体験事業者さん。きくさんってカリスマガイドさんがいる、

あそこも体験商品だけでは赤字なんですね。やっぱりそういうものは行政とちゃんとタ

イアップして、地域の環境の調査ですとか、観光に関する業務委託ですとかそういうの

がなければ、あとはそういった商品の利益だけでは社員 5,6人なんて絶対使って行けないですね。着地型旅行商品は地元の宿泊施設や地元の人たちと密接に密にして発信してか

ないと会社だけではなかなか無理ですね。幸いなことに、うちの会社の株主は宿泊施設

のオーナー、川湯の大きいオーナーは全部うちの株主になってますから、あるいは弟子

屈町の行政も、うちの会社に対してこういう着地型旅行商品、専門の会社っていうのはう

ちができたときは日本でも先進事例だったんですよ。できた経緯っていうのもまた特殊

な経緯でできてたんですけれども。今観光庁がやっているプラットホーム事業、観光圏、

うちの会社は変わった経緯でできた会社です。それが今、観光庁が推進している観光圏

がスポッとそのままなんですよ。これの、最新の事例がここにあるシステムなんですよ。

これがそっくりそのままいまこれから推し進めていく観光圏、プラットホーム事業その

ままなんですね。ですから結構お問い合わせがあったりね、そういうことで、こういう

地元密着の商品っていうのはまず地元の人にね、理解していただいて、地元の人がこれ

はいいですよっておすすめしてくれる。観光客の方も、地元の人が進めてくれると安心

ですよね。そういう積み重ね。

それと去年がですね、数字が大きかったのは、お天気に恵めれたからですね。これは

絶対条件です。だからといって、たとえば、JTBの団体商品で星紀行付きのもの、はい、今日星見えません中止です、っていうと、旅行者に返金っていうのもあったりすると大

変なんですよ。それでもう、これやり始めて 10年ぐらいになりますかね、雨で星が見えない時は、お客様をある一か所に集めて私が星と宇宙のスライドショー、いわゆるトー

クショーやるんですよ。1時間。内容はただお星さんの話だったら、見えてないのに、わからないですよね。実感ないですよね。だから、私いろいろ考えて、いかにお客様を退

屈させないか、いかに興味を持ってこっちに目をむけるか、これがね今の僕の外伝、そ

の結果だったんです。それやったことが。ただ授業の延長の、あるいはプラネタリウム

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でも散々星のことはやってますからね、知識はあるんですよ。そんなこと聞きたいとは、

思わないですよね。ですから今でも、僕のポリシーは、僕の外伝はそこなんですよ。プ

ラネタリウムでもお話ししない、星の本をみても出ていない、そういうお話をしてあげ

る、それでいて、私たち人間生活に密接に関係がある。あ、そーゆうことだったの。時

間が限られてますから、全部はお話しできないですけど。

例えば今日なんか上限の月出てますから、お月さん出てる時は星のことって小学校か

ら習ったりしてそれなりにお勉強してますよね。ところがお月さんのことって意外とみ

んな知らないんですよ。でお月さんなんて空にあって輝いているのが当たり前ですよね。

このお月さんがどうしてできて将来どうなるのなんて疑問なんて起きませんよね。そう

いうことをね、普段聞くことのできないお月さんの話。例えばお月さんは今地球からど

んどん離れて行ってますよ。1年に 3センチずつ離れて行ってますよ。ですからこの計算で行くと 50億年後にはこんなちっちゃなお月さんですよ。地球から見えるとしたら。見えるとしたらって今私言いましたよね。というのは、残念ながら 50億年後は私たち人間はこのお月さん見ることができないんです。っていうと、あれ、どうして。てなりま

すね。これは行くバスの中ですが、当たり前の話ですけど、地球ってちょっと 23度傾いてますよね。でも、地球って今から 46億年前生まれた時はこんなちっちゃな星だったんです。それが十数億年後に今の火星と同じお星さんが地球にダーッとぶつかって、これ

をジャイアントインパクトっていうんですけど。で合体して今の大きさになったんです。

で、そのぶつかったときに真横でなくて斜めにぶつかったからちょっと傾いたんですよ

ね。傾いたと同時に当然ぶつかってますからくるっとまわるから、今でもまわり続けて

るんですよね。でものすごい勢いでぶつかったから、地球当然ちぎれていきますよ。こ

れが、今のお月さんなんですよ。だからお月さんできた時は地球と目と鼻の先にありま

した。引力の引っ張り合いで一日は 5時間でした。それが、今 3センチずつ離れていってるから今 30数億年たって地球から 3万 8千キロくらいなんですよ。それが、またさらに向こうにいっています。で 20億年後にはかなり遠くなりますから、月の引力の影響がなくなりますから、その時は地球は一日は 31時間になります。で、今ちょうどタイミングが良いっていったら怒られるけど、今回の 3月 11日の大震災でこの地球の傾きが変わっちゃったんですよ。知ってる方いますかっていったらたまーに 1人くらいぽっと手挙げるかな。これが今 10センチの違いにポッと戻っちゃったんです。で、こうまわってる。テレビ新聞でどうしてこう、そういう風な報道をしないのかというと、私たちの人

間社会に対して影響はないと。しいて影響があるとしたら、1日 24時間ですよね。あったりまえですよね。これの 100万分の 1秒地球の自転が早くなってくる。ってお話をして、そこでじゃあ、20億年後にはどうして私たち人間はお月さん見れなくなるのかっていうのは、今日これから見る星に関係があるんですよ。で、この宇宙でも本当に奇跡的

な星と言われているこの地球が、50億年後にはどうして生命が住めなくなるのか。これは、星の誕生と星の一生に関係があるんです。その代表的な両方のお星さんが今日は見

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えますよと。

で、もうすべてこう関連づかせていくと、お客さんってこう、どうしてって。今の私

が言ったストーリーっていうのは宇宙に興味がない人でも、えっどうしてって。あと、

子供さん大人に関係なく、まるっきり宇宙に興味がない人、星の話なんか聞きたくない、

見るだけが好きなんだよって人も、どうしてってなりますよね。で、まあ興味の持って

いき方はそういう風にやりますけど。でまず、展望台についたらまあすぐガイディング。

の詳細は抜きにして、バスの中で、その前に最後にお話しをするのは、みなさん星の一

生ってわかりますよね。かならずおぎゃーってうまれたら必ず死がありますよね。これ

はどうしてかって言うとエネルギーをもっているから。惑星はエネルギーがないから、

できたらもう半永久的に残っていますけど。お星さんがおぎゃーって生まれる時は、

青々と輝いている。この物質は水素とヘリウムなんですね。で、今回福島原発で水素爆発

をしました。あれが爆発ずっとし続けると、今度はヘリウムっていう原子がでてくるん

ですよ。今度はヘリウムと水素が核融合起こして青々と星が誕生すると。お星さまはお

ぎゃーって生まれてずっと中年、人間で言うと 30歳 40歳、中年の星になりますよね、っていうとみんな結構笑うんですけど、これが中年の星になると、エネルギーが少

なくなってくるんですよ。何のエネルギーが少なるかというと水素なんですよ。少なく

なって、ヘリウムの確率が高くなってくる。そうするとね、お星様が黄色っぽくなって

くるんです。で、中年からお年寄りの星、まあ老年とかなんとかうっかりした言葉は使

えないからお年寄りの星になる過程ではほとんどもう水素はなくなります。ヘリウムだ

けになりますから、今言ったように温度は低くなっちゃいますからオレンジ色に。で中

年からお年寄りの星にいく過程で、実は私もそういう傾向に症状がでてきて悩んでるん

ですけど、気にされる方いたら聞き流してくださいねっていってお星さんも中年からお

年寄りにいく間にぶよぶよぶよぶよ膨れてきますよ。で、最後に最大限膨れたら、中に

エネルギー残ってますからこのエネルギーの圧力ってものすごいんです。今までエネル

ギーを押さえつけてたのが抑えきれなくなったら超新星爆発ドーンと起こしますね。で、

太陽の百倍以上のエネルギーをもった星は今度エネルギーだけが宇宙にポーンと残っ

ちゃいますよ。これが、いわゆるみなさん知っているブラックホールなんですよ。だか

ら決してブラックホールは穴じゃないんですよっていうと、そこで知らない人は、あー

そうだったのーって。そこでだいたい終わるんですよ。行きは。

北極星の高さをみんなで測ってもらう。今ね、星のガイドさんでこれやってる人ほと

んどいない。ですから、これが 15度。で、バスの中で、私ペラペラしゃべってますけど、たぶん朝になったらほとんどみなさんの頭から抜けていきますよねーって。でもせっか

