Post on 12-Oct-2020
全学的な LMS 導入とその活用状況の分析
松本 高志*,小松 実*,山田 耕太郎*,川畑 成之*,太田 健吾*,菊池 弥生** (*阿南工業高等専門学校 創造技術工学科,**阿南工業高等専門学校 教育開発推進室) 1.はじめに
阿南高専は、積み上げてきた FD 活動の実績をもとに平成 26 年度文部科学省大学教育
再生加速プログラムに採択され、学修成果の可視化についての取り組みを推進している。
4つの柱となる取組は、コンピテンシー、いわゆる社会人力・人間力の評価・可視化、学
修ポートフォリオの活用、アカデミック・ポートフォリオおよびティーチング・ポートフ
ォリオの活用、IR データの活用である。これらを推進するにあたり基盤となるツールとし
て全学共通の LMS を導入した。導入以前の本校では、LMS は一部の学科、教員で使われ
ていた状態であった。本稿では、全学的な LMS 導入の取組と活用事例が増えている現状
について報告する。 2.LMS の活用
全学導入した LMS は manaba である。manaba を導入した 2014 年 11 月~2016 年 9月までの教員(専任)・学生がログインした件数をまとめたのが図 1 である。LMS を導入
してからしばらくは、活用されていない時期が続いていたが、学生調査や新入生アンケー
ト、卒業生アンケートといったアンケート等を中心に LMS を活用したことと、LMS の
manaba 取り扱い説明会を毎年度数回開催したことにより、教員・学生の利用者が増加し
た。学生に対する説明会は開催しておらず、ログイン方法やセキュリティの注意事項を A4用紙1枚にまとめたリーフレットを配布したのみである。教員に対しては、授業のみなら
ず研究室単位、クラブ活動単位、留学時の活用等も推奨しその利便性を様々な場面で体験
できるようにした。また、LMS 上のすべての授業コースには、あらかじめ授業回数分のミ
教員は専任教員を指す。 図1 導入時からの manaba ログイン状況(月別利用者割合)
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利用者割合(利用者
/在籍者)
学生 教員
ニッツペーパーアンケートを準備し、授業ごとの学生の理解度や質問を把握しやすいよう
にしている。 利用者の年次平均は、2014 年度は教員、学生とも 35%程度であったがその後利用者は
増加し、2016 年度(9 月まで)では学生が 93%、教員が 72%利用しており、本校の LMSは安定して利用されていることがわかる。 3.授業における LMS の活用実績
図 2 に 2014 年度以降の manaba および moodle を利用している正課科目数およびその
割合を示す。2014 年以降正課科目における LMS の利用数は増加しており、2016 年度 9月時点では開講科目のうち 43%の科目で manaba が、3%の科目で moodle が利用され、全
体として 46%の科目で LMS が利用されている。ここで、コース利用とは、manaba の小
テスト、レポート、プロジェクト、成績、コンテンツ、掲示板、コースニュースのいずれ
かの機能を 1 度以上利用した科目を指し、moodle においても同様の機能利用について調
査している。また、LMS の利用増加に比例するように学生の授業外学習時間も増加傾向に
ある。 manaba への 1 日の平均ログイン数について、平日の場合、学生は 259 回、教員は 27
回のログインが確認された。休日の場合、学生が 114 回、教員が 13 回であり休日のログ
イン数は平日の約半分となっている(同一人物による複数のログインも含む)。次に学生の
ログイン時間帯についてまとめたものを図 3 に示す。平日の学生のログインについて、ロ
グイン数が多い時間帯は 12 時~15 時、9 時~12 時、15 時~18 時の順であり、学校で授
業のある時間帯や休み時間等に多く利用されている。また、授業前の 6 時~9 時の時間帯
や就寝前の 21 時~24 時にも比較的多くの学生がログインしており、授業外の学修をサポ
ートしていることも確認できる。休日は、早朝と日中の時間帯の利用が減り、夜間の時間
帯における利用が多い。
図2 授業における LMS 利用 図3 学生の時間帯別ログイン状況
4.おわりに
実質的な全学での LMS 活用は、2015 年 4 月から開始した。新しい教育ツールを導入し
ても保守的な思考からなかなか受け入れられないことが多い中、今回の調査結果から LMS利用については順調に浸透していると考えられる。今後、さらに各教員における LMS の
活用内容についての新たな試行や改善が進み、授業設計はさらにアクティブ型になり、学
生の主体的な学びを引き出して授業外学習時間が増加する等の教育効果が上がることを期
待している。
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33%
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2014年度(後期) 2015年度(前期) 2015年度(後期) 2016年度(前期)
科目数
4%
4%
1%
1%
14%
5%
19%
13%
24%
21%
18%
21%
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11%
