動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3...

20
www.pwc.com/jp 消費者のモチベーションは何か? 動画消費の 新秩序

Transcript of 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3...

Page 1: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

www.pwc.com/jp

消費者のモチベーションは何か?

動画消費の新秩序

Page 2: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

2 | 動画消費の新秩序

消費者のモチベーションは何か?

 動画消費はかつてないほど断片化している。有料テレビの加入者数が減り続ける一方で、ライブ配信やオンデマンドストリーミングといった数々の選択肢がこれに取って代わり、日を追うごとに成長している。消費者は圧倒されるほどの量のサービスから、自分だけの「至福の」動画を消費することが可能だ。だが、消費者がお金を出してもよいと思えるサービスの数や1日のうち動画消費にかけられる時間には、必ず限りがある。そのため業界の一部では、コンテンツとプラットフォームの長期にわたる持続可能な成長は難しいかもしれないという意見もある。

 こうした状況を打破して消費者に必要とされるポジションを確立するには、成長目標の基盤とすべき消費者セグメントとその根底にあるモチベーション、嗜好、行動を理解しなくてはならない。業界プレーヤーはこの視点に立って初めて、他社にはない優位性を確立し、消費者との深い結び付きを確保することができる。そして、OTT(Over The Top:デジタル動画配信)サービスが台頭し淘汰が進む動画業界を生き抜ける規模を維持し、消費者に必要とされ続けるのである。

主な知見

若年層と熟年層の活動内容に差がなくなっており、人口統計学上の属性情報は、もはや消費者の動画消費行動を正確に予測するための材料にはならない。

67%コードカッティング(CATVや衛星放送の解約)が増え続けている。2018年の消費者に占める有料テレビ加入者数の割合は67%で、2017年の73%、2016年の77%から低下している。

180億米ドル~240億米ドル今日の動画消費状況は、モチベーション別に分類された5種類の消費者グループによって定義することができる。各グループは、それぞれ年間180億米ドル~240億米ドルを支出している。

19%少数だが熱心な有料テレビの視聴者はなおも存在し、しかもわずかながら増加している。調査対象者のうち、ケーブルテレビ(CATV)や衛星放送サービスに「積極的に加入している」と答えた割合は19%であり、昨年の17%から上昇した。

12%消費者は依然として、コンテンツ検索や推奨機能に対し非常に不適切だと感じている。こうしたサービスによってストリーミングプラットフォーム上のコンテンツを見つけやすくなったと回答したのは、調査対象者のわずか12%だった。

動画消費の新秩序

 当社では過去6年間にわたり調査を実施し、米国の消費者と動画の関係における喫緊の課題の検討を行った。その内容は以下のとおりである。

■ 動画消費行動の要因となっているモチベーションの特徴

■ 消費者のテクノロジーに対するニーズに存在するギャップ

■ ストーリーテリングの性質の今後の進化、およびコンテンツで他をリードするための方法

 また、変化し続ける動画業界において、消費者をモチベーション別に特徴付け、5種類のグループに分類した。

 調査・分析手法⸺PwCでは2018年10月、年齢が18歳~59歳、世帯の年間収入が4万米ドルを超える米国人2,016人について調査を行った。その結果を過去に行った同様の調査結果と比較分析し、消費者の動画視聴に対する姿勢とモチベーションに関する68のステートメントのクラスター分析を行った。また、消費者と業界関係者からなるフォーカスグループへのヒアリングを実施した。

今すぐ再生して動画ビジネスの未来に関するフォーカスグループの見解を聞く

Page 3: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

動画消費の新秩序 | 3

有料テレビと消費者の関係性の分布推移

2015

2016

2017

2018

61%18%16%5%

54%23%17%6%

46%27%19%8%

40%27%25%8%

出典:PwC 2018 video survey

質問「以下のうち、あなたと有料テレビとの関係を最もよく表しているものを選んでください」

以前からの有料テレビ加入者 コードトリマー(サービス内容の縮小者)

コードカッター(解約者) コードネバー(もともと加入していない者)

有料テレビとNetflixの加入者数の比較

2015

2016

2017

2018

79%65%

76%70%

73%73%

67%76%

出典:PwC 2018 video survey

質問「次のテレビおよび動画サービスのうち、あなたが現在利用しているもの、過去に利用したことがあるもの、または一度も利用したことがないものを選んでください」

全有料テレビの加入者 Netflix利用者

「現時点でCATVに加入している場合、それは全ての選択肢を検討して自分に最適だと判断したからこそ選んでいるのです。つまり加入は強制ではなく、自分が決定した結果なのです」

―エンタテイメント、メディア、テクノロジーに詳しい業界関係者

コードカッティング革命は止まりそうにない

2018年もコードカッティング革命が続いた。有料テレビ加入者の総数が73%から67%に減った一方で、Netflixの利用者(76%)がCATVと衛星放送を合わせた利用者(67%)を初めて上回った。

コンテンツの選択肢やプラットフォームが拡大を続け、消費者側の選択する力が強まるにつれて、有料テレビと消費者の関係性はより健全になったようにみえる。

■ 有料テレビ・サービス・プロバイダーに「積極的に加入している」と答えた消費者は19%であり、昨年の17%から上昇した。

■ 有料テレビ・サービス・プロバイダーとの関係について「はまって抜け出せない(trapped)」と感じている対象者の数は減少した(20%で、昨年の22%から低下)。