くだから 2つだけ覚えてくださいと。あることを体験しますからこれを覚えてくださいと。それともう1つは、星のことをいまさら勉強するのはかったるいでしょうから、で

も今度満天の星を見たときに何が何だかわかんないですよね。でも、星のことをお勉強

しなくても、もう1つこのことを覚えていると、もう見るだけが楽しみな方は四季折々

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の星の変化が手に取るように分かりますと。この 2つだけは覚えてくださいねっていうんですよ。で、行って、拳をあげて、、、15度、30度、40度ですよ、で指一本が 2度ですからこれで北極星隠れますね。ですから、今皆さんがいるこの場所から北極星まで

角度 43度ありますよ。さあ、みなさんいるこの場所どこでしょうといいますと、たまに詳しい方がぱっと答える方いますけど、ここが北緯 43度ですよ。今ここで、みなさんが摩周湖展望台から見てますよね、あそこに見えてますよね。もしここが東京だったら、

北極星だったらこのへんですよ。今ちょうど真下に北斗七星がありますから、おんなじ

時間に今東京で見たら北斗七星はもう見えてませんよ。ですから、みなさん夜、お星さ

んを見る時真上しか普段は見ないですよね。だからわからないんです。お星さん見る時

は地平線から見てみましょう。そうすると、同じ夜 8時で摩周湖から見る星、東京からみる星、沖縄から見る星、違いますよ。真上だと高低差がわかりませんからね。これを

覚えてくださいと。で、エドはるみのグー。これ絶対覚えてくださいね。複雑なことや

るけど、覚えるのはこれ1つだけでいいです。これ覚えてると、あ、今日ね天気良かっ

たらこの上通ってるけど、これだけ覚えてると、宇宙ステーション簡単に見つけらます。

宇宙ステーション簡単に写真で撮れます。今日は 5時半くらいだったかな。まず宇宙ステーション一般の素人の方、目に見えるなんて思ってませんよね。簡単にみえます。こ

れはバスの中で簡単にご説明しますね。

だから、僕のガイドは普通のスターウォッチングをするガイドさんとはちょと違う。

普通のガイドさんだと、ギリシャ神話と星座。あと、北極星やった時に、これも教える

んですけど、私たち人間社会に北が 3つあるの知ってますか。まずは北。コンパス上の北。地図上の北があります。人間社会には北が 3つありますと。でも、私たちは正真正銘はこのポラリス、北極星が北ですと。このコンパス、磁石使ったことある方います

かーっていうと、たまにぱっと手が挙がりますけど、今度から磁石使う時気を付けてく

ださいね、あの磁石、N北にいくと、どんどん北から遭難していきますからねっていうと、みんなびっくりするんですよ。そういう風に思ってる人いないんですよ。それをま

ずは説明してあげるんですね、簡単に。磁石って言うのは新品で作った時から北から 9度にしにずらして作ってますから。日本は 7度西にずれてます。だから、磁石で真北だったら、7度西に向かっていくと、真北になるんですよ。地上の磁力の違いですね。

地球上の地上の磁力一番強いところにコンパス持って行っても真北から作らないように

コンパスって作ってあるんですね。まあそんなこと。意外とね、身近にあるんだけど知

らないと、そういうことをメインにしてお話ししているんで、普通のスターウォッチン

グのガイドさんとはちょっと視点が違うんです。人間社会に密接にこう。どうしてっ

かっていうと相手は大人だから。それも、お金を出して参加してくれてる方だから。こ

れがタダだったら、そこまでなんか、まあちょっと言いすぎかもしれないですが。お金

を出して参加してくれて、相手は大人ですから、もう常に、スタートしてから終わるま

でこっちに惹きつけておく。でも、その中に、私たちの生活と星と関係のあることいっ

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ぱい出てくるわけですよ。それだとか、今オリオンの上にベテルギウスっていう星があ

るんですけれども、これが下手したら来年超新星爆発しますよ。もうすでにしかかって

ますよ。世界各国観測態勢に入ってますよ。これが爆発したら、地球にもちょっと影響

ありますよ。とかっていうのは、時間ある時に説明したりね。それから、オリオンの上

にアルデバランって真っ赤な星があるんですけれど、ここに木星がぎらぎら輝いてます

けど、木星の説明をした後に木星に行ったパイオニアっていう衛星は今木星をぜーんぶ

調べおわって、このアルデバランに向かっていってますよ。これは世界で初めて太陽圏

から飛び出してこの星に、65光年向こうの星に今向かっている。そしたら、たまーに「その衛星いつつくの」とかって聞かれる。それは今から 200万年後ですよ。っていうとみんなえーって。ですから、宇宙っていうのは常にそういうことをしている。これは

今の私たちじゃなくて過去の人たちもそういうことをやってくれているから、今の私た

ちも宇宙っていうのを少しずつ解りかけてきている。そういうことがメインでやってま

す。

帰りのバスの中は、だいたいもう星を見終わりましたから、今たまに流れ星見えます

ので、これも意外と知っているようで知ってないこと多いですから。流れ星って大きさ

想像できますか。スピードどれくらいか想像できますか。っていうとだれも答えられな

いですね。だから、私はまるっきり逆のことを 3つ言います。流れ星っていうのは星ではないですよ。流れ星っていうのは光ってませんよ。流れ星っていうのは流れてません

よ。まるっきり逆のことですよね。これを帰りのバスの中でするんですよ。それと、帰

りのバスでまだ時間ありますから、ロシアからソユーズ打ちあがって今古川さんを迎え

に行きますから、宇宙ステーションの見つけ方をお話して、宇宙飛行士っていうのは一

日 8時間労働ですよ。週休 2日制ですよ。どこでどうやって寝ているのかわかりますか。ときどきお客さんに問いかけをしてやる。宇宙ステーションに 3カ月以内の勤務の人は雑魚寝しています。3か月以上勤務している人はちゃんと個室が与えられています。でその個室ってどういうものかわかりますか。ロッカーみたいなところに入っています。と

かね。これが、だいたいの流れですね。

今は、雨天時のセミナーは非常に難しいことがわかりまして、雨天時ですから当然雨

降っていますよね。雨が降っているとなかなかお客さんが一か所に集まってきづらい。

だからといって私たちが各ホテルをピックアップするとなると時間がかかっちゃいます。

そういうことで今そのスライドショーはですね、ある団体から貸切で頼まれる以外はし

ていなです。雨の場合はまるっきり中止です。曇りの場合は、にこにこガイドといく暗

闇探検隊。最初は摩周湖に行っていたんですけど、摩周湖はそういう意味では面白くな

いんですよ。それで、やめました。今は硫黄山っていうところと、屈斜路湖。砂湯って

言って砂を掘るとお湯が出てくるところがあるんですけれど。そこにお客様をご案内し

て、火山の成り立ち、真っ暗闇で溶山のゴーっていう音を聞いたりだとか、あとはバス

に乗って屈斜路湖に行って、スコップでみんなで掘って、下から温泉が出てくる。そう

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するともう 1時間半。で、バスの中で、日本でも最大の屈斜路カルデラは、こういう風にしてできましたよっていうのを紙芝居で見せるんです。ただですね、摩周湖星紀行に

