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CAESAR NEWSLETTER 2015 1 月号 CAESAR NEWSLETTER 第1 3 号 2 0 1 5 年1 月 年頭のご挨拶 構造物メンテナンス研究センター長 塚田 幸広 明けましておめでとうございます。年頭にあたりご挨拶申し上げます。 本年も土木研究所構造物メンテナンス研究 センター( CAESAR )をよろしくお願いいたし ます。 CAESAR は、平成 20 年 4 月の設立から 7年 目 を 迎 え る こ と に な り ま す 。こ れ ま で 鋼 橋 、コ ンクリート橋のメンテナンス技術に関する研 究開発、東日本大震災等の大規模災害における 現地調査に基づく 耐震性能評価及び津波の影 響に関する研究等を継続的かつ精力的に進め て参りました。これらの研究成果は、 CAESAR 講演会、日米橋梁ワークショップ他各種研究集 会 、シ ン ポ ジ ウ ム 等 で 報 告 さ れ る と と も に 、道 路橋示方書等関連基準の策定・改定にあたって の 基 礎 資 料 と な っ て お り ま す 。ま た 、国 土 技 術 政策総合研究所と連携して、各地方整備局や自 治体における損傷が発生した個別の橋梁の診 断・措置について技術支援を行うとともに、そ の過程で得られた知見についてとりまとめ現 場への還元を図って参りました。 昨年は、「道路の老朽化対策の本格実施に関 する提言」を受けて、道路管理者の義務を明確 にした省令及び告示が施行されました。これに よ り 、全 国 の 橋 梁( 約 7 0 万 橋 )・ ト ン ネ ル( 約 1万本)等が、国が定める統一的な基準により 5年に 1回、近接目視による全数監視が実施さ れることになりました。地方の関連機関の連携 により、効率的な老朽化対策の推進を図るた め、全ての都道府県毎に「道路メンテナンス会 議」が設置され、地方公共団体への支援も動き 出 し ま し た 。さ ら に 、技 術 職 員 が 不 足 し て い る 市区町村の点検に際して一括発注、直轄診断、 さらには研修等様々な施策がかなりのスピー ドで動き出しています。これらの施策に対し て、今後とも CAESAR としても積極的に連携 ・支援して参ります。 また、昨年、 SIP (戦略的イノベーション創 造 プ ロ グ ラ ム )が ス タ ー ト し 、CAESAR として も「インフラ維持管理・更新・マネジメント技 術」、「レジリエントな防災・減災機能の強化」 の主要な研究プロジェクトに採択されるとと もに、「モニタリングシステム技術研究組合」 にも参画し、産学官とも連携体制の中で積極的 に研究をリードして実用に資する研究成果を 得るべく 最大限の努力を払う 所存です。 と こ ろで、平成 27 年度は現中期計画の最終 年であり、5年間のプロジェクト研究成果をと りまとめる重要な年です。 CAESAR が中心とな って進めてきた「耐震性を基盤とした多様な構 造物の機能確保に関する研究」、「社会資本ス トックをより永く使うための維持・管理技術の 開発と体系化に関する研究」、「社会資本の機 能を増進し、耐久性を向上させる技術の開発」 等のプロジェクト研究の成果を速やかにとり まとめるとともに現場への普及を図っていく ことになります。一方、これと並行して「国土 の グ ラ ン ド デ ザ イ ン 2050」、「 国 土 形 成 計 画 」、 「国土強靭化計画」等の新たな国土交通政策か らの要請に立脚した次期中期計画に向けた研 究計画を策定致します。CAESAR 関 連 で は 、① インフラの効果的な点検、モニタリングを実現 するための非破壊検査技術等の開発、②点検・ モニタリングにより得られたデータと劣化撤 去部材の載荷試験等によるインフラの健全度 評価技術の開発、③全国で実施された点検結果 を反映した補修方法の研究、④構造物基礎の液 状化対策の開発等の新たな研究に精力的に取 り組んでいくことが重要と考えております。 このように、 CAESAR の役割は益々重要とな っており 、「現場支援」、「研究開発」、「情 報交流の場」のミッションを着実に果たすよう CAESAR の職員一同、引続き努力して参る所存 ですので、今後とも皆様からの変わらぬご支援 とご協力をお願いするとともに、関係各位のご 活躍を祈念しまして年頭の挨拶とさせて頂き ます。 土木研究所構造物メンテナンス研究センター 〒305-8516 つくば市南原1-6 電話029-879-6773 e-mail: caesar pwri.go.jp http://www.pwri.go.jp/caesar/index-j.html (1/6)

