CoC SGS...ジャパン株式会社(Intertek Japan)がCoC...

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23 日本からのケニア向け製品については、ケニア基準局から委託を受けたインターテック ジャパン株式会社(Intertek Japan)が CoC を発行している。なお、SGS(Societe Generale de Surveillance S.A.)とビューローベリタス(Bureau Veritas)も委託企業として登録され ているが、現在は資格が停止されている(2018 年 1 月現在)。 ケニア向け船積前検査には4つのルートがある。A から C は主に単体の輸出業者向けで あり、A から C の順に簡略化される。また混載貨物についてはルート D が適応される。な お費用は輸出者の負担となる。 ルート A:一般的な検査ルートで、物理的(目視検査)及び書類上(テストレポート) で検査を実施する。輸出者が上記の指定検査機関に検査を依頼し、船積前検査を実施 する。 ルート B:指定検査機関に事前に製品登録を行うことで、書類審査のみで輸出が可能 となる。同種の製品を頻繁に出荷する際は、本ルートが適切である。登録有効期限は 1 年間である。ただし、抜き打ちで船積前検査が実施される可能性がある。なお中古 品についてはルート B を使用することはできない。 ルート C:製造工程において実証可能な品質管理システムを備えており、ケニアにあ る PVoC 認定業者の認可を受けた製造業者のみが申請可能。輸出する製品に事前に ライセンスを付与することで、書類審査のみで CoCが取得可能となる。認可は、ISO ガイド 28:2004 に準拠されている。ライセンスの有効期限は1年間であるが、期限 中に限定的なテストを求められることもある。 ルート D:このルートは、混載貨物の輸入業者、すなわち広範囲の製品を含む貨物に 限定される。貨物の種類は異なる 3 つ以上の製品またはブランドを含まなければな らない。とりまとめの輸出者は、検査の少なくとも 48 時間前に認証を申請し、パッ キングリストと送り状を指定検査機関に提出が必要。なお、このルートを通して輸入 された危険度の高い商品は、販売前に KEBS によって仕向地での試験にかけられる 場合があり、試験費用は輸入者の負担となる。 輸入通関手続きに必要な書類は下記の通りである。またケニアを拠点とする輸入業者に よる輸入はすべて、ケニアで事業を行うことを認可された会社に保険をかけなければなら ない。 契約書または信用状(L/C) 船荷証券(B/L)または航空貨物運送状(AWB) インボイス パッキングリスト 路上使用適格検査(RWI)証明書 輸出抹消登録証明書 輸入申告書(Import Declaration Form: IDF)

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日本からのケニア向け製品については、ケニア基準局から委託を受けたインターテック

ジャパン株式会社(Intertek Japan)が CoC を発行している。なお、SGS(Societe Generale

de Surveillance S.A.)とビューローベリタス(Bureau Veritas)も委託企業として登録され

ているが、現在は資格が停止されている(2018 年 1 月現在)。

ケニア向け船積前検査には4つのルートがある。A から C は主に単体の輸出業者向けで

あり、A から C の順に簡略化される。また混載貨物についてはルート D が適応される。な

お費用は輸出者の負担となる。

・ ルート A:一般的な検査ルートで、物理的(目視検査)及び書類上(テストレポート)

