Ehlers-Danlos症候群第IV型亜型の1例 電顕的・免疫...

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日皮会誌:99 (5), 601-607, 1989 (平元) Ehlers-Danlos症候群第IV型亜型の1例 電顕的・免疫組織学的検討 松田 真弓* 赤坂 俊英* 皮膚の脆弱性,易挫傷性を主症状とし,臨床的に Ehlers-Danlos症候群(以下EDS)のIV型と考えられ た5歳,男児例にっき報告するとともに,本症のコラー ゲソ縁維の電顕的観察とタイプmコラーゲンの局在を 免疫組織学的に検索した.その結果,コラーゲソ細線 維の大小不同,形態の不整などが観察され,タイプIll コラーゲンの局在についても同年代の正常皮膚と比較 して,明らかな相違を示した. はじめに EDSはコラーゲソ代謝異常による遺伝性結合織疾 患の一つで,現在11型に分類されている1).病型により 主症状や合併症に差異はあるが,共通してみられる臨 床的特徴は,皮膚の過伸展性,脆弱性,関節の過可動 性などである. 1972年, Pinnel et al.2)が網膜剥離症と 側育症を呈し,生化学的にハイドロオキシリジン欠損 コラーゲンをもつEDSをIV型と報告して以来, EDS のコラーゲソ代謝過程における種々の酵素欠損が明ら かになり,11型に細分化されるにいたった.我々は生 化学的にタイプIIIコラーゲンの欠損によるとされ,臨 床的にEDSのW型と考えられる症例につき,電顕的, 免疫組織学的に検索したので報告する. 材料と方法 本症の上腕部の皮膚とコントロールとして4歳,正 常男児の皮膚を生検し,光顕的,電顕的,免疫組織学 的観察を行った. 1.光顕 組織を20%ホルマリンで固定し,型通りにElastica van Gieson (E.v.G)染色を施行した. 2.電顕 組織をO.IMカコジル酸緩衝液,2%パラホルムア *岩手医科大学皮膚科学教室(主任 宰市教授) **同大臨床検査医学 昭和63年9月7日受付,昭和63年12月21日掲載決定 別刷請求先:(〒020)岩手県盛岡市内丸19- 1 岩手 医科大学皮膚科 松田真弓 宰市* 鈴木 是光¨ ルデヒド液, 2.5%グルタールアルデヒド液で固定後, 型通りの操作を施行後エポソ812に包埋し, LKB型ウ ルトラドームにて超薄切した.染色は酢酸ウラニルと クェン酸鉛による二重電子染色を行い,700H透過型 電子顕微鏡で観察した. 3.免疫組織化学 組織をperiodate-lysine-paraformaldehyde (PLP) 液で固定後,凍結切片を作製し,酵素抗体法間接法に したがって反応させた.すなわち一次抗体にAnti (bovine) Type Ill Collagen ウサギIgG (コスモ・バ イオ)を用い1%ウシ血清アルブミンを加えたPBS (phosphate buffer saline)で800倍に希釈し,室温で 24時間反応させた.二次抗体はペルオキシダーゼ標識 抗ウサギIgG(コス1ご・バイオ)を用い,一次抗体と同 様の方法で50倍に希釈し室温で1時間から2時間反応 させた.なお,対照試験としては,一次抗体を省略し て,正常ヤギ血清をかけ,以下は同様に反応させた. 4,コラーゲン細線維の画像解析 同倍率のコラー-ゲソ線維の横断面の電顕像を,正常 皮膚で527{i,本症では907個につき画像解析装置 IBAS2000を用い,その面積,円相当径(形の不整のあ るものを,それと同じ面積の円とした場合の直径),周 囲長,形状係数(円を1とした場合の値で,1よりも 小さいほど形の不整を示す.)などのパラタークーにつ き測定した. 患者は5歳,男児.初診は昭和62年12月8日.家系 内に同症はなく,乱視,遠視,緑内障,内反足, ソケ イヘルニアの既往がある.患児は首のすわりは遅く, 歩行開始も1歳4ヵ月であった.乳児期より軽度の外 傷や打撲により,皮膚に切創や皮下出血をつくり易 かった.小児科を受診し出血傾向の原因にっき精査さ れたが,異常を確認するまでには至らなかった. 顔面ではAcrogeriaを思わせる所見はなく,鼻根部 と額部に萎縮性癩痕をみる(図1九上腕部,その他の 部位にも数力所皮下出血斑をみる(図2).手指関節の 過可動性は軽度みとめるが(図3),皮膚の過伸展性に

