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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  49 海外との税率差が わが国の法人実効税率に与える影響 ――税効果会計に関する注記を用いた推計―― 目  次 1.はじめに 2.法人税の総額データと内訳データ 3.電子開示された税効果会計に関する注記の類型化 4.繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳 5.法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率の差異 6.おわりに 引用文献 資料 付録  DOM (Document Object Model) に基づいたHTML の解析 澁谷 英樹 (南山大学大学院社会科学研究科客員研究員)

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  49

海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響

――税効果会計に関する注記を用いた推計――

目  次1.はじめに2.法人税の総額データと内訳データ3.電子開示された税効果会計に関する注記の類型化4.繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳5.法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率の差異6.おわりに引用文献資料付録 �DOM�(Document�Object�Model)� に基づいた HTML

の解析

澁谷 英樹(南山大学大学院社会科学研究科客員研究員)

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1.はじめに

 本論文の主題は、わが国の上場企業が電子開示している税効果会計に関

する注記を、利用可能な形式に整理したうえで分析に用いることにある。

その目的は、第1に、わが国の法人が海外子会社に投資、所有することに

よって生じる税率差と金額規模を明らかにすることにある。第2に、税効

果会計に関する注記に記載されている項目の出現頻度とその金額規模を示

し、それらの項目がわが国の税制に占める割合を明らかにすることにあ

る。第3に、示された数値から2002年から2016年までの実効税率の決定

要因を明らかにすることである。

 激しい国際競争の下で、わが国の企業がますます多くの投資を海外に対

して行っている。これには、わが国の法人税率が諸外国に比較して高いた

めに、税負担が重いことが一因とされてきた。だが、実際にわが国の企業

の法人税を諸外国と比較することは、資料の欠如のために困難を伴った。

こうした課題に対して、大規模な財務データを利用して実効税率を推定す

る 方 法 が あ る。 特 に、Markle� and�Shackelford(2012)、Jaafar� and�

Thornton(2015)は、タックスヘイブンを含めて、親会社および子会社

の所在国別に実効税率を明らかにしている。しかし、海外に投資を実施す

る企業は大規模な財務データであっても一部に限られる。さらに、企業が

海外に移転できる所得も制約される。そのため、企業が軽減できる税負担

は税率差に比較すると僅かである。

 わが国においても、林田(2002)の先駆的業績が、財務データを用いて

実効税率を推計し、実効税率を規定する要因を明らかにしてきた。また、

わが国の国税庁が詳細な税務統計を公表しているので、林(1991)、戸谷

(1994)、富岡(2003)、三好(2006)、田近(2010)、田中(2017)等が、

税額控除、引当金、受取配当金、交際費、減価償却費等の実態を明らかに

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  51

してきた。

 それでも、既存の資料により企業の税負担を捉えるには3つの課題があ

る。第1は、いずれの資料も企業が納付した法人税の総額であるため、海

外との税率差を捉えるにはより詳細な情報を必要とする。第2に、国内の

税制に限っても税務統計に掲載されている項目のほかに、資産の評価益

(法人税法25条)、資産の評価損(33条)が税制のより大きな部分を占め

ている可能性がある。第3に、既存の分析は単体財務諸表を基本としてい

るために、国際的な企業活動を捉えるには連結財務諸表に拡張する必要が

ある。

 以上の課題に対して、本稿では、わが国の有価証券上場会社が電子開示

する連結財務諸表の税効果会計に関する注記を用いたい。なぜならば、税

効果会計に係る注記には法人税等を適切に期間配分する1際に生じた内訳

を注記することが定められており、有用な情報であると考えられるからで

ある。また、税効果会計が1999年4月1日より適用され、その適用期間は

既に19会計年度に亘っている2。さらに、2004年には金融商品取引法に基

づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム(EDINET)

においてHTMLの形式により作成された有価証券報告書を提出すること

を義務づけられている3。ただし、利用可能な形式には2008年以降に導入

された新しいXBRLの形式もあるが、本稿で明らかにされるように大半の

HTMLは定型化されたデータとして利用可能なものである。したがって、

HTMLを利用すれば最も多くのデータを得ることができる。

 続く各節の内容は以下のとおりである。第2節では、既存の資料により

明らかにされている税制度を整理し、税効果会計に係る注記を集計するこ

とによって新たに得られる情報を示す。第3節では、HTMLの形式に従

って電子化された税効果会計に係る注記の典型的な書式を示し、採用した

集計方法を述べる。第4節では、税効果会計に関する会計基準第4の1の

注記を集計し、一時差異に着目して、注記に記載されている主要な項目名

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を挙げるとともに軽減される税率および税額を推計する。第5節では、税

効果会計に関する会計基準第4の2の注記を集計し、永久差異に着目した

分析を行う。特に、わが国の法人税率と諸外国における法人税率との税率

差によってもたらされる軽減額を推計し、わが国の法人税制に占める割合

を明らかにする。第6節はまとめである。

2.法人税の総額データと内訳データ

 近年、わが国は相次いで法人税率の引き下げを実施し、諸外国との税率

差を縮小し続けている。直近では、2018年4月1日に法人税率が23.2%に

引き下げられた4。これにより、住民税率、事業税率を加えた財務省型の

法定実効税率は29.74%に抑えられている5。この水準は、2018年4月時点

においてOECDの35か国の中では、フランス、ポルトガル、オーストラ

リア、メキシコ、ドイツを下回るものである6。

 しかし、こうした税率を含めて法人税について得られる情報は限られた

ものであった。そもそも、国内の法人税率により決定づけられる税負担は

一部である。さらに、企業がより税率の低い国に子会社を設立し所得を移

転するために、国内の税制が及ぶ範囲は限られる。そのため、企業が直面

する実質的な税負担は国内の法定実効税率から乖離する。そこで、損益計

算書を用いて税引前純利益に対する法人税等の割合(実効税率)を推計す

る研究がある7。これについて、外国に子会社を設立した場合の実効税率

を推計した先駆的研究に、Markle� and�Shackelford(2012)、Jaafar� and�

Thornton(2015)がある。Markle� and�Shackelford(2012)は、1989年

から2009年までの82か国28,343社の財務データを用いて実効税率を推計し

ている。それによると、2009年において日本の実効税率は30%である8。

また、先進諸国に所在する企業がタックスヘイブンを含む諸外国に子会社

を所有している場合の税率差を推定している9。Jaafar� and�Thornton

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  53

(2015)は、ヨーロッパ14か国の公開・非公開企業135,578社の財務デー

タを用い、7つの変数をコントロールした上で、タックスヘイブン所在の

子会社の有無、非公開企業、それらの交差項で実効税率を説明している。

それによると、タックスヘイブン所在の子会社を保有する企業の実効税率

は-5.33%低く、非公開会社は-1.56%低い。

 これらの先駆的業績にみられるように、国を横断する財務データを利用

することによって、先進各国に所在する親会社の税負担の実態に接近する

ことができる。もっとも、所在地よりも税率の低い国に子会社を設ける企

業は全体から見れば少数である。特に、タックスヘイブンを利用している

企業数は大規模なデータベースを用いても限定される10。さらに、外国子

会社を設立している企業であっても移転できる所得には制約がある。した

がって、実効税率の引き下げ幅は数パーセントに留まる11。

 その一方で、わが国の法人税制についても、得られる情報は税務統計と

財務諸表に限られてきた。それでも、国税庁『税務統計から見た法人企業

の実態』を用いた林(1991)、戸谷(1994)、富岡(2003)、三好(2006)、

田近(2010)、田中(2017)等では、わが国の税制改正の変遷に応じて多

くの指摘がなされてきた。林(1991)は、1983年における法人3税の実

効税率を推計し、資本金5,000万円以上1億円未満よりも小さい階級では

累進的だが、それを超える階級では逆進的であることを指摘している12。

ただし、多くの制度は法人擬制説を前提とした制度の一環であり、優遇措

置とはいえないと指摘している13。戸谷(1994)は、事業税損金算入額を

足し戻した課税所得に対する法人税・住民税・事業税の割合を推計し、さ

らに特別償却および準備金損金算入額を足し戻したもの、さらに引当金を

足し戻したものの3つのケースに分けて、1980年から1983年への変化を

分析している。それによると、税率の引き上げや特別償却・準備金の整理

によって前2ケースの値が上昇していたが、企業が引当金繰入を増加させ

たために第3のケースの値は低下したことを明らかにしている14。富岡

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(2002)は、調査所得金額に各種の加算、減算項目を調整して推定企業利

益相当額を求め、推定企業利益相当額に対する法人税額相当額の割合を推

計している。そして、資本金100億円以上の実効税負担率が最も低い要因

を、租税特別措置、税務会計制度の弾力化、外国税額控除の集中にあると

している15。三好(2006)は、1980年から2004年までの法人税負担率を推

計し、90年代以降の税率引き下げによって全ての資本金階級の法人税負担

率が低下してきたことを指摘している16。ただし、企業規模によって格差

があり、巨大法人は外国税額控除、受取配当の益金不算入、減価償却費、

引当金により課税所得を圧縮していると結論づけている17。田近(2010)