で検査を実施する。輸出者が上記の指定検査機関に検査を依頼し、船積前検査を実施

する。

・ ルート B:指定検査機関に事前に製品登録を行うことで、書類審査のみで輸出が可能

となる。同種の製品を頻繁に出荷する際は、本ルートが適切である。登録有効期限は

1 年間である。ただし、抜き打ちで船積前検査が実施される可能性がある。なお中古

品についてはルート B を使用することはできない。

・ ルート C:製造工程において実証可能な品質管理システムを備えており、ケニアにあ

る PVoC 認定業者の認可を受けた製造業者のみが申請可能。輸出する製品に事前に

ライセンスを付与することで、書類審査のみで CoC が取得可能となる。認可は、ISO

ガイド 28:2004 に準拠されている。ライセンスの有効期限は1年間であるが、期限

中に限定的なテストを求められることもある。

・ ルート D:このルートは、混載貨物の輸入業者、すなわち広範囲の製品を含む貨物に

限定される。貨物の種類は異なる 3 つ以上の製品またはブランドを含まなければな

らない。とりまとめの輸出者は、検査の少なくとも 48 時間前に認証を申請し、パッ

キングリストと送り状を指定検査機関に提出が必要。なお、このルートを通して輸入

された危険度の高い商品は、販売前に KEBS によって仕向地での試験にかけられる

場合があり、試験費用は輸入者の負担となる。

輸入通関手続きに必要な書類は下記の通りである。またケニアを拠点とする輸入業者に

よる輸入はすべて、ケニアで事業を行うことを認可された会社に保険をかけなければなら

ない。

・ 契約書または信用状(L/C)

・ 船荷証券(B/L)または航空貨物運送状(AWB)

・ インボイス

・ パッキングリスト

・ 路上使用適格検査(RWI)証明書

・ 輸出抹消登録証明書

・ 輸入申告書(Import Declaration Form: IDF)

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通関手続きについては、輸入者は下記の輸入申告手続きをケニア歳入庁(Kenya Revenue

Authority: KRA)に対して行う。輸入申告書(IDF)、インボイスおよび輸出業者との売買契

約書(または見積書)を提出し、申告費用(CIF 価格の 2.25%または 5,000 ケニア・シリン

グのいずれか高い額)を支払う。上記の手続き後、KRA は 48 時間以内に IDF に 10 桁の

IDF 番号を付し、通関手続きが開始される。なお輸入関税および諸税は下記の通りである。

・ 関税(CIF 価格に課税)25%

・ 物品税(CIF 価格+関税の合計に課税)20%

・ 付加価値税(VAT)(CIF 価格+関税+物品税の合計に課税)16%

・ IDF 手数料(CIF 価格に課税)2.25%

・ 鉄道開発税(RDL)(CIF 価格に課税)1.5%

3.4.2 中古機械の輸入時におけるボトルネック

輸入者は、機械の機能を網羅したデータシートとその関連文書を提供する必要がある。ま

た輸入者は原産地と機械の目的を明示しなければならない。これは輸入される中古機械の

目的が輸入者の施設内で使用するもの(自己使用)か、もしくは他者への販売するものなの

かを明らかにするためである。同時に、輸入者は輸入した機械に問題があった際に、一切の

責任を負うと記載した自己申告書に署名しなければならない。その他、電源プラグの形状は

輸出前に検査されなければならず、もし違反した場合は罰金が課される、もしくは機械を輸

出場所に返還される可能性がある7。

3.4.3 販売時におけるボトルネック

ケニア国内で販売を行う際は、原料やその他の規定で定められている場合を除き、輸入標

準化マーク(ISM)を取得し、輸入製品に貼付ける必要がある。輸入者が KEBS に直接申請

し、ステッカーを入手する必要がある。原則 2 営業日で発行されると定められているが、実

態はその限りではない。ISM は 1 枚当たり 0.49 ケニア・シリングで発行される8。なお申請

に必要な書類は下記の通りである。

・ ISM 申込書

・ PVoC サービスプロバイダによって発行された CoC

・ 輸入申告書(IDF)