お申し込みありますよね、今日は星は中止ですよ、ナイトツアーに切り替えますよって

いいますともう 10分の 1ですね。お申込みが。まあそれはでもね、最初はやってなかったこと、これでも、今年はお天気悪いですから、ナイトツアーもそれなりに稼いでいる

んですよ。ということは、商品にインクルーズされてるから。そういうお客さんってい

うのは、お金を払っている感覚がないから、退屈しのぎに参加してみようかっていうお

客さんもいます。それと、あなたもどこか温泉地にいって、例えばお友達同士なら退屈

しないけど、ご家族で行くと夜退屈でしょ。いかに観光客の方って夜退屈してるか。例

えば湯布院だとか、ああいうとこだと夜もそれなりに楽しめるところはありますけど、

こういう田舎ですと、テレビ見るかすぐ寝ますよね。あと温泉に入るか。だからそうい

う方がねやはりっていうのは増えてきているんですね。ただ、さっきも言いましたよう

に 10分の 1ですね。それから、どの月が多いのかっていうのは、このツアー自体が自然しだいだからです

ね。だから、お天気の状況にもよるんですよ。6月は極端にいうと、1日~一月間お天気が良かったらわっと増えます。もう 1つ、今星ツアーぜひ参加しに行こう。でも夕方になって曇っている。星は見えないだろうな。ってなると申し込みませんよね。いくら

キャンセル料がかからないとはいえ。今はお客さんの方が賢いです。あ、今日星見える

なと思ったらわっと入ってくるんです。だからこの申込数だけが一概にこのツアーの、

お客さま自信のツアーに対して興味を持っているかはイコールではないんですね。お客

様の方が状況みて。中にはもっと詳しい方は、たまにいますけど、あ、今日は満月だか

ら行ったってたいして見えないだろうって参加しないお客様もいます。だからこの申込

数っていうのは一概にイコールにはつながってこないんですけれども、やはりお天気状

況。

それともう一つはですね、地域性にもいえますね。っていうのは、こういう田舎です

から、夏の、いわゆる僕らでいう本州のお客様が主体ですから、そのツアーが 6月 1日~いきなりフル稼働していないんですよ。だいたい 6月の 20日くらいから増えてくるんです。だから、そういう意味からいくと、団体がだいたい中旬くらいから増え始めてき

ますから、いきなりどんっといくんですよ。この辺から観光シーズン幕開けになるんで

すよ。でずーっと走っていきますね。でもうこの 11月~がっくり少ないですよ。毎日もう 3人 4人。今日も 4人しかいませんけど。で、1月からちょと増えますね、2月にどんっと増えますね。これは、2月はやっぱり星を見たいお客さんは、冬は星奇麗だねっていう人のタイプと、もうひとつは雪まつり、あるいは流氷の冬の団体ツアーが多くなる。

ですから 2月がどーんと増える。ここは、都市じゃない。観光地ですから、その観光シーズンの波にどうしてもイコールしてくるんですよ。入り込みに。ですから、一番や

はりこの中でお客さんが少ないのは 11,12。それから、3月、4月。いわゆるお客さん

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の少ない時です。この地域全体が。ですからこういうリゾート地の着地型の商品のリス

クはそこですね。その地域の入り込み数に左右されやすい。メリットの部分は、お客さ

まが多いとそれだけ需要が増えてくるっていう。これは都市部と違う。

それともう 1つは、さっきも言ったように、リゾート地ですから、夜やることない。星紀行メインで来られるお客さんも、増えてきていますね。今年からですね、プレミア

ム摩周湖星紀行。これ 6月 1日~始めたんです。でいわゆる完全な貸切プライベートツアーですね。最初、自分で作っていながら、こんなの申し込む人いるのかなって思って

いたら最終的に、これ 10月いっぱいで終了したんですけど、6月から 10月で。お申込み 16組、ありました。このうちの 3分の 1が、これに過去に参加されたお客様。で、3日前のプレミアム星紀行の方も、曇りでダメでしたから、すみませんと謝りに行ったら、

「去年はこっちの方に参加してすごくよかったから、今年は私たち夫婦でこれに」って。

リピーターは多くなってきています。おとつい参加された方も、去年の 10月に参加されたんですけれども、満月でね、今回はお月さんなくてよかったですって。ただね、悲し

いかな、このツアーってアンケートとれないですよ。バスでしょ、上で書いてもらっ

たって真っ暗でしょ、各ホテルついてからってもう回収できないですよね。そんなんで、

現実的に無理です。普通のウォーキングツアーだったら、ちょっと 5分だけいただけますかってアンケート書いていただけるけどこれは無理です。これはね、参加された方、

実際にガイドしてる我々じゃないとわかんない。よく、観光に対しても関連している方、

どうしてデータちゃんと、今回何回目なのか、参加してどう思ったのか、そんなのとる

のは当たり前だと思っていますが、現実ツアーではできないものもあるっていうのをわ

かってないですよね。お客様にまたそこまで強制できないです。だから、私はなるべく

どっからいらっしゃったんですかって聞くんですけども、だいたい関東が多いです。こ

れはどうしてかっていうと、いわゆる空のアクセスの絡みですね。それとエージェント。

だいたいエージェントは関東のところは川湯が取り扱いしているのが多いから。この 2月はですね、意外と多いのはですね、東南アジア系の方が多いです。特に香港・シンガ

ポールの方が多いです。今香港は千歳直行便飛んでますから、週 2便かな。前までは 3便だったんですけれども。そういうこともあります。それで、日本語は話せないと思っ

た方がいいですね。ただ、参加された方もわかっていますから。見るのが楽しみと。そ

れと、こういうところに来たっていうことで、特に香港・シンガポール系っていうと、

どっちかっていうと中国系でしょ。とにかく写真を撮られるんですね。対策として、こ

れは、常に持っているんですね。(星座の絵と名前を英語で書いたもの)ほかの月にも

外国の方はたまにぽつぽつと参加されます。夏秋時期は台湾系列の方が多いですね。冬

は香港・シンガポールが圧倒的に多いです。っていうのは 2月は旧正月でお休みになりますから。日本の年末・年始お休みが 2月ですから、彼らは。ただ今年円高だからね、心配ですけど。

あのね、今一番の悩みはガイドですね。今さっきも一部お話申し上げたんですけど、

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星の知識持っている方ってそれなりにいるんですよ、プラネタリウムいったり、本を読

んだり、好きな方はそれなりに知識持っていますよね、だからといってそういう方たち

がガイドできるかっていうと、またネイチャーガイドっていうのは接客業でもある。人

と接しなければならない。弟子屈町でも、そういう星好きな人はいるんですけれども、

じゃあガイドお願いしますっていうとだいたいダメなんですよ。どうしてかっていうと

接客が苦手っていうのも理由の一つ。もうひとつ、あげられるのは、お客様から質問が

来た時、答えられないかもしれないという不安ですよね。それが今ね、次世代のガイド

ですよね。これが一番の悩みです。星が好きなだけではできない。だから、育てるので

も、なかなか春~冬で空が変わっちゃう。スパンが長いんですよ、養成機関が。これが

ね、今一番の。幸いにもうち、もう一人のガイドが星をかろうじてできますので、僕が

出張中の時とか、お休みの時とかは代わりに出てもらっています。僕のお休みはなるべ

く一週間の天気予報を見て、雨の日は休みをいれて。晴れの日のお休みは、出張以外はな

い。まあそれが一番の悩みですね。

その次の悩みはですね、夏、お客さんが、特に 8月あたりなんかはお申込みが多いですよね。そうするとここ田舎ですから、ご用意できるバスに限りがあるんですよ。200人集まったから 200人運べるかって言ったら運べない。それは、バスの問題。輸送の問題とガイドの問題。ここにもやっぱりガイドがひっかかってくるんですよね。ですから、

