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田辺三菱製薬株式会社ホームページ http://www.mt-pharma.co.jp

発行月 : 平成26年1月発 行 : 田辺三菱製薬株式会社

〒541-8505 大阪市中央区北浜2-6-18お問い合せ先 : 営業推進部 06-6227-4666

山梨県版特別号

新時代を迎えた病院薬剤師~さらなる飛躍に向けた業務展開と課題~

山梨県病院薬剤師会 会長恵信甲府病院 薬剤部長(前・山梨県立中央病院薬剤部長)金丸 良雄 先生

山梨県病院薬剤師会 監事富士吉田市立病院薬剤科長渡辺  浩 先生

ファーマスコープは病院、保険薬局で輝く薬剤師の声をお届けする情報誌です。

■山梨県における病棟薬剤業務の現状と 病院薬剤師会の取り組み

――病棟薬剤業務実施加算の届け出状況を教えてください。

金丸 山梨県内で2012年4月の診療報酬改定時に病棟薬剤業務実施加算の算定を開始した施設は4病院で、その後、8病院ま

で増えましたが、2013年9月現在では6病院になっています。その

多くは中小病院です。病棟数の多い大規模病院ほど算定が難し

い傾向がみられます。

――富士吉田市立病院ではどのような状況でしょうか。

渡辺 当院は、304床、6病棟で、薬剤師が13人と、県内の他の病院に比べれば比較的マンパワーに恵まれており、病院長をは

じめ経営側もバックアップをしてくれたために、2012年4月の診

療報酬改定後の早い時期からの加算取得を目指しました。まず

2012年3月よりモデル病棟を設け、薬剤師を1人常駐させて、どの

ような業務にどの程度の時間を充当できるのかを試行し、同時

に約1カ月かけて、看護部と薬剤部で業務の擦り合わせを行いま

した。また、当院はまだ電子カルテが導入されておらず患者情報

が一元化されていないため、薬剤師が患者情報にアクセスできる

ように看護部の情報システムの環境整備を行いました(資料1)。一方で、薬剤科システムの中に組み込まれている服薬指導システ

ムを病棟でも活用できるようにLAN接続の設置、病棟に薬剤師

の業務スペースを確保するなど、薬剤師が病棟で活動できるよう

な環境を整備していきました。2012年5月から、各病棟に専属の

薬剤師を1人、そのフォローをする薬剤師を2病棟に2人配置し、2

病棟4人体制で病棟薬剤業務実施加算の算定を開始していま

す。病棟担当の薬剤師は、昼休み以外はほぼ終日病棟で業務に

あたっています。当初は、ベテランの薬剤師を病棟専属にしてマニ

ュアル作りも委ね、マニュアルが整備されてきた2013年からは原

則として若手を病棟専属にして、ベテランがフォローをするように

しました。ただし、病棟だけにいると調剤業務に不安が生じます

し、新たな採用品目も増えるため、2、3日おきに病棟専属と補助

をローテーションして、全ての薬剤業務を全員で行うようにして

います。例えば、化学療法に関しては、レジメン管理こそ1人の薬

剤師が専門で担当しますが、抗がん剤の調製業務は全員が関わ

ります。

――金丸先生の前任地の山梨県立中央病院はいかがでしたか。

金丸 山梨県立中央病院は671床、19病棟を有する県内最大規模の総合病院で、2012年の診療報酬改定時には薬剤師は正

規20人、臨時3人が在籍していましたが、産休・育休が6人で実

働17人でした。これでは加算を算定するための施設基準「1病棟

1週あたり20時間相当以上」を満たすことができないので、理事

長ら経営側の理解を得て、薬剤師を毎年3人程度、計10人増員

して、3年後をめどに算定する計画をたてました。理事長自身も

病棟で医師や看護師らから「病棟に薬剤師がいなくては困る」

という声をしばしば聞かれているようで、薬剤師の増員にも理解

を示してくれています。2013年度に薬剤師は正規22人、臨時3人

の25人に増えましたが、産休等により実働20人で、しかもうち2人

が時短勤務となっているので、早期に薬剤師の増員を図り、

2014年度には5人ほど採用するようです。このような経営側の配

慮に薬剤部も応えようと、これまで比較的少なかった薬剤管理

指導業務(年2,500件弱)に取り組み増収を確保するなど、「増

員しなければできない」ではなく、「今の人員でできる限りの病

棟業務をしよう」と努力してきました。他にも、薬剤管理指導業

務をある程度実施できている病棟ではカンファレンスへ参加し

て病棟スタッフとのコミュニケーションを深め、特に整形外科病

棟や循環器病棟では持参薬管理を始めています。

渡辺 当院では病棟薬剤業務の開始後、薬剤師が全ての病棟に常駐するようになってからは、メリットとして薬剤管理指導業

務は月100件以上増えて、今は700件程度で推移しています。

――山梨県病院薬剤師会としての会員の支援策について教えてください。

金丸 山梨県病院薬剤師会(以下、県病薬)では、2012年度より、病棟業務に関する新しい研修会を始めました。2012年度は

病棟薬剤業務実施加算を算定した病院から、どのように実施し

ているのか、また問題点や対策などについて発表してもらい、山

梨県立中央病院の現状についても報告しました。その後、20

代、30代、40代と年代別にグループになり、フリートークをしても

らいました(資料2)。いずれも非常に好評で、2013年度も秋に研修会を開催し、加算を算定している4病院から現状と課題など

を発表していただいた後、昨年同様、年代別のグループトークを

予定しています。20代のグループはこの研修会がきっかけにな

り、以後、自主的に情報交換をしているようです。

――人員確保のための方策についてはどのようにお考えですか。

金丸 病院薬剤師が増えるかどうかは、病院実習を通じて学生にその魅力をいかに伝えられるかにかかっていると思います。特

に薬学部のない山梨県のようなところでは、「ふるさと実習」が

重要で、日本病院薬剤師会も推進しています。学生が「卒業後

は勉強した成果を地元に還元したい」と思うためには、地元にも

レベルの高い魅力のある病院があることを知ってもらう必要があ

ります。病院薬剤師が多忙なため、実習生を多数受け入れた場

合に十分な教育を行えるのかという問題もありますが、まずは実

習生が来てくれなければ始まりません。ところが、肝心の調整機

構が十分に機能しておらず、山梨県の病院実習枠は50人以上あ

るにもかかわらず、2013年度に調整機構を介した実習生は11人