・ パッキングリスト

7 Intertek International Limited (Kenya)の Abigail Mwasigwa にヒアリングによる

8 IMPORT STANDARDIZATION MARK GUIDELINES|KEBS

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第4章 現地適合可能性のある企業

4.1 国内企業調査概要

現地適合性のある企業の候補のリストアップにあたっては、事前に現地で収集した情報

などをもとに、ある程度の市場規模があり、要求する技術水準や資金力の面から日本製機械

を導入する可能性がある比較的大規模のメーカーが存在するセクターを中心に、菓子・製パ

ン、製粉などに関連する企業を選んだ。また、水産、製麺など前章で説明した、潜在的なニ

ーズを有する可能性のある分野についても考慮した。アフリカでの事業展開という点を念

頭に、新興国や途上国などへの進出事例のある企業を優先度の高い調査先として位置づけ、

小規模で海外展開の経験がないような企業は対象外とした。

食品加工機械メーカーの業界団体である、FOOMA 会員企業約 200 社を中心に、上記の

条件に沿って優先度の高い企業を絞り込み、うち 5 社への訪問調査を実施した。また、選定

に際しては FOOMA からの助言も参考にした。

企業へのアポイントを取得する際、アフリカについては考えていないと答える企業も多

かった。FOOMA によると、企業の多くはアフリカの市場に関する情報を持っていないため、

判断できていないとのことである。アジアでさえまだまだ進出の余地が大きいため、まずは

アジアに注力している企業が多い。

インタビューできた企業についても、日本本社がアフリカに注力している企業はほとん

どなく、アフリカに販売していても、ヨーロッパの現地法人が担当していることがほとんど

であるため、十分な現地情報をもっている企業はごく一部に限られる。

4.2 日本企業の現地適合可能性

前述のとおり、小型機械、食の安心・安全への対応、高度な技術が求められる機械につい

ては、参入障壁が高いという課題があるものの、限定的な現地適合可能性はある。また、長

期的にみれば、まだ顕在化していない潜在的な機械化のニーズの点から、現地適合性が高い

企業も存在する。この2つの視点から、訪問調査をした企業 5 社と電話でのインタビュー

調査をした企業 1 社(イシダ)について、ケニアの現状に基づいた現地適合可能性を以下に

整理した。

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㈱愛工舎製作所

会社概要

製菓・製パン業務用ミキサーのリーディングカンパニーで、

製パン・製菓向け機械で日本国内シェア 6~7 割を占める。特

にミキサー、オーブン類に高い技術を有する。その他、食品加

工機械全般、水産加工、化学産業など幅広い製品を取り扱って

いる。海外メーカーとの技術提携や異業種との融合により、幅

広い市場・企業へ向けて様々な製品開発を進めている。

比較優位性

職人やシェフの意見を元に食品加工機械を企画・開発しており、製菓・製パン業務用ミキサ

ーなどの分野で高い技術力を持つ。例えば、加熱・冷却・真空/高速切断混合ミキサー「カッ

ターミキサー」では、混合・分散・乳化の従来機能の他、回転数・温度・真空度の設定機能が

追加されており、プログラム自動運転を実現している。海外向けに対しても、原材料の組み合

わせによって設計が異なるため、機械を使って混ぜる原材料の情報を元に設計を行っている。

その際、電圧の仕様もその国に合うように製造している。

現地適合可能性

・ 製菓・製パンはケニアにおいても大きな重要な市場であり、特に製パン業界では 2017 年

にフランスのベーカリーカフェ”Le Grenier à Pain”が進出し、在住外国人を中心に大き

な話題を集めた。品質の高いまたオリジナル性の高い製菓・製パンの需要は今後も伸び

る可能性があり、現地の現状を踏まえた設計・開発できる現地適合可能性は高い。

