「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏...

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「現場発 ものづくり地域戦略」 ~良い設計の良い流れで産業競争力を高める~ 2018年7月 東京大学大学院経済学研究科教授 東大ものづくり経営研究センター長 一般社団法人 ものづくり改善ネットワーク 代表理事 藤本隆宏

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「現場発 ものづくり地域戦略」 ~良い設計の良い流れで産業競争力を高める~

2018年7月

東京大学大学院経済学研究科教授

東大ものづくり経営研究センター長

一般社団法人 ものづくり改善ネットワーク 代表理事

藤本隆宏

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まずは、現場を繰り返し観察することから出発

Yamagata, Japan, 2011.8

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ものづくり現場発の戦略論・・・

そのためには、高度の自在な上げ下げが必要

「現場」レベルの議論が抜けていないか

高度3万M・・・日本経済論・世界経済論

高度1000M・・・個別産業論・貿易論

高度100M・・・経営戦略論

高度5M・・・ものづくり現場論

高度1.5M・・・生活者=現場人の人生

上下の議論が

うまく

つながって

いなかった!

→ 過剰反応

経済記者(日経1面)

経済官僚

マクロ経済学者

社長(日経ファン)

産業記者(日経産業15面)

現場派の経営・経済学者

現場(引きこもり型?)・家庭

産業経済記者(日経産業1面)

産業官僚

経営幹部(米国経営書ファン)

戦略派の経営学者

東京大学 藤本隆宏 c

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上空・低空・地上のアナロジー(ICTとFAの例)

② 現場・現物(フィジカル)FA

リアルタイム情報による「流れ」の最適化と改善 迅速なフィードバック、自働化、トヨタ式、TPM 現場の言葉で使いこなす「―回転寿司型IT」

クローズド・アーキテクチャ、製品勝負 トヨタ、VW,・・通常の製造業

③ サイバーフィジカル インターフェイス層

高度な情報解釈・翻訳・蓄積機能や 選択的透過機能を持つ工程別スパコン?

工場・工程の超インテリジェント化 インダストリー4.0の主戦場?

GE,IBM, シーメンスなど(日本は?)

①ICT層(サイバー)

インターネット、スマホ・システム、 ソーシャルネットワーク

セキュリティ,帯域保証など課題 オープン・アーキテクチャ、プラットフォーム

アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブック

上空

地上

低空

重さのない世界

重さのある世界 フィールドバス センサー、 アクチュエータ、 FA機器

コントローラ(PLC) MES 産業用Ethenet エッジ/フォッグ コンピューティング

インターネット、AI クラウドコンピューティング ERP

東京大学 藤本隆宏

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現場の能力構築競争

ー 経済の土台は現場・現物である ー

現場

産業

(同種の現場の集まり)

企業

(産業も国境も越えうる)事業

経済

(日本経済・世界経済)

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国民経済、産業、企業、現場

• 現場とは付加価値を生む場所のこと。たとえば工場、製品開発プロジェクト、サービス施設。 IEの基本的な分析フィールドはここ

• 産業とは、同種の製品・工程設計を共有する現場の集合体

• 企業とは、単一の資本が支配する現場と本社の集合体。

• 経済・産業・企業を支える最も基層的な付加価値創出単位は「現場」

• 経済、産業、企業、現場は、すべて時とともに進化する。

• 現場観察から分析を始め、企業と産業の動態的分析を統合的に行う

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「広義のものづくり」とは

「設計情報」の「流れ」という概念に立脚するIEともいえる

産業、企業、固有技術、事業部などの壁をる

汎用的な「流れづくり」の知識・技術である

「良い設計の良い流れ」で、

顧客満足・利益確保・雇用安定の

「三方良し」を達成すること

トヨタシステムとの類縁性 ・・・「付加価値の流れ」

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大野耐一氏について

1984年7月16日、下川先生と大野耐一氏(当時豊田合成相談役)と面談3時間

豊田紡織時代の日紡ベンチマーク

豊田紡 ・・・ 工程別建屋、大ロット、糸つなぎ=後工程重視の品質管理

日紡 ・・・・・ 一貫生産棟、小ロット、糸作り=前工程重視の品質管理

戦前のものづくり経営の立役者、武藤山治(鐘紡)との接点(神戸大・桑原研究)

トヨタ自動車では、まず作業標準化。1台3人持ち→1人1台持ち→多台もち

1950年までに生産性を5倍に (豊田喜一郎氏は1945年に3年で10倍を指示

トヨタ危機で限量生産へ 工程順レイアウト かんばん QCは組長主導 自働化

トヨタ自動車福島氏談 ・・・ 入社直後に「大野付き」。大野氏の指導をフォロー

ダイハツ自動車田中氏談 ・・・ 大野氏の人間性

ゴールドラット氏の大野評 ・・・ 世界3大偉人は ニュートン、ガンジー、大野

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ものづくり現場発の戦略論 ・・・ 現場・現物・設計・流れ 広義の「ものづくり」 ・・・ 人工物に託して、設計情報=付加価値を創造し、 転写し、発信し、お客に至る流れを作り、顧客満足を得ること 「ものをつくる」というよりは、 むしろ「ものにつくり込む」・・・設計情報をものに(媒体)につくり込む 人工物 ・・・ あらかじめ設計されたもの。有形、無形を問わない。 ものづくり現場 = 「高度5メートル」の世界 本社の戦略論 = 「高度100メートル」の世界 (企業のトップの視線) ・・・ この二つがうまくつながっていなかった。 ものづくり現場に遍在するものは何か? 実はモノではない。 設計である。 したがって、「ものづくり現場発の戦略論」とは、 高度5メートルの世界に遍在する「設計情報」にこだわり、 製品・工程の設計のありかたを虚心坦懐に観察することから出発し、 そこから組み立てなおす戦略論である。 〔1〕 ものづくりの組織能力 = その企業特有の「設計情報の流し方のうまさ」 〔2〕 アーキテクチャ = その製品・工程の設計情報が持つ構想 (設計思想)

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地域

企業

現場

日本経済

GDP500兆円で停滞

「失われた20年」

産業により明暗あり

ハイテクで勝てるとは限らず

複雑な擦り合わせ設計で優位 地域差あり

企業により明暗あり

中小でも高収益企業あり

資本重視型と現場重視型

貿易財の優良現場は

「苦闘の20年」を脱しつつある

付加価値 利益貢献 雇用維持

産業

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現場の多面性

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現場指向企業と資本指向企業

① 現場指向の

大企業

例:トヨタ、マツダ・・

③ 地場の製造系

中小企業

製造系大企業の

地場生産子会社も含む

現場の2階に社長室・・

② 資本指向の

大企業

例:欧米グローバル企業

一部の日本の大企業

④ ベンチャー企業

利益による成長が第一

大企業 中小企業

現場指向企業

2つの目的関数

① 一定利益率確保

(マークアップ原理)

② 雇用数の安定

資本指向企業

1つの目的関数

・・・利益最大化

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現場指向企業の能力構築と需要創造

―古典経済学的なモデル ―

• 「現場指向性」(genba-orientedness)

• 現場指向企業 ・・ 利益と存続と雇用のバランスを指向する経済主体

• 地域の中小企業はその典型。しかし現場性の強弱は大企業の間にも見られる

• 主流派経済学が想定する利益最大化企業 ・・ 現場指向性が弱く、地域の期待より株主の圧力を強く感じる企業、たとえば地方の現場から遠く離れた大都市に本社を持つ大きな上場大企業。

• 以下、一群の「現場指向企業」からなる国民経済を理念型として想定。

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現場指向企業からなるPXNWモデル

生産・販売量 x

必要労働者数 N

賃金 w

価格 p

N* 目標雇用数

単位生産費用

C3 = a3w3 > C1

必要雇用数

N3 = N*

生産価格 ps3

0~2期の需要曲線

供給曲線 ps3= ps0

= (1+r*) a3w3

0期の必要労働力曲線 N = a0 x

0期の賃金・費用曲線 C = a0w

生産量 x3>x2=x0

3期の労働供給曲線w3 = w2 > w0

図X 第3期のPXNW図 (需要創造により生産性向上・賃金上昇・目標利益率 r*、雇用目標N*を達成)

利益上乗せ率 r3=r*3期の賃金・費用曲線C = a3w = a1w

3期の必要労働力曲線N = a3 x = a1 x

C3=C2

賃金上昇

3期の需要曲線 (需要創造)

x0w3=w2

労働投入係数 a3 = a1 < a0

生産性向上

生産性向上

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現場指向企業からなるPXNWモデル

• 供給価格pは製品1個当たり生産費に一定のマークアップ率r*を乗じたもの。

フルコスト原理。供給曲線は水平。中間財貿易は考えないリカード型(労務費還元)。

• 製品差異化。製品設計情報は品種ごとに異なる。右下がりの需要曲線に直面。

• その期の生産数量xは需要数量に従う。現場は売れる量だけ作る(塩沢=スラッファ原

理)。需要数量は、水平の供給曲線と右下がりの需要曲線の交点で決まる。価格決定と数量決定は分離。

• 単純化のため、企業は1種類の製品のみを生産するものと仮定。

• 企業は予想生産数量xを決めてから、それに適合する必要雇用量Nを決める。

• 産業ごとに一定の賃金水準wで完全に弾力的。労働力供給曲線は水平。

• 現場指向企業は一定数の従業員N*を雇い続けたいと考える。企業内の完全雇用原則

• 労働投入係数aは所与の係数ではなく、現場の日々の生産性向上努力により変化しうる

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現場指向企業からなるPXNWモデル(古典派の生産費説)

生産量・販売量 X

価格P

単位生産費用

Ct = atwt

供給価格 pst

需要曲線(需要家iの留保価格pdit)

供給曲線 pst = (1+r*) atwt

0 生産量 xt

① 製品の需要・供給曲線

利益上乗せ分 r*atwt

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現場指向企業からなるPXNWモデル(ケインズの雇用関数)

生産量 X

必要労働者数 N

目標雇用数 N*

必要雇用数

Nt= atxt

必要労働力曲線 Nt = at xt

傾きat =労働投入係数= = Nt/xt

0

余剰雇用数 = N*-Nt

xt

② 必要労働力曲線

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現場指向企業からなるPXNWモデル (不完全雇用)

Nt= atxt

必要労働者数

0

労働供給曲線・・・賃金一定= wtwt

必要労働者数 N

賃金 w

③ 労働供給曲線

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現場指向企業からなるPXNWモデル(リカードの費用関数)

傾きat =労働投入係数= = Nt/xt

0 賃金 w

平均費用 C

単位費用 Ct = atwt

平均費用曲線 Ct = atwt

wt

④ 賃金・費用曲線

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現場指向企業からなるPXNWモデル

生産・販売量 x

必要労働者数 N

賃金 w

価格 p

N* 目標雇用数

単位生産費用

C3 = a3w3 > C1

必要雇用数

N3 = N*

生産価格 ps3

0~2期の需要曲線

供給曲線 ps3= ps0

= (1+r*) a3w3

0期の必要労働力曲線 N = a0 x

0期の賃金・費用曲線 C = a0w

生産量 x3>x2=x0

3期の労働供給曲線w3 = w2 > w0

図X 第3期のPXNW図 (需要創造により生産性向上・賃金上昇・目標利益率 r*、雇用目標N*を達成)