は、1981年から2007年度までの期間を対象として、課税所得から各種の

調整項目を足し戻して企業利益を推定している。そして、企業利益に対す

る課税所得の割合を実効税率として、実効税率は低下しているものの未だ

国際的には高いことを指摘している18。田中(2017)は、富岡(2003)と

同様の方法によって2014年度の推計を行っている。そこでは、資本金100

億円以上の巨大法人の税負担を軽減している要因を、受取配当金益金不算

入額、外国子会社から受け取る受取配当益金不算入額、探鉱・海外探鉱準

備金、税額控除等に求めている19。

 これらに対して、林田(2002)、川口(2005)、野村(2017)は、損益

計算書を用いて実効税率の変動要因を分析した先駆的業績である。林田

(2002)は、1970年度から2001年度までの上場企業の財務データを用い

て業種間、資本金規模間における税負担率を比較している。それによると、

2001年度の税負担率は1997年度よりも高く、企業規模が大きいほうがよ

り高い。そして、その原因は廃止された引当金の利用割合にあると結論づ

けている20。川口(2005)は、2003年度の財務データを用いて、最小二乗

法により税引前当期利益、法人税・住民税及び事業税合計、法人税等調整

額(実効税率)を税引前当期利益によって説明している。それによると、

推定された税引前当期利益に係るパラメータは、資本金50億円以上100億

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  55

円未満の階級では実効税率および法定実効税率よりも低い。このことか

ら、租税特別措置や税額控除によって限界税率が平均税率を下回っている

と指摘している21。野村(2017)は、2012年度から2015年度までの東証一

部上場企業を対象に財務データを用いて一般化最小二乗法による推定を行

っている。そこでは、法人実効税率を企業規模、負債比率、固定資産比

率、収益性、成長性、繰越欠損金、研究開発費、海外売上高によって説明

する。それによると、企業規模、収益性、成長性では有意に正の関係を得

て、負債比率、固定資産比率、繰越欠損金は有意に負の関係を得ている22。

 また、実効税率の決定要因としての租税回避(税負担削減行動)に着目

する研究がある。大沼(2015)は、経営者によって操作される裁量的な永

久差異を租税回避変数として、海外地域からの所得は租税回避変数に影響

を与えるとの仮説に基づいた推定を行っている。そこでは、2004年度から

2008年度までの財務データを取得し、アジア、ヨーロッパ、北米、南米、

アフリカ、南洋州、そしてタックスヘイブンの6地域の売上高獲得地域変

数の影響を観察している。それによると、北米は有意に正であるが、アジ

アは有意に負であることから税負担削減行動を抑制していることを指摘し

ている23。

 こうして税務統計や損益計算書によって明らかにされた項目が、わが国

の法人税制の主要な部分を占めている。これは、2016年度のわが国の法人

税収が10.3兆円であるのに24、繰越欠損金の翌期繰越額が68.4兆円に上って

いることからも明らかである25。

 しかし、既存の資料は各企業により納められた法人税の総額に限られて

いる。そのため、他の規定がここで挙げられた優遇措置を上回る可能性が

常にある。これについて、日本会計士協会は実務指針において、企業利益

と課税所得に乖離をもたらす要因を次のように類型化している。まず一時

差異は将来減算一時差異と将来加算一時差異に大別される。このうち、将

来減算一時差異には、税務上では損金として認められない棚卸資産の評価

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損、貸倒引当金の損金算入限度超過額、未払事業税、賞与引当金、退職給

付引当金、資産又は負債の評価替えにより生じた評価差損が挙げられてい

る26。また、将来加算一時差異には、圧縮記帳、税務上の特別償却額、資産

又は負債の評価替えにより生じた評価差益が挙げられている27。次に、一時

差異に準じるものに、税務上の繰越欠損金、繰越外国税額控除がある28。

さらに、一時差異等に該当しない差異(永久差異)には、税務上の交際費

の損金算入限度超過額、損金不算入の罰科金、受取配当金の益金不算入額

がある29。もっとも、金子(2018)によれば、租税法の観点からはこうし

た確立した慣行すらも網羅的とはいえない30。その上、こうした要因は国

内だけでなく国外にも生じている。特に、近年わが国の企業が国外に投資

を行い、拡大した企業が連結会計制度を採用しているために、ますます国

外の影響を受けやすくなっている。にもかかわらず、国外で納められた法

人税についての利用可能な資料は欠如している。そのため、法人税制の中

でいずれの要因が主要な影響を及ぼしているかを定量化することが、法人

税制を分析する際に大きな課題である。そこで、本稿では連結財務諸表に

記載される税効果会計に係る注記をデータベース化したい。

3.電子開示された税効果会計に関する注記の類型化

 そもそも、わが国における税効果会計とは、企業会計と税務会計との間

に貸借対照表上の資産・負債の額に差異がある場合に、適切に期間配分す

ることにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に

対応させることを目的とする手続である31。そこでは、繰延税金資産・負

債を計上するとともに、税効果会計に係る注記を作成することが定められ

ている32。この注記の内容は、繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因

別の主な内訳(以下、会計基準第4の1の注記と略す)と、法定実効税率

と税効果会計適用後の法人税等の負担率との差異の原因となった主な項目

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  57

別の内訳(会計基準第4の2の注記)から構成されている33。これらは法

人税等に適用される各種の優遇措置の実態を観察するのに有用な情報であ

る。

 次に、これらの会計情報は2004年6月1日より金融商品取引法に基づく

有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム(EDINET)で電

子開示することが義務づけられている。そして、電子開示ではHTMLの

形式によって提出することがガイドラインにより定められている34。その

ため、既に14年間に亘って電子化された財務諸表が提出され続けている。

にもかかわらず、こうしたHTMLの形式に電子化されたデータが分析に

用いられることはなかった。これは、2008年以降に導入されているXBRL

や、2013年以降に導入されているInline�XBRLと比較して財務情報の表示

に特化した形式でないからである。

 それでもなお、現在に至るまで電子開示では主にHTMLの形式によっ

て書類を作成し、一部を XBRL の形式によって書類を作成してから

HTMLに変換するという手順を採っている35。そして、こうした書類は現

在に至るまで統一されたシステムの上で作成され、新たな形式を導入しな

がらも過去の形式も維持され続けている。こうした状況下では、新たな形

式よりもむしろ旧来の形式を利用することで、より長期の分析を行うこと

ができる。そのため、以下ではHTMLの形式によって作成される税効果

会計に係る注記の典型的な書式を示したい。

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表1 税効果会計に係る注記の典型的な書式

td[1] td[2] td[3]tr[1] 1.繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別内訳

tr[2]前連結会計年度

(平成×年×月×日)当連結会計年度

(平成×年×月×日)tr[3] (繰延税金資産)tr[4] 未実現利益    ×××百万円    ×××百万円tr[5] 未払事業税 ××× ×××tr[6] 退職給付に係る負債 ××× ×××tr[7] 賞与引当金 ××× ×××tr[8] 繰越欠損金 ××× ―tr[9] その他 ××× ×××tr[10] 繰延税金資産小計 ××× ×××tr[11] 評価性引当額 △×××  △××× tr[12] 繰延税金資産合計 ××× ×××tr[13] (繰延税金負債)tr[14] その他有価証券評価差額金 ××× ×××tr[15] 繰延ヘッジ損益 ― ×××tr[16] その他 ××× ×××tr[17] 繰延税金負債合計 ××× ×××tr[18] 繰延税金資産の純額 ××× ×××

tr[19]2.�法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との差異の原

因となった主な項目別の内訳

tr[20]前連結会計年度

(平成×年×月×日)当連結会計年度

(平成×年×月×日)tr[21] 法定実効税率 ×××% ×××%tr[22] (調整)

tr[23]永久に損金に算入されない項目

△×××  △××× 

tr[24]永久に益金に算入されない項目

×××  ××× 

tr[25] 住民税均等割 ×××  ××× tr[26] その他 ×××  ××× 

tr[27]税効果会計適用後の法人税等の負担率

×××  ××× 

注)�td[1]からtd[3]はDOM�treeに従って付した列番号、tr[1]からtr[27]は行番号である。DOM�treeの仕様はW3C(2018)2.1.3を参照されたい。

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  59

 まず、電子化された書式は大きく2つに分けることができる。第1に、

前年度と当年度の勘定科目を同時に列挙するものがある。これは、表の第

1列目に前年度と当年度のいずれかで用いられる勘定科目を記載する。そ

して、第2列目に当年度の金額を計上し、第3列目に前年度の金額を計上

する。この書式では、一方の会計年度では金額を計上しているが、他方の

会計年度では0または横棒を記載する。第2に、前年度と当年度の別に勘

定科目を列挙するものがある。このような形式では、注記事項を記載する

表の第1列目に前年度の勘定科目を列挙し、第2列目に金額を記載する。

次に、第3列目に当年度の勘定科目を列挙し、第4列目に金額を記載する。

 さらに、これらの2つの書式は上の表1に示されるように単一の表によ

り作成されているものと、表2に示されるように外側の大きな表の内側に

小さな表をもつ入れ子の形式により作成されているものに分けられる。

 表1は、税効果会計に係る注記の典型的な書式を示したものである36。

なお、背景に灰色を用いている番号は、分析を行う際には取り除くべき行

を指している。まず、表1の行および列の先頭に付されている数値は、

HTMLの構造を示すDOM�treeに従って付される行番号および列番号で

ある37。また、HTMLでは追加的に記載しない限りはそれぞれの行や列が

独立した小区画(セル)として扱われる38。このために、表1第1行目に

「繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別内訳」と記載して

も、第2行目以降とは区別される。こうした旧来のHTMLの形式に対し

て、新たなXBRLの形式は全ての項目(要素)に意味づけを行うことで対

処している39。

 だが、税効果会計に係る注記は税効果会計に係る会計基準に従って作成

されている。そのため、「繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原

因別内訳」か「法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との

差異の原因となった主な項目別の内訳」のいずれが用いられるかを判別す

ればよい。この規則性があるために、表1では第1行目から第18行目まで

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は会計基準4の1の注記が記載され、第19行目から第27行目までは会計基

