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  化学平衡 

化学工学演習I 補助資料

天然ガスを利用した合成ガスの製造

およびメタノール合成プロセス

における物理化学的基礎計算

(担当 三島健司)

学籍番号

氏名

目次

1.  演習の目的およびスケジュール

2

 1.1 目的

2

1.2 スケジュール・場所・持参すべきもの

2

2.  インターネットによる情報収集

3

2.1 産業ガスの工業的利用に関する調査

3

2.2 化学反応に関する調査

4

2.3 天然ガスに関する調査

5

3.製造装置の設計・操作と物性値

7

3.1 メタン改質プラントと供給する天然ガス

7

3.2 貯蔵・運搬技術

9

3.3 天然ガスの貯槽・運搬と蒸気圧計算

11

3.4 密度と容量計算

15

4.  メタノール製造プロセスの設計

17

4.1 化学プロセスの流れ

17

 4.2 比熱・熱容量

22

5. 化学平衡

33

5.1 化学反応と平衡定数

33

5.2 平衡定数の温度依存性

38

5.3 化学平衡とエンタルピー

41

5.4 複雑な反応系での化学反応組成計算技術

42

  5.4.1 複雑な反応系での組成の方程式

42

5.4.2 Mathematica による組成計算

43

  5.4.3 Excelソルバー による組成計算

45

5.4.4 Excelプログラムによる組成計算

49

章末問題

52

付録

54

 化学関連のサイトの紹介

54

 化学関連Web問題形式のホームページの作り方・Webプログラム

59

化学平衡に関する簡単な計算問題

71

本日の課題

80

本日の課題の進め方

84

1. 演習の目的およびスケジュール

 1.1 目的

 (1)メタノール合成プロセスの設計に必要なデータをインターネットで収集する。

 (2)1、2年次に化学工学計算法、化学工学数学、基礎物理化学A,B、基礎有機、無機化学などで学習した物質の性質、化学反応に関する知識に基づいて、適切な設計・運転条件を探索する。

 (3)メタノール合成プロセスの一部をExcel(ビジュアルベーシックならびに方程式自動解法ソルバーも利用)にて作成する。

 (4)天然ガス貯蔵の際の圧力・モル体積計算、メタン改質反応の加熱量、反応平衡組成の計算技術を習得する。

 1.2 スケジュール・場所・持参すべきもの

 (1) 場所:総合情報処理センター実習室(B)

 (2) 持参すべきもの 配布資料、電卓、コンピュータ用の記憶媒体(フラッシュメモリー、フロッピーディスクなど)、ノート、筆記具、パスワード、工業物理化学で使用したテキスト「工学のための物理化学」

 (3) 配布した資料を中心に、2.5回演習を行う。

 (4) 3回目の後半に試験を行う。

 (5) 試験の実施上の注意

   1)演習時に使用した資料(Excelなどの自作プログラムファイルも含む)は、持ち込み可

     ただし、総合情報処理センターで使用可能なものに限ります。

   2)電卓を使用する問題もあるので、各自電卓を持参して下さい。

3)コンピュータは、総合情報処理センターに設置されたもののみを使用する。

 (6) 情報処理センターでの出席調査

     下記のような出席票が、インターネットで配信された場合、「提出する」ボタンをクリッ

クする。

        

        図1-1 出席票 

2.インターネットによる情報収集

 2.1 産業ガスの工業的利用に関する調査

産業ガスには、メタン、水素、窒素、二酸化炭素、酸素、ヘリウムなどがあり、工業的に広く利用されている。中でも、メタンや水素は、石油や天然ガスから大量に生産されている。天然ガスは、メタンを主成分とする資源であり、環境・資源の観点から、その重要性が増している。

メタノール、アンモニア、ホルマリン、尿素、酢酸、フロンなどの化学原料、燃料電池の水素源、燃料電池自動車の燃料として、現在工業界から注目されている天然ガス(主成分メタン)を利用してメタノールを製造するプロセスを例に、実際に演習問題を解くことで、製造装置の設計・操作における化学工学的技術の重要性を考えてみよう。

 産業ガスについて、インターネットで調べてみましょう。起動したら、ヤフー(Yahoo)のホームページhttp://www.yahoo.co.jp/、グーグル(Google)のホームページhttp://www.google.co.jp/や福岡大のホームページhttp://www.fukuoka-u.ac.jp/を見てみましょう。文書ファイルのデジタルデータがある場合、前述の文章でhttp~jpのように青く書かれたアドレス(URL)例えば「http://www.yahoo.co.jp/」についてCtrlキーを押しながらクリックするとリンクします。またはInternet Explorer のアドレス欄にこの部分(URL)を記入します。

   

 図2-1 Googleの検索サイト      図2-2 WIKIPEDIAのホームページ

百科辞典を調べるように検索した場合は、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』が便利です。http://www.wikipedia.org/ 下記のリンクを使用することで、Googleの検索エンジンをウィキペディアの検索に使用できます。Googleはウィキペディアのストップ・ワードやネームスペースを無視しますし、複数言語を同時に検索することもできます。

Use Google to search Wikipedia  

Googleの検索サイトなどから「ウィキペディア」、「百科辞典」、「WIKIPEDIA」などのキーワードでも、「ウィキペディア」の下記のホームページに入れます。

  

図2-3 ウィキペディアのメイン画面              図2-4 ウィキペディア検索

Googleの検索サイトなどから「ウィキペディア」をキーワードとして、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の検索サイトへ入ってみましょう。上図のように画面になります。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に入ったら、上図のように画面右横のスクロールバーをクリック&ドラッグして、隠れている画面の少し下を見てみましょう。画面左の「ヘルプ」の下に、「検索」が現れます。この入力部分で、物性を調べたい物質として「ヘリウム」を入力して、下の「検索ボタン」をクリックしてみましょう。下図のような画面が現れます。

図2-5  フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』でヘリウムを調べた結果

ここで、画面の「ヘリウム特性表」をクリックすると、下図のような画面が現れます。

図2-6  フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』でヘリウムを調べた結果

図2-7  フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』でヘリウムを調べた結果

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』でヘリウムを調べた例を次に示します。

ヘリウム(Helium)は原子番号 2、元素記号 He の元素。無色、無臭で、最も軽い希ガス元素でもある。すべての元素の中で最も沸点が低く、超高圧下でしか固体にならない。ヘリウムは不活性の単原子ガスとして存在する。また、存在量は水素に次いで宇宙で2番目に多い。ヘリウムは地球の大気中にも存在し、鉱物やミネラルウォーターのなかにもとけ込んでいる。天然ガスと共に豊富に産出し、気球や小型飛行船の浮揚用ガスとして用いられたり、液体ヘリウムを超伝導用の低温素材としたり、深海へ潜る際の充填ガスとして用いられている。

 また、標準沸点とは、その物質の蒸気圧が大気圧(0.101325MPa)となる温度です。標準沸点でのその物質の蒸気圧は、0.101325MPaとなっています。

 検索には、「ヘリウム 標準沸点」なども入力してみましょう。

 http://www.jiga.gr.jp/sangyou/youso.htm 日本産業ガス協会のサイトを調べてみましょう。

日本産業ガス協会のサイトより引用

   産業ガスって何?―種類別解説

  窒素 [Nitrogen]

窒素は無色・無味・無臭のガスで、空気の約78%(容積比)を占めており、比重     は0.97(空気=1)で沸点は-196℃です。また、たんぱく質やアンモニアなど     の窒素化合物として、自然界にたくさん存在しています。常温では化学的に不活     性で、他の物と化合することはありません。工業的には、空気を冷却することによ     り酸素、アルゴンなどとともに分離・精製して製造されます。

  ヘリウム [Helium]

     ヘリウムは無色・無臭・不燃性のガスで、大気中に約5.2ppm存在しており、比重     は0.14(空気=1)、沸点は-269℃です。化学的に はまったく不活性で、通     常の状態では他の元素や化合物と結合しません。理論的には 空気から分離抽     出できますが、含有量があまりに希薄なため、工業的には天然ガス中に約0.5%     前後含まれるヘリウムを分離・精製します。また、ヘリウムの沸点である-269℃     は、沸点としてはもっとも低い温度です。

2.2 化学反応に関する調査

 この演習では、メタンを利用してメタノールを製造するプロセスを検討しますが、メタノール製造プロセスの中心反応は、一酸化炭素と二酸化炭素の水素との反応です。化学反応のメカニズムに可能性に関しては、有機反応関連のサイトで見ることができる。例として化学関連のサイトのいくつかを以下に紹介します。

http://molvis.sdsc.edu/visres/index.html#pmm World Index of Molecular Visualization Resources 

http://www.md-simulations.de/manager/beginner/animation.php?job_id=7 

  MD-simulation (animation)

http://chemwww.byu.edu/ora/ Organic Reaction Animations

http://webserv.sienahts.edu/~swathen/ccce/VRML_Mechanisms.html

Organic Reaction Mechanisms

http://www.sienahts.edu/~che/vrmlchem.html VRML(3D for chemistry

The Virtual Reality Modelling Language is an ISO standard format for representing 3 dimensional objects

http://www.chem.ed.ac.uk/bunsen_learner/mechan.html 

The Physical Basis of Organic Reaction Mechanisms

反応の例1 一酸化炭素と水素からメタノールが生成、二酸化炭素と水素からメタノールと水が生成、

 CO+2H2→CH3OH  ΔH =-100kJ(発熱) CO2+3H2→CH3OH+ H2O  ΔH =-58kJ(発熱)