・ 一般消費者向けの製パン業界については、40~50 年と長く運営されている会社が多く、

既にドイツ製を中心に欧州製の製造機械が導入されている。一方で、ホテル・レストラン

向けについては、新たにオープンする店舗も多く、導入可能性の余地は残る。同社は日本

国内においても大手チェーン・個人店舗向けの販売に強く、同市場との親和性は高い。

・ 同社は機械を販売した後も、メンテナンスやその他ソリューション提案などアフターフ

ォローを重視しており、長い取引関係を築いている。日本国内では、全国に愛工会という

ネットワークがあり、そこで販売とメンテナンスを行っている。現地に同じような体制

ができるパートナーを獲得することがハードルとなると考える。

住所 埼玉県戸田市下戸田 2-23-1

資本金 1,000 万円

主要製品 製パン・製菓機械、化学ミキサー

カッターミキサー15DVJF

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株式会社前川製作所

会社概要

産業用冷凍・冷蔵システムの大手で、製造ラインの設計・施工も手掛ける。野菜、畜産、魚

介類、飲料など、幅広い食品加工分野で実績を有している。海外展開実績は日本の食品加工機

械メーカーのトップクラスで、グループ売上高のおよそ 5 割が海外である。海外 41 カ国に拠

点があり、東アフリカはドバイ拠点が管轄している。2016 年に JETRO のアフリカビジネス

実証事業をケニアで実施している。

守谷工場 高効率自然冷媒冷凍機「NewTon(ニュートン)」

比較優位性

冷凍機の場合、インドで製造することでコスト削減しているが、中国製とは価格で 20%~

30%ほど割高になるため、品質、性能、アフターサービスを重視している。特に大型、低温、

特殊仕様といった点で優位性を持つため、大型プラントが主要顧客となる。代替フロンより環

境にやさしいアンモニアなどを使った自然冷媒の技術も強み。専用機械メーカーが多い日本

企業としては珍しく、食品工場エンジニアリングの部門を持つ。

現地適合可能性

・ ナイロビにある Kenya Meat Commission を含め、現地企業数社に対し、冷凍機械を導

入した実績があり、現在も引き合いがくるなど、現地適合可能性は高い。

・ 同社が強みとする産業用冷凍機械導入の可能性としては食肉、飲料、乳業、ビールの分野

があるが、まだ大手企業が少ないことに加えて、欧州メーカー(ドイツの GEA やデンマ

ークの SABROE)がすでに進出しているため、既存市場への参入障壁は高い。

・ 冷蔵・冷凍機は、ポストハーベストロス対策として使われるため、農作物の生産量や漁獲

高が増加するとニーズが増える。農作物については、高級フルーツなどを冷蔵庫で密封

保管して出荷時期をコントロールことにも活用できるため、将来の適合可能性は高い。

・ 同社が強みとする冷凍機はアンモニアを使用するため、メンテナンスにおいてアンモニ

アの取り扱いができる現地企業が少ないことがハードルとなる。

住所 東京都江東区牡丹 3 丁目 14 番 15 号

資本金 10 億円

主要製品 産業用冷凍機、冷凍・冷蔵倉庫、プロセス冷却設備、ヒートポンプ、食肉処理装置

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株式会社サタケ

会社概要

明治 29 年に日本初となる動力精米機を考案・販売して以来、穀類加工を中心に食品加工機

械の先端技術を開発し続けてきた、精米機・選別機の国内トップメーカー。国内では GABA ラ

イスやパックご飯などの商品開発や、米の性質・食味の分析サービスなども行っている。海外

展開にも積極的で、欧米・南米・アジア・オーストラリアを中心に 9 カ国にグループ会社を持

ち、150 カ国に販売実績がある。アフリカに関しては、通常の販売はイギリス支店、ODA は

東京本社が担当しており、すでにケニアにも輸出経験がある。

多用途ベルト式光選別機 「ヘンリー・サイモン」

ピュリファイヤ(小麦粉純化機)

