色素性母斑の年齢的変化Fibrom 1 1 Gesamtzahl 7 56 64 39 30 9 8 12 225 Tabelle 2....

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色素性母斑の年齢的変化 R.Kojima undK. Uyeno:Studien uber die Altersveranderungen des Naevus pigmentosus. 正常の皮膚が年令と共に如何に変化して行くか,また 年令と共に如何なる変化が生じて来るか,云い換えれば 正常皮膚の老化過程と老人性皮膚変化乃至疾患とに関し ては古来幾多の研究がなされている.それ等のうち広義 の皮膚腫瘍に属するものは,年令との関係が深く且つ臨 床上にも重要な意義を有するため特に注目されており, 加令と共に生ずるもの,例えば老人性洗贅,同角化腫, 皮角,癌腫等に就ては逐令的変動か可成詳しく研究され ているにも拘らず,一方眼を転じて見ると所謂色素性母 斑のそれに関しては殆ど手が付けられていないようであ る.これはこれ等疾患の臨床的意義が幼若者に限られて いることに最大の理由があるのであろうけれど乱一方 叉我々が通常外来で老人胆者を診る際にも所謂巨大な色 素性母斑,特に獣皮様母斑(Tierfellnavus)を見るこ とは全く忿いと云っても良い.かく高年者で巨大な色素 性母斑が少いか否かに就ては後に触れるか,少くとも高 年者に於ける母斑の変化に就ての研究は極めて少いもの と思われる. さて我々は茲に所謂色素性母斑225個を対象し,その 逐令的な組織学的変化を追求したが,その臨床診断は大 部分黒子(ほくろ)であった. Lentigoなる語は最近米 国学派の考え方か入ってから概念が混乱して来たか,我 ・々は茲ではScholtz"の云う意味で用いた.即ちScho- ltzは,a)全く平滑で隆起せず類円形又は鋸歯状の輪廓 を有する不規則形の黄褐乃至褐黒色の斑であるものと, b)僅かに又は鋸状に隆起して褐黒乃至淡褐色の類円形を 呈するものとの2つに分けられるとし,伊藤(昇)氏9, 川村教授3)もこの見解を採っている.米国学派ではこの a)に一致する臨床像を有する小色素斑を以てlentigoと 称し, Scholtzのa)に当るのをlentigo juvenilis.一 方我・々が老人性色素斑(senile Pigmentflecke)と称 *三楽病院皮膚泌尿器科(医長 小嶋理一博士) 一* するものをlentigo senilis と称する如くlentigoなる 語を色素斑の名称として用いている.伊藤(昇)氏は 122個の黒子を鏡検しその内訳母斑細胞母斑92√扁平母 斑15,青色母斑9,束状型1,その他5個なるを観察, 即ち母斑細胞母斑がその大部分であるとした. 扁平母斑Naevus spilus (N. sp. と略す)は隆起し ていない褐色斑の母斑を指し,その組織像は単なる限局 性色素増加であって皮膚組織構造に全く異常を見ないも のとされているが,川村教授に依ればこれらN. sp.の 中にはMelanoblastの集積像などから見て色素細胞母 斑NSvuszellennavus (NZNと略す)への移行を思わ しめるものもあるとのことで(我々もカハる見解を肯定 する),臨床的且つ組織学的に厳密なN. sp.は甚だ少い ものと思われる. 我々か材料として用いた標本は225個で大部分は三楽 病院皮泌科患者より,数個は浴風園入園高年者より得た るものである.ご NZNとN. sp.とは母斑の性格に於いてやゝ異なるも のなので別個に取扱うべきものかも知れないが,広く臨 床的に色素性母斑と称される点で臨床的観察では両者を 同じく含めて取扱った.例えば黒子のa)のうちには組織 上N. sp. の範崎に入れざるを得ない様な場合も稀にあ るが,それ故にこれをN. sp.としてNZNより除外し て扱うことはかえって臨床上混乱を招くに過ぎないと思 われる. 即ち我々の対象としたものは臨床的にN. sp..色素性 母斑(N・ pig- と略す),黒子(Len.と略す),組織学的に N. sp., NZN (その束状型を含む)と称せられる咆ので ある.青色母斑はその本態上これを全く対象タトとした. 本文の要旨は第57回日本皮膚科学会総会の皮膚科領域 に於ける老化現象のシンポジウムに於いて著者の一人小 -1003-

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  • 色素性母斑の年齢的変化

    R.KojimaundK. Uyeno:Studien uber die Altersveranderungen

             des Naevus pigmentosus.

    小 嶋 理 一

     正常の皮膚が年令と共に如何に変化して行くか,また

    年令と共に如何なる変化が生じて来るか,云い換えれば

    正常皮膚の老化過程と老人性皮膚変化乃至疾患とに関し

    ては古来幾多の研究がなされている.それ等のうち広義

    の皮膚腫瘍に属するものは,年令との関係が深く且つ臨

    床上にも重要な意義を有するため特に注目されており,

    加令と共に生ずるもの,例えば老人性洗贅,同角化腫,

    皮角,癌腫等に就ては逐令的変動か可成詳しく研究され

    ているにも拘らず,一方眼を転じて見ると所謂色素性母

    斑のそれに関しては殆ど手が付けられていないようであ

    る.これはこれ等疾患の臨床的意義が幼若者に限られて

    いることに最大の理由があるのであろうけれど乱一方

    叉我々が通常外来で老人胆者を診る際にも所謂巨大な色

    素性母斑,特に獣皮様母斑(Tierfellnavus)を見るこ

    とは全く忿いと云っても良い.かく高年者で巨大な色素

    性母斑が少いか否かに就ては後に触れるか,少くとも高

    年者に於ける母斑の変化に就ての研究は極めて少いもの

    と思われる.