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CAESAR NEWSLETTER 2015年 1月号

CAESAR NEWSLETTER

第1 3号 201 5年1 月

年頭のご挨拶

構造物メンテナンス研究センター長 塚田 幸広

明けましておめでとうございます。年頭にあたりご挨拶申し上げます。

本年も 土木研究所構造物メ ン テ ナ ン ス 研究

セン タ ー(CAESAR)を よ ろ し く お願いいたし

ま す。

CAESAR は、平成 20 年 4 月の設立から 7 年

目を迎え る こ と になり ま す。こ れま で鋼橋、コ

ン ク リ ート 橋のメ ン テ ナ ン ス 技術に関す る 研

究開発、東日本大震災等の大規模災害における

現地調査に基づく 耐震性能評価及び津波の影

響に関す る 研究等を 継続的かつ精力的に進め

て参り ま し た。こ れら の研究成果は、CAESAR

講演会、日米橋梁ワ ーク シ ョ ッ プ他各種研究集

会、シン ポジウ ム等で報告さ れる と と も に、道

路橋示方書等関連基準の策定・改定にあたっ て

の基礎資料と なっ て おり ま す。ま た、国土技術

政策総合研究所と 連携し て、各地方整備局や自

治体における 損傷が発生し た個別の橋梁の診

断・措置について技術支援を行う と と も に、そ

の過程で 得ら れた知見について と り ま と め現

場への還元を図っ て 参り ま し た。

昨年は、「道路の老朽化対策の本格実施に関

する 提言」を受けて、道路管理者の義務を 明確

にし た省令及び告示が施行さ れま し た。こ れに

よ り 、全国の橋梁(約 70 万橋)・ト ン ネ ル(約

1 万本)等が、国が定める 統一的な基準によ り

5 年に 1 回、近接目視によ る 全数監視が実施さ

れる こ と になり ま し た。地方の関連機関の連携

によ り 、効率的な老朽化対策の推進を 図る た

め、全ての都道府県毎に「道路メ ン テナ ン ス会

議」が設置さ れ、地方公共団体への支援も 動き

出し ま し た。さ ら に、技術職員が不足し て いる

市区町村の点検に際し て一括発注、直轄診断、

さ ら には研修等様々な施策がかな り のス ピ ー

ド で 動き 出し て いま す 。こ れら の施策に対し

て、今後と も CAESAR と し て も 積極的に連携

・支援し て参り ま す 。

ま た、昨年、 SIP(戦略的イ ノ ベーシ ョ ン 創

造プログラ ム)がス タ ート し 、CAESAR と し て

も「イ ン フ ラ 維持管理・更新・マネ ジ メ ン ト 技

術」、「レ ジ リ エン ト な防災・減災機能の強化」

の主要な研究プ ロ ジ ェ ク ト に採択さ れる と と

も に、「モニタ リ ン グシステム技術研究組合」

にも 参画し 、産学官と も 連携体制の中で積極的

に研究を リ ード し て 実用に資す る 研究成果を

得る べく 最大限の努力を払う 所存です。

と こ ろで、平成 27 年度は現中期計画の最終

年であり 、5 年間のプロジェ ク ト 研究成果を と

り ま と める 重要な年です。CAESAR が中心と な

っ て 進めて き た「耐震性を基盤と し た多様な構

造物の機能確保に関する 研究」、「社会資本ス

ト ッ ク を よ り 永く 使う ための維持・管理技術の

開発と 体系化に関す る 研究」、「社会資本の機

能を増進し 、耐久性を向上さ せる 技術の開発」

等のプ ロ ジ ェ ク ト 研究の成果を 速やかにと り

ま と める と と も に現場への普及を 図っ て い く

こ と になり ま す。一方、こ れと 並行し て「国土

のグラ ン ド デザイ ン 2050」、「国土形成計画」、

「国土強靭化計画」等の新たな国土交通政策か

ら の要請に立脚し た次期中期計画に向けた研

究計画を策定致し ま す。CAESAR 関連では、①

イ ン フ ラ の効果的な点検、モニタ リ ン グを 実現

する ための非破壊検査技術等の開発、②点検・

モニタ リ ン グ によ り 得ら れた データ と 劣化撤

去部材の載荷試験等によ る イ ン フ ラ の健全度

評価技術の開発、③全国で実施さ れた点検結果

を反映し た補修方法の研究、④構造物基礎の液

状化対策の開発等の新た な研究に精力的に取

り 組んでいく こ と が重要と 考え て おり ま す。

こ のよ う に、CAESAR の役割は益々重要と な