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Page 1: Ehlers-Danlos症候群第IV型亜型の1例 電顕的・免疫 …drmtl.org/data/099050601.pdfEhlers-Danlos症候群第IV型亜型 図5 膠原線維横断面の電顕像.左図の正常像に比較して,大小不同,形態の不整を

日皮会誌:99 (5), 601-607, 1989 (平元)

Ehlers-Danlos症候群第IV型亜型の1例

   電顕的・免疫組織学的検討

松田 真弓* 赤坂 俊英* 昆

           要  旨

 皮膚の脆弱性,易挫傷性を主症状とし,臨床的に

Ehlers-Danlos症候群(以下EDS)のIV型と考えられ

た5歳,男児例にっき報告するとともに,本症のコラー

ゲソ縁維の電顕的観察とタイプmコラーゲンの局在を

免疫組織学的に検索した.その結果,コラーゲソ細線

維の大小不同,形態の不整などが観察され,タイプIll

コラーゲンの局在についても同年代の正常皮膚と比較

して,明らかな相違を示した.

           はじめに

 EDSはコラーゲソ代謝異常による遺伝性結合織疾

患の一つで,現在11型に分類されている1).病型により

主症状や合併症に差異はあるが,共通してみられる臨

床的特徴は,皮膚の過伸展性,脆弱性,関節の過可動

性などである. 1972年, Pinnel et al.2)が網膜剥離症と

側育症を呈し,生化学的にハイドロオキシリジン欠損

コラーゲンをもつEDSをIV型と報告して以来, EDS

のコラーゲソ代謝過程における種々の酵素欠損が明ら

かになり,11型に細分化されるにいたった.我々は生

化学的にタイプIIIコラーゲンの欠損によるとされ,臨

床的にEDSのW型と考えられる症例につき,電顕的,

免疫組織学的に検索したので報告する.

          材料と方法

 本症の上腕部の皮膚とコントロールとして4歳,正

常男児の皮膚を生検し,光顕的,電顕的,免疫組織学

的観察を行った.

 1.光顕

 組織を20%ホルマリンで固定し,型通りにElastica

van Gieson (E.v.G)染色を施行した.

 2.電顕

 組織をO.IMカコジル酸緩衝液,2%パラホルムア

 *岩手医科大学皮膚科学教室(主任 昆 宰市教授)

**同大臨床検査医学

昭和63年9月7日受付,昭和63年12月21日掲載決定

別刷請求先:(〒020)岩手県盛岡市内丸19- 1 岩手

 医科大学皮膚科 松田真弓

宰市* 鈴木 是光¨

ルデヒド液, 2.5%グルタールアルデヒド液で固定後,

型通りの操作を施行後エポソ812に包埋し, LKB型ウ

ルトラドームにて超薄切した.染色は酢酸ウラニルと

クェン酸鉛による二重電子染色を行い,700H透過型

電子顕微鏡で観察した.

 3.免疫組織化学

 組織をperiodate-lysine-paraformaldehyde (PLP)

液で固定後,凍結切片を作製し,酵素抗体法間接法に

したがって反応させた.すなわち一次抗体にAnti

(bovine) Type Ill Collagen ウサギIgG (コスモ・バ

イオ)を用い1%ウシ血清アルブミンを加えたPBS

(phosphate buffer saline)で800倍に希釈し,室温で

24時間反応させた.二次抗体はペルオキシダーゼ標識

抗ウサギIgG(コス1ご・バイオ)を用い,一次抗体と同

様の方法で50倍に希釈し室温で1時間から2時間反応

させた.なお,対照試験としては,一次抗体を省略し

て,正常ヤギ血清をかけ,以下は同様に反応させた.

 4,コラーゲン細線維の画像解析

 同倍率のコラー-ゲソ線維の横断面の電顕像を,正常

皮膚で527{i,本症では907個につき画像解析装置

IBAS2000を用い,その面積,円相当径(形の不整のあ

るものを,それと同じ面積の円とした場合の直径),周

囲長,形状係数(円を1とした場合の値で,1よりも

小さいほど形の不整を示す.)などのパラタークーにつ

き測定した.

          症  例

 患者は5歳,男児.初診は昭和62年12月8日.家系

内に同症はなく,乱視,遠視,緑内障,内反足, ソケ

イヘルニアの既往がある.患児は首のすわりは遅く,

歩行開始も1歳4ヵ月であった.乳児期より軽度の外

傷や打撲により,皮膚に切創や皮下出血をつくり易

かった.小児科を受診し出血傾向の原因にっき精査さ

れたが,異常を確認するまでには至らなかった.