     さて我々は茲に所謂色素性母斑225個を対象し,その

    逐令的な組織学的変化を追求したが,その臨床診断は大

    部分黒子(ほくろ)であった. Lentigoなる語は最近米

    国学派の考え方か入ってから概念が混乱して来たか,我

    ・々は茲ではScholtz"の云う意味で用いた.即ちScho-

    ltzは,a)全く平滑で隆起せず類円形又は鋸歯状の輪廓

    を有する不規則形の黄褐乃至褐黒色の斑であるものと,

    b)僅かに又は鋸状に隆起して褐黒乃至淡褐色の類円形を

    呈するものとの2つに分けられるとし,伊藤(昇)氏9,

    川村教授3)もこの見解を採っている.米国学派ではこの

    a)に一致する臨床像を有する小色素斑を以てlentigoと

    称し, Scholtzのa)に当るのをlentigo juvenilis.一

    方我・々が老人性色素斑(senile Pigmentflecke)と称

    *三楽病院皮膚泌尿器科(医長 小嶋理一博士)

    上 野 賢 一*

    するものをlentigo senilis と称する如くlentigoなる

    語を色素斑の名称として用いている.伊藤(昇)氏は

     122個の黒子を鏡検しその内訳母斑細胞母斑92√扁平母

    斑15,青色母斑9,束状型1,その他5個なるを観察,

    即ち母斑細胞母斑がその大部分であるとした.

     扁平母斑Naevus spilus (N. sp. と略す)は隆起し

    ていない褐色斑の母斑を指し,その組織像は単なる限局

    性色素増加であって皮膚組織構造に全く異常を見ないも

    のとされているが,川村教授に依ればこれらN. sp.の

    中にはMelanoblastの集積像などから見て色素細胞母

    斑NSvuszellennavus (NZNと略す)への移行を思わ

    しめるものもあるとのことで(我々もカハる見解を肯定

    する),臨床的且つ組織学的に厳密なN. sp.は甚だ少い

    ものと思われる.

     我々か材料として用いた標本は225個で大部分は三楽

    病院皮泌科患者より,数個は浴風園入園高年者より得た

    るものである.ご

     NZNとN. sp.とは母斑の性格に於いてやゝ異なるも

    のなので別個に取扱うべきものかも知れないが,広く臨

    床的に色素性母斑と称される点で臨床的観察では両者を

    同じく含めて取扱った.例えば黒子のa)のうちには組織

    上N. sp. の範崎に入れざるを得ない様な場合も稀にあ

    るが,それ故にこれをN. sp.としてNZNより除外し

    て扱うことはかえって臨床上混乱を招くに過ぎないと思

    われる.

     即ち我々の対象としたものは臨床的にN. sp..色素性

    母斑(N・ pig- と略す),黒子(Len.と略す),組織学的に

    N. sp., NZN (その束状型を含む)と称せられる咆ので

    ある.青色母斑はその本態上これを全く対象タトとした.

     本文の要旨は第57回日本皮膚科学会総会の皮膚科領域

    に於ける老化現象のシンポジウムに於いて著者の一人小

    -1003-

  • 1004

    Tabelle 1. klinische Diagnose

    日本皮膚科学会雑誌 第70巻 第10号

    ‾犬__   Alter

     Diag.  ‾へ``へ_、__O-10 n-20 21―30 31―40 41―50 51―60 61―70 71- Gesamtzahl

    N. spilus 1 4 5

    N。pigmentosus 5 10 10 4 4 1 34

    Lentigo 1 42 54 34 24 9 7 12 183

    ・N. verrucosus 1 1

    Verruca senilis 1 1・

    Fibrom 1 1

    Gesamtzahl 7 56 64 39 30 9 8 12 225

    Tabelle 2. histologische Diagnose

              Alter

    Diag.0―10 11―20 21―30 31―40 41―50 51―60 61一70 71- Gesamtzah!

    N. spilus 1 4 3 1・ 9

    NS.vuszelleiinavu8 6 52* 61 38 30 9 8 12 216

    Gesamtzahl 7 56 64 39 30 9 8 ヱ2 225

          * einen faszikulSren Typ einbegriffen.

    嶋に依り,また昭和34年度日本老年医学会総会に於いて

    同じく上野に依り発表されたが,その後検討の結果Rec-

    klinghausen氏母斑症色素斑, Peutz-Jeghers症候群

     (不全型)の色素斑が2,3個混入していたのでこれを

    除き,その他多少訂正するところもあったので該発表と

    極く一部に於いて異った点のあるのを諒とされたしヽ.

     材料の臨床的診断を年令的に表にすれば第1表の如く

    である.

     何れも大部分か患者の主訴として来訪したものであ

    り, Len.は当然全切除,N. sp・,N・ pig- は切除叉は一

    部試験切除したものであるトまた50才以上の高年者のも

    のは大部分我々の興味上より切除を奨めたものである.

    N. sp. は10才代,N・ pig-は40才代でこれを主訴とする

    屯のが絶えているか,この年令ともなればこれを主訴と

    しないのか,それ共事実中年以降に消極するためであろ

    うか.この点に就ては後に触れる.

     組織学的分類は第2表の如くである.

     即ち第1表と合わせて見ると組織学的にN. sp.とさ

    れるものは30才代までい計9個,他の他は総てNZNで

    ある.N. sp. と組織学的に診断されたもの!ゝ臨床診断は

    N. sp. 5 ,N. pig- 4 , NZN と組織学的に診断された

    ものの臨床診断はN. pig. 30, Len. 183, m状母斑1,

    老人性紀贅1,線維腫1である.

     全例を川村教授に従ってTraub・Keil及びMiesch-

    er-Albertiniの分類にあてぱめると第3表の如くなる

    Tabelle 3. Klassifikation nach Prof. Kawa-

      mura (Traub-Keil十Miescher-Albertini)

    \ A Ab AB I aB BJ 19

    |19

    Jd 4 6 10

    JD 22 13 12 1 48

    ]D 14 25 23 1 2 65

    D 16 !3 21 14 9 73

    75 57 56 16 11 215

     〔Anm.〕

      J: “ Junction ” Typ

      D: “ Dermal ” Typ

      A: structure giobeuse et cordonale

      B: Structure infiltrative

        Kleiner Bubstabe bedeutet die quanti-

       tative Geriugheit des Baus.