っ て おり 、「現場支援」、「研究開発」、「情

報交流の場」のミ ッ シ ョ ン を 着実に果たす よ う

CAESAR の職員一同、引続き 努力し て参る 所存

ですので、今後と も 皆様から の変わら ぬご 支援

と ご 協力をお願いす る と と も に、関係各位のご

活躍を 祈念し ま し て 年頭の挨拶と さ せて 頂き

ま す。

土木研究所構造物メンテナンス研究センター

〒305-8516 つくば市南原1-6

電話029-879-6773

e-mail: caesar @ pwri.go.jp

http://www.pwri.go.jp/caesar/index-j.html

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CAESAR NEWSLETTER 2015年 1月号

SIP「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」への参画

1 .はじめに

内閣府の競争的資金である戦略的イノベーション創

造プログラム(以下、SIP)の「インフラ維持管理・更

新・マネジメント技術」をテーマとする研究課題におい

て、平成 26年 9月 24日に、CAESARの提案が採択を

受けました。

2.SIPについて

SIP は、内閣府「総合科学技術・イノベーション会

議」が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来

の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果た

すことを通じて、科学技術イノベーションを実現するため

に平成 26 年度に新たに創設したプログラムです。本プ

ログラムの特徴として、①社会的に不可欠で、日本の経

済・産業競争力にとって重要な課題を総合し、総合科学

技術・イノベーション会議が選定、②府省・分野横断的

な取り組み、③基礎研究から実用化・事業化までを見据

えて一気通貫で研究開発を推進、等が挙げられます。

3.採択された CAESARの研究課題

「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」は、

世界最先端のインフラマネジメントを活用し、国内重要イ

ンフラの高い維持管理水準での維持、魅力ある継続的な

維持管理市場の創造、海外展開の礎を築くことを目標と

しています。この目標を達成するために、①点検・モニ

タリング・診断技術の研究開発、②構造材料・劣化機

構・補修・補強技術の研究開発、③情報・通信技術の

研究開発、④ロボット技術の研究開発、⑤アセットマネ

ジメント技術の 5つの研究開発項目において、維持管理

に関わるニーズと技術開発のシーズとのマッチングを重

視し、新しい技術を現場で使える形で展開し、予防保全

による維持管理水準の向上を低コストで実現させること

を目指しています。

CAESARは 5つの研究開発項目のうち、①点検・モ

ニタリング・診断技術の開発において、「異分野融合に

よるイノベーティブメンテナンス技術の開発」と題して、

医療分野や産業分野で活用されているX線や中性子線

といった先進的な非破壊検査技術を、インフラ維持管理

の現場に導入するための研究を行います。この提案は、

CAESAR の上席研究員の石田が研究開発責任者とな

り、東京大学および理化学研究所と共同で開発を進める

ものです。

図-1 研究体制

図-2 解体調査イメージ

図-3 X線透過画像イメージ

開発した非破壊検査技術を CAESARが保有する撤

去部材へ適用して得られた情報と、載荷試験や解体調査

の結果を分析することにより、コンクリート橋の健全度を

診断する手法を提案します。また、実際の橋梁において

開発したX線技術の実証試験も実施する計画です。

4.おわりに

SIP で採択された研究課題への取り組みを通して、医

療や産業など、土木とは異なる分野の技術をコンクリート

部材の健全性評価に生かし、より効果的・効率的なイン

フラ維持管理を実現できるよう努めます。

なお、SIP「インフラ維持管理・更新・マネジメント技

術」の概要は、以下のウェブサイトを参照ください。

http://www.jst.go.jp/sip/k07.html

研究開発グループ

代表:(独)土木研究所 CAESAR 石田雅博担当研究:耐荷力評価手法の検討 載荷試験(耐荷力評価)

小型中性子源

共同研究グループ(1)

東京大学 上坂 充担当研究:可搬型高出力X線撮影装置による非破壊検査技術の開発

共同研究グループ(2)