利益上乗せ率 r3=r*3期の賃金・費用曲線C = a3w = a1w

3期の必要労働力曲線N = a3 x = a1 x

C3=C2

賃金上昇

3期の需要曲線 (需要創造)

x0w3=w2

労働投入係数 a3 = a1 < a0

生産性向上

生産性向上

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① ある定常状態から次の定常状態に移行。

② 「価格一定で名目賃金上昇」あるいは「価格低落で名目賃金一定」という形で

実質賃金の上昇がある。

③ 「現場の生産性上昇」と「企業の需要創造」の両方を伴っている。

• 要するに ・・ 存続(目標利益達成)と雇用(従業員数の維持)を目的とする現場指向企業により構成される産業経済においては、企業が生産性向上(a↓)と有効需要創出(x↑)を同時に行うことによってのみ、従業員の実質賃金を高め、しかも目標利益上乗せ率(r*)と目標雇用数(N*)を同時に達成する「定常状態」を保つことができる。

• 以上が、現場指向企業の行動原理

ムダを減らす→付加価値の「流れ」を良くする→生産性向上 付加価値の新しい流れを創る→需要創造

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日本の現場の70年史-歴史認識なくして未来戦略なし 前史・・・明治維新 ・ 逆垂直貿易からの出発 ・ 富国強兵 ・ 殖産興業 ・工業化 ・ 敗戦 冷戦開始 ・・ 1945年終戦 ・「日本を弱小民主国家に」 ・ ところが1947年冷戦勃発 日本の戦略的位置(西側の西の端) ・ 日本の「富国弱兵」を許容 貿易立国日本再始動 ・ 通産省 ・ 設計力の残存 ・ 技術輸入 1950~60年代・・「移民なき高度成長」 米国・中国と違い工業化地域へ人口大移動なし→ 労働力不足 「不足の経済」→多能工のチームワーク ・ 統合型現場の族生 1970~80年代・・「冷戦下のグローバル競争」・・先進国間の競争(賃金同等) 低成長(10%→4%)と円高開始(変動相場制)で内外競争激化 しかし現場の能力構築で生産性向上。貿易黒字・貿易摩擦 日本の現場力(トヨタ方式、TQC、カイゼン)に世界が注目 1990~2000年代・・「冷戦後のグローバル競争」・・新興国との競争(賃金20分の1) 冷戦終結と中国の参入・デジタル情報革命・円高続行 現場にとってはハンディ最大の暗黒時代。しかしあきらめず能力構築 2010年代~20年代 ・・・新興国の賃金高騰でハンデ緩和・・「長いトンネルを抜けた」?

東京大学 藤本隆宏

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昨今の根拠の怪しい議論 ・・本質論で考えよう

・EVの時代がすぐに来て、鋳物屋、機械加工屋の仕事は減る ・・・ ?

・EVはパソコンと同じく標準部品寄せ集めのオープン・モジュラー型商品になるので

調整力優位の日本自動車メーカーは国際競争力を失う ・・・ ?

・自動運転は一気にレベル5 (無制限完全自動運転)が普及する ・・・ ?

・インダストリー4.0でドイツは自動化工場がコネクテッドファクトリーとなり

競争力を高める。日本は周回遅れである ・・・ ?

・IoTで、地上のモノから発信されるビッグデータは全て

インターネットのクラウドやAIで処理されるようになる ・・・ ?

・AIは万能で、自動車の最終組立ラインも、数年で完全ロボット化する ・・・ ?

・モノ(製造)からコト(サービス)への時代、フィジカルからデジタルへの時代になれば、

製造業は重要性を失う ・・・ ?

・クルマのシェアリングが普及して、世界の自動車生産台数は減少局面に入る ・・・ ?

・日本では長期にわたる検査不正が次々と発覚し、大問題となった。

これは日本の現場力が落ちていることの証拠だ ・・・ ?

東京大学 藤本隆宏

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検査不正、品質不良、現場力 ・・ 本質論から考えよ

東京大学 藤本隆宏

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「現場の組織能力」と「現物のアーキテクチャ」からみる

産業競争力の分析枠組

ものづくりの

組織能力

(特定地域に偏在)

製品・工程

アーキテクチャ

(製品ごとに選択)

特定国・特定製品の

競争力

適合?

能力構築環境

能力構築競争

能力構築能力

市場・顧客の

機能・コスト要求

社会が課す

制約条件・規制

製品の技術的・

構造的な制約

企業・事業・現場の担当者の主体的な行為・選択

その他の環境条件、偶然事象、他

東京大学 藤本隆宏

現場 現物

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付加価値は設計情報に宿る 製品とは設計情報が媒体=素材に転写されたものである

東京大学 藤本隆宏

アリストテレス ・・・ 個物(現物)=形相(設計情報)+質料(媒体)

プラトンとアリストテレス

アテナイの学堂・ラファエロ

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「ものづくり」とは「設計情報の良い流れ」を作ること

東京大学 藤本隆宏

現場・現物からの発想 ・・・ モノよりはむしろ「設計」に着目 現物 = 設計情報+媒体

アリストテレス ・・・ 現物=形相+質料 (形相が本質)

製品(物財・サービス)は、人工物 (あらかじめ設計された何か) である。 媒体が有形なら製造業(物財) 無形ならサービス業 付加価値の主たる源泉は設計情報にある (媒体はそれを伝える器である)。 開かれた(広義の)ものづくり ・・・ 人工物に託して、設計情報を創造し、

転写し、発信し、お客に至る流れを作り、顧客満足と経済成果を得ること。

媒体

設計 情報

質料

形相

設計

情報

無形媒体 有形媒体

設計

情報

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開かれたものづくり:良い設計の良い流れを部門間連携で

東京大学 藤本隆宏

製 品 開 発 = 製 品 設 計 情 報 の 創 造

生 産 = 製 品 設 計 情 報 の 転 写

生 産 工 程 = 製 品 設 計 情 報

      の ス ト ッ ク

素 材 = 媒 体 ( メ デ ィ ア )仕 掛 品 = 媒 体 ( メ デ ィ ア )製 品 = 製 品 設 計 情 報 + 媒 体

製 品 設 計 情 報

開 発 は 設 計 情 報 の 創 造 で あ る ; 生 産 は 設 計 情 報 の 転 写 で あ る

=   媒 体 ( メ デ ィ ア )=   情 報

開発 = 設計情報の創造

現場 = 顧客(市場)へ向かって設計情報が流れる場

購買 = 媒体の調達

生産 = 設計情報の転写

販売= 設計情報 の発信

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お客さんが

カッコいいと

思ってくれる

ボディの

デザイン

厚さ0.8ミリの鉄板

これを創造するのが開発

これを買ってくるのが購買

この二つを結合するのが生産

(設計情報を素材に転写すること)

東京大学 藤本隆宏

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発信側:プレス工場で起こっていること・・・生産=情報転写

• 金型=「かっこいいボディ」の設計情報が鉄の塊の中に埋め込まれている。

• 1分に10回近いペースで、その情報が、

1000トンを超えるエネルギーを使って、鉄板に「転写」される。印刷と同じ。

• つまり、プレス生産は、金型が持っている設計情報を鉄板に転写する活動。

• しかし、うまくやらないと、鉄板は破れる、ゆがむ、しわがよる。つまり転写ミスがおこる。

• いかに速く、安く、正確に転写するかが、現場の腕のみせどころ!

ボディの

デザイン

鉄の塊

ボディの

デザイン

鉄板

転写

金型

パネル 写真:トヨタ産業技術記念館

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受信側:鉄板になった気持ちで考える・・

鉄板が金型の持つ設計情報(付加価値)を吸収し、

クルマのサイドボディに変身する

つまり、金型が持つ設計情報を、鉄板という媒体に転写する。

写真:トヨタ産業技術記念館

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お客さんが

カッコいいと

思ってくれる

ボディの

デザイン

厚さ0.8ミリの鉄板

販売 = 構造設計情報の発信

サービス = 構造を操作して機能を発生させ、それを売ること

消費 = 構造を操作して自ら機能を生み出すこと(セルフs-ビス)

設計情報を創造するのが開発

媒体を社外から入手するのが購買

構造設計情報を素材に転写するのが生産

構造と支店製品ををお客さんに発信するのが販売

構造を操作して機能を取り出すのが消費

顧客満足

製品=設計情報+素材(媒体)

販売 → 使用(消費) → 解釈

東京大学 藤本隆宏

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設計情報のトータルな循環を良くすること・・ものづくり

部品原材料

仕掛品 製品(構造)

サービス(機能)

転写操作移動

工程設計・工程

生産 生産 販売 消費

製品(構造)

製品設計

製品コンセプト

創造・翻訳

創造・翻訳

購買

市場調査製品企画

・・設計情報

・・媒体(直接材料)

・・媒体(その他)

転写

エンジニアリング

チェーン「

サプライチェーン「

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物財(有形媒体)とサービス(無形媒体)

• 物財(有形媒体) ・・・ 2段階転写:①媒体への構造設計情報転写(生産)

②顧客への機能設計情報転写(消費)

• サービス(無形媒体) ・・・ 顧客への直接転写

構造

設計

情報

媒体

(有形)

機能

設計

情報

コン

セプト

媒体

(有形)

構造

設計

情報

媒体

(有形)

構造

設計

情報

機能

設計

情報 生産

機能

設計

情報

媒体

(無形)

媒体

(無形)

機能

設計

情報

機能

設計

情報

販売 消費 満足

満足

生産 消費

開発

開発 不満足な

消費者

満足な消費者

不満足な

消費者

満足な消費者

東京大学 藤本隆宏

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製造現場での「良い流れ」作り ・・ 自動車組立の例

媒体

(有形)

設計

情報

媒体

(無形)

設計

情報

不満な消費者

満足な消費者 東京大学 藤本隆宏

媒体

(有形)

設計

情報

媒体

(無形)

設計

情報

媒体

(無形)

設計

情報

リードタイム=受信効率

プレス 車体溶接 車体塗装 最終組立 最終検査

生産性

= 発信効率

製造品質

= 転写精度

媒体

(無形)

設計

情報

鋼板

媒体

(無形)

設計

情報

完成車

操作

製品機能

操作 操作 操作 操作

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サービス現場での「良い流れ」作り ・・ スーパーの例

媒体

(有形)

設計

情報

媒体

(無形)

設計

情報

入口・・・

不満な消費者 出口・・・

満足な消費者

東京大学 藤本隆宏

媒体

(有形)

設計

情報

媒体

(無形)

設計

情報

媒体

(無形)

設計

情報

来店時間 = リードタイム

案内サービス 売場設計 声掛け・説明 商品・価格設計 レジ・サービス

タイムリーで正確な設計情報転写

生産性

= 転写効率 サービス品質

= 転写精度

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サービス現場での「良い流れ」作り ・・ 京都花街の例

媒体

(有形)

設計

情報

媒体

(無形)

設計

情報

インプット・・・

不満な消費者

アウトプット・・・

満足な消費者

東京大学 藤本隆宏

媒体

(有形)

設計

情報

媒体

(無形)

設計

情報

媒体

(無形)

設計

情報

予約・手配 入席 芸事鑑賞 お座敷遊び お開き

操作 操作 操作 操作 操作

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スーパーI(埼玉)生鮮食品

• トヨタ・グループが改善支援。主にバックヤード。

• カップラーメン補充に5分(バックヤードの5S欠如) → 倉庫の白線引きから

• キャベツ「大ロット切り」から「1個切→品質→ラップ→値札」の標準作業に

(生産性でも大ロット切りより高いことを実証実験)

• 夕方の天ぷらセール・・「大ロット揚げ→タイムセール値引」から

「後補充小ロット揚げ」に。暖かく新鮮と評判に。値引きもなし。

• しかし「今回一番勉強になったのはうちだ」とトヨタ系。

・・・ フロントヤードの売り方がすごい!