準4の2の注記が記載されていると区分することができる。

 このように、財務諸表には注記すべき勘定科目や金額に加えて、可読性

を高めるための追加的な説明や注釈が多く含まれている。すなわち、第2

行目には会計年度が記載される。これには、前連結会計年度・当連結会計

年度を付されるもの、暦年を付されるもの、年度を付されるもの、各企業

の固有の決算期を付されるものがある。このうち、各企業の固有の決算期

を付されるものは、決算期を特定できないことがある。なぜならば、一方

の連結会計年度を付し、他方の連結会計年度を省略することがあるため

に、一つの会計年度を付されただけでは、前連結会計年度と当連結会計年

度のいずれを指しているかを特定できないからである。これには、法定実

効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との間の差異が法定実効税

率の100分の5以下である場合や40、税引前純損失を計上している旨を記

載して記載を省略する場合がある41。

 次に、第3行目にはより細かな区分を示すための表題として「(繰延税

金資産)」が示される。同様に、第13行目では「(繰延税金負債)」が示さ

れる。こうした区分も、税効果会計に係る会計基準に従っているために確

実に記載される。そして、第4行目から第12行目までは繰延税金資産を示

し、第14行目から第17行目までは繰延税金負債を示していると判別するこ

とができる。なお、繰延税金資産と繰延税金負債を区別することを目的と

して、繰延税金資産に代えて「資産の部」と示すことや、繰延税金負債に

代えて「負債の部」と示すこともある。

 そして、多くの場合には、金額の単位(千円、百万円)やパーセント

(%)が第1行目の末尾に付され、第2行目以降には省略される。ただ

し、第1行目第1列目と第2列目との間に、単位のみを記載する列を設け

ているものがある。

 こうした記述の省略は項目名で行われることもある。すなわち、「法定

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  61

実効税率」、「税効果会計適用後の法人税等の負担率」、「小計」は表の上段

あるいは末尾に位置しているので、項目名を省略しても類推することが容

易である。また、こうして省略される項目には、他の項目との区別を付け

るために下線や二重下線を引くこともある。しかし、HTMLの形式に従

うと、このように項目名を省略された金額がどのような情報を指し示して

いるかを判別することはできない。そのため、本稿の分析からは取り除く。

 また、注記に記載される数値は、整数、小数第1位、あるいは小数第2

位のいずれかにパーセントを付したものである42。なお、これらの金額が

負の数である場合には白抜きの三角(△)を付される。

 次に、前連結会計年度の勘定科目が、当連結会計年度の勘定科目と大き

く異なることがある。そのため、全ての勘定科目を記載するために、財務

諸表を入れ子構造にすることがある。

表2 入れ子構造を採る書式

13

の末尾に付され、第2行目以降には省略される。ただし、第1行目第1列目と第2列目と

の間に、単位のみを記載する列を設けているものがある。

こうした記述の省略は項目名で行われることもある。すなわち、「法定実効税率」、「税

効果会計適用後の法人税等の負担率」、「小計」は表の上段あるいは末尾に位置しているの

で、項目名を省略しても類推することが容易である。また、こうして省略される項目には、

他の項目との区別を付けるために下線や二重下線を引くこともある。しかし、HTML の

形式に従うと、このように項目名を省略された金額がどのような情報を指し示しているか

を判別することはできない。そのため、本稿の分析からは取り除く。

また、注記に記載される数値は、整数、小数第1位、あるいは小数第2位のいずれかに

パーセントを付したものである42。なお、これらの金額が負の数である場合には白抜きの

三角(△)を付される。

次に、前連結会計年度の勘定科目が、当連結会計年度の勘定科目と大きく異なることが

ある。そのため、全ての勘定科目を記載するために、財務諸表を入れ子構造にすることが

ある。

表2 入れ子構造を採る書式

tr[1] tr[2]

tr[1] 前連結会計年度

(平成×年×月×日)

当連結会計年度

(平成×年×月×日)

tr[2]

tr[1] tr[2]

tr[1] 法定実効税率 ×××%

tr[2] 永久に損金に算入

されない項目 ×××

tr[3] 永久に益金に算入

されない項目 ×××

tr[1] tr[2]

tr[1] 法定実効税率 ×××%

tr[2]永久に益金に算入

されない項目 ×××

tr[3]評価性引当額

×××

表2は、入れ子構造を採用する注記の典型的な形式である。このような入れ子構造の財

務諸表では、内側の表の行・列番号が各会計年度の項目名と金額を指す。したがって、項

42 このうち、最も多い形式は小数第一位まで示すものである。これらは、第5節の図2

で分析される。

 表2は、入れ子構造を採用する注記の典型的な形式である。このような

入れ子構造の財務諸表では、内側の表の行・列番号が各会計年度の項目名

と金額を指す。したがって、項目名または金額を取得するには、まず入れ

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62

子形式を採っているかどうかを確認した上で、内側の表の行・列番号を指

定する必要がある。

 だが、表1と表2で例示されるように全ての行・列が記載されること

は、提出される注記の全体からみると少数である。なぜならば、多くの注

記では一部の列や行を省略するからである。そのような省略される注記の

中で、最も大きな修正を要する形式は、連結会計年度の注記を省略するも

のである。これについて、次の表3は、列の省略が行われた形式の典型的

な例を示したものである。

表3 列が省略された注記

14

目名または金額を取得するには、まず入れ子形式を採っているかどうかを確認した上で、

内側の表の行・列番号を指定する必要がある。

だが、表1と表2で例示されるように全ての行・列が記載されることは、提出される注

記の全体からみると少数である。なぜならば、多くの注記では一部の列や行を省略するか

らである。そのような省略される注記の中で、最も大きな修正を要する形式は、連結会計

年度の注記を省略するものである。これについて、次の表3は、列の省略が行われた形式

の典型的な例を示したものである。

表3 列が省略された注記

td[1] td[2] td[3]

tr[1] 前連結会計年度 当連結会計年度

tr[2] 法定実効税率 ×××% ×××%

tr[3] 永久に損金に算入さ

れない項目

法定実効税率と税効果会計適用後の

法人税等の負担率との間の差異が

法定実効税率の 100 分の 5 以下

であるため注記を省略している。

△×××

tr[4] 住民税均等割 ×××

tr[5] 評価性引当額 ×××

注)斜線は空列を示すが、HTML および DOM tree では左詰めされる。

表3では、第4行第2列で前連結会計年度の注記が省略されている。そのため、表示さ

れる注記では列を空けて第3列目に金額が表示される。しかし、HTML の構造を示す

DOM tree に従うと第2列目として取り扱われる。なぜならば、割り当てられる列番号・

行番号は、HTML の中に出現する列・行の順序43を示すからである。このため、HTML

では省略された第2列目に空欄を追加したものとして取り扱う必要がある44。

また、列を結合することがある。これは、数値を記載する列の直後に、数値の単位(千

円、百万円、%、〃)を示すための列を設けるためである。そうした追加は、余白を設け

43 Web Hypertext Application Technology Working Group(2018)1.1 による。 44 HTML では rowspan 属性を用いて行の結合を示し、colspan 属性を用いて列の結合を

示す。W3C(2018)4.9.9.

注)斜線は空列を示すが、HTMLおよびDOM�treeでは左詰めされる。

 表3では、第4行第2列で前連結会計年度の注記が省略されている。そ

のため、表示される注記では列を空けて第3列目に金額が表示される。し

かし、HTMLの構造を示すDOM�treeに従うと第2列目として取り扱わ

れる。なぜならば、割り当てられる列番号・行番号は、HTMLの中に出

現する列・行の順序43を示すからである。このため、HTMLでは省略され

た第2列目に空欄を追加したものとして取り扱う必要がある44。

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  63

 また、列を結合することがある。これは、数値を記載する列の直後に、

数値の単位(千円、百万円、%、〃)を示すための列を設けるためであ

る。そうした追加は、余白を設けることにより可読性を高めることを目的

に置いていると考えられる。このように可読性を高めるための行や列が加

わると、行番号や列番号はこれまでに示したよりも大きな数値になる。

表4 列が結合された書式

15

ることにより可読性を高めることを目的に置いていると考えられる。このように可読性を

高めるための行や列が加わると、行番号や列番号はこれまでに示したよりも大きな数値に

なる。

表4 列が結合された書式

td[1] td[2] td[3] td[4] td[5] td[6] td[7]

tr[1] 前連結会計年度 当連結会計年度

tr[2] 法定実効税率 ××× % ××× %

tr[3] 永久に損金に算入されない項目 △ ××× △ ×××

tr[4] 住民税均等割 ××× ×××

tr[5] 評価性引当額 ― ×××

このように、EDINET に提出される税効果会計に係る注記は、勘定科目と金額が表の

行・列によって区切られ一対一で対応している。このような一対一の対応関係にある注記

を、第4節以降において分析の対象とする。ただし、本稿の手法によると、HTML の作

成時に文法上の誤りや不統一が生じていた場合には、得られる数値にも誤りが生じる。し

たがって、本稿ではこうして省略されたデータを分析から除外している。

 このように、EDINETに提出される税効果会計に係る注記は、勘定科

目と金額が表の行・列によって区切られ一対一で対応している。このよう

な一対一の対応関係にある注記を、第4節以降において分析の対象とす

る。ただし、本稿の手法によると、HTMLの作成時に文法上の誤りや不

統一が生じていた場合には、得られる数値にも誤りが生じる。したがっ

て、本稿ではこうして省略されたデータを分析から除外している。

4.繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳

 本節の目的は、税効果会計に係る会計基準第4の1に定められる「繰延

税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳」を分析することにあ

る。このために、本稿では企業情報データベースeolを利用してHTMLの

形式により作成された税効果会計に係る注記を取得する。それにより得ら

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64

れた税効果会計に係る注記は、2002年度から2016年度までの15年間に亘

り、上場企業および非上場企業延べ37,628社から提出されたものである。

ここで得られる注記は、銀行業、保険業、証券業を含むものである。これ

をHTMLの形式に従い整理したところ、前連結会計年度および当連結会

計年度の数値を得られたものは延べ36,219社である。なお、前連結会計年

度か当連結会計年度のいずれかの数値のみを得られたものは1,078社であ

る。そして、いずれの会計年度の数値も得られなかったものは330社であ

る45。このうち、会計年度の変更に伴う重複が184社含まれている。

 次に、HTMLの形式により提出された注記に記載されている項目数は、

単一の表形式によって記載されている項目は2,008,683個であり、入れ子の

表形式によって記載されている項目は1,699,094個である。このうち、項目

名と数値を突合できたものに限定して出現頻度を集計すると、会計基準第

4の1の注記に記載された項目の合計数は1,428,013個である。このうち、

上位50番目までの主要な項目が1,056,541個(74%)を占めている。また、

会計基準第4の2の注記に記載された項目の合計数は489,317個である。

このうち、上位50番目までの主要な項目は378,857個(76%)を占める。

(上位50番目までの項目名と頻度は33頁の付表1に示す。)このように、

注記に記載される項目の大部分は、多くの企業に共通して記載される主要

な項目である。さらに、少数の企業が記載している項目であっても、主要

な項目と同じ内容をわずかに異なる項目名で示していることも多い。この

ように注記に記載される項目が主要な項目に偏在しているために、少数の

項目が集計結果にもたらす影響は小さい。

 次の図1では、上位50番目までに出現する項目名を11の主要な項目に分

け、2002年度から2016年度までの繰延税金資産(負債)の計上額の推移

を示す。ここで区分される11の主要項目とは、1つの繰延税金負債と10の

繰延税金資産から構成されるものである。このうち、繰延税金負債とは①

評価差額金である。ここには、有価証券評価差額金、その他有価証券評価

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  65

差額金が含まれる46。次に、繰延税金資産には②退職給付、③賞与引当

金、④貸倒引当金の引当金3項目が含まれる。なお、退職給付には退職給

付引当金および退職給付に係る債務を含む47。また、⑤繰越欠損金として

欠損と記載される項目を含む。さらに、⑥減損損失、⑦評価損、⑧償却で

はそれぞれの単語を含む項目名を集計する。ただし、評価損には固定資産

のみならず棚卸資産も含み、評価損だけでなく評価減をも含むものとす

る。そして、⑨未払金、⑩未実現利益、⑪資産除去債務である。なお、未

払金には主に未払事業税や未払費用が含まれる。また、これらの項目名に

付随する表現には、損金算入超過額、損金不算入額、損金算入否認、そし

て自己否認48等がある。

図1 会計基準第4の1の注記における主要な項目の推移

17

46

47

48

eol HTML

46 2007 pp. 1015-1016. 47 48 2017 pp. 187-188.