Page 4: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

4 | 動画消費の新秩序

動画コンテンツ支出と世帯収入の相関関係

出典:PwC 2018 video survey

質問「動画コンテンツにかけるひと月の合計支出はおよそいくらですか(全てのストリーミングおよびCATVサービスを含む)。また、世帯の収入水準に最もよく当てはまるものを次から選んでください」

世帯の年間収入

9.5万

75

70

65

60

55

50

45

10万 10.5万 11万 11.5万(米ドル)

(米ドル)

トラディショナリスト“伝統主義者”

ファナティック“熱狂者”

コニサー“鑑定家”

エンゲージャー“関与者”

インダルジスト“耽溺主義者”

ひと月の動画コンテンツ支出

消費者のモチベーションとは?消費習慣を理解する

属性情報は、消費者の動画消費・購入行動を測定し予測するのに長く使われてきた。しかし、消費者グループをモチベーション別にセグメント化すると、動画消費・購入行動について新しく重要な見識を得ることができる。

調査データから、熟年層と若年層の傾向が近づきつつあることが分かった。高い年齢層の消費者でコードカッティングとオンライン動画コンテンツへのアクセス割合が増える一方、低い年齢層が有料テレビを積極的に楽しむ傾向が出てきた。

■ 高い年齢層の消費者(50歳以上)のコードカッター割合は28%と、2017年の19%から上昇した。

■ 50歳以上の消費者のうち、インターネット経由でテレビコンテンツにアクセスする割合は61%となった。これはわずか2年前には48%であった。

■ 低い年齢層の視聴者に、有料テレビプロバイダーと積極的に契約していると答える割合が増える傾向にある(25歳~34歳の消費者のうち「積極的に契約している」と答えた割合は22%で、50歳以上では16%であった)。

「CATVのプロバイダー契約だと、テレビのスイッチをつけ、ソファにゆったり座って観るだけです。ところが(ストリーミングサービスだと)、さんざん検索した結果が0件ということもあります。とにかく手間がかかりすぎるのです。実際に動画を観ているよりも選んでいる時間の方が長いくらいです」

―ミレニアル世代の男性消費者

モチベーション別にみたセグメントでは、収入とビデオコンテンツ支出との間にほとんど関連性がないことも明らかになった。

Page 5: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

動画消費の新秩序 | 5

消費行動と属性情報の相関性が薄れる中、人々の動画消費習慣がコンテンツに対するモチベーション、および特定の興味や関心と密接に対応していることが分かった。

次に、調査データの分析を進めるなかで浮かび上がってきた、5種類の消費者の特徴を紹介する。

消費の特徴

5つに分類されるセグメント

Page 6: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

6 | 動画消費の新秩序

インダルジスト�耽溺主義者�1

インダルジスト�耽溺主義者�⸺現在、ケーブル・非ケーブル会社を問わず主な収益源となっているこのグループの原動力は消費であり、対象はコンテンツ、テクノロジー、または「何でもよい(stuff)」である。

切り込みは米国消費者の平均を示す(%)

米国の市場価値

ひと月の推計支出額

平均世帯収入

18歳未満の同居の子どもがいる

1週間の推定消費時間

平均年齢

大卒者

250億米ドル

70米ドル

10万米ドル

65%

17時間

37歳

38%

54% 男性46% 女性

週に30時間以上テレビを観る

動画配信サービスをだれかと共有している

ひと月に100米ドル以上動画サービスに支出する

インターネットでTVコンテンツにアクセスする

通常、15チャンネル以上テレビを観る

昨年と比べコンテンツ支出が増えた

Netflixを利用している

米国以外で制作されたTVや映画を日常的に観る

動画ストリーミングの改善点をあげるとしたら?

ストリーミング速度の向上

第1位のサービスを利用する理由は…

膨大なコンテンツ、 リラックスできる

有料テレビ加入者コードトリマーコードカッターコードネバー

Page 7: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

動画消費の新秩序 | 7

エンゲージャー�関与者�2エンゲージャー�関与者�⸺(インダルジストほどではないが)消費者の多数を占め、慎重に考えた上でコンテンツとかかわる。彼らは没入型のエンタテイメントの将来を体現する、オンラインエンゲージメントのけん引役である。

切り込みは米国消費者の平均を示す(%)

米国の市場価値

ひと月の推計支出額

平均世帯収入

18歳未満の同居の子どもがいる

1週間の推定消費時間

平均年齢

大卒者

180億米ドル

59米ドル

11.3万米ドル

60%

12時間

34歳

35%

60% 男性40% 女性

週に30時間以上テレビを観る

動画配信サービスをだれかと共有している

インターネットでTVコンテンツにアクセスする

通常、15チャンネル以上テレビを観る

昨年と比べコンテンツ支出が増えた

Netflixを利用している

米国以外で制作されたTVや映画を日常的に観る

動画ストリーミングの改善点をあげるとしたら?