にとどまっています。幸い、大学側がこうした状況に危機感を抱

山梨県版 特別号

山梨県版特別号

いているようで、最近では大学から各病院への直接的なアプロ

ーチによる実習生が増えています。

渡辺 今年度の当院の2人の実習生もいずれも県内出身者でした。やはり山梨に縁のない学生が実習に来ることは考えにくいの

で、「ふるさと実習」を推進し、そこで病院薬剤師に魅力を感じ

て、卒業後に戻ってきてもらうのが一番の方法だと思います。

■病棟薬剤業務の標準化とその成果の 検証・評価

――病棟業務の標準化に向けた取り組みについて教えてください。

渡辺 これまでは、同じ業務を病棟ごとで違うやり方をしているケースがあったようです。そのため、薬剤部と看護部で業務の

擦り合わせを図る中で、同じ業務は全病棟でやり方を統一する

ことを決めました。例えば持参薬管理は、これまで看護師が担

当していて、医師からの指示をカルテに書くだけの病棟もあれ

ば、記録用紙を作成し「継続」とか「●月●日まで継続、以後中

止」等を記入する病棟もあったようです。いずれにしろ、看護師

による持参薬管理では間違え等によるヒヤリ・ハット報告があが

っていたので、病棟薬剤師が持参薬を管理することにし、看護

師にも持参薬を紙ベースで管理することを徹底するようにしまし

た。また、それまで看護師は口頭での伝達が多かったため、『定

期薬』や『医師との連絡』など幾つかの項目について、薬剤師や

看護師、医師がそれぞれに確認したいこと、伝えたことを書き込

んで、それを確認すればサインをするという連絡用紙を作成しま

した。定期薬に関しては、今は薬剤師が全て病棟でセットしてい

ますので、看護師から薬剤師に伝言がある場合は『定期薬専用

連絡用紙』に記入してもらいます。ただし、今後、当院でも電子カ

ルテが導入されれば、情報の一元化、共有化が図れるので、こう

した取り組みは大きく変わってくると思います。

金丸 標準化に向けた取り組みが必要なのは、病棟業務だけではありません。薬剤師のレベルの標準化も重要な課題です。特

に担当制をとっている病院では、例えばTDMができるのは担当

薬剤師に限られるため、この状況で病棟業務を始めるとTDMが

できる病棟とできない病棟に分かれてしまいます。そうなれば、

病棟の医師や看護師は「どうして他の病棟ではTDMができるの

に、うちの病棟ではできないのか」と不満に思うでしょう。同じこ

とが、がんや糖尿病などについても言えます。病棟薬剤業務実

施加算の算定開始までには、こうした薬剤師の知識や技術の差

をなくし、標準化を図る必要があるでしょうね。

――病棟業務の成果を検証・評価するためにはどのような取り組みが必要だとお考えですか。

渡辺 病棟業務の成果を検証・評価する指標としては、ヒヤリ・ハットの件数がよいのではないかと考えています。実は当院で

は、配薬間違いや無投薬などの与薬関連のヒヤリ・ハットの報告

が看護師から多く出されていたため、薬剤師の病棟駐在の要望

がありました。現在、定期薬に関しては、薬剤師がセットしている

ので間違いがほぼなくなり、薬剤師が常に定期薬のセット箱を確

認するようになってからは無投薬もほとんどなくなりました。おそ

らく、与薬関連のヒヤリ・ハットの報告はかなり減っていると思わ

れ、これが薬剤師の病棟業務の成果の検証・評価になると考え

ています。

金丸 私も、薬に関するヒヤリ・ハットの件数は薬剤師の病棟業務の成果を検証・評価する指標の1つだと思います。山梨県立中

央病院の場合は、全てが電子カルテで管理されているので、病

棟薬剤業務実施加算算定後、そのデータを解析する予定になっ

ています。実際、病棟薬剤業務が先行実施されている整形外科

病棟では、ヒヤリ・ハットの報告が明らかに減っていると聞いて

います。

渡辺 当院は、原則、薬剤師の病棟業務は終日ですが、療養型の病棟だけは半日であるため「どうしてうちの病棟には半日し

かいないのか」という声が上がっています。医師や看護師など

病棟スタッフからの薬剤師ニーズの度合いも病棟業務の成果の

検証・評価の材料になると思います。

■新時代の薬剤師へのメッセージ

――最後に、山梨県内の薬剤師の方々へのメッセージをお願いします。

渡辺 これまでの薬剤師は調剤が主な業務だったため、1人で業務を完結することができました。しかし、今は薬剤師の業務

範囲が拡大し、しかも、いろいろな専門職と力を合わせ、知恵

を出し合って1人の患者さんを支えていくチーム医療が求められ

ています。これはとてもやりがいのあることですが、逆に難しい

ことでもあります。より高度な知識と技術を、周りのニーズに応

じて、適切に提供していかなければならないからです。このよう

な環境では、4年制の薬剤師に比べて多くの知識や技術を身に

つけて就職してくる6年制の薬剤師でも、それをすぐに臨床で

生かせるわけではありません。彼らには独り善がりにならず、他

の医療スタッフと協調し、新世代の薬剤師としての役割を果た

していってくれることを期待しています。

金丸 私はもう37年間、病院薬剤師をやっています。その間、病院薬剤師の業務は大きく展開しましたが、今後もさまざまな

可能性があります。その中で忘れてほしくないのは、薬剤師は

「調剤が基本」「ジェネラリストが基本」であることです。なぜな

ら、調剤ができず、ジェネラリストでなければ、病棟業務は務ま

らないといっても過言ではないからです。その基本を踏まえた

上で、認定薬剤師や専門薬剤師などのスペシャリストを目指して

ほしいと思っています。また、絶えず問題意識を持ち、ぜひと

も、自分が関わった業務は必ず記録を残し、自院の研修会でも

いいので発表したり、論文にしたりしてほしいと思っています。

 2012年度の診療報酬改定において、薬剤師の病棟業務に対する評価として「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。患者さんへの安全かつ適切な薬物療法の提供のために、薬剤師はその専門性を最大限発揮するとともに、チーム医療の一員として、これまで以上に積極的に医師や看護師など他職種との連携・協働を進めることが求められています。 「ファーマスコープ特別号・山梨県版2013」では、恵信甲府病院薬剤部長の金丸良雄先生と、富士吉田市立病院薬剤科長の渡辺浩先生のお二人に、山梨県における病棟薬剤業務の現状と病院薬剤師会の取り組み、病棟業務の標準化とその成果の検証・評価などについてお話を伺う中から、新時代を迎えた病院薬剤師へのメッセージをお届けします。