今夏でも募集人員は一度に最高 100名。これは、ガイドの問題と、大型バス 2台しかキープできませんよってこともあって。だからほんとにビジネスでね、この、まあうち

の会社でこの商品は一番の売れ商品で利益率も高いんです。というのは、例えばバス賃 2万円だとしたら、お客様 10人でペイしますよね。こっから 1人増えるごとに利益率がどんどん上がってくるんですよ。バス賃は 2万円と固定されてますから。これが、20人集まるとここで利益率 50パーセントでしょ。私の人件費抜かしたら。30人いくと、もう利益率 60,70,80、といっちゃうんですよ。だからビジネスとしては非常に、仕入れはバス代だけですから。私がガイドでいった場合はですよ。だから、バスフル満タン 40名。ポンっと乗ったとしたら利益率も 90%。ビジネスとしては非常にいい商品ですよ。例えばモノづくりをする着地型商品でしたら、ひとりに対して一人のコストかかります

よね、モノづくりですと。ここは、かからないですよね。で、素材は自然ですから。そ

ういう意味では、非常に利益率は高い。だけども、逆に言うとお天気に左右されちゃう

というリスクがあると。

あと、これは上手くいっているシステムなんですけど、このへんも上手くまた修正し

ていかないといけないなと思うのは、この摩周湖星紀行も結構最近もうメジャーになっ

てきているんです。新聞で取り上げてくれたりして、ですからお申込みが少しずつ増え

てきたりしているんですけれども、うちに直接、ホームページからのお申し込みも増え

てきているんです。だからといって、うちはそのお客様を直扱いしていないんです。だ

からこの星紀行のうちのツーリズムてしかがの直扱いっていうのはほとんどないんです

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よ。ちょっといきなり僕、結論から言っちゃったからちょっと疑問に思っていると思う

んですけれども。それにはさっき僕が言った、着地型旅行商品っていうのは、やはり地

域と密着していかなければならない。地域の人と一緒にね、手を携えてご協力がなけれ

ば、なかなかね、メジャーな商品になるのは難しいって言いましたよね。これは、宿泊

施設なんですよ。このお申し込みは、毎日 6時半締め切りなんです。ホテルから、まずお客さんフロントに行きますからわーっと書いてもらって、こういう風に各ホテルから

お申込みがくるんですよ。人数が増えてきたらまたこれに追加してくるんですね。まず

この手間があるということ。それと、6時半の時点で星見えませんよ。ナイトツアーになりますよってホテルに連絡する。ホテルのフロントは、星紀行をお申し込んだお客様に、

いかがしますかと連絡する。それでお客様の意見を集約してくれてこちらに流すと。こ

れはね、いくらうちが民間会社とはいえ、フロントは大変ですよね。それに対しての、

お互いウィンウィンでいくには、それだけのメリットを宿泊施設にも与えてやらなけれ

ばならないですよね。そうしないと、うちが儲ける一方じゃ、フロントもチェックイン

で忙しい時間に、そんなことやってられるかってなりますから、うち、ホームページで

直接お申込みきますね。必ず、今日どこお泊りですかっていうのを書いてもらうように

しているんです。そのホテルにお客様をフィードバックするんです。今日こういうお客

様が 2名星紀行に参加されました。で、フロントで参加券を発行して下さい。で、うちはこのホテル扱いは 10%バックしてるんです。2000円ですけど、1人につき 200円バックしてるんです。うちに直接きてても、そういう風にフィードバックするからホテ

ルに手数料落ちますよね。これでしてあげているから、普段煩雑なこういう手間もお願

いしますねという意味で。だからこの星紀行の直の取り扱いのお客様はほとんどない。

ただ、うちが直の数字が上がるのは、川湯に止まっていないお客様。そういう方だけは

直扱いになります。弟子屈町内に泊っていらっしゃるお客様は全部フィードバックして

いますから。ホテルだろうと民宿だろうとペンションだろうと。そうすると、こういう

システムをとっているところはほとんどないと思います。日本全国でも。

それともう一つは、この夜の自然ツアーってやっているところないはずです。例えば、

夜じゃないとダメなホタル狩りツアーだとかね、星ツアーだとか。それは夜の、その現

象を目的としたツアーですけど、ただ夜の自然ツアーなんて、えっと思っちゃいます。

夜の街歩きとかっていうのは、夜の街をターゲットとしてご案内するからもう目的は決

まっていますけど。うちらのこれは、昼間でもできるものをわざわざ夜やっている。こ

れは、星紀行の副産物として生まれたツアーですね。今までだと、星見えませんよこっ

ちからキャンセルしてそれで終わり。よくよく考えたらもったいないなという話になり

ましたから。それと、旅行者からも要望があったんです。商品を、インクルード、組み

込みされている商品、お客さんに返金とか、そういうのめんどうだからなんかやってく

れないのかいっていうそういう要望もあったりして。副産物として生まれたツアー。今

これは、セカンド商品になっていますけど、今ガイドが足りないから、星紀行の代替プ

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ログラムになっていますけど、トップの商品でもね、単独商品で売れる商品です。ただ

今ガイドがいないんですよ。それと、田舎ですからさっきも言ったように足の問題。輸

送の問題。これがクリアできたら単独でひとつで売れます。し、儲かります。オーバー

セールになったことは、今年もありましたね。輸送のキャパが 100なのに 180お申込みがあって、バスはね、その日だけバス会社にお願いして持ってきてもらったりして準備

はしました。だけどその日は最終的に曇りでダメでしたけどね、あとガイドの問題もあ

りますから。これからはそこを修正していかなければならないんですけど、これがメ

ジャーになりかかりましたから、各旅行会社組み込みがこう入ってきていますね、これ

がどっと重なった時。いわゆるオーバーブッキングっていう状況になった時。それは

おっかないですから、組み込みするとメリットはね、その日ツアーが入っているお客様

はだいたい参加っていうのは見込めますけど、これが重なったときに大変なことになり

ますから、これはセーブしていかなきゃならない。そうしないと、当日のお客さんが全

部はみ出しちゃう。もう事前に、団体だと事前にわかってますから、もうこれでマック

スだよっていったら、当日のお客さん誰も受けられない。ホテルとね、せっかく協調し

てやっていってるのになんだっていうことになります。それともう一つはホテルでも、

これを組み込んで売っているプランがあっても、せっかく増えたのにどうしてだめなの、

もうこんなもんっていう。こういうシステム的な問題。これが課題です。システムの整

備をしていかなければなりませんよね、難しいです。申込数もマックスがあるというこ

とです。普通のーまあ、ガイド付きのツアーですと、ガイドの絡みではい、打ちきりで

すよってなりますけど、それにプラス自然っていう問題があって、相手が旅行者ってい

うのも介在しているっていうこともありますからね。両方両立していかなきゃならない、

一般のお客さんとね、このアジャストが難しいですね。

あと、もうひとつ、悩み。判断力ですね。当日のお天気の判断力。これは今申し込み

18時半になってますよね。夏はスタート 20時半ですよね。その間 2時間ありますよね。これどうして 18時半にしているのかっていうと、バス会社の関係なんです。冬は 19時半だから、判断してからスタートまで 1時間しかないですから、あんまり判断狂わないですよ。この 2時間っていうのは、いわゆる気象条件がですね、ちょうど夕凪に変わる時間なんですよ。日中は陸から海に風は吹いてますけど、夕凪を境に今度海から陸に風