    (N. sp. 及び束状型を除く215個).

     またTraub-Keil及びMiescher-Albertiniの分類

    に夫々従って年令的にこれを分けると第4,5表で見ら

    れる如く加令と共にJ型か減少してD型が増え,A型が

    減少してB型が増えて行く.即ち若年者にあっては表皮

    に母斑性変化の見られることが多いか,加令と共に真皮

    内に母斑細胞巣を有するものが増加し且つ胞巣形成のも

    のよりも浸潤型のものが増加して来る.これらの考察は

    後に更めて行う.

     次に細かい組織上の変佗を年令別に表示すると次の如

  • ● ● ●

    ●●●●

    ●●●●●

    糾 丑

    ●●

    ●●●●

    ●●●●● ●●●

    ●●

    ●●●φ●●●●●●

    ●●●●畢

    Tabelle 8. Melanin-gehalt am Epidermis.

    ? ●●●

    ●●●●●●●

    ●●●● f●●●● ●●●●●      ●●

    ●●●●● φ●●●●●●●●● ・ ■・・ ●●  ●●●e

    ● ・ ●

    ● ●

    ● ●

     /liter0-10 Iト20乙‾j0 Si'40 4トSO引一60 61-70 71-

    い.J及びJd型だけに限ると年令的な変動は認められ

    ない.

     3j 表皮Melanin量(第8表)

    ●●●●● ●●

    ●●

    ●●●●

    ● ●●●

    ●●●畠●●参● ● ● ● ●

    ″  ・

    ―+  士

    ●●●●

    ●●●

    ●●●●●

    ●●●●●●●●S● ●●  ●

    ●●●●● ψ●●●● ●●●●●

    ●●●φ魯 ●●●●● ●●●●● ●●●

    ●     ●●●●●●● φ  ●●●●●

    ●●丁φ● 泰●●●● ●●●●●●

    R 千

    昭和35年10月20日

    ソ ゐ

    Tabelle 4. Klassifikation nach Traub-Keil.

    ●●

    ●●

    S一一

    9S4

    μに` 一・・

     孝一一一 一

    eゆ一一一 SSl

    一一・・e

     …  ]

    ― nri

    c^

     ノ  .j

    則↑ひ

    ●●●●

    ●●

    ●●

    ●●●

    :::こ

    琴●●●

    μ:::

    ●●●●●

    ぷZご::

    こZ::

    :ご::

    ●●●

    Se一S

    一・ ・・・

    ―el ・・・・・

    ●●

    ●●●●●●

    ●●●

     ●●●●●

    ●●●●

    ●・●●●●●●

    ● ● ●

    ●●・

    ●●●

    Tabelle 5. Klassifikation nach Miescher-

      Albertini.

    /1

     働●●StSS:

    ::;:S

    ●●●●●

    ― ‥‥‥

    ・・} @一・

    ・  …

    ―応 が

    J ぶ

    ● ● ・

    ..S..

    こS;t:

    ●●●●●

    ●●●●・

    ●●●●・

    ●・●●・

     ●丿

    ●●●●●●●噂●●

    ●●●●● ●-

    ●●●

    ●●

    一一巻

    ・一一

    .4

    :::

    .t.

    ●●●

    ‘゜1

    ● -

     ●φ●●

    ●●●

    ●●●

    ●●●

    ●●●●

    ●●●●

    ● ●

    ●●●

    ● ● ●

    ●●

    ●●

     な赳バト10卜20 2卜釣引‾匍剔‾硲らi-60 6/-70 71-

    くである.

     A.表皮の変化

     1) epidermal germ様の表皮突起の変化(第6表)

     N. sp. と異り表皮突起があたかもepidermal germ

    の如く延長し且つ該部に澄明細胞が増加し, Melanin

    感増え,且つ更に進んだ形ではjunction activityの

    形をとる.かゝる表皮突起の変化は若年者に著明であ

    り,以後逐令的に減少し高年者では極く軽度のものとな

    る.J型は最高40代才,Jd型は30才代までy

    これ等表皮変化か主調の型でも同様に逐令的にこの傾向

    を示している.表皮突起の変化か本症母斑性々格の1つ

    の表現であるにはせよ,加令と共に突起を失って扁平化

    すると云う表皮の一般的老化の形態がこ岫こも見られ

    る.

     2)所謂澄明細胞の数(第7表)

     N・ pig- にあっては一般に増加の傾向にあ呪 該細胞

    は大部分melanocyteと考えられる.逐令的に減少傾

    向か見られるか全体として正常より減少することはな

    Tabelle 6. Die priniarepitlielkeiin-ahnliche

        Epidermiswucherung.

    琳 斗

    士 干

    Altar

    士  瓦

    Alter

    ●●● ●●● ●●

    ●●●●●●●●●昏 ●●

    ●●●●●●●●●●

    ●●●●● ●●●丿● ●●●●●●●●●●●●●● φ嘩●●●●●●・

    ● ● ●

    ●●

    ●嘸●

    ●●● ●●●●●

    ●●●●● ●●●●●●◆●●●●●a●●●●●●● ●●●●● ●●●●●●●●●● ●●● ●●  ●●●

    ●●

    ●●●

    ●●●●

    ● ● ● 丿 ●

    ● ● ● ● ● ● ● ● ●   ● ● ● ●   ● ●     舞 ●

    ●●●●●   ●

    ●●●●● ●●●●● ●●●●●

    ●  ●●● ・・

    ●●●●● ●●●●● ●●●●●.●●●

    Tabelle 7. Helle Zellen.

    Z::....

    Z:::.Z;Z..

    ZS:S: Ztt:tφ・・・・

    ●●●●● ●●●●・ ・●●奮● ●●●● ●●

    ●. ・ZS...ごaこt la::: こ:ごZZ S....