富士山

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山梨県版 特別号

山梨県病院薬剤師会 会長恵信甲府病院 薬剤部長(前・山梨県立中央病院薬剤部長)

かね まる よし お

金丸 良雄 先生

山梨県病院薬剤師会 監事富士吉田市立病院薬剤科長

わた なべ ひろし

渡辺  浩 先生

■山梨県における病棟薬剤業務の現状と 病院薬剤師会の取り組み

――病棟薬剤業務実施加算の届け出状況を教えてください。

金丸 山梨県内で2012年4月の診療報酬改定時に病棟薬剤業務実施加算の算定を開始した施設は4病院で、その後、8病院ま

で増えましたが、2013年9月現在では6病院になっています。その

多くは中小病院です。病棟数の多い大規模病院ほど算定が難し

い傾向がみられます。

――富士吉田市立病院ではどのような状況でしょうか。

渡辺 当院は、304床、6病棟で、薬剤師が13人と、県内の他の病院に比べれば比較的マンパワーに恵まれており、病院長をは

じめ経営側もバックアップをしてくれたために、2012年4月の診

療報酬改定後の早い時期からの加算取得を目指しました。まず

2012年3月よりモデル病棟を設け、薬剤師を1人常駐させて、どの

ような業務にどの程度の時間を充当できるのかを試行し、同時

に約1カ月かけて、看護部と薬剤部で業務の擦り合わせを行いま

した。また、当院はまだ電子カルテが導入されておらず患者情報

が一元化されていないため、薬剤師が患者情報にアクセスできる

ように看護部の情報システムの環境整備を行いました(資料1)。一方で、薬剤科システムの中に組み込まれている服薬指導システ

ムを病棟でも活用できるようにLAN接続の設置、病棟に薬剤師

の業務スペースを確保するなど、薬剤師が病棟で活動できるよう

な環境を整備していきました。2012年5月から、各病棟に専属の

薬剤師を1人、そのフォローをする薬剤師を2病棟に2人配置し、2

病棟4人体制で病棟薬剤業務実施加算の算定を開始していま

す。病棟担当の薬剤師は、昼休み以外はほぼ終日病棟で業務に

あたっています。当初は、ベテランの薬剤師を病棟専属にしてマニ

ュアル作りも委ね、マニュアルが整備されてきた2013年からは原

則として若手を病棟専属にして、ベテランがフォローをするように

しました。ただし、病棟だけにいると調剤業務に不安が生じます

し、新たな採用品目も増えるため、2、3日おきに病棟専属と補助

をローテーションして、全ての薬剤業務を全員で行うようにして

います。例えば、化学療法に関しては、レジメン管理こそ1人の薬

剤師が専門で担当しますが、抗がん剤の調製業務は全員が関わ

ります。

――金丸先生の前任地の山梨県立中央病院はいかがでしたか。

金丸 山梨県立中央病院は671床、19病棟を有する県内最大規模の総合病院で、2012年の診療報酬改定時には薬剤師は正

規20人、臨時3人が在籍していましたが、産休・育休が6人で実

働17人でした。これでは加算を算定するための施設基準「1病棟

1週あたり20時間相当以上」を満たすことができないので、理事

長ら経営側の理解を得て、薬剤師を毎年3人程度、計10人増員

して、3年後をめどに算定する計画をたてました。理事長自身も

病棟で医師や看護師らから「病棟に薬剤師がいなくては困る」

という声をしばしば聞かれているようで、薬剤師の増員にも理解

を示してくれています。2013年度に薬剤師は正規22人、臨時3人

の25人に増えましたが、産休等により実働20人で、しかもうち2人

が時短勤務となっているので、早期に薬剤師の増員を図り、

2014年度には5人ほど採用するようです。このような経営側の配

慮に薬剤部も応えようと、これまで比較的少なかった薬剤管理

指導業務(年2,500件弱)に取り組み増収を確保するなど、「増

員しなければできない」ではなく、「今の人員でできる限りの病

棟業務をしよう」と努力してきました。他にも、薬剤管理指導業

務をある程度実施できている病棟ではカンファレンスへ参加し

て病棟スタッフとのコミュニケーションを深め、特に整形外科病

棟や循環器病棟では持参薬管理を始めています。

渡辺 当院では病棟薬剤業務の開始後、薬剤師が全ての病棟に常駐するようになってからは、メリットとして薬剤管理指導業

務は月100件以上増えて、今は700件程度で推移しています。

――山梨県病院薬剤師会としての会員の支援策について教えてください。

金丸 山梨県病院薬剤師会(以下、県病薬)では、2012年度より、病棟業務に関する新しい研修会を始めました。2012年度は

病棟薬剤業務実施加算を算定した病院から、どのように実施し

ているのか、また問題点や対策などについて発表してもらい、山

梨県立中央病院の現状についても報告しました。その後、20

代、30代、40代と年代別にグループになり、フリートークをしても

らいました(資料2)。いずれも非常に好評で、2013年度も秋に研修会を開催し、加算を算定している4病院から現状と課題など

を発表していただいた後、昨年同様、年代別のグループトークを

予定しています。20代のグループはこの研修会がきっかけにな

り、以後、自主的に情報交換をしているようです。

――人員確保のための方策についてはどのようにお考えですか。

金丸 病院薬剤師が増えるかどうかは、病院実習を通じて学生にその魅力をいかに伝えられるかにかかっていると思います。特

に薬学部のない山梨県のようなところでは、「ふるさと実習」が

重要で、日本病院薬剤師会も推進しています。学生が「卒業後

は勉強した成果を地元に還元したい」と思うためには、地元にも

レベルの高い魅力のある病院があることを知ってもらう必要があ

ります。病院薬剤師が多忙なため、実習生を多数受け入れた場

合に十分な教育を行えるのかという問題もありますが、まずは実

習生が来てくれなければ始まりません。ところが、肝心の調整機