 顔面ではAcrogeriaを思わせる所見はなく,鼻根部

と額部に萎縮性癩痕をみる(図1九上腕部,その他の

部位にも数力所皮下出血斑をみる(図2).手指関節の

過可動性は軽度みとめるが(図3),皮膚の過伸展性に

Page 2: Ehlers-Danlos症候群第IV型亜型の1例 電顕的・免疫 …drmtl.org/data/099050601.pdfEhlers-Danlos症候群第IV型亜型 図5 膠原線維横断面の電顕像.左図の正常像に比較して,大小不同,形態の不整を

602 松田 真弓ほか

図1 顔面はAcrogeriaを思わせる所見はなく鼻根

 部に萎縮性癩痕をみる

図3 皮膚の過伸展性は正常.手指関節の過可動性は

 軽度みとめる.

ついては,ほぽ正常所見を示す.

           結  果

 光顕所見:本症の上腕部より採取した皮膚のE.v.G.

染色所見では,軽度の過角化と部分的な表皮肥厚をみ

図2 上腕部の皮下出血斑

'ふ。、べ。.I!JC………、・

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不二9

 卜二

図4 病理組織所見(E.v.G.染色).膠原線維が不規則

 に走行する.

とめる.真皮では膠原線維が不規則に走行しているが,

弾性線維に著変はない(図4).

 電顕所見:光頭所見と同じ部位の真皮深層のコラー

ゲソ線維を電顕的に観察した.本症のコラーゲソ細線

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Ehlers-Danlos症候群第IV型亜型

図5 膠原線維横断面の電顕像.左図の正常像に比較して,大小不同,形態の不整を

 みる.×30,000

図6 膠原線組縦断面の電顕像.左図の正常に比較し,走行不規則で,一部先細りを

 みる(矢印).×30,000

603

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604 松田 真弓ほか

図7 毛細血管の電顕像.基底膜の多層化をみる(矢印).挿入図:基底膜の多層化の

 拡大像.×9,000

維の横断面は,正常皮膚の細線維に比較して,大小不

同,形態の不整をみとめる.また細線組間に電子密度

の高い穎粒状の物質が不規則に存在している(図5).

また縦断面像では,本症のコラーゲソ細線維は走行が

不規則であり,交叉している線維や幅が不同であり,

矢印に示すように先細りを示す線維もみられる(図

6).弾性線維に異常は見られなかった.その他,毛細

血管周囲の基底膜の多層化がみられた(図7).

 画像解析所見:これらのコラーゲソ細線維につき,

Zeissの画像解析装置を用い面積,円相当径,周囲長,

形状係数をパラメーターとし,本症と同年代の正常皮

膚を比較したところ,全てのパラメーターにおいて本

症の方が分散が大きく,それぞれの平均値も小さかっ

た.例えば円相当径では本症の平均が78mm,コント

ロールが84nmであり,形状係数は本症が0.61,コソト

ロールが0.71であった(図8).

 免疫組織化学的所見:Anti Type Ill Collagen ウサ

ギlgGを用いた酵素抗体法間接法により,正常皮膚で

は,ほぼ真皮全層にわたり,膠原線維東に部分的に反

応がみられたが,真皮乳頭層の表皮直下に最も強い反

応が線状,その下方に細線組状に反応がみられた.そ

の他エックリン汗腺周囲にも同様の反応がみられた

が,血管周囲では反応はみられなかった.本症では真

皮乳頭層のごく一部にのみ反応をみるのみで,真皮全

層にわたりまた汗腺周囲,血管周囲には反応がみられ

なかった(図9).

          考  按

 EDSは常染色体優性遺伝あるいは劣性遺伝などの

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REL, FREQUENCY %

20

10

0.

30

20

10

Ehlers・Danlos症候群第IV型亜型

                    口CIRCl Eく10りり

図8 膠原細線組の円相当径の頻度を表わしたグラ

 フ.正常に比較し,ばらつきが大きい.

