Title 牛由来Salmonella enterica serovar Typhimuriumの分子 ......サルモネラはSalmonella...

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Title 牛由来Salmonella enterica serovar Typhimuriumの分子疫学お よび薬剤耐性に関する研究( 本文(Fulltext) ) Author(s) 菅原, 克 Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 乙第130号 Issue Date 2014-03-13 Type 博士論文 Version ETD URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/49051 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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Title 牛由来Salmonella enterica serovar Typhimuriumの分子疫学および薬剤耐性に関する研究( 本文(Fulltext) )

Author(s) 菅原, 克

Report No.(DoctoralDegree) 博士(獣医学) 乙第130号

Issue Date 2014-03-13

Type 博士論文

Version ETD

URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/49051

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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牛由来Salmonella enterica serovar Typhimuriumの

分子疫学および薬剤耐性に関する研究

2013年

岐阜大学大学院 連合獣医学研究科

菅原 克

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目次

緒言 1

第一章 福島県で分離された牛由来Salmonella Typhimuriumの

分子疫学的解析 6

序論 6

材料および方法 7

1 使用菌株 7

2 薬剤感受性試験 7

3 分離株のファージ型別 8

4 Polymerae chain reaction(PCR)による遺伝子検出 8

5 プラスミドプロファイル 8

6 プラスミド制限酵素断片長多型(RFLP)解析 8

7 薬剤耐性プラスミド伝達性試験 9

8 Pulse-field gel electrophoresis (PFGE) による遺伝子型解析 9

9 gyrA遺伝子の塩基配列解析 10

結果 10

1 同一農場で分離された菌株の比較と 2004年分に離された農場間の

疫学調査 10

2 分離株の表現型別 11

3 分離株の遺伝子型別およびプラスミド解析 11

4 塩基配列解析 13

考察 13

図表 18

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第二章 国内で初めて分離された牛由来広域セファロスポリン系

薬剤耐性Salmonella Typhimurimの性状解析 24

序論 24

材料および方法 25

1 分離株についての疫学的概要 25

2 使用菌株 25

3 薬剤感受性試験 25

4 分離株のファージ型別 26

5 βラクタマーゼ検出試験 26

6 プラスミドプロファイル 26

7 プラスミド伝達性試験 27

8 PCR 27

9 サザンハイブリダイゼーション 27

10 PFGE解析 28

結果 28

1 分離株の表現型別 28

2 PCRによる遺伝子検索と分離株のPFGE解析 29

3 プラスミドおよびトランスコンジュガント解析 29

考察 31

図表 35

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第三章 福島県の肉用牛育成農場から分離された複数の

薬剤耐性型を示すSalmonella Typhimuriumの解析 43

序論 43

材料および方法 44

1 分離農場の疫学的概要 44

2 使用菌株 44

3 薬剤感受性試験 44

4 分離株のファージ型別 45

5 プラスミドプロファイル 45

6 PFGE 45

7 プラスミド伝達性試験 45

8 トランスフォーマントの作出 46

9 PCR 46

10 サザンハイブリダイゼーション 47

結果 47

1 分離株の表現型別 47

2 分離株の遺伝子型別 48

3 トンランスコンジュガントの解析 48

4 トランスフォーマントの解析 49

考察 50

図表 55

総括 64

謝辞 67

引用文献 68

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略語一覧

ABPC:アンピシリン

AmpC:Ambler class C

ATCC:American type culture collection

CAZ:セフタジジム

CEZ:セファゾリン

CFPM:セフェピム

CFX:セフォキシチン

CLSI:Clinical and Laboratory Standard Institute

CP:クロラムフェニコール

CTF:セフチオフル

CTRX:セフトリアキソン

DSM:ジヒドロストレプトマイシン

DT:definitive phage type

ERFX:エンロフロキサシン

ESC:広域スペクトラムセファロスポリン

GM:ゲンタマイシン

JVARM:Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring

KM:カナマイシン

NA:ナリジクス酸

OTC:オキシテトラサイクリン

PCR:polymerase chain reaction

PFGE:pulsed-field gel electrophoresis

RDNC:reacted but did not conform with clear phage types

RFLP:制限酵素断片長多型

SGI1:Salmonella genomic island 1

SM:ストレプトマイシン

SUL:サルファ剤

TC:テトラサイクリン

TMP:トリメトプリム

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1

緒言

サルモネラはSalmonella enterica,S. bongoriおよびS. subterraneaの3

菌種に分けられる(74)。S. entericaはさらに6亜種に分けられ,そのうち

ヒトをはじめ各種ほ乳類や鳥類から分離されるものは,主に S. enterica

subsp. entericaに属している(35,44)。S. enterica subsp. entericaは,

Kauffmann-Whiteの抗原構造表(35)に基づくO抗原およびH抗原により

2500以上の血清型に型別され,血清型により宿主動物種と病原性に差異が

ある。特定の宿主に病原性を示す代表的な血清型として, S. enterica

serovar TyphiおよびS. enterica serovar Abortusequiがあり,前者はヒトに,

後者は馬に限定して強い病原性を発揮し,敗血症などの強い全身性症状を引

き 起 こ す 。 一 方 , ヒ ト や 動 物 に 感 染 す る 代 表 的 な 血 清 型 と し て , S.

TyphimuriumおよびS. Enteritidisがある(54,87)。この2菌種は幅広い宿

主域のため,代表的な食中毒菌としても認識されており,家畜衛生のみなら

ず公衆衛生上の観点からも注視すべき菌である。

牛のサルモネラ症は,サルモネラの多くの血清型により引き起こされるが,

国内においてはS. Dublin,S. EnteritidisおよびS. Typhimuriumによるも

のが家畜伝染病予防 法に規定される届出伝染病に指定されており, S.

Typhimuriumが国内外問わず高率で分離されている(8,13,61,83)。症

状としては発熱,下痢を主徴とし,時に肺炎や流産も認められ,急性症状の

場合では敗血症により死亡する例もある。 1990年以前の本症は哺乳牛や育

成牛の下痢や肺炎を引き起こす疾病として認識されていたが, 1990年代に

なると,搾乳牛にその発生が多くみられるようになった(3, 13,69,71)。

その発生の多くはS. Typhimuriumによる感染で,さらに単発ではなく,牛

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群全体に発症を引き起こすため,経済的な被害は甚大となった( 13,19,

73)。一方で,搾乳牛のサルモネラ症が増加した同時期にS. Typhimurium

の性状に変化があったことが明らかとなった。欧米諸国において, S.

Typhimurium definitive phage type 104(DT104)による食中毒が増加し

公衆衛生上大きな問題となった(33,39)。世界各地で分離されたDT104は,

互いに遺伝学的に近縁であるとともに,アンピシリン(ABPC),クロラム

フェニコール(CP),ストレプトマイシン(SM),サルファ剤(SUL)およ

びテトラサイクリン(TC)の5剤に対して耐性を示した。多剤耐性DT104

は,世界各国で同時期に牛において急速に分離されるようになり (39),米国

では1986年から1991年の同割合が13%だったのに対し,1991年から1996

年までで64%となったと報告されている(15)。日本国内においても,1990

年代から牛由来多剤耐性DT104の分離率の上昇が確認されており, 1981年

から1990年までに分離された牛由来5剤耐性S. Typhimurium13株のうち,

DT104は皆無であったのに対し,1991年から1998年では49株中31株(63%)

が分離されていた(69)。

しかし,高率に分離されていた牛由来DT104分離率が近年低下傾向にある。

国内では,牛由来DT104の比率は1999年から2000年まで71.9%だったのに

対し(29),2002年から2005年では30.8%となり,分離率が有意に減少して

いる(47)。また,英国では牛由来DT104の比率が1995年から1998年まで

80%台で推移していたのに対し,2009年から2011年では20‐30%となった

(83)。デンマークにおいても,1998年から2000年では約30%だった牛由来

DT104の比率が2001年から2004年の間では,10‐20%であったと報告され

ている(10, 11,27)。

分離菌株のファージ型変化に伴い,国内の牛由来S. Typhimuriumの薬剤

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耐性型の変化も確認された。1999年から2001年の分離株では,DT104の多

くを占めていたABPC, CP, ジヒドロストレプトマイシン(DSM)およびオ

キシテトラサイクリン(OTC)耐性株が全体の74%だったのに対し,2002

年から2005年では,上記の4剤の耐性パターンは30%と減少した(47)。一

方,1999年から2001年では1.9%だったABPC, DSM, OTCおよびカナマイシ

ン(KM)耐性株が2002年から2005年では46%と増加した(47)。しかし,

3剤以上の耐性を示す国内の牛由来S. Typhimurium多剤耐性株の割合は,

1999年から2001年では78%,2002年から2005年では86%と増加傾向にあり,

依然として非常に高率であった(47)。アメリカ農務省の調査においても,

5剤以上に耐性を示す牛由来サルモネラの割合は,1999年に約8%であった

のに対し,2010年には23.1%であり、他の家畜(豚:7.2%、鶏:9%、七面

鳥:9.3%)と比べ、高い比率で多剤耐性株が分離されている(82)。このよ

う に , 牛 由 来 サ ル モ ネ ラ の 多 剤 耐 性 化 が 顕 著 と な っ て お り , 牛 が S.

Typhimuriumに代表される多剤耐性サルモネラ感染環の温床となっている

可能性が指摘されている(78)。

サルモネラの型別方法は表現型別法と遺伝子型別法があり,代表的なもの

として前者は,ファージ型別,薬剤耐性型別があり,後者はpulsed-field gel

electrophoresis(PFGE),プラスミドプロファイル,amplified fragment

length polymorphismがある(5,58,72,78,84)。なかでも,PFGEは

識別能力が高く,代表的な方法として用いられている( 77)。Tamamuraら

(78)は過去33年間に北海道で分離された牛サルモネラ症由来S. Typhimu-

riumについて,PFGEを用いて型別し,9型(Ⅰ‐Ⅸ)に分類している。この

うちDT104を含むクラスター I型が2000年以降減少傾向にあり,新たに出現

したⅦ型に分類される株が2000年以降多数を占める様になった(78, 79)。

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さらに,クラスターⅦに属する菌株の97%は4剤以上耐性を示す多剤耐性株

であり,そのうち16%は我が国の家畜衛生分野における薬剤耐性モニタリン

グで報告されていなかったセファゾリン(CEZ)耐性を示していた(8,28, 29,

47,78, 79)。

ヒトの非チフス性サルモネラ症で症状が消化器に限局されている場合,抗

生物質の治療は必要ないとされているが,乳幼児や高齢者,免疫不全者が感

染した場合には,抗生物質投与が必要となる(9,40)。その際,治療薬と

して薬剤耐性率が低く,広域抗菌剤であるニューキノロンや広域スペクトラ

ムセファロスポリン(ESC)が選択されるが,小児の場合,ニューキノロン

には関節軟骨の損傷作用があるため,ESCが選択される(14,30,40)。そ

のため,ESC耐性サルモネラの出現は,公衆衛生上非常に重要な問題である

(7)。

このように,近年牛由来S. Typhimuriumは遺伝子型および表現型の変化

が確認されており,高い多剤耐性傾向を示し,幅広い宿主域に病原性を示す

本菌の流行株について,薬剤耐性メカニズムやファージ型,遺伝子型などを

解析することは,公衆衛生ならびに家畜衛生上非常に重要な情報となる。

本研究では,第一章で1992年から2004年までに福島県下14農場から分離さ

れた牛由来S. Typhimuriumについて,分子疫学的手法を用いて株間の比較

を行った。さらに,2004年に福島県で多発した牛サルモネラ症の各農場分離

株間について比較を行い,伝播の可能性について検討した。

第二章では,国内で初めて分離された牛由来ESC耐性S. Typhimuriumに

ついて,ESC耐性の機序,遺伝子型の特徴やファージ型等の解析を実施し,

ESC耐性S. Typhimuriumの性状を明らかにした。

第三章では,第二章でESC耐性S. Typhimuriumが分離された育成農場で,

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短期間のうちに分離された複数の薬剤耐性型を示すS. Typhimuriumについ