反応の例 エステルの加水分解 酢酸メチルを加水分解して、酢酸とメチルアルコールができる。

CH3COOCH3 + HO2→CH3COOH+CH3OH

補足)学内での情報検索および資格などの情報について、

1) 化学関連・資格試験などの情報

  化学関連や資格試験などの有益な情報も、インターネットのサイトから調べることができます。以下に幾つかの例を示します。

 資格関連

危険物取扱者<甲種,乙種,丙種> http://www.shoubo-shiken.or.jp/ 

  

注)化学物質に関する一般常識も増えるのでよい。 乙種4類と甲種、

http://www.pref.ishikawa.jp/concoursA/gakkou/13/kiken.htm   

情報処理技術者 http://www.jitec.jp/      

環境計量士   http://www.jemca.or.jp/info/     

公害防止管理者 http://www.jemai.or.jp/polconman/default.htm      

高圧ガス  http://www.khk.or.jp/  

毒物劇物取扱責任者 http://www.pref.kyoto.jp/yakumu/dokusiken/  

 化学関連

 化学工学会     http://www.scej.org/

2.3 天然ガスに関する調査 

天然ガスに関して調べましょう。

キーワード「天然ガスとは」 http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data2011.html    

(財)エネルギー総合工学研究所

2)天然ガスに関して調べましょう。

キーワード「天然ガスとは」 http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data2011.html    

(財)エネルギー総合工学研究所

 http://www.gas.or.jp/ngvj/text/lng_what.html 社団法人日本ガス協会 

天然ガスの製造・運搬 http://www.teikokuoil.co.jp/japanese/museum/01/index.html 帝国石油

http://oilresearch.jogmec.go.jp/papers/2003/200309/cng/200309cng.htm 

 以下に(財)エネルギー総合工学研究所のホームページの一部を示す。

●自然環境に「天然に」存在するガスで、メタンを主成分とする可燃性ガスのこと。●日本では、約-160度Cに冷却し、液化天然ガス(LNG)にして輸入している。●天然ガスの特徴は[使いやすい、クリーンである、安全である]。解説: 一般的には、自然環境に「天然に」存在するガスで、メタンを主成分とする可燃性ガスのことです。メタンのほかに、エタン、プロパン、ブタン、その他の成分が含まれていることがあります。通常はガス(気体)ですが、海外からのパイプラインのない日本では、約-160度Cに冷却し、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)にして輸入しています。 将来は、自動車用燃料、燃料電池などの利用が期待されています。 天然ガスの特徴は下記のとおりです。1)使いやすい ・パイプラインで、簡単に供給ができる。        ・燃やしても煙の発生がほとんどない。2)クリーンである ・温室効果ガスである二酸化炭素の排出量が、石炭、石油に比べて少ない。          ・有害物質や不純物を簡単に除去できる。3)安全である ・毒性がなく、爆発の危険性も少ない。

天然ガスからメタノールを製造する化学プラントでは、メタンと水を原料として、その反応(メタン改質)で合成ガス(一酸化炭素、水素)を製造し、さらに得られた合成ガスからメタノール合成反応によりメタノールを生成している。図1に東洋エンジニアリング(株)(TEC)のメタノール製造プラント(10,000t/d plant)のフローダイアグラム(流れ系統図)を示す。(「石油化学プロセス」;石油学会編2001より)

 

                図2 メタンからメタノールを製造するプラント

 この化学プラントでは、天然ガス(主成分メタン)からメタノールを製造している。化学反応として、メタンと水の反応(メタン改質)と、合成ガスによるメタノール合成反応とでメタノールを生成している。

 天然ガス自動車

天然ガス自動車(NGV; Natural Gas Vehicle; CNG) とは、天然ガスを燃料とする自動車で低公害車の一種。天然ガスの主成分はメタンであり都市ガスなどで広く使われている。自動車で使用する場合、圧縮天然ガス(CNG)と液化天然ガス(LNG)の2種類があるが、現在では高圧ガス容器に200気圧程度で貯蔵するCNGが普及の中心となっている。CNG自動車は、ガソリン自動車比べて二酸化炭素の排出を2割程度低減でき、また、ディーゼル自動車と比べると窒素酸化物、粒子状物質の排出低減に効果的である。一回の燃料充填で走行できる距離が短いのが欠点であるが、都市内での路線バス、貨物集配車などを中心に普及が進められている。

主な天然ガス産出国  ロシア、イラン、カタール 

 石油代替資源としてのメタンの重要性

 天然ガスの主成分は、メタンである。また、近年、未開発資源として注目されているメタンハイドレートも主成分としてメタンを含んでいる。メタンハイドレートなどの地下資源は、その埋蔵量が膨大であることから石油代替資源としてメタンの重要性はさらに高まっている。メタンは、常温ではガスで存在しているため、取り扱いに高度な技術を要する。また、メタンは、化学原料として利用する場合、種々の生成物を生じる場合が多く、メタノールへ変換する反応が工業的にも重要であり、上述のメタノール製造プロセスもそのような観点からも有用である。

3.製造装置の設計・操作と物性値  

3.1 メタン改質プラントと供給する天然ガス 

天然ガスは、高圧ガスとなるためその貯蔵・運搬にも化学工学の知識と技術が必要となる。

LNG船: liquefied natural gas carrier液化天然ガス船、エルエヌジ船[マイナス162℃の液化ガスを輸送する船; もともと気体の天然ガスをマイナス162度に冷やして液体の状態にして輸送する].

船の燃料には何を使う? 船(商船)の燃料(バンカー)は、C重油が一般的です。原油を精製して、LPガス、ガソリン、ナフサ、灯油、ジェット燃料、軽油などを抽出した最後の残りかす(残渣(ざんさ)油)が、重油とアスファルトになります。重油もその粘度によって、A重油、B重油、C重油に分けられますが、C重油は一番粘度が高く、常温では固まってしまいます。

 ディーゼル機関の燃料としてC重油を使用するためには、加熱して、不純物を取り除く必要があります。こうして取り除いた不純物はスラッジと呼ばれ、燃料消費量の4%も含まれます。例えば、1日に50トン程度の燃料を必要とする超大型タンカー(VLCC)では、1日に2トンものスラッジが発生することになりますが、船内の焼却炉で燃やすか、港に到着した時に陸上に降ろしています。 また、船内用の電気を作る発電機も小型のディーゼル機関ですが、こちらは、一般的にA重油が使われます。また、LNG(液化天然ガス)船のように積み荷のLNGが蒸発したガス(ボイルオフガス)を燃料として利用する例もあります

3.2 貯蔵・運搬技術        

 化学物質を保管するには、種々の容器(貯槽)を使用する。幾つかを例として以下に示す。

3.3 天然ガスの貯槽・運搬と蒸気圧

天然ガスにかぎらず、工業的に化学物質を取扱う場合、貯蔵、運搬、化学反応、精製などの工程でも、各物質の蒸気圧は、重要な数値となる。蒸気圧に関する詳細な理論や正確な計算については、3年次の工業物理化学IIと化学工学物性定数にて解説する。ここでは、今回の化学プロセルにかかわりの深い物質を中心に演習を行うので、蒸気圧に関して簡単に説明する。

重要なことは、蒸気圧は、温度のみの関数で各物質ごとに計算できることである。物質の蒸気圧と温度の関係を熱力学的に導出したのが、式(3.1)に示すクラウジウス-クラペイロン(Clausius‐Clapeyron)式である。

T

B

A

p

-

=

°

ln

 (3.1)

ここで、A、Bは定数であり、狭い温度範囲において成り立つ。図6-1の蒸気圧の対数値を1/Tに対して表すと、狭い温度範囲で直線関係がみられる。工学的には、式(3.1)よりも実測値を精度よく表現する次のアントワン(Antoine)式が広く用いられている。

)

(

ln

C

T

B

A

p

+

-

=

°

 

 (3.2)

ここで、A,B,Cはアントワン定数と呼ばれる物質固有の値である。ただし、使用する温度範囲、温度と圧力の単位によりその値が異なるので、使用する場合には注意を要する。さらに、クラウジウス-クラペイロン(Clausius‐Clapeyron)式に示されるように、蒸気圧poの対数lnpoが温度の逆数1/Tの一次関数で表されることがわかる。

 今回の演習で取扱うメタンなどの物質についても、蒸気圧poと温度Tの関係を計算できる。アントワン式を用いて計算した結果を図19に示す。

蒸気圧

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

020406080100120140

T [K]

[MPa]

メタン

窒素

一酸化窒素

一酸化炭素

ヘリウム

             図19 温度Tと蒸気圧poの関係

 

蒸気圧グラフ

-1.2

-1

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

0.0020.0070.0120.0170.022

1/T

[K-1]

log

10

P[Bar]

メタン

窒素

一酸化窒素

一酸化炭素

 

    図20 蒸気圧poの対数log10poと温度の逆数1/Tの関係

図19,20からも、蒸気圧poの対数lnpoが温度の逆数1/Tの一次関数であることがわかる。また、液化天然ガスをー162℃(111K)に保った場合、その主成分であるメタン蒸気圧が約0.1MPaであり、大気圧以下となることがわかる。逆に、大気圧下で、この温度より上昇すると、液体天然ガスが沸騰することが考えられる。この図の作成に用いた各物質のアントワン定数とアントワン式(3.3)を以下に示す。ここで、単位の関係で、式(3.2)と異なる形になっていることに注意する。

表1 アントワン定数

)

15

.