• 「イワシの日」の1日。パート従業員が協議。発注権限あり。売り場設計も

• 客の流れの変化(老夫婦→パート帰り→5時仕事帰り)に合わせて、

陳列棚の設計(何を前面に置くか)、声掛けの科白の設計など刻々変える。 来店20分間の前後の顧客の人生まで視野に入れた陳列・声掛け設計

• 終業後に反省会。翌日の試行に反映させる。デザイン思考!

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老舗旅館K屋(修善寺)

• 入口スペースで館内説明・案内.顧客の意流れの起点を部屋別訪問から店頭式へ。

• 仲居さんの「1人1部屋」制を変更。ベッド式の布団と、食事会場方式。

部屋には誰も入ってこない(ホテル式)。布団敷きもなし。プライバシーあり。

• 浮いたコストで食事会場を豪華・準個室化。けちらず、付加価値を確保(2万円+)

しかし、食事会場の給仕係は1人複数部屋持ちで生産性向上。質もアップ。

• チェックアウト11時。風呂もその時間まで入れる。ゆっくりしたい世代には良い

その代わり、ベッドメイクを短時間でやる必要。H社の「先遣隊・本隊」方式か。

先遣隊(先遣隊が前作業をして本体の作業を標準化)

• 館内各所にあるドリンク類は多様,高質で無料。

従業員は多能化。呼び出しベルを各所に付け、近くにいる従業員が急行する。

• 380年の老舗だが、現在はKリゾートの傘下。

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東京大学ものづくりインストラクター®養成スクール

• 平成17年度経済産業省産学連携製造中核人材育成事業としてスタート

• 平成19年度より東京大学経営教育研究センターのプロジェクトとして継続

• 以来、9年間で修了生は100名 (東大「ものづくりインストラクター」)

• 対象は主に、40~60代を中心とする製造現場管理経験者

• 毎年秋、金・土の2日間(全日)で10週間程度

• 固有技術に加え、現場で培った「広義のものづくり技術」を

他産業でも改善指導できる人材の育成を目的とした師範学校

東京大学 藤本隆宏

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カリキュラムは座学+現場指導実習

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群馬ものづくり改善インストラクタースクール

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東京大学 藤本隆宏

改善が続く「人の流れ」を完結させよう

地域

スクール

(師範学校)

ものづくり支援

センター 地域

インスト

ラクター

地域の

ものづくり

シニア

地域の

中小企業・

非製造業 改善指導

産金官学の支援

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政府の「成長戦略」が昨今話題である。その論点(規制改革と投資減税→経営者の投資マインド→生産性向上→成長)に反対ではない。しかし、「現場のにおい」がしない点が気になる。

現在の「成長戦略」の主な焦点・争点は、諸々の規制緩和の是非である。

(株式会社農業参入、社外取締役義務化、混合診療解禁、解雇規制緩和、医薬品ネット販売・・)

これまでの日本は、規制という「ブレーキ」を踏んだ状態であったため、前に進まなかった、との認識が、「規制緩和 = 成長」説の背景にある。だから、「ブレーキを解除すれば成長する」という、現在の「成長戦略」のロジックには、一理ある。

しかし、ここには「エンジン」の側の発想が希薄である。そして成長のエンジンは、

①生産性の向上 と

②有効需要の創出

が両輪である。そして、生産性向上の主体は、製造業・非製造業を問わず、

全国の企業の「現場」である。民間による有効需要創出、あるいはドラッカーの言う顧客創造の主体も、企業の現場である。成長は現場で起こっている。

ゆえに、「良い現場」を残し強化することに言及しない成長戦略は不完全である。

「現場発の成長戦略」の必要性

東京大学 藤本隆宏

Page 45: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

ある特定の製品に関して、

時間あたりの付加価値生産性は以下の通り

付加価値生産性 = 付加価値/人・時

日本全体では、これがOECD中でも低いと言われる → 「生産性革命」

一方、厳しいハンデ戦を生き抜いた日本の貿易財製造業の現場の

物的労働生産性は概して高い。・・この2つの事実は、どのようにつながるのか

付加価値生産性 = 個/人・時 x 付加価値/個

= 物的生産性 x 製品あたり付加価値

つまり・・ 現場改善 + 商売改善・設計改善

強い製造現場では ・・・ 現場は相対的に強い。商売は欧米に比べ下手

サービス現場では ・・・ 質は良いが、物的生産性も、付加価値も低い

→ 「生産性革命」は、サービス業も含む、現場改善と商売改善を必要とする!

東京大学 藤本隆宏

付加価値生産性と物的生産性を混同しないこと

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「現場の組織能力」と「現物のアーキテクチャ」からみる

産業競争力の分析枠組・・3つの構成要素

ものづくりの

組織能力

(特定地域に偏在)

製品・工程

アーキテクチャ

(製品ごとに選択)

特定国・特定製品の

競争力

適合?

能力構築環境

能力構築競争

能力構築能力

市場・顧客の

機能・コスト要求

社会が課す

制約条件・規制

製品の技術的・

構造的な制約

企業・事業・現場の担当者の主体的な行為・選択

その他の環境条件、偶然事象、他

東京大学 藤本隆宏

現場 現物

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競争力とは「選ばれる力」である

ー 現場力(裏)、商品力(表)、収益力の重層的な理解ー

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競争力は多層的に把握せよ:「まず現場」か「まず利益」か

東京大学 藤本隆宏

組織能力深層の

パフォーマンス表層の

パフォーマンス利益

パフォーマンス

その他の環境要因

能力構築競争の対象領域

生産性生産リード タイム

適合品質開発リード タイム

価格納期

製品内容の訴求力広告内容の訴求力

組織ルーチン

  もの造りの組織能力とパフォーマンス

裏の競争力 ものづくり

組織能力 表の競争力 収益力

会社のもうけ

株価

お客が評価する

製品の実力を測る指標

価格、性能、納期

ブランド、広告の効果

市場シェア、お客の満足度

お客から見えない

現場の実力を測る指標

生産性、コスト、

生産リードタイム、

開発リードタイム、

開発生産性

他社が簡単に真似できない

現場にできることのレベル

整理整頓・清掃

問題解決、改善

ジャストインタイム

フレキシブル生産

能力構築競争

① まず能力構築から・・・「現場=体を鍛える」トヨタ流の体育会系戦略

② まず利益構想から・・・「本社=頭を使う」欧米流(中国流)戦略

Page 49: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

自動車の組立生産性向上は今も続く

16.8

24.9

35.5

41.0

16.5

21.925.3

29.7

12.3

16.820.1

28.0

0

10

20

30

40

50

日/日 米/北米 欧/欧 新興国

1989 1994 2000

US/NA JP/JP EU/EU Developi

ng Cont.

Source: IMVP Survey

日本の自動車組立工場の生産性

(小さいほど良い)

10年で生産性8倍のパソコン工場も日本にはある!

Page 50: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

IMVP ラウンド4

アジア自動車工場の国別・地域別生産性比較

生産性含む間接(一台あたりの作業時間:人・時間/台)

10.714.2

20.6

25.4 25.5

41.5

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

日本

平均

(10)

韓国

&台

湾平

均(6)

台湾

平均

(3)

タイ平

均(6)

中国

&インド平

均(6

)

インド平

均(3)

IMVP ラウンド4 アジア自動車工場の国別・地域別生産性比較まとめ (注):括弧内はアンケート回答工場数を示す

大鹿・藤本、MMRC-DP

Page 51: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Example: Productive Performance of Japanese Auto Firms -- Assembly Throughput Time (from Welding to Assembly) --

C Takahiro Fujimoto, University of Tokyo

Throughput Time (Start of Body Assy-Final Line off)

17.120.1

25.5

36.3

20.5

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

日本 海外日本 北米 欧州 韓国

(hr.)

JP/JP JP/NA NA/NA EU/EU KR/KR

Data: IMVP2000yr. Survey, made by Jeweon Oh, MMRC

(Hours)

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藤本、延岡、 Thomke, グローバル自動車製品開発研究プロジェクト資料(延岡作図)

自動車の開発生産性:日本は欧米の2倍前後で推移

0

500000

1000000

1500000

2000000

2500000

3000000

3500000

Period 1

1980-84

Period 2

1985-89

Period 3

1990-94

Period 4

1995-99

USA

Europe

Japan

日本の自動車開発現場の生産性

(小さいほど良い)

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物的生産性 = 設計情報発信の 速度 × 密度 速度・・生産技術、労働強化

(流体力学の公式との類似 ・・ 流れの自然科学と社会科学)

リードタイム = 1 ÷ (設計情報受信の 速度 × 密度)

総合品質 = 設計情報転写の 精度 = 設計品質 × 適合品質

(ニーズ→設計) (設計→現物)

東京大学 藤本隆宏

裏の競争力=「良い流れ」度の基本公式

(情報転写の速度・密度・精度)

Page 54: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

設計情報転写の「密度」と物的生産性・生産リードタイム 第2工程の生産性

(1個あたり工数)

第1工程の生産性

(1個あたり工数)

作業者

原材料 仕掛品 最終製品

第1工程 第2工程

在庫時間 在庫 時間

在庫 時間

在庫時間 搬送 時間

タクトタイム タクトタイム

生産リードタイム

受信側(リードタイム)

発信側(生産性)

タクトタイム

作業者

正味作業時間(情報発信時間)

正味作業時間(情報受信時間)

情報の受発信のない時間

(在庫、手持ち、運搬、など)

生産資源

② ②

東京大学 藤本隆宏

密度は

多くが

10%以下

密度は

多くが

1%以下

タクトタイム

Page 55: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

統合型ものづくりの組織能力

ー 開発・生産・購買・販売を一気通貫でつなぐ ー

東京大学 藤本隆宏

Page 56: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

「設計情報の創造・転写システム」としてみた

統合型の開発・生産組織能力(トヨタは典型例)

生産:「工程から製品への、密度・精度の高い設計情報の転写」 ・・・ 設計情報(付加価値)をお客様に向けて「よどみなくスーっと流す」 製品開発:「早期で統合的な問題解決サイクルの束」 ・・・ 未完設計情報の待ち時間を減らし、 「よどみなくスーっと流す」 サプライヤー・システム: 「長期安定取引」「少数者間の能力構築競争」「まとめて任せる」 ・・・ 設計情報がサプライヤーとの間で淀みなく流れる 販売・サービス・システム お客様に、高質なカーライフ経験を、正確かつタイムリーに発信する ・・・ 設計情報(付加価値)がお客様に向けて淀みなく流れ転写される 要するに・・・「知のめぐりの良い組織」である

東京大学 藤本隆宏

Page 57: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

「不足の経済」 による統合型組織能力の偏在

急成長期の共通体験が、現場群(産業)における組織能力の偏在を生む

「不足の経済」(economy of scarcity) ・・ 若いころの貧乏暮らし

→ 企業内分業を抑制し (多能工化)

企業間分業を促進し 、

企業内・企業間の協業(チームワーク)を促進する

生産資源の不足は、ある条件 (能力構築能力の存在)の下で、

生産性の向上を、なかば強制する (高地トレーニング効果)