て,これらの株が農場内で複数株存在したことによるのか,あるいは単一株

から派生したものなのか,単一株由来で派生したのであれば,どのような変

化により派生したのかを分子疫学的手法を用いて検証した。

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第一章 福島県で分離された牛由来Salmonella

Typhimuriumの分子疫学的解析

序論

牛のサルモネラ症はサルモネラの多くの血清型の感染により発症するが,

国内においてはSalmonella enterica serovar Dublin,S. Enteritidisおよび

S. Typhimuriumによるものが家畜伝染病予防法に規定される届出伝染病に

指定されている。中でも国内外問わず宿主域が広いS. Typhimuriumが高率

で分離されている(8,13,61)。S. Typhimuriumによるサルモネラ症は哺

乳牛や育成牛の下痢や肺炎を引き起こす疾病として認識されていたが,1990

年代に入り,搾乳牛の発生が多くみられるようになった(13,69,71)。ま

た,同時期に分離されるS. Typhimuriumの性状に変化があったことことも

確認されており,アンピシリン (ABPC),クロラムフェニコール (CP),ストレ

プトマイシン (SM),サルファ剤 (SUL)およびテトラサイクリン (TC)の5剤に

耐性を示すS. Typhimuriumファージ型DT104による食中毒が欧米で増加し,

世界各国の牛においても急速に分離されるようになった( 3,15,33,69)。

近年,S. Typhimuriumの多剤耐性化が欧米で顕著であり(33,39),このよ

うな多剤耐性菌の流行は公衆衛生ならびに家畜衛生上脅威となっている。

本章では1992年から2004年にかけて福島県下14農場(A~N農場)から分

離されたS. Typhimuriumにおけるファージ型,遺伝子型,薬剤耐性型等に

ついて解析し,2004年の牛サルモネラ症多発事例での農場間伝播の可能性に

ついて検討した。

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7

材料および方法

1 使用菌株

1992年から2004年に福島県下,異なるA‐N農場の計14農場で発生した牛

サルモネラ症から分離されたS. Typhimuriumを用いた。使用菌株は1農場毎

に異なる個体から分離された 3株,計42株を用い,各農場から分離された代

表株(A農場:4-70株,B農場:4-117株,C農場:6-95株,D農場:7-63株,

E農場:7-82株,F農場:7-115株,G農場:7-131株,H農場: 10-112株, I

農場:16-74株,J農場:16-99株,K農場:16-117株,L農場:16-120株,

M農場:16-132株,N農場:16-144株)を表1に示した。なお,菌株は使用す

るまで25%グリセロール加トリプトソイブロス(日水製薬,東京)にて- 80℃

で保存した。

2 薬剤感受性試験

平板寒天希釈法による最小発育濃度の測定は Clinical and Laboratory

Standards Institute(CLSI)(59)に基づき実施した。なお,Staphylococcus

aureus American type culture collection(ATCC) 29213, Enterococcus

faecalis ATCC 29212, Escherichia coli ATCC 25922 および Pseudomonas

aeruginosa ATCC 27853 を標準管理菌株として用いた。供試薬剤はABPC,

セファゾリン(CEZ),セフチオフル(CTF),SM,KM,TC,CP,SUL,

トリメトプリム(TMP),ナリジクス酸(NA)およびエンロフロキサシン

( ERFX)の 11薬剤を用いた。ブレイクポイントは CTFおよび ERFXでは

Esakiら(28)と Ishiharaら(41)の報告に準じて設定し,その他の薬剤に

ついてはCLSI(60)に基づき設定した。

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3 分離株のファージ型別

分離株のファージ型別は国立感染症研究所に依頼し,英国のPublic health

Laboratory Service の手法(4)に基づき実施した。

4 Polymerase chain reaction(PCR)による遺伝子検出

分離菌株の鋳型DNAは Instagene Matrix(Bio-rad,Hercules,CA)を用

いて,添付説明書に従い抽出した。PCR反応についてはS. Typhimurium の

特異遺伝子であるリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(mdh),薬剤耐性遺伝子

に関連する classⅠ integlon, DT104関連株に特異的に存在する 16S‐ 23S

rRNAスペーサー領域配列(DT104特異配列),サルモネラ病原性プラスミド

上の病原性関連因子( spvC),DNAジャイレースの1つであるgyrAについて,

表2に示したプライマーと文献(24,49,53,55,65,67)に従い実施した。

5 プラスミドプロファイル

プラスミドDNAはKadoとLiuの方法(45)により抽出し,1%アガロース

ゲルを用い電気泳動を行い,エチジウムブロマイドにより染色し,UV光下で

確 認 し た 。 な お , プ ラ ス ミ ド サ イ ズ マ ー カ ー と し て , BAC-Tracker

Supercoiled DNA ladder (Epicentre Biotechnologies,Madison,WI)およ

びsupercoiled DNA ladder(New England BioLabs, Beverly,MA)を用い

た。

6 プラスミド制限酵素断片長多型(RFLP)解析

190 kbpプラスミド,95 kbpプラスミドおよび165 kbpプラスミドを抽出後,

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制限酵素SalI(東洋紡 , 大阪)もしくは,EcoRI(東洋紡)により37℃で2時

間消化し,電気泳動後エチジムムブロマイド染色し,UV光下にて観察した。

なお,DNAサイズマーカーとしてλDNA HindⅢdigestを(New England

BioLabs)用いた。

7 薬剤耐性プラスミド伝達性試験

供与株は表1に示した農場毎の14株,受容株は大腸菌XL1-blue株(NA耐

性)を用い,Tryptic Soy Broth(Becton Dickinson, Sparks,NV)に,37℃

で一夜,前者は0.5 ml静置培養,後者は2 ml振盪培養をそれぞれ行った。こ

の両者を混合した菌液を,37℃で8時間培養し,さらに室温にて24時間静置

培養を実施した。その後,混合培養液を薬剤含有(NA:100 µg/mlとABPC

またはSM:50 µg/ml)のDHL培地(栄研化学,東京)に接種し,37℃24時

間培養した。発育したコロニーを継代後,プラスミドプロファイル,薬剤感

受性試験,RFLP解析を実施した。

8 Pulsed-field gel electrophoresis (PFGE)による遺伝子型解析

ゲノムDNAはAkibaらの方法(2)により抽出し,XbaIもしくはBlnI(と

もにタカラバイオ,滋賀))で消化した。PFGEにはCHEFF DR Ⅲ(Bio-rad)

を用い,1% megabase agarose gel (Bio-rad)にて0.6 V/cm,パルスタイ

ム 5‐ 50 秒 の条 件 下で 22 時間 電気 泳 動し た。 DNAサイ ズマ ーカ ーは

Lambda Ladder PFG Marker(New England BioLabs)を使用した。PFGE

泳 動 像 は Bio Numerics software (Applied Maths BVBA ,

Sint-Martens-Latem,Belgium)を用いて解析し,系統樹解析は,unweighted

pair group method arithmetic mean(UPGMA)法を用いて実施した。なお,

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過去の報告(81)から,80 %以上の類似度を示した株を同一群とした。

9 gyrA遺伝子の塩基配列解析

16-117株 gyrAのPCR増幅産物は,ABI Prism BigDye Terminator v3.1

Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用い,ABI

3100 DNA Genetic Analyzer(Applied Biosystems)により塩基配列解析を

行 い , Basic Local Alignment Serach Tool ( BLAST :

http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/ ) に て , 得 ら れ た 塩 基 配 列 に つ い て S.

Typhimurium LT2株(Gene Accession Number:AE006468.1)との相同性

を検索した。

結果

1 同一農場で分離された菌株の比較と2004年に分離された農場間の疫学調査

試験に供した各農場由来3株は,下記に記載された結果において,代表株

(A農場:4-70株,B農場:4-117株,C農場:6-95株,D農場:7-63株,E農

場:7-82株,F農場:7-115株,G農場:7-131株,H農場:10-112株,I農場:

16-74株,J農場:16-99株,K農場:16-117株,L農場:16-120株,M農場:

16-132株,N農場:16-144株)とすべて一致した結果となった。

2004年にサルモネラ症が発生した6農場( I,J,K,L,MおよびN農場)

を調査した結果,IおよびN農場は同系統の農業組合に所属し,集乳車,臨床

獣医師および飼料会社が同一であり,疫学的関連性が認められた。その他の

農場間では疫学的関連性が確認されなかった。牛サルモネラ症発生時期は,I

およびJ農場の発生期間内にLおよびN農場とM農場が続発した。また, I,L

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およびN農場間とJおよびM農場間の距離はそれぞれ7‐10 kmであった。

2 分離株の表現型別

薬剤耐性型は6種類に分類され(①ABPC, SM, TC, CPおよびSUL耐性,②

ABPC, SM, KM, TC, CPおよびSUL耐性,③ABPC, SM, TCおよびSUL耐性,

④SMおよびSUL耐性,⑤ABPC, SM, KM, TCおよびSUL耐性,⑥ABPC, SM,

TC, CP, SULおよびNA耐性),4剤以上耐性を示す多剤耐性株がG農場以外の

13農場 (92.9%)と大多数を占めていた(表1)。また,薬剤耐性型はDT104に

特徴的なABPC, SM, TC, CPおよびSULの5剤耐性が6農場(A,C,D,E,F

およびH農場,42.9%)と最も多かった(表1)。なお,CEZ,CTF,TMPお

よびERFXの4剤については,耐性株が確認されなかった。

ファージ型別ではDT104に典型的な5薬剤耐性型が分離された6農場(A,

C,D,E,FおよびH農場)に加え,その他の薬剤耐性型を示した4農場( I,

K,LおよびN農場)の計10農場(71.4%)でDT104と型別された。また,DT208

と型別されたものが2農場(JおよびM農場,12.3%),ファージ型別不能およ

びいくつかのファージには感受性を示したが,既知の型別に該当しないもの

(RDNC:reacted but did not conform with clear phage types)がそれぞ

れ1農場(BおよびG農場)で確認された(表1)。

3 分離株の遺伝子型別およプラスミド解析

PCRにより各遺伝子を検索した結果,mdhはすべての株で増幅産物が確認

され,class I integlonでは1000および1200 bpが検出されたものが10農場(A,

C,D,E,F,H,I,K,LおよびN農場,71.4%)で,1000 bpのみが2農場

(JおよびM農場,12.3%)で確認された(表1)。DT104特異配列である162

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bpの増幅産物は,10農場(A,C,D,E,F,H,I,K,LおよびN農場,71.4%)

で確認され,spvCはB農場以外の13農場(92.9%)で増幅産物が認められた。

プラスミドプロファイルでは5つの型に分類され(①95 kbp,②190, 45, 7.2

および3.5 kbp,③95, 3.3および2.4kbp,④95および4.3kbp,⑤165kbp),

95 kbpプラスミドのみを保有するものが9農場(A,C,D,E,F,H, I,L

およびN農場,64.3%)と最も多かった(表1)。その他では,165 kbpプラス

ミド単独保有が2農場(JおよびM農場,12.3%),190 kbpと他3つの低分子

プラスミドを保有するものがB農場で,95 kbpと他2つもしくは1つの低分子

プラスミドを保有するものが2農場(GおよびK農場,12.3%)で確認された (表

1)。

薬剤耐性プラスミド伝達性試験ではB農場由来株(4-117株)を供給株とし

て用いた試験のみで,トランスコンジュガントが得られた。得られたトラン

スコンジュガントは供給株の190 kbpプラスミド(図1,矢印)と同等のプラ

スミドを保有し,トランスコンジュガントの薬剤耐性試験では,供給株と同

じABPC, SM, KM, TC, CPおよびSULの6薬剤に耐性を示していた。また,

このプラスミドと95 kbpおよび165 kbpのRFLP解析を実施した結果,95 kbp

と165 kbpプラスミドがSalI消化像で10本中8本(図2A),EcoRI消化像で7本

中4本(図2B)のバンドが一致し,190 kbpプラスミドは他の2つと泳動像が

大きく異なっていた。

PFGE解析ではXbaIで3つ(X1~3:図3A),BlnIで4つ(B1~4:図3B)の

クラスターに分類された。該当する株が最も多いクラスターはX1およびB1

で,共通した10株がこれらのクラスターに分類され,さらに前者では 2つ,

後者では4つのPFGEプロファイルに細分化された(図3)。

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13

4 塩基配列解析

NA 耐 性 が 確 認 さ れ た 16-117 株 の gyrA に つ い て , BLAST に よ り S.