273

(

log

10

-

+

-

=

C

T

B

A

p

o

    (3.3)    ここで  p [ bar ],T [ K ]

物質名

A

B

C

温度範囲[K]

He

1.68360

8.15480

273.71

1.85~5.34

N2

3.61947

255.68

266.55

60.81~83.65

NO

5.8679

682.9386

268.27

106.94~127.56

CH4

3.7687

395.7440

266.681

92.64~120.59

CO

3.81912

291.7430

267.996

69.73~88.08

CO2 *

22.5898

3103.39.

-0.16

154~204

H2

2.93954

66.79540

275.65

10.25~22.82

* 注)CO2については、 

)

(

ln

C

T

B

A

p

o

+

-

=

  、 p [ mmHg ],T [ K ]

Gmehling J.et al. DECHEMA Chemistry Data Series.Vol.1,Part1-8(1977-1984)より抜粋

例題1 天然ガスの主成分であるメタンの蒸気圧poと温度Tの関係は、図19のようなった。液化天然ガス(純メタンと仮定して)の標準沸点(大気圧0.101325MPaでの沸点)をアントワン式(3.3)から正確に計算してみましょう。標準沸点は、その物質の蒸気圧が0.101325MPaとなる温度である。

ただし、1barは0.1MPaとして計算する。

[解] 表1のメタンのアントワン定数より、式(3.3)を用いてメタンの蒸気圧が0.101325MPa となる温度Tを求める。表1より、A=3.7687、 B=395.7440 、C=266.681である。 式(3.3)より、

)

15

.

273

(

log

10

-

+

-

=

°

C

T

B

A

p

°

-

=

-

+

p

A

C

T

B

10

log

)

15

.

273

(

°

-

=

-

+

p

A

B

C

T

10

log

15

.

273

 

15

.

273

log

10

+

-

°

-

=

C

p

A

B

T

               (3.4)

273.15

266.681

)

101325

.

0

10

(

log

3.7687

395.7440

10

+

-

´

-

=

T

T = 111.63 K = -161.51 ℃

 この計算から、メタンの標準沸点は-161.51℃であり、天然ガスを-162℃にてLNG船で運搬することが合理的であることがわかる。

例題2 産業用ガスとして液体窒素を耐圧容器に-196℃(77K)で貯蔵していた。容器内温度が93Kとなった時、容器内の圧力は何MPaとなっているか。表1の値は、93Kに対して適用範囲外となっているので、この値を用いるのは適当ではないが、今回はおよその値を求めるとしてこの値を用いるとする。ただし、1Barは0.1MPaとして計算する。

[解] 表1の窒素のアントワン定数より、式(3.3)を用いて窒素の93Kにおける蒸気圧を求める。表1より、A=3.61947、 B=255.68 、C=266.55である。 式(3.3)より、

)

15

.

273

(

log

10

-

+

-

=

°

C

T

B

A

p

         

)

15

.

273

(

10

-

+

-

=

°

C

T

B

A

p

                 (3.5)

         

)

15

.

273

266.55

93

(

255.68

3.61947

10

-

+

-

=

°

p

         

Bar

p

573

.

4

10

66021

.

0

=

=

°

          =0.4573MPa   

補足; Clausius‐Clapeyron式の導出

熱力学第1法則は、次式で与えられる。すなわち、系の熱量変化dQは、内部エネルギー変化dU、系の圧力Pおよび体積変化dVを用いて次式で与えられる。

dQ=dU+PdV

      (3.6)

熱力学第二法則より、温度TにおけるdQとエントロピー変化dSは次式で与えられる。

dQ=TdS

      (3.7)

(3.6)、(3.7)式より、

dU=TdS-PdV

      (3.8)

このとき、エンタルピーHは次式で定義される。

H=U+PV

  (3.9)

(3.9)式を全微分すると、

dH=dU+PdV+VdP

 (3.10)

(3.10)式に(3.8)式を代入すると、

dH=TdS+VdP

     (3.11)

ここでギブス(Gibbs)の自由エネルギーGは、H、T、Sを用いて次式で定義される。

G=H-TS

 (3.12)

(3.12)式を全微分すると、

dG =dH-TdS-SdT

       (3.13)

(3.11)、(3.13)式より、

dG = VdP -SdT

     (3.14)

dG = VdP - SdT

    (3.15)

純物質(一成分系)の系について,気液両相が平衡状態で共存している状態を考える。ある圧力pおよび温度Tで平衡(equilibrium)状態であるためには気相と液相の全成分の化学ポテンシャルがそれぞれ等しくなっていなければならない。純物質系では、化学ポテンシャルは1molあたりのギブス(Gibbs)の自由エネルギーGmに等しいので、気相、液相、それぞれのギブスの自由エネルギーGmV とGmL は等しく、GmV = GmLとなる。ここで、下付きのmは1モル当たりの量を表す.次に圧力がdp,温度がdT変化して、再び気液両相が平衡になったとすれば、GmV + dGmV = GmL + dGmLとなり、次式となる。

dGmV = dGmL

(3.16)

また、気液両相の1molに対して適用すると、次の関係が得られる。

dGmV = VmV dp-SmV dT

(3.17)

dGmL = VmL dp-SmL dT

(3.18)

ここで、平衡の条件として、式(3.16)を適用すれば、上式より次式が導かれる。

L

m

V

m

L

m

V

m

V

V

S

S

dT

dp

-

-

=

 

(3.19)

ここで、気相と液相のエントロピーの差SmV - SmLは、蒸発に伴うモルエントロピー変化ΔSv,mであり、モル蒸発潜熱ΔHv,mを用いてΔHv,m/Tと表せるので次式を得る。

T

H

S

S

S

m

,

V

L

m

V

m

m

,

V

Δ

Δ

=

-

=

 

(3.20)

式(3.19)および式(3.20)より次式を得る.

)

(

L

m

V

m

m

,

V

V

V

T

H

dT

dp

-

=

Δ

 

(3.21)

式(3.21)は、クラウジウスークラペイロン式と呼ばれている。圧力が高くなく,気相の体積が液相の体積より十分大きい(大気圧下では、気相の体積は液相の1,000倍程度ある。)と見なせるとVmV≫VmLであり、理想気体とみなすとすれば、理想気体の状態方程式(pVm=RT)により次式が得られる。

RT

p

V

V

V

V

L

m

L

m

m

1

1

-

 

(3.22)

式(3.22)を用いて式(3.21)を整理すると、次式が得られる。

2

m

,

V

RT

H

p

dT

dp

Δ

=

 

(3.23)

狭い温度範囲では、ΔHv,mが一定とみなされるとすれば、ΔHv,mを定数として式(3.23)を積分することで、次式が導出される。

T

B

A

p

-

=

°

ln

 

(3.24)

ここで,Aは積分定数であり,B = ΔHv,m/Rである.この式がクラウジウスークラペイロン式から導かれる温度Tと蒸気圧poの関係を表す式である。

演習を円滑に行うために、身近な物質のアントワン定数も表2に示す。単位の関係でアントワン式が式(3.2)の形となっていることに注意する。

表2 アントワン定数

)

(

ln

C

T

B

A

p

+

-

=

 p [ kPa ],T [ K ]

物質名

A

B

C

温度範囲[K]

16.56989

3984.923

-39.724

273.15~373.15

クロロフォルム

13.99869

2696.249

-46.918

263.15~333.15

n-ヘプタン

13.85871

2911.319

-56.510

270.15~400.15

メタノール

16.59214

3643.314

-33.424

288.15~357.15

エタノール

16.66404

3667.705

-46.966

293.15~366.15

n-プロパノール

17.27826

4117.068

-45.712

258.15~371.15

n-ブタノール

14.94047

3005.329

-99.723

362.15~399.15

シクロヘキサン

13.76108

2778.000

-50.014

280.15~354.15

ベンゼン

13.82650

2755.642

-53.989

281.15~353.15

トルエン

13.98998

3090.783

-53.963

246.15~384.15

p-キシレン

14.08130

3346.646

-57.840

300.15~389.15

アセトン

14.37284

2787.498

-43.486

260.15~328.15

Gmehling J.et al. DECHEMA Chemistry Data Series.Vol.1,Part1-8(1977-1984)より抜粋

[例題 3] 耐圧容器に液化した天然ガスを注入した。容器内の温度は、120Kに保たれている。容器内では、一部が気化しているが、液化したメタンも残っている。この時、耐圧容器に取り付けられた圧力計の圧力はいくらか。天然ガスを純メタンと考えて、メタンの蒸気圧から圧力を推定せよ。

[解]表1;メタンのアントワン定数はA=3.7687、B=395.7440、C=266.681である。式(3.3)より、

)

15

.