コンテンツの質の向上

第1位のサービスを利用する理由は…

使いやすさ、オリジナルのコンテンツ、独自の機能

有料テレビ加入者コードトリマーコードカッターコードネバー

ひと月に100米ドル以上動画サービスに支出する

Page 8: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

8 | 動画消費の新秩序

ファナティック�熱狂者�3ファナティック�熱狂者�⸺このセグメントに属する消費者は、視聴するしないにかかわらず、あらゆる手段を尽くしてアクセスし、コンテンツの検索を延々と繰り返す。

切り込みは米国消費者の平均を示す(%)

米国の市場価値

ひと月の推計支出額

平均世帯収入

18歳未満の同居の子どもがいる

1週間の推定消費時間

平均年齢

大卒者

270億米ドル

55米ドル

9.9万米ドル

55%

16時間

34歳

41%

38% 男性62% 女性

週に30時間以上テレビを観る

動画配信サービスをだれかと共有している

インターネットでTVコンテンツにアクセスする

通常、15チャンネル以上テレビを観る

昨年と比べコンテンツ支出が増えた

Netflixを利用している

米国以外で制作されたTVや映画を日常的に観る

動画ストリーミングの改善点をあげるとしたら?

選択肢を多く

第1位のサービスを利用する理由は…

観たいコンテンツが常にある、オリジナルのコンテンツ

有料テレビ加入者コードトリマーコードカッターコードネバー

ひと月に100米ドル以上動画サービスに支出する

Page 9: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

動画消費の新秩序 | 9

コニサー�鑑定家�4コニサー�鑑定家�⸺文化を重要視する世俗的なセグメント。コンテンツの好みにこだわりがあり、契約に関する情報にも人一倍精通している。

切り込みは米国消費者の平均を示す(%)

米国の市場価値

ひと月の推計支出額

平均世帯収入

18歳未満の同居の子どもがいる

1週間の推定消費時間

平均年齢

大卒者

220億米ドル

49米ドル

10.7万米ドル

46%

10時間

39歳

44%

46% 男性54% 女性

週に30時間以上テレビを観る

動画配信サービスをだれかと共有している

インターネットでTVコンテンツにアクセスする

通常、15チャンネル以上テレビを観る

昨年と比べコンテンツ支出が増えた

Netflixを利用している

米国以外で制作されたTVや映画を日常的に観る

動画ストリーミングの改善点をあげるとしたら?

より多くの選択肢

第1位のサービスを利用する理由は…

観たいコンテンツが常にある

有料テレビ加入者コードトリマーコードカッターコードネバー

ひと月に100米ドル以上動画サービスに支出する

Page 10: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

10 | 動画消費の新秩序

トラディショナリスト�伝統主義者�5

トラディショナリスト�伝統主義者�⸺使いやすさと快適さが主なモチベーションであるこのグループは、現在の市場の選択肢の多さに辟易しており、テレビ配信を観るのを好む。

切り込みは米国消費者の平均を示す(%)

米国の市場価値

ひと月の推計支出額

平均世帯収入

18歳未満の同居の子どもがいる

1週間の推定消費時間

平均年齢

大卒者

290億米ドル

63米ドル

9.9万米ドル

46%

15時間

40歳

35%

34% 男性66% 女性

週に30時間以上テレビを観る

動画配信サービスをだれかと共有している

インターネットでTVコンテンツにアクセスする

通常、15チャンネル以上テレビを観る

昨年と比べコンテンツ支出が増えた

Netflixを利用している

米国以外で制作されたTVや映画を日常的に観る

動画ストリーミングの改善点をあげるとしたら?