    ●●●●● ●●●●● ●●●●● ●●●●●●寸●

    ●●●●● ●●●● ● ● ●

    1005

    ●●●

  • ●●

        ●

        ●●●●●

        ●●●●● ●●●●●●●● ●●●●● ●●●●・

    ●・●●● ●●●●● ●●●●●

        ●●●● -●●● ●●●●● ●●  ●

    ●●●●● ●●●●●●●●●寸 ●●●●●●●●● ●●

    ●●●●●●●●● ●●● ●●●

            ●●●

    ●●●●● ●- :::"●●●●●●●●●●●●●●●●●●

    ●●●

    ●●

    ●●

    ・●  ●●●●●● .●     ’

    ●●●●●●●●●●●廊●●●,●・●●● ●●  ●●●● ●●●

    ● ●

        可●●`●●●● ・・・■I ・■・・ ●●  ●●  ●●●

    ●●

    /lifer°-lU II-OJ ^i-M :>i-'HJII-コりこ】Juりり「~,J

    Tabelle 12. Senile Veranderungen der intra-

       dermalen NSvuszellen.

    ●  ●●

    ●●●●● ●●●●● ●●●● ●●●●● ●慟

     一

     鋤  ・

     ¥  一

     一  一

    参一  S

         ・

         ・

     S  一

    ● ● ●

     Alterり‾1りり一乙り乙j‾JりJI‾Qtノgj‾Jりっj‾Uりor/レjj‾

      〔Anm.〕併……………junger nortnaler Bau

           ↓

           -……………senil verSnderter Bau

          (Siehe Abb. 1-10)

    日本皮膚科全書第7巻第2冊(川村教授)の第60~55図

    に記載されている如き像を以て滴落像となせば,その年

    令的変動は第10表の如くやはり逐令的に減少の傾向か見

    られ,60才以上ではまず見られないと云って良い.本変

    化の見られることは少く,我々も21個で明かに見たに過

    ぎない.

     B. 真皮の変化

     6)担色細胞(第11表)

     殆ど大部分の例に於いてC 190/ 215),乳頭乃至乳頭

    下層に担色細胞の出現か認められ,これまた逐令的に漸

    次減少の傾向が見られた.

     7)真皮内母斑細胞の老化(対象はJ型を除く196

    個)(第12表)

    ● ●

    ●● ●●

    ● ● ● ● ●

    1006

    冊 丑

    土 干

    -

    Tabelle 9. Sog.“Junction Activity ".

    ● ●

    ● ●

    ●S・●

    ●●●●●

    働●●●●●●●●● ●●●●

    ●●●●● ●●●●●●●●S

    ●●●●

    ●●●●●

    Z:μ.

    ●●●●●

    ●了●●● ●●●●●●●

    ここ...

    12:t..

    t:Z:ZI

    ‡SZZ:Z

    ●●●●●●

    ●●●●●

    ih

    S:ごt;

    ●●●

    ●●●●●

    ●●●●●S:ZIS

    ●●●●●

    ●●●● ●●  ●●ゆ●●

    ●●●●●●●●●● ●●●●●

    Mter ^''りい£りむ.j・J1メJ1 4fし卜IJレJIりしUl ju jJ

     Tabelle 10. Sog. Abtropfungserscheinung.

    冊 丑

    + 土

    千  一

    ●●●●S‡1:S・・・・

    ●●≫・・・・ ●●●

    ●●

    ● ● ●

    ●●  ●●● ●  ●       ●

       ●●  ●偏●●寸

    ●●●●●●●●●●S ●●丿●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●‐●●● ●●●●●

    ●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●

    ●●●吻●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●      ●●●●●●●参●●●●●●●●丿●●●●●●● ●●  ●●● 匍婚●●●

    ●●●●●●●●●●●●●●●●●寸 ●●●●● ●●●●● ●●●●● ●●●●●

     八(fe.O丿LりI‾202ト30 31-40 41-50 SI一6061-70ワト

                        i 基底層及び一部錬層に汎るMelanin沈着の程度も全

    体として逐令的に減少するか,J及びJd型では他の型

    に比してMelanin量多く且つ年令的な変動は殆ど認め

    られない.

     4)所謂Junction Activity (第9表)

     表真皮境界部に於いて澄明細飽か集合して線状況は円

    形の巣を形成し若しくは同様の母斑細胞巣が境界部に見

    られる場合を以てjunction activity が見られる状態

    と広く考え,これを年令別に眺めると第9表の如く著明

    窓変動が認められる.即ち該変化は若年者に強く現われ

    特に20才以下に著明であり,以後漸減して40才以上少く

    とも老人には全く認められなくなる.この変動は最も顕

    著なものである.これをJ及びJd型のみに限って見て

    も同様の傾向が認めらだる,

     5)所謂滴落像(第10表)

     我々は滴落説を支持するものではないか所謂成書に記

    載されている,例えばLever‘)の組織教本の第247図,

    ● ●

    日本皮膚科学会雑誌 第70巻l第10号

    Tabelle 11. Chromatophoren.

    ●●● ●●  -  ●●

    ●  ●●●●●●●● ≫・■・・・ ・・・・ ●●●●●●●●● ●●  ●●

    ..:t‡SZ.

    ●争●●●●■*・・≪ ●●●●●●●●●●

    ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

    ・・・・・ *::::   ・・・■■

    ●●●●●●●●●●●●疹参●●●●●冨

  • 昭和35年10月20日

     真皮内母斑細胞の老化に就ては我々5∩ま曽て報告した

    ことがある.即ち綺麗な胞巣を形成する細胞は互に相接

    して角張った感じがあるが高年者になると胞巣が崩れる

    と共に個々の細胞は角がとれて丸味を帯び,一方索状構

    造を成す細胞は一層細く線維状化して行くことを10数個

    の老人の黒‾戸より観察した.