17

46

47

48

eol

HTM

L

46

2007pp. 1015-1016.

47

48 2017

pp. 187-188.

17

46

47

48

eol

HTM

L

46

2007pp. 1015-1016.

47

48 2017

pp. 187-188.

(資料)企業情報データベース eol より取得した HTML 形式の税効果会計に係る注記を

解析し、筆者が作成した。

(資料)�企業情報データベースeolより取得したHTML形式の税効果会計に係る注記を解析し、筆

者が作成した。

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66

 図1によれば、繰延税金資産および繰延税金負債の傾向については、次

の3つの時期に分けられる。第1に、2002年度から2003年度にかけては注

記に計上された総額が増加していることがわかる。これには、1998年6月

に公表された退職給付に関する会計基準に従って、上場企業がそれまで積

み立て不足を生じていた退職給付引当金を積み立てたことがあげられる49。

このとき、2002年をもって税法上の退職給与引当金が廃止されたために50、

新たに退職給付引当金を積み立てるごとに、それに相当する繰延税金資産

を生じていた。また、退職給付引当金の積み立て不足を一因として悪化し

ていた企業利益が改善するのと時期を同じくして、有価証券の資産価値上

昇を生じ、有価証券評価差額金をもたらした。さらに、EDINETにおけ

る電子開示は2002年途中から義務化されたために、それ以前に会計年度を

開始していた企業も新たに加わった。そして、上場企業の数は2002年末か

ら2006年末までに263社増加していた51。

 第2に、2007年度から2010年度にかけては、繰延税金資産が急拡大す

るとともに、繰延税金負債は縮小に転じたことがわかる。これは、企業利

益の悪化に起因している。すなわち、欠損法人の増加によって2010年度ま

でに繰越欠損金が15兆円に拡大している。これと同時に、2006年度には

3.5兆円まで減少していた貸倒引当金を、2009年度には4.9兆円まで積み増

さなければならなかった。ここで、貸倒引当金は貸倒実績率(一部は法定

繰入率)に応じて損金の額に算入することを認められ52、損金算入超過額

を繰延税金資産に計上していた。また、企業利益が悪化するとともに償却

費の損金算入超過額を生じ、2005年度には3.6兆円であった繰延税金資産

を2009年度には5.7兆円まで増額した。そして、2005年より固定資産の減

損に係る会計基準を適用していたために、さらなる損金算入超過額を生じ

た53。

 第3に、2010年度および2011年度に繰延税金資産の計上額は急減して

いる。これは、2009年度までに比較すれば2010年度以降には企業利益が

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  67

回復に転じたことを表している。まず、繰越欠損金による繰延税金資産が

2010年度の12.8兆円から2011年度には10.9兆円に減少した。ただし、2011

年度税制改正により繰越欠損金の繰越期間が7年から9年に延長された54。

また、貸倒引当金も4.3兆円から3.1兆円に減少した。さらに、償却も4.9兆

円から3.7兆円に減少した。これらの中で最も大きな要因は、有価証券に

ついての損金算入超過額が減少したことにある。つまり、2007年から2010

年までに生じた有価証券に関連する損失は、2011年に至って実現した。

 第4に、2014年度以降に再び繰延税金資産が減少し、繰延税金負債は増

加している。このうち最も大きな変動は、評価差額金が拡大し金額として

は最大の項目になっていることである。すなわち、評価差額金による繰延

税金負債は2014年度に13.1兆円に達し、同年度の繰越欠損金による繰延税

金資産10.8兆円を上回った。このように、2012年度から2016年にかけては

法定実効税率の引き下げが実施されているにもかかわらず、新たに約10兆

円の繰延税金負債を生じている。その一方で、2016年度の繰越欠損金は

9.4兆円まで縮小している。こうした動向は、将来的にわが国の法人税収

を押し上げる。また、2012年以降は貸倒引当金による繰延税金資産が減少

している。これは、過去3年間の貸倒損失発生額が縮小していることを示

している。そして、貸し倒れの減少にともなって評価差額金は拡大してお

り、特に金融業を中心として、事業収益よりもむしろ金融収益が税務の中

心を占めるように変化している。

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68

表5 会計基準第4の1の注記における主要な項目の相関関係

19

4.9 3.7

2007 2010

2011

2014

2014 13.1

10.8 2012

2016

10 2016 9.4

2012

0.8

退職給付

賞与引当金

貸倒引当金

繰越欠損金

評価差額金

未実現損益

未払費用

償却

評価損

� (資料)図1に同じ。注)相関係数0.8を上回る欄に下線を示した。

 このように、注記事項に記載されている主要な項目には、税制改正や会

計基準改正に応じて互いに因果関係を生じていることは明らかである。さ

らに、表5は2002年度から2016年度までに注記された項目間の相関関係

を示したものである。ただし、減損損失は2006年、資産除去債務は2010

年より適用された勘定科目であるために、表5からは除いている55。

 表5に示される相関係数をみると、一部に非常に強い相関関係の組み合

わせがみられることがわかる。まず、評価差額金は貸倒引当金に強い正の

相関関係をもつ(相関係数0.84)。ただし、貸倒引当金は正の繰延税金資

産を計上するのに対して、評価差額金は繰延税金負債を負の金額で計上す

る。したがって、この相関関係は評価差額金の増加に応じて貸倒引当金の

減少をもたらすことを示している。なぜならば、貸倒れの多寡は有価証券

の価格を決定づけるからである。

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  69

 償却、評価損、そして繰越欠損金は相互に正の相関関係をもつ。これ

は、注記に記載される償却費および評価損には、有価証券減価償却費や有

価証券評価損が主要な部分を占めていることを示している。なぜならば、

わが国では1999年に適用された金融商品に関する会計基準に従い、時価評

価による売買目的有価証券、その他有価証券には評価損を計上し、償却原

価法による満期保有目的有価証券には減価償却費を計上するからである。

このとき、いずれの勘定科目であっても会計上の損失計上から税務上の損

金算入までには、期間的な差異を生じるために、相関係数は高まる。な

お、資産除去債務が償却に相関関係を生じる。これは、有形固定資産の取

得、建設、開発又は通常の使用によって発生したときに負債として計上す

るためである56。

 以上の相関分析によれば、一時差異に該当する項目については、税制上

の優遇措置が縮小する一途にある。その傾向は、1999年度税制改正によっ

て税法上の引当金制度が廃止されたことにより強まった。それでも、依然

として繰越欠損金は優遇措置の最大の要因に挙げられているが、2011年以

降は縮小する傾向にある。それに代わって、有価証券の償却、評価損、そ

して評価差額金が近年には課税所得計算において最大の要因となっている。

5.法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率の差異

 本節の目的は、会計基準第4の2に定められる注記を集計し、記載され

ている項目ごとに法人実効税率の決定要因を示すことにある。そのため

に、第4節と同様に税効果会計に係る注記に記載されている主要な勘定科

目を9つの類型に区分する。

 まず、企業は税効果会計に係る会計基準に従い、法定実効税率と税効果

会計適用後の法人税等の負担率を記載している。それによると、法定実効

税率の出現頻度は51,464個であり全ての項目名の中で3番目に多い。もっ

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70

とも、これには類似の項目名が多くみられ、上位50番目までの項目に限っ

ても国内の法定実効税率(1,094個)が追加される。また、ここでも注記

事項に前連結会計年度と当連結会計年度を記載する。こうした重複を除く

と法定実効税率は30,216社(年度あたり2,014社)である。これは、税効果

会計に係る注記を得られた37,628社に対して80%に相当する。ただし、残

りの20%には税効果会計に係る注記を省略した場合が含まれる。

 次に、各年度に計上された税金等調整前当期純利益、法人税・住民税及

び事業税によると、2016年度の税金等調整前当期純利益は34.2兆円であ

る。また、法定実効税率を取得できた企業のうち、税金等調整前当期純利

益が正の黒字企業は延べ26,643社(年度平均1,776社)、税金等調整前当期

純利益が負の赤字企業は延べ1,640社(109社)、法定実効税率を取得でき

たにもかかわらず税金等調整前当期純利益を取得できなかった企業は延べ

1,933社(129社)である。

 なお、注記に最も多く計上される項目はその他である(132,916個)。こ

のように最も多く計上される理由は、項目名を他の項目名に代えられない

ためである。また、これらの項目名以外に上位50番目までに出現する項目

には、評価性引当額、役員退職慰労引当金、固定資産圧縮積立金、税率変

更による期末繰延税金資産の減額修正、過年度法人税等がある。

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  71

図2 会計基準第4の2の注記における法定実効税率の推移

22

2002 2016

2008 2011

57

2012

57

10

17

46

47

48

eol

HTM

L

46

2007pp. 1015-1016.

47

48 2017

pp. 187-188.

17

46

47

48

eol

HTM

L

46

2007pp. 1015-1016.

47

48 2017

pp. 187-188.