構が十分に機能しておらず、山梨県の病院実習枠は50人以上あ

るにもかかわらず、2013年度に調整機構を介した実習生は11人

にとどまっています。幸い、大学側がこうした状況に危機感を抱

いているようで、最近では大学から各病院への直接的なアプロ

ーチによる実習生が増えています。

渡辺 今年度の当院の2人の実習生もいずれも県内出身者でした。やはり山梨に縁のない学生が実習に来ることは考えにくいの

で、「ふるさと実習」を推進し、そこで病院薬剤師に魅力を感じ

て、卒業後に戻ってきてもらうのが一番の方法だと思います。

■病棟薬剤業務の標準化とその成果の 検証・評価

――病棟業務の標準化に向けた取り組みについて教えてください。

渡辺 これまでは、同じ業務を病棟ごとで違うやり方をしているケースがあったようです。そのため、薬剤部と看護部で業務の

擦り合わせを図る中で、同じ業務は全病棟でやり方を統一する

ことを決めました。例えば持参薬管理は、これまで看護師が担

当していて、医師からの指示をカルテに書くだけの病棟もあれ

ば、記録用紙を作成し「継続」とか「●月●日まで継続、以後中

止」等を記入する病棟もあったようです。いずれにしろ、看護師

による持参薬管理では間違え等によるヒヤリ・ハット報告があが

っていたので、病棟薬剤師が持参薬を管理することにし、看護

師にも持参薬を紙ベースで管理することを徹底するようにしまし

た。また、それまで看護師は口頭での伝達が多かったため、『定

期薬』や『医師との連絡』など幾つかの項目について、薬剤師や

看護師、医師がそれぞれに確認したいこと、伝えたことを書き込

んで、それを確認すればサインをするという連絡用紙を作成しま

した。定期薬に関しては、今は薬剤師が全て病棟でセットしてい

ますので、看護師から薬剤師に伝言がある場合は『定期薬専用

連絡用紙』に記入してもらいます。ただし、今後、当院でも電子カ

ルテが導入されれば、情報の一元化、共有化が図れるので、こう

した取り組みは大きく変わってくると思います。

金丸 標準化に向けた取り組みが必要なのは、病棟業務だけではありません。薬剤師のレベルの標準化も重要な課題です。特

に担当制をとっている病院では、例えばTDMができるのは担当

薬剤師に限られるため、この状況で病棟業務を始めるとTDMが

できる病棟とできない病棟に分かれてしまいます。そうなれば、

病棟の医師や看護師は「どうして他の病棟ではTDMができるの

に、うちの病棟ではできないのか」と不満に思うでしょう。同じこ

とが、がんや糖尿病などについても言えます。病棟薬剤業務実

施加算の算定開始までには、こうした薬剤師の知識や技術の差

をなくし、標準化を図る必要があるでしょうね。

――病棟業務の成果を検証・評価するためにはどのような取り組みが必要だとお考えですか。

渡辺 病棟業務の成果を検証・評価する指標としては、ヒヤリ・ハットの件数がよいのではないかと考えています。実は当院で

は、配薬間違いや無投薬などの与薬関連のヒヤリ・ハットの報告

が看護師から多く出されていたため、薬剤師の病棟駐在の要望

がありました。現在、定期薬に関しては、薬剤師がセットしている

ので間違いがほぼなくなり、薬剤師が常に定期薬のセット箱を確

認するようになってからは無投薬もほとんどなくなりました。おそ

らく、与薬関連のヒヤリ・ハットの報告はかなり減っていると思わ

れ、これが薬剤師の病棟業務の成果の検証・評価になると考え

ています。

金丸 私も、薬に関するヒヤリ・ハットの件数は薬剤師の病棟業務の成果を検証・評価する指標の1つだと思います。山梨県立中

央病院の場合は、全てが電子カルテで管理されているので、病

棟薬剤業務実施加算算定後、そのデータを解析する予定になっ

ています。実際、病棟薬剤業務が先行実施されている整形外科

病棟では、ヒヤリ・ハットの報告が明らかに減っていると聞いて

います。

渡辺 当院は、原則、薬剤師の病棟業務は終日ですが、療養型の病棟だけは半日であるため「どうしてうちの病棟には半日し

かいないのか」という声が上がっています。医師や看護師など

病棟スタッフからの薬剤師ニーズの度合いも病棟業務の成果の

検証・評価の材料になると思います。

■新時代の薬剤師へのメッセージ

――最後に、山梨県内の薬剤師の方々へのメッセージをお願いします。

渡辺 これまでの薬剤師は調剤が主な業務だったため、1人で業務を完結することができました。しかし、今は薬剤師の業務

範囲が拡大し、しかも、いろいろな専門職と力を合わせ、知恵

を出し合って1人の患者さんを支えていくチーム医療が求められ

ています。これはとてもやりがいのあることですが、逆に難しい

ことでもあります。より高度な知識と技術を、周りのニーズに応

じて、適切に提供していかなければならないからです。このよう

な環境では、4年制の薬剤師に比べて多くの知識や技術を身に

つけて就職してくる6年制の薬剤師でも、それをすぐに臨床で

生かせるわけではありません。彼らには独り善がりにならず、他

の医療スタッフと協調し、新世代の薬剤師としての役割を果た

していってくれることを期待しています。

金丸 私はもう37年間、病院薬剤師をやっています。その間、病院薬剤師の業務は大きく展開しましたが、今後もさまざまな

可能性があります。その中で忘れてほしくないのは、薬剤師は

「調剤が基本」「ジェネラリストが基本」であることです。なぜな

ら、調剤ができず、ジェネラリストでなければ、病棟業務は務ま

らないといっても過言ではないからです。その基本を踏まえた

上で、認定薬剤師や専門薬剤師などのスペシャリストを目指して

ほしいと思っています。また、絶えず問題意識を持ち、ぜひと

も、自分が関わった業務は必ず記録を残し、自院の研修会でも

いいので発表したり、論文にしたりしてほしいと思っています。

看護師の情報システムから患者情報を閲覧(富士吉田市立病院)