その後、生産資源が充足されれば、爆発的にアウトプットが成長する

その後、アウトプットが過剰になれば、競争は促進される

以上は、意図せざる結果(怪我の功名、ひょうたんから駒)の色彩が強い

東京大学 藤本隆宏

Page 58: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

統合型ものづくりの能力構築・・

まず付加価値(設計情報)の流れを掴むこと

プロセス流れ図と時間流れ図をきっちり描く → 工夫してリードタイム短縮

東京大学 藤本隆宏

オペレーション(作業)

モノの流れ 情報の流れ

各ステーション(作業者・設備・ソフト・マニュアルなど)に

配備された設計情報

凡例:

プロセス(工程)

工程1 工程2 工程3 工程4・・・製品A・・・

生産リードタイム

工程1

工程2

工程3

工程4

製品A

製品A

製品A

製品A

プロセス流れ図 時間流れ図

Page 59: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

まず高高度(全社レベル)の「設計情報の流れ図」を作る

→ 問題個所を特定、ズームイン、詳細な流れ図を作る

X社での作成風景

目的別に「縮尺」の異なるマップを複数作って階層的に構成する。 東京大学 藤本隆宏

Page 60: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

既存顧客(消費空間)

購買部門

販売・マーケ部門

生産管理部門

製造部門

サービス部門工程

製造部門

製品開発・生産技術・品質部門

製品コンセプト(商品企画)

製造BOM

先行試作・シミュレーション

市場品質情報

開発試作品CAEモデル

製品設計の

量産性評価

工程シミュレーショ

ン・モデル

パイロットライン

営業活動計画

潜在顧客

製品詳細設計(構造設計・部品図)

3Dモデル、2D図面

確定受注情報設計BOM

補修部品の取

扱説明書

小売店舗

顧客が

使用中の

製品

作業標準書

検査基準書

検査前完成品

製品の

機能 ・

性能実績

製品操作

履歴情報

使用環境

履歴情報

物流倉庫

検査済完成品

輸送 輸送

出荷

輸送

輸送

輸送

流通在庫情報

有望受注情報

広告販促計画訴求

販促指示・販促物品支給

営業活動

アフターサービス

拠点

リピート

補修部品在庫等

修理中の顧客製品

輸送

ソリューション拠点

顧客使用履歴情報

顧客製品操作ソフト

引合情報収集

引合情報収集

受注確定

顧客の

使用履歴

情報収集顧客製品の

操作助言

操作代行

補修の作業手順書

アフターサービス計画

ソリューションサービス計画

顧客・市場

標準価格情報 価格情報伝達

市場調査情報

検査

総組立

塗装等

内製サブ組立品

内製

サブ組立

塗装等

内製加工部品

内製

切削加工

内製成形部品

内製混合品・化成品

購入原材料

輸送

出荷

外製成形部品

外製加工部品

外製サブ組部

指示

指示

サプライ

ヤー

内製

成形加工

原材料

搬入

部品搬入 部品搬入小分け・順建て等

品質

検査

情報

原価

工数

情報

単価

情報

生産

内示Mix

計画

生産

順序

計画

設計・品質指示

価格交渉

改善協力

内示・確定

mix/順序計画

納入指示

材料支給

納入

納入

販社販売計画

品質措置計画

設計変更依頼

原価管理部門

製品原価情報

原価計算資料

年次需要予測・

年次生産計画

月次生産計画

週次生産計画

生産着工順序計画

生産指示

仕掛在庫情報

生産指示

決定

生産指示

通知

オーダー処理

市場の直接観察

販売計画反映

オーダー処理

販社計画集計

市場の観察・調査

予測

製品基本計画(基本仕様・レイアウト)

性能・耐久性

評価結果

新製品の構想

試作

評価

設計変更

工程設計・設備設計(金型・専用機設計等)

工程の

性能評価の結果

設計変更

試作

評価

量産設備・治工具・制

御ソフト(内製・外注・購買)

評価

設計変更

制作

制作

伝達

資材所要量計画

(MRP)

方式の選択

部品別納入指示

工程に配備

量産承認

工程に配備

工程に配備

量産試作の結果

試作

承認

承認

承認

承認

全社流れ図の例

Page 61: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

中高度のマップ: 設計情報の流れ図 (作業軸と工程軸)

東京大学 藤本隆宏

記述 記述 記述 記述 記述 記述 記述

Max

Average

Min

Etc.

Max

Average

Min

Etc.

Max

Average

Min

Etc.

Max

Average

Min

Etc.

Lot-size

frequency

タクト

アイドル

直行率

記述

サイクル時間

転写時間

非転写時間

良品率

可動率

設備 作業者 設備 作業者

記述

サイクル時間

転写時間

非転写時間

良品率

可動率

タクト

アイドル

直行率

記述

サイクル時間

転写時間

非転写時間

良品率

可動率

記述

サイクル時間

転写時間

非転写時間

良品率

可動率

作業

設計

設備

設計

作業

設計

設備

設計

製品

設計 モノの流れ

設計情報の流れ

作業分析の流れ

工程分析の流れ

Page 62: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

出所:ローザ―=シュック(成沢訳)『トヨタ生産方式にもとづく「モノ」と「情報」の流れ図で現場の見方を変えよう!!』

中高度のマップ: ものと情報の流れ図(Value Stream Map)

62

Page 63: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

出所:東京大学ものづくり経営センター資料

63

低高度のマップ: レイアウト上に流れを描く(作業者の動線の例)

Page 64: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

インド Victor Gasket社 工場風景(プレス工程)

Page 65: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

ものと情報の流れ図(Value Stream Map)・・インド Victor Gasket社

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生産性改善策の類型 (1) 作業・機械の正味作業時間比率(=正味作業/工数)アップ = 転写密度のアップ

・手待ちのムダとり ・・・ ラインバランス、多作業持ち、助け合い

・動作のムダとり ・・・ 動作の合理化(動作経済)

・搬送・物流のムダとり ・・・ 二度手間

・段取り替時間の圧縮・ゼロ化 ・・・ 外段取り化、段取りレス化、技術改良

・歩行時間、ワーク選択・取り出し、ワーク着脱、起動時間の圧縮

・設備可動率アップ(設備故障・チョコ停への対応時間の短縮)

・設備稼働率アップ(ラインあたりの生産量アップ、品種数アップ)

(2) 作業・機械の正味作業スピード(正味作業時間/個)アップ = 転写速度のアップ ・習熟曲線の利用 ・・・ 安定的な作業配分、動作の標準化 ・新技術による転写速度アップ ・・・ 切削速度(回転・送り)、反応速度アップ ・新技術による作業の省略・統合 ・・・ 自動化・無人化、加工レス、仕上レス、組立レス

(3) 原材料生産性(歩留まり・原単位)のアップ ・・・ 被転写側の効率アップ ・製品あたりの組み付け部品点数の低減・削除 ・・・ VA/VE活動 ・製品あたりの素材使用量の削減 ・・・ 材料取りの効率化、素形材の加工しろ削減 ・工程内良品率アップ(品質作りこみ、工程内検査、最終検査の充実)

・新技術による原単位(製品あたり材料・燃料使用量)の低減・削除

東京大学 藤本隆宏

Page 67: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

工程改善策の類型 (1) 生産期間に占める正味作業時間比率のアップ = 転写密度のアップ

・原材料・仕掛品・製品の安全在庫、不要在庫削減

・拠点間輸送の近接化・高速化

・ライン間搬送の近接化、高速輸送化

・機能別レイアウトの製品別ライン化、ライン短縮、工程間距離の短縮(間締め)

・拠点間搬送ロットサイズの縮小

・ライン間搬送ロットサイズの縮小

・可動率アップ (設備故障・チョコ停時間低減、段取り替え時間低減)

・ラインバランスの改善(同期化) (2)生産期間内の正味作業スピード(正味作業時間/個)アップ = 転写速度のアップ ・習熟曲線の利用 ・・・ 安定的な作業配分、動作の標準化 ・新技術による転写速度アップ ・・・ 切削速度(回転・送り)、反応速度アップ ・新技術による作業の省略・統合 ・・・ 自動化・無人化、加工レス、仕上レス、組立レス (3) 需要予測の高精度化 (4) 工数計画の柔軟化:需要にあわせた生産能力の弾力的調整 (5) 生産計画の柔軟化:需要変動に合わせた生産計画の段階的調整 (6) 生産統制の厳格化:計画通りの生産の実現(可動率、直行率などのアップ)

東京大学 藤本隆宏

Page 68: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

東京大学 藤本隆宏

A

M

B

(M)

A

A

B

B

M

M

M

現 場 管 理 者 層 に

よ る 作 業 標 準 の

改 訂

作 業 設 計 ・ 設 備 設 計

製 造 性 を 考 慮

し た 製 品 設 計

製 品 設 計

製 造 性 を 考 慮

し た 部 品 設 計

部 品 設 計

多 能 工

多 工 程 も ち ; 柔 軟 な 課 業 配 分 ;

少 人 化

正 味 作 業 時 間 の 最 大 化

作 業 者 、 設 備

作 業 者 が 改 善 活 動 に 参 加

作 業 設 計 ・ 設 備 設 計

作 業 者 、 設 備

設 備 の 自 主 設 計 ・ 内 製

既 存 設 備 の 小 き ざ み な 改 善

ロ ー コ ス ト 自 動 化

フ レ キ シ ブ ル な 設 備

段 取 替 時 間 の 短 縮

予 防 保 全コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン

情 報 非 発 信 ・ 非 受 信 時 間

( ム ダ 等 ) の 圧 縮 ( J I T 、

ア ン ド ン 、 ラ イ ン ス ト ッ プ ひ も )

部 品 メ ー カ ー に よ る

継 続 的 改 善

部 品 サ プ ラ イ ヤ ー

カ ン バ ン

J I T 納 入

原 材 料 在 庫 の 削 減第 1 工 程

工 程 フ ロ ー の 設 計 の 改 良

作 業 ・ 設 備 設 計 の 改 良 に

先 行 さ せ る 。

1 個 流 し 、 ま た は

仕 掛 品 在 庫 の 削 減

第 2 工 程

混 流 ( 小 ロ ッ ト )

  組 立 ラ イ ン

最 終 製 品

在 庫 の 削 減

生 産 量 と

製 品 ミ ッ ク ス

の 平 準 化

( 短 期 的 な )

プ ル ・ シ ス テ ム

デ ィ ー ラ ー

  顧 客

情 報 転 写 ペ ー ス の 均 斉 化

( 平 準 化 、 小 ロ ッ ト 生 産 )

  仕 様 書 等

( 承 認 図 方 式 )

M+A+B M+A

(M+A+B)

ト ヨ タ 的生産システムの組織能力: 生産性と 生産リ ード タ イ ム

凡 例

検 査

加 工

生 産 資 源

在 庫

モ ノ の フ ロ ー

情 報 フ ロ ー

情 報 内 容A,B,M

設計情報の流れからみたトヨタ・システム (例)

Page 69: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

東京大学 藤本隆宏

設計情報の流れからみたトヨタ・システム(品質)

yes

nono

M+A

A

M

MM

?

B

製品設計

作業者、設備 作業者、設備 作業者、設備コミュニケーション

継続的改善

工程における

ノイズの除去

(5Sなど)

不良情報の

迅速な

フィードバック

顧客

最終検査 第2工程

スクラップ、

手直し

凡例

検査

加工

生産資源

在庫

モノのフロー

情報フロー

情報内容A,B,M

工程に体化した情報ストックの維持

(TPM、作業者訓練、作業標準の整備)

  誤情報発信の防止

(ポカヨケ、自動化など)サプライヤーの

品質作り込み

部品

サプライヤー

サプライヤーによる

継続的改善

部品の無検査

納入第1工程

スクラップ、

手直し

スクラップ、

手直し

 自主検査

(品質作り込み)

yes

M+A?

yes

1個流し、または

仕掛品在庫の削減

スクラップ、

手直し

yes

M+A+B?