視聴した分だけ支払う方式に

第1位のサービスを利用する理由は…

CATVの契約に含まれている、使いやすさ

有料テレビ加入者コードトリマーコードカッターコードネバー

ひと月に100米ドル以上動画サービスに支出する

Page 11: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

動画消費の新秩序 | 11

■ 全てを望む⸺最新の機器、プレミアムサービス、オリジナルのコンテンツ。

■ 最も重要な点⸺支出を惜しまない。このセグメントの3分の1以上が、動画エンタテイメントに毎月100米ドル以上支出する。

■ 有料テレビの最も積極的な加入者で、今後1年間は加入を続けると答えた割合も最大。今後5年間という回答もあった。

■ お気に入りの番組や映画のDVDを所有する割合や、映画館に足を運ぶ割合が最も高い。

インダルジスト�耽溺主義者�

■ 時間や場所に関係なく気の向くままにアクセスして、コンテンツライブラリーを際限なく検索したいと考えている。

■ コードカッターの割合が高い一方で、一度に複数のサービスに加入する割合も高い。

■ このセグメントは長時間の視聴を好み、観たい番組や映画を見つけるための手間を惜しまない。

■ にもかかわらず、一カ所で全てのコンテンツにアクセスできればいいと考えている。

ファナティック�熱狂者�

■ このセグメントは、のんびりと座って受動的に楽しむよりもコンテンツにかかわることを望み、ゲーマーの割合も高い。

■ 特にアクションやコメディなどのジャンル、また海外ものなど大量のコンテンツを消費するが、友人や家族と共同で加入することが多い。

■ 将来、バーチャルリアリティー(VR)が映画に取って代わり、自分だけのテレビ番組をカスタムデザインできる日を待ち望んでいる。

■ このセグメントは、視聴中の番組についてSNSに投稿することを好み、動画コンテンツ全般についてオンラインで対話する割合が最も高い。

エンゲージャー�関与者�

■ このセグメントは、テレビの視聴を減らして読書を増やすべきだと考えており、そのためテレビ番組や映画の好みにこだわる。

■ より教育的で多様なコンテンツを観たいのと同時に、オンラインのセキュリティも強化したいと考えている。

■ コンテンツの取得・消費の方法に詳しい。コードトリマーの割合が最も高く、昨年よりもコンテンツにかける支出を減らしている。

■ このグループは、オンラインの無料コンテンツを見つけることにかけてはエキスパートであると自負している。

コニサー�鑑定家�

■ このセグメントは、現在の有料テレビプロバイダーの主な収益源であり、動画コンテンツにかける支出も最高レベルである。

■ 予測可能で気楽、快適なコンテンツであることを特に重視する。生活のなかのBGMのようにテレビをつけ、番組を観ることを好む。

■ また、オンラインの動画コンテンツにアクセスする割合が最も低い。

■ オンラインやアプリ経由のコンテンツへのアクセスがさらに普及するにつれて、このセグメントはいずれ衰退すると予想される。

トラディショナリスト�伝統主義者�

何が視聴者のモチベーションとなるのか?

Page 12: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

12 | 動画消費の新秩序

他をリードするには――テクノロジーを活用し、ターゲット視聴者を特定する

コンテンツプロバイダーは、視聴者のモチベーションを理解した上でターゲットを設定することにより、変化する業界において他をリードすることが可能だ。一方、サービスの利用機会を逃してしまう場合はテクノロジーに要因がある。テクノロジーが消費者とサービスのギャップを埋めることができれば、より効果的にコンテンツ配信が可能である。

人工知能(AI)の�おすすめ�機能を向上させる

消費者は、AIの�おすすめ�機能が自分の求める水準に達していないため、依然として人間によるレビューや推奨を選んでいる。

■ 消費者の3分の1以上(36%)が、ストリーミングプラットフォーム上のコンテンツ検索をもっと使いやすくしてほしいと考えている。

■ 自分の利用しているストリーミングサービスが、観たいコンテンツを本人よりも分かってくれると感じている消費者は、21%にすぎない。

消費者は、現在のアルゴリズムが予測型ではなく事後対応型であることに不満を感じている。

■ 消費者の30%は、ストリーミングサービスが同じコンテンツを繰り返し薦めてくると思っている。

お気に入りのコンテンツプロバイダーを利用する主な理由

常に楽しめるコンテンツを見つけられる20%

使いやすい20%

コンテンツの選択肢が無数にある15%

すでに加入しているケーブルや電話、インターネットの契約に含まれている

11%

他のどのサービスよりもオリジナルコンテンツが多い10%

このサービスでしか利用できないコンテンツがある8%

最もリラックスできる4%

他のプラットフォームにはない機能がある3%

自分の気に入りそうな番組の推奨機能が最も優れている3%

出典:PwC 2018 video survey

質問「(そのサービスを)最もよく利用する主な理由は何ですか」

エンゲージャーは、レビューや人間による�おすすめ�を特に重視する。44%がプロフェッショナルによるレビューを好んで読み、41%が他の閲覧者のレーティング評価に注目している。

ユーザーの不満を取り除く

今回の調査では、フォーカスグループの消費者の50%が、たとえストリーミングサービスに消費者を惹きつける魅力があったとしても、サービスが過剰である(コンテンツが多すぎる)、あるいは不便である(コンテンツ検索の問題を解消できる十分な手だてがない)場合は、そのプロバイダーサービスを解約すると回答した。

この調査結果は、テクノロジーが消費者の集客に影響を及ぼすさまをはっきりと示した。実際に、消費者はあるサービスを頻繁に利用する決め手は、使いやすさであると答えている。このことは、ストリーミングサービスが有料テレビと比べて不利になりうる点の1つであることを示しているといえる。

Page 13: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

動画消費の新秩序 | 13

ブロックチェーンが消費者のニーズに対応できる方法を検討する

コンテンツや支払いの統合は、消費者がストリーミング体験の向上において期待するサービス手法の1つである。

■ 消費者の51%が、プラットフォームやサービスにかかわらず、視聴する動画コンテンツ全ての料金を毎月一回の支払いで済ませたいと思っている。

■ 消費者の50%が、いずれ全ての動画コンテンツを一カ所から利用できるようになればいいと考えている。

現在の断片化の原因である知的所有権や支払い、契約条件に関連した障壁をブロックチェーンテクノロジーが簡素化することにより、こうした消費者の主要ニーズを満たすことが理論的に可能である。

コンテンツや支払いの統合は、より混乱を招くことのないよう慎重に進めなければならない。フォーカスグループでは、プラットフォームやサービスが一カ所に集約することで、さらに多くのコンテンツからの選択を強いられるのではないか不安に感じるという声も聞かれた。「自分の観たいコンテンツを正確に把握していなければ、さらに問題が増える」という意見もあった。