資料1

山梨県病院薬剤師会病棟薬剤業務研修会

資料2

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山梨県版 特別号

山梨県病院薬剤師会 会長恵信甲府病院 薬剤部長(前・山梨県立中央病院薬剤部長)

かね まる よし お

金丸 良雄 先生

山梨県病院薬剤師会 監事富士吉田市立病院薬剤科長

わた なべ ひろし

渡辺  浩 先生

■山梨県における病棟薬剤業務の現状と 病院薬剤師会の取り組み

――病棟薬剤業務実施加算の届け出状況を教えてください。

金丸 山梨県内で2012年4月の診療報酬改定時に病棟薬剤業務実施加算の算定を開始した施設は4病院で、その後、8病院ま

で増えましたが、2013年9月現在では6病院になっています。その

多くは中小病院です。病棟数の多い大規模病院ほど算定が難し

い傾向がみられます。

――富士吉田市立病院ではどのような状況でしょうか。

渡辺 当院は、304床、6病棟で、薬剤師が13人と、県内の他の病院に比べれば比較的マンパワーに恵まれており、病院長をは

じめ経営側もバックアップをしてくれたために、2012年4月の診

療報酬改定後の早い時期からの加算取得を目指しました。まず

2012年3月よりモデル病棟を設け、薬剤師を1人常駐させて、どの

ような業務にどの程度の時間を充当できるのかを試行し、同時

に約1カ月かけて、看護部と薬剤部で業務の擦り合わせを行いま

した。また、当院はまだ電子カルテが導入されておらず患者情報

が一元化されていないため、薬剤師が患者情報にアクセスできる

ように看護部の情報システムの環境整備を行いました(資料1)。一方で、薬剤科システムの中に組み込まれている服薬指導システ

ムを病棟でも活用できるようにLAN接続の設置、病棟に薬剤師

の業務スペースを確保するなど、薬剤師が病棟で活動できるよう

な環境を整備していきました。2012年5月から、各病棟に専属の

薬剤師を1人、そのフォローをする薬剤師を2病棟に2人配置し、2

病棟4人体制で病棟薬剤業務実施加算の算定を開始していま

す。病棟担当の薬剤師は、昼休み以外はほぼ終日病棟で業務に

あたっています。当初は、ベテランの薬剤師を病棟専属にしてマニ

ュアル作りも委ね、マニュアルが整備されてきた2013年からは原

則として若手を病棟専属にして、ベテランがフォローをするように

しました。ただし、病棟だけにいると調剤業務に不安が生じます

し、新たな採用品目も増えるため、2、3日おきに病棟専属と補助

をローテーションして、全ての薬剤業務を全員で行うようにして

います。例えば、化学療法に関しては、レジメン管理こそ1人の薬

剤師が専門で担当しますが、抗がん剤の調製業務は全員が関わ

ります。

――金丸先生の前任地の山梨県立中央病院はいかがでしたか。

金丸 山梨県立中央病院は671床、19病棟を有する県内最大規模の総合病院で、2012年の診療報酬改定時には薬剤師は正

規20人、臨時3人が在籍していましたが、産休・育休が6人で実

働17人でした。これでは加算を算定するための施設基準「1病棟

1週あたり20時間相当以上」を満たすことができないので、理事

長ら経営側の理解を得て、薬剤師を毎年3人程度、計10人増員

して、3年後をめどに算定する計画をたてました。理事長自身も

病棟で医師や看護師らから「病棟に薬剤師がいなくては困る」

という声をしばしば聞かれているようで、薬剤師の増員にも理解

を示してくれています。2013年度に薬剤師は正規22人、臨時3人

の25人に増えましたが、産休等により実働20人で、しかもうち2人

が時短勤務となっているので、早期に薬剤師の増員を図り、

2014年度には5人ほど採用するようです。このような経営側の配

慮に薬剤部も応えようと、これまで比較的少なかった薬剤管理

指導業務(年2,500件弱)に取り組み増収を確保するなど、「増

員しなければできない」ではなく、「今の人員でできる限りの病

棟業務をしよう」と努力してきました。他にも、薬剤管理指導業

務をある程度実施できている病棟ではカンファレンスへ参加し

て病棟スタッフとのコミュニケーションを深め、特に整形外科病

棟や循環器病棟では持参薬管理を始めています。

渡辺 当院では病棟薬剤業務の開始後、薬剤師が全ての病棟に常駐するようになってからは、メリットとして薬剤管理指導業

務は月100件以上増えて、今は700件程度で推移しています。

――山梨県病院薬剤師会としての会員の支援策について教えてください。

金丸 山梨県病院薬剤師会(以下、県病薬)では、2012年度より、病棟業務に関する新しい研修会を始めました。2012年度は

病棟薬剤業務実施加算を算定した病院から、どのように実施し

ているのか、また問題点や対策などについて発表してもらい、山

梨県立中央病院の現状についても報告しました。その後、20

代、30代、40代と年代別にグループになり、フリートークをしても

らいました(資料2)。いずれも非常に好評で、2013年度も秋に研修会を開催し、加算を算定している4病院から現状と課題など

を発表していただいた後、昨年同様、年代別のグループトークを

予定しています。20代のグループはこの研修会がきっかけにな

り、以後、自主的に情報交換をしているようです。

――人員確保のための方策についてはどのようにお考えですか。

金丸 病院薬剤師が増えるかどうかは、病院実習を通じて学生にその魅力をいかに伝えられるかにかかっていると思います。特

に薬学部のない山梨県のようなところでは、「ふるさと実習」が

重要で、日本病院薬剤師会も推進しています。学生が「卒業後

は勉強した成果を地元に還元したい」と思うためには、地元にも

レベルの高い魅力のある病院があることを知ってもらう必要があ

ります。病院薬剤師が多忙なため、実習生を多数受け入れた場

合に十分な教育を行えるのかという問題もありますが、まずは実

習生が来てくれなければ始まりません。ところが、肝心の調整機

構が十分に機能しておらず、山梨県の病院実習枠は50人以上あ