Typhimurium LT2株(Gene Accession Number:AE006468.1)と比較した

結果,87番目のアスパラギン酸(Asp87)がアスパラギンAsnに置換されて

いることが確認され,その他は一致していた (図4)。

考察

本章では1農場毎に3株解析したが,農場毎の3株は薬剤耐性型,PFGE型等

のすべての性状が一致した。このことは,各農場の牛サルモネラ症は農場内

に単一の株が侵入したことにより発生したと推測された。

ファージ型別では,福島県においても1992年にはDT104が分離され(A農

場),その後も多数を占めたことが確認された(表 1)。このことは,DT104

が国内の牛由来株で 1990年代初期に分離され,その後増加したという

Sameshimaら(69)の報告と一致した。

PCRにて検索した Integlonとは,DNA鎖切断と再結合に関与する integrase

の下流に様々な遺伝子断片を挿入蓄積する単位であり,現在クラスⅠ‐Ⅳの

4種類が報告されている(50)。DT104の多剤耐性遺伝子は classⅠ integlonに

担われており, DT104の一般的な耐性パターンでは,染色体上に2つの

integlonが存在する(37)。DT104の integlon 3 ’-末端領域にはサルファ剤耐

性遺伝子,PCR増幅産物の1000 bpはSM耐性遺伝子であるaadAが,1200 bp

にはABPC耐性遺伝子であるblaPSE1がコードされ,CP耐性遺伝子 (floR)とTC

耐性遺伝子 (tetR)は,この2つの integlon間に存在し,ひとまとめにされてい

る(6,37,50,70)。ファージ型別は国内では国立感染症研究所のみで実施

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14

可能であり,家畜衛生分野では,ほぼ実施されていないのが現状である。本

章において,DT104に特徴的な2つの integlon増幅産物(1000 kbpおよび1200

kbp)が確認され,それらではDT104特異配列を標的としたPCRについても

すべての株で陽性であった(表1)。このことから, integlonおよびDT104特

異配列を標的としたPCRの実施はDT104のスクリーニング検査として応用

可能であることが示唆された。

ファージ型別検査でDT104と型別された株は,すべて95 kbpのプラスミド

を保有し(表1),2つの制限酵素を用いたPFGE解析においても,すべての株

がそれぞれ同じクラスター内(X1およびB1)に属していた。また,X1では2

つのプロファイルに細分化されたのに対し,B1では4つのプロファイルに分

類された(図3)。6カ国から分離されたDT104の遺伝子型別ではすべての株

で,95 kbpプラスミドを保有しており,PFGEではXbaIよりBlnIの識別能力

が高かったと報告されている(12,56)。このことは,本章のDT104遺伝子

解析結果と一致しており,国内において分離されたDT104においてもBlnIを

用いたPFGE解析が有用であることが示唆された。

DT104の薬剤耐性についてはこの株の典型的な薬剤耐性型である ABPC,

SM, TC, CPおよびSULの5剤耐性の他に,ABPC, SM, TCおよびSULの4剤耐

性株,ABPC, SM, TC, CP, SULおよびNAの6剤耐性株についてもDT104と型

別された(表1)。国内ではCP感受性4耐性DT104の報告はされていない(23,

47,49)。DT104の多剤耐性はSalmonella genomic island 1 (SGI1)と呼ばれ

る染色体上の約43 kbpの領域に存在している(51)。その3 ’側,約13 kbpは

class I integlon構造をとっており,In104とも呼ばれる(51)。SGI1には In104

内の変異に基づくバリアントが報告されており(17),16-74株,16-120株お

よび16-144株に認められたABPC, SM, TCおよびSUL耐性はSGI1-Eと呼ば

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れるバリアント保有株の薬剤耐性型と一致する。SGI1-Eは分子内における

IS6100転移に基づく floR遺伝子の不活化と,それに引き続く IS6100配列を介

した相同組換えにより派生したのではないかと考えられている( 17)。他の

DT104と同じPFGE型に属した16-74株,16-120株および16-144株について

も,上記の変異により floR遺伝子が不活化した結果,CP感受性となったので

はないかと考えられた。

オールドキノロン系である NAに耐性を示した 16-117株については,

gyrA遺伝子の変異が確認された(図4)。キノロン系薬剤耐性はDNAジャイ

レースであるgyrA,gyrB,parC およびparE領域における遺伝子の変異が

耐性メカニズムに関与しており,サルモネラにおいて,gyrAが特に重要で

あると考えられている(25,36)。このGyrAの主要なアミノ酸が1箇所置換

することによって,NAなどのオールドキノロン系薬剤に耐性を獲得し,ニ

ューキノロン系薬剤の感受性も低下する(63,66)。このことから,16-117

株では,GyrAのAsp87がAsnへ置換されたことにより,NA耐性を獲得した

と考えられる。Esakiら(29)は国内における牛由来DT104 NA耐性株はす

べてGyrAのAsp87がGlyに置換したものと報告しており,本章の結果とは異

なっていた。ニューキノロン耐性S. Typhimuriumでは今回確認されたアミ

ノ酸置換に加えさらにGyrAでSer83→Phe,ParCでSer80→Argと3アミノ

酸の同時置換が報告されている(52)。ニューキノロン系薬剤の乱用によっ

て本章で認められたNA耐性株が,さらにgyrAやparCの変異を蓄積し,ニュ

ー キ ノ ロ ン 系 薬 剤 に 耐 性 を も つ 可 能 性 が あ る 。 キ ノ ロ ン 耐 性 S.

Typhimuriumは世界的な規模で増加が確認されており( 9),ニューキノロ

ン系薬剤はヒトのサルモネラ症の第1選択薬であることからも(4,10),今

後その耐性動向には注意が必要である。

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1993年に分離された4-117株(B農場)はプラスミド伝達性試験からABPC,

SM, KM, TC, CPおよびSUL耐性遺伝子が存在する190 kbp 薬剤耐性プラ

スミド保有株であることが確認された(表1,図1)。また,この株は病原性

プラスミドに存在する spvC遺伝子が検出できず,RFLP解析においても190

kbp 薬剤耐性プラスミドとST特異的病原性プラスミドでは,異なる泳動像

を示した(図2)。このことから,190 kbpプラスミドはサルモネラ病原性プ

ラスミドと全く異なる薬剤耐性プラスミドであることが示唆された。

2004年に分離されたJおよびM農場由来株(16-99株,16-132株)は,フ

ァージ型DT208と型別された(表1)。1980年から2000年に国内でヒトおよ

び家畜から分離されたS. Typhimurium 221株の型別結果では,DT208は3

株のみ確認され,本章と同様のABPC, SM, KM, TC, SUL耐性については,

1株のみであった(43)。本章で分離されたDT208(16-99株,16-132株)は,

病原性プラスミド上の spvC 遺伝子が確認されたこと,プラスミドRFLP解

析 か ら , こ の 分 離 株 が 保 有 す る 165 kbp プ ラ ス ミ ド が 95 kbp S.

Typhimurium特異的病原性プラスミドと近縁なプラスミドであったことか

ら,この株はサルモネラ病原性プラスミドに何らかの遺伝子が挿入された

165kbp病原性プラスミドを保有していたと考えられた。

2004年に分離された I,LおよびN農場とJおよびM農場から分離された株

は,それぞれの農場間で表現型および遺伝学的性状についてすべて一致して

いた(表1)。農場間の疫学調査では IおよびN農場間にのみ関連が認められ

ただけであったが, I,LおよびN農場とJおよびM農場で牛サルモネラ症発

生時期が一致していた。このことから, I,LおよびN農場間とJおよびM農

場間で,それぞれ同一株の伝播により牛サルモネラ症が発生したと考えられ,

疫学的関連性が見出せない IおよびL農場間もしくはLおよびN農場間とJお

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よびM農場間においても,発生農場からのサルモネラの伝播の可能性が示唆

された。このことから,サルモネラを保菌している可能性がある野鳥やネズ

ミのような野生動物侵入防止や農場周辺の消石灰散布や靴底消毒等の徹底

により,飼養衛生管理を向上し,伝染病の侵入防止に努めることが重要であ

ると考えられた。

以上,4剤以上耐性を示す株の分離率は14株中13株と非常に高率であり,

国内のDT104について典型的な5剤耐性のみならずCP感受性4剤耐性株やNA

耐性株の国内の存在について明らかにした。また,DT104のスクリーニング

検査法として, integlonとDT104特異配列をターゲットにしたPCRが有用で

あること,PFGEではBlnIで識別能力が高いことを明らかにした。サルモネ

ラの農場間伝播では,牛サルモネラ症発生農場間の疫学的関連性が見出せな

くとも農場間伝播が起こることが示唆された。今後,サルモネラの薬剤耐性

モニタリングを充実し,耐性菌出現状況を把握するとともに,飼養衛生対策

の徹底により農場内外のサルモネラの伝播を防止し,菌への抗生剤暴露を最

小限に抑える必要がある。

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表1 1992年から2004年に福島県で分離されたS. Typhimuriumの性状

mdhclassⅠ

integron(bp)

DT104特異

配列spvC

A 4-70 1992  ABPC, SM, TC, CP, SUL DT104 95 + 1000, 1200 + +

B 4-117 1993  ABPC, SM, KM, TC, CP, SUL UT 190, 45, 7.2, 3.5 + - - -

C 6-95 1993  ABPC, SM, TC, CP, SUL DT104 95 + 1000, 1200 + +

D 7-63 1993  ABPC, SM, TC, CP, SUL DT104 95 + 1000, 1200 + +

E 7-82 1993  ABPC, SM, TC, CP, SUL DT104 95 + 1000, 1200 + +

F 7-115 1993  ABPC, SM, TC, CP, SUL DT104 95 + 1000, 1200 + +

G 7-131 1993  SM, SUL RDNC 95, 3.3, 2.4 + - - +

H 10-112 1993  ABPC, SM, TC, CP, SUL DT104 95 + 1000, 1200 + +

I 16-74 1993  ABPC, SM, TC, SUL DT104 95 + 1000, 1200 + +

J 16-99 1993  ABPC, SM, KM, TC, SUL DT208 165 + 1000 - +

K 16-117 1993  ABPC, SM, TC, CP, SUL, NA DT104 95, 4.3 + 1000, 1200 + +

L 16-120 1993  ABPC, SM, TC, SUL DT104 95 + 1000, 1200 + +

M 16-132 1993  ABPC, SM, KM, TC, SUL DT208 165 + 1000 - +

N 16-144 1993  ABPC, SM, TC, SUL DT104 95 + 1000, 1200 + +

プラスミド(kbp)

分離年    薬剤耐性パターンa)

PCRによる検出c)

分離農場

分離株 ファージ型b)

a) ABPC:アンピシリン, SM:ストレプトマイシン, KM:カナマイシン, TC:テトラサイクリン, CP:クロラムフェニコール, SUL:サルファ剤, NA:ナリジクス酸

b) UT: ファージ型別不能 RDNC:いくつかのファージには感受性を示したが,既知の型別に該当しない

c) +:遺伝子検出 -:遺伝子未検出

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表2 PCRプライマー

標的配列または遺伝子

塩基配列(5’→3’) 増幅産物(bp) 引用文献

mdh TGCCAACGGAAGTTGAAGTG 216 53CGCATTCCACCACGCCCTTC

classⅠinteglon GGCATCCAAGCAGCAAGC 1000, 1200 55AAGCAGACTTGACCTGAT

DT104特異配列a) GTCAGCAGTGTATGGAGCGA 162 49, 65AGTAGCGCCAGGACTCGTTA

spvC TTGTAGCTGCTTATGATGGGGCGG 472 67TGGAGAAACGACGCACTGTACTGC

gyrA CGTTGGTGACGTAATCGGTA 251 24CCGTACCGTCATAGTTATCC

a) 16S-23S rRNAスペーサー領域に存在するDT104関連株の特異配列の増幅

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図1 異なる泳動像を示したS. Typhimuriumのプラスミドプロファイル

Ⅰ:BAC-Tracker Supercoiled DNA ladder,Ⅱ:4‐70株(95 kbp),Ⅲ:

4‐117株(190,45,7.2,3.5 kbp),Ⅳ:7-131株(95,3.3,2.4 kp)

Ⅴ:16-99株(165 kbp),Ⅵ:16-117株(95,4.3 kbp)Ⅶ:supercoiled

DNA ladder,矢印:190 kbp 薬剤耐性プラスミド

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図2 190 kbp,95 kbpおよび165 kbpプラスミドのSalI(A)およびEcoRI(B)

消化によるRFLP像

Ⅰ:190 kbp 薬剤耐性プラスミド,Ⅱ:95 kbpプラスミド,Ⅲ:165 kbp

プラスミド,Ⅳ:λ DNA H indⅢdigest

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図3 1992年から2004年に福島県で分離されたS. Typhimuriumの