M+A+B

M+A+B?

M+A

 不良情報の顕在化

(アンドン、自動化)

M+A+BM+A+B

(M+A+B)

no no

製造性を考慮した製品設計

トヨタ的生産システムの組織能力:適合品質

Page 70: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

統合型製品開発の組織能力(例:自動車) 基本は「早期・協調的な問題解決」

① 部品メーカーとの共同開発・連携調整 ・・・ デザインイン・承認図方式

② 生産現場の組織能力を製品開発に活用 ・・・ 試作・金型・量産立上げ

③ オーバーラップ型開発 ・・・ 製品開発と工程開発の期間重複と連携調整

④ 少数精鋭プロジェクトチーム ・・・ 多能型技術者によるチームワーク

⑤ 重量級プロダクト・マネジャー ・・・ コンセプト責任を持つ強い開発リーダー (以上クラーク・藤本研究)

⑥ 複数プロジェクト間のオーバーラップと連携調整 (延岡研究)

⑦ フロントローディング ・・・ 開発支援 IT による問題解決の前倒し (トムケ・藤本研究)

東京大学 藤本隆宏

Page 71: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

3レベルの組織能力構築

(1)ものづくり能力

顧客にとっての価値を生んでいる時間(正味作業時間)を常に意識。

顧客起点でさかのぼり、プロセスの流れを作る。

正味作業時間の最大化(ムダの最小化)を全社的に展開。

すなわち、設計情報の転写密度・転写精度の同時改善。

(2)改善能力

問題発見:問題(ムダ、ミス)がいやでも顕在化する仕掛け(徹底した見える化)。

問題解決:ツールをできるだけルーチン化(標準化)。ツール教育の徹底。

全員で、標準化された問題解決サイクル(PDCAサイクル)を回す。

(3)進化能力

常に「顧客満足」と「競争力」を意識する組織全体の「心構え」(トヨタ・ウェイ)。

当たり前のことを全員で継続的に・・「フォローアップ」「横展開」「歯止め」「標準」

何があっても(怪我の功名でも)最後は「能力構築」でフィニッシュする二枚腰

東京大学 藤本隆宏

Page 72: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

アーキテクチャによる製品の見極め

既成の産業分類という固定観念にとらわれずに、

現物の観察から日本の産業競争力を見極めること

東京大学 藤本隆宏

Page 73: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

「設計思想」のことを「アーキテクチャ」という

部 品

インターフェース

全体機能

サブ機能

インターフェース

部 品

部 品 部 品

製品に要求される機能を、製品の各構造部分(部品)にどのように配分し、 部品間のインターフェースをどのようにデザインするか、に関する、基本的な設計思想

東京大学 藤本隆宏

製品の機能 製品の構造

機能・構造の

対応関係

Page 74: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Modular Architecture モジュラー(組み合わせ)型

Integral Architecture

インテグラル(擦り合わせ)型

モジュラー(組み合わせ)型アーキテクチャと インテグラル(擦り合わせ)型アーキテクチャ

サスペンション

ボディ

エンジン

走行安定性

乗り心地

燃費

計算

印刷

投影

パソコン

プリンター

プロジェクター

パソコンのシステム

乗用車

東京大学 藤本隆宏

製品の構造

製品の構造 製品の機能

製品の機能

Page 75: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

製品アーキテクチャの基本タイプ ① 「組み合わせ」型(モジュラー型)アーキテクチャ : 機能完結部品を標準インターフェースでつなげる。

既存部品の寄せ集めでも、製品全体が機能を発揮。

② 「擦り合わせ」型(インテグラル型)アーキテクチャ : 製品ごとに部品を相互調整してカスタム設計(最適設計)する。

製品全体の機能発揮のためには、各部品の最適設計化が必要。

a. オープン・アーキテクチャ: モジュラーの一種 企業を超えた業界標準インターフェース

企業間で「寄せ集め設計」が可

b. クローズド・アーキテクチャ: 基本設計・インターフェース設計が社内で完結

東京大学 藤本隆宏

Page 76: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

製品アーキテクチャの基本タイプ

東京大学 藤本隆宏

モジュラー

(組み合わせ)

インテグラル

(擦り合わせ)

オープン

(業界標準)

クローズド

(囲い込み) 乗用車、オートバイ

ゲームソフト、

軽薄短小家電、他

メインフレーム、

工作機械、

レゴ

パソコン、同ソフト、

インターネット、

新金融商品、自転車、

クローズド・インテグラル クローズド・モジュラー

オープン・モジュラー

Page 77: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

モジュラー

( 組み合わせ)

インテグラル

( 擦り合わせ)

オープン

( 業界標準)

クローズド

( 囲い込み)乗用車、 オート バイ

ゲームソフト 、

軽薄短小家電、 他

メ インフレーム、

工作機械、

レゴ

パソコン、 同ソフト 、

インターネッ ト 、

新金融商品、 自転車、

クローズド ・ インテグラル クローズド ・ モジュラー

オープン・ モジュラー

製品アーキテクチャの基本タイプ

東京大学 藤本隆宏

最適設計された

専用部品

Page 78: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

擦り合わせ型(クローズド・インテグラル)製品:乗用車

汎用部品(いろんな会社の製品で使える)は10%以下

ModularIntegral

Closed

small cars

compact consumer electronics

internet

bicycle

LEGO (building-block toy)

motorcyclemachine tools

Figure 6 Basic Types of Product Architecture

Open

game software

mainframe computer

personal computer (PC)

PC software

Page 79: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

擦り合わせ型(クローズド・インテグラル)製品:高級オートバイ

すべての部品がデザイン部品。このモデル用の特殊設計

ModularIntegral

Closed

small cars

compact consumer electronics

internet

bicycle

LEGO (building-block toy)

motorcyclemachine tools

Figure 6 Basic Types of Product Architecture

Open

game software

mainframe computer

personal computer (PC)

PC software

Page 80: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

モジュラー

( 組み合わせ)

インテグラル

( 擦り合わせ)

オープン

( 業界標準)

クローズド

( 囲い込み)乗用車、 オート バイ

ゲームソフト 、

軽薄短小家電、 他

メ インフレーム、

工作機械、

レゴ

パソコン、 同ソフト 、

インターネッ ト 、

新金融商品、 自転車、

クローズド ・ インテグラル クローズド ・ モジュラー

オープン・ モジュラー

製品アーキテクチャの基本タイプ

東京大学 藤本隆宏

社内共通部品の

寄せ集め

Page 81: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

クローズド・モジュラーの製品(メインフレーム・コンピュータ)

自分の会社で設計した「社内共通部品」を寄せ集めて、

多くの種類の製品を作る

ModularIntegral

Closed

small cars

compact consumer electronics

internet

bicycle

LEGO (building-block toy)

motorcyclemachine tools

Figure 6 Basic Types of Product Architecture

Open

game software

mainframe computer

personal computer (PC)

PC software

Page 82: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

モジュラー

( 組み合わせ)

インテグラル

( 擦り合わせ)

オープン

( 業界標準)

クローズド

( 囲い込み)乗用車、 オート バイ

ゲームソフト 、

軽薄短小家電、 他

メ インフレーム、

工作機械、

レゴ

パソコン、 同ソフト 、

インターネッ ト 、

新金融商品、 自転車、

クローズド ・ インテグラル クローズド ・ モジュラー

オープン・ モジュラー

製品アーキテクチャの基本タイプ

東京大学 藤本隆宏

汎用部品の

寄せ集め

Page 83: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

オープン・モジュラー型の製品(パソコンシステム)

汎用部品(いろんな会社の製品で使える)は50%以上

ModularIntegral

Closed

small cars

compact consumer electronics

internet

bicycle

LEGO (building-block toy)

motorcyclemachine tools

Figure 6 Basic Types of Product Architecture

Open

game software

mainframe computer

personal computer (PC)

PC software

Page 84: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

(1)これはモノコック式 (乗用車系;よりインテグラル)

アーキテクチャ論で考えるなら、答えは・・・

・・・このタイプは日本企業が得意(ヨーロッパも)

(薄い鉄板を複雑に擦り合わせ設計して、全体で強度・剛性を出す)

ModularIntegral

Closed

small cars

compact consumer electronics

internet

bicycle

LEGO (building-block toy)

motorcyclemachine tools

Figure 6 Basic Types of Product Architecture

Open

game software

mainframe computer

personal computer (PC)

PC software

Page 85: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

(2)実はこれもモノコック式 (乗用車系;よりインテグラル)

・・・このタイプも日本企業が得意

(一見トラックだが、実は乗用車と同じ構造。薄い鉄板だけで出来ている)

ModularIntegral

Closed

small cars

compact consumer electronics

internet

bicycle

LEGO (building-block toy)

motorcyclemachine tools

Figure 6 Basic Types of Product Architecture

Open

game software

mainframe computer

personal computer (PC)

PC software

Page 86: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

しかしこれはボディ・オン・フレーム式 (トラック系;よりモジュラー)

(頑丈なハシゴ状の車台の上にシンプルなボディが乗っている)

・・・このタイプはアメリカ企業が得意

ModularIntegral

Closed

small cars

compact consumer electronics

internet

bicycle

LEGO (building-block toy)

motorcyclemachine tools

Figure 6 Basic Types of Product Architecture

Open

game software

mainframe computer

personal computer (PC)

PC software

Page 87: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

中国地場企業の乗用車(擬似オープン・モジュラー寄り)

・・・ コピー・改造部品の寄せ集めに近い - 中国に多い

ModularIntegral

Closed

small cars

compact consumer electronics

internet

bicycle

LEGO (building-block toy)

motorcyclemachine tools

Figure 6 Basic Types of Product Architecture

Open

game software

mainframe computer

personal computer (PC)

PC software

Page 88: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

100kW

ICEV

100kW 20kW 1kWh

HEV

100kW

40kW 10kWh

PHEV

10kW IC-RE

80kW 20kWh

80kW 20kWh

BEV

80kW 20kWh

10kW FC-RE

100kW FCEV

20kW 1kWh

ICE

BAT

FC

Types of Green Vehicles (High Performance)

M M

M

M M

M

Motor

Tank

T

T

T

T

T

T

Fujimoto, University of Tokyo, Hasegawa, Nissan

Page 89: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Functional Requirements of Green Cars

• Energy consumption: Advanced ICVs have performance limits in the long run.

• Acceleration: Electric motors and diesel engines have advantage vs. gasoline ICV

• Maxi. speed: Low specification vehicles, (e.g., low performance REV) have limits.

• High performance driving range: Evs & REVs may have limits after batteries are out..

• Energy refueling/recharging time: Recharging time disadvantage for EVs / PHVs.

• Density of refueling/recharging facilities: FCVs (hydrogen ) have disadvantage

• Quietness: EVs and FCVs may have advantage. Keys for product differentiation.

• Emission gasses: Diesel -- NOx problem. EV/FCV depend on power generation.

• Safety: Relative safety of batteries, fuel cells end fuel tanks is key.

• Fun to drive: Keys for product differentiation. Not so different between types.

• Vehicle cost: FCVs and long-driving-range EVs may be expensive.

• Operating Cost: EVs may have

• - ・・・And others

C Fujimoto and Ge, University of Tokyo

Page 90: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Performance Gaps (High Performance)

G-ICEV D-ICEV HEV PHEV ICE-REV FC-REV EV FCV

Energy efficiency

Acceleration:

Maxi. speed:

High perf. range:

Recharging time

Station Density

Quietness:.