(独)理化学研究所 大竹 淑恵担当研究:小型中性子源システムによる非破壊検査の試行

鉄筋

比較用の10mm

鉄筋40cm

X線ビームライン

比較用の10mm

鉄筋

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CAESAR NEWSLETTER 2015年 1月号

SIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」への参画

1. はじめに

平成 26年 9月 12日、内閣府の競争的資金である SIP

(戦略的イノベーション創造プログラム)課題「レジリ

エントな防災・減災機能の強化」のうち「③大規模実証

実験等に基づく液状化対策技術の研究開発」について、

CAESAR の提案が採択され、今年度より研究を実施す

ることとなりました。その概要について報告します。

2.研究の背景・実施内容

液状化する地盤上にある既設橋の中には、大地震によ

って重大な被害が生じる可能性のある橋があります(写

真-1,2)。こうした可能性のある橋を合理的に評価して

抽出し、効率的に耐震対策を進めていく手法を構築する

ことは、既設道路ネットワークをレジリエント(強靱)な

ものにするために重要です。

このため CAESARでは、本研究において各種の実験

及び解析を行い、液状化地盤における橋の基礎の地震

時挙動の評価手法と対策技術の開発に取り組みます。特

に、世界最大の振動台である E-ディフェンスを用いて大

型振動実験を行い、その信頼性の高い実験結果を通じ

て、これまで解明できていなかった液状化地盤における

基礎の地震時挙動等を明らかにすることが大きな特徴と

してあげられます。

3.実施体制

研究の実施体制を図-1 に示します。本研究の全体像

としては、(独)港湾空港技術研究所及び消防庁消防

研究センターと共同で研究を行い、土研で行う橋梁を含

む臨海部埋立地の各種施設(港湾施設、石油コンビナ

ート施設)の液状化診断・対策技術の開発を行うことと

しています。各機関が専門とする施設を対象に研究開発

を行うとともに、研究成果を相互活用するなどして、効

率的に成果を出していくことを目指しています。また、

E-ディフェンスを用いた

実験を行うことから、今

後、(独)防災科学技

術研究所とも共同研究

協定を締結していく予定

です。さらに、CAESAR

における研究をより高度

にかつ実現性の高いも

のとするため、学識者や

民間企業との共同研究

も行っていく予定です。

4. おわりに

本研究のように液状化問題に取り組む各種研究機関、

学識者、民間企業が連携・協同して研究開発を行うこと

は大変貴重な機会であり、この分野での技術の進展に大

きなインパクトを与えることが期待されます。CAESARと

しても、出来るだけ早期に成果をあげて社会に還元して

いくことを目指して、重点的に取り組んでいく予定です。

なお、SIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」

の概要については、以下のウェブサイトを参照ください。

http://www.jst.go.jp/sip/k08.html

写真‐1 液状化による落橋被害

図‐1 研究実施体制

写真‐2 液状化による橋台の損傷

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モニタリングシステム技術研究組合設立

1. はじめに

モニタリングシステム技術研究組合(略称:RAIMS(ラ

イムス)(Research Association for Infrastructure

Monitoring System))(以下「RAIMS」という。)

は 2014年 10月 22日に設立され、12月 2日都市センタ

ーホテル(東京都千代田区)において設立総会が開催

されました。ここでは、RAIMS 設立の目的と今後の活動

計画について紹介します。

2.RAIMS設立の目的

RAIMSは、損傷・劣化の状態監視を社会インフラの

維持管理業務へ活用するため、センサや通信・データ

解析技術等を活用したモニタリングシステムの社会イ

ンフラ分野への実用化導入を図ることを目的として設

立されました(図-1参照)。

組合員はインフラ管理者から(独)土木研究所、中

日本高速道路(株)、西日本高速道路(株)、東日

本高速道路(株)の 4 者、補修・補強技術に精通し

たゼネコン分野から鹿島建設(株)、前田建設工業(株)

の 2者、構造物の劣化メカニズムや診断解析に精通し

たコンサルタント分野から国際航業(株)、日本工営

(株)の 2 者、最先端のセンサや通信技術、データ

分析評価システムの開発者である電気通信分野から

は沖電気工業(株)、(株)共和電業、日本電気(株)、

能美防災(株)、(株)日立製作所、富士通(株)