(資料)図1に同じ。

 まず、図2は2002年度から2016年度までに、会計基準第4の1の注記

に記載された法定実効税率の平均値と最頻値の推移を示したものである。

それによると、法定実効税率の平均値が2008、2011年度に法定実効税率

の最頻値から顕著に乖離していることがわかる。これは、税引前純利益が

税引前純損失と相殺されているために生じているものである。

 すなわち、会計基準第4の2の注記事項では、企業が税引前純損失を計

上すると、多くの場合には省略される。だが、一部の場合では記載される

こともある。さらに、税引前純損失を計上した企業は、法定実効税率に正

の値を用いることが多いものの、法定実効税率に負の値を用いることがあ

る57。このうち、税引前純損失を計上した法人が負の法定実効税率を記載

すると、法定実効税率の平均値を引き下げる。これは、2012年度以降にみ

られる。ただし、税引前純損失を計上しながら負の法定実効税率を記載す

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72

る法人は少数である。したがって、平均値に影響を与える場合には、巨大

企業が注記を記載している。そのため、全体の法定実効税率に影響を及ぼ

す巨大企業は注記を記載する傾向にあるが、それ以外は注記を省略する傾

向にある。これは、巨大法人ではディスクロージャーを重視しているが、

他の法人では意味の乏しい情報とみているからである58。逆に、税引前純

損失を計上した法人が正の法定実効税率を記載すると、法定実効税率の平

均値を引き上げる。これは、2008、2011年度にみられる。

 次に、法定実効税率の最頻値をみると、期間中は断続的に低下してい

る。まず、2002年度および2003年度には42.0%である。これは、市町村民

税率を14.5%、道府県民税率を6.2%、事業税率を10.08%とする場合の法定

実効税率42.05%を小数第1位で切り捨てた値である59。また、2004年度か

ら2011年度までは40.7%である。これは、東京都における資本金1億円以

上の大法人の法定実効税率40.69%を小数第二位で四捨五入した値に相当

する。そして、2012年度および2013年度の最頻値は38.0%に低下した。こ

れは、東京都の資本金1億円以上の大法人に適用される復興特別法人税を

含めた法定実効税率である。さらに、2014年度以降にも段階的な法人税率

の引き下げによって、2014年度は35.6%、2015年度は33.1%、2016年度は

30.9%に低下している。これらの年度のいずれもが、東京都における外形

標準課税対象法人の法定実効税率に、東京都で定められている超過税率を

加味した値である。また、小数第二位までの値を示すと、2014年度は

35.64%、2015年度は33.06%、2016年度は30.86%である。

 次に、一時差異等に該当しない差異(永久差異)を注記する60。ここで

は、法定実効税率を注記した企業に限定して、内訳を8つの類型に区分し

て推計する。ここでの8つの類型とは、永久に損金に算入されない項目、

住民税、のれんおよび負ののれん、永久に益金に算入されない項目、持分

法損益、子会社との税率差異、海外子会社との税率差異、税額控除であ

る。これらは、注記事項として記載される上位50番目までに出現する項目

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  73

である。これらの各項目を注記した企業には、税金等調整前当期純利益に

注記した百分率(%)を乗じた値を算出し、注記していない企業には0を

割り当てる。こうして得られた加重平均値を項目別に示したものが図3で

ある。

図3 会計基準第4の2の注記における主要な項目の内訳

24

図3 会計基準第4の2の注記における主要な項目の内訳

(資料)図1に同じ。

図3によると、計上される項目の傾向は次の3つの時期に分けることができる。第1に、

2002 年度から 2005 年度までは企業利益が回復していたために、税負担を増大する要因

は縮小していた。これは、損金不算入、住民税のいずれの項目も 2005 年度に期間中の最

小値に達していることからも明らかである。その一方で、税負担を軽減する要因が拡大し

ていた。このうち外国税率は、わが国が法人税率を維持していたのに対して、諸外国が税

率を引き下げていたために、わが国の企業に外国子会社を保有する誘因をもたらした。ま

た、益金不算入は主に受取配当で、企業利益の回復とともに行われた増配により生じたも

のである。そして、税額控除は 2002 年度に創設された研究開発税制のほか、IT投資促

進税制、情報通信機器等の税額控除の充実によってもたらされたものである。

第2に、2007 年度から 2009 年度には企業利益が縮小したために、それぞれの項目が

実効税率に与える影響は拡大した。特に、2008 年度は最大値に達し、税額控除は-2.4%、

外国税率は-2.4%、益金不算入は-2.7%である。こうした影響が大きくなった背景には、

わが国の企業が合併と買収を進めていたことにある。その根拠は、外国税率の影響が拡大

していることに加えて、のれんの影響が拡大していることにも現れている。すなわち、わ

税額控除

外国税率

益金不算入-9%

-8%

-7%

-6%

-5%

-4%

-3%

-2%

-1%

0%

1%

2%

3%

4%

住民税

損金不算入

のれん

益金不算入

持分法

子会社税率

外国税率

税額控除

� (資料)図1に同じ。

 図3によると、計上される項目の傾向は次の3つの時期に分けることが

できる。第1に、2002年度から2005年度までは企業利益が回復していた

ために、税負担を増大する要因は縮小していた。これは、損金不算入、住

民税のいずれの項目も2005年度に期間中の最小値に達していることからも

明らかである。その一方で、税負担を軽減する要因が拡大していた。この

うち外国税率は、わが国が法人税率を維持していたのに対して、諸外国が

税率を引き下げていたために、わが国の企業に外国子会社を保有する誘因

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74

をもたらした。また、益金不算入は主に受取配当で、企業利益の回復とと

もに行われた増配により生じたものである。そして、税額控除は2002年度

に創設された研究開発税制のほか、IT投資促進税制、情報通信機器等の

税額控除の充実によってもたらされたものである。

 第2に、2007年度から2009年度には企業利益が縮小したために、それ

ぞれの項目が実効税率に与える影響は拡大した。特に、2008年度は最大値

に達し、税額控除は-2.4%、外国税率は-2.4%、益金不算入は-2.7%で

ある。こうした影響が大きくなった背景には、わが国の企業が合併と買収

を進めていたことにある。その根拠は、外国税率の影響が拡大しているこ

とに加えて、のれんの影響が拡大していることにも現れている。すなわ

ち、わが国の会計基準ではのれんを20年以内に償却することを規定してい

るために、2008年度は+1.0%の影響を及ぼした61。この状況は2009年度以

降に徐々に解消されていった。

 第3に、2012年度以降には税負担を増大する要因も、軽減する要因も小

さくなっている。これは、2012年度以降にわが国の法人税率が引き下げら

れたためである。特に、諸外国との税率差が縮小したために、2016年度の

外国税率による影響(-0.8%)は益金不算入(-1.4%)や税額控除(-

1.3%)を下回っている。

 さらに、項目別に詳細な要因を示す。永久に損金に算入されない項目に

は、交際費を主な内容として掲げるものが大半である。これに対して、永

久に益金に算入されない項目には、受取配当金を掲げるものが大多数を占

めている。

 住民税は総額としては増加する傾向にあり、2002年度には468億円であ

ったが、2016年度には991億円に上っている。これは、2016年度の道府県

税の法人均等割1,526億円、市町村税の法人均等割4,332億円に比較すると

約17%に相当する62。

 税額控除は、法人税法上の外国税額控除、租税特別措置法上の税額控

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  75

除、そして全ての税額控除をまとめた項目として記載されるものの3つに

大別される。このうち、頻度でみると外国税額控除が最も多く、金額でみ

ると全部の税額控除をまとめて記載するものが最も多い。まず、税額控除

は2002年度には271億円を記載されているにすぎなかったが、その後は記

載される頻度が増加した。特に、2007年に税額控除額は5,133億円に達し

た。これは、実効税率に換算して-1.8%に相当する。ただし、4分の1

を鉱業の外国税額控除によって占められ、反対に外国税を負担しているた

めに、純粋な税負担の軽減には当たらない。また、ここでの外国税額控除

には、繰越外国税額控除、間接外国税額控除やみなし外国税額控除を含む

ものである。そして、税額控除の拡大に寄与した要因には、IT投資促進

税制あるいは情報通信機器等の税額控除があげられる。続いて、情報基盤

強化税制が2006年度に創設され2009年度まで注記に記載された。ただし、

IT投資促進税制よりも記載する企業は限られた63。

 その後、税額控除は一旦減少したものの2014年度に4,658億円まで拡大

した。ただし、法人税率の引き下げも実施されているために、2016年度は

4,386億円である。近年では、上場企業が税率差異として税額控除を記載

するときには、殆どの場合で「税額控除」を用いる。これは、外国税額控

除、研究開発促進税制、生産性向上設備投資促進税制、雇用促進税制、所

得拡大促進税制、あるいは震災特例法による税額控除を含むものである64。

 外国税率(海外子会社との税率差異)は、海外、在外、あるいは各国の

子会社との税率差異として記載される。推計によると、海外子会社との税

率差異は2002年度には701億円であった。しかし、2000年代を通じて急速

に拡大し、2007年度には5,011億円に達した。このような税率差は、わが

国の法人が海外に投資を実行する誘因として働くとともに、わが国の上場

企業による海外子会社の所有が進行した結果も表している。その後、2008

年度には景気の後退による企業利益の縮小によって税率差は減少したもの

の、企業利益が回復すると税率差も再拡大に転じた。税率差異が最も拡大

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した年度は2010年度であり、推計される海外子会社との税率差異は6,151

億円に達していた。これは、実効税率を-2.6%程度も引き下げていた。

その後、わが国が相次いで法人税率を引き下げたことにより税率差は縮小

している。特に、2013年度以降は4会計年度連続して縮小し、2016年度

は2,676億円である。これは、実効税率に換算して-0.8%に相当する。

 このように、2013年度以降に相次いで実施された法人税率の引き下げ

は、わが国と海外投資先の諸外国との税率差を縮小させるものである。し

かしながら、2012年度以降に相次いで実施された法人税率の引き下げによ

って、国内外の税率差は縮小しつつある。そうであるならば、わが国の企

業が直面する実効税率を決定づける要因は、税効果会計の一時差異に該当

する項目である。

 これについて次の図4は、わが国の連結財務諸表を用いて推計される実

効税率(実線)と、法定実効税率から乖離する要因(積み上げ棒グラフ)