が変わるんです。まあこれ地球の自転も関係あるんですけども。そうするとちょうど雲

が入り込む時間なんですよ。ですからその段階で安易に、雲があるから中止ってなって

も、夜 9時になってからびかびか星が。そうするとお客さんから、「どうして星が見えるのに」これがつきものですよ。この判断ですね。それとこの逆。18時半の段階で星が見える。これはね、夏よりも冬の方が多いです。いざ出発したら曇りとか。夏の場合は

川湯から星見えてるのに、摩周湖へ行ったらここだけ雲がかかっているんです。これは

夏が多いです。川湯の上からは星が見える確率が高いです。太平洋から雲がカルデラ壁

にあたって、左右に分かれる。摩周湖いって霧だよってなったらすぐ下がってきて、や

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る。その辺の、臨機応変の対応。ですから、さっきも言ったように星が好きなだけでは

ガイドはできないよっていうのはこういうところがあるんですね。ですから、私もガイ

ドをやってて、ちょうどその時雲がやってて、星がぽつ、ぽつしか見えない、お客さん

はがっかりしますよね。これで 2000円かよ。そういう時は、僕らが一番それを感じますから、バスの中でも、上にあがってでも、もう一生懸命いろんなことを説明。そうい

う時は、もう終わったら、普通の星が見えてる時の倍疲れます。星が見えているときは

もう見えているだけでお客さん満足なんです。下手するともう話なんかいいよ、もう見

てるだけでいいよって言うんですよ。例えば下手するとまるっきり見えない時もあるん

ですよ。上がったけど、展望台の上だけ雲が入りますから、横切りますから、そういう

ときはバスの中でもう一生懸命、普段やらないネタまで出して、とにかくお客さんに返

金するっていうのはうちのツーリズムてしかがとしては簡単ですよ。お金いただけませ

ん、ただでいいです。もう見えませんでしたからすみません、ですみますけど。でも、

ホテルが介在しているでしょ。するとホテルのフロントがお客さんに返金しなければな

りませんよね。次の日の夜、みんなホテルはレシプトとって、領収書打ち込みやります

から、打ち込んで朝、「昨日見えなかったからガイドさんお金いらないって言ったよ」

ていうとえってなってフロントはレシプト全部作り直したり、もうそんな、なんだって

こうきますから。今はまだそういうことは、上手く回避してましたけれど。僕はもう星

が 1個みえたら、この 1個で 20分はお話できる。だからといってじゃあ、これは僕だからできるけどほかのガイドさんできないですよ。その星自体が何の星なのかまずわから

ないですよ。だからそういうことも含めてなかなか星のガイドさんっていうのは、難し

いですよ。お客さんにお話しを伺うことも難しいですが、上にあがって星の説明をして、

360度終わりますよね。終わったら、はい、星の質問ある方はどうぞ、ない方は摩周湖ちょっと見てくださいっていって、なるべくこう暇をとって、その間にどっからいら

しゃったんですか、東京っていうと、星の見えるところですかーっていうとうちは世田

谷に住んでいるからこうですよーって聞くことはできます。聞き取りです。あなたも今

日はお客さんのつもりで。

今日は KKRですよね。この星紀行の流れっていうのを知りたいですよね。ですから、普通ですと KKRにお泊りでしたら、KKRにバスをつけてピックアップするんですけど、ここに来てください。バスがスタートするときから一緒にいた方が流れがわかりますか

ら。ここに 7時に来てください。星のチャンスは今日と明日。土日は 100%だめですね。100%星空はダメですけど、もしかしたら 5日も 6日もこっちにチェンジで行くかもしれませんから。そしたら彼か、あちらの彼がガイドになりますから。土日はお客さん多

いですけど、もうこの時期は土曜日だけですね。で、今日祭日だからお客さん多いはず

ですなんですけど、祭日当日っていうのは少ないですからね。ましてや前後平日に重

なっている時なんかは。今日これ、3日が金曜日だったら最高ですよね。それとあとお客さんにはですね、こういう星の星図。これはですね、リアルタイム星図なんですよ。そ

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の日のその時間。で、これは展望台の統計緯度標高なんですよ。これを入れて、ひっぱ

りだした、摩周湖展望台から見える星の図面をお客さんにお渡しする。であと、裏は今

年の天文現象はこうなってますよ。それからさっきのエドはるみのグー。これをやると、

こういう風に行くと、あなたの住んでいる上には何月何日何時何分何十秒に見えますよ。

なんか、とりとめのないお話で申し訳ないです。

個人のお客さんの方が多いです。ただ、数量、年間トータルある、シーズン的にス

ポット的にとらえると、夏の方は団体様っていっても、うちは団体で受け付けませんか

ら。団体の中で個人で受け付けが基本なんですね、宿はね。ただこの、組み込みされて

いるツアーは、今日は 40人だけど、星に行く人は 20人ですよっていうのは添乗員から連絡ありますから。それは団体名として、もうひとまとめで 20名ってわっていれてます。だから、それ以外はいわゆる個人ですね。こちらにいらっしゃっているのは団体では来