制限酵素XbaI (A)およびBlnI (B)を用いたPFGE解析

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図4 16-117株とS. Typhimurium LT2株のgyrAの比較

Ⅰ:S. Typhimurium LT2株 gyrA(上段:アミノ酸,下段:塩基配列)

Ⅱ:16-117株 gyrA(上段:塩基配列,下段:アミノ酸)

下線部:塩基配列変異,アミノ酸置換部位

70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86

Val Gly Asp Val Ile Gly Lys Trp His Pro His Gly Asp Ser Ala Val Trp

GTT GGT GAC GTA ATC GGT AAA TAC CAT CCC CAC GGC GAT TCC GCA GTG TAT

GTT GGT GAC GTA ATC GGT AAA TAC CAT CCC CAC GGC GAT TCC GCA GTG TAT Val Gly Asp Val Ile Gly Lys Trp His Pro His Gly Asp Ser Ala Val Trp

87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103

Asp Thr Ile Val Arg Met Ala Gln Pro Phe Ser Leu Arg Trp Met Leu Val GAC ACC ATC GTT CGT ATG GCG CAG CCA TTC TCG CTG CGT TAC ATG CTG GTG

AAC ACC ATC GTT CGT ATG GCG CAG CCA TTC TCG CTG CGT TAC ATG CTG GTG Asn Thr Ile Val Arg Met Ala Gln Pro Phe Ser Leu Arg Trp Met Leu Val

104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119

Asp Gly Gln Gly Asn Phe Gly Ser Ile Asp Gly Asp Ser Ala Ala Ala GAT GGT CTG GGT AAC TTC GGT TCT ATT GAC GGC GAC TCC GCG GCG GCA

GAT GGT CTG GGT AAC TTC GGT TCT ATT GAC GGC GAC TCC GCG GCG GCA

Asp Gly Gln Gly Asn Phe Gly Ser Ile Asp Gly Asp Ser Ala Ala Ala

120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 144 145

Met Arg Trp Thr Glu Ile Arg Leu Ala Lys Ala Ala His Glu Leu Met ATG CGT TAT ACG GAG ATC CGT CTG GCG AAA ATC GCC CAC GAA CTG ATG

ATG CGT TAT ACG GAG ATC CGT CTG GCG AAA ATC GCC CAC GAA CTG ATG Met Arg Trp Thr Glu Ile Arg Leu Ala Lys Ala Ala His Glu Leu Met

146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161

Ala Asp Leu Glu Lys Glu Thr Val Arg Phe Val Asp Asn Trp Asp Gly GCC GAT CTC GAA AAA GAG ACG GTG GAT TTC GTG GAT AAC TAT GAC GGT

GCC GAT CTC GAA AAA GAG ACG GTG GAT TTC GTG GAT AAC TAT GAC GGT

Ala Asp Leu Glu Lys Glu Thr Val Arg Phe Val Asp Asn Trp Asp Gly

アミノ酸番号

アミノ酸番号

アミノ酸番号

アミノ酸番号

アミノ酸番号

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第二章 国内で初めて分離された牛由来広域セファロスポ

リン系薬剤耐性Salmonella Typhimuriumの性状解析

序論

第一章では1990年代からDT104による牛サルモネラ症が発生したことを

改めて明らかにし,DT104のスクリーニング検査法について示した。さらに,

国内で典型的な5薬剤耐性(ABPC, SM, TC, CPおよびSUL耐性)とは異なる

DT104が存在したこと,疫学的関連性のない農場間での牛サルモネラ症の伝

播について示唆し,飼養衛生意識の向上による伝染病侵入防止の重要性につ

いて示した。

ヒトの非チフス性サルモネラ症で,乳幼児や高齢者が感染した場合には,

抗生物質投与が必要となり,特に小児の場合,ニューキノロンには関節軟骨

の損傷作用があるため,ESCが選択されることが多い(7,14,30,40)。

そのため,ESC耐性サルモネラの出現は公衆衛生上,非常に重要な問題であ

る。国内では,Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring

(JVARM)と呼ばれる家畜衛生分野での薬剤耐性モニタリングが行われて

いる。この調査で1999年から2005年までに分離された牛由来サルモネラにお

いて,セファロスポリン系薬剤についてはすべて感受性であったが( 8,28, 29,

47),2007年,福島県において異なる2つの牛サルモネラ症発生農場でESC

耐性S. Typhimuriumが分離された。

本章では国内で初めて分離された牛由来ESC耐性S. Typhimuriumについ

て,ESC耐性の機序,遺伝子型の特徴や表現型別を明らかにし,諸外国で報

告されている株 (21,23,32,57)との比較,検討を行った。

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材料および方法

1 分離株についての疫学的概要

供試株として,S. Typhimurium 19-80株およびL-3695株を用いた。

19-80株は2007年7月福島県で,搾乳牛の牛サルモネラ症下痢便から分離さ

れた。症状は発熱,乳量低下,下痢および流産が確認され,牛群全体に広が

った。当該農場は過去3年間,牛の導入がなかった。

L-3695株は2007年11月福島県で,交雑種育成農場の子牛下痢便から分離さ

れた。症状は2週齢から3ヶ月齢の子牛で下痢,敗血症が認められた。当該農

場は通年隔週毎に山形県から子牛を10頭程度導入していた。

この2つの農場間の距離は約55 kmであり,農場間の疫学的関連性は確認さ

れなかった。また,両農場ともに過去に牛サルモネラ症の発生はなく,牛サ

ルモネラ症と診断される前に,CEZの投与を実施していた。

2 使用菌株

19-80株およびL-3695株はDHL寒天培地(栄研)のコロニー形態を基に分

離し,既報の生化学性状検査(26)に基づき同定した。サルモネラ血清型別

はKauffmann-Whiteの抗原構造に基づく分類(64)に従い,サルモネラO抗

原およびH抗原の抗血清(デンカ生研,東京)を用いた方法により決定した。

なお,分離株は試験に供するまで,25%グリセロール加トリプトソーヤ培地

(日水製薬)にて-80℃で保存した。

3 薬剤感受性試験

平板寒天希釈法による最小発育濃度の測定はCLSI(59)に基づき実施した。

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26

なお,S. aureus ATCC 29213, E. faecalis ATCC 29212, E. coli ATCC 25922

および P. aeruginosa ATCC 27853 を標準管理菌株として用いた。供試薬剤

は,ABPC,CEZ,セフォキシチン(CFX),CTF,セフタジジム(CAZ),

セフトリアキソン(CTRX),セフェピム(CFPM),SM,KM,ゲンタマイ

シン(GM),TC,CP,NAおよびERFXの14薬剤を用いた。ブレイクポイン

トはCFTおよびERFXでは,既知の報告(28,41)に準じて設定し,その他

の薬剤については,CLSI(60)に基づき設定した(60)。

4 分離株のファージ型別

国立感染症研究所に依頼し,英国のPublic health Laboratory Service の

手法(4)に基づき実施した。

5 βラクタマーゼ検出試験

分離株のβラクタマーゼ型別はP/Cアーゼテスト(日水製薬)により,19-80

株およびL-3695株を試験紙に接種し,ぺニシリナーゼおよびセファロスポリ

ナーゼ産生能を確認した。

6 プラスミドプロファイル

プラスミドDNAはKadoとLiuの方法(45)により抽出し, 1%アガロース

ゲルを用い,電気泳動を行い,エチジウムブロマイドにより染色しUV光下に

て 観 察 し た 。 な お , プ ラ ス ミ ド サ イ ズ マ ー カ ー と し て , BAC-Tracker

Supercoiled DNA ladder (Epicentre Biotechnologies), S. Typhimurium

16-74株95 kbpプラスミド保有およびS. Typhimurium 16-99株保有165 kbp

プラスミドを用いた。

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7 プラスミド伝達性試験

供与株として19-80株,L-3695株を,受容株として大腸菌ML1410株(NA,

リファンピシン耐性)を用い実施した(1)。方法はTryptic Soy Broth(Becton

Dickinson)にて37℃で一夜,前者は0.5 ml静置培養,後者は2 ml振盪培養

をそれぞれ行った。この両者を混合した菌液を 37℃で8時間培養し,さらに

室温にて24時間静置培養を実施した。その後,混合培養液を薬剤含有(リフ

ァンピシン:100 µg/ml,CEZ:50 µg/ml)のDHL培地(栄研化学)に接種

し,37℃で24時間培養した。得られたトランスコンジュガントについては,

薬剤感受性試験,プラスミドプロファイル,制限酵素PstIを用いたプラスミ

ドRFLPおよびblaCMY-2遺伝子プローブを用いたサザンハイブリダイゼーシ

ョンを実施した。

8 PCR

PCRでは表3に記載されているblaCMY-2,blaTEM-1, spvBおよびプラスミド

のレプリコンタイピングに関わる遺伝子( IncFIB, IncFIIA, IncI1および

IncA/C)について実施した(20,48)。それぞれのPCRによる増幅産物は,

ABI Prism BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit ( Applied

Biosystems ) を 用 い , ABI 3100 DNA Genetic Analyzer ( Applied

Biosystems)により塩基配列解析を行い,BLASTにより既報の遺伝子との相

同性を確認した。

9 サザンハイブリダイゼーション

DIG DNA Labeling and Detection Kit (Roche Diagnostics, Basel,

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28

Switzerland) を用いて, spvB, IncFIIA, I ncFIB, IncA/C, IncI1および

blaCMY-2遺伝子のジゴキシゲニン標識DNAプローブ作製し,Gキャピラリーブ

ロッターCセット(TAITEC,埼玉)を用いた下降式バット法によりメンブラ

ンに転写させたDNAから上記の遺伝子を検出した。分子量マーカーは,DNA

molecular-weight marker ⅡDIG-labeled,DNA molecular-weight marker

IV DIG-labeled (Roche Diagnostics), 2.5-kbpDNA ladder (タカラバイオ ) ,

S. Typhimurium 16-74株保 有 95kbp プ ラスミ ド お よび S. Typhimurium

16-99株保有165kbpプラスミドを用いた。

10 PFGE解析

ゲノムDNAをAkibaらの方法(2)により抽出し,XbaI(タカラバイオ)

もしくはBlnI(タカラバイオ)で消化した。PFGEは,CHEFF DR Ⅲ(Bio-rad)