     今回は細胞巣即ち細胞の配列に主として注目した.細

    胞巣を通覧すると第5表でも見た如く逐令的にA型か減

    りB型か増える傾向かおり,更に後に述べる如くA型(

    即ち球状並びに索状の構造を成すもの)の中を見ても球

    状構造が減って索状構造が多くなる傾向が見られる.そ

    こで真皮内母斑細胞巣の変化を次の如く大まかに分けて

    これを年令的に図示すれば第12表の如くとある.

     併:明瞭な胞巣形成が多数存し個々の細胞は変化を示

    さず,索状構造の部分の細胞も円乃至卵円形の比較的大

    きい核を持ち互に密に整然と並んでいるもの(第1,2

    図).

     升:胞巣構造は大体に於トて保たれ個々の細胞も一部

    合胞化,即ち核が少しく収縮し原形質がやゝ広くなり互

    に相接した状態となったもの(第3図).

     +:胞巣の一部が崩れ,一方合胞化も明瞭となり,索

    Abb. 1.N・ pig- lljahr. Madchen. Ein kongenita-

     ler, ganseigrosser, schwarzlich-brauner, beh-

     aarter, leicht erhabener Pigmentfleck an der

     Streckseite des linken Oberarmesベ併),JD・

     A. Deutliche “ Junction Activity ” am

     Epidermis. Im oberen Bezirke des Kutis ein

     Alveolarbau, im tieferen ein strangartige

     Bau. Vergr. 40 fach.

    loor

    Abb. 2. Lentigo. 18iahr. Madchen. Einige

     miliumgrosse braune Pigmentflecke an der

     Streckseite des rechten Oberarmes. (4+十),

     J-A. Melanin-zunahme in der Basalschicht,

     primarepithelkeim-ahnliche Papillenwucher-

     ung unter Anhaufung der hellen Zellen,

     Viele Chromatophoren am Oberkutis. Vergr.

     100 fach.

    Abb. 3. Lentigo. 16iahr. Madchen. Kleiner,

     schwarzlich-brauner Tumor an der Nasen-

     spitze. (什), JD-Ab. Deutlicher Alveolarbau

     am oberen Bezirke der intradermalen Nav-

     uszellennestern, stellenweise die Neigung

     der Syncytiumbildung. Vergr. 100 fach.

    状構造もや卜一配列の乱れて来たもの(第4図).

     土:胞巣構造の多くが乱れ個々の細胞に変性像が見ら

    れ,索状構造の細胞は細長くなり或トは浸潤性に配列す

    るものもの(第5図).

     =1=:更に進み胞巣構造は殆ど認められず,また浸潤性

    不規則となり,細胞自体の変性も著明とたったもの(第

    6図).

     -:胞巣構造全くなく企体に散在性に変性細胞がちら

  • 1008

    Abb. 4. Lentigo. 38jahr. Frau. Seit 2 Jahren

     kleiner, behaarter, schwarzlicher, 2χ2mm-

     grosser Tumor an der rechten Wange. (+),

     D-A. Abnahme des Alveolarbaus und Zuna-

     hme der Syncytiumbildung. Vergr. 200 fach.

    Abb. 5. Lentigo. 84jahr. Frau. Tumor am rec-

     hten Seitenhals (genauer klinischer Befund:

     unklar) (土), D-Ab. Verdiinnung des Epide-

     rmis. Zusammenbruch des Alveolarbaus.

     Rundung der N注vuszellen. Vergr. 40 fach.

    ばり,深部の細胞は線祗状になりこれまた散在性又は浸

    潟性に存するもの(第7,8,9図).

     8)真皮内母斑細胞巣内のMe1anin(第13表)

     几皮内母斑に於いてMe1aninは主として細胞巣の浅

    哲惣巣形成の著明な部位に多く見られ中深層には通常認

    められこいか極く稀に存するのみである.これは年令的

    に人した変勁はないが,胞巣構週が崩れて絹胞の散往し

    日本皮膚科学会雑誌 第70巻 第10号

    Abb.6. Lentigo. 60jahr. Frau. Tumor an der

     Vorderstirn (genauer klinischer Befund: un-

     klar) (T), jD-AB. Geringer Alveolarbau.

     Infiltrative Oder zerstreute Anordnung der

     Navuszellen. Vergr. 40 fach.

    Abb. 7. Lentigo. 81jahr. Frau. Tumor an der

     linken Achselhohle (genauer klinischer Befu-

     nd: unklar), (―), D・aB. Vollkominenes Er-

     loschen des Alveolar baus. Zerstreute Navu-

     szellen und deren teilsweise (zentral iin

     Photo) Syncytiumbildung. Massiger Melani-

     n-gehalt. Vergr. 40 fach.

  • 昭和35年10月20日

    Abb. 8. Vergrosserungsbild der Abb. 7. Vera-

     nderung der einzelnen Navuszellen, d. h.,

     Rundung der Zellen, wabige Vergrosserung

     des Kernes, ungleichmassige Grosse der

     Zellen. Vergr. 200 fach.

    Abb. 9. Lentigo. 67iahr. Frau. Kleiner, 15×12

     mm-grosser Tumor an der Vorderbrustgege-

     ndベー), D-B. Kein Alveolarbau.unregelm-

     assige Zerstreuung der Navuszellen in Ob-

     erkutis, infiltrativeAnordnung der neurofi-

     bromzellen-ahnlichen Navuszellen im tiefe-

     ren Kutis. Vergr. 40 fach.

    1009

    Tabelle 13. Melanin-gehalt in den intraderm-

       alen Navuszellennestern.

    ・  ]

    i併 丼

    1+ ま

    ●●● ● ●

    ●●●●●●●●●●

    ●●●●● ●●●●●●●●

    ●●●●●●●●●●●●●●● ●●●● ●

    ●●● ●●●●●● ●●●●●●●● ●’¨“ ¨゜¨ ・・.j.::::S 。

    ● ● ● ●

    Alter

    ● ● ● ● ●

    ・●●●●

    ●●●●● ●●●● ●●●●● ●●

    ●●

    ●●●●● ●●● ●●

    :::..::ご.._1卜0引一心

    ● ●

    ●●●

    ●●●

    ●●●●

    Tabelle 14. Lage der intradermalen Navus-

        zellennestern.