273

(

log

10

-

+

-

=

°

C

T

B

A

p

         

)

15

.

273

(

10

-

+

-

=

°

C

T

B

A

p

                

        

)

15

.

273

266.55

93

(

255.68

3.61947

10

-

+

-

=

°

p

        

Bar

p

573

.

4

10

66021

.

0

=

=

°

         =0.4573MPa   

3.4 密度と容量計算

[例題 4] 0.04m3の内容積の耐圧容器に液化した天然ガスを注入した。容器内の温度は、160Kに保たれている。容器内では、T=160 K, p=21.9 MPa(=21.9/0.101325=216atm)であるとして、次の問に答えよ。

ただし,メタンの分子量は、M=16.0であり、160Kにおける飽和蒸気圧はp=21.9 MPa(=21.9/0.101325=216atm)である。この条件でのメタンの気相および液相のモル体積(1molの体積)は、

  VmV = 4.30×10-4 m3・mol-1=0.430 dm3/mol

  VmL = 7.04×10-5 m3・mol-1=0.0704 dm3/mol  

とする。それぞれのモル体積VmV,VmLは、メタンの臨界定数と与えられた温度、圧力条件から対応状態原理か状態方程式を用いて計算できるが、この例題では、モル体積は状態方程式から求めた値をしようしている。温度、圧力条件から対応状態原理か状態方程式を用いてモル体積やエンタルピーを計算する方法は既に学習しているが、より正確な方法については、3年次の工業物理化学IIにて説明する。(高圧ガス製造保安責任者試験;甲種化学にて類題あり)

(1) メタンを充てんして、容器内の圧力が飽和蒸気圧の半分の値のとき、耐圧容器内の気相のモル体積おより、耐圧容器内に充てんされているメタンの質量は何gか?

(2) 圧力が飽和蒸気圧である時の最小と最大理論充てん量はそれぞれ何gか?また、最大理論充てん量以上の重さを注入しようとするとどのような危険があるか。

(3) 液化ガスの容器内の注入量または残存量を知るにはどうすればよいか。

[解] (1)  容器内の圧力が飽和蒸気圧の半分の値のとき、容器内のメタンはすべて気化しており、気相となっている。このガスを理想気体と考えると、そのモル体積Vxは、飽和蒸気圧の倍の値となっているはずだから、飽和蒸気圧の場合のモル体積VmV を用いて

    Vx = 2×VmV

 VmV = 4.30×10-4 m3・mol-1=0.430 dm3/mol

ガスの密度ρは、

6

.

18

430

.

0

2

16

=

´

=

=

m

V

M

r

 g/dm3  

以上の計算より、温度0℃、圧力2.03 MPaのとき、耐圧容器内の気相のモル体積Vmが、Vm=0.942 dm3/molであることがわかる。耐圧容器の内容積が40.0 dm3であるので、充てんされている二酸化炭素の質量W[g]は、次のように計算できる。

   

744

6

.

18

40

@

´

=

=

V

W

r

 g

(2)   圧力が飽和蒸気圧である時、最小充てん量は、容器内に気相のみが存在する場合である。このとき(圧力p=3.45MPa)の気相のモル体積を、前問と同様に、3変数対応状態原理を用いて計算する。CO2について、テキストP.69の表6.1より、臨界温度Tc、臨界圧力pc、臨界体積Vcを読みとりその値を用いて、対臨界値Tr、prをテキストP.78の式(7.1)~(7.3)より計算します。

 VmV = 4.30×10-4 m3・mol-1=0.430 dm3/mol

ガスの密度ρは、

6

.

18

430

.

0

16

=

=

=

m

V

M

r

 g/dm3  

5

.

92

10

10

76

.

4

01

.

44

3

4

=

´

´

=

=

-

m

V

M

r

 g/dm3  

以上の計算より、温度0℃、圧力3.45 MPaのとき、耐圧容器内の気相のモル体積Vmが、Vm=0.476 dm3/molであることがわかる。耐圧容器の内容積が40.0 dm3であるので、充てんされている二酸化炭素の質量W[g]は、次のように計算できる。

   

3700

476

.

0

0

.

40

01

.

44

@

´

=

´

=

n

M

W

 g

温度0℃、圧力3.45 MPaの場合、ガスだけで充てんしても、圧力2.03MPaの時に比べて、倍ほどの二酸化炭素が充てんされている。

 圧力が飽和蒸気圧である時、最大充てん量は、容器内に液相のみが存在する場合である。このとき(圧力p=3.45MPa)の液相のモル体積を、

モル体積Vm

2

.

48

913

.

0

01

.

44

=

=

=

r

M

V

m

  cm3/mol  

以上の計算より、温度0℃、圧力3.45 MPaのとき、耐圧容器内の液相の液密度ρが、ρ=0.913 g/cm3であることがわかる。耐圧容器の内容積が40.0 dm3(=40.0×103c m3)であるので、充てんされている二酸化炭素の質量W[g]は、次のように計算できる。

   

36500

913

.

0

10

0

.

40

3

@

´

´

=

=

V

W

r

 g  

以上まとめると、0℃で、0.04m3の耐圧容器に液化ガスである二酸化炭素が充てんする場合、この温度での二酸化炭素の飽和蒸気圧は3.45MPa(=34.0atm)であり、最低充てん量と最大充てん量は、それぞれ1870g, 36500gである。

 最大理論充てん量の質量の二酸化炭素が注入された時点で、容器内はすべて非圧縮性の液相となっているので、それ以上注入しようとすると、容器内の圧力は急激に上昇し危険である。

(3) 液化ガスの容器内の注入量または残存量を知るには、上記の計算からもわかるように、容器の重さを測定することで容器内部の物質量を知ることができる。逆に、圧力容器の圧力計を測定しても、容器内部の物質量を知ることはできない。容器内が空の状態から液化ガスを注入する場合であれば、はじめの内は、注入した液化ガスが気化するため、注入量の増加とともに圧力容器の圧力も増大する。しかし、その温度における液化ガスの蒸気圧に容器の圧力が到達すると、圧力一定のまま液化ガスの注入量が増加し、最大理論充てん量まで、ガスに対する液体の割合が増加しつづける。

4. メタノール製造プロセスの設計

4.1 化学プロセスの流れ

先に例として示したメタン改質プラントにおける熱容量計算について説明します。メタン改質プラントの主要なフローダイアグラムを次に示します。

  

分流器

熱交換器

コンプレッサー

HE1

天然ガス

スチーム

     図21 メタン改質プラントの主要なフローダイアグラム 

4.2 比熱・熱容量   

メタン改質プラントでは、天然ガスを脱硫装置の前の熱交換器(HE1)またはボイラーで加熱します。加熱源としてパージで排気するメタンを利用すると仮定する。メタン1molの発生熱は、あ         である。加熱される側の原料天然ガス100molを純メタンと考えて、300Kから800Kまで加熱する際に必要な熱源メタンの量を計算してみましょう。

気体の熱容量

理想気体の定圧モル熱容量Cp°は,ある温度範囲内で近似的に成り立つように温度の関数として示すことができる.

Cp°= a1 + a2T + a3T2 + a4T3 (4.14)

このときのa1,a2,a3,a4は表4-1に示すように物質により決まる定数である.温度T1からT2までのエンタルピー⊿Hは式(4.13)と式(1)より,次の関係が得られる.

定圧条件のときの温度変化によるエンタルピー変化は次のように与えられる.

dT

C

dH

P

=

 または 

ò

=

D

2

1

T

T

P

dT

C

H

(p一定) (4.13)

dT

T

a

T

a

T

a

a

H

ò

+

+

+

=

D

2

1

T

T

3

4

2

3

2

1

)

(

 (4.15)

一方,実在気体の定圧モル熱容量は,求める気体が純粋気体または一定組成の気体混合物の場合,理想気体の定圧モル熱容量と次式の関係がある.

Cp = CP° + ⊿CP (4.16)

このときのCpは実在気体の定圧モル熱容量,⊿Cpは残余定圧モル熱容量である.

この残余定圧モル熱容量を求めるには偏心因子を用いて以下の式で求めることができる.