比較優位性

製粉・精米分野においては世界的な競合が存在するが、(株)サタケの機械では「乾燥→貯蔵

→籾摺り→選別→包装」といった一連のバリューチェーンを一貫して行えるという強みを持

つ。また、タイにトレーニングセンターを持つなど、新興国(東南アジア)でもアフターサー

ビスのネットワークを構築しており、技術移転の知見も持っている。

現地適合可能性

・ 同社の機械は使用用途が多様であり、原料によりカスタマイズが可能である。特に選別

機に関しては、精米だけでなく、コーヒーや胡麻にも使うことができ、実際にアフリカで

はコーヒー向けのニーズが高い。

・ 小麦粉は外貨取得のための重要な作物であり、製粉に関して現地適合可能性が高い。製

粉機械に関しては、同社がトルコのアラパラ社と業務提携を行い、「ヘンリー・サイモ

ン」という共同ブランドを立ち上げ、販売している。

・ すでにケニアへの輸出経験があるため、ケニア輸出時のネックとなりうる品質管理体制、

認証取得に関しては問題がないことも強みである。

住所 〒739-8602 広島県東広島市西条西本町 2 番 30 号

資本金 2 億 8 千万円

主要製品 光選別機、精米・製粉機械及び設備、穀物乾燥調製機械、農産物調整貯蔵施設

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株式会社木原製作所

会社概要

創業 1902 年の食品乾燥機メーカー。高付加価値化への取り組みとして、鮮やかな色味と品

質を保持する独自技術 DDS(Dual Drying System)により、ドライフルーツや干し芋、各種

粉末などへの応用を進めている。ジェトロや山口県の支援を受け、ロシアをはじめ東南アジア

諸国への輸出に取り組んでいる。JICA「ABE イニシアティブ」ではアフリカ諸国からの研修

生を受け入れた。留学生には現地との橋渡し的な役割を期待している。

DDS 搭載型温風乾燥機 色鮮やかな乾燥サンプル 高付加価値化を実現する乾燥技術

比較優位性

同社が強みを有する温風乾燥技術は農作物の気孔を開かせて水分を飛ばすのが特長で、農

産品全般(野菜、果物、豆類等)に活用が可能。乾燥効率がよいので、冷風、フリーズドライ

などの技術に比べてコスト面に優位性がある。一般的な温風乾燥機は吸排気操作が難しいた

め、乾燥物を希望の状態で仕上げるためには操作者の勘と経験に頼る部分が大きいが、同社の

DDS 搭載型乾燥機はこの点を解決することができる。全自動プログラムにより温度と湿度の

両方を管理することで、環境や作業者の熟練度によらず、品質のばらつきの少ない乾燥食材を

生産することを可能にした。

現地適合可能性

・ 辺境部など冷蔵施設が十分にない地域では干し芋など乾燥食材のニーズがある。南スー

ダンに駐留する国軍向けのニーズがあるという現地情報あり。ドライフルーツは鮮やか

な色味を保持する独自技術を有しており、水分を飛ばすため甘みが凝縮する。

・ DDS 搭載型乾燥機は本体価格が 100 万円程度から(輸送・設置費等別)。タッチパネル

は英語仕様に変更可能(要相談)。SM シリーズ・F シリーズは EAC 認証有。

・ アボカドは油脂の酸化という問題があるので温風乾燥は難しいかもしれないが、バラな

どの生花は、規格外品をドライフラワーにするような用途が考えられる。お茶の乾燥は、

手もみの作業を必要としないような種類であれば、実用例はある。

住所 山口県山口市秋穂西 3106-1

資本金 4500 万円

主要製品 温風食品乾燥機(果実・野菜類、きのこ類、薬草類、にんにく等)、省力化機器

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株式会社ヤナギヤ

会社概要

世界シェア 7 割のカニ蒲鉾をはじめとした練り物、豆腐などの生産ラインを手掛ける。練

り物の成型、蒸し、揚げ、攪拌などを要素技術としている。欧米・アジアなど世界 50 カ国、

200 例以上の輸出実績があり、アフリカ向けではモロッコにカニ蒲鉾生産ラインを導入した

ほか、10 年以上前に ODA(無償資金協力)で同国アガディールにすり身加工機械を納入した。

練り物成型の工程(同社ウェブサイトより)