の 6者が参画しており全体 14者で構成されています。

各分野に精通した組合構成員がそれぞれ専門的検証

を行い、他専門分野との総合調整を行うことでより高度

かつ実用的なモニタングシステムの提案が図れるものと

考えています。

3.RAIMSの今後の活動計画

構造物の損傷・劣化の状態監視を行うためのセンサ

による計測技術や計測データを収集・伝送する通信技

術、データを分析評価する技術等多種多様なものが存

在します。しかし、これらを現場に活用するための明確

な指針が存在しないため、どのような構造・部位に適

用すべきかをインフラ管理者が判断できずに、本格的な

現場導入に至っていないのが現状です。このような現状

を鑑み、これら技術を組み合わせて効率的で合理的な

モニタリングシステムを構築し、同システムを現地へ導

入する為の基準・標準の提案にむけた研究を行います。

なお、この研究の実施にあたり内閣府が創設した「

戦略的イノベーション創造プログラム」において、本技

術研究組合は「モニタリング技術の活用による維持管

理業務の高度化・効率化」を研究開発課題として申請

し11月28日に採択を受けています。

4.おわりに

設立総会の挨拶において、依田照彦理事長は「本技

術研究組合は各分野を代表する方々が参画しており、

組合員のもつ技術を結集することで、モニタリング技術

の開発がなされ、世界のインフラに貢献することができ

るものと考えている」と挨拶されました(写真-1)。

RAIMSは社会インフラの安全・安心を支える技術開

発に貢献できるよう積極的に活動をしていきます。

図-1 RAIMSの概念図

写真-1 設立総会で挨拶する依田理事長

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第 30回日米橋梁ワークショップ開催される

1. はじめに

平成 26年 10月 21日~25日の 5日間、米国ワシント

ン DC、ヴァージニア州において、第 30回日米橋梁ワー

クショップが開催されました。本ワークショップは、天然

資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)の耐風・耐

震構造専門部会の下に設けられた「作業部会 G(交通

システム、米側作業部会長:連邦道路庁 Phillip Yen博

士、日本側作業部会長:土木研究所構造物メンテナン

ス研究センター松浦弘橋梁構造研究グループ長)」の

活動の一環として、橋梁に関する安全性の向上や維持管

理などの日米が連携して取り組むべき調査研究課題等

を幅広く情報交換や議論することを目的として、昭和 59

年から毎年日米交互に開催しており、今回で 30 回目と

いう記念の回となりました。

2.本会議

本会議には、米国側からは連邦道路庁のほか、各州

の交通局、大学、民間会社等から計 21名、日本側から

は土木研究所や国土技術政策総合研究所に加えて、大

学、道路会社などから計 22名が参加しました(写真-1)。

開会式では 30 周年を記念して、連邦道路庁の Nadeau

長官と土木研究所の魚本理事長による挨拶の後、記念

盾の交換を行いました。また、これまで 14年間にわたっ

て米側作業部会長を務めてこられているYen博士に対し

て、日本側から感謝状を贈呈しました。続く特別セッシ

ョンでは、30 年間にわたる日米間の研究協力活動につ

いて振り返りました。その中で、元日本側作業部会長で

ある佐藤弘史氏からは、日米間で研究協力活動を継続し

ていくことの重要性について講演がありました。テクニカ

ルセッションでは、橋の耐震対策や津波に対する対応、

維持管理(点検、診断)、補修・補強等に関連するテ

ーマについて、日米合わせて 35編の発表があり、活発

な意見交換を行いました。また、今後の協力活動に関す

る討議を中心としたセッションも設け、「維持管理」と

「地震」の 2グループに分かれて議論を行いました。維

持管理については、Maintenanceと Preservationの定義

を踏まえた両国の予算・補助制度に関して情報交換を行

うとともに、モニタリングやロボットに関する日本の研究

動向を紹介し議論を行い、今後も両国の維持管理に関

わる新しい技術について情報交換していくこととなりま

した。また、地震については、津波の影響及び継続時

間の長い地震動が橋に及ぼす影響に関する研究につい

て討議しました。津波の影響については、日本において

有用な実験データが蓄積されてきていることから、この

データを日米で共有し、津波に対する橋の評価技術の構

築に共同で取り組んでいくこと等、具体的な協力活動内

容について議論しました。

写真-1 集合写真

3.現地調査

会議後に実施した現地調査では、連邦道路庁のター

ナーフェアバンク研究所の実験施設、ヴァージニア州

の沈埋トンネル・橋梁の建設現場などを視察しました。