    0泌冶

    mぶel

    t,ef

    / 0Aitfr

    IEI▽

     ―lLニJ

       --

     -

    1=i~jりりり

     』--――州1--djdl---------jl---

    -・h=

    -lql

      羅復町呂-’~.~ぼ’fほ~‐~~

      -・III 1111

      I!=ll l---

    --

     1

    幻 6J

    1

    7ク

     1‥lll11---j

    のが減り深層に及ぶものが増える傾向が見られた.

     最初に述べた如く色素性母斑の年令的変化に関する論

    文は少いか, 1949年 Lund-Stobbe"の書いた論文は比

    較的詳しい.彼等の注目した点は形,大きさ,表皮内細

    胞増殖, mitose像,母斑細胞の分布,線維性乃至神経

    様要素の存在,色素沈着,多核細咆,炎症,血管の変化

    その他である.即ち母斑細胞は生涯を通じて組織学的に

    進行性の変化を示し,特に目立った変化としては大き

    さ,数,表皮皮境界部細胞の増殖のおり方, mitoseの

    数,線維性乃至神経様要素の存在かおり,これ等より観

    ると母斑細胞は表皮,毛嚢,汗腺等の澄明細胞の foci

    より徐々に分化し,加令と共に分化か進かと神経線維や

    触小体に一寸似た線維を伴った束状(fusiform)の細

    胞となり,これは母斑細胞の分化の最終段階であると,

    即ち小児期にjunction type の多いのは該部の澄明細

  • 1010

    卜…… Geschl.

    Alter ダペ㎜ ㎜ ■ ■ ㎜ ■ ㎜ ㎜ ㎜ ■ ■ ㎜ ■ ■

      5 1

    6 0

      6 1

    7 0

      7 1

      t o t a l

    日本皮膚科学会雑誌 第70巷 第10号

    Tabe】le 15. Haufigkeit des Navus Pigmentosus bei Greisen

    gesamt

    23

    -13

    -58

    mannl.

    mit Navus (%)

    2 ( 9.1)

      1 ( 4.3)-  1 ( 7.7)

      4 ( 6.9)

    gesamt

     22一 17

     27一 66

    Abb. 10. N.spi】us.15iahr. Junge. Seit einign

     Jahren handtellergrosser, diinn braunlicher

     Pigmentfleck an der Streckseite des rechten

     Vorderarmes, worauf mehrere miliumgrosse

     braune Pigmentflecke zerstreut sind. Leichte

     Hyperkeratose, Stellenweise Epidermiszapf-

     en mit grossem Melanin-gehalt. Keine Anh-

     aufung der hellen Zellen. Verg. 40 fach.

    胞より母斑細胞が発したものであるから当然の所見で,

    年令と共に複合母斑,真皮内母斑へと分化進行して行く

    ものとの結論を出した.青木氏7)も亦NZNは年令と共

    にjunction type →compound type→intradermal

    typeと変化して行くとなしている.これ等の最終結論

    一滴落説を含むところの母斑細胞の発生と成長-には著

    者等は賛意を表し得ないけれども彼等の見た所見の多く

    はまた我々の観祭と略こ一致するものである.

     Lund et a1.は母斑細胞巣の組織像を5型に分ち,

    A一表皮内叉は境界部に限られた母斑で真皮内に母斑細

    胞を有じたいもの一,B―表皮内及び境界部の母斑細胞

    の他に少量の真皮内母斑細胞を含むもの一,C一太部分

    か真皮内であるか尚お中等度叉はそれ以上に表皮内に存

    するもの一,D一太部分か真皮内で表皮内には少いもの

    一,E一真皮内母斑で細胞の多くか線維状のものーとな

    し,これを年令別に見るとA型か次第に減少しE型か次

                  _.__.….__

    weibl.  

    ==一=・  =   

    total

    mit Navus (%) gesamt i,mit Navus(%)

    4 (18.2)

    1 ( 5.9)

    1 ( 3.7)一6 ( 9.1)

    一一一一 44

     40

    -

     40

    -

     124

    Abb. 11.

    6 (13.6)

    2 ( 5.0)

    2 ( 5.0)

    10 (8.06)

    [pidetmis

    Nervensystem

    第に増加する傾向ありとしたか,この分類はTraub-K-

    eilの分類と夫々A = J, B = Jd, C = JD~JD, D~E=D

    の如く相当し,その逐令的変動は我々の観察(第4表)

    と全く一致するものである.

     その他iunctional proliferationも10才以上に最大

    で以後逐令的に減少し(減少は思春期以前に始まる),深

    さも年令と共に増し,真皮母斑細胞は年令と共に線維状

    となり神経線維組織に似た像を示しこれは母斑細胞分化

    の最終段階と考えられ,母斑細胞の色素は年と共に減

    少,炎症性反応は10才以下に少く老年者に多いとの観察

    をしている.

     青木氏は黒子122個を倹し,その臨床的形態は思春期

    前では扁平叉は僅かに隆起した程度であるが,思春期を

    過ぎると更に隆起叉はポリープ様つ各種の形態を示すよ

    うになり,一方色調は年令に依り大差なく,組織学的に

    junction type は思春期前後から成壮年に汎り, intra-

    dermal type は思春期以後に多いことを見ている.

     我々の観察した結果をもう一度纏めてみると,幼若年

  • 昭和35年10月20日

    期にあっては表皮病変か強く(J~Jd型),表皮では表

    皮突起が明瞭で澄明細胞, Melanin も多く,また所謂

    junction activityの明瞭なるものは30才代までであ

    り,滴落像またこの年代までに限られる.担色細胞ぱ幼

    若者が高年者に比して多い傾向を示し,細胞巣の占める

    真皮内の深さも年と共にやゝ深い占位を示す傾向かあ

    る.もう1つ著明底ことは真皮内母斑細胞巣の変化であ

    って幼若年者では角張った細胞が比較的良く胞巣構造

    (alveolarer Bau)を保ちかゝる胞巣が比較的浅層に密

    集して見られるか,加令と共に胞巣構造が崩れ個々の細

    胞も角が取れてやゝ丸味を帯びて散在性に散らばり,ま

    た細胞お配列ぱ胞状よりも索状に更に浸潤性の形を示し

    あたかも神経線維腫の如く見えることもある.