比較優位性

カニ蒲鉾向け機械では圧倒的なシェアを誇り、安価なコピー製品を作っている韓国や中国

企業の追随を許さない。当社は真空処理で成形しているため、カニ蒲鉾に気泡が入ったりせ

ず、高い品質を保っている。

現地適合可能性

・ カニ蒲鉾は年間消費量約 50 万トンの 9 割は日本国外で、すでにグローバルな食材になっ

ている。もともと魚をよく食べていたフランスやスペインなどで特に人気が高く、最大

の用途はサラダの具材。中国など、所得の向上や食生活の変化などでサラダを食べるよ

うになった国で需要が伸びているため、そうした中上流層のニーズをつかむことが重要。

・ コストの安いインド産のカニ蒲鉾が欧州に輸出されたりしており、豊富な水産資源を活

用して、ケニアも将来、輸出向けの拠点となる可能性はある。

・ ただ、現時点ではケニア国内の練り物の市場は現段階ではほとんどないため、国内向け

には練り物成型の要素技術を既存の製品に応用することを検討する必要がある。

・ モロッコへの導入実績以降、アフリカへの積極的な進出計画、事例はほとんどない。ま

た、事業リスクの高さ、市場の小ささなど、グローバル展開を行う一部の企業を除いて、

同社含め多くの企業ではアフリカは積極的に進出を検討する対象となっていない。

住所 山口県宇部市大字善和 189-18

資本金 1 億円

主要製品 カニカマ製造装置(一貫ライン)、豆腐・海苔・製菓機械

原料処理・ポテトセパレーター

揚げ工程 冷却工程

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株式会社イシダ

会社概要

1893 年創業の計量・包装業界でトップクラスの BtoB メーカー。特に食品業界に対して大き

なシェアを持ち、「計量」・「包装」・「検査」・「表示」・「情報」をコア技術として、世

界 100 ヶ国以上でグローバルに事業を展開している。

ケニアで販売されている ISHIADA の食品加工機械

現地進出状況

日本企業の中でもケニアにおける ISHIDA ブランドの認知度は比較的高い。現地では

Allwin Packaging International Ltd が代理店を務めており、販売・メンテナンスを行っ

ている。またスペアパーツも保管している。その他、ナイジェリア、南アフリカに代理店

を持っている。

アフリカ市場はイギリスを拠点とするイシダ・ヨーロッパが管轄している。同じ ISHIDA

ブランドで事業展開しているか、日本本社とは完全に独立した会社である。ケニアでは

現地大手製菓メーカーが導入しているなど、実績がある。

日本本社としてもアフリカ市場は重要視しており、今後ヨーロッパ本社と連携しながら、

販売を拡大していく方針である。

現地適合可能性

・ イシダは現地代理店を通じて、既に販売体制が整っており、また現地企業からのブラン

ド認識度も高いため、ケニア国内において十分な現地適合可能性を有している。

・ 一方で、食品加工機械を販売する代理店からはイシダの機械は品質が良いが価格が高い

ため、中古製品のニーズが高いとの意見があった。主に台湾などから輸入ができるとの

こと。

住所 京都府京都市左京区聖護院山王町 44 番地

資本金 99,630,000 円

主要製品 各種計測機械の製造販売

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第5章 まとめ

5.1 調査を通じて得た課題

本調査の目的である、現地側のニーズとそれに適応する可能性のある日本側企業の技術

や製品を把握していく過程において、さまざまな課題が浮かび上がった。

一つ目の課題は、ケニアの食品加工機械市場において、欧州の競合国に差をつけられてい

ることである。ケニアである程度の工業生産が進んでいる食品加工分野は、製パン・製菓や

飲料といった、外国の食文化に由来するものが中心で、その加工機械についても、こうした

食文化の本拠である欧州系のメーカーが伝統的に高い競争力を有している。買い替え需要

はあるにせよ、数十年にわたって同じメーカーの機械を使い続けている例もあるため、参入

は容易ではない。ケニアにおいて、欧州系のメーカーは長年営業活動をした結果、一定の評

価を受けている一方で、日本企業による市場開拓は進んでおらず、日本の食品加工機械に対

する評価はほとんどされていない。日本は車メーカーがある国としてのイメージはあって

も、日本企業が食品加工機械を製造しているとの認識がなかった。

日本の食品加工機械に対する評価を得るには時間がかかるため、長期的な視点で市場へ

の参入を考えていく必要がある。そのためには、既存のニーズに対応した商品で競合するの

ではなく、今まで機械化のニーズが顕在化していなかった分野、たとえばウガリを中心とす