ヴァージニア州のエリザベス川をはさむノーフォーク

市、ポーツマス市間の交通網の改善のための既存トン

ネル補修及びトンネルの新設、インターチェンジの新設

等について、州政府関係者から説明いただくとともに、

建設現場や沈埋トンネルの函体製作現場等を視察しま

した。また、チェサピーク市では交通渋滞緩和やハリ

ケーンからの避難路としての活用を目的とした 4 車線

化事業における取り組みについて市関係者から説明い

ただくとともに、新設橋梁の建設現場等を視察しまし

た(写真-2)。補修の取り組み方や新設橋梁の設計・

施工方法等について、現地の技術者も交えて多くの意

見交換を行うことができました。

写真-2 現地調査の様子(チェサピーク市の 4車化事

業での新設橋梁工事現場)

なお,本ワークショップの発表論文は第 19回以降、

下記ウェブページで公開されています。今回の論文も

近日公開を予定していますので、ご興味のある方はご

覧下さい。

http://www.pwri.go.jp/eng/ujnr/tc/g/tc_g.htm

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国際活動:2010年チリ地震を踏まえたチリ国の橋梁耐震基準改定への協力計画

2010年2月27日に発生したチリ地震により、落橋をは

じめとする多くの甚大な橋梁被害(写真-1)が生じまし

た。チリ共和国公共事業省(Ministry of Public Works

: MOP)では、こうした被害経験を踏まえ、橋梁の耐震

基準の改定作業を進めています。

2010年のチリ地震当時、土木学会から調査団が派遣

され、CAESARからも団員として参加しました1)。公共

事業省MOPは、地震直後に緊急的に暫定復旧基準を策

定しましたが、この暫定基準の中には土木学会調査団

が提供した日本の耐震技術の一部が参考にされるな

ど、技術面での協力貢献の1つの良い事例となったとこ

ろです2)。今回、上記の暫定基準の本基準への組み込み

を含め、橋梁の耐震基準の本格改定への技術協力に関

するJICAのプロジェクトが立ち上がり、CAESARからも

派遣専門家等として耐震技術に関する協力を継続して

いるところです。

第1回の協力調整会議が、昨年9月24日~26日に開

催された「橋梁技術に関する第1回国際会議」に合わせ

てチリ国サンチャゴ市で開催されました。この国際会議

は、チリ国としては橋梁に関して初めて主催する大きな

国際会議であり、参加者は約300名、欧州、米国、中

南米各国からを含む53編の発表がありました3)。公共事

業省MOPのAlberto Undurraga大臣も参加され、開会

式で挨拶されました。チリでは、Chacao橋という4径間連

続長大吊橋(橋長2,750m)のプロジェクトが進行中でも

あり、長大橋の建設技術などに関する発表が活発に行わ

れました。また、2010年の地震に対する土木学会調査

団の貢献に対し、公共事業省のMario Fernandes道路

局長から謝意が表明されました(写真-2)。

その後、9月29日~10月1日にかけて、耐震基準の本

格改定に向けた技術事項に関し、公共事業省MOPの担

当技術者との意見交換を行いました。具体的な耐震基

準の改定検討項目、日チリ双方の協力分担事項、今後

の検討スケジュール等、橋梁基準改定に向けた協力プ

ログラムについて協議がなされたところです。今後2年間

のプログラム計画ですが、CAESARが中心となって協力

を行う予定となっています。

写真-1 2010年チリ地震による高速道路の落橋被害

写真-2 公共事業省Undurraga大臣(中央)及び同省

Fernandes道路局長(左)からの協力への謝意を

受けるCAESAR運上耐震研究監(右)

1) http://www.jsce.or.jp/library/eq_repo/Vol3/13/Chile.html

2) 星隈順一:CE リポート チリの橋梁の新しい耐震基準に日本の耐震技

術が採り入れられる、土木学会誌第 95 巻 11 号、pp.60-62、2010 年

3) http://www.acct.cl/?p=814

4) http://www.db.pwri.go.jp/pdf/D8402.pdf5) http://www.db.pwri.go.jp/pdf/D8382.pdf

なお、2010 年チリ地震に対する土木学会調査団の報告書及びその際の貢献、「橋梁技術に関する第 1 回国際会議」については、以下1)~3)を参照ください。

また、公共事業省 MOP に対しては、上記の耐震基準改定に向けた協力と合わせ、「地震により被災した

橋梁の診断・復旧技術」4) や「免震技術」5) 等、日本の耐震技術に関する情報提供も行っています。

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