を、会計基準第4の1に記載される項目(外国税率、その他主要7項目)、

会計基準第4の2に記載される項目の別に示したものである。

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  77

図4 実効税率の推移と法定実効税率の平均値からの乖離の内訳

27

図4 実効税率の推移と法定実効税率の平均値からの乖離の内訳

(資料)図1に同じ。

図4によれば、わが国では法人実効税率が法定実効税率を上回っても、長期的には大部

分の損金不算入額を繰り越せることが明らかである。直近 15 年度では、わが国の企業は

2002 年度と 2008 年度に実効税率が法定実効税率を大きく上回った。これらは、いずれ

も企業利益の減少により引き起こされたものである。ただし、2002 年度と 2008 年度で

は会計基準第4の2に記載される項目(外国税率を除く)の動向には差異が見られる。こ

れは、2002 年度には税額控除の計上額が後の年度に比較して小さかったためである。こ

れにより、益金の額に算入されない費用が大きな影響を及ぼし、主要7項目の合計は+

1.2%であった。もっとも、外国税率-1.0%に相殺されていたために、主要8項目の合計

は+0.2%の上昇に留まった。こうして、2002 年度の実効税率は 50.3%に上昇し、2008

年度は 59.8%に上った。

しかし、会計基準第4の2に記載される項目(永久差異)による影響は限定的である。

いまや、会計基準第4の2では主要な8つの項目を掲げることで、上位 77%までに出現

する項目を明らかにすることができている。この上に、実効税率に影響を及ぼす項目は僅

かである。したがって、2002 年度における実効税率の上昇要因の残り 6.5%は、会計基準

25%

30%

35%

40%

45%

50%

55%

60%

65%

-15%

-10%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

会計基準第4の1等 会計基準第4の2(主要7項目)

会計基準第4の2(外国税率) 実効税率

� (資料)図1に同じ。

 図4によれば、わが国では法人実効税率が法定実効税率を上回っても、

長期的には大部分の損金不算入額を繰り越せることが明らかである。直近

15年度では、わが国の企業は2002年度と2008年度に実効税率が法定実効

税率を大きく上回った。これらは、いずれも企業利益の減少により引き起

こされたものである。ただし、2002年度と2008年度では会計基準第4の

2に記載される項目(外国税率を除く)の動向には差異が見られる。これ

は、2002年度には税額控除の計上額が後の年度に比較して小さかったため

である。これにより、益金の額に算入されない費用が大きな影響を及ぼ

し、主要7項目の合計は+1.2%であった。もっとも、外国税率-1.0%に

相殺されていたために、主要8項目の合計は+0.2%の上昇に留まった。

こうして、2002年度の実効税率は50.3%に上昇し、2008年度は59.8%に上

った。

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78

 しかし、会計基準第4の2に記載される項目(永久差異)による影響は

限定的である。いまや、会計基準第4の2では主要な8つの項目を掲げる

ことで、上位77%までに出現する項目を明らかにすることができている。

この上に、実効税率に影響を及ぼす項目は僅かである。したがって、2002

年度における実効税率の上昇要因の残り6.5%は、会計基準第4の1に記

載される項目(一時差異)によることは明らかである。これは、2008年度

における残部14.8%も同様である。そして、実効税率の上昇要因とは図1

で示したとおり、繰越欠損金、減価償却費損金算入限度額、退職給付引当

金繰入額損金不算入額による。これらのいずれの項目も、以降の年度に損

金の額に算入されて実効税率を低下させた。なお、2008年度に生じた繰延

税金資産の一部は2012年度の税率引き下げによって減額修正された。

 このように、わが国において税負担を決定づけている要因は、課税の繰

り延べ(繰り戻し)によることが大部分である。近年では、こうした傾向

は金額に換算すると依然として大きな部分を占めているが、税率に換算す

ると縮小する傾向にある。したがって、会計基準第4の2に記載されてい

る項目が重要になっている。その中でも、外国税率は益金不算入と並んで

税負担を軽減する最大の要因を構成している。ただし、外国税率との税率

差は2012年度以降の法人税率の引き下げによって縮小してきている。特

に、直近の2016年度では実効税率を-0.8%引き下げるに留まっている。

 こうした推計結果は、近年のわが国の企業が直面する法人税の負担につ

いて新たな傾向を生じている。一方では、法人税率の引き下げによって外

国税率との税率差はかなり縮小してきているため、これより追加的にわが

国の法人税率を引き下げたとしても、外国税率との税率差を縮小する効果

は限られる。他方では、会計基準第4の1の注記として記載される有価証

券評価差額金の増加により、将来的に企業利益および法人税収を押し上げ

る。これは、法人税率の引き下げによってもたらされた面もあるが、世界

的な金融緩和による資産価値上昇によって引き起こされている面も強いと

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  79

考えられる。

6.おわりに

 本稿では、わが国において電子開示されている連結財務諸表を取得し、

税効果会計に係る注記を解析した。それにより、2002年度から2016年度

までを観察期間として、上場企業の法人実効税率を決定づける主要な要因

を、項目の出現頻度に従って示した。それにより、新たに明らかになった

ことは次の3つである。

 第1に、わが国と諸外国との税率差によってもたらされた税負担の軽減

額は2010年度に6,151億円に上り、実効税率の引き下げ幅は-2.6%に相当

した。ただし、近年ではいずれも縮小する傾向にあり、2016年度の軽減額

は2,676億円に留まり、実効税率に換算すると-0.8%の引き下げ幅にすぎ

ない。したがって、大企業は近年実施されている法定実効税率の引き下げ

によって税負担を軽減されている。また、今後追加的に法人税率を引き下

げたとしても外国との税率差を縮小する効果は小さい。

 第2に、税効果会計に係る注記第4の1の注記に出現する項目の頻度に

従うと、法人実効税率を決定づける最大の要因は、貸借対照表に評価差額

金として計上される項目である。この傾向は、2011年度以降に金融市場の

流動性が高まり金利が低下するとともに、貸し倒れも減少したために生じ

たと考えられる。同時に、わが国の企業がますます海外投資を拡大してい

るためである。そして、こうして評価差額金による繰延税金負債が増大し

ていることは、将来的にわが国の法人税収を押し上げる。

 第3に、わが国の連結損益計算書に基づいて実効税率を推計したとこ

ろ、実効税率を決定づける要因に占める要因の大部分は、会計基準第4の

1の注記として記載される課税の繰り延べ(繰り戻し)によるものであ

る。これは、本稿で会計基準第4の2の注記に記載される主要な8項目を

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80

合計しても、高々-5.5%(2008年度)に留まることから明らかである。

そのため、わが国の企業の実効税率は一旦上昇したとしても、後の年度の

実効税率を引き下げる。ただし、こうした傾向は近年の企業利益の安定と

ともに変化しつつある。

 一方、本稿は以下の課題を残している。第1に、本稿では海外との税率

差を推計することを目的としていたために、連結財務諸表に記載されてい

る税効果会計に係る注記を解析したが、単体財務諸表の分析を行うことも

求められる。単体財務諸表に記載されている注記では、海外要因が除かれ

ているために、他の項目が税負担を軽減している可能性がある。特に、連

結財務諸表では消去されていた受取配当金益金不算入によって、単体財務

諸表による法人実効税率が大きな影響を受けることは確実である。第2

に、法人税制において金融取引の重要性が拡大していることを指摘したか

らには、金融商品に関する会計基準に基づいて作成される財務諸表を用い

て、いかなる要因によって評価差額金、評価損、減損損失等を生じている

かを明らかにする必要がある。ここでも、本論文で行ったのと同様に電子

開示された財務諸表を活用することができる。第3に、税効果会計に係る

注記を解析する手法を改良することである。本稿ではHTMLの文法に従

ってデータを取得しているために、HTMLの作成時に生じた不適切な記

述があれば、得られる数値に誤りを生じる。こうした誤りが得られたデー

タに占める割合は小さいものの、データの精度を高める余地はある。その

ためには、作成された財務諸表がHTMLの文法から乖離していても、そ

れを裁量的に修正することが求められる。これらについては次稿の課題と

したい。

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  81

【脚  注】1 税効果会計基準第1。2 企業会計審議会『税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書』4の1。3 開示用電子情報処理組織による手続の特例等に関する内閣府令(平成十四年内閣府令第

四十五号)。4 法人税法66条。これは、中小法人以外の普通法人の税率である。5 財務省型の法定実効税率=法人税率(1+住民税率)+事業税率

1+事業税率 と定義される。また、事業税率は事業税率=基本税率+超過税率�である。

6 OECD(2018)“Table�II.1.�Statutory�corporate�income�tax�rate.”7 勿論、こうした税額に基づいた事後的な指標とは対照的に、資本コストの計算に基づく

事前的な指標がある。これは、King�and�Fullerton(1984)による限界実効税率と、Devereux�and�Griffith(1999)の平均実効税率に大別される。さらに、財務データを用いて企業レベルでの事前的な実効税率も推計されている。これについては、Egger,�Loretz,�Pfaffermayr�and�Winner(2009)、鈴木(2014)が先駆的である。

8 Markle�and�Shackelford(2012)Table.�4.9 Markle�and�Shackelford(2012)Table.�7.10 Jaafar�and�Thornton(2015)p.�477が用いているデータセットでは、公開会社13,303社

のうちタックスヘイブンを利用している会社は885社であり、非公開会社135,578社のうち804社である。

11 Markle�and�Shackelford(2012)Table�7.では、タックスヘイブンに子会社を置く欧州の親会社は実効税率を-3.5%引き下げる、米国の親会社は-2.2%引き下げると推定されている。

12 林(1991)p.�141,�142.13 林(1991)p.�165は、引当金・準備金による利益が繰延べの利子分に留まること、特別

償却は中小法人のほうが大きいこと、受取配当金益金不算入が法人擬制説に基づく制度であることを論拠としている。�

14 戸谷(1994)pp.�57-60.15 富岡(2003)pp.�1484-1498.16 三好(2006)pp.�86-87.17 三好(2006)pp.�91-93.18 田近(2010)pp.�24-26.19 田中(2017)pp.�93-95.20 林田(2002)pp.�251-255.21 川口(2004)pp.�8-9.22 野村(2017)p.�66.�指標1の結果を要約した。23 大沼(2015)第4章。24 財務省『平成28年度租税及び印紙収入決算額調』。25 国税庁『税務統計から見た法人企業の実態』。

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82

26 日本公認会計士協会『個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針』指針8。27 指針10。28 指針12および13。29 指針14。30 金子(2018)p.�332.31 税効果会計に係る会計基準第1。32 税効果会計に係る会計基準第4の1・2、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関す

る規則第8条の12第1項、第2項。33 税率変更があった場合には、『税効果会計に係る会計基準』第4の第3項・第4項に定

められている注記も加えられることがある。だが、本項ではこれらの集計は行わない。34 金融庁『開示用電子情報処理組織による手続の特例等に関する留意事項について(電子

開示手続等ガイドライン)』。35 金融庁『提出書類ファイル仕様書』p.�2.36 ここでの典型的な書式とは、HTMLに従って表を作成し、表の小区画(セル)に会計

基準でよくみられる項目名を示したものである。なお、項目名の頻度は付表1・2に示される。

37 なお、HTMLの文法ではtr要素は行を表し、td要素は列を表す。W3C(2018)4.9.8および4.9.9を参照されたい。

38 グループ化するための記述にはcolgroup要素が設けられている。ただし、用いられることは少ない。W3C(2018)4.9.3.