を用い,1% megabase agarose gel (Bio-Rad)にて,0.6 V/cm,パルスタ

イム 5‐ 50秒の条件下で 22時間電気泳動した。 DNAサイズマーカーは,

Lambda Ladder PFG Marker(New England BioLabs)を使用した。

結果

1 分離株の表現型別

薬剤感受性試験では19-80株およびL-3695株はCEZのみならず,ESCであ

るCFX, CTF, CAZおよびCTRXについても耐性を示した(表4)。その他の薬

剤では,19-80株はABPC, SM, KMおよびTCに,L3695株はABPC, SM, KM,

GM, TCおよびCPに耐性を示した。ファージ型別では19-80株およびL-3695

株ともにファージ型別は不能であり,βラクタマーゼ試験では両株からペニ

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29

シリナーゼおよびセファロスポリナーゼの両酵素が検出された。

2 PCRによる遺伝子検索と分離株のPFGE解析

19-80株とL-3695株ともにblaCMY-2,blaTEM-1および spvB 遺伝子が検出さ

れた(表5)。PCRによるプラスミドのレプリコンタイピングでは, 19-80株

が IncFIB, IncFIIAおよび IncI1と型別され,L-3965株が IncFIB, IncFIIA

および IncA/Cと型別された(表5)。

PFGE解析ではXbaIによる消化像で19-80株およびL-3695株がそれぞれ16

および17のDNA断片が28 kbpから770 kbpのDNAサイズの範囲で確認され

た。一方,BlnIでは 19-80株およびL-3695株で 10および 9のDNA断片が 85

kbpから790 kbpのDNAサイズの範囲で確認された。両株間のDNA断片像の

比較ではXbaIおよびBlnIともに,3本のDNA断片(XbaI:155 kbp,388 kbp

および503 kbp,BlnI :104 kbp,145 kbpおよび160 kbp)でバンドの相違

が確認された(図5)。

3 プラスミドおよびトランスコンジュガント解析

19-80株は95 kbpと165 kbpの2つのプラスミドを保有しており,サザンハ

イブリダイゼーションの結果から, 95 kbpプラスミドから IncI1および

blaCMY-2,165 kbpプラスミドから IncFIIA,IncFIBおよびspvBが検出された

(表5,6,図6)。一方,L-3965株は165 kbpと190 kbpの2つのプラスミドを

保有しており,サザンハイブリダイゼーションの結果から,190kbpプラスミ

ドから IncA/CおよびblaCMY-2,165 kbpプラスミドから19-80株の165 kbpと同

様に IncFIIA,IncFIBおよびspvBが検出された(表5,6,図6)。また,分子

量マーカーとして用いた95 kbpプラスミド保有S. Typhimurium 16-74株で

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30

は,IncFIIA,および spvB ,165 kbpプラスミド保有S. Typhimurium 16-99

株では IncFIIA, IncFIBおよびspvBが検出された(表5,6,図6)。

プラスミド伝達性試験では19-80株およびL-3695株の両株からトランスコ

ンジュガントが得られた。なお,19-80株およびL-3695株から得られたトラ

ンスコンジュガントをそれぞれ19-80TCおよびL-3695TCとした。19-80TCは

95 kbpプラスミドを保有し,PCRおよびサザンハイブリダイゼーションから

IncI1およびblaCMY-2が検出された(表5,6,図6)。一方,L-3695TCは190 kbp

プラスミドを保有し,PCRおよびサザンハイブリダイゼーションから IncA/C

および blaCMY-2 が検出された。また,βラクタマーゼ遺伝子の検出では

19-80TCおよびL-3695TCともにblaCMY-2遺伝子が検出され(表5,6,図6),

βラクタマーゼ検出試験では,セファロスポリナーゼのみ検出された。

薬剤感受性試験では19-80TCおよびL-3695TCともにセファロスポリン系

であるCEZおよびCFXに耐性を示し,L-3965TC株ではさらにSM,GM,TC

およびCPに耐性を示した(表4)。

トランスコンジュガントの PstI を用いたプラスミド RFLP解析では,

19-80TCが保有する95 kbp IncI1プラスミドとL-3695TCが保有する IncA/C

プラスミドは全く異なる泳動像を示した(図7A)。また,このプラスミドRFLP

でのblaCMY-2プローブを用いたサザンハイブリダイゼーションでは,19-80TC

で0.8 kbpおよび2.5 kbpに,L-3695TCでは12.5 kbpおよび0.8 kbpにシグナ

ルが観察された(図7B)

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考察

本章で解析したS. Typhimuriumは第4世代セファロスポリンを除くESC

に耐性を示し,その他アミノグリコシド系,テトラサイクリン系など多くの

薬剤に耐性を示した(表4)。また,βラクタマーゼ検査では両株ともにペニ

シリナーゼおよびセファロスポリナーゼが検出され,PCRではblaCMY-2およ

びblaTEM-1のβラクタマーゼ遺伝子が確認された(表 5)。ESC耐性に関与す

るβラクタマーゼの代表的なものとして,Ambler class Aの基質拡張型βラ

クタマーゼとAmbler class CのAmpC βラクマターゼがある(16,18)。前

者に関連する遺伝子はTEM,SHVおよびCTX-M型があるが,本章で確認さ

れた blaTEM-1はペニシリナーゼ産生に関わる遺伝子であり,ペニシリンや

ABPCなどのペニシリン系薬剤を分解し,ESCは分解できないことが知られ

ている(7,18,42)。 一方,後者に関連する遺伝子はセファロスポリナー

ゼを産生するCMY,ACCおよび型があり,これらはCFXなどのセファマ

イシン系やESCを分解するが,CFPMなどの第4世代セファロスポリンは分解

できない(34,46,62,86)。このことから,19-80株およびL-3695株とも

に,blaTEM-1はペニシリン系薬剤耐性に関与し,AmpC βラクタマーゼであ

るblaCMY-2により,セファマイシン系およびESCに耐性となったことが示唆さ

れた。

19-80株およびL-3695株が保有する165 kbpプラスミドには,サザンハイブ

リダイゼーションの結果から spvB, IncFIB, IncFIIAが検出された(表6)。

本 章 で 用 い た PCR に よ る プ ラ ス ミ ド レ プ リ コ ン タ イ ピ ン グ で は S.

Typhimuriumの95 kbp病原性プラスミドは IncFIIAに型別され(20),spvB

などの病原性に関与する遺伝子が存在しており( 68),分子量マーカーとし

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て用いた95 kbpプラスミド保有株では IncFIBは検出されなかった(図6)。よ

って,確認された165 kbpプラスミドは,95 kbp S. Typhimurium病原性プ

ラスミドと IncFIBプラスミドが結合したことにより,165 kbpにサイズアッ

プされたものと推察された。

プラスミド伝達性試験により,19-80およびL-3695株からそれぞれトラン

スコンジュガント (19-80TCおよびL-3695TC)が得られ,これらの株はCEZ,

CFXに耐性を示しており,blaCMY-2遺伝子が検出された(表4,5)。19-80TC

およびL-3695TCはそれぞれ95 kbpと190 kbpプラスミドを保有しており,

PCRおよびサザンハイブリダイゼーションの結果から,95 kbp,190 kbpプ

ラスミドはそれぞれ IncI1と IncA/Cと決定され,両プラスミドにblaCMY-2遺伝

子が存在していた(表6,図6)。このことから,19-80株およびL-3695株は

blaCMY-2を乗せた自己伝達可能な薬剤耐性プラスミドを保有していることが

明らかとなった。さらに,190 kbpプラスミドを保有するL-3695TCはセファ

ロスポリン系薬剤に加え,SM,GM,TCおよびCPに耐性を示していた。こ

のことから,190 kbp IncA/Cプラスミドは多剤耐性に関与することが示唆さ

れた。Matasejeら(57)は,カナダで分離されたCFX耐性サルモネラが保有

する代表的な blaCMY-2遺伝子保有プラスミドは IncI1および IncA/Cプラスミ

ドであると報告しており,本章で解析したプラスミドのレプリコンタイピン

グと一致した。

blaCMY-2が存在するプラスミドの性状を確認するため,PstIにより,プラス

ミドを消化し,blaCMY-2標識プローブでサザンハイブリダイゼーションを実施

した。その結果,95 kbp IncI1プラスミドでは2.5 kbpおよび0.8 kbpに,190

kbp IncA/Cプラスミドでは12.5 kbpおよび0.8 kbpの位置にそれぞれシグナ

ルが得られた(図7)。この結果は,米国で報告されたサルモネラが保有する

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blaCMY-2を乗せたプラスミドの性状と一致した(21,32)。

制限酵素XbaIおよびBlnIを用いたPFGE解析では,両酵素ともにそれぞれ

3本のバンドの相違が確認された(図5)。PFGEでの2から3本のバンドの相違

は,近縁な株であるとされていることから( 80),この両株間は,同じ遺伝

子型に属し,遺伝学的に近縁な株であることが示唆された。

分離株のファージ型別ではどちらの分離株も型別不能であった。Davisら

(23)によると,米国北西部地域において,2000年から2006年の間にファー

ジ型別不能で同じPFGE型に属す牛由来S. Typhimurium(TYP035,TYP187)

の増加が報告されており,これらの株の半数以上がESC耐性株であった。

19-80株および L-3695株と Davisら (23)が報告した PFGE型 TYP035および

TYP187とのPFGEを比較したところ, 19-80株とTYP035は非常に類似して

いる可能性が示された (図8)。ESC耐性株は公衆衛生上非常に重要であり,流

行の有無を確認することが必要であることから,各国で分離されたESC耐性

S. Typhimuriumについて,分子疫学的手法を用いた比較検討が必要と考え

られた。

ESC耐性株が分離された2つの農場間に,疫学的関連性は認められなかっ

たが,両農場ともに下痢,発熱等の症状を示していた牛サルモネラ症発症牛

は,本症と診断される前に,セファロスポリン系薬剤であるCEZの投与され

ていた。Suら(76)は,患者の傷口から分離されたSalmonella Anatusおよ

びEscherichia coliが,ESCであるCTRX投与2週間後に両菌がCTRXに耐性を

示したことを報告した。上記の報告は抗生物質の投与が微生物側の選択圧の

上昇につながり,薬剤耐性菌選択の一助として働く可能性を証明しており,

blaCMY-2が自己伝達可能なプラスミド上に存在していたことから,本章の 2症

例で確認 された 診 断前のセ ファロ ス ポリン系 薬剤で あ る CEZ使用 が S.

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Typhimuriumへの選択圧上昇につながり,同系統の薬剤であるESC耐性に関

与した可能性があると考えられた。

以上,国内で初めて分離されたESC耐性S. Typhimurium2株は,遺伝学的

に非常に近縁であり,AmpC型 βラクタマーゼをコードするblaCMY-2により

ESC耐性を示し,この遺伝子は自己伝達可能な IncI1もしくは IncA/Cプラス

ミドに存在していることを明らかにした。これらのプラスミドは自己伝達可

能であり,さらに190 kbp IncA/Cプラスミドは,セファロスポリン系薬剤の

他,少なくとも4つ以上の薬剤耐性に関与していた。このことから,blaCMY-2

遺伝子やその他の薬剤耐性遺伝子が接合により,他の菌に伝達する可能性が

ある。今後は,多剤耐性に関与するプラスミドの保有状況を注視し,サルモ

ネラ症を疑う場合,早期診断と早期通報により,適切な薬剤使用を指導し,

いち早く牛サルモネラ症発生農場の清浄化を達成することが薬剤耐性菌の出

現と拡大防止に重要と考える。

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表3 使用したプライマー配列

プライマー     塩基配列 (5'→3') 標的遺伝子 Accession no. 増幅産物 (bp) 引用文献

CMY-2 FW ATGATGAAAAAATCGTTATGCT bla CMY-2 X91840 1146 48

CMY-2 RV TTATTGCAGCTTTTCAAGAATGCG

TEM-1 FW ATGAGTATTCAACATTTTCG bla TEM-1 AB194682 861 48

TEM-1 RV TTACCAATGCTTAATCAGTG

spvB FW TGTCAGCAGTTGCATCATCA spvB AE006471 573 75

spvB RV GGGCGATTGTAGAGGAATCA

FIB FW GGAGTTCTGACACACGATTTTCTG repA (IncFIB) M26308 702 21

FIB RV CTCCCGTCGCTTCAGGGCATT

FIIA FW CTGTCGTAAGCTGATGGC repA (IncFIIA) AE006471 270 21

FIIA RV CTCTGCCACAAACTTCAGC

I1 FW CGAAAGCCGGACGGCAGAA RNAI (IncI1) M20413 139 21

I1 RV TCGTCGTTCCGCCAAGTTCGT

A/C FW GAGAACCAAAGACAAAGACCTGGA repA (IncA/C) X73674 465 21

A/C RV ACGACAAACCTGAATTGCCTCCTT

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表4 19-80株,L-3695株およびトランスコンジュガントの薬剤感受性試験結果

ABPC CEZ CFX CTF CAZ CTRX CFPM SM KM GM TC CP NA ERFX

19-80 >512 >512 128 64 128 64 2 512 >512 0.5 256 4 4 ≦0.125

19-80TC 64 >512 32 8 8 8 ≦0.125 2 2 0.5 4 2 512 0.5

L-3695 >512 >512 128 64 128 64 2 >512 >512 32 512 512 4 ≦0.125

L-3695TC 64 512 32 4 8 4 ≦0.125 >512 16 32 128 64 512 0.5

ML1410 1 1 1 ≦0.125 ≦0.125 ≦0.125 ≦0.125 2 2 0.5 4 2 512 0.5

最小発育阻止濃度 (μg/ml) b)

株名a)

a) TC: トランスコンジュガント

b) ABPC:アンピシリン, CEZ:セファゾリン, CFX:セフォキシチン, CTF:セフチオフル, CAZ:セフタジジム, CTRX:セフトリアキソン, CFPM:セフェピム,

SM:ストレプトマイシン, KM:カナマイシン, GM:ゲンタマイシン, TC:テトラサイクリン, CP:クロラムフェニコール, NA:ナリジクス酸, ERFX:エンロフロキサシン

下線で示したMIC値は,耐性を表している

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表5 19-80株,L-3695株およびトランスコンジュガントのプラスミドおよびβラクマターゼ保有状況