Nox PM Emission

Safety:

Fun to drive:.

Vehicle cost:

Operating Cost:

X X

X X

X

X

X X

X

X

X X

X

X

X

C Fujimoto and Ge, University of Tokyo

Functional Gap = Market/Socially Required Levels of Functions – Current Performances

X = significantly negative

Page 91: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Connecting Functional Gaps and Modules

Energy consumption

High perform. range

recharging time

Density of stations

Nox Emission

gasses Vehicle cost

Operating Cost

Engine

Transmision

Gas Tank

Body

Chassis

Gasoline ICEV

Fuel Efficiency

CHALLENGE

Assumption for Comparison:

High-performance Type (e.g., 100km/h cruising)

Volume Assumption = 200K units per year

FUNCTION STRUCTURE

C Fujimoto, University of Tokyo

Page 92: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Connecting Functional Gaps and Modules

Energy consumption

High perform. range

recharging time

Density of stations

Nox Emission

Vehicle cost

Operating Cost

Engine

Transmision

n

Gas Tank

Body

Chassis

Diesel ICEV

Nox-CO2 Trade-Off

Fuel Efficiency

CHALLENGE FUNCTION STRUCTURE

Assumption for Comparison:

High-performance Type (e.g., 100km/h cruising)

Volume Assumption = 200K units per year

C Fujimoto, University of Tokyo

Page 93: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Connecting Functional Gaps and Modules

Energy consumption

High perform. range

recharging time

Density of stations

Emission gasses

Vehicle cost

Operating Cost

Motor

Motor

Battery

Body

Chassis

BEV

Recharg St.

Energy Density

Variable Cost Reduction

CHALLENGE FUNCTION STRUCTURE

Assumption for Comparison:

High-performance Type (e.g., 100km/h cruising)

Volume Assumption = 200K units per year

C Fujimoto, University of Tokyo

Page 94: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Connecting Functional Gaps and Modules

Energy consumption

High perform. range

recharging time

Density of stations

Emission gasses

Vehicle cost

Operating Cost

Engine

Motor

Motor

Battery

Body

Chassis

HEV (Parallel Hybrid)

Energy Density

Variable Cost Reduction

Fuel Efficiency & Power

Precise Engine-Motor Fit

CHALLENGE FUNCTION STRUCTURE

Assumption for Comparison:

High-performance Type (e.g., 100km/h cruising)

Volume Assumption = 200K units per year

C Fujimoto, University of Tokyo

Page 95: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Connecting Functional Gaps and Modules

Energy consumption

High perform. range

recharging time

Density of stations

Emission gasses

Vehicle cost

Operating Cost

Engine

Motor

Battery

Body

Chassis

PHEV (Plug-in Hybrid)

Energy Density

Variable Cost Reduction

Fuel Efficiency & Power

CHALLENGE FUNCTION STRUCTURE

Assumption for Comparison:

High-performance Type (e.g., 100km/h cruising)

Volume Assumption = 200K units per year

C Fujimoto, University of Tokyo

Page 96: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Connecting Functional Gaps and Modules

Energy consumption

High perform. range

recharging time

Density of stations

Emission gasses

Vehicle cost

Operating Cost

Motor

Battery

Fuel Cell

Body

Chassis

FCEV (Fuel Cell)

FC Cost Reduction

Fixed route

H2 Station

CHALLENGE FUNCTION STRUCTURE

Assumption for Comparison:

High-performance Type (e.g., 100km/h cruising)

Volume Assumption = 200K units per year

C Fujimoto, University of Tokyo

Page 97: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Connecting Functional Gaps and Modules

Energy consumption

High perform. range

recharging time

Density of stations

Emission gasses

Vehicle cost

Operating Cost

Motor

Battery

ICE-Generator

Body

Chassis

ICE REV (Range Extender)

FC Cost Reduction

Fixed route

CHALLENGE FUNCTION STRUCTURE

Assumption for Comparison:

High-performance Type (e.g., 100km/h cruising)

Volume Assumption = 200K units per year

C Fujimoto, University of Tokyo

Page 98: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Connecting Functional Gaps and Modules

Energy consumption

High perform. range

recharging time

Density of stations

Emission gasses

Vehicle cost

Operating Cost

Motor

Battery

Fuel Cell

Body

Chassis

FC REV (Range Extender)

FC Cost Reduction

Fixed route

H2 Station

CHALLENGE FUNCTION STRUCTURE

Assumption for Comparison:

High-performance Type (e.g., 100km/h cruising)

Volume Assumption = 200K units per year

C Fujimoto, University of Tokyo

Page 99: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

G-ICEV

D-ICEV

HEV

PHEV

ICE-

REV

FC-

REV

BEV

FCEV

アーキテクチャ・スペクトル

More Modular

e.g., GM Volt

e.g., Toyota (Mirai)

e.g., Symbio Fcell & Renault

e.g., Toyota Honda

e.g., European,

Many others

e.g., Mitsubishi European

e.g., TESLA

Renault-Nissan

Chinese

1

2

3

4

5 6 7

Point 1.0

Point 0.5

e.g., Japanese,

Many others

See Figures 7 where

C Fujimoto, University of Tokyo

自動車 PC,スマホ, etc.

More Integral

More Integral

More Modular

次世代車の技術多様性→アーキテクチャ多様性→企業多様性

Page 100: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

Fuel Cell Range Extenders – Modular

Chances for Start-ups

Page 101: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

アーキテクチャの比較優位

-設計立地から国際展開を考えるー

東京大学 藤本隆宏

Page 102: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

仮説:日本企業が強かった製品アーキテクチャ・・・

「擦り合わせ」と「囲い込み」

東京大学 藤本隆宏

モジュラー

(組み合わせ)

インテグラル

(擦り合わせ)

オープン

(業界標準)

クローズド

(囲い込み)

日本企業の強かった分野

低燃費乗用車、 高機能産業機械 ゲームソフト、高級鋼 機能性化学品、他

メインフレーム

パソコン、同ソフト、

インターネット、

新金融商品、自転車、

工作機械

レゴ

米国(中国)企業が強い?

Page 103: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

製品のインテグラル度・

モジュラー度の測定

東京大学・経済産業省合同調査(2005)

Page 104: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

日本企業は「擦り合わせ製品」で強い

インテグラル・アーキテクチャ度

輸出比率

東京大学

大鹿隆・藤本隆宏

Page 105: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

仮説:得意アーキテクチャの「地政学」的な分布

歴史や初期条件の違いにより、

特定の組織能力が国ごとに偏在する傾向がある

→ 相性の良い「得意アーキテクチャ」が異なる

日本:統合力 → 擦り合わせ製品(オペレーション重視)

欧州:表現力 → 擦り合わせ製品(デザイン・ブランド重視)

アメリカ:構想力 → モジュラー製品(知識集約的)

韓国:集中力 → モジュラー製品(資本集約的)

中国(華南):動員力 → モジュラー製品(労働集約的)

ASEAN・定着力? → 労働集約的な擦り合わせ製品 (中国と違う?)

台湾:転換力? → モジュラーと擦り合わせの柔軟な切替・使い分け

東京大学 藤本隆宏

Page 106: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

環太平洋の競争優位:擦り合わせ軸とモジュラー軸

擦り合わせ軸

モジュラー軸 US 中国(華南・長江)

日本

一部ASEAN

台湾

韓国

インド?

東京大学 藤本隆宏

「適財適所」の拠点選択とは?

中国(東北)

Page 107: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

上空・低空・地上のアナロジー(ICTとFAの例)

② 現場・現物(フィジカル)FA

リアルタイム情報による「流れ」の最適化と改善 迅速なフィードバック、自働化、トヨタ式、TPM 現場の言葉で使いこなす「―回転寿司型IT」

クローズド・アーキテクチャ、製品勝負 トヨタ、VW,・・通常の製造業

③ サイバーフィジカル インターフェイス層

高度な情報解釈・翻訳・蓄積機能や 選択的透過機能を持つ工程別スパコン?

工場・工程の超インテリジェント化 インダストリー4.0の主戦場?

GE,IBM, シーメンスなど(日本は?)

①ICT層(サイバー)

インターネット、スマホ・システム、 ソーシャルネットワーク

セキュリティ,帯域保証など課題 オープン・アーキテクチャ、プラットフォーム

アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブック

上空

地上

低空

重さのない世界

重さのある世界 フィールドバス センサー、 アクチュエータ、 FA機器

コントローラ(PLC) MES 産業用Ethenet エッジ/フォッグ コンピューティング

インターネット、AI クラウドコンピューティング ERP

東京大学 藤本隆宏

Page 108: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

現状認識:

質量のある世界とない世界の結合・・ややこしい時代に

21世紀は、以下の①と②、2つの潮流が交錯し、かじ取りが難しい。 ①重さのない weight-free な世界 (情報・電子や論理法則が支配) ・・・ ネットワーク化、モジュール化、多様化が爆発的に進む ②重さのある weghty な世界 (物質・エネルギーや物理法則が支配) ・・・安全・エネルギー・環境の制約条件が厳しくなり、設計は複雑化 一方的なものの見方(ICT一辺倒の議論、古いものづくり現場への引きこもり)では、潮目を見誤る。ものごとの両面を見る広い視野が必要! モノとコトは代替的ではなく補完的。ここを間違えた論説も多い。

東京大学 藤本隆宏

Page 109: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

中インテグラル・

外モジュラー

インテル、シマノ(ギア)

信越化学(半導体シリコン)

村田製作所(コンデンサ)

超小型家電、プリンタ・・・

アーキテクチャの位置取り(ポジショ ニング)戦略

顧客の製品・工程は?

インテグラル

モジュラー

インテグラル(カスタム) モジュラー(標準品)

中モジュラー

外インテグラル

デル(カスタマイズPC)

デンソー(一部の部品)

キーエンス(ソリューション)

ダイキン(ソリューション)

中インテグラル・

外インテグラル

日本の自動車・2輪部品

自動車用樹脂

システムLSI コピー・プリンタ消耗品・・

中モジュラー・

外モジュラー

汎用樹脂、

汎用グレード鋼、

汎用液晶、DRAM・・・

東京大学 藤本隆宏

自社の

製品・工程は?

Page 110: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

信越化学のポートフォリオ(推定)

顧客の製品・工程は?

インテグラル

モジュラー

インテグラル モジュラー

東京大学 藤本隆宏

自社の

製品・工程は?

B3○? シリコーン樹脂

プロダクトライフサイクル

〔 A:導入期 B:成長 C:成熟〕

利益〔◎非常に高い、

○まあまあ高い、

△平均的、×低い〕

シェア〔1:1位、2:2位、…〕

B1◎? 半導体シリコン?