特にファナティックに属する人は、自分の動画視聴習慣にマッチするような、一カ所で全ての動画コンテンツが観られるサービスに関心を持っている。

「実はイライラさせられることがあります…シリーズものの第一回を視聴して気に入らないのでやめたのに、それを根拠に薦めてくるのです。好きでもないのに」

―ミレニアル世代の女性消費者

「テレビの終焉」は誇張されている

モバイル端末での閲覧は増加している(回答者の38%がモバイル端末で動画コンテンツを1日に数回視聴している)が、テレビの視聴も依然として活発であるという結果が出た。

■ インダルジストの75%超がテレビ放送を好んでいる。

■ 有料テレビ視聴者の65%がテレビ放送を好んでおり、昨年の53%から上昇した。

■ 消費者の65%が自身のテレビでコンテンツをストリーミングしており、スマートテレビの利用率はほぼ倍増した。テレビでストリーミングコンテンツを視聴すると答えた対象者のうち42%がスマートテレビを利用していると答えており、2017年の22%から上昇した。

いずれ全ての動画コンテンツを一カ所から利用できるようになればいいと思う(「そう思う」の割合)

ファナティック

トラディショナリスト

インダルジスト

コニサー

エンゲージャー

64%

52%

52%

41%

35%

出典:PwC 2018 video survey

質問「次の機能のうち、将来あなたの動画ストリーミング体験を最も向上させると思うものを選んでください」(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を合計した割合)

Page 14: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

14 | 動画消費の新秩序

テクノロジーの活用が新市場を生み出す一方で、コンテンツはカスタマーと動画をつなぐ接着剤の役割を果たし続けている。

今回の調査によって、両者の関係性を時流に沿ったものにするコンテンツの傾向がいくつか明らかになった。

視聴者が主導するストーリーテリング

■ 消費者の22%が、従来のプレーヤーだけでなくお気に入りのブランドがコンテンツを制作することに関心を持っている。

■ 視聴者が主導するストーリーテリングが増える⸺消費者の30%が、自分だけのテレビ番組を「カスタムデザイン」できればいいと考えている。

ブランドが開発するコンテンツへの関心が最も高いのは、支出額の最も大きいインダルジストである。

海外コンテンツの増加

消費者の約20%が、海外のテレビ番組や映画に関心があると答えた。ボーダレス化する世界において、さらに多種多様なコンテンツへのニーズは拡大の一途をたどると予測される。以下のような結果も出ている。

■ 消費者の59%は、他の文化について学びたいと思っている。

■ 同じく44%が、テレビや映画を、他の文化に触れる非常によい機会だと答えている。

■ 世界の国々や文化が今日の動画コンテンツに正しく反映されていると考える人は、27%にすぎない。

海外のビデオコンテンツとのかかわりが最も多いのはコニサーとエンゲージャーで、トラディショナリストは最も少ない。

■ コニサーとエンゲージャーの50%超が、海外のテレビ番組や映画を視聴すると答えている。

■ エンゲージャーの36%が、VPNを利用して海外のコンテンツにアクセスしたことがあると答えたのに対し、消費者全体ではわずか21%であった。

■ トラディショナリストのうち、海外のコンテンツをよく視聴すると答えたのは5%と少数であった。

没入型コンテンツへの移行

真に没入可能なコンテンツに対する大きな需要が生まれるのは、まだ先のことだろう。VRが従来の動画に取って代わるのが楽しみだと答えたのは、調査対象者の17%にすぎない。だが、エンゲージャーがこの分野の革命のけん引役となりそうだ。エンゲージャーの54%が、将来は動画をただ視聴するのではなく、インタラクティブに楽しみたいと回答している(対象者全体では21%)。

コンテンツがもたらす機会を生かす

インダルジスト33%

エンゲージャー31%

ファナティック20%

コニサー16%

トラディショナリスト15%

お気に入りのブランドが制作したコンテンツを視聴したい(「そう思う」の割合)

出典:PwC 2018 video survey

質問「次の考えについてどう思うか答えてください。『従来のコンテンツ制作者だけでなく、お気に入りのブランドが制作したテレビ番組や映画を視聴したいと思う』」(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を合計した割合)

Page 15: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

動画消費の新秩序 | 15

ますます過密化する動画業界において必要とされる存在であり続けるためには、視聴者の嗜好を理解することが必須である。今回の調査、フォーカスグループと専門家パネルに基づく提言は以下のとおりである。

■ 視聴者を知り、意図を持ってターゲティングを行う。今回の調査から、コードカッティングが全ての消費者の動向ではないことが分かった。実際、属性情報や収入だけで動画の消費・購入行動を正確に予測することはできなくなっており、ライフスタイルやエンタテイメントの好みが決定要因となる。ターゲットセグメントとの関係を維持するには、コンテンツやユーザー体験の最大化が極めて重要である。例えば、コードカッティングが続いているとはいえ、既存の有料テレビ加入者の満足度は上昇している。従って、有料テレビ側が特定のターゲット視聴者を理解して彼らのニーズを満たすことを心がければ、成果を上げられる可能性がある。