⊿CP = ( ⊿CP )(0) + ω ( ⊿CP )(1) (4.17) 

気体の定圧モル熱容量の温度依存性

  気体の定圧モル熱容量については、データブックによりその関数系が異なる場合がある。R. C. Reid, J. M. Prausnitz and B. E. Poling, The Properties of Gases and Liquids, 4th edit., Appendix, McGraw – Hill (1987)では、温度の3次関数として、

Cp,m = a + bT + cT2 + dT3 ( Cp,m [JK‐1 mol‐1] , T [K] )             (4.18)

日本化学会編、”化学便覧基礎編(改訂3版)”では、2次関数として

Cp,m = a + bT + cT2 ( Cp,m [JK‐1 mol‐1] , T [K] ) (4.19)

これらの式と値を用いて、二酸化炭素について計算した結果を次に示す。

主な物質について、表4-1 に気体の定圧モル熱容量を次のような温度関数で表すデータを示した。

Cp,m = a + bT + cT2 + dT3 ( Cp,m [JK‐1 mol‐1] , T [K] )

データのない物質に対する熱容量の推算方法については、3年次の化学工学物性定数で解説する。

表4-1 気体の定圧モル熱容量8)

Cp,m = a1 + a2T + a3T2 + a4T3 ( Cp,m [JK‐1 mol‐1] , T [K] )

物質

a1

a2×103

a3×105

a4×108

CO

30.87

‐12.85

2.789

‐1.272

CO2

19.80

73.44

‐5.602

1.715

CS2

27.44

81.27

‐7.666

2.673

Cl2

26.93

33.84

‐3.869

1.547

F2

23.22

36.57

‐3.613

1.204

H2

27.14

9.274

‐1.381

0.7645

HCl

30.67

‐7.201

1.246

‐0.3898

HF

29.06

0.6611

‐0.2032

0.2504

H2O

32.24

1.924

1.055

‐0.3596

H2S

31.94

1.436

2.432

‐1.176

I2

35.59

6.515

‐0.6988

0.2834

N2

27.016

58.12

‐0.289

NH3

27.31

23.83

1.707

‐1.185

NO

29.35

‐0.9378

0.9747

‐0.4187

NO2

24.23

48.36

‐2.081

0.0293

O2

28.11

‐0.003680

1.746

‐1.065

SO2

23.85

66.99

‐4.961

1.328

SO3

19.21

1374

‐11.76

3.700

ギ酸

23.48

31.57

2.985

‐2.300

ホルムアルデヒド

11.71

135.8

‐8.411

2.017

メタン

19.25

52.13

1.197

‐1.132

エチレン

3.806

156.6

‐8.348

1.755

アセトアルデヒド

7.716

182.3

‐10.07

2.380

酢酸

4.840

254.9

‐17.53

4.949

エタン

5.409

178.1

‐6.938

0.8713

エタノール

9.014

214.1

‐8.390

0.1373

アセトン

6.301

260.6

‐12.53

2.038

プロパン

‐4.224

306.3

‐15.86

3.215

ベンゼン

‐33.92

473.9

‐30.17

7.130

R. C. Reid, J. M. Prausnitz and B. E. Poling, The Properties of Gases and Liquids, 4th edit., Appendix, McGraw – Hill (1987)より抜粋.なおN2(g)は日本化学会編、”化学便覧基礎編(改訂3版)”、p.II-239、丸善(1984)の値である.

例題5 メタンを主成分(80%程度含有)とする天然ガスからメタノールを製造するメタノール製造プロセスを設計したい。以下の設問に答えることで化学プラント設計を検討してみましょう。

1)  メタノールを生産する目的、原料、現在の生産量について、下記の英文を参考に説明して下さい。

 Methanol (5,405,000 tons/yr) is prepared by high temperature reaction of a mixture of H2, CO, and CO2 (“synthesis gas”) over a catalyst at 100 atmospheres pressure; used as a solvent and as starting material for the manufacture of formaldehyde, acetic acid, and methyl tert-butyl ether. (from McMurry Organic Chemistry) 

 [解] メタノールは、フォルムアルデヒド、酢酸、メチルターシャリーブチルエーテル製造の原料ならびに溶媒として、年間、米国で5,405,000 トン生産されています。原料としては、メタンを主成分(80%程度含有)とする天然ガスが適しています。H2, CO, and CO2 を含む合成ガスを利用して、100気圧以上の高温高圧下での触媒反応で合成されます。

2)  天然ガス(主成分メタン)からメタノールを製造するために、化学反応として、メタンと水の反応で一酸化炭素、水素、二酸化炭素を生成する“メタン改質”と、一酸化炭素と水素からメタノールを生成する“メタノール合成”を利用します。 “メタン改質塔”と“メタノール合成塔”のどちらを原料供給に近い側(上流)に配置すればよいでしょうか。

[解] メタン改質塔でできる一酸化炭素を、メタノール合成塔で利用するので、順序としては、メタン改質塔が原料に近い側(上流)で、メタノール合成装置を下流に設置します。

3) メタンと水の反応で一酸化炭素、水素、二酸化炭素を生成する“メタン改質”と、一酸化炭素、水素からメタノールを生成する“メタノール合成”について反応式を書いて説明して下さい。

[解] メタン改質塔での反応は、合成ガスと呼ばれるH2とCOの混合ガス(水性ガスともよばれ、都市ガスとしての燃料に用いられる)を生成する。この接触式蒸気分解法による天然ガスから合成ガスを製造する反応は、次式で示すように、メタンと水の反応で一酸化炭素、水素、二酸化炭素を生成する。ただし、これらは連続反応であり、メタンと水が反応して生じたCOの一部は、さらに水と反応して、二酸化炭素となります。

   CH4 + H2O (--(  CO + 3H2             (1)

   CO + H2O (--(  CO2 +  H2             (2)

組成を計算で求める場合は、反応したメタンの物質量を x [mol], 式(2)によって反応したCOの物質量を y [mol], として、連立方程式を解き求めます。反応後の各成分iの物質量,ni[mol]は、各反応式より、下表のように求まる。例えば、第1成分であるメタンの反応後の残っている物質量n1は反応前に1molあったもののうちx[mol]反応したのだから、(1―x)となる。

この反応は、815℃以上でメタン、水蒸気の反応平衡において、水蒸気が過剰に存在しない限り、ほとんどH2とCOに分解される。

 P.14の[例題5.9]に示したように、温度、873 K、圧力1 atm(101325Pa)にて、メタン1molに対して水蒸気5molを用いてメタンの改質を行った場合、この温度での反応(1),(2)の平衡定数がそれぞれK1=1.385 atm2 , K2=1.805 [-]であるとすると、反応後の平衡組成は計算より求まる。(計算の詳細は[例題5.9]に示す。)メタン1 molの内、0.952 molが反応し、0.952 mol生成したCOの内、0.611 molが反応してCO2となっている。反応後、メタン 0.048 mol、CO 0.341 mol、CO2 0.611 mol、H2 3.467 mol、H2O 3.437 mol が残る。

Table1 873K、圧力1atm(101300Pa)でのメタン改質反応(K1=1.385 atm2 , K2=1.805 [-])

No.

物質

反応前[mol]

反応後[mol]

反応後[mol]

 分圧[atm]

CH4

H2O

CO

H2

CO2

   1

   5

   0

   0

   0

0.048

3.437

0.341

3.467

0.611

n1= 1-x

n2= 5 – x – y

n3= x ―y

n4= 3x +y

n5= y

( 1- x) P / Nt

( 5- x - y) P / Nt

(x – y ) P / Nt

( 3x + y) P / Nt

y P / Nt

   6 

6 + 2x =Nt

    x = 0.952 , y = 0.611

この計算例からもわかるよう、水が過剰存在すると、メタノールの原料となるCOの濃度が減少し、CO2濃度が増加する。

また、温度の効果として、過剰の水蒸気で650℃のような低温では,次のような副反応が進行する.

   CH4 + 2H2O (--(  CO2 + 4H2             (3)

        CH4  (--(  2H2 + C              (4)

触媒としては、Al203やMgOを担体とするNi(ニッケル)触媒を用いる。Niは、イオウにより被毒されるので、原料の脱硫が必要となる。反応温度としては、800~850℃であり、吸熱反応させる。

なお、H2とCOよりなる合成ガスは、アンモニアなどの合成原料にもなるが、アンモニアの合成では水素だけが必要でCOの存在は逆に合成の阻害になります。

4)  天然ガス(主成分メタン)からメタノールを製造するために、触媒として、Al2O3やMgOを担体とするNi触媒を用いている。原料中のイオウは、触媒毒となる。天然ガスにも微量であるがイオウが含まれているので、原料からイオウを取り除く脱硫装置を製造装置として設置したい。この脱硫装置は、“メタン改質塔”と“メタノール合成塔”に対して、どの位置に設置したらよいでしょうか。のどちらを原料供給に近い側(上流)に配置すればよいでしょうか。

[解] メタン改質塔にイオウが流入しては、触媒を劣化させるので、“メタン改質塔”の上流に脱硫装置を設置しなければならない。

5) メタン改質塔で生成した一酸化炭素と水素からメタノールを生成する“メタノール合成”について反応式を書いて説明して下さい。

[解]  “メタノール合成塔”では、次式で示すように、メタン改質塔で生成した一酸化炭素と水素とが反応し、メタノールを生成する主反応とメタンを生成する副反応が起こる。

   CO + 2H2  (--(  CH3OH +  H2             (5)