るにもかかわらず、2013年度に調整機構を介した実習生は11人

にとどまっています。幸い、大学側がこうした状況に危機感を抱

いているようで、最近では大学から各病院への直接的なアプロ

ーチによる実習生が増えています。

渡辺 今年度の当院の2人の実習生もいずれも県内出身者でした。やはり山梨に縁のない学生が実習に来ることは考えにくいの

で、「ふるさと実習」を推進し、そこで病院薬剤師に魅力を感じ

て、卒業後に戻ってきてもらうのが一番の方法だと思います。

■病棟薬剤業務の標準化とその成果の 検証・評価

――病棟業務の標準化に向けた取り組みについて教えてください。

渡辺 これまでは、同じ業務を病棟ごとで違うやり方をしているケースがあったようです。そのため、薬剤部と看護部で業務の

擦り合わせを図る中で、同じ業務は全病棟でやり方を統一する

ことを決めました。例えば持参薬管理は、これまで看護師が担

当していて、医師からの指示をカルテに書くだけの病棟もあれ

ば、記録用紙を作成し「継続」とか「●月●日まで継続、以後中

止」等を記入する病棟もあったようです。いずれにしろ、看護師

による持参薬管理では間違え等によるヒヤリ・ハット報告があが

っていたので、病棟薬剤師が持参薬を管理することにし、看護

師にも持参薬を紙ベースで管理することを徹底するようにしまし

た。また、それまで看護師は口頭での伝達が多かったため、『定

期薬』や『医師との連絡』など幾つかの項目について、薬剤師や

看護師、医師がそれぞれに確認したいこと、伝えたことを書き込

んで、それを確認すればサインをするという連絡用紙を作成しま

した。定期薬に関しては、今は薬剤師が全て病棟でセットしてい

ますので、看護師から薬剤師に伝言がある場合は『定期薬専用

連絡用紙』に記入してもらいます。ただし、今後、当院でも電子カ

ルテが導入されれば、情報の一元化、共有化が図れるので、こう

した取り組みは大きく変わってくると思います。

金丸 標準化に向けた取り組みが必要なのは、病棟業務だけではありません。薬剤師のレベルの標準化も重要な課題です。特

に担当制をとっている病院では、例えばTDMができるのは担当

薬剤師に限られるため、この状況で病棟業務を始めるとTDMが

できる病棟とできない病棟に分かれてしまいます。そうなれば、

病棟の医師や看護師は「どうして他の病棟ではTDMができるの

に、うちの病棟ではできないのか」と不満に思うでしょう。同じこ

とが、がんや糖尿病などについても言えます。病棟薬剤業務実

施加算の算定開始までには、こうした薬剤師の知識や技術の差

をなくし、標準化を図る必要があるでしょうね。

――病棟業務の成果を検証・評価するためにはどのような取り組みが必要だとお考えですか。

渡辺 病棟業務の成果を検証・評価する指標としては、ヒヤリ・ハットの件数がよいのではないかと考えています。実は当院で

は、配薬間違いや無投薬などの与薬関連のヒヤリ・ハットの報告

が看護師から多く出されていたため、薬剤師の病棟駐在の要望

がありました。現在、定期薬に関しては、薬剤師がセットしている

ので間違いがほぼなくなり、薬剤師が常に定期薬のセット箱を確

認するようになってからは無投薬もほとんどなくなりました。おそ

らく、与薬関連のヒヤリ・ハットの報告はかなり減っていると思わ

れ、これが薬剤師の病棟業務の成果の検証・評価になると考え

ています。

金丸 私も、薬に関するヒヤリ・ハットの件数は薬剤師の病棟業務の成果を検証・評価する指標の1つだと思います。山梨県立中

央病院の場合は、全てが電子カルテで管理されているので、病

棟薬剤業務実施加算算定後、そのデータを解析する予定になっ

ています。実際、病棟薬剤業務が先行実施されている整形外科

病棟では、ヒヤリ・ハットの報告が明らかに減っていると聞いて

います。

渡辺 当院は、原則、薬剤師の病棟業務は終日ですが、療養型の病棟だけは半日であるため「どうしてうちの病棟には半日し

かいないのか」という声が上がっています。医師や看護師など

病棟スタッフからの薬剤師ニーズの度合いも病棟業務の成果の

検証・評価の材料になると思います。

■新時代の薬剤師へのメッセージ

――最後に、山梨県内の薬剤師の方々へのメッセージをお願いします。

渡辺 これまでの薬剤師は調剤が主な業務だったため、1人で業務を完結することができました。しかし、今は薬剤師の業務

範囲が拡大し、しかも、いろいろな専門職と力を合わせ、知恵

を出し合って1人の患者さんを支えていくチーム医療が求められ

ています。これはとてもやりがいのあることですが、逆に難しい

ことでもあります。より高度な知識と技術を、周りのニーズに応

じて、適切に提供していかなければならないからです。このよう

な環境では、4年制の薬剤師に比べて多くの知識や技術を身に

つけて就職してくる6年制の薬剤師でも、それをすぐに臨床で

生かせるわけではありません。彼らには独り善がりにならず、他

の医療スタッフと協調し、新世代の薬剤師としての役割を果た

していってくれることを期待しています。

金丸 私はもう37年間、病院薬剤師をやっています。その間、病院薬剤師の業務は大きく展開しましたが、今後もさまざまな

可能性があります。その中で忘れてほしくないのは、薬剤師は

「調剤が基本」「ジェネラリストが基本」であることです。なぜな

ら、調剤ができず、ジェネラリストでなければ、病棟業務は務ま

らないといっても過言ではないからです。その基本を踏まえた

上で、認定薬剤師や専門薬剤師などのスペシャリストを目指して

ほしいと思っています。また、絶えず問題意識を持ち、ぜひと

も、自分が関わった業務は必ず記録を残し、自院の研修会でも

いいので発表したり、論文にしたりしてほしいと思っています。

看護師の情報システムから患者情報を閲覧(富士吉田市立病院)

資料1

山梨県病院薬剤師会病棟薬剤業務研修会

資料2

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田辺三菱製薬株式会社ホームページ http://www.mt-pharma.co.jp