19-80 165, 95 FIB, FIIA, I1 bla CMY-2, bla TEM-1 +

19-80TC 95 I1 bla CMY-2 -

L-3695 190, 165 FIB, FIIA, A/C bla CMY-2, bla TEM-1 +

L-3695TC 190 A/C bla CMY-2 -

spvB b)プラスミドレプリコンタイピング

βラクタマーゼ遺伝子

株名 a) プラスミド (kbp)

a) TC:トランスコンジュガント

b) +:PCRによる遺伝子検出 -:PCRによる遺伝子未検出

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表6 19-80株,L-3695株およびトランスコンジュガントのサザンハイブリダイゼーション結果

bla CMY-2 spv B IncFIB IncFIIA IncI1 IncA/C

95 19-80 + - - - + -

165 19-80 - + + + - -

95 19-80TC + - - - + -

165 L-3695 - + + + - -

190 L-3695 + - - - - +

190 L-3695TC + - - - - +

株名 a)各遺伝子プローブを用いたハイブリダイゼーション b)プラスミド

(kb)

a) TC:トランスコンジュガント

b)+:シグナルが観察 -:シグナルが観察されない

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図5 19-80株およびL-3695株のXbaI(A)およびBlnI(B)処理後の

PFGE像

Ⅰ:Lambda Ladder PFG Marker,Ⅱ:19-80株,Ⅲ:L-3695株,矢頭:

株間のバンドの相違位置

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図6 19-80株,L-3695株およびトランスコンジュガントのプラスミドプロ

ファイル(A)と各特異遺伝子プローブ(図左記)を用いたサザンハ

イブリダイゼーション(B)

M:The BAC-Tracker Supercoiled DNA ladder,Ⅰ:19-80株,Ⅱ:L-3695

株,Ⅲ:16-74株(95 kbp),Ⅳ:19-99株(165 kbp),Ⅴ:19-80TC※株,

Ⅵ:L-3695TC株

※ TC:トランスコンジュガント

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図7 blaCMY-2を乗せたプラスミドのPstI処理RFLP像(A)とパネルAにおけ

るblaCMY-2プローブを用いたサザンハイブリダイゼーションによる解析(B)

Ⅰ: DNA molecular-weight markerⅡ DIG-labeled,Ⅱ: 19-80TC,Ⅲ:

L-3695TC株,Ⅳ:DNA molecular-weight marker ⅣDIG-labeled,Ⅴ:2.5kbp

DNA Ladder

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図8 XbaIによる19-80株,L-3695株のPFGE(A)とDavisら (23)が報告した

PFGE型TYP035およびTYP187(B)との比較

A:Ⅰ;L-3695株,Ⅱ;19-80株,Ⅲ;ファージ型DT104(6-95株)

B:Ⅰ;典型的なDT104のPFGE(TYP004),Ⅱ;TYP035,Ⅲ;TYP187

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第三章 福島県の肉用牛育成農場から分離された複数の薬剤

耐性型を示すSalmonella Typhimuriumの解析

序論

第二章では,国内で初めて分離された牛由来ESC耐性S. Typhimurium2株

について性状を解析し,2株共にAmpC型βラクタマーゼであるblaCMY-2によ

りESC耐性を示し,この遺伝子は自己伝達可能なプラスミドに存在している

ことを明らかにした。また,この 2つの分離株はファージ型別不能であり,

PFGEにより遺伝学的に近縁であったことを示した。第一章では,牛サルモ

ネラ症が発生した同一農場由来の株間で,分離株の性状は一致していたが,

第二章で解析した株が分離された肉用牛育成農場で,清浄化される 4ヵ月間

の分離株の薬剤感受性試験を実施した結果,分離株は 5つの薬剤耐性型に分

類された。薬剤感受性試験は治療薬剤の選択に使用されるだけではなく,簡

易に表現型別できる手法として認識されている(31,38)。また,分離株を

型別することは,農場内のサルモネラ浸潤状況,新たなサルモネラの農場内

侵入確認等,牛サルモネラ症発生農場の防疫対策を実施する上で非常に重要

である。

本章では福島県の同一農場で分離され,異なる薬剤耐性型を示した 5株に

ついて,農場内で複数株が存在するのか,あるいは単一株から派生したもの

なのか,単一株由来で派生したのであれば,どのような変化により派生した

のかを分子疫学的手法を用いて検証した。

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材料および方法

1 分離農場の疫学的概要

本農場は約300頭飼養する福島県下の交雑種肉用牛育成農場で,山形県か

ら2週間隔で哺乳牛を10頭程度導入していた。牛サルモネラ症は2007年11月

に哺乳牛舎で発生し,清浄化(2週間隔での全頭菌分離陰性)まで4ヶ月を要

した。なお,哺乳牛舎以外では牛サルモネラ症の発生はなかった。治療薬は

分離菌の薬剤感受性試験を実施する前にはCEZを使用し,結果が判明した後

ではホスホマイシンを使用した。

2 使用菌株

使用菌株はL-3694, L-3695, L-3706, L-3708および19-1820の5つの株を用

いた(表7)。L-3694, L-3695およびL-3706は初発時の2007年11月に哺乳牛の

直腸便から分離され,L-3708および19-1820は発生から約2ヵ月後の2008年1

月に哺乳牛の直腸便から分離された。

3 薬剤感受性試験

分離株およびトランスコンジュガントについては,CLSI(59)に基づいた

平板寒天希釈法により実施した。なお,S. aureus ATCC 29213, E. faecalis

ATCC 29212, E. coli ATCC 25922 および P. aeruginosa ATCC 27853 を標

準管理菌株として用いた。供試薬剤は,ABPC,CEZ,CTF,SM,KM,GM,

TC,CP,TMP,SUL,ERFXの11薬剤を用いた。ブレイクポイントは,CFT

およびERFXでは過去の報告(28,41)により設定し,その他の薬剤につい

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てはCLSI(60)に基づき設定した。一方,トランスフォーマントについては

CLSIに基づいた一濃度ディスク拡散法( 22)により実施した。使用薬剤は

ABPC, CEZ, KM, SM, TC, CP, ホスホマイシン , SUL, TMP/SUL合剤(STX),

NA,オフロキサシンおよびノルフロキサシンを用いた。

4 分離株のファージ型別

国立感染症研究所に依頼し,英国のPublic health Laboratory Service の

手法(4)に基づき実施した。

5 プラスミドプロファイル

プラスミドDNAはKadoとLiuの方法(45)により抽出し,1%アガロース

ゲルを用い電気泳動を行い,エチジウムブロマイドにより染色後,UV光下で

観 察 し た 。 な お , プ ラ ス ミ ド サ イ ズ マ ー カ ー と し て , BAC-Tracker

Supercoiled DNA ladder (Epicentre Biotechnologies)を用いた。

6 PFGE

ゲノムDNAをAkibaらの方法(2)により抽出し,XbaI(タカラバイオ)

もしくはBlnI(タカラバイオ)で消化した。PFGEは,CHEFF DR Ⅲ(Bio-rad)

を用い,1% megabase agarose gel (Bio-Rad)にて,0.6 V/cm,パルスタ

イム 5‐ 50秒の条件下で 22時間電気泳動した。分離株の遺伝子型別は,

Tamamuraら(80)のクラスター型別結果と比較することにより実施した。

7 プラスミド伝達性試験

供与株としてS. Typhimurium 5株,受容株として大腸菌ML1410株(NA,

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リファンピシン耐性)を用い実施した(1)。方法は,第二章同様,Tryptic Soy

Broth(Becton Dickinson)にて37℃で一夜,前者は,0.5 ml静置培養,後

者は,2 ml振盪培養をそれぞれ行った。この両者を混合した菌液を,37℃で

8時間培養し,さらに室温にて 24時間静置培養を実施した。その後,混合培

養液を薬剤含有(リファンピシン: 100 µg/mlとCEZ: 50 µg/mlもしくは

ABPC:50 µg/ml,KM:50 µg/ml,SM:50 µg/ml)のDHL培地(栄研化学)

に接種し,37℃で24時間培養した。得られたトランスコンジュガントについ

て,薬剤感受性試験,プラスミドプロファイル,PCRによるプラスミドレプ

リコンタイピングおよびβラクタマーゼ遺伝子検索を実施した。

8 トランスフォーマントの作出

大腸菌JM109株を用い,分離株からのプラスミドDNAを組み込んだトラン

スフォーマントを作出した。エレクトロポーレーションは MicroPulser

(Bio-rad)を用い,使用説明書に従い実施した。トランスフォーマントは,

Luria-Bertani寒天培地(Becton Dickinson)にCEZ(100 µg/ml),SM(25

µg/ml),KM(25 µg/ml)のいずれかの薬剤を添加した3種類の培地を用い分

離した。得られたトランスフォーマントは薬剤感受性試験,サザンハイブリ

ダイゼーション, IncA/C backbone PCR(85),制限酵素HindⅢおよびSalI

(ともにタカラバイオ)を用いたプラスミドRFLP解析に供した。

9 PCR

表8に記載されているプライマーを用い,βラクタマーゼ型別 (48),プラス

ミドレプリコンタイピング(21),Welchら(85)が報告した IncA/C backmone

領域について検索した。

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10 サザンハイブリダイゼーション

S. Typhimurium 5株および得られたトランスフォーマントを用い,実施し

た。DNAプローブの標識,ハイブリダイゼーションによる遺伝子検出は,DIG

DNA Labeling and Detection Kit (Roche Diagnostics) を用いて実施した。

結果

1 分離株の表現型別

薬剤感受性試験では,分離株は4‐10薬剤に耐性を示し,全て異なる薬剤

耐性型を示した(表7)。2007年11月に分離された3株では,L-3706株がABPC,

KM, SM, TC, CPおよびSULの最も少ない 6剤耐性を示し,L-3694株では

ABPC, CEZ, CTF, SM, GM, TC, CPおよびSULに耐性を示し,L-3695株では

上記にKMが追加された薬剤耐性型を示した。2008年1月に分離された2株で

は,L-3708が最も多いABPC, CEZ, CTF, KM, SM, GM, TC, CP, SULおよび

TMPの10薬剤に耐性を示したのに対し,19-1820はABPC, SM, TC, SULの4

薬剤のみに耐性を示した(表7)。

ファージ型別ではL-3694株,L-3695株,L-3706株およびL-3708株はファ

ージ型別不能だったのに対し,19-1820株はDT104に型別された(表7)。

βラクタマーゼ検出試験では19-1820株ではblaPSE-1,L-3964株はblaCMY-2,

L-3706はblaTEM-1,L-3695およびL-3708株はblaCMY-2およびblaTEM-1が検出さ

れた(表7)。

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2 分離株の遺伝子型別

5株のPFGE結果から,XbaIでは14‐20のDNA断片が得られ,BlnIでは9

‐12のDNA断片が得られた(図9)。L-3694,L-3695,L-3706およびL-3708

はXbaIおよびBlnIでそれぞれ類似した泳動像を示し,XbaIでは3ヵ所(95,

155,165 kbp),BlnIでは2ヵ所(145,210 kbp)のみDNA断片の違いがあ

った。また,XbaI消化によるクラスター解析では,19-1820株がTamamura

ら(80)が分類したクラスター Iに,その他の4株はクラスターⅦに一致した。

プラスミドプロファイルでは5株全て異なるプロファイル像を示した。1つ

のプラスミド(95 kpb)を保有する株は19-1820株のみであった。その他の4

株は2つ以上の高分子プラスミドを保有しており,L-3694株が190 kbpおよび

95 kbp,L-3695株が190 kbpおよび165 kbp,L-3706が165 kbpおよび70 kbp,

L-3708株が190 kbp,180 kbpおよび95 kbpプラスミドを保有していた(表7,

図10)。これらのプラスミドはサザンハイブリダイゼーションの結果から,

L-3694および19-1820株の95 kbpプラスミドでは IncFIIA,spvB遺伝子プロ

ーブでシグナルが得られ,L-3708株の95 kbpプラスミドでは IncI1遺伝子プ

ローブでシグナルが得られた。L-3694株,L3695株およびL-3708株の190 kbp

プラスミドとL-3706株の70 kbpプラスミドでは IncA/C遺伝子プローブでシ

グナルが得られた。L-3695株およびL-3706株の165 kbpプラスミドとL-3708

株の180 kbpプラスミドは IncFIB, IncFIIAおよびspvB遺伝子プローブでシ

グナルが得られた(表9,図10)。

3 トランスコンジュガントの解析

L-3694,L-3695およびL-3708株からはトランスコンジュガントが得られ

たが,L-3706および19-1820株からはトランスコンジュガントが分離されな

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かった。得られたトランスコンジュガントの株名を供与株名にTCと明記し,