   3H2 + CO  (--(  CH4  +  H2O             (6)

一般にメタノールは、触媒が存在する高温・高圧下で、合成ガス組成をCO:H2=1:2の比で供給し、合成される。

反応に使用する触媒は、ZnO-CuOの2元系、ZnO-Cr2O3-CuOの3元系です。ZnO-Cr2O3-CuOの3元系は、活性に強いが耐熱性、耐毒性がよわい。2元系で、300atm,300~400℃にて反応させるとCOの60%程度がメタノールとなる。

1968年にICI社、Lurgi社によって開発された低圧法では、50atm程度の低圧力でも、メタノールを生成可能である。

6) 高温・高圧の反応条件を選定した場合、反応後の分離プロセルとしては、蒸留や膜分離などの分離方法が考えられる。設備経費、運転経費(人件費も含む)も考慮して、蒸留(凝縮器)・膜分離であれば、いずれを採用すべきか理由とともに答えて下さい。

[解] 生成物がメタノールであり、極性が大きく液化しやすく、他の成分である水素、一酸化炭素などのガスに比較して沸点が高いことから蒸留(凝縮器)操作で分離することができる。また、蒸留操作は、連続自動運転に適しており、人件費を含めた運転経費が低くなることからも、この製造には適していると考えられる。

7)  以上のような考察から、天然ガス(主成分メタン)からメタノールを製造するために、原料である天然ガスを、①脱硫装置、②メタン改質塔、③合成塔、④分離装置(蒸留・凝縮器)の順に流すことでメタノールを生成できることがわかる。これらの装置を模式的に示した次に示すフローダイアグラムに各装置をつなぐ配管を直線で加筆して下さい。

   

   図2装置 ①脱硫装置、 ②メタン改質塔、  ③合成塔、    ④分離装置

[解] 

  

    原料                             生成メタノール

            図3 原料から生成メタノールを製造する主な流れ

8) 反応を高温で行い、反応後の分離器として蒸留・凝縮器を採用し、図3のようなフローダイアグラムを考えた。化学反応では、反応器での組成、温度、圧力の制御が重要である。温度、圧力は、反応器の周辺機器(コンプレッサー、バルブ、ヒーター、冷却器など)で制御可能であるが、このままのフローでは、反応器の入口で、反応に都合のよい組成に制御することができない。      

 反応器の入口で、反応に都合のよい組成に合成ガスの組成を調整するには、系全体のフローをどのように修正すればよいか検討しましょう。なお、反応には、未反応物質も残存し、水素やメタンは、反応後の分離器から容易に分離・回収できるとする。

[解] 反応・分離後、目的生成物であるメタノール以外の物質(水素など)の一部を反応器に戻すことで、組成調整が可能である。反応器に戻さないものもパージガスとして、メタン改質塔の加熱源として利用することができる。分離器から出るガスをパージと反応器の入口へ戻すものとに適当な割合に分けて流量を制御する装置として、分流器を採用する。分離器から出るガスのうち、反応器の入口へ戻す割合を分流比βとする。このβを調整することで、反応器の入口の組成を反応最適条件に制御できる。図22に修正したフローダイアグラムを示す。なお、分離操作を行うための凝縮器、熱交換器、合成ガスと混合するために分流後に昇圧(圧力を上げる)するためのコンプレッセーもあわせて加筆した。

  

9) 分流器からの循環を含むメタノール製造プロセスについて組成の制御を検討する。

原料である天然ガスは、触媒毒となるイオウを除去する脱硫装置を経て、スチーム/カーボンの物質量の比で約3倍の混合ガスと混合して改質炉に供給される。改質炉の操作条件としては、圧力P=2[MPa],温度T=1100[K]で操作され,Ni系触媒上で式(1),(2)で示される二つの反応により改質される。メタン改質塔を出たガスは過剰に供給された水を凝縮器で分離(図4のフローでは省略している。)したのち、遠心圧縮機で圧縮(図4のフローでは省略している。)される。メタノール合成塔の下流にある分離装置を出て分流器から一部戻ってくる循環ガスとこのガスを混合して組成を調整し、メタノール合成塔に供給する。メタン改質塔の組成が、CO: 27.00%, H2: 63.90%, CH4: 2.40%, CO2: 5.00%, N2: 1.70% である場合、COの転化率を90%,メタノールの選択率を80%と仮定して、βを決定する方法について説明して下さい。ただし、メタノール合成塔の入口での組成としては、不活性成分(CH4,N2,CO2)が15%となるように、循環量を調整するものとします。また、メタノール合成塔ではCuO 触媒を用い、10[MPa],600[K]で操作されている。

8) フラッシュ蒸留塔と精留塔からなる分離部の設計を行う。この反応では大きな発熱があるのでこれを利用して、未反応の水素と窒素が他の成分よりも分子量が小さく蒸発しやすい性質を考慮し、まず、フラッシュ蒸留塔で、分離することにした。

フラッシュ蒸留塔の温度は322K、全圧は2.OMPaとする。塔底から出る液体中のシクロヘキサンのモル分率党=0,99のとき、塔頂から出る気体中のシクロヘキサンのモル分率を求めよ。ただし、気相は理想気体と考え、溶液におけるシクロヘキサンと水素、窒素の相互作用はきわめて小さく、シクロヘキサンの活量係数γを1と近できるとするとよい。

ヒント;与えられた物性値の中からシクロヘキサンの蒸気圧を計算するAntoine定数を探し、この温度におけるシクロヘキサンの蒸気圧を計算する。(34.7kPa)

9) 精留塔(0.101MPa〉から出るシクロヘキサンの製品純度を99・9mol%に保ちたい。精留塔への供給液組成はシクロヘキサン 0.99、メチルシクロペンタン0.01である。塔頂留出液中のメチルシクロペンタンのモル分率を0.1とするとき、最小還流比Rを求めよ。ただし、シクロヘキサンに対するメチルシクロペンタンの比揮発度αは、与えられた物性値の中からシクロヘキサンとメチルシクロペンタンの蒸気圧を計算するAntoine定数を探し、この温度におけるシクロヘキサンとメチルシクロペンタンの蒸気圧を計算し、その比から計算するとよい。(1.32)

10) 反応器に導入する組成(反応器入口での)としては、水素22.5mol%、ベンゼン4.5mo1%、窒素73.0mo1%となるように原料流量およびパージの分流比βを制御している。反応器出口におけ

るベンゼン転化率を1とするとき、分流比βはいくらか。また、ベンゼン供給量100mo1に対する混合気体(水素+窒素)の供給量[mollを求めよ。ただし、フラッシュ蒸留塔において水素およぴ窒素は全て塔頂から、他の物質は全て塔底から出ると近似して考えて下さい。

ヒント;各装置での物質収支から考えてみましょう。

11) 還流液量を最小還流比の場合の1.2倍として運転するときの製品シクロヘキサン1molあたりのリボイラ加熱量を、塔頂留出液中のメチルシクロペンタンのモル分率を0.1の場合について求めよ。

ただし、精留塔への供給は沸点の液とし、塔底液の蒸発エンタルピーは30としてよい。さらに、この計算結果をもとに、必要段数、加熱量、製品ロス量の関係について簡単に説明して下さい。

演習1 ベンゼンと水素を反応させシクロヘキサンを生産する化学プラントを設計したい。以下の設問に答えることで実際のプラント設計を体験してみましょう。なお、シクロヘキサンは、ナイロンの原料であるε一カプロラクタムやアジピン酸の原料となるため、日本では年間約70万tが生産されており,このうち90%以上はナイロンの基礎原料向けに用いられています。

なお、高温でこの反応には、主反応により生成物であるシクロヘキサン(Cyclohexane)以外に副生成物であるメチルシクロペンタン(Methylcyclopentane)を生成する副反応が起こることが知られています。

問1 GoogleやYahooなどのインターネットの検索サイトを用いて、原料、生成物、副生成物の構造式(Structure),標準沸点(BP;Boiling Point),25℃における蒸気圧(vapor pressure, torr @25ºC、;torr=mmHg、101325/760をかけてPaとなる。)、反応式ならびにこの反応に用いる触媒について調べてみましょう。

ヒント; http://yahoo.co.jp/ ヤフーのサイト、 http://www.google.co.jp/  Googleのサイト

http://www.arb.ca.gov/db/solvents/solvent_pages/Hydrocarbon-HTML/methylcyclopentane.htm カリフォルニア州のthe Air Resources Board (ARB) のデータベース

http://en.wikipedia.org/wiki/Cyclohexane  wikipedia  (the free encyclopedia)のサイト 

 答  

Benzene

Cyclohexane

Methylcyclopentane

構造式

分子式

C6H6

C6H12

C5H9CH3

分子量

標準沸点

蒸気圧

問2 この反応の場合、高温では、Methylcyclopentaneの生成が多くなるが、比較的低い温度ではBenzeneの転化率(反応する割合)が低く1とならずにBenzeneが残存してしまう。製造プロセスとしては、毒性の強い化学物質や分離の困難な物質を残したくない。温度は高温・比較的低い温度のいずれにすべきか。