発行月 : 平成26年1月発 行 : 田辺三菱製薬株式会社

〒541-8505 大阪市中央区北浜2-6-18お問い合せ先 : 営業推進部 06-6227-4666

山梨県版特別号

新時代を迎えた病院薬剤師~さらなる飛躍に向けた業務展開と課題~

山梨県病院薬剤師会 会長恵信甲府病院 薬剤部長(前・山梨県立中央病院薬剤部長)金丸 良雄 先生

山梨県病院薬剤師会 監事富士吉田市立病院薬剤科長渡辺  浩 先生

ファーマスコープは病院、保険薬局で輝く薬剤師の声をお届けする情報誌です。

■山梨県における病棟薬剤業務の現状と 病院薬剤師会の取り組み

――病棟薬剤業務実施加算の届け出状況を教えてください。

金丸 山梨県内で2012年4月の診療報酬改定時に病棟薬剤業務実施加算の算定を開始した施設は4病院で、その後、8病院ま

で増えましたが、2013年9月現在では6病院になっています。その

多くは中小病院です。病棟数の多い大規模病院ほど算定が難し

い傾向がみられます。

――富士吉田市立病院ではどのような状況でしょうか。

渡辺 当院は、304床、6病棟で、薬剤師が13人と、県内の他の病院に比べれば比較的マンパワーに恵まれており、病院長をは

じめ経営側もバックアップをしてくれたために、2012年4月の診

療報酬改定後の早い時期からの加算取得を目指しました。まず

2012年3月よりモデル病棟を設け、薬剤師を1人常駐させて、どの

ような業務にどの程度の時間を充当できるのかを試行し、同時

に約1カ月かけて、看護部と薬剤部で業務の擦り合わせを行いま

した。また、当院はまだ電子カルテが導入されておらず患者情報

が一元化されていないため、薬剤師が患者情報にアクセスできる

ように看護部の情報システムの環境整備を行いました(資料1)。一方で、薬剤科システムの中に組み込まれている服薬指導システ

ムを病棟でも活用できるようにLAN接続の設置、病棟に薬剤師

の業務スペースを確保するなど、薬剤師が病棟で活動できるよう

な環境を整備していきました。2012年5月から、各病棟に専属の

薬剤師を1人、そのフォローをする薬剤師を2病棟に2人配置し、2

病棟4人体制で病棟薬剤業務実施加算の算定を開始していま

す。病棟担当の薬剤師は、昼休み以外はほぼ終日病棟で業務に

あたっています。当初は、ベテランの薬剤師を病棟専属にしてマニ

ュアル作りも委ね、マニュアルが整備されてきた2013年からは原

則として若手を病棟専属にして、ベテランがフォローをするように

しました。ただし、病棟だけにいると調剤業務に不安が生じます

し、新たな採用品目も増えるため、2、3日おきに病棟専属と補助

をローテーションして、全ての薬剤業務を全員で行うようにして

います。例えば、化学療法に関しては、レジメン管理こそ1人の薬

剤師が専門で担当しますが、抗がん剤の調製業務は全員が関わ

ります。

――金丸先生の前任地の山梨県立中央病院はいかがでしたか。

金丸 山梨県立中央病院は671床、19病棟を有する県内最大規模の総合病院で、2012年の診療報酬改定時には薬剤師は正

規20人、臨時3人が在籍していましたが、産休・育休が6人で実

働17人でした。これでは加算を算定するための施設基準「1病棟

1週あたり20時間相当以上」を満たすことができないので、理事

長ら経営側の理解を得て、薬剤師を毎年3人程度、計10人増員

して、3年後をめどに算定する計画をたてました。理事長自身も

病棟で医師や看護師らから「病棟に薬剤師がいなくては困る」

という声をしばしば聞かれているようで、薬剤師の増員にも理解

を示してくれています。2013年度に薬剤師は正規22人、臨時3人

の25人に増えましたが、産休等により実働20人で、しかもうち2人

が時短勤務となっているので、早期に薬剤師の増員を図り、

2014年度には5人ほど採用するようです。このような経営側の配

慮に薬剤部も応えようと、これまで比較的少なかった薬剤管理

指導業務(年2,500件弱)に取り組み増収を確保するなど、「増

員しなければできない」ではなく、「今の人員でできる限りの病

棟業務をしよう」と努力してきました。他にも、薬剤管理指導業

務をある程度実施できている病棟ではカンファレンスへ参加し

て病棟スタッフとのコミュニケーションを深め、特に整形外科病

棟や循環器病棟では持参薬管理を始めています。

渡辺 当院では病棟薬剤業務の開始後、薬剤師が全ての病棟に常駐するようになってからは、メリットとして薬剤管理指導業

務は月100件以上増えて、今は700件程度で推移しています。

――山梨県病院薬剤師会としての会員の支援策について教えてください。

金丸 山梨県病院薬剤師会(以下、県病薬)では、2012年度より、病棟業務に関する新しい研修会を始めました。2012年度は

病棟薬剤業務実施加算を算定した病院から、どのように実施し

ているのか、また問題点や対策などについて発表してもらい、山

梨県立中央病院の現状についても報告しました。その後、20

代、30代、40代と年代別にグループになり、フリートークをしても

らいました(資料2)。いずれも非常に好評で、2013年度も秋に研修会を開催し、加算を算定している4病院から現状と課題など

を発表していただいた後、昨年同様、年代別のグループトークを

予定しています。20代のグループはこの研修会がきっかけにな

り、以後、自主的に情報交換をしているようです。

――人員確保のための方策についてはどのようにお考えですか。

金丸 病院薬剤師が増えるかどうかは、病院実習を通じて学生にその魅力をいかに伝えられるかにかかっていると思います。特

に薬学部のない山梨県のようなところでは、「ふるさと実習」が

重要で、日本病院薬剤師会も推進しています。学生が「卒業後

は勉強した成果を地元に還元したい」と思うためには、地元にも

レベルの高い魅力のある病院があることを知ってもらう必要があ

ります。病院薬剤師が多忙なため、実習生を多数受け入れた場

合に十分な教育を行えるのかという問題もありますが、まずは実

習生が来てくれなければ始まりません。ところが、肝心の調整機

構が十分に機能しておらず、山梨県の病院実習枠は50人以上あ

るにもかかわらず、2013年度に調整機構を介した実習生は11人

にとどまっています。幸い、大学側がこうした状況に危機感を抱

山梨県版 特別号

山梨県版特別号