     我々は以上の如き色素性母斑の年令的な変化は次の如

    く解釈している.

     母斑細胞は恐らく神経系に由来するものであり,先天

    性に神経に与えられている母斑性格が表皮領域(第n図

    a)で発現すればJ型を示し,真皮領域(b)で発現すれば

    D型を示す.力卜る母斑性格を有する母体(母斑細胞の

    母体)が川村教授の云う如き神経櫛であるか否かはまだ

    我々の結論し得ないところであるけれども少くとも広く

    神経に関係する或る要素であることは間違いないであろ

    う.カ乙る母斑性のポテンシーは幼時ではa部で,そそ以

    降ではb部に発現し易いのではあるまいか.a部に発し

    た母斑細胞か下ってb部に来る(Unna, Lund et al.)の

    ではなく,神経系と云う共通母体の異った部位(a及び

    b部)で異った時期(幼時及びそれ以降)に母斑性が発

    現せちれるのではなかろうか.これはまだ証拠を掴んで

    いない仮説である,しかしながら母斑性と云うポテンシ

    ーが部位と時期とを異にして或る1つの系列(神経系)

    に現われて来たと考える方が,表皮原性滴落説で母斑細

    胞の成長過程を説明するよりもより合理的ではなかろう

    か.即ち逐令的にJ型か少くD型が多くなると云うこと

    はJ型のものか次第にJD→JD→jD→D型と変化し

    て行くものでぱなく,J型そのものか消失しD型のもの

    か新たに現われて来るのである.然らば幼時に境界部

    に母斑性を示し中にはjunction activity の盛なると

    ころのJ型母斑は年令と共にどうなって行くのであろう

    か.これまた想像であるか多くのものは境界部に於ける

    junction activity 七の他の母斑性格か次第に失われ

     (!),次第に正常皮膚構造に帰って行くのではないだろ

     うか(血管腫中のstrawberry mark に於ける退縮と

     アナローグを以て対比して見ても良い).これをJ“型母斑

    1011

    の辿る運命となすならばこれかJ型母斑の純粋な意味で

    の老化と云っても良いであろう.

     D型は第4表で見る如く幼児では少いか10才代より急

    増する.即ち思春期頃よりこの型のポテンシーが現われ

    始めると考える.前述の如くJ型が年令と共に消失傾向

    を示す(臨床的消えると云うより組織学的に母斑性を失

    う)のに比しD型の母斑細胞の辿る過程はより複雑であ

    る.即ち前述の如く初期には浅層では綺麗に相接した細

    胞か輪状に並んで胞巣を作り深層では相接した細長い・

    細胞がこれまた整然と索状に並んでいるか,加令と共に

    浅層のものは隣接細胞との開か空いて形か崩れ丸くまた

    紡錘状となり胞巣も崩れて個々の細胞か散在し,深層の

    ものも索状形成を示す線維かやゝ疎とたり細胞は細く線

    維化し不規則に配列しまた浸潤性に拡がり全体として境

    界も不明瞭となる,即ち第12表に示された様な変化を来

    す.これかD型の純粋な老化過程と考えられるのでぱな

    いだろうか.臨床的に老人の黒子の色か淡くて正常皮膚

    色又は淡紅褐色を示して少しく隆起又は有茎状に底って

    いるものの組織は概ねこの様な老化度の高度(第12表=i=

    ~一)のものである.D型も更に進んで消失するか否か

    は不明である.我々は老化度高度のものを見てもまさに

    消失せんとするほどの像をまだ見たこ,とはない.一常正

    常皮膚色で軟く Recklinghausen氏母斑症の線維腫を

    思わせるものは川村教授の指摘した所謂C型母斑の組織

    像を示すような所見か見られることかある.J型のもの

    か比較的短期間(30才代まで)のうちに消失して行くか

    も知れないのにD型は何時までもだらだらと長く老化過

    程を示して仲々消えないのは,同じ色素性母斑細胞とし

    ておかしいことである.J型が同じ外胚葉性のマルピギ

    ー細胞系の中に混入した母斑であり,D型か異った中胚

    葉性の真皮の中に生活する母斑であることに因るのであ

    ろうか.これ等は今後更に解明さるべき点である.

     始めに述べた如く我々は老人に於いて巨大な色素性母

    斑を見ることか少なかったので,試みに外来患者より51

    才以上の老人に於いて少数例ではあるか全身皮膚を検し

    てカハる母斑,即ち黒子を除く巨大な色素性母斑(特に

    所謂獣皮様母斑),扁平母斑の有無を検査したところ第15

    表に見る如く,総数124名中10名(8.06%)と左程少な

    からざる頻度に色素性母斑の存在を認め,1例(Nr 10)

    を除き臨床的にN. sp.であった.即ち第1,2表で高

    年者にN. sp.が認められなかったのは,たまたまこれ

    か切除の対象にならなかったに過ぎないと云えよう.青

    木氏に依ればN. sp.は各年代に見られると云う.但し

    巨大な獣皮限母斑は見出し得なかった.これらN. sp.

  • 1012

    - 1

    -

     2

    -

     3

    一⊃「千

    -―‐    ‐

    」0

    Tabele 16. Falle des Naevus Pigmentosus be

    ■      ■ ㎜■㎜㎜・㎜  ・㎜・■・・■7・・-・-・■㎜■■     ㎜㎜

    ゛゜

    飛七

    j 

    Bezirke 宍ごiT

    Sasaki

    -

    Sanada

    Iwasaki 言

    Shibata'二

    omura

    Naito

    Kosugi

    Take-mura

    Ono

    -

    Fujii

    6忖

    -63早

    51古

    60常

    53言

    73ド

    --‥-aus3. Seite d.

    r. Oberschenkel

      Beugeseite d.