理由とともに答えて下さい。ヒント;ベンゼンとシクロヘキサンの沸点にも注目して下さい。

問3 Benzeneの転化率が1に近い値となるような反応条件を選定した場合、反応後の分離プロセルとしては、蒸留や膜分離などの分離方法が考えられる。設備経費、運転経費(人件費も含む)も考慮して、蒸留・膜分離であれば、いずれを採用すべきか理由とともに答えて下さい。

問5 フラッシュ蒸留塔と精留塔からなる分離部の設計を行う。この反応では大きな発熱があるのでこれを利用して、未反応の水素と窒素が他の成分よりも分子量が小さく蒸発しやすい性質を考慮し、まず、フラッシュ蒸留塔では、分離することにした。

フラッシュ蒸留塔の温度は322K、全圧は2.OMPaとする。塔底から出る液体中のシクロヘキサンのモル分率党=0,99のとき、塔頂から出る気体中のシクロヘキサンのモル分率を求めよ。ただし、気相は理想気体と考え、溶液におけるシクロヘキサンと水素、窒素の相互作用はきわめて小さく、シクロヘキサンの活量係数γを1と近似できるとするとよい。

ヒント;与えられた物性値の中からシクロヘキサンの蒸気圧を計算するAntoine定数を探し、この温度におけるシクロヘキサンの蒸気圧を計算する。(34.7kPa)

問6 精留塔(0.101MPa〉から出るシクロヘキサンの製品純度を99・9mol%に保ちたい。精留塔への供給液組成はシクロヘキサン 0.99、メチルシクロペンタン0.01である。塔頂留出液中のメチルシクロペンタンのモル分率を0.1とするとき、最小還流比Rを求めよ。ただし、シクロヘキサンに対するメチルシクロペンタンの比揮発度αは、与えられた物性値の中からシクロヘキサンとメチルシクロペンタンの蒸気圧を計算するAntoine定数を探し、この温度におけるシクロヘキサンとメチルシクロペンタンの蒸気圧を計算し、その比から計算するとよい。(1.32)

問7 反応器に導入する組成(反応器入口での)としては、水素22.5mol%、ベンゼン4.5mo1%、窒素73.0mo1%となるように原料流量およびパージの分流比βを制御している。反応器出口におけ

るベンゼン転化率を1とするとき、分流比βはいくらか。また、ベンゼン供給量100mo1に対する混合気体(水素+窒素)の供給量[mollを求めよ。ただし、フラッシュ蒸留塔において水素およぴ窒素は全て塔頂から、他の物質は全て塔底から出ると近似して考えて下さい。

ヒント;各装置での物質収支から考えてみましょう。

問8 還流液量を最小還流比の場合の1.2倍として運転するときの製品シクロヘキサン1molあたりのリボイラ加熱量を、塔頂留出液中のメチルシクロペンタンのモル分率を0.1の場合について求めよ。

ただし、精留塔への供給は沸点の液とし、塔底液の蒸発エンタルピーは30としてよい。さらに、この計算結果をもとに、必要段数、加熱量、製品ロス量の関係について簡単に説明して下さい。

問9 シクロヘキサンを生産する目的、原料、生成反応、現在の生産量について、下記の英文を参考に説明して下さい。

 Cyclohexane (1,550,000 tons/yr) is prepared by catalytic hydrogenation of benzene; used as starting material for synthesis of the caprolactam and adipic acid needed for nylon. (from McMurry Organic Chemistry)

5.化学平衡

 5.1 化学反応と平衡定数

 化学反応でどの程度の生成物が生じるかについては、反応平衡定数、反応速度定数の情報から求めることができる。反応速度も反応平衡も重要な因子です。メタン改質反応は、十分大きい反応速度を有しているので、反応平衡定数が重要となる。

反応について調べてみましょう!!

  http://dir.yahoo.com/Science/Chemistry/Web_Directories/ 

  http://mooni.fccj.org/~ethall/ Dr. Edwin Thall

  http://mooni.fccj.org/%7Eethall/2046/ch13/equilib.htm Chemical Equilibrium

  http://www.ilpi.com/genchem/demo/index.html 

  http://web.fccj.org/~ethall/benzene/benzene.htm 

  http://www.slcc.edu/schools/hum_sci/chemistry/faculty/iles/CHEM1220/unit2.htm 

http://www.chem.lsu.edu/lucid/allen/ch1202/1202Exam1.html 

http://www.miracosta.cc.ca.us/home/dlr/100exp9.htm 

化学反応でどの程度の生成物が生じるかについては、反応平衡定数、反応速度定数の情報から求めることができる。メタン改質反応は、十分大きい反応速度を有しているので、反応平衡定数が重要となる。

 ギブスの自由エネルギーとヘルムホルツの自由エネルギー

自由エネルギーとして,次式で定義されるギブスの自由エネルギー(Gibbs’ free energy)とヘルムホルツの自由エネルギー(Helmholtz free energy)が有用である.

TS

H

G

-

=

 (5.1)

TS

U

A

-

=

 (5.2)

これらの式では,熱力学第1法則で用いられるエンタルピー,H,内部エネルギー,Uと熱力学第2法則で用いられるエントロピ,Sを同時に考慮できる.圧力が一定の下では,ギブスの自由エネルギーを使うのが便利であり,Gをたんに自由エネルギー,Aを最大仕事関数と呼ぶこともある.

熱力学的考察では,U,H,G,A,Sなどの状態量を用いる場合が多い.これらの相互関係の知見も有用である.式(5.1)の全微分は次のように表される.

SdT

TdS

dH

dG

-

-

=

 (5.3)

式(4.15)に定義されているエンタルピー,Hを全微分する.

Vdp

pdV

dU

dH

+

+

=

 (5.4)

さらに可逆過程であれば,式(4.27)より,dU+pdVはTdSに等しいので,次式が成り立つ.

Vdp

TdS

dH

+

=

 (5.5)

式(5.3)に式(5.5)を代入すると,次のようなる.

Vdp

SdT

dG

+

-

=

 (5.6)

Aについても同様に,次式を得る.

pdV

SdT

dA

-

-

=

 (5.7)

式(4.27),(5.5),(5.6),(5.7)は,可逆過程における状態量U,H,G,Aに関する重要な基礎式である.

[例題5.1] 理想気体が,一定温度Tで,状態1(p1,V1)から状態2(p2,V2)へ変化する場合に対して,ギブスの自由エネルギー,ヘルムホルツの自由エネルギー,内部エネルギー,エンタルピーの変化量を求める式を導出せよ.

[解] ギブスの自由エネルギーについては,一定温度であるからdT =0となり,状態1から状態2へ変化するときのギブスの自由エネルギーの変化量をΔGとすれば,式(5.6)より以下のようになる.

ò

ò

ò

=

=

=

=

D

2

1

1

2

2

1

2

1

ln

p

p

RT

p

dp

RT

Vdp

dG

G

 (1)

ヘルムホルツの自由エネルギーについては,先ほどと同様に,式(5.7)より以下のようになる.

1

2

2

1

1

2

2

1

2

1

ln

ln

p

p

RT

V

V

RT

V

dV

RT

pdV

dA

A

=

-

=

-

=

-

=

=

D

ò

ò

ò

 (2)

内部エネルギーについても同様に,dT =0であり,内部エネルギーの変化量を⊿Uとすれば,式(4.12)よりdU=CVdTであり,以下のようになる.

0

2

1

2

1

=

=

=

D

ò

ò

CvdT

dU

U

 (3)

エンタルピーについては,エンタルピーの変化量を⊿Hとすれば,上式(3)と式(5.4)より以下のようになる.

0

ln

ln

0

1

2

1

2

2

1

2

1

2

1

=

+

-

=

+

+

D

=

=

D

ò

ò

ò

p

p

RT

p

p

RT

Vdp

pdV

U

dH

H

 (4)

[例題5.2] 30℃の状態に保たれた二酸化炭素1モルの,400atmと20atmに対するギブスの自由エネルギーの変化量ΔGを計算せよ.ただし,二酸化炭素を理想気体と見なす.

[解] 一定温度であるから[例題5.1]より,ギブスの自由エネルギーの変化量を求める式は以下のようになる.

1

2

1

2

ln

p

p

RT

G

G

G

=

-

=

D

 (1)

したがって,計算すると以下のようになる.

ΔG = 8.314×(273+30)×ln(400/20)=7547 J mol-1

自由エネルギー変化と反応の方向

ある反応がある組成の状態からどちらに進行する可能性があるかは自由エネルギー変化を比較するとわかる.個々の物質の絶対的な自由エネルギーの値を決めることはできないが,1atm,298.2Kの標準状態におけるある元素の自由エネルギーを0(ゼロ)とすることによって,それらの元素から生成される物質の自由エネルギーの変化を求めることは可能である.これらの値が標準生成自由エネルギー変化である.

たとえば,1atm,298.2Kにおいて,水素,窒素,酸素のそれぞれの気体のH2,N2,O2の標準生成自由エネルギーは0(ゼロ)となる.さまざまな物質の標準生成自由エネルギー変化は求められており,表などにまとめられている.