C1◎ 塩ビ樹脂

開・製・販のすり合わせ

米で力勝負

先行投資+独自製造技術

Page 111: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

パワー・アナログ半導体

半導体・関連産業のマトリックス (推定・仮置き)

東京大学 藤本隆宏

SIP (システムインパッケージ)

ASSP (クアルコム)

DRAM

(サムソン)

MPU

(インテル)

半導体製造装置

ASCP(狭義のASIC)

ファンドリー(TSMC)

FPGA(field programmable gate array)

パソコン(デスクトップ)

デジタル家電(標準型)

マイコン(MCU)

コンデンサー等電子部品

EMS(ホンハイ)

ソリューション・ビジネス

日本が比較的強いもの・・赤字表示 外モジュラー 標準化(ナンバーワン戦略)

グローバル情報の収集

営業比率低

外インテグラル カスタム化

ローカル情報依存

営業費率高

設計費高

R&D費高

設計費安

R&D費安

中インテグラル

中モジュラー

Page 112: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

設計費高

R&D費高

外モジュラー 標準化(ナンバーワン戦略)

グローバル情報の収集

営業比率低

設計費安

R&D費安

外インテグラル カスタム化

ローカル情報依存

営業費率高

I 電子のアーキテクチャ戦略

佐藤千洋「電子部品産業における専業メーカーの競争優位」AMR2018に基づき、東京大学 藤本隆宏作成

新製品

特定顧客のためのフルカスタム品

承認図方式が多い

中インテグラル

中モジュラー

標準品

内部は最適設計化

自社仕様製品として

市場で販売

カスタム品

標準部品を活用した

カスタマイズ品

承認図方式が多い

Page 113: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

設計費高

R&D費高

外モジュラー 標準化(ナンバーワン戦略)

グローバル情報の収集

営業比率低

設計費安

R&D費安

外インテグラル カスタム化

ローカル情報依存

営業費率高

A電気のアーキテクチャ戦略

佐藤千洋「総合電子部品メーカーのアーキテクチャ戦略と開発組織の適合性」に基づき、東京大学 藤本隆宏作成

C製品(モジュール)

客先仕様 カスタム度が高

車載モジュール。承認図方式

エアコンパネルなど

車載モジュールが多い

中インテグラル

中モジュラー

A製品 (コンポーネント)

標準部品 市場で販売強化

スイッチ類、エンコーダなど

ホーム、モバイル、車載

B製品(モジュール)

客先仕様 A製品(部品)多用

車載モジュール。承認図方式

パワーウィンドウスイッチ

通信モジュール、チューナなど

Page 114: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

上空・低空・地上のアナロジー(ICTとFAの例)

② 現場・現物(フィジカル)FA

リアルタイム情報による「流れ」の最適化と改善 迅速なフィードバック、自働化、トヨタ式、TPM 現場の言葉で使いこなす「―回転寿司型IT」

クローズド・アーキテクチャ、製品勝負 トヨタ、VW,・・通常の製造業

③ サイバーフィジカル インターフェイス層

高度な情報解釈・翻訳・蓄積機能や 選択的透過機能を持つ工程別スパコン?

工場・工程の超インテリジェント化 インダストリー4.0の主戦場?

GE,IBM, シーメンスなど(日本は?)

①ICT層(サイバー)

インターネット、スマホ・システム、 ソーシャルネットワーク

セキュリティ,帯域保証など課題 オープン・アーキテクチャ、プラットフォーム

アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブック

上空

地上

低空

重さのない世界

重さのある世界 フィールドバス センサー、 アクチュエータ、 FA機器

コントローラ(PLC) MES 産業用Ethenet エッジ/フォッグ コンピューティング

インターネット、AI クラウドコンピューティング ERP

東京大学 藤本隆宏

Page 115: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

上空と地上のアナロジー 1970s-80s

質量のある物財産業・FA

(自動車、鉄、アナログ家電・・)

ものづくり企業の活躍

顧客へ向かう「良い流れ」を作る

トヨタ方式、リーン方式. カイゼン

ICT システム

メインフレームの時代

IBM が支配

PC の勃興

インターネットはまだ

上空

地上

第三次産業革命(電子が産業を動かす)は、

上空のICT と地上のFA/カーエレクトロニクス等が

別々に進化してきた

オープン・

モジュラー寄り

米国のプラットフォーム盟主企業

クローズド・

インテグラル寄り

日本のものづくり

優良企業

東京大学 藤本隆宏

Page 116: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

地上の競争:地道なプロダクト間競争

物理法則の働く世界。クローズド・アーキテクチャ、

製品間競争、現場間の能力構築競争、

比較的少数の寡占競争、revolutionというよりはevolution(進化)

人工物=製品は複雑化(安全・燃費・環境・機能)

Ford

Toyota

VW

Hyundai

GM

Honda

Fujimoto and Wallin

中クローズド・

アーキテクチャ

比較的ストレートな製品間のコスト・性能競争

Page 117: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

上空(ICT)の大きな変化 (1990年代)

プラットフォーム間競争の出現

質量のある物財の世界

フィジカル・インダストリー

(自動車、工場、エネルギー他)

質量の無い

ICTの世界

サイバー、デジタル

インターネット、クラウド。

AI、データセンター

しかしEverythingではない

セキュリティや帯域保証に問題

上空

地上

重さの無い世界、デジタル情報革命

オープンアーキテクチャ、業界標準、

破壊的イノベーション

米国プラットフォーム盟主企業

が席巻

プラットフォーム間競争

重さの有る世界、アナログ

クローズドアーキテクチャ

地道な進化と改善

寡占的な製品間競争

ものづくり、能力構築競争

トヨタ生産方式

リーン生産方式

東京大学 藤本隆宏

Page 118: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

「上空」の大変化(1)

x

aaaa

cccc

bbbb

xxxx

yyyy

zzzz

コア技術

Fujimoto and Wallin

オープン

アーキテクチャ

サバンナ(素朴なオープン型産業)

(ジョブスが自宅でPCを作っていた時代)

1970~80年代:クローズドのメインフレームはIBM支配

パソコンは創成期・・サバンナ状態

Page 119: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

aaaa

cccc

bbbb

xxxx zzzz

コア技術

オアシス

クローズド

オープン 参入障壁の低下

新興国の低コスト企業・工場

プラットフォーム

盟主企業

Fujimoto and Wallin

中クローズド

外オープンの

アーキテクチャ

位置取り戦略

業界標準インターフェース

コア技術を持つ企業が、業界標準インターフェースの創造により

プラットフォーム盟主企業に化ける (補完財とのネットワーク効果)

「オアシス」の建設と、サバンナの「砂漠化」(特に物財系補完財で)

ポスト冷戦期の低賃金新興国対抗と重なった歴史的偶然

日本のエレクトロ二クス系企業の大不振

「上空」の大変化(2) 1990年代以降

砂漠化

(特に物財系の

補完財で)

Page 120: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

中クローズド・外クローズド 伝統的な製品 ストレートな製品間競争 (良いものが勝つ) 製品が複雑なら寡占競争に 高性能自動車、高機能部品・材料

外アーキテクチャ (エコシステムのアーキテクチャ)

中アーキテクチャ (自製品のアーキテクチャ)

クローズド オープン

クローズド

オープン

©Takahiro Fujimoto, University of Tokyo

中クローズド・外オープン プラットフォームリーダー 業界標準インターフェース作り →エコシステム作りの競争 補完財の仲間を集める ネットワーク効果で独り勝ち アップル、グーグル、アマゾン・・ 米国が強い

中オープン・外クローズド カスタム化した製品 比較的小さな企業でも高収益 ダイレクトビジネスモデル(直販) ソリューション・ビジネス

中オープン・外オープン 業界標準 低コスト・低機能製品・大量生産 低賃金新興国が強い

プラットフォーム盟主企業の 中オープンクローズド・外オープン・アーキテクチャ戦略

Page 121: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

オープン領域とクローズド領域の混在・・・コア部品企業の勝ちパターンは?

自社が設計開発する部品2(パソコンのMPU、携帯電話システムの基地局、スマートフォンのベースバンド通信方式のLSI)が製品のコア機能を握ると自覚したコア部品企業(C2 )の戦略は?

企業C2は、自力か買収で隣接する部品1の設計開発能力を獲得。

部品1と部品2をクローズドな(企業特殊的な)部品間インターフェースで連結してコアのサブシステム1+2を再設計し、製品全体にとってのこのクローズド領域の機能的重要性を高める。

このコア企業(C1+2)は、技術力の向上により、サブシステムの固有技術の優位性を維持。

また技術秘匿や知的財産権の活用により、このコア=クローズド領域を占拠し続ける。

一方、このコア企業は、業界標準的な部品間オープン・インターフェースの設計を主導(業界標準形成は、デファクト、デジュール、コンセンサスの3手法)。部品3や部品4を設計・生産する周辺企業群(C3、C4)に対して技術規格書等を通じて公開する。

こうしてシステムは、はコア機能を担うクローズド領域(1+2)と、その他のオープン領域(3,4)に。2領域間は業界標準のオープンな部品間インターフェースで連結される。コア企業にとって、部品3や部品4は補完財。補完財の間では「ネットワーク外部性」が作用 ・・・ ビジネス・エコシステム

実例: パソコンのインテルはMPU(いわば部品2)した。携帯電話システムのGSM方式のエリクソンなど欧州企業連合は無線基地局と基地制御局の連結をクローズド化した。スマートフォンのベースバンド半導体チップのクアルコム社は企業買収によってCDMA通信方式技術にインターネット系Wi-Fi技術を連結。

オープン・アーキテクチャ(エコシステム)でのコア企業の勝ちパターン

東京大学 藤本隆宏 (新宅、小川、立本、他)

Page 122: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

2010年代:ややこしい時代・・上空と地上の結合

自動車など物財

Complex Physical Products (still 30K parts)

Modularization of Integral Products

Vehcles Heavier; Wire Harness 50 → 100 lb,

Many ECUs; Software 10M+ lines

Takahiro Fujimoto (Tokyo University, Lyon IAS)

上空

地上

情報処理負荷の爆発的拡大 安全、環境、資源、機能要求 可能が不可能に(設計悲観論)自動車は設計が次第に困難に 共通モジュール、あるいは 共通アーキテクチャで吸収?

ICTシステム

Cyber World

Intenet is Crucial,

but NOT Everything

Security, Band-width –--

Other Nets (Intra/Exclusive--)

情報処理能力の爆発的拡大 不可能が可能に(設計楽観論) 革命的変化Revolution, 破壊的Disruption オープン・モジュラー・アーキテクチャ

上空と地上では全く異なる動き・・ややこしい どちらかの論理で一方的に論じれれば誤る

Page 123: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

2010年代 – 上空の情報処理能力は十分か?

自動車

Complex Physical Products (still 30K parts)

Modularization of Integral Products

Vehcles Heavier; Wire Harness 50 → 100 lb,

Many ECUs; Software 10M+ lines

Takahiro Fujimoto (Tokyo University, Lyon IAS)

上空

地上

Explosion of Complexity Possible → Impossible Recalls, Scandals on Product Development Design Pessimism Forced Closed Modularization

ICTシステム Cyber World

Intenet is Crucial,

but NOT Everything

Security, Band-width –--

Other Nets (Intra/Exclusive--)

Explosion of Info. Processing Capability Impossible → Possible Design Optimism Revolution, Disruption Open Modularization Platfrom Competition

多数のセンサー、 ミリセカンド単位の応答 ・・すべて上空でIoT処理するのは無理

Page 124: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

2010年代・・「低空」 =インターフェース層の出現 (工場自動化の例)

フィジカル(現場、工場)

良い設計の良い流れ(広義のモノづくり)を実現す

る 統合型ものづくりIT

軽くて誰でも使えるITツール(FoA, VXL, CAIなど

) どこにセンサーを付けどのデータをとるかのセンス

FA-ICT インターフェース

サイバーフィジカル、デジタル・インダス

トリアル 地上から湧き上がるビッグデータの 高速での処理、意味づけ、仕分け

安価にコネクタブルなインテリジェント工

場機能

ICTシステム

サイバー、デジタル, クラウド

IoT? IIoT? インターネットは重要だが、

全てではない

Takahiro Fujimoto (Tokyo University, Lyon IAS)

上空

低空

地上

上空は質量のない世界 オープン・モジュラー・アーキテクチャ中

心 グローバル標準インターフェースがカギ ネットワーク外部性、補完材 プラットフォームリーダーの爆発的成長 米国勢が制空権を握る)

Google, Amazon, Apple Facebook

質量がある世界。物理法則の制約

安全・環境・資源・・サステナ

ブル 革命、破壊というよりは 進化、能力構築、積み重ね ものづくり能力構築、トヨタ式

「上空」とは役者が異なる。 フィジカルの分かる企業がサイバー

へ 台頭する Siemens, IBM, GE, -- IIoT,インダストリー4.0の主戦場 日本勢は? 日本とアジア? 「天下三分の計」にもっていけるか?