39 XBRLの技術背景については、坂上(2012)を参照されたい。40 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第15条の5第4項。41 これについて、2018年度の税効果会計に係る会計基準の一部改正では、税引前純損失が

生じている場合における税率差異の注記を注記事項に追加することは回避された。(企業会計基準委員会『「税効果会計に係る会計基準」の一部改正』第57項。)

42 このうち、最も多い形式は小数第一位まで示すものである。これらは、第5節の図2で分析される。

43 Web�Hypertext�Application�Technology�Working�Group(2018)1.1による。44 HTMLではrowspan属性を用いて行の結合を示し、colspan属性を用いて列の結合を示

す。W3C(2018)4.9.9.45 これには、連結会計年度を記載している行・列が、勘定科目や金額を記載している行・

列から切り離されているものがある。46 鈴木一水「評価・換算差額等」神戸大学会計学研究室編(2007)pp.�1015-1016.47 企業会計基準審査会『退職給付に関する会計基準』。48 成道秀雄「自己否認」成道秀雄編(2017)pp.�187-188.49 企業会計審議会『退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書』。50 法人税法等の一部を改正する法律(平成14年法律第79号)。51 東京証券取引所『上場会社数の推移』。

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  83

52 法人税法施行令96条。53 企業会計審議会『固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書』。54 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する

法律(平成23年法律第114号)。55 資産除去債務に関する会計基準第17項。56 資産除去債務に関する会計基準第4項。57 実務上の法定実効税率の計算式は、企業会計基準委員会『税効果会計に係る会計基準の

適用指針』設例10を参照されたい。ここでの法定実効税率は、将来減算一時差異に係る繰延税金資産、および将来加算一時差異に係る繰延税金負債の計算に用いられるものであるから、負の税引前純利益に負の法定実効税率を乗じることにより算定に用いられる。

58 企業会計基準委員会『「税効果会計に係る会計基準」の一部改正』57項。59 各種の税率は東京都税務局「都税の税率等の推移一覧表」『東京都税務統計年報』、総務

省自治税務局『地方税に関する参考計数資料』を参照した。60 日本公認会計士協会『個別財務諸表における税効果会計に関する適用指針』設例7。61 企業結合に関する会計基準第32項。62 「地方税の税目別収入額及びその割合の推移」『平成30年度地方税に関する参考計数資

料』。63 「情報基盤強化税制による税額控除」に限ると2社に限られる。(3836-09年度,�9613-05

年度から09年度まで。)64 上記に示した税制以外にも、たとえば地方拠点強化税額控除(7716-16年度)、収用等の

特別税額控除額(5283-15年度)、リース資産税額控除(7760-03・04年度)を独立して記載する例がある。それらの適用額は、財務省『租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書』を参照されたい。

【引用文献】Devereux,�M.�P.,�and�Griffith,�R.�1998.�The Taxation of Discrete Investment Choices.�IFS�

working�papers,�No.�W98/16.Egger,�P.,�Loretz,�S.,�Pfaffermayr,�M.,�and�Winner,�H.�2009.�“Firm-specific�Forward-looking�

Effective�Tax�Rates.”�International Tax and Public Finance,�Vol.�16,�No.�6,�pp.�850-870.Jaafar,�A.,�and�J.�Thornton.�“Tax�Havens�and�Effective�Tax�Rates:�An�Analysis�of�Private�

versus�Public�European�Firms.”�The International Journal of Accounting,�Vol.�50,�No�4,�pp.�435-457.

King,�M.�A.,�and�D.�Fullerton.�1984.�The Taxation of Income from Capital: A Comparative Study of the United States, the United Kingdom, Sweden, and Germany.�NBER�Books.

Markle,�K.�S.,� and�D.�A.�Shackelford.�2012.� “Cross-Country�Comparisons�of�Corporate�

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84

Income�Taxes.”�National Tax Journal,�Vol.�65,�No.�3,�pp.�493-527.OECD.�2018.�Country representatives on the OECD Working Party 2: Tax Policy and Tax

Statistics of the Committee on Fiscal Affairs.W3C.�2018.�HTML�5.2.Web�Hypertext�Application�Technology�Working�Group.�2018.�DOM.大沼宏(2015)『租税負担削減行動の経済的要因―租税負担削減行動インセンティブの実証

分析―』同文舘出版.金子宏(2017)『租税法(第二十二版)』.�川口真一(2005)『企業の税負担格差―租税特別措置が税負担に与える影響について―』

COEディスカッション・ペーパー,DP2004-31.神戸大学会計学研究室編(2007)『会計学辞典(第六版)』同文舘出版.坂上学(2012)「財務報告とXBRL」広瀬義州・藤井秀樹責任編集『財務報告のフロンティ

ア』中央経済社,第11章.鈴木将覚(2014)『グローバル経済下の法人税改革』京都大学学術出版会.田近栄治(2010)「日本の法人税改革―課税の実態と改革の道筋―」『税経通信』65巻9号,�

pp.�17-34.田中里美(2017)『会計制度と法人税制―課税の公平から見た会計の役割についての研究―』

唯学書房.戸谷裕之(1994)『日本型企業課税の分析と改革』中央経済社.野村容康(2017)「わが国における法人実効税率の決定要因―東証一部上場企業パネルデー

タを用いた分析―」『証券経済研究』97号,pp.�57-71.富岡幸雄(2003)『税務会計学原理』中央大学出版部.成道秀雄編著(2017)『税務会計学辞典(新版)』中央経済社.林正寿(1991)『法人所得課税論』同文舘出版.林田吉恵(2002)「わが国の法人企業の税負担率について―日経財務データによる分析―」

『関西学院経済学研究』33号,pp.�243-262.三好ゆう(2006)「わが国の法人税改革と税負担の動向」『立命館経済学』55巻4号,pp.�

422-446.

【資料】金融庁『提出書類ファイル仕様書』。金融庁『開示用電子情報処理組織による手続の特例等に関する留意事項について(電子開示

手続等ガイドライン)』。国税庁『税務統計から見た法人企業の実態』.財務省『租税及び印紙収入決算額調』.

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  85

総務省自治税務局『地方税に関する参考計数資料』.東京証券取引所『上場会社数の推移』.東京都主税局『東京都税務統計年報』.日本経済団体連合会『会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型

(改訂版)』.日本公認会計士協会『個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針』.日本公認会計士協会『連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針』.企業会計基準委員会『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針』.企業会計基準委員会『税効果会計に係る会計基準の適用指針』企業会計基準委員会『「税効果会計に係る会計基準」の一部改正』企業会計審議会『税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書』.企業会計審議会『退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書』.企業会計審議会『固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書』.

Page 38: qwk p)U Uw O î®k pt )Q è¹ · 2019-02-19 · qw k p)U Uw O î® k pt )Q è¹yç$ù$õ `oVh{yf p z7 w¿ t 'Àw k Û r Q tx mw] JUK { H xzMc w¿ 'ÀU ò Ç`h O kw ï¹pK h z qw k