■ 各セグメント向けにコンテンツをパーソナライズしターゲットを絞る。消費者には固有の性質があるため、決め付けによる一方的なアプローチは通用しない。調査の回答から分かるように、だれもがちょっとした差別化を求めている。ファナティックには無制限のコンテンツサービスを提供し、トラディショナリストにはリラックスして気軽に視聴できるコンテンツ体験を提供してはどうか。手軽でスナックのようにつまめるコンテンツを探しているモバイル視聴者も忘れてはならない。成功する企業は、ターゲット消費者が望むユーザー体験をあらゆる意思決定の中心に据え、コンテンツや商品、サービスをデザインする企業である。

■ 検索が足を引っぱらないようにする。消費者の90%近くがコンテンツ検索や�おすすめ�の機能に満足しておらず、そのためにユーザー体験全体の評価が損なわれている。コンテンツの提供元が一カ所でないことは、視聴者に不満を抱かせている。だが、より一貫性を持って統合できるOTTプラットフォームがあれば、配信側は消費者に検索可能な単一のソースを提供しつつ、カスタマーの好みに関する貴重なデータも収集できる。視聴者が楽しめる新たなコンテンツの検索をサポートできるよう、キュレーションの改善方法を考案することが重要である。

■ AIを導入して�おすすめ�機能を改善する。視聴者は、次に何を観るべきか決められないと回答している。選択肢が多すぎるために、情報のキュレーションが不十分になっているからである。人工知能を使えば、ユーザー履歴に基

づく�おすすめ�機能を改善することが可能だ。ただし、インテリジェントな方法でなくてはならない。例えば、消費者が試した番組を全て好むわけではないため、消費者の気に入るコンテンツに対象を絞り推奨する必要がある。ストリーミングサービスや有料テレビの数多くのプロバイダーがこの種の�おすすめ�機能を持たない状況にあり、テレビ制作者はAIによる�おすすめ�機能の導入を推し進めている。

■ セカンドスクリーン上のエンゲージメントを促す。モバイル端末での視聴が増加しており、5G(第5世代移動通信システム)が普及すれば、モバイル体験は新たな高みに到達するだろう。すでにリビングルーム視聴者は、お気に入りの番組を観ながらリアルタイムでツイートし、チャットしている。モバイルやSNSチャンネルなど二次プラットフォーム上でコンテンツを再配信するのではなく、エンゲージメントを最大化するための補完的なエクスペリエンスを提供することが重要である。

■ ブランドによるコンテンツで新たなストーリーテリングを生み出す。消費者はブランドがナラティブ(物語)の一部となることに好意的である。22%の消費者が、従来のプレーヤーにとどまらず、お気に入りのブランドの制作するコンテンツを観ることに関心があると答えた。また、一歩踏み込んで、自身もストーリー制作に貢献したいと考えている。ターゲットの嗜好に適するブランドと共同でオリジナルコンテンツを制作するとよいであろう。

■ グローバル化を推進する。消費者は外国語による番組をかつてないほど受け入れている。言葉の壁が字幕や吹き替えといった技術で克服される中、グローバルな提携の機会は十分にある。グローバルコンテンツに対するニーズの面で他セグメントをけん引するのはコニサーである。

■ 没入型体験を開発する。当社の『グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック(Global Entertainment and Media Outlook)』によれば、VRエンタテイメントへの支出は今後5年間で約40%成長すると予想される。エンゲージャーは他のセグメントよりも積極的で、没入型体験を熱望している。彼らは最先端の動画消費アプリをいち早く取り入れるだろう。彼らをターゲット視聴者とする場合は、没入型コンテンツやサービスに向けたプランを早急に検討することが求められる。

可能性はどこにあるか――動画消費の新秩序において成功を収めるために

Page 16: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

16 | 動画消費の新秩序

前章までは2018年10月実施の米国における動画配信市場におけるトレンド、消費者の行動によるセグメンテーションとその解説およびその結果から来る今後の示唆について述べているが、ここからは日本市場について以下の2点に焦点を絞って考察してみたい。

①消費者のセグメンテーション②テレビの終焉は誇張されている?

日本市場への調査結果の応用および示唆

Page 17: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

動画消費の新秩序 | 17

米国調査から導き出されたセグメンテーションは、消費者のケーブルテレビに対するかかわり方が大きな軸を形成しているが、メディア視聴環境が大きく異なる日本においては、このセグメンテーションをそのまま適用することはできない。しかし、従来型の説明原理が限界を迎え、今のメディア・消費者・データの多様化に対応した新たな説明原理が求められているという点は日本も同じである。日本においては、従来型の性別・年代を独立変数として視聴率を従属変数とする説明原理から、米国と同様に消費者行動をベースとしたセグメンテーションに基づく分析・対応が必要になっている。

日本において視聴率は、地上波テレビの影響から、コンテンツ・番組におけるパフォーマンスを測る指標として大きな役割を果たしてきた。例えば、特定の番組に対し、世帯では何%、あるいは性別・年代でカテゴライズされたM1(男性20歳~35歳の人)が何%視聴したかということが、番組の制作者、テレビ局、広告主などのメディア関係者にとって非常に大きな意味を持っていたのである。

しかしこれだけコンテンツ消費が多様化されている中で、おそらく男性20歳~35歳においてもその行動は全く異なるのではないだろうか?ある消費者はアニメが好き、その一方でアニメは全く興味がないが、その他バラエティ・ドラマだけを視聴する人もいるだろう。またはテレビをほとんど観ずに、OTTにおける動画配信のみを視聴している人がいるかもしれない。つまり性別・年代と視聴率でコンテンツ消費を的確に把握することは、もはや不可能であると考える。