22%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
平日
休日
0時~3時 3時~6時 6時~9時 9時~12時12時~15時 15時~18時 18時~21時 21時~24時
1日目 個人研究ポスター発表
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全学的な LMS 導入とその活用状況の分析
松本 高志*,小松 実*,山田 耕太郎*,川畑 成之*,太田 健吾*,菊池 弥生** (*阿南工業高等専門学校 創造技術工学科,**阿南工業高等専門学校 教育開発推進室) 1.はじめに
阿南高専は、積み上げてきた FD 活動の実績をもとに平成 26 年度文部科学省大学教育
再生加速プログラムに採択され、学修成果の可視化についての取り組みを推進している。
4つの柱となる取組は、コンピテンシー、いわゆる社会人力・人間力の評価・可視化、学
修ポートフォリオの活用、アカデミック・ポートフォリオおよびティーチング・ポートフ
ォリオの活用、IR データの活用である。これらを推進するにあたり基盤となるツールとし
て全学共通の LMS を導入した。導入以前の本校では、LMS は一部の学科、教員で使われ
ていた状態であった。本稿では、全学的な LMS 導入の取組と活用事例が増えている現状
について報告する。 2.LMS の活用
全学導入した LMS は manaba である。manaba を導入した 2014 年 11 月~2016 年 9月までの教員(専任)・学生がログインした件数をまとめたのが図 1 である。LMS を導入
してからしばらくは、活用されていない時期が続いていたが、学生調査や新入生アンケー
ト、卒業生アンケートといったアンケート等を中心に LMS を活用したことと、LMS の
manaba 取り扱い説明会を毎年度数回開催したことにより、教員・学生の利用者が増加し
た。学生に対する説明会は開催しておらず、ログイン方法やセキュリティの注意事項を A4用紙1枚にまとめたリーフレットを配布したのみである。教員に対しては、授業のみなら
ず研究室単位、クラブ活動単位、留学時の活用等も推奨しその利便性を様々な場面で体験
できるようにした。また、LMS 上のすべての授業コースには、あらかじめ授業回数分のミ
教員は専任教員を指す。 図1 導入時からの manaba ログイン状況(月別利用者割合)
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利用者割合(利用者
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学生 教員
ニッツペーパーアンケートを準備し、授業ごとの学生の理解度や質問を把握しやすいよう
にしている。 利用者の年次平均は、2014 年度は教員、学生とも 35%程度であったがその後利用者は
増加し、2016 年度(9 月まで)では学生が 93%、教員が 72%利用しており、本校の LMSは安定して利用されていることがわかる。 3.授業における LMS の活用実績
図 2 に 2014 年度以降の manaba および moodle を利用している正課科目数およびその
割合を示す。2014 年以降正課科目における LMS の利用数は増加しており、2016 年度 9月時点では開講科目のうち 43%の科目で manaba が、3%の科目で moodle が利用され、全
体として 46%の科目で LMS が利用されている。ここで、コース利用とは、manaba の小
テスト、レポート、プロジェクト、成績、コンテンツ、掲示板、コースニュースのいずれ
かの機能を 1 度以上利用した科目を指し、moodle においても同様の機能利用について調
査している。また、LMS の利用増加に比例するように学生の授業外学習時間も増加傾向に
ある。 manaba への 1 日の平均ログイン数について、平日の場合、学生は 259 回、教員は 27
回のログインが確認された。休日の場合、学生が 114 回、教員が 13 回であり休日のログ
イン数は平日の約半分となっている(同一人物による複数のログインも含む)。次に学生の
ログイン時間帯についてまとめたものを図 3 に示す。平日の学生のログインについて、ロ
グイン数が多い時間帯は 12 時~15 時、9 時~12 時、15 時~18 時の順であり、学校で授
業のある時間帯や休み時間等に多く利用されている。また、授業前の 6 時~9 時の時間帯
や就寝前の 21 時~24 時にも比較的多くの学生がログインしており、授業外の学修をサポ
ートしていることも確認できる。休日は、早朝と日中の時間帯の利用が減り、夜間の時間
帯における利用が多い。
図2 授業における LMS 利用 図3 学生の時間帯別ログイン状況
4.おわりに
実質的な全学での LMS 活用は、2015 年 4 月から開始した。新しい教育ツールを導入し
ても保守的な思考からなかなか受け入れられないことが多い中、今回の調査結果から LMS利用については順調に浸透していると考えられる。今後、さらに各教員における LMS の
活用内容についての新たな試行や改善が進み、授業設計はさらにアクティブ型になり、学
生の主体的な学びを引き出して授業外学習時間が増加する等の教育効果が上がることを期
待している。
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