これらを解析した結果を表7に示した。L-3694TCおよびL-3695TCではCTF

を除くと薬剤耐性型が親株と同様の耐性パターンを示した。また,前者は190

kbpプラスミドを保有し,IncA/CおよびblaCMY-2が検出され,後者では230 kbp

プラスミドを保有し,IncFIB,IncA/Cと型別,blaCMY-2,blaTEM-1が検出され

た。一方,L-3708TCはSM,SULおよびTMPに耐性を示し,95 kbpプラスミ

ドを保有し,IncI1が検出されたが,βラクタマーゼは検出されなかった。な

お,供与株としてL-3695,L-3708を用いた伝達性試験においても,190 kbp

IncA/Cプラスミドのみを保有し,L-3694TCと同様な薬剤耐性型を示すトラ

ンスコンジュガントが分離された(データ提示せず)。

4 トランスフォーマントの解析

L-3694,L-3695,L-3708株からはblaCMY-2を乗せた190 kbp IncA/C プラ

スミドを保有するトランスフォーマントが得られた。これらは,ABPC, CEZ,

SM, GM, TC, CPおよびSULに耐性を示した。一方,L-3706株からは IncA/C

と型別された70 kbpを保有するトランスフォーマントが検出され,SM, TC,

CPおよびSULに耐性を示した(表10)。IncA/C backbone PCRでは,L-3694,

L-3695およびL-3708株から得られた190 kbp IncA/Cプラスミドを保有する

トランスフォーマントは 13種類の PCR全てで増幅産物が確認されたが,

L-3706から得られた70 kbpプラスミドを保有するトランスフォーマントで

は4‐9領域のPCRで増幅産物は確認されなかった(表11)。blaTEM-1および

spvB遺伝子を乗せた165 kbpもしくは180 kbpプラスミドを保有するトラン

スフォーマントは前者がL-3695株およびL-3706株から,後者がL-3708株か

ら得られた。薬剤感受性試験では165 kbpプラスミドを保有する株は,ABPC,

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KM, TCおよびSULに耐性を示し,180 kbpプラスミドを保有する株は上記の

パターンと異なりSUL感受性であった。 IncI1と型別された95 kbpプラスミ

ドを保有するトランスコンジュガントはL-3708株から得られ,SM, TC, SUL

およびSXTに耐性であった。なお,L-3694株および19-1820株からは95 kbp

プラスミドを保有するトランスフォーマントは得られなかった (表10)。

IncA/Cプラスミドを保有するL-3694株,L-3695株,L-3706株およびL-3708

株から得られた4株のトランスフォーマントのプラスミドRFLP解析におい

て,SalI処理では,190 kbpと70 kbpのプラスミド制限酵素処理像は一致し

ていたが (図11A),HindⅢ処理では,L-3706株由来の IncA/C 70 kbpプラスミ

ドで 23.1 kbp以上の DNA断片の追加と脱落が確認された (図 11B矢頭 )。

blaTEM-1およびspvB遺伝子を乗せた165 kbp,もしくは180 kbpプラスミドを

保有する株でのRFLP解析では,HindⅢ処理で一致した泳動像を示したのに

対し (図11B),SalI処理では165 kbpプラスミドと比較し180 kbpプラスミド

に12 kbpのDNA断片追加が確認された (図11A矢頭 )。なお,95 kbp IncI1プ

ラスミドはその他のプラスミドと比較し,全く異なる泳動像を示していた。

考察

解析した薬剤耐性型が異なるS. Typhimurium 5株はプラスミドプロファ

イルにおいてもすべて異なるパターンに型別された(表7)。一方,ファージ

型別ではDT104が1株 (19-1820株 ),ファージ型別不能が4株であり,前者は

Tamamuraら(80)がS. TyphimuriumのXbaI処理によるPFGEで分類した

クラスターⅠに属し,後者はクラスターⅦに属した。また, BlnIを用いた

PFGEにおいても,ファージ型別不能の4株は2つのDNA断片の相違のみであ

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ったことから(図9),これらの株は遺伝学的に非常に近縁な株であったこと

が示唆された。

ファージ型別が不能であった4株は全て IncA/Cプラスミドを保有していた

が,3株は190 kbpプラスミドであり,残りのL-3706株は70 kbpプラスミドで

あった。プラスミド伝達性試験では前者 3株の IncA/Cプラスミドは自己伝達

能があったのに対し,後者ではトランスコンジュガントが得られなかった。

また,これら各株の IncA/Cプラスミドを保有するトランスフォーマントを解

析した結果,190 kbpプラスミドは7剤耐性(ABPC, CEZ, SM, GM, TC, CP

およびSUL)を示していたのに対し,70 kbpプラスミドは4剤(SM, TC, CP

およびSUL)に耐性を示していたものの,ABPC,CEZおよびGEN耐性が認

められず,blaCMY-2も検出されなかった(表10)。HindⅢ処理によるプラスミ

ドのRFLP解析において,70 kbpプラスミドは,他の190 kbpプラスミドと異

なる泳動像を示し, IncA/C backbone PCRでは一部のプライマーセットで増

幅産物が確認されなかった(表 11)。この結果から,L-3706株は 190 kbp

IncA/C プラスミドから blaCMY-2等の薬剤耐性遺伝子や自己伝達能に関連す

る遺伝子が脱落した結果,70 kbp プラスミドにサイズダウンしたものであ

ることが推察された(図12A)。

L-3695株およびL-3706株の165 kbpプラスミドおよびL-3708株の180 kbp

プラスミドはトランスフォーマントの解析から,blaTEM-1および spvBが存在

し,KMを含む3‐4剤の薬剤耐性に関与していた。本章で用いたPCRによる

プラスミドレプリコンタイピングではS. Typhimuriumの95 kbp病原性プラ

スミドは IncFIIA(20)に型別されるのに対し,165 kbpプラスミドおよび180

kbpプラスミドは IncFIBについても検出された。また,トランスコンジュガ

ントの解析では IncA/CプラスミドのみのL-3694TCと比較し IncA/Cおよび

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IncFIBが検出されたL-3695TC株では,KM耐性とblaTEM-1が追加されていた

(表7)。一方,L-3694株は他のファージ型別不能の3株と比較し,KM耐性が

なく,IncFIBおよびblaTEM-1が検出されず,spvBを含むトランスフォーマン

トは得られなかった。このことから, blaTEM-1やKM耐性に関与する遺伝子

等を乗せた IncFIBプラスミドが,95 kbp病原性プラスミドに挿入し,165 kbp

もしくは180 kbpプラスミドの薬剤耐性-病原性プラスミドとなった株が農

場内に侵入したと考えられた(図12B)。

L-3708株は他のファージ型別不能の3株と異なり,TMP耐性を示し,95 kbp

IncI1プラスミドの保有が確認された。プラスミド伝達性試験から,この95

kbp IncI1プラスミドは自己伝達能を保有することが確認され,このプラスミ

ドを保有するトランスコンジュガントはTMP耐性を示していた(表7)。また,

IncI1プラスミドを保有するトランスフォーマントについてもTMP耐性を示

しており, IncA/CプラスミドのRFLP解析では,他のプラスミドとは全く異

なる泳動像を示していた(図11)。一方,L-3708株の薬剤耐性-病原性プラ

スミドはSalIを用いたプラスミドRFLP解析において,他の薬剤耐性-病原

性プラスミドと異なる泳動像を示した(図11)。L-3708株の薬剤耐性-病原

性プラスミドは,他の薬剤耐性-病原性プラスミドと異なりSUL感受性であ

ることから,165 kbpプラスミドに何らかの遺伝子が挿入したことにより,

SUL耐性遺伝子が不活化されたと考えられた。この結果から,L-3708株は

TMP耐性に関与する IncI1プラスミドの獲得と薬剤耐性-病原性プラスミド

の変異により,他のファージ型別不能 3株と異なる薬剤耐性型およびプラス

ミドプロファイルを示したと考えられた(図12C)。

本章において,5種類の薬剤耐性を示す株が分離された肉用牛育成農場に

は,ファージ型DT104とファージ型別不能の2種類のクローンが農場内に侵

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入していたことが確認された。異なる薬剤耐性を示したファージ型別不能の4

株はプラスミドプロファイルも異なっており,PCRおよびサザンハイブリダ

イゼーションにより,レプリコンタイピングで IncFIIA, IncFIB, IncA/C,

IncI1に型別される4つのプラスミドの保有が確認された。これらの株は確認

された4種類のプラスミドのうち① IncA/Cの部分的脱落(図12A),②薬剤耐

性遺伝子を保存する IncFIBプラスミドの脱落(図12B),③ IncI1プラスミド

の追加(図12C)という3種類のプラスミドの変化により,4つの薬剤耐性を

表したことが示唆された。

世界的流行が確認されたDT104は,薬剤耐性遺伝子が染色体上に安定的に

保存されていたため,世界中で分離されたその多くの株が 5薬剤に耐性を示

すという特徴を有していた(33,39)。近年,北海道の牛由来S. Typhimurium

ではDT104が属するPFGE型クラスター Iに置き換わり,クラスターⅦが増加

傾向であるが(80),その薬剤耐性の安定性については報告されていない。

今回解析したファージ型別不能であった 4株はクラスターⅦに属しており,

多くの薬剤耐性遺伝子がプラスミド上に存在していた。このプラスミドの脱

落と取得により,4つもの薬剤耐性型が確認されたことから,解析したクラ

スターⅦに属する株は薬剤耐性に関する保持構造が非常に不安定であると考

えられた。薬剤感受性試験およびプラスミドプロファイルは簡易に分離株を

型別できる手法である。しかし,クラスターⅦに属する株について,菌株間

の関連性を解析する手法として上記の方法を用いることは有用ではない可能

性が考えられた。

国内においてクラスターⅦに属するS. Typhimuriumは牛の生産,供給拠

点である北海道での流行が確認されていることから,今後,北海道からの導

入牛を通して全国規模で広がる可能性がある。現在のところ,クラスターⅦ

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は家畜分野のみの報告に留まっているが,この遺伝子型の多くが多剤耐性株

であること,医療上重要なセファロスポリン系薬剤耐性株も確認されている

ことから,公衆衛生分野においても問題となる可能性がある。今後,適切な

薬剤使用のためにサルモネラの薬剤耐性動向を家畜衛生および公衆衛生の両

分野で継続的に調査し,その情報を速やかに臨床現場へ提供するシステムを

構築する必要があると考える。

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表7 分離株およびトンランスコンジュガントの性状

株名a) 分離年ファージ

型別b)      薬剤耐性パターンc)プラスミド

プロファイル

(kbp)

プラスミドレプリコンタイピング βラクタマーゼ

d)

L-3694 2007 UT ABPC, CEZ, CTF, SM, GM, TC, CP, SUL 190, 95  FIIA, A/C bla CMY-2,

L-3694TC - - ABPC, CEZ, SM, GM, TC, CP, SUL 190  A/C bla CMY-2

L-3695 2007 UT ABPC, CEZ, CTF, KM, SM, GM, TC, CP, SUL 190, 165  FIB, FIIA, A/C bla CMY-2, bla TEM-1

L-3695TC - - ABPC, CEZ, KM, SM, GM, TC, CP, SUL 230  FIB, A/C bla CMY-2, bla TEM-1

L-3706 2007 UT ABPC, KM, SM, TC, CP, SUL 165, 70  FIB, FIIA, A/C bla TEM-1

L-3708 2008 UT ABPC, CEZ, CTF, KM, SM, GM, TC, CP, SUL, TMP 190, 180, 95  FIB, FIIA, A/C, I1 bla CMY-2, bla TEM-1

L-3708TC - - SM, SUL, TMP 95  I1 ND

19-1820 2008 DT104 ABPC, SM, TC, SUL 95  FIIA bla PSE-1

a) TC:トランスコンジュガント

b) UT:型別不能

c) ABPC:アンピシリン, CEZ:セファゾリン, CTF:セフチオフル, SM:ストレプトマイシン, KM:カナマイシン, GM:ゲンタマイシン, TC:テトラサイクリン, CP:クロラムフェニコール, TMP:

トリメトプリム, SUL:サルファ剤

d) ND:検出されず

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表8 使用したプライマー

プライマー 塩基配列 (5′→3′) 標的遺伝子/配列 増幅産物 引用文献

CMY-2F TTTATCCAATCCGCGCTCGA bla CMY-2 470 75

CMY-2R TTCCCGCCGTTGAGGTAAAC

PSE-1F ATGCTTTTATATAAAATGTG bla PSE-1 915 48

PSE-1R TCAGCGCGACTGTGATGTAT

A/C FW GAGAACCAAAGACAAAGACCTGGA repA (IncA/C) 465 21

A/C RV ACGACAAACCTGAATTGCCTCCTT

FIB FW GGAGTTCTGACACACGATTTTCTG repA (IncFIB) 702 21

FIB RV CTCCCGTCGCTTCAGGGCATT

FIIA FW CTGTCGTAAGCTGATGGC repA (IncFIIA) 270 21

FIIA RV CTCTGCCACAAACTTCAGC

I1 FW CGAAAGCCGGACGGCAGAA RNAI (IncI1) 139 21

I1 RV TCGTCGTTCCGCCAAGTTCGT

spvBF AGCAGTTTTTATCGCCTGGA spvB 526 75

spvBR GGTGGAACATCAGGACTTGG

TEM-1F AGCATCTTACGGATGGCATG bla TEM-1 520 75

TEM-1R AGTGAGGCACCTATCTCAGC

repAF GAGAACCAAAGACAAAGACCTGGA repA (IncA/C) 399 84

repAR TTCTGGAGTTCGTACAGAGTGAAC

R1F AGCACGATAGCTTGTGAGTTCG IncA/C region 1 1440 84

R1R AGCAGATAAGAAGGCGATGACC

R2F CAACCCCTTACCAGCTTTGAAC IncA/C region 2 1752 84

R2R TGAGGCTGACGACAAGGTAGAG

R3F ATGCCACATGGGTAGACATCAC IncA/C region 3 1640 84

R3R GAATGCATAACGACGAGTTTGG

R4F CGTATTTCTCGTCGCTACATGC IncA/C region 4 1339 84

R4R AGTAGCGGAATCGATCCAGAAG

R5F GAACGTGCTTGATGGTTTCTTG IncA/C region 5 1764 84

R5R CTGCTCCACATGATCTACTGGG

R6F GGACGTCATCTAACCCCTGTTC IncA/C region 6 1864 84

R6R AGCAGCTCTACGCCTTTACGTC

R7F CAGCACAAACATCTTCCCAGAC IncA/C region 7 1525 84

R7R GGGTAACACCGCCAACTCTTAC

R8F GAAAGCGCAACAACACAAAGAC IncA/C region 8 1703 84

R8R TGACTACTCTTGCCAGCTTTGC

R9F GTTCAAACTCACGCTGCAAAAC IncA/C region 9 1661 84

R9R ATACCGCAGACGGAAAGAGAAG

R10F AGAATAGCCGCCGTCATAGAAG IncA/C region 10 1542 84

R10R AAAAGGCGTACCGACAAGAGAG

R11F ATCGAGGGAGTGTTCCTCTGAC IncA/C region 11 1781 84

R11R CAAGGCTGAGGGTTCCTATCAC

R12F TGCTCCAGAAAAGCAGAGTCAC IncA/C region 12 1522 84

R12R CCGGGACAAATTACAGGAGAA

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表9 分離株のプラスミドサザンハイブリダイゼーション結果

分離株 プラスミドサイズ (Kbp)プラスミドレプリコン

タイピングspvB

a)

95 FIIA +

190 A/C -

165 FIB, FIIA +

190 A/C -

70 A/C -

165 FIB, FIIA +

19-1820 95 FIIA +

95 I1 -

180 FIB, FIIA +

190 A/C -

L-3708

L-3706

L-3694

L-3695

a) +:シグナルが観察 -:シグナルが観察されない

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表10 トランスフォーマントの薬剤感受性試験および遺伝子プローブを用いたハイブリダイゼーションの結果

bla CMY-2 bla TEM-1 IncA/C IncI1 spvB

190 L-3694  ABPC, CEZ, SM, GM, TC, CP, SUL + - + - -

190 L-3695  ABPC, CEZ, SM, GM, TC, CP, SUL + - + - -

165 L-3695  ABPC, KM, TC, SUL - + - - +

70 L-3706  SM, TC, CP, SUL - - + - -

165 L-3706  ABPC, KM, TC, SUL - + - - +

190 L-3708  ABPC, CEZ, SM, GM, TC, CP, SUL + - + - -

180 L-3708  ABPC, KM, TC - + - - +

95 L-3708  SM, TC, SUL, SXT - - - + -

プラスミド

(kbp)親株 薬剤耐性パターンa)

遺伝子プローブを用いたハイブリダイゼーションb)

a) トランスフォーマントの薬剤感受性試験結果,ABPC:アンピシリン, CEZ:セファゾリン, CTF:セフチオフル, SM:ストレプトマイシン,

KM:カナマイシン, GM:ゲンタマイシン, TC:テトラサイクリン, CP:クロラムフェニコール, SXT:トリメトプリム サルファ剤合剤

b) +:シグナルが観察,-:シグナルが観察されない

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表11 トランスフォーマントのIncA/C backbone 領域を標的としたPCR

repA R1 R2 R3 R4 R5 R6 R7 R8 R9 R10 R11 R12

190 L-3694 + + + + + + + + + + + + +

190 L-3695 + + + + + + + + + + + + +

70 L-3706 + + + + - - - - - - + + +

190 L-3708 + + + + + + + + + + + + +

プラスミド(kbp)

親株 IncA/C backbone 領域 a)

a) 引用文献(85)参照 +:標的領域検出 -:標的領域未検出

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図9 分離株のXbaI(A)およびBlnI(B)処理後のPFGE像

M:Lambda Ladder PFG Marker,Ⅰ:19-1820株,Ⅱ:L-3706株,Ⅲ:

L-3694株,Ⅳ:L-3695株,Ⅴ:L-3708株

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図10 分離株のプラスミドプロファイル(A)と各遺伝子をプローブ(図左

記)として用いたサザンハイブリダイゼーション(B)の結果

M:The BAC-Tracker Supercoiled DNA ladder,Ⅰ:19-1820株,Ⅱ:L-3706

株,Ⅲ:L-3694株,Ⅳ:L-3695株,Ⅴ:L-3708株

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図11 分離株由来プラスミド保有トランスフォーマントのSalI(A)およ

びHindⅢ(B)処理によるプラスミドRFLP解析

Ⅰ:λDNA HindⅢ digest marker,Ⅱ:L-3964株保有190 kbpプラスミド,

Ⅲ:L-3695株保有190 kbpプラスミド,Ⅳ:L-3706株保有70 kbpプラスミ

ド,Ⅴ:L-3708株保有190 kbpプラスミド,Ⅵ:L-3695株保有165 kbpプラ

スミド,Ⅶ:L-3706株保有165 kbpプラスミド,Ⅷ:L-3708株保有180 kbp

プラスミド,Ⅸ:L-3708株保有95 kbpプラスミド

矢頭:バンドの挿入もしくは脱落箇所

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図12 L-3695株とL-3694株,L-3706株およびL-3708株のプラスミドの比較

A: I;L-3695株,Ⅱ;L-3706株

B: I;L-3695株,Ⅱ;L-3694株

C: I;L-3695株,Ⅱ;L-3708株

矢印:変化が認められたプラスミド

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総括

S. Typhimuriumはヒトをはじめとした各種哺乳類および鳥類等に幅広い

宿主域を示し,主に発熱と下痢などの急性胃腸炎を引き起こす。1990年代か

ら多剤耐性菌であるファージ型DT104の世界的流行により,S. Typhimurium

の多剤耐性化が問題視され,さらに同時期に本菌による搾乳牛の成牛型サル

モネラ症が発生し,農場に大規模な損害をもたらした。近年では家畜分野に

おいてDT104の比率が減少し,流行する株の薬剤耐性型についても変化が認

められている。しかし,牛由来S. Typhimuriumにおいて国内外問わず多剤

耐性株の増加に歯止めがかかっておらず,牛が多剤耐性サルモネラ感染環の

温床となっていると指摘されている。このように,近年菌側の変化が確認さ

れ,多剤耐性化が顕著な牛由来S. Typhimuriumについて解析することは家

畜衛生のみならず,公衆衛生分野においても非常に重要な情報となる。本研

究では,近年牛サルモネラ症から分離されたS. Typhimuriumについて分子

疫学的手法を用いて解析を行い,以下の成果を得た。

第一章では分離されたDT104において典型的な5剤耐性のみならず,CP感

受性である4剤耐性株やgyrA遺伝子の変異が確認されたNA耐性を含む6剤耐

性株の国内での存在について明らかにした。また,DT104のスクリーニング

検査として,class I integlonとDT104特異配列のPCRによる検索が有用であ

ることを示した。DT104におけるPFGEでは,XbaI処理よりBlnIで識別能が

高いことが確認され,DT104については、BlnI処理が有用であることが示唆

された。また、疫学的関連性が見出せない農場間においても,サルモネラの

農場間伝播が起きた可能性が示唆され,このことから、改めて平素の衛生管

理の向上による病原体侵入防止が重要であることを示した。

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第二章ではESC耐性S. Typhimurium 2株はAmpC型βラクマターゼであ

るblaCMY-2により耐性を示したことを明らかにした。この遺伝子は自己伝達可

能な190 kbp IncA/Cもしくは95 kbp IncI1プラスミドに存在し,両プラスミ

ドは北米で報告されているものと類似していることを示した。また,この 2

株はファージ型別不能であり,PFGE解析から遺伝学的に近縁であり、北米

で報告されている牛由来株と近縁である可能性を示した。ESC耐性株分離2

農場において,診断前にセファロスポリン系薬剤が使用されていたことから,

この抗生剤の使用がESC耐性株の選択に関与した可能性が考えられた。

第三章では同一農場において分離された異なる薬剤耐性型を示したファー

ジ型別不能の4株を解析し,この4株は種々のプラスミドの脱落または取得に

より,派生した株であることが示唆された。これらの株は北海道で近年分離

が増加しているクラスターⅦに属していることを明らかにし,このクラスタ

ーⅦに属する株においては,菌株間の関連性を解析する手法として,薬剤感

受性試験およびプラスミドプロファイルを用いた型別法は有用ではない可能

性を示した。

以上,牛サルモネラ症から分離された株について分子疫学的性状および薬

剤耐性に関する機序について明らかにし,防疫対策の徹底による牛サルモネ

ラ症伝播防止の重要性について示した。また,国内において,初めて牛由来

ESC耐性サルモネラの存在を明らかにした。ESCは,医療上重要な抗生剤と

して認識されており,今後ESC耐性サルモネラを調査する上で,重要な知見

となると考えられた。また,近年、牛で流行しているPFGE型クラスターⅦ

に属する株の多様なプラスミドプロファイル像と薬剤耐性の関連性について

示した。研究で得られた知見は,S. Typhimuriumの動態に関しての家畜衛

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生および公衆衛生分野で有用な情報となり,牛サルモネラ症の伝播防止や早

期清浄化など防疫対策に活用できると結論した。

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謝辞

本研究において,終始懇篤なるご指導,ご鞭撻を賜った岩手大学農学部共

同獣医学科獣医微生物研究室の村上賢二教授に深甚なる謝意を表します。ま

た,貴重なご指導,ご助言を賜った独立行政法人農業・食品産業技術総合研究

機構 動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域の秋庭正人主任研究員,元動物

衛生研究所・動物疾病対策センター長の今田由美子博士に深謝します。

本論文草稿に当り,有益なご助言とご校閲を賜った岐阜大学応用生物科学

部共同獣医学科微生物研究室の福士秀人教授,岩手大学農学部共同獣医学科

比較薬理毒性学研究室の古濱和久教授,独立行政法人農業・食品産業技術総合

研究機構 動物衛生研究所寒地酪農衛生研究領域の内田郁夫領域長補佐,東

京農工大学農学部共同獣医学科公衆衛生研究室の藤川 浩教授,帯広畜産大学

動物・食品衛生研究センターの小川晴子准教授に厚く御礼申し上げます。

さらに,研究の分離株の解析にご協力を賜った国立感染症研究所の渡邊治

雄所長ならびに細菌第一部の泉谷秀昌第二室長,本研究へのご理解,ご支援

を賜った福島県家畜保健衛生所職員の皆様ならびに岩手県県北家畜保健衛生

所の皆様に感謝の意を表します。

最後に私を支えてくれ,励ましてくれた家族に感謝します。

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