るケニアの伝統食、あるいは食文化として広くは定着していなかったが、ライフスタイルの

変化や生活水準の向上などによって需要の伸びが期待されるものなどのニッチなニーズを

掘り起こすことがアプローチのひとつとして考えられる。二点目の課題としては、わざわざ

アフリカまで行ってニッチなニーズを掬い取ろうとする動機を持っている日本企業があま

りいないということである。今回調査した多数の日本の関係者からも、市場が小さいことに

加えて、距離的・心理的な遠さ、治安面での懸念、ビジネス環境の未整備などでアフリカを

現実的な事業展開先とは考えていないという意見があり、海外であれば、アジア諸国など日

本と食文化の親和性が高い地域や、市場規模の大きい欧米に割くべきリソースをアフリカ

に振り向けるのは大きな機会費用が発生することも確かであろう。さらに、日本の食品加工

機械業界は一部を除いて中小規模の企業が多く、海外、特にこうした新興国・途上国への進

出のためのノウハウや資金力、人材が十分でないことも大きな課題である。

人口動態から、将来的にアフリカは日本企業にとって魅力的な市場になると予測される

が、魅力的になってからでは遅く、いかに先行者利益をとるか考える必要がある。こうした

動きは個別企業でのアプローチでは限界があるため、業界全体で長期的な取組をしていく

ことが肝要である。

また、欧州企業のアフリカ展開を欧州政府が手厚く支援している状況と比較すると、日本

企業が現地でビジネスを展開するためのサポート体制がアフリカに整っていないことも課

題の一つである。日本企業のアフリカ展開を促進するためには、現地コーディネーターやコ

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ンサルタント、販売代理店などとの関係強化を図るとともに、公的な支援も有効だと思われ

る。

5.2 日本企業のアフリカ展開を促進させるための支援策

本調査を通じて明らかになった課題を踏まえ、ケニアへの食品加工機械の輸出を促進す

るためには、以下の支援策が効果的だと考える。

・ 日本の食品加工機械を一覧できる広報資料の作成

既存市場と潜在市場のどちらをターゲットにするにしても、まずケニアにおいて日

本製の食品加工機械の認知度を上げる必要がある。中小企業で専用機械のメーカーが

多いことを踏まえると、個別に企業が広報活動するには限界があり、買い手も購入の判

断が難しい。そこで、日本企業がもつ食品加工機械のうち、ケニアでの適合可能性が高

い機械を分野別、機能別に整理した英語のパンフレットを作成し、JETRO や大使館な

どに配置することで日本製機械の認知度を上げていく。同様の情報を整理した WEB サ

イトの開設も有効である。また、現地企業から得た意見として、日本の機械は値段が

Web サイトで分からないため、購入しづらいというものもあった。購入の検討材料と

してパンフレットや WEB サイトでは値段表示も必須項目となる。

・ 展示会の活用

ドバイや南アフリカでの展示会に参加している現地企業も多いため、日本製の食品

加工機械の認知度を上げるには、こうした展示会に日本ブースとしての出展も効果的

だと思われる。また、アフリカの企業を日本で開催している FOOMA などの展示会に

招待することも一案である。

・ 現地からの問い合わせへの窓口設立

日本の中小企業は、現地からの問い合わせがあったとしても英語での対応が難しい

企業が多い。また、専用機械メーカーではライン一括での相談があったときに対応が難

しい場合があることから、現地企業のそれぞれの工程に適した機械を提案できる、コン

シェルジュ機能をもつ窓口の設立が効果的である。長期的には、同窓口にメンテナンス

機能を実装することで、オールジャパンの販売・メンテナンス拠点を設立することがで

きれば、日本企業のプレゼンスも高まると思われる。

・ 現地ニーズの視察ツアー

アフリカの市場の可能性について過小評価をしている日本企業は多いが、アフリカ

は心理的に距離感があるため、現地の市場情報を単に提供してもあまり効果的ではな

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い。これまでの経験上、会社の意思決定者が現地を肌で感じることで、はじめて市場の

可能性を評価できる。そこで、現地視察ツアーなど、現地を訪問する機会を定期的に作

っていくことで、アフリカ市場への展開を志す企業を増やしていく活動が重要だと思

われる。

・ 中古機械を通じたブランド戦略

日本製の食品加工機械を知っていても、品質が良いが高いというイメージを持って

いるため、まずは中古機械を導入することでブランドの浸透を図ることも有益である

と考えられる。