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分娩後出血

ACOG Practice BulletinClinical Management Guidelines For Obsterician-Gynecologists

Number 76, Octorber 2006

初めに

分娩後出血

分娩後24時間以内に起こる母体死の半分以上

世界で毎年14万人、4分に1人亡くなっている

≪後遺症≫

ARDS 凝固異常 ショック 妊孕性の喪失

下垂体壊死(Sheehan症候群)

目的

分娩後出血の病因、評価、及び管理を見直すこと

背景

妊娠時は様々な生理的変化が起こる。例:血漿は40%、赤血球は25%増加する

分娩後出血の目安:はっきりした定義はない

・経膣分娩では500ml、帝王切開では1000mlの出血

・ヘモグロビン、ヘマトクリット値

※低血圧、顔色不良、乏尿などの症状の発現

→10%以上の血液の喪失

あくまで参考

背景

分娩後出血一次性:分娩後24時間以内に発生する

二次性:分娩後24時間以降、6~12週の間に発生する

※一次性のものは全妊娠の4~6%で発生し、その80%

以上が弛緩出血によるものである。

背景

病態評価と処置

ルート確保

薬剤投与

輸血の準備

麻酔科医、看護師との連携

背景

治療

•段階的治療(可能であるならば、低侵襲の処置から始め、それが不可能ならば、子宮全摘を行う。今後の妊孕性を望む妊婦のことも考慮する)

•集学的治療

ただし・・・・出血の原因は個々の症例で異なる。外科的処置の決定は時期を逸してはならない。

評価と管理の考察

・子宮弛緩とそれに関連する出血を防ぐにはオキシトシンの投与が一般的である

米国ではオキシトシン投与は肩甲娩出時が多い

・分娩室、手術室に出血時の対処法を貼っておくhttp://www.acog.org/cgi-shl/leaving.plhttp://home2.nyc.gov/html/doh/downloads/pdf/ms/ms-hemorr-poster.pdf

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

分娩後出血の原因(一次性)

弛緩出血

産道裂傷

胎盤遺残(特に癒着胎盤)

凝固異常

子宮内反

分娩後大量出血の鑑別診断は?

分娩後出血の原因(二次性)

胎盤部の子宮復古不全

子宮内遺残物

感染

遺伝性凝固異常

分娩後大量出血の鑑別診断は?

弛緩出血

分娩後出血のなかで最多

双合診で柔らかく、低収縮の子宮が特徴

対処法:子宮の圧迫とマッサージ血液と血腫を排出し、検査の時間を確保する

分娩後大量出血の鑑別診断は?

産道の裂傷

注意深い視診適切な体位介助者照明適切な麻酔適切な器具

出血が止まらない場合は裂傷を考え

設備の整った手術室に搬送するべき

分娩後大量出血の鑑別診断は?

産道の血腫

ドレナージ、切開で血腫を除去

ガーゼ充填も有効

画像診断で血腫の診断

血腫の増大は大量出血を起こす可能性がある

明らかな裂傷が見られない場合も存在し、骨盤部、直腸の圧迫、痛みといった症状に注意する。

分娩後大量出血の鑑別診断は?

子宮内遺残物による出血

まず、エコーを行い、子宮内の確認を行う

高輝度のmassが確認された場合は

胎盤遺残などを疑い

掻爬を施行副胎盤や卵膜などの遺残を判別

分娩後大量出血の鑑別診断は?

凝固異常

病歴、家族歴、治療状況について

HELLP症候群

遅延性子宮内胎児死亡

羊水塞栓

敗血症

凝固異常が確認された場合は

を考え、凝固異常が慢性化する前に迅速に検査と輸血を考慮する

分娩後大量出血の鑑別診断は?

血液検査

大量出血の場合や臨床状況に応じて定期的に行う

結果は必ずしも正確なものではないという

ことを認識しておく

血小板数、PT、APTT、フィブリノーゲン、

交差試験も行う

輸血の準備

分娩後大量出血の鑑別診断は?

フィブリノーゲン測定検査(簡易法)

5mlの血液を試験管に入れ観察する

フィブリノーゲン150mg/dl

以上 以下

10min以内で凝血し

その後も安定状態

凝血しない、もしくは凝血しても不安定で30~60min以内で溶解

分娩後大量出血の鑑別診断は?