ているんですけれども、お申し込みは個人。基本的にはそういうかたちはとっています。

このツアーは、すこしずつメジャーになってきましたし、あともうひとつはこういうこ

とを通じてね、宇宙、星と私たちと人間とは密接に関係があるんですよっていうことを 1人でも多くわかってほしいっていうこと。それと、時間がある時はもっとお月さんに関

してね、お子さんがいない時はね、これはあなたのお母さんなんかはわかっていると思

うんですけど、やはり出産っていうのは満月の満潮の時に生まれるっていうのが比較的

多いんですよ。それと、あとお話するのは、国連で毎年犯罪白書っていうのを出してい

るんですけど、これのデータをとっても、満月の日、犯罪が多いんですよ。それと今

オーストラリアとアメリカの医学会が特に今それを研究に入っているのは、満月のとき

救急搬送患者が多いんですよ。人間の体の基本的なシステムの関係ですよ。人間の体の

70%は水ですよね。医者じゃないからそれ以上のことはわかりませんけど。満月のときって地球は楕円形になっているんですよ。満月の引力に引っ張られて。で、この満月

の下にあるエリアは高潮状態。ですから、生命体はね、情緒不安定になるんですね。そ

れをお話して、今日ご夫婦の方多いですけど、満月の日は夫婦喧嘩は絶対しないでくだ

さいね、するんだったら新月の時に夫婦喧嘩はしてくださいね。そういう風にいうと、

笑いも起きるしね。お月さんと私たちの生活っていうのは、意外とそういう風に、あっ

そうだったの、っていう、昔そういえば助産婦さんが満潮だからもうちょっとだよーな

んて、よく言われてましたよね。そこで初めて気がつく。その時は満潮だからどうして

子供が生まれやすいのなんてね、思わないですよね。宇宙と、あるいは星も含めて、私

たちの生活と関係ないよってただ見るだけじゃなくて、そういうことも大事ですよ。大

事ですよっていうかはわかってねっていうことだよね。あと、子供さんに関しては、そ

れに興味をもって、もっと科学、宇宙っていうのを知ってもらいたい。

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<付録2> 斜里バス株式会社 下山氏インタビュー

まず、夜の大自然号のツアーの内容について詳しく教えていただきたいのですが

パンフレットにも書いてますけども、今現在の夜の大自然号の、内容というのは、こ

こにも書いてますけども知床の野生動物の観察を主体に、基本的にはバスの中から、バ

スの中の照明を消すと、非常にこの山というのは、街灯が全くないんですね、人が住ん

でないから。だからもうほんとに、車内の明かりを消すだけで、外の景色が見えるとい

うか月明かりとかそういうもので見えたりしてるんですね。基本的にはそういう風な感

じで、バスの中から観察するというのが主体で中に専門のネイチャーガイドさんも乗っ

てまして、一人の方はもう平成元年からずっとやっていただいてる専門の方がいらっ

しゃるんですけども、その方がだいぶこれも進化してきたんですけれども、懐中電灯を

持って、懐中電灯で外を照らすんですね。外を照らすと、野生動物というのは結構夜行性

の動物が多くて目が光るんですよ。その眼が光ってるのであそこになんかがいると。で、

比較的多いのはシカですねエゾシカ。エゾシカが多くて、まあまれにヒグマですとか、

あとキタキツネが頻繁に結構出ますね。あとシマフクロウなんかも最近いる場所が少し

ありまして天然記念物なんですけどシマフクロウ。すごい大きな 2メートルぐらい羽を広げればなるんですけれども。

木に止まっているんですか

そうですね。これをちょっと遠くから懐中電灯あててみると、いうようなことも、毎

日じゃないですけれども、たまにいる時がある。でシマフクロウ結構数が少ないんでな

るべくこうプレッシャーを与えないように。例えば毎日いても今日は行かないとか、例

えばお客さんの少ない時だけ行くとかっていうような工夫は現場の方のガイドさんの考

え方でやってくれるんですけれども。それ以外はやっぱり、基本的にはシカとかキツネ

とかっていうような感じでやってます。あと晴れた日で比較的月明かりが少ない日はほ

んとにもう。川湯、摩周行きましたか。あんな感じでですね。かなり高密度ですごい星

空が見えるんですよ。それはバスから降りて、この初年度からやってるネイチャーガイ

ドの人が結構星に詳しくて、昔はあの星のマップとかつけてたんですけども最近はつけ

てないですけれども、その星の説明をやってます。距離数にして 40キロぐらいを往復で40キロ走りながらやるんですけれども、だいたい 1時間半ぐらいかけてゆっくり、観察しながらいくようにしています。

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窓とかも開けていいんですか

基本的に開けて大丈夫です。声をだすと、動物逃げちゃうんで、あのガイドさんがで

すね、事前説明の時に窓開けていいけども声は出さないで下さいっていう説明をします。

写真も自由にとっていいです。結構フラッシュとかたいても動物逃げないんですね。音

には敏感ですけれど、光にはあまり敏感じゃないんですね。実は。中から窓閉めたまん

まフラッシュたくと反射して写真がとれないこともあるので、そういう説明をしたうえ

で窓開けてもいいですよって言ってやっていますね。

1時間半くらいって往復ですよね、結構高いところまでいくんですか、山の中の

そうですね、山の中、メインとなるコースはウトロ温泉を出てですね、その知床の五

胡のほう。そいで五胡のすぐふもとまでいって Uターンして折り返してくる、というのがメインなんですけれども。まれにその知床峠にいく場合があります。天候によったり

だとか月明かりだったりとか、この2パターンにしてます。ほとんど 8割くらいが知床峠なんですけれども。

どういった場合にこちらの方になるのですか

月が満月だったりとか、もう、頂上なので月が隠れる山がないんですよ。でそれを五

胡に行くと、ここにずーっと山があるんですよこの辺の真ん中に知床連山ってゆう山が

あってですね、知床岳とか硫黄山とか・・・あるんですけど、羅臼からこっちが知床連

山って呼ばれているんですけれど。ほんとに結構高い山があるのでこちら側に行くと山

に月が隠れて星が絶好に見えるとかってゆうようなことがあったり。たとえば 8月なんかはかなり参加者多いんですけど、数が多い日は昔は世界遺産の年なんかは 8台口ってゆうのがあったので、まあ今はそういうのはなるべくやめようっていう風にしてるんで

すけど。まあ最高でも今は 4台ぐらい。たとえばバスが 4台いくんで 4台いるから例えば結構広めの知床峠の方行こうとか、その運航状況によってコースを決めたりとか、現

場で運転手とガイドが。

昔の星のロマン号っていうツアーがあったいうことなんですけれども、この時は雨だ

と中止になったんですよね

そうですね基本的には雨と曇りは中止。ここに書いてますけど、昔はですね、これは

昔のチラシなんですけれども。こういう形で、これは初年度のチラシなんですけれど 6月 1日~9月 30日まで。でこの、実はこの以前にウトロのホテルさんから要請なんかが

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あって

貸しバスなんかで運行していた経緯があるらしいですね。結構人気なんで固定化しよう

ということでこの年から定期観光バス。たぶん 1年くらいしかやってないと思うんですけど。

そのホテルさんの要請きたんでちょっと星を見に行こうみたいな。今は川湯温泉で摩周

湖行ってる感じだと思うんですけど、そういう感じでやったと思うんですけれど。定期

化をしてもらえないかということで、たぶん元年からやって、翌年の平成 2年からは日にちを長くしてやったっていう経緯があって。ただ、月別のデータないんですけれども、

運行日数がかなり少ないんですよ。平成 6年からはちょっと増えていますけれど。平成 5年から、大自然号と改名しているんですよ、4年までは日数は多いけど参加者は少ないんですね。で、5年に改名して 6年目から増えてきているって感じなんですよね。だんだん知名度が上がってきて、18年度がピークですね。これは雨ではほとんど運休していました。雨の日は動物はいるんですけれども、風の強い日は動物は出てこないんですよ、

警戒して。基本的には雨の日と、風の強い日は運休しています、今現在も。当初は雨降っ

たら星が出ない、曇っていても星が出ないんで、完全運休ということで、運行日数も少

ないし参加者人数も少ない。これじゃあちょっとよくないなということで、平成 5年に夜の大自然号っていう形で、動物観察を主体にすれば運行日数も増えるだろうと。そう

すると、知床に泊っているお客さんも、夜になんかできるツアーがあるっていうことで、

そういう風に改名して、ホテルさんなんかにも協力してもらって、ホテルのロビーで受

け付けができたりとか申し込みができたりとか、部屋にパンフレットを置いてもらった

りして、やっています。今現在も。比較的 8月は個人のお客さんが多いです。7,8,9がやっぱり多いですね。それ前後の 6月 10月っていうのは団体客が結構いらっしゃって、今も何コースかツアーの、今は例えば

団体バスのバス 1台全員が参加するとかじゃなくて、ツアーに参加したお客様がオプションで選ぶっていう形になっているので。中にはもう、全く行かないっていうバス 1台もあるし、もちろん半分くらい来る時もあるし。一応バスは 45人まで乗れるんですけれども、動物が右に出るか左に出るかわからないので、できるだけお客さんが右に行っ

たり左に行ったりできるような形で、だいたい 30~35人くらいで止めるようにしています。それで最高 4台までで。さっき 8台っていうのがありましたけど、その時はもう、参加者も多くてですね、1台のバス 45人乗ってもらった時もありますし、正直。ただやっぱりそういうことではよくないなということで、なるべく乗ったお客様に満足して

帰ってもらうということで。そういう配慮は今はしていますね。

現場のガイドのアドバイスなんかもあってですね、平成元年からずっとやっているガ

イドさんで、まえのゆうじさんっていうんですけれども。知床のネイチャーガイドの中

でも先駆的な方です。アドバイスをもらったり、例えばバスで行くことによってエコだ

よと。乗用車何台もで行くよりは、バス 1台で収まってしまうっていう。排ガスなんか

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の環境的にもエコだし、車が 20台とバスが1台いるのとでは、騒音も含めて動物の生態にもエコだよと。ということで、こういう名前をつけませんかとか。当社ではハイブ