Page 125: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

応用:コネクテッドカーと自動運転:「4.0」と論理は類似

Cars, Trucks

Complex Physical Products (still 30K parts) Modularization of Integral Products

On Average Heavier; Wire Harness 50 → 100 lb, Many ECUs; Software 10M+ lines

Interface

ITS V2V, V2I, V2X

(Vehicle to Vehicle, Vehicle to Infrastructure)

DSRC (Dedicated Short Range Comm.)

LTE-V2X, ITS-Connected MEC (Mobile Edge Computing)

Infotainment

Google (Android Auto) Apple (CarPlay ; iOS)

SDL (Smart Device Link) IVI (In-Vehicle Infotainment)

Smart Phone Platform Leaders (Google, Apple) vs Coalition of Auto/Electronics Makers (SDL) Platform Competition -- Vertically Connected But No De-facto Standard yet Cloud Computing by Digital/Physical Firms

Still Closed-Integral and Complex! Some Closed Modularization (VW) But NOT Open Physically Evolution, Relatively Non-Disruptive Product still Matters, but Platforms Emerge?

Intelligent Transportation System Non-Internet V2V, V2I, V2X Horizontally Connected Edge/Fog Computing between Cars and Infrastructures

High Sky

Low Sky

Ground

東京大学 藤本隆宏

Page 126: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

I oT,インダストリ―4.0 ブームに関して

• 例によって過剰反応。今はインダストリー3.5 あたりと考えるべき?

第1次産業革命も第2次も100年前後。第三次もすぐには終わらない。

• シーメンス、SAPは、「レゴブロック式」(モジュラー型)の中国工場自動化ビジネスなどで順調にLow Sky戦略を進めるが、ドイツ政府のインダストリー4.0

は、「コネクテッドファクトリー」を中小中堅企業に普及させることでは苦戦している。中小企業が「コネクテッドありき」の話にはついてこない。

Connected ではなく、商売ありきで、安価で Connectable な工場を目指せ。

• 独国内のインダストリー4.0政策は失敗説も。しかし「真水部分」はある。

①盲信、②幻滅のあと、③真水の部分は必ず残る。その見極めが重要。

• 工場内ネットワーク化では、おそらく日本の優良現場は進んでいる。が、生産現場や消費現場の機械や部品の情報が全部インターネットで丸見えになることはありえない。セキュリティや帯域保証に弱いインターネットの性質上、現場の工程の側に、相当なレベルの工場インテリジェンス(ただし安いもの!)を持ち、そこが、どのレイヤーのどのプロトコルでどの情報を発信しどの情報を隠すかなど、精密な選択的情報処理を必要とする。→ 各工程に、安いが「スパコン」級のPLCやサーバーが必要?

東京大学 藤本隆宏

Page 127: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

プラットフォーム盟主企業と「強い補完財企業」の共存

流れの良い強い現場と、業界標準を取れる強い本社の相互補完

『砂漠の再緑化』の可能性 ・・ 村田製作所、ソニーCMOSセンサ

コア技術 クローズド

プラットフォーム企業

Creating Complementing

OASIS in the Desert?

(強い補完財企業)

オープン

クローズド

Fujimoto and Wallin

プラットフォーム企業

「強い補完財」戦法による砂漠の「再緑化」の可能性

ポスト冷戦期の終焉

「上空」の大変化(3) 2010年代

中クローズド

外オープンの

アーキテクチャ

位置取り戦略

Page 128: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

外アーキテクチャ

中アーキ テクチャ

クローズド インテグラル

オープン モジュラー

©Takahiro Fujimoto, University of Tokyo

日本の「地上」企業は、中インテグラル・外オープンの 「しぶとい哺乳類」戦法で、当面は「強い補完財」を目指せ

クローズド モジュラー

クローズド インテグラル

クローズド モジュラー

オープン モジュラー

中インテグラル・ 外オープン 追随許さぬ製品・現場と 業界標準を獲るアーキテクチャ戦略の両立 (強い現場・本社)

中インテグラル・ 外インテグラル イノベーションには ここで対応。しかし、 いずれは他セルへ移動

中モジュラー・ 外インテグラル インテグラル顧客の カスタマイズド要求には 自社の内共通部品や 業界標準部品を うまく組合わせて対応

中クローズド・ 外オープン 社内共通部部品も活用 業界標準を獲る (強い現場・本社)

Page 129: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

アーキテクチャ戦略・知財・標準化の整合的な連動

全部は見せない選択的な特許戦略 (機能を見せて構造・工程は隠す) 内部のブラックボックス化と両立する 中クローズドの知財戦略

土俵の周りを 業界標準の オープン・ インターフェースとして確立 これを世界に 認めさせる

例:ダイキンの中国でのインバーター技術戦略

「中インテグラル・外モジュラー」あるいは「中クローズド・外オープン」のアーキテクチャ位置取り戦略

東京大学 藤本隆宏

自社の知識の 全体を囲い込まず インタフェースの外

側の技術知識は 補完・連携企業群

と共有

自社が持つ技術知識

Page 130: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

ドイツのものづくりー新人工物の科学的定義で先行

• 産業に科学を持ち込んだ最初の国がドイツだ (アルフレッド・マーシャル評)

企業内研究所を最初に設立した国 (IGファルベン、19世紀後半)

• 新しい人工物に対する産官学連携の標準化戦略・・まず、その人工物の定義で先行

変数x. y、測定法、検査法、因果式y=f(x)など、産官学連携で先行標準化。

ここは非競争領域とみなす。結果、その後の企業間技術競争で優位に!

• シーメンスもボッシュも、標準ブロック(レゴのピース)を確立し, その組み合わせで

自動車や工場の制御システムを「マス・カスタマイズ」するモジュラー工場戦略

• 中国の「2025」工場との相性が良い。両国トップの商談。 「4.0」のもう一つの顔

SAPのクラウド、シーメンスのレゴ式制御システム、化学工場的SCADAシステム、 VWの20万台工場をコピーした工場設計で、自動化工場を手っ取り早く建設。

シーメンスの中国向けデジタル工場ビジネス絶好調。商売のうまさで日本を圧倒

日本のインテグラル工場とは、すみ分けになる?

• バックキャスティングが得意 (将来の「あるべき姿」の大きな絵をまず描く)

(VWのモジュール構想、インダストリー4.0・・・あるべき姿と現実を混同しないこと!

東京大学 藤本隆宏

Page 131: 「現場発 ものづくり地域戦略」藤本隆宏 まずは、現場を繰り返し観察することから出発 Yamagata, Japan, 2011.8 ものづくり現場発の戦略論・・・

強い現場と強い本社」の連携でデジタル化時代を乗り切る

(1) 強い現場 ・・ 地道なものづくり能力構築は続くこれは変わらない!

「グローバル能力構築競争の時代へ・・ 新興国賃金高騰

ハンデの緩和で、現場は、着実にものづくり能力構築を続ければ

生き残れる見通しが立ってきた ・・ 地域に根差す明るい現場

草の根イノベーション ・・ 生産性向上と需要創出の同時追求

顧客満足、利益確保、雇用確保の「三方よし」

(2) 強い本社 ・・ 本社がイノベーションを仕掛ける時代に

アーキテクチャの位置取り戦略、オープン標準獲得、ブランド戦略

強い現場を使い切る。現場と本社の相互信頼

潮目を読み切る的確な製品戦略を。固定観念にとらわれるな

「戦うマザー工場」を中心とした「二本足で立つグローバル戦略」

プラットフォーム競争の時代に「強い補完材」戦略で対抗

東京大学 藤本隆宏

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日本企業が今後、プロデューサー型イノベーション人材として

求める人材とは

アナログ

リアル

インテグラル

擦り合せ

チーム力

デジタル

バーチャル

モジュラー

組み合せ

個人力

テクノロジー ヒト・カネ 現場・現物

プロデューサー型の

イノベーション・リーダー人材 (繋いでなんぼ)

リアル技術

リテラシー 「良い設計」

に対する洞察力

ファイナンス

・会計知識 企業内外に眠る

資金を引き出し

利益化する力

知財・標準化

アーキテクチャ

戦略論

技術を収益に

結びつける知恵

ICT

リテラシー 「良い流れ」を

全社共有するICT

システム構想力

組織論の

実践知識 組織ポリティクス

と内発動機づけに

関する基礎知識

ものづくり現場

能力構築論

現場の本質を知り

現場の信頼を得、

現場力を企業力に

東京大学 藤本隆宏

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参考文献 ・製品開発の基本的「成功パターン」とは何か(自動車) → 藤本・クラーク『製品開発力』ダイヤモンド社 ・効果的製品開発手法の異なる産業間での比較(コンピュータ、医薬、他) → 藤本・安本共編著『成功する製品開発』有斐閣 ・トヨタ自動車の強さの源泉は何か? → 藤本『生産システムの進化論』有斐閣 ・製品アーキテクチャのコンセプトを戦略に活かすこと → 藤本・武石・青島編『ビジネス・アーキテクチャ』有斐閣 ・文系・理系の溝を埋めることをねらった生産管理・技術管理の教科書 → 藤本『生産マネジメント入門(上)(下)』日本経済新聞社 ・自動車産業はなぜ強かったのかを問う同時代史 → 藤本『能力構築競争』中公新書 ・ものづくり現場発の戦略論の提案 → 藤本『日本のもの造り哲学』日本経済新聞社 ・対中国戦略へのアーキテクチャ論の応用 → 藤本・新宅編著『中国製造業のアーキテクチャ分析』東洋経済新報社 ・サービス業にも広がる「開かれたものづくり」 → 藤本他『ものづくり経営学』光文社新書 ・日本の強いプロセス産業への応用 → 藤本・桑嶋編『日本型プロセス産業』有斐閣 ・現場発の国家政策・地域振興・産業活性化 → 藤本『ものづくりからの復活』日本経済新聞社 ・複雑化する製品・工程・人工物に企業はどう対応するか → 藤本編『「人工物」複雑化の時代』有斐閣 ・地域インストラクタースクールへの取組 → 藤本・柴田編 『ものづくり成長戦略』光文社新書 ・ものづくり現場の視点から見た日本産業論 → 藤本『現場主義の競争戦略』新潮新書 ・グローバル経営とものづくり経営を両立させるITシステム→藤本・朴編『ITを活かすものづくり』日経出版社 ・2010年代のものづくり現場の再評価→藤本・新宅・青島編『日本のものづくりの底力』東洋経済新報社 ・まずは現場の潜在力を正確に評価できる本社能力を→中沢・藤本・新宅『ものづくりの反撃』ちくま新書 ・上空と地上をつなぐ知恵を用いた現場発の企業戦略論→藤本『現場から見上げる企業戦略論』角川新書