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

分娩後大量出血に対する内科的処置

坐薬(直腸内)

800~1000mcgMisoprostone(PGE1)

低血圧患者には避ける

発熱がみられる

2時間ごと坐薬(膣内、直腸)

0.2mgDinoprostone(PGE2)

血栓症に注意が必要2時間ごとIV:50~100mcg/kgヒト凝固因子Ⅶa

喘息患者には使用を避け、肝、腎、心疾患、は下痢や発熱、頻脈が起こりえるため、相対的禁忌

15~90分ごと

最大量:2.0mg IM:0.25mg15-methyl PGF2

患者が高血圧のときは避ける

2~4時間ごとIM:0.2mgMethylergonovine

低血圧発作が起こるので、高濃度投与や迅速静脈投与を避ける

持続投与IV:生食もしくは乳酸リンゲル液1Lに10~40単位溶解

IM:10単位

Oxytocinコメント投与回数用量/投与方法薬剤

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

分娩後大量出血に対する圧迫止血法

5000単位のthronbinを溶解した5mlの滅菌生食を浸した4イ

ンチガーゼ

パッキング

300~500mlの生食を注入した

バルーンを挿入

SOS Bakri tamponadeballoon

Sengstaken-Blakemore tube

60~80mlの生食を注入したバルブを1個か数個挿入する。

Foley catheter

コメント術式

Sengstaken-Blakemore tube

SOS Bakri tamponade balloon

SOS Bakri tamponade balloon

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

分娩後大量出血に対する外科的処置

Hemostatic multiple square suturing

B-Lynch 縫合

両側子宮卵巣の脈管を結紮子宮動脈結紮

子宮摘出

裂傷縫合

術式が難しい

この手技に熟練した人しか行っていない

成功率が思われているより低い

動脈結紮

(卵巣動脈、内腸骨動脈)

子宮内掻爬

コメント術式

B-Lynch 縫合

Hemostatic multiple square suturing

Cho JH, Jun HS, Lee CN.Hemostatic suturing technique for uterine bleeding during cesarean delivery.Obstet Gynecol 2000;96:129-31(Level Ⅲ)

段階的治療に失敗した後に、この術式を行った23症例が報告された。2か月後、全症例が検診さ

れ、エコーで完全に正常な子宮内膜と子宮腔が証明された。

治療方針

分娩後大量出血

内科的治療

圧迫止血 外科的処置

効果が見られない

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

癒着胎盤のリスクファクター

前置胎盤

帝王切開の既往筋腫核出術の既往

Asherman症候群

粘膜下子宮筋腫

高齢妊娠

癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

子宮摘出術、輸血の可能性があることを説明

血液製剤、凝固因子の準備

十分な人員と設備の確保

麻酔科へのコンサルト

cell saverも考慮する

癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

帝王切開時にCell saverを使用した139症例において、コン

トロール群と比べて、不利な結果はありませんでした。

Rebarber A,Lonser R,Jackson S,Copel JA,Sipes S.The safety of intraoperative futologous blood collection and autotransfusionduring cesarean section.Am J Obstet Gynecol 1998;179:715-20.(Level Ⅱ-2)

癒着胎盤の治療

内科的治療

掻爬

楔状切除

子宮摘出術

癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

動脈塞栓術の適応となるのは?

動脈塞栓術

子宮摘出術後に持続する出血に対して、あるいは

妊孕性温存のための子宮摘出術に変わる方法として

使われる

持続的な出血→バイタルが安定

大量出血でない

動脈塞栓術

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

いつ輸血をするべきか?

持続的な出血→バイタルが不安定

大量出血

輸血療法

輸血開始の臨床判定は非常に重要!出血量の予測値はしばしば不正確

Ht,Hb値の測定結果はあくまで参考

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

輸血療法

効果(1単位)成分Volume (ml)血液製剤

50

240

フィブリノーゲン4mg/dl増加

凝固因子Ⅷ、ⅩⅢ

von Willbrandfactor

40クリオプレシピテート(凝固因子)

フィブリノーゲン25mg/dl増加

アンチトロンビンⅢ第Ⅴ、Ⅷ凝固因子フィブリノーゲン

250新鮮凍結血漿

血小板数増加5000~10000/mm3

血小板、血漿

赤血球、白血球

濃厚血小板

Ht濃度3%上昇/100mlHb1g/dl上昇/100ml

赤血球、白血球

血漿

人赤血球濃厚液

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

自己血輸血の役割は?