ある反応における標準自由エネルギー変化は各成分の標準生成自由エネルギーより次式によって求めることができる.

⊿G゚=(生成物の標準生成自由エネルギー変化)

-(反応物の標準生成自由エネルギー変化) (5.26)

[例題5.3] 次の反応に対する⊿G298゚を求めよ.ただし,H2O(1)の標準生成自由エネルギー変化は-228.6 kJ mol-1である.

H2(g) + 1/2O2 → H2O (1)

[解] 標準状態で水素(g)と酸素(g)の⊿Gf゚は0であるので,次式のように解くことができる.

⊿Gf゚=-228.6-(0 + (1/2)×0)=-228.6 kJ mol-1

化学反応の自由エネルギー変化と,その反応が自発的に進行するかどうかには直接的な関係がある.その系の自由エネルギーが増加する方向には自発的には進行しない.したがって,⊿Gが負であれば,反応は順方向に進行する.また,⊿Gが正であれば逆方向に進行する.しかし,ここで進行するというのは可能性であって,速度が非常に遅いために進行してないと考えてもよい場合もある.

化学反応においては,生成物の化学ポテンシャルの総和が反応物の化学ポテンシャルの総和より小さければ,化学反応は外部からエネルギーを与えなくとも進行し,その結果として,系の自由エネルギーは低下する.しかし,反応が進むと生成物の活動度が増加して,生成物の化学ポテンシャルは増加し,逆に反応物の活動度は減少してその化学ポテンシャルも減少する.そして,反応物の化学ポテンシャルの総和と生成物の化学ポテンシャルの総和とが等しくなり,反応の推進力がなくなり,平衡状態が達成される.

平衡状態は化学反応が起こらないといった状態ではなく,反応物から生成物が生じる反応速度と生成物が反応物にもどる反応速度が釣り合った状態であり,見かけの変化がなくなった状態となることである(図5-3).したがって,⊿Gの符号より,反応がどちらに進むかということの判定ができる.さらに反応がどれほどまで進むのかということも知ることができる.この点について考察してみよう.

定温,定圧でおこる次のような気体の反応を考えてみよう.

aA + bB → cC + dD (5.27)

それぞれのi成分1molあたりの分圧pi気圧における自由エネルギーGiは,それぞれの成分の標準状態での自由エネルギーGi°と分圧によって次式のようになる.

(

)

°

+

°

=

p

p

RT

G

G

i

i

i

/

ln

 (5.28)

p°は標準圧力であり,通常は標準大気圧を使用する.この反応の自由エネルギー変化は⊿G=W(有効)に従って式(5.27)のように表すことができる.

ΔG = (cGC + dGD) – (aGA + bGB) (5.29)

式(5.26)に式(5.27)を代入して整理すると次式のように書ける.

(

)

(

)

(

)

(

)

ú

û

ù

ê

ë

é

°

°

°

°

-

°

D

=

D

b

B

a

A

d

D

c

C

p

p

p

p

p

p

p

p

RT

G

G

/

/

/

/

ln

 (5.30)

平衡状態においては⊿G=0となるので,

(

)

(

)

(

)

(

)

ú

û

ù

ê

ë

é

°

°

°

°

-

=

D

b

B

a

A

d

D

c

C

p

p

p

p

p

p

p

p

RT

G

/

/

/

/

ln

 (5.31)

(

)

(

)

(

)

(

)

b

B

a

A

d

D

c

C

p

p

p

p

p

p

p

p

K

°

°

°

°

=

/

/

/

/

 (5.32)

とおけば,(5.33)のように表される.

K

RT

G

ln

-

=

°

D

 (5.33)

Kは平衡定数とよばれる.このように,標準自由エネルギー変化が分かれば,平衡状態が達成されたときに,どのような組成になるのか計算することが可能となる.分圧によって平衡定数を表すと次のようになる.

b

B

a

A

d

D

c

C

p

p

p

p

p

K

=

 (5.34)

[例題5.4] 水素と窒素からアンモニアを生成する反応(ハーバーボッシュ法)は下記のように表される。圧力500atm、温度500℃の反応器において1モルのN2と3モルのH2を反応させ、NH3が生じた。平衡に達したときの反応器内のモル分率を調べたところ、xN2=0.194、xH2=0.582、xNH3=0.224であった。このときのモル分率xによる反応平衡定数Kxを求めよ。

N2(g) + 3H2(g) ⇔ 2NH3(g)

[解]

モル分率xによる平衡定数Kxは次のように与えられる。

31

.

1

0.582

194

.

0

224

.

0

)

)(

(

)

(

3

2

3

H2

N2

2

NH3

=

´

=

=

x

x

x

K

x

[例題5.5] 水素と窒素からアンモニアを生成する反応(ハーバーボッシュ法)は下記のように表される.

N2(g) + 3H2(g) ⇔ 2NH3(g)

このときの25℃におけるKを求めよ.ただし,NH3(g)の標準生成自由エネルギーは,⊿Gf°=16.64 kJ mol-1である.

[解] 標準自由エネルギー変化は,⊿G°=(2)(16.64)=33.28 kJ mol-1となるので式(5.31)より

K=exp(-⊿G°/RT)=exp(-33280/8.314/298.2)=1.49×10-6

5.2 平衡定数の温度依存性

系が平衡に達したときの組成は温度によって変化する.温度が変わったときに化学反応の平衡がどのように影響されるか,平衡定数と温度の関係についてここでは説明する.平衡定数は反応の自由エネルギー変化で式(5.33)の関係で表される.

定圧の条件で温度について式(5.33)を微分すると次式のようになる.

定圧の条件で温度について式(33)を微分すると次式のようになる.

   

K

RT

G

ln

-

=

D

                      (33) or (B-1)

   

RT

G

K

D

-

=

ln

                            (B-2)

   

)

(

1

)

(ln

T

G

dT

d

R

K

dT

d

D

-

=

                      (B-3)

ギブスの自由エネルギー

G

D

とエンタルピーの関係について考える。

熱力学第1法則は、次式で与えられる。すなわち、系の熱量変化dQは、内部エネルギー変化dU、系の圧力Pおよび体積変化dVを用いて次式で与えられる。

dQ =dU +PdV

(A-1-9)

熱力学第二法則より、温度TにおけるdQとエントロピー変化dSは次式で与えられる。

dQ = TdS

(A-1-10)

式(A-1-9)、(A-1-10)より、

dQ =TdS = dU +PdV

(A-1-11)

このとき、エンタルピーHは次式で定義される。

H = U +PV

(A-1-12)

式(A-1-12)を全微分すると、

dH = dU + PdV +VdP

(A-1-13)

式(A-1-13)に式(A-1-11)を代入すると、

dH = TdS +VdP

(A-1-14)

ここでギブス(Gibbs)の自由エネルギーGは、H、T、Sを用いて次式で定義される。

G = H -TS

(A-1-15)

式(A-1-15)を全微分すると、

dG =dH -TdS -SdT

(A-1-16)

式(A-1-14)、(A-1-16)より、

dG = TdS + VdP - TdS - SdT

dG = VdP - SdT

(A-1-17)

ここで、定圧であるとすると、

  P = const (一定)                        (B-4)

  dP =0                              (B-5)

  dG = - SdT                           (B-6)

  

P

T

G

S

)

(

-

=

(B-7)

式(A-1-15)を変形して、GをHで表すと、

H = G +TS (B-8)

P

T

G

T

G

H

)

(

-

=

(B-9)

ここで、

T

G

)

(

T

G

T

の関係について考える。まず、

)

(

T

G

T

の微分を行う。

2

)

(

)

(

T

G

T

G

T

T

G

T

-

=

(B-10)

両辺をーT2倍すると、

   

)

(

)

(

2

T

G

T

G

T

G

T

T

-

=

-

                    (B-11) 

この式の右辺を式(B-9)と比較すると、Hと等しいことが分かる。

   

H

T

G

T

G

P

=

-

)

(

                        (B-12) 

そこで、式(B-11)は、

   

H

T

G

T

G

T

G

T

T

=

-

=

-

)

(

)

(

2

                  (B-13)

さらに両辺をーT2で割って整理すると、

   

2

)

(

T

H

T

G

T

-

=

                          (B-14)

これが、Gibbs-Helmholtzの関係式である。

G,Hは状態量であるので、任意の状態の差についても同様に成り立つ。

  

2

)

(

T

H

T

G

dT

d

D

-

=

D

                          (B-15)

この関係式を式(B-3)に代入すると、

  

)

(

1

)

(ln

T

G

dT

d

R

K

dT

d

D

-

=

                      (B-3)

  

2

)

(ln

RT

H

K

dT

d

D

=

                          (B-16)

この式はファントホッフ(van’t Hoff)の式と呼ばれ,次式のように書ける.

  

dT

RT

H

K

d

2

)

(ln

D

=

                       (B-17) 

ΔHが温度に関して一定であると仮定して両辺を積分すると、

  

[

]

dT

T

R

H

K

T

T

K

K