種々の遺伝形式を示す疾患である.自験例では家系内

に同症をみとめず,その遺伝形式ははっきりしなかっ

たが,皮膚の脆弱性,易挫傷性などの臨床症状などか

らEDS IV型を考えた.現在IV型には種々の亜型が知

られている.すなわちBarabas(1967)=", Beighton et

a1.(1970)4)は,過度に傷つき易い皮膚をもつEDSの

1例を報告し, ecchymoticあるいはarterial typeと

し,後にMckusick(1983)^'がこのタイプをEDS IV型

と分類したのに始まる,その後, Pope et al. (1975)≪

は, Autosomal recessiveの遺伝形式をもち,臨床的

にAcrogeriaを示す患者の組織と培養皮膚線維芽細

胞にタイプIIIコラーゲンの欠損を証明し,比較的若い

時期に大動脈の破裂などの重篤な合併症で死亡すると

いう新しいタイプをIV型に加えた.さらにautosomal

recessiveで長期生存型,また, autosomal dominant

で臨床的にも顔貌も正常とはあまり変りなく,軽い内

出血にとどまり,重篤な合併症はみられないタイプが

新たにIV型に加わった恍 これらは培養系にタイプIll

コラーゲンが欠損するが,組織には若干のタイプIII:^

ラーケンが存在するために,古典的なタイプと比べて

予後のよいタイプとされている.自験例も後者の比較

的予後の良いタイプに属する可能性がある.

 白験例のコラーゲソ線維の電顕的観察では大小不

605

同,形態の不整などが観察されたが, EDSの従来コ

ラーゲソ線維の電顕的観察では,横断面の形態の異常

としてcollagen flower がEDSのI, 11, III, V, VI,

VII,IX型に観察されたとの報告8)があるが,本症では

collagen flowerはみられなかった.その他径の大小不

同,径が正常より大きいものとするもの,小さいとす

るものなど種々の報告があり, EDSの型により多少の

違いはあるが,それらは病型により特異的ではなく,

ほぼ共通した所見としてみられる.またコラーゲソ細

線維間の不規則に存在する穎粒状物質は,コラーゲソ

細線維の未熟な線維であるトロポコラーゲソあるいは

プロコラーゲソにプロテオグリカンなどの基質成分が

混在してトる可能性がある9).すなわちこれらの所見

も,コラーゲソ線維の大小不同などの所見とともにコ

ラーゲンの代謝異常を反響する形態的所見である.つ

ぎに毛細血管基底膜の多層化については,小篠ら

(1985)""の同じEDS IV型の報告にもみられ,タイプ

IVコラーゲソなどの基底膜にみられるコラーゲンに対

する検討も必要であるとしている.基底膜の多層化は

本症に特異的ではなく,炎症などの種々の病態に観察

される所見であるn)すなわち何らかの原因により,血

管内皮細胞の基底膜合成速度と,離脱した基底膜の縁

組芽細胞による処理の不均衡により,多層化をきたし

たものと思われるが詳細はなお不明である.

 EDS IV型はコラーゲン代謝過程の第一段階で,コ

ラーゲソ合成細胞の細胞核で行われる蛋白合成の際の

遺伝情報の異常によるタイプIIIコラーゲンの欠損にそ

の病因があるといわれている6).しかしEDS IV型に

も種々の亜型のあることが, Popeらにより報告され

ており,これらには組織にタイプIIIコラーゲンが,わ

ずかではあるが存在する型もあることが生化学的に証

明されている恍自験例においては,生化学的検索は行

われなかったが,免疫組織学的にAnti Type Ill col-

lagenを使用して,その免疫組織学的局在を同年代の

正常皮膚と比較して,異なった分布を示した.一般的

にコラーゲンの分子種は現在10数種のものが知られて

いる12)その中で払I,II,III型は線維性コラーゲソ

として知られ,Ⅲ型は〔α1(IH)〕3の組成であり,皮膚,

血管中膜,子宮,肺,骨膜などに分布していることが

知られている.さらに皮膚におけるタイプIIIコラーゲ

ンの局在は深井ら13)により,蛍光抗体法により検索さ

れている.それによるとタイプIIIコラーゲンは真皮仝

層にわたり,またアポクリン汗腺,エクリン汗腺基底

膜の外周部分に強い局在がみられ,血管周囲にはみら

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606 松田 真弓ほか

図9 Anti (bovine) Type Ill Collagenによる免疫組織化学光顕像.左図の正常皮

 膚では表皮直下,真皮乳頭層に線状,細線維状の反応を強く認める.その他真皮で

 は膠原線維束に接して部分的に反応をみる.右図の本症では反応をみない.