輸血の必要性が高い

患者が稀な抗体を持っており

適合する供血者がとても少ない

自己血輸血(採血、貯血、輸血)

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

※ 妊婦は、貧血気味なので貯血することが難しい。

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

子宮破裂の原因

帝王切開の既往

子宮筋層に及ぶ外科処置の既往

子宮の先天奇形

癒着胎盤

特発性

子宮破裂の対処法は?

子宮破裂の対処法

外科的処置

1.修復

裂孔の程度・位置

全身状態

尿管・膀胱など周辺の組織の状態

将来の挙児希望

2.子宮摘出

子宮破裂の対処法は?

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

子宮内反

診断

双合診にて子宮頸付近に固い腫瘤

腹部触診にて子宮があるべきところに触れない

という所見から推測できる。

※ 内反発生時に胎盤が娩出されていない時

→胎盤の除去は出血の原因となるので

行われるべきではない。

子宮内反の対処法は?

子宮内反の対処法

用手的整復

→片手で子宮底を押さえ、もう片方の指で押し上げる

※ 子宮の弛緩のため

・テルブタリン

・硫酸マグネシウム

・ハロセンによる全身麻酔

が用いられる。

外科的整復

Huntington法Haultain法

子宮摘出

子宮内反の対処法は?

Huntington法

子宮底部、次いで円靱帯を鉗子で把持してゆっくり引き上げながら子宮体部を下方に押し下げるようにして修復する方法

子宮内反の対処法は?

Haultain法

子宮頸部の狭窄を解除するため子宮頚部後壁を切開し、露出した子宮底を押し上げながら縫合・整復する方法

子宮内反の対処法は?

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

二次性の分娩後出血

<全分娩の約1%で発生>

凝固能異常

→von willebrand病など

子宮内遺残物

※ 原因不明なことも多い

二次性の分娩後出血の対処法は?

凝固能異常

<von Willebrand病>

過多月経の女性の10%~20%に見られるとの報告がある。

Demers C,Derzko C, David M, Douglas J.gynaecolog-ical and obstetric management of women with inherited bleeding disorders.Society of Obstetricians and Gyne-cologists of Canada.J Obstet Gynaecol Can 2005;27:707-32.(LevelⅢ)

過多月経の既往のある妊婦に対して

von Willebrand病などの凝固能異常の検索をすることは分娩後出血を予測するうえで重要である。

二次性の分娩後出血の対処法は?

子宮内遺残物

弛緩出血

遺残物への感染

☆予防・診断にはエコーによる確認が

有用である。

※ 一次性の出血よりも出血の程度は軽い。

二次性の分娩後出血の対処法は?

子宮内遺残物による出血の対処法

子宮収縮薬・抗生剤・掻爬を行う

掻爬:以下の方法で穿孔のリスクを減少できるエコーガイド下で行う

鈍で大きな器具の使用

※ 原因が小さければ掻爬だけで止血できる

二次性の分娩後出血の対処法は?

発表内容

総論分娩後大量出血の鑑別診断は?

内科的治療は?

圧迫止血は?

外科的治療は?

各論癒着胎盤を疑った時、臨床的にすべきことは?

動脈塞栓術の適応となるのは?

いつ輸血をするべきか?自己血の役割は?

子宮破裂の対処法は?

子宮内反の対処法は?

二次性の分娩後出血の対処法は?

状態が安定してからの対処法は?

状態が安定してからの対処法

貧血の回復

・ビタミンやミネラルを含んだ錠剤や鉄剤の分娩前投与

→赤血球の回復を早める

※ エリスロポエチン投与も有効→FDAは術後貧血への使用を承認していない

また、治療としては高価である

まとめ(Level Ⅲ)

子宮収縮薬は子宮弛緩の第一選択である

出血の対処法は患者や施設によってさまざまなので幅広い分野での協力が必要である

子宮収縮薬が無効の場合は試験開腹を考慮する

癒着胎盤の存在を疑わせる所見があれば最大限の警戒が必要

最後に

もしも子宮摘出を行うときは術者は

他の治療法を試みたがうまくいかなかったということを文章に残しておくべきである。

分娩後出血

桐月伸輔 志伊真和

日高康太郎 村本美華

ACOG Practice BulletinClinical Management Guidelines For Obsterician-Gynecologists

Number 76, Octorber 2006