いているようで、最近では大学から各病院への直接的なアプロ

ーチによる実習生が増えています。

渡辺 今年度の当院の2人の実習生もいずれも県内出身者でした。やはり山梨に縁のない学生が実習に来ることは考えにくいの

で、「ふるさと実習」を推進し、そこで病院薬剤師に魅力を感じ

て、卒業後に戻ってきてもらうのが一番の方法だと思います。

■病棟薬剤業務の標準化とその成果の 検証・評価

――病棟業務の標準化に向けた取り組みについて教えてください。

渡辺 これまでは、同じ業務を病棟ごとで違うやり方をしているケースがあったようです。そのため、薬剤部と看護部で業務の

擦り合わせを図る中で、同じ業務は全病棟でやり方を統一する

ことを決めました。例えば持参薬管理は、これまで看護師が担

当していて、医師からの指示をカルテに書くだけの病棟もあれ

ば、記録用紙を作成し「継続」とか「●月●日まで継続、以後中

止」等を記入する病棟もあったようです。いずれにしろ、看護師

による持参薬管理では間違え等によるヒヤリ・ハット報告があが

っていたので、病棟薬剤師が持参薬を管理することにし、看護

師にも持参薬を紙ベースで管理することを徹底するようにしまし

た。また、それまで看護師は口頭での伝達が多かったため、『定

期薬』や『医師との連絡』など幾つかの項目について、薬剤師や

看護師、医師がそれぞれに確認したいこと、伝えたことを書き込

んで、それを確認すればサインをするという連絡用紙を作成しま

した。定期薬に関しては、今は薬剤師が全て病棟でセットしてい

ますので、看護師から薬剤師に伝言がある場合は『定期薬専用

連絡用紙』に記入してもらいます。ただし、今後、当院でも電子カ

ルテが導入されれば、情報の一元化、共有化が図れるので、こう

した取り組みは大きく変わってくると思います。

金丸 標準化に向けた取り組みが必要なのは、病棟業務だけではありません。薬剤師のレベルの標準化も重要な課題です。特

に担当制をとっている病院では、例えばTDMができるのは担当

薬剤師に限られるため、この状況で病棟業務を始めるとTDMが

できる病棟とできない病棟に分かれてしまいます。そうなれば、

病棟の医師や看護師は「どうして他の病棟ではTDMができるの

に、うちの病棟ではできないのか」と不満に思うでしょう。同じこ

とが、がんや糖尿病などについても言えます。病棟薬剤業務実

施加算の算定開始までには、こうした薬剤師の知識や技術の差

をなくし、標準化を図る必要があるでしょうね。

――病棟業務の成果を検証・評価するためにはどのような取り組みが必要だとお考えですか。

渡辺 病棟業務の成果を検証・評価する指標としては、ヒヤリ・ハットの件数がよいのではないかと考えています。実は当院で

は、配薬間違いや無投薬などの与薬関連のヒヤリ・ハットの報告

が看護師から多く出されていたため、薬剤師の病棟駐在の要望

がありました。現在、定期薬に関しては、薬剤師がセットしている

ので間違いがほぼなくなり、薬剤師が常に定期薬のセット箱を確

認するようになってからは無投薬もほとんどなくなりました。おそ

らく、与薬関連のヒヤリ・ハットの報告はかなり減っていると思わ

れ、これが薬剤師の病棟業務の成果の検証・評価になると考え

ています。

金丸 私も、薬に関するヒヤリ・ハットの件数は薬剤師の病棟業務の成果を検証・評価する指標の1つだと思います。山梨県立中

央病院の場合は、全てが電子カルテで管理されているので、病

棟薬剤業務実施加算算定後、そのデータを解析する予定になっ

ています。実際、病棟薬剤業務が先行実施されている整形外科

病棟では、ヒヤリ・ハットの報告が明らかに減っていると聞いて

います。

渡辺 当院は、原則、薬剤師の病棟業務は終日ですが、療養型の病棟だけは半日であるため「どうしてうちの病棟には半日し

かいないのか」という声が上がっています。医師や看護師など

病棟スタッフからの薬剤師ニーズの度合いも病棟業務の成果の

検証・評価の材料になると思います。

■新時代の薬剤師へのメッセージ

――最後に、山梨県内の薬剤師の方々へのメッセージをお願いします。

渡辺 これまでの薬剤師は調剤が主な業務だったため、1人で業務を完結することができました。しかし、今は薬剤師の業務

範囲が拡大し、しかも、いろいろな専門職と力を合わせ、知恵

を出し合って1人の患者さんを支えていくチーム医療が求められ

ています。これはとてもやりがいのあることですが、逆に難しい

ことでもあります。より高度な知識と技術を、周りのニーズに応

じて、適切に提供していかなければならないからです。このよう

な環境では、4年制の薬剤師に比べて多くの知識や技術を身に

つけて就職してくる6年制の薬剤師でも、それをすぐに臨床で

生かせるわけではありません。彼らには独り善がりにならず、他

の医療スタッフと協調し、新世代の薬剤師としての役割を果た

していってくれることを期待しています。

金丸 私はもう37年間、病院薬剤師をやっています。その間、病院薬剤師の業務は大きく展開しましたが、今後もさまざまな

可能性があります。その中で忘れてほしくないのは、薬剤師は

「調剤が基本」「ジェネラリストが基本」であることです。なぜな

ら、調剤ができず、ジェネラリストでなければ、病棟業務は務ま

らないといっても過言ではないからです。その基本を踏まえた

上で、認定薬剤師や専門薬剤師などのスペシャリストを目指して

ほしいと思っています。また、絶えず問題意識を持ち、ぜひと

も、自分が関わった業務は必ず記録を残し、自院の研修会でも

いいので発表したり、論文にしたりしてほしいと思っています。

 2012年度の診療報酬改定において、薬剤師の病棟業務に対する評価として「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。患者さんへの安全かつ適切な薬物療法の提供のために、薬剤師はその専門性を最大限発揮するとともに、チーム医療の一員として、これまで以上に積極的に医師や看護師など他職種との連携・協働を進めることが求められています。 「ファーマスコープ特別号・山梨県版2013」では、恵信甲府病院薬剤部長の金丸良雄先生と、富士吉田市立病院薬剤科長の渡辺浩先生のお二人に、山梨県における病棟薬剤業務の現状と病院薬剤師会の取り組み、病棟業務の標準化とその成果の検証・評価などについてお話を伺う中から、新時代を迎えた病院薬剤師へのメッセージをお届けします。

富士山