れなかったと報告している.これらの所見は我々の酵

素抗体法間接法を用いた正常皮膚での所見とほぼ同様

の結果であった.これらの正常皮膚における結果と比

較して,自験例のEDSでは真皮乳頭層のごく一部に

のみ反応がみられたのみで,他はほとんど陰性であっ

たことから,タイプIIIコラーゲンの不完全欠損例また

は合成はなされているが遺伝情報の伝達の段階で障害

があるため,正常とは異なったアミノ酸配列のものが

                          文

  1)杉本信幸,寺山和雄,中田和義,和田忠彦:Ehlers-

   Danlos症候群の2例,整・災害,29 : 1835-1838,

   1986.

  2)Pinnel SR, Krane SM, Kenzora JE, Glimcher

   MJ : Aheritable disorder of connective tissue.

   Hydroxylysine-deficient collagen disease, A^

   EwgJ Med. 286:1013-1020, 1972.

  3)Barabas AP : Heterogeneity of the Ehlers-

   Danlos syndrome : Description of three clinical

   types and a hypothesis to explain the basic

   defects,BrMed/.ii:180-186, 1967.

  4) Beighton PH : The Ehlers-Danlos Syndome,

   London, William Heinemann (Medical BOokS),

   1970.

  5)Mckusick VA ; Mendelian Inheritance in

   Man, 6th ed, Johns Hopkins Univ Press, 151

合成され,抗原性の変化をきたし,反応がみられない

とも考えられる.

 以上より,自験例はPopeらの報告したEDS IV型

の亜型に属し,組織にわずかにタイプIIDラーケンが

存在することを免疫組織学的に明らかにした.

 稿を終えるにあたり,御助言をいただいた第2解剖井出

千東教授,御協力をいただいた電顕室先生方に御礼申し上

げます.

   -153, 1983.

  6) Pope FM, Martin GR, Lichtenstein JR,

   Penttinen R, Gerson B,Rowe DχV: Patients

   with Ehlers-Danlos syndrome type IV lack type

   Ill collagen, μocNati A cadSciUSA, 72 :

   1314-1316, 1975.

  7) Pope FM, Nicolls AC, Jones PM, Wells RS,

   Lawrense D : Type Ill collagen deficiency

   with normal phenotype, / R SocMed,73:

   180-186, 1980.

  8) Karen AH, Peter HB : Structural abnormal-

   ities in the dermal collagen and elastic matrix

   from the skin of patients with inherited connec-

   tive tissue disorders,J InvestDermat,79: 7S-16

   s, 1982.

  9)辻 卓夫,溶田稔夫:Ehlers-Danlos症候群の2

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Ehlers-Danlos症候群第IV型亜型

  例,皮膚,27 : 728-733, 1985.

10)小篠 栄,進藤泰子,高瀬吉雄,小林孝夫,橋本

  隆:Ehlers-Danlos症候群IV型の1例,日皮会誌,

  95(7):799-805, 1985.

11) Nagle RB, Bulger RE : Unilateral obstructive

  nephropathy in the rabbit. Late morphologic

  changes,Lab Invest, 38:270-278, 1978.

607

12)梶川欽一郎:結合組織.金原出版,東京, 1984.

13)深井和吉,石井正光,小林裕美,茶之木美也子,溶

  田稔夫:正常ヒト皮膚におけるI型およびmコ

  ラーケンの分布:モノクローナルおよびポリク

  ローナル抗体を用いた免疫組織化学的検索,西日

  皮膚, 48(5):915-919, 1986.

Electron Microscopic and Immunohistological Studies ofa Case

    Suggestive of Ehlers-Danlos Syndrome Type IV

        M. Matsuta*, T. Akasaka*, S. Kon* and Z. Suzuki**

  *Department of Dermatology, Iwate Medical Univesity School 0f Medicine, Morioka, Japan

**Department of ClinicalPathology, Iwate Medical University School 0f Medicine, Morioka, Japan

     (Received September 7, 1988; accepted forpublication December 21,1988)

  A 5-year-old male considered clinica】lyto have Ehlers-Danlos syndrome (EDS) type IV with main symptoms of

fragility and easy bruisability of the skin was presented. Electron microscopic observations of collagen fibers and

immunohistological eχaminaiton of the localization of the type Ill collagen in the patient revealed dissimilarities in

the size and the irregularities in the shape of collagen filaments, as well as a clear difference in localization of type

Ill collagen when compared with normal skin of same age。

  apn J Dermatol 99: 601~607,1988)

Key words: Ehlers Danlos syndrome, TEM, immunohistology, collagen fiber, type Ill collagen