また視聴率はテレビが共通のメディアとして機能していた時代には、視聴者のボリュームを表すことにおいて一定の機能を果たすことができていた。しかし、今日のようにメディア視聴環境が多様化し、テレビ以外の視聴手段が充実する中で、視聴率そのものだけを見ていても視聴ボリュームを説明することが難しくなっている。一方で、動画配信など近年のデジタルメディアは、視聴数やその視聴行動の中身までも明確に測定することを可能とした。テレビだけでなく、その他のメディアも含めて横断的に視聴者の行動を把握するためには、視聴率に変わる新たなカレンシー(共通の評価基準)が求められているのである。

テレビ以外のデジタルメディアにおいては、IDに紐付けて従来よりも圧倒的に多くのデータを管理できるようになっており、どの視聴者がどのコンテンツを、いつ、どのように消費したかを正確に把握している。その結果、ある米国系動画配信会社の役員にインタビューを実施したところ、今までの視聴率のように基本的なデモグラフィック(属性情報)で視聴傾向を把握しようとしたが、性別・年代と特定のコンテンツ消費には全く相関がなかったと答えていた。以上からも、消費者の行動を把握し、的確にレコメンデーションなどの機能を駆使し、視聴につなげるのであれば、行動別に消費者をセグメンテーションし、そこからコンテンツ消費実態によってターゲティングする必要が迫られているのは確かである。

性別・年代による説明については、例えば、テレビは年配者、デジタルは若者が視聴するといった考え方が一般に浸透しているが、実態はそのように単純な図式では説明できないことも明らかになってきた。米国調査においても、50歳以上の多くはインターネットを駆使し動画も普通に視聴している一方、若者がテレビを観ないかというとそうとも言えない。これは最近の各種言説から日本においても同様と考えられ、性別や年代に依存しないメディア視聴行動の実態調査が必要であると考える。

日本流のセグメンテーションへのヒント

日本の地上波テレビの強さを考慮すると、セグメンテーションの方法として、いくつか考えられる。

1.まず、従来型のテレビ放送(リニア視聴に対応)および有料・無料を含む動画配信(オンデマンド視聴に対応)の視聴時間を軸に考えるべきである。なぜならコンテンツ消費の主流は、1.8兆円産業と言われているテレビ放送が中心であると考えられるからである。また、間もなく4,000億円市場となるOTTをはじめとした動画配信の2つから成り立っていると考えられるからである。

2.次に、特定のコンテンツジャンルに対する嗜好性を考慮することをお勧めしたい。例えば同じドラマであっても、海外ドラマと国内ドラマを視聴する層は大きく異なると考えられるからである。また特定の音楽アーティストのPVを主に視聴する層も数はそれほど多くはないが、独立したグループとして存在している。日本においては、ジャンルによる観る/観ないが米国よりも、よりはっきりしている傾向があるように見受けられ、コンテンツのジャンルによる分類が、日本のコンテンツ消費の実態把握で重要な役割を果たすと考えられる。

3. 属性として1つだけ使えるのは子供がいるかどうかである(ただし、セグメンテーションを個人・世帯のどちらの単位で測定すべきか、またそれが可能なのかという別の議論が必要)。子供がいる家庭のコンテンツ消費は、ある一定期間同じ傾向を示すからである。特定の教育コンテンツや子供向けアニメである。ここには必ず需要があるので、この層だけは特定しやすい。ただし地上波のテレビではその傾向を誤る可能性はある。現在の編成だと幼児向け番組は朝8時台と夕方4時台からが多い。しかし現在共働き世帯は多く、実際オンエアの時間帯と生活習慣とのギャップがあり、本来のニーズを捉えきれてないと考える。その一方、動画配信の場合、編成という時間に縛られることなく消費されるので、より傾向が浮き彫りになると考える。

消費者のセグメンテーション

Page 18: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

18 | 動画消費の新秩序

テレビ広告に比べてデジタル広告の割合が圧倒的に高まった米国市場において、「テレビは終焉してしまうのか?」という疑問が1つの重要な焦点となっている。日本はまだデジタル広告とテレビ広告の市場は拮抗しているが、テレビの今後について同様の危機感はメディア業界の中で意識されつつある。

確かにテレビを視聴する時間は日米で減少しているようであるが、現時点で終焉とまで言ってしまうのは早急ではないかと考える。今回の調査でも明らかになったが、米国では若年層でも有料テレビを積極的に楽しむ傾向がみられている。これは変化するメディア環境の中で、テレビが新しい立ち位置を確立していく可能性を示しているのではないだろうか。

能動的/受動的視聴

『コンテンツディスカバリーを変貌させるテクノロジー』(https://www.pwc.

com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/ciscontentdiscovery1904.