      1. Vorderarro

    ㎜㎜■      ■- Vorderflache d.

     I. Oberschenkel

    1.Scapulargegend

    Hinterflache d. I. Oberschenkel

    r. Vorderarm

    1.Unterbauch

    r. Schulter

     1.Brust

    r. Schulter

    Kindheit

    。・{ニー・

    ”’皿一.mk

      I

    -

    kt

    Kindheit

    30Li

    30Li

    の特徴は第16表に見る如く大きさは手掌大まで,境界は

    凸凹不規則のもの多く(‰),周囲健皮に散在性に米粒大

    迄の小色素斑の存在を見ること右少くかく(‰),或るも

    のでは逆に米粒大紡錘形小色素斑が多数集族融合して色

    素斑を形成しているかの如き感さえ七抱かせる.通常の

    N. sp. に比し色の薄いものが多く(吊),且つ色調一様

    のものは僅かで(‰),淡褐色調と褐色調とが漠然と混在

    するかズは一様に淡褐色調をなす局面上に半米粒大迄の

    褐色小色素斑乃至点が散布レCいた.うち4個(第2,

    3,8, 9例)を組織学的検索に付したが何れもN. sp.

    であり,且つ通常のN. sp.に比し真皮結合組織の変性

    を認める他特に著しい差違を認めることは出来なかっ

    た.うち1例(8例)に就て記すと.

     症例 竹○金,60才女子,下肢局面性湿疹兼潜伏梅毒

    にて入院,色素斑を右肩に見出す.患者の言に依れば30

    才頃に発生したとトう.即ち右肩より後方は右肩甲部上

    辺に,前方は鎖骨上高へかけて略々手掌大,辺緑門凸不

    平で明瞭一部やゝ不明瞭に健支部と境され,全く隆起を

    示さず,全休淡褐色を呈しその上に帽針頭六より米粒大

    までの褐色の小色素斑が一様に撒布され全体として汚禄

    に見える.加齢に依り大きさ,色調その他に変動はなか

    っと云う(第12図).

    (-)

    -

    (-)

    ( )

    (-)

    (-)

    (-)

    -

    (-)

    L-:‐‐

    spitzgross

    ganseigross

    daumen-

    spitzgross=== -・・㎜

       //

    一 一

    ganseigross

      -nagelgross

    hijhnerei-

    gross

    handteller-

    gross

      //

    一一一一hiihnerei-

    日本皮膚科学会雑誌 第70巻 第10号

    江沢| ’ニ

     gezacktj

    I一一一一,-|| 

    // 

    十一▽

    //

    -

    //

    /7

      //

    -=

     relativ

     scharf

    Farbe

      一

    diinn braun

     ~braun- 一卜昌謡m

    l am Rand)

    braun

         //

    -       -

    kl. br. Pig-fl.

    auf d. dunn

    br. Flache

    = - - r -

    一 一 一 一

    gezacktj  +  |   //

    一一l  l -‥-……一一          diinn braun  7/ l  丑  i ~braun

    Naevus pigm. punctosus-artig

    Abb. 12. 60jahr. Frau. Handtellergrosser Na-

     vus spilus an der rechten Schultergegend,

     auf dem kleine, zahlreiche, braune, milium-

     bis erbsengrosse Pigmentflecke disseminiert

     sind.

     組織像:角層は軽度角化,輯層正常,大皮突起は螢状

    又は網状に少しく延長し該部では基底層及び一部軸層に

    中等度のMelanin沈着あり,澄明細胞は正常に見ら

    れ且つ junction activity はなト.真皮中層に軽度の

    血管周囲性小円形細胞浸潤,浅層にMelanin H粒及び

    担色細胞あり,汗腺は萎縮,結合組織の変性を見る.本

  • 昭和35年10月20日

    例は腹部に線維様小丘疹あり,その組織像はNZNであ

    った.              ト

     即ち高年者にあってもN. so.は可成り認められるか,

    一方巨大な色素性母斑の存否に関しては結果を得られな

    かった.

              要  旨

     我々は200個余りの色素性母斑の組織像を検し年令的

    に一つの傾向あるを認めた.1つは幼時ではJ型が多く

    思春期以後にD型が多くなることである.これに対して

    我々は滴落説を執らず母斑ポテンシーの現われ方(現わ

    れる部位)が年令的に差がある為であかうと考えた,換

    言すれば母斑ポテンシー発現の年令に依る差を指摘し

    た.第2に個々の母斑細胞,及びそれより成る母斑細胞

    巣は或る一定の老化過程を辿ることを見,J型ではju-

    nction activity め消失,そして母斑それ自体の消失の

    可能性を予測し,D型では更に一層複雑な母斑細胞の変

    化一胞巣崩壊,細胞散在,線維化-のあることを認め

    た.

    1013

     更に61才以上の老人124名の全身を検し10名(8.06%)

    に色素性母斑の存在を認めたが,1例が点状集族性母斑

    類似の臨床像であった他は何れも扁平色素性母斑に相当

    するものであり,一方巨大な獣皮様母斑は認められなか

    った.

               主要文献

      1) Scholtz, W.: Jadassohn's Handbuch d.

       Haut u. Geschlkrh・, ・/2 (1932), S. 538.

      2)伊藤昇:日皮会誌, 61, 241,昭26.

      3)川村太郎:日皮全書, ■W/2,B母斑,東京,金

       原出版,昭32, 53頁.

      4) Lever, W.F.: Histopathology of the Skin,

       2nd ed・, PhUadelphia, Lippincott (1954),

       p. 454.

      5)小嶋理一,上野賢一:日皮会誌. 64, 333,昭

       29.

      6) Lund, H.Z・, & Stobbe, G.D.: Am. J. Path.,

       25, n17 (1949).

      7)青本文乃:形成美容外科,2, 263, 昭34.

                (昭和34年12月21日受付)

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