リッドバスっていうのを持っているんですけれども、それをなるべく使うようにしてい

るんですよ、1号車は。まあ夜の大自然号に改名してから結構、同じような商売をする

方が実は増えてきているんですよ。今現在もいるんですけど。それは知床でネイチャー

ガイドをやっているいろんな方がいらっしゃって、そこのチームで、ワゴン車で、お客

様から何千円かもらって、そういう動物観察をするっていうような競合するところが増

えてきて、それが課題でもあるんですけれど、差別化を図るために、バスでいった方が

エコでしょうと。うちはハイブリッドバスを使っていますよっていうこともパンフレッ

トにも書いたりして。それとまあ、運賃がバスで行くことによって抑えられるというメ

リットがお客さまにとってはありますね。今ワゴン車でやっている業者さんはだいたい

3000円以上はとっていますね。1人。同じようなコースで。ただまあ、例えばここに鹿がいたからバスで観察していますよっていっても、違う場所に行ってもいっぱいいるん

ですよ。なのでコース的に同じであっても、全然問題ない。基本的にお客さんが多いの

はお盆を中心に 8月 10日~17,18くらいがピークになります。知床の観光自体もピークなんですけれども。

参加者は夏休みなので、やはり家族連れが目立ちますね。あと、友達同士。意外と知

床って 1人旅とか 2人旅も多い。まあ全国的に多いのかもしれませんが、ほかの定期観光バスも含めて、1人とか 2人っていうのもかなり多いですね。ただまあ、人数的には家族連れが一番多いと思いますね。12年、13年あたりで増えてきているのは団体ツアーがオプションで組み込んでいいですかというのが増えてきた時期なんですね。17年あたりは個人客と団体客のピークですね、知床自体のピーク。数年前からホームページでパン

フレットをアップしたり、うちのホームページを見るお客さんっていうのは基本的には

最初から路線バスで観光に来る人が多いんで、そういう方の申し込みはあるんですけれ

ども。今現在はマイカーやレンタカーのお客さんも多いんでそういうお客さんにも利用

してもらえるように、各ホテルさんにパンフレットを部屋に置いてもらったり。数年前

からは減ってきた時期を考慮しているんですけれども、はなからホテルさんの宿泊パッ

クについているプランを作ってもらって売ってもらったんですよ。それで増えたり減っ

たりということはありますね。そういう申し込みは増えております。知床自体の観光客

数っていうのは平成19年の世界遺産登録以降減っているんで、観光客自体が減っている

んですね。今年度まで。登録された以降、なかなかいろんな規制があってですね、どこ

に行けないとか、いろんな危険とか要素があるんですけれども、今年なんかは知床五湖

にも規制がかかって地上遊歩道を昼間活動期とにわけているんですけど。まあ春から7

月いっぱい。そのあいだは昼間対策ができる専門ネイチャーガイドをつけないと地上遊

歩道を周れませんよっていうかたちになっています。それで人数規制をして、結構人が

出入りするので植物を踏み荒らしてだめにしちゃうっていうのが多くて。前々からの自

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然環境的な課題だったんですけれども2年間くらい関係者で議論して今年の春から実際

にそれの運用をしているんですけれども。

全国的にもそうですけれど、観光する需要っていうのが減っています。知床は特に飛

行機をつかわなければ来られない地域ですよね。フェリーとか列車もありますけど、観

光で来られる 9割が飛行機を使っているっていう統計が出ているらしくて、 JALさんが破たんする以前も、どんどん地方空港に乗り入れる飛行機が撤退したり機体をちっちゃく

したりていう要素もあって、どんどん北海道に来るお客さんも減っている。まあこれは

国内ですよね。今は逆に台湾を中心にシンガポールとか中国の北京・上海とか香港とか韓

国。そういうところから、アジアのお客さんを北海道に呼び寄せることによって、トー

タル的にはまあ減っていないよと。国内のお客さんと合わせて。日本自体もビジット

ジャパンっていうのをやっていますよね。あれがそうなんですよね。北海道だけじゃな

くて日本全国の旅行客全体が減っているんで、それをアジアでカバーしようっていう取

り組みだと思うんですけど。そういうことで北海道も知床も含めて観光客率が減ってい

るっていう。このツアーには海外のお客様は正直多くはないです。うちの定番の主要観

光地を回る観光バスなんかは結構アジアの方は乗っていますよ。どういうニーズで乗っ

ているのかわからないですけども、たぶん黙って乗っていれば回ってくれるっていうこ

となんだと思うんですけれども。今年は原発とか震災の影響で外国人が減ったんですけ

れども、去年まではかなり利用者は、1割 2割いるくらい多かったですね。台湾中心に韓国とか中国系の個人の方が多かったですね。あとはこれをパンフレットにして持って

行って、各旅行会社さんに団体、知床に泊まるツアーのオプションでぜひ使ってくれっ

て言う営業の仕方はしていますね。年に多い時は 10発くらい入っていますけど。JTBとか近ツー、クラブツーリズムさんとか、うちの知床に泊まる、例えば知床に泊まる商

品がその年 3コースありますよと。そのうちじゃあ 2つはこれをオプションで斜里バスさんにお願いしますっていって、僕がそれを案内しましょうかっていうような営業の仕

方をしていって、商品に組み込んでもらうっていうのはしています。

このツアーの良い点は、夜のオプションツアーってなかなかないじゃないですか。札

幌に行けば夜景を見るですとか、東京なんか行くとはとバスさんなんかはやっています

けど、ああいうのしかなくて、意外とこういう風な夜何かをしに行くっていうのはあま

りないので、まあ、それでこれが【星のロマン号】星を見にいこうと。北海道来たら満

天の星をぜひ、都会の人がやっぱり多いんで、そういうのは見えていないだろうってい

う発想だと思うんですけど、そういうことをして、今は野生動物の観察ということで、

結構意外とバスの中から、バスの中を暗くして外を見るっていうのは好評で。これに関

しては本当に当初から苦情っていうのはほとんどないです。運行に関しては。今まで長

年やってますけど、23年、運行した日に一回も動物が出なかったっていうのは全くないですね。風が強くなってきて、今日は動物が少ないなって時もあるんだけど、運よく鹿

がいたとか。時期によってもばらつきがあって、春咲きなんかは小鹿が生まれる時期で、

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これが見えたりなんかするともうお客さんかなり感動して。あとですね、これは慣れだ