86

付表1 税効果会計に係る注記に出現する項目名と頻度

33

付表1 税効果会計に係る注記に出現する項目名と頻度

会計基準第4の1 頻度 会計基準第4の2 頻度

その他 132,916 その他 55,382

評価性引当額 73,119 税効果会計適用後の法人税等の負担率 53,527

繰延税金資産合計 71,371 法定実効税率 53,464

その他有価証券評価差額金 60,476 交際費等永久に損金に算入されない項目 41,269

繰延税金負債合計 60,408 受取配当金等永久に益金に算入されない項目 24,222

繰延税金資産小計 57,646 住民税均等割 21,295

繰延税金資産の純額 57,285 税率変更による期末繰延税金資産の減額修正 16,064

繰越欠損金 39,952 住民税均等割等 16,013

賞与引当金 38,869 評価性引当額 15,076

未払事業税 33,730 評価性引当額の増減 13,032

退職給付引当金 33,686 のれん償却額 5,969

貸倒引当金 31,407 住民税均等割額 5,571

減損損失 24,025 税額控除 4,179

役員退職慰労引当金 22,942 持分法による投資利益 2,850

流動資産-繰延税金資産 20,215 過年度法人税等 2,298

投資有価証券評価損 20,190 持分法投資損益 2,134

計 19,406 留保金課税 2,087

固定資産-繰延税金資産 19,229 持分法による投資損益 2,049

固定資産圧縮積立金 17,633 評価性引当額の増減額 1,962

退職給付に係る負債 16,830 評価性引当額の増加 1,760

小計 15,441 のれん償却 1,697

固定負債-繰延税金負債 14,338 税率変更による影響 1,678

繰延税金負債の純額 13,966 評価性引当金 1,526

資産除去債務 11,271 持分法投資利益 1,496

税務上の繰越欠損金 9,831 試験研究費税額控除 1,473

減価償却費 9,609 永久に損金に算入されない項目 1,470

たな卸資産評価損 8,969 外国税額控除 1,326

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  87

34

合計 7,921 交際費等永久に損金算入されない項目 1,299

減価償却超過額 7,919 負ののれん発生益 1,127

特別償却準備金 7,332 評価性引当額の減少 1,115

未払費用 6,846 国内の法定実効税率 1,094

繰延税金負債との相殺 6,843 永久に益金に算入されない項目 1,093

貸倒引当金損金算入限度超過額 6,724 海外子会社税率差異 1,051

繰延税金資産との相殺 6,499 評価性引当金の増減 1,039

流動負債-繰延税金負債 6,026 持分法による投資損失 1,000

未払賞与 5,619 連結子会社との税率差異 997

ゴルフ会員権評価損 5,158 税務上の繰越欠損金の利用 970

長期未払金 4,874 連結子会社の税率差異 923

退職給付引当金損金算入限度超過額 4,805 試験研究費等の税額控除 876

未実現利益 4,723 連結調整勘定償却額 874

前払年金費用 4,280 海外連結子会社の税率差異 872

繰延税金資産計 4,200 負ののれん償却額 845

繰延ヘッジ損益 4,187 繰越欠損金 828

流動資産―繰延税金資産 4,115 税率変更による影響額 826

評価性引当金 4,010 在外子会社の税率差異 821

会員権評価損 3,969 海外子会社の税率差異 797

未払事業所税 3,965 役員賞与引当金 781

投資有価証券 3,963 受取配当等永久に益金に算入されない項目 769

固定資産―繰延税金資産 3,913 評価性引当額増減 755

賞与引当金損金算入限度超過額 3,890 税効果会計適用後の法人税等負担率 746

上位 50 項目の計 1,056,541 上位 50 項目の計 372,367

全項目の計 1,428,013 全項目の計 489,317

注)項目名の前後に付された括弧は取り除いた。

注)項目名の前後に付された括弧は取り除いた。

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88

付録 DOM (Document Object Model) に基づいたHTMLの解析

 ここでは、HTMLを解析するためにPHP言語を用いている。ここで

PHP 言語を用いる理由は、DOM 拡張モジュールを用いることにより

HTMLを解析することが容易だからである。

 まず、EDINETにおいて電子開示されるHTML形式のファイルは、必

ずしも文字エンコードを統一しているとは限らない。そのため、html-

entitiesに変換してから処理を行う。その上で、HTMLをDOMドキュメ

ントとして取り扱うために、新しいDOMドキュメントインスタンスを

35

付録 DOM (Document Object Model) に基づいた HTML の解析

ここでは、HTML を解析するために PHP 言語を用いている。ここで PHP 言語を用い

る理由は、DOM 拡張モジュールを用いることにより HTML を解析することが容易だか

らである。

まず、EDINET において電子開示される HTML 形式のファイルは、必ずしも文字エン

コードを統一しているとは限らない。そのため、html-entities に変換してから処理を行

う。その上で、HTML を DOM ドキュメントとして取り扱うために、新しい DOM ド

キュメントインスタンスを

$dom = new DOMDocument();

$get = file_get_contents($file); // $file は HTML ファイルのパス

$dom->loadHTML(mb_convert_encoding(str_replace('start', 'id', $get), 'html-

entities', 'SJIS-WIN, UTF-8, EUC-JP'));

と定義する。また、ここでは HTML の一部分を指定して抽出するための XPath を

$xpath = new DOMXpath($dom);

と定義する。この定義によって、HTML の各要素を指定して取得することができる。こ

こで、取得する HTML に含まれるノードを

foreach($xpath->query($num) as $var){

$nodePath = $var->getNodePath();

$nodeValue = $var->nodeValue;

}

により得る。この関数の結果は、変数$nodePath に HTML の構造を示す DOM tree を代

入し、変数$nodeValue に要素の内部にある項目名や金額を代入する。このとき、代入さ

れた変数の一例を示すと、次のとおりである。

// $nodePath の内容

/html/body/div[1]/table/tbody/tr[2]/td[1]/table[1]/tbody/tr[8]/td[1]/p

// $nodeValue の内容

繰延税金資産合計

ここでは、注記は入れ子の構造(表2参照)により作成されている。内側の表は外側の

表の第2行第1列に位置し、この小区画(セル)は内側の表の第8行第1列に位置してい

る。そして、この小区画に記載されている内容は、項目名「繰延税金資産合計」である。

と定義する。また、ここではHTMLの一部分を指定して抽出するための

XPathを

35

付録 DOM (Document Object Model) に基づいた HTML の解析

ここでは、HTML を解析するために PHP 言語を用いている。ここで PHP 言語を用い

る理由は、DOM 拡張モジュールを用いることにより HTML を解析することが容易だか

らである。

まず、EDINET において電子開示される HTML 形式のファイルは、必ずしも文字エン

コードを統一しているとは限らない。そのため、html-entities に変換してから処理を行

う。その上で、HTML を DOM ドキュメントとして取り扱うために、新しい DOM ド

キュメントインスタンスを

$dom = new DOMDocument();

$get = file_get_contents($file); // $file は HTML ファイルのパス

$dom->loadHTML(mb_convert_encoding(str_replace('start', 'id', $get), 'html-

entities', 'SJIS-WIN, UTF-8, EUC-JP'));

と定義する。また、ここでは HTML の一部分を指定して抽出するための XPath を

$xpath = new DOMXpath($dom);

と定義する。この定義によって、HTML の各要素を指定して取得することができる。こ

こで、取得する HTML に含まれるノードを

foreach($xpath->query($num) as $var){

$nodePath = $var->getNodePath();

$nodeValue = $var->nodeValue;

}

により得る。この関数の結果は、変数$nodePath に HTML の構造を示す DOM tree を代

入し、変数$nodeValue に要素の内部にある項目名や金額を代入する。このとき、代入さ

れた変数の一例を示すと、次のとおりである。

// $nodePath の内容

/html/body/div[1]/table/tbody/tr[2]/td[1]/table[1]/tbody/tr[8]/td[1]/p

// $nodeValue の内容

繰延税金資産合計

ここでは、注記は入れ子の構造(表2参照)により作成されている。内側の表は外側の

表の第2行第1列に位置し、この小区画(セル)は内側の表の第8行第1列に位置してい

る。そして、この小区画に記載されている内容は、項目名「繰延税金資産合計」である。

と定義する。この定義によって、HTMLの各要素を指定して取得するこ

とができる。ここで、取得するHTMLに含まれるノードを

35

付録 DOM (Document Object Model) に基づいた HTML の解析

ここでは、HTML を解析するために PHP 言語を用いている。ここで PHP 言語を用い

る理由は、DOM 拡張モジュールを用いることにより HTML を解析することが容易だか

らである。

まず、EDINET において電子開示される HTML 形式のファイルは、必ずしも文字エン

コードを統一しているとは限らない。そのため、html-entities に変換してから処理を行

う。その上で、HTML を DOM ドキュメントとして取り扱うために、新しい DOM ド

キュメントインスタンスを

$dom = new DOMDocument();

$get = file_get_contents($file); // $file は HTML ファイルのパス

$dom->loadHTML(mb_convert_encoding(str_replace('start', 'id', $get), 'html-

entities', 'SJIS-WIN, UTF-8, EUC-JP'));

と定義する。また、ここでは HTML の一部分を指定して抽出するための XPath を

$xpath = new DOMXpath($dom);

と定義する。この定義によって、HTML の各要素を指定して取得することができる。こ

こで、取得する HTML に含まれるノードを

foreach($xpath->query($num) as $var){

$nodePath = $var->getNodePath();

$nodeValue = $var->nodeValue;

}

により得る。この関数の結果は、変数$nodePath に HTML の構造を示す DOM tree を代

入し、変数$nodeValue に要素の内部にある項目名や金額を代入する。このとき、代入さ

れた変数の一例を示すと、次のとおりである。

// $nodePath の内容

/html/body/div[1]/table/tbody/tr[2]/td[1]/table[1]/tbody/tr[8]/td[1]/p

// $nodeValue の内容

繰延税金資産合計

ここでは、注記は入れ子の構造(表2参照)により作成されている。内側の表は外側の

表の第2行第1列に位置し、この小区画(セル)は内側の表の第8行第1列に位置してい

る。そして、この小区画に記載されている内容は、項目名「繰延税金資産合計」である。

により得る。この関数の結果は、変数$nodePathにHTMLの構造を示す

DOM�treeを代入し、変数$nodeValueに要素の内部にある項目名や金額を

代入する。このとき、代入された変数の一例を示すと、次のとおりである。

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海外との税率差がわが国の法人実効税率に与える影響  89

35

付録 DOM (Document Object Model) に基づいた HTML の解析

ここでは、HTML を解析するために PHP 言語を用いている。ここで PHP 言語を用い

る理由は、DOM 拡張モジュールを用いることにより HTML を解析することが容易だか

らである。

まず、EDINET において電子開示される HTML 形式のファイルは、必ずしも文字エン

コードを統一しているとは限らない。そのため、html-entities に変換してから処理を行

う。その上で、HTML を DOM ドキュメントとして取り扱うために、新しい DOM ド

キュメントインスタンスを

$dom = new DOMDocument();

$get = file_get_contents($file); // $file は HTML ファイルのパス

$dom->loadHTML(mb_convert_encoding(str_replace('start', 'id', $get), 'html-

entities', 'SJIS-WIN, UTF-8, EUC-JP'));

と定義する。また、ここでは HTML の一部分を指定して抽出するための XPath を

$xpath = new DOMXpath($dom);

と定義する。この定義によって、HTML の各要素を指定して取得することができる。こ

こで、取得する HTML に含まれるノードを

foreach($xpath->query($num) as $var){

$nodePath = $var->getNodePath();

$nodeValue = $var->nodeValue;

}

により得る。この関数の結果は、変数$nodePath に HTML の構造を示す DOM tree を代

入し、変数$nodeValue に要素の内部にある項目名や金額を代入する。このとき、代入さ

れた変数の一例を示すと、次のとおりである。

// $nodePath の内容

/html/body/div[1]/table/tbody/tr[2]/td[1]/table[1]/tbody/tr[8]/td[1]/p

// $nodeValue の内容

繰延税金資産合計

ここでは、注記は入れ子の構造(表2参照)により作成されている。内側の表は外側の

表の第2行第1列に位置し、この小区画(セル)は内側の表の第8行第1列に位置してい

る。そして、この小区画に記載されている内容は、項目名「繰延税金資産合計」である。

 ここでは、注記は入れ子の構造(表2参照)により作成されている。内

側の表は外側の表の第2行第1列に位置し、この小区画(セル)は内側の

表の第8行第1列に位置している。そして、この小区画に記載されている

内容は、項目名「繰延税金資産合計」である。