html)の調査結果から、多様化し、デジタル化が進展するメディア環境の中で、多くの消費者はコンテンツ選定に対し少なからずストレスを感じていることが挙げられる。実際、消費者の62%は視聴するためのコンテンツ選択に苦労している。動画配信においては、視聴するコンテンツを決定しなければならない。それにより特に観たいものが見つからない場合、前に視聴したものを再度観るか、それとも視聴をしないか、に分かれるのが実情である。その点、地上波テレビはチャンネルを選定するという行為はあるものの、それさえ選べばオンエアされているコンテンツを視聴するだけという手軽さがある。特にネガティブな感情がなければ、そのまま視聴を続けることもあるであろう。こうした受動的なコンテンツ消費の手段として、テレビが今後も存在価値を発揮する可能性がある。実際、レコメンデーション機能について定評のあるNetflixでさえも最近、何を観たいか決まってないときのシャッフル機能をテストしている。つまり全ての選択肢を消費者にゆだねるのではなく、受動的なコンテンツ消費への対策が求められているのである。

フローコンテンツ

また、鮮度が大切なニュースなどの報道番組や解説を交えたスポーツ中継は、オンデマンドを得意とする動画配信よりも地上波テレビに軍配が上がると考える。いわゆるフローコンテンツである。フローコンテンツではリアルタイム性が重視される。リアルタイム性を重視した視聴においてより適しているのは、具体的なコンテンツを指定しての視聴ではなく、ある特定領域を指定する中で、その時々の最新の情報が紹介されるような形式であり、これはまさに従来のテレビが提供してきた機能である。フローコンテンツの重要性は、実際の企業における戦略にも見て取ることができる。米国大手放送局であるFoxは、激化するコンテンツ配信業界に対抗するため、制作費のかさむコンテンツ制作部門をディズニーに売却、ニュースとスポーツという2つの分野に特化した戦略を立てている。その理由としては、この2つの分野は常に一定のニーズがあり、また他のコンテンツと比べ収益の予想を立てやすいところにある。こうしたフローコンテンツに焦点をおいた戦略を考える際には、テレビというのは重要なメディアとして今後も機能していくだろうことを念頭に置く必要がある。

テレビの終焉は誇張されている?

Page 19: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

動画消費の新秩序 | 19

調査結果からの発見は米国との文化・国民性の違いはあるものの日本企業が参考にできる示唆は多くある。米国では、今後ディズニーやNBCUniversalなどブランドコンテンツを持ったプレーヤーが動画配信事業に参入することが決定しており、競争はますます激化してくると予想されている。定額制の動画配信は基本月単位で加入のため、消費者の移り変わりも早い。その中でNetflixはさらに高度化されたレコメンデーションエンジンの開発をしつつも、シャッフル機能をテストするなど、あらゆる消費者のニーズに応えるべくイノベーションを推進している。今後ますますグローバル規模の競争に巻き込まれる中、日系メディア企業もそこで戦うための対策が必要なのは言うまでもない。しかし単純な勝利の方程式はなく、結局は調査結果にもあるように、顧客のニーズを的確に把握、それぞれの顧客とそのニーズに合ったアクションを取ることが成功の秘訣であると考える。

最後に

Page 20: 動画消費の 新秩序 - PwC · 動画消費の新秩序 | 3 有料テレビと消費者の関係性の分布推移 2015 2016 2017 2018 61% 18% 16% 5% 54% 23% 17% 6% 46% 27% 19%

Mark McCaffreyUS Technology, Media and Telecommunications Leader, PwC US Tel: +1 (408) 817 [email protected]

Gregory Boyer Technology, Media and Telecommunications Partner, PwC US Tel: +1 (646) 471 5882 [email protected]

Ben Eisenberg Technology, Media and Telecommunications Partner, PwC US Tel: +1 (646) 471 0555 [email protected]

Paige HayesTechnology, Media and Telecommunications Advisory Leader, PwC US Tel: +1 (213) 217 3506 [email protected]

久保田 一輝 PwCコンサルティング合同会社テクノロジー・メディア・テレコムインダストリーシニアマネージャー

[email protected]

谷口 大輔 PwCコンサルティング合同会社

テクノロジー・メディア・テレコムインダストリーマネージャー

[email protected]

自由なご意見をお聞かせください。

日本のお問い合わせ先

www.pwc.com/jp

PwC Japanグループは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社(PwCあらた有限責任監査法人、PwC京都監査法人、PwCコンサルティング合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、PwC税理士法人、PwC弁護士法人を含む)の総称です。各法人は独立して事業を行い、相互に連携をとりながら、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、法務のサービスをクライアントに提供しています。PwCは、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することをPurpose(存在意義)としています。私たちは、世界158カ国に及ぶグローバルネットワークに250,000人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。詳細はwww.pwc.comをご覧ください。

本報告書は、PwCメンバーファームが2019年1月に発行した『A new video world order : What motivates consumers?』を翻訳し、日本企業への示唆を追加したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。電子版はこちらからダウンロードできます。 www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership.html

オリジナル(英語版)はこちらからダウンロードできます。https://www.pwc.com/us/en/services/consulting/library/consumer-intelligence-series/video-consumer-motivations.html

日本語版発刊年月: 2019年7月 管理番号: I201905-11

©2019 PwC. All rights reserved.

PwC refers to the PwC network and/or one or more of its member firms, each of which is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details.

This content is for general information purposes only, and should not be used as a substitute for consultation with professional advisors.