と思うんですけど、レンタカーとかマイカーを運転して、そのへんを車で国道を走って

いると、僕なんかは鹿がいるとかってわかるんですけどお客さんはわからないんですよ

ね。急にカーブで止まったりとか、たまたまカーブで目について止まったんだけど。い

やその手前にもいっぱいいたしょ、って僕らなんかは思うくらいなんですけれども。そ

れに気づかない。それに気づかずに来て、夜はちゃんと説明しているから、いるんだっ

ていう感覚もたぶんあると思うんですけど。鹿なんか特に道路脇にいっぱいいるんです

けど、春先と秋口っていうのは。ただその、毛の色も地面と似た色だから、なかなかい

ても気がつかなかったり、こっちの方の道路って端がえぐれているんですね。そこで草

とか食べているんで、下にいるからわからないっていうこともありますけども。そんな

こともあって、気がつかないでいて、これに参加して、あ、いるんだっていうことが楽

しみの一つになっていると思うんですけども。

それと課題点はですね、商売上の課題点としては知床へのお客さんが減っているって

いうことで、参加者も減ってきているんだなとか。増やそうと思って旅行会社さんのツ

アーに組み入れてもらったりだとか取り組みを今しているんですけども。運行上の課

題っていうのはたぶんないと思うんですよ。雨が降ったりとか風の強い日っていうのは

中止なんで、そういう日以外もなんかできないかなって模索している最中なんですけれ

ども。これは夜だけじゃなくて、日中の方もなんですよ、実は知床って。自然を相手に

しているところなんで、雨降ったり風が強くなっちゃうと、例えば、今知床遊覧船もあ

るんですけれども、波が高くなって船が欠航しましたよ。で、船が欠航したら、船のお

客さんは結構いっぱいいらっしゃるんですけど、そのお客さんがどっと知床五湖に流れ

ちゃうと。そうすると知床五湖の駐車場は狭いもんですから、そこも駐車場待ちの渋滞

が起きちゃうんですね。で、もう諦めて帰ってきたりして、どこもいけないと。観光客

の方がそういう声を出すことは結構多いですね。代替するものがないっていうか。今年

は五湖のヒグマの出没率って低かったんですけど、以前はヒグマが出たらもう五湖の遊

歩道が完全立ち入り禁止っていうことになっていたんですけど。そうすると五湖に行け

ない。船にも乗れない。俺らはどこにいけばいいのっていうようなお客さんは結構、そ

ういう天候の日っていうのはいらっしゃるんですね。他に行くところもないわけじゃな

いんですけど、知床自然センターっていう、知床の四季をとりあえず映像がある館だっ

たり、知床遺産センターっていうのがあるんですね、ウトロの道の駅の横に。そこでも

全国の世界遺産の情報だとか、知床の遺産の情報だとかを展示をしていたり、映像を映し

たりっていう施設もあったりして、まあ少しずつそうやって増やしては来ているんです

けれどもどうしても大量に来られるとなると。例えば船が欠航になっちゃうと多い時だ

と 300人超える範囲で乗れますから、それとクルーザーの会社が 5社くらいありますんで、それが全部だめになっちゃうともう、多ければ 400人 500人がいっぺんに移動するわけなんですよ。それがほとんどマイカーだったらものすごい数になりますね。100台

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200台じゃすまないくらいの数になりますのでね。そういう方が一斉に動くんで知床五湖の渋滞が起きたりだとか、そんなことが起きていますよね。知床の一部で観光客が

年々減っているっていうのは、なんか新しい、泊まったお客さんがほとんど参加できる

ようなものがあればもっと人数が増えるかなっていう感じはしますよね。

あとはさっき言った、同じような競合する方が増えてきたっていうのは、うちにとっ

ては脅威って言ったら脅威ですけども。そっちは人数は知れているんで。ワゴン車だと

5,6人の世界なので。うちはバスで運行することによって、差別化だったり、お客さんに低価格で提供できるっていうメリットがあったりするので。そういうのはそのへんで

ちゃんと、お客さんのニーズをうまくやっていけばいいと思うんですけれどね。あとね、

リピーターの方はほとんどいないと思います。いるとしても、何回も来ているんだけど、

行ったことのない人と一緒に来たとか。連れて来た人がリピーターかなっていう感じは

するんですけれども。知床へのコアなリピーターっていうのはいますけど。ヘビーユー

ザーっていうのはいますよ。月に 1回来るような女性もいますけど。そういう人もぽつ、ぽつ、といるそうですよ。知床は行くところがたくさんあって時間かかっちゃうんです

よね。最低でも 2泊くらいしないと、ガイドツアー的なことは難しいですよね。がっつり休みとれて知床をまんべんなく見るって言ったらもう、4日も 5日もかかるくらいの場所なんで。

比較的お客さんは関東の方が多いですね。圧倒的に道外の方が多いと思いますけども、

北海道内だとどこいっても道民の方は鹿とか、見慣れているんで。札幌圏のお客さんは

意外とこういうのあるんだとか、ポスターとか貼ってあるから。参加する方もいますね。

それもたぶん札幌に住んでるけど、転勤族で、名古屋とか大阪、東京から来た人が多い

んだと思います。札幌も少し離れると鹿とかいますから。たぶん 8割か 9割近くが道外のお客様だと思いますね。

知床っていうのは自然が豊富で、そこに住む動物とか植物もたくさんいるんで、そう

いう野生の姿っていうのをいっぱい見てもらえるような本当はコースづくりをしたいと

思っているんですけれども、それは、専門にやっている観光協会とかで今課題としても

ちろん挙げているんですけれども、ただそうは行ってもクマがいっぱいいる地区に船で

行けば、すぐ見えたりとかするんですけれども。環境省だったり林野教だったり、場合

によっては国土交通省だったりいろんな行政関係の管理委員があってですね、なかなか

自由にはいかないっていうようなところで。今少しずつあの、僕が進めているのは冬の

知床五湖に行けないかっていうのをやっていまして。冬になったらウトロから向こうが

通行止めになっちゃうんですよ。五湖はそこから 20キロくらい先のところにあるんですけど、そのちょっと手前まではユースホテルやっている方が何年か前からそこに住んで、

住民票をおいているんで、そこまでは何とかいけるんです。なので実はあと 9キロくらいなんですね。その 9キロなんですが、五湖に高架木道っていうのを 3年がかりで環境庁が整備したんですよ。そのあと去年フィールドハウスっていうハウスと、サービスセ

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ンターっていう中継所を作ったんですけど、その工事を全部で 4年間、冬やったんですね。その期間は工事の車両が通れるくらい除雪をして、トラックとかが走っていたりし

ていたんで、もういけるんじゃないかと。だからなんとか、行けるんだったら行かせて

くれっていう話をして、今知床の観光地の方でも、冬行ける所がないっていうのが課題

なんですよ。流氷くらいしかほんとないんで。これも今ほんとに 1週間いるかいないか。2月くらい~4月くらいまで昔はびっちりいたんですけれど。今はもう。温暖化のせいもあるのか、流氷見ようって来て、ほんとうに行くところがないっていう。ただ温泉に入

るだけかっていうようなこともあるので、五湖に行ければまた新しい魅力ができるはず

なので、まあ冬っていうこともあるし。まあ高架木道ができたことによって、利用は除

雪なしで行けるんですよ。道路も実は除雪車っていうやつで雪かきするんでね。それの

費用が多額にかかるっていうことで。あと道路管理者は流れの支給性もあると。マイ

カーとかが自由にいったりきたりとかって言うのはちょっと難しいっていうんで。今可

能性があるのは、シャトルバスを運行しましょうと。うちになるんですけど、バスに乗

り換えるんだったら行ってもいいよと。そういう風にして、知床の新しい魅力づくりを

したいなと。それによって冬の観光客を少しでも増やせたらなあとは思っていますね。

いろんなことがあるんですけども、そういう課題を少しずつクリアしながら、なんと

か 1年を通して来てもらいたいなということで。いろいろイベントやっているんですね。冬は、雪壁ウォークって言って、峠、羅臼まで行く横断ロードを、除雪車、あのロータ

リー車で、黒部みたいなああいう雪壁ウォークっていうのを毎年もう 10何年間かやっているんですけども、それをイベントごとにして 4月の第 2か第 3土曜日くらいまでやっているんですね。今は紅葉ウォークって言って 10月の第 2くらいに高原を峠から歩いてみようっていうのもやっているんで。僕は個人的には 6月とかって言うのは一番こう新緑の時期で、山にも雪が残っていて、綺麗な緑と雪のコントラストが。知床連山にも

残っていますし。いろんな季節を見てもらいたいなとは思っていますけど。まあそれを

いかに発信するかとか、課題はありますけど。しょっちゅう観光協会に出入りしてそん

な話をして、みんなで盛り上げていこうかなあとは思っていますね。

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