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平成23年度留学生交流支援制度(ショートステイ・ショートビジット)プログラム 日本と中国とのハイブリッド型教育 による人材育成プログラム (SS&SV) 実施報告書 SS 江南大学、大連理工大学、東北大学 SV 横浜国立大学 横浜国立大学教育人間科学部 2012 年 3 月

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平成23年度留学生交流支援制度(ショートステイ・ショートビジット)プログラム

日本と中国とのハイブリッド型教育

による人材育成プログラム(SS&SV)

実施報告書

SS 江南大学、大連理工大学、東北大学

SV 横浜国立大学

横浜国立大学教育人間科学部

2012 年 3 月

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はじめに

この報告書は平成23年度留学生交流支援制度(ショートステイ・ショートビジット)プログ

ラム「日本と中国とのハイブリッド型教育による人材育成プログラム」(SS&SV)(実施責任

者 村田忠禧 横浜国立大学教育人間科学部教授)の実施成果をまとめたものである。

日本学生支援機構が今年度から始めた留学生交流支援制度(ショートステイ・ショートビジッ

トプログラム)にたいして、われわれ横浜国立大学で中国語教育に携わる者は積極的に応募した。

このプログラムが始まる前から、われわれは夏休み期間や春休み期間に中国に行って実際の中

国を自分の眼で見て、生の中国人と交流をするよう、学生たちに呼びかけ、実施してきた。ある

時は中国語の学習に重点を置いたプログラム、ある時は相互交流に重点を置いたプログラムとい

ろいろ試行錯誤を重ねてきた。2003 年夏から始まった中国研修旅行はさまざまな困難を乗り越え

ながらも一度も中断することなく続けることができた。これには中国の各大学の理解と協力があ

ったこと、横浜国立大学の支援があったことも大きいが、何よりも継続実施を望む学生たちの声

に支えられてきたからである。

今年度からはそれが「留学生交流支援制度」として日本学生支援機構から奨学金支給という具

体的な支援がいただけるようになった。しかもこれまでは横浜国立大学の学生が中国に行く、と

いう一方通行的な交流であったものが、海外の大学生の訪日を支援するショートステイプログラ

ムにも奨学金支給がなされ、双方向の交流が実現できるようになった。われわれは今年度は本学

の夏休み期間中には大連理工大学、春休み期間中には江南大学を拠点にして、中国語の集中学習

とともに中国で日本語を学ぶ学生たちとの交流に重点を置いたショートステイ&ショートビジッ

トプログラム「日本と中国とのハイブリッド型教育による人材育成プログラム」を申請し、ショ

ートステイで 40 名、ショートビジットで 48 名の学生たちが日本学生支援機構からの奨学金支給

を受けた。この他にショートステイでは 3 名、ショートビジットでは 8 名が奨学金支給には関係

なく、相互交流活動に参加した。つまり総数 99 名におよぶ日本と中国の学生交流が 2011 年 9 月

から 2012 年 3 月の間に実現できたのである。

この報告書には今年度の SS&SV プログラムに参加した学生たちの学習成果に関するレポートと

して、彼ら・彼女たちの声が掲載されている。グローバル化した今日における人材育成には相互

理解、相互尊重の精神が不可欠であり、そのためにも相手の言語を習得することは非常に重要で

ある。言語習得はなるべく早い時期に行なったほうが好ましく、しかも短期間であっても現地の

大学に滞在し、どっぷりとその言語環境に浸かるなかで学ぶことは非常に効果的である。それは

単に言語習得という面だけでなく、現地での生活を体験することを通じて多面的に世界を見る眼

を養うこともできる。この報告書にある学生たちのレポートから、これまでとはまったく異なっ

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た世界に接し、刺激を受け、学ぶ意欲を掻き立てられた彼ら・彼女たちの喜びの声を随所に見い

だすことができるだろう。

なおショートステイ・ショートビジットプログラムはあくまでも学生の留学交流にたいする支

援であって、その実施には日本と中国の各大学の教職員の積極的な協力・サポートが不可欠であ

った。そのための経済的支援、およびこの報告書の作成も横浜国立大学平成 23 年度 学内重点化

競争的経費 学長戦略分「新時代対応型外国語教育の実践と検証」によって可能となっている。

今年度のすべてのプログラムが成功裏に実現したことには横浜国立大学の積極的支援を抜きにし

ては考えられない。

日本学生支援機構の支援に心から感謝の意を表するとともに、大連理工大学、江南大学、東北

大学をはじめとする中国の関係各位、および横浜国立大学の鈴木邦雄学長をはじめとする関係各

位のご理解、ご協力に心からの感謝の意を表します。併せてこの有意義な事業が私が横浜国立大

学を去ったあとも引き続き継続、発展していくことを心から願っております。どうもありがとう

ございました。

2012 年 3 月 27 日

横浜国立大学教育人間科学部教授 村田 忠禧

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留学生交流支援制度(ショートステイ、ショートビジット)プログラム実施報告

プログラム区分 SS&SV 大学等名 横浜国立大学

プログラム名 日本と中国とのハイブリッド型教育による人材育成プログラム

実施期間 2011年9月11日 ~ 2012年3月18日

報告者 村田忠禧

1 SV の実施状況

本学学生の SV は本学の夏休み期間と春休み期間の二度にわたって実施した。まずは夏休み期間の実施

状況を報告する。

夏休み期間の SV 実施について

実施時期は 9 月 11 日から 10 月 2 日まで、参加者は 17 名。全員が中国語初習段階の学生たちで、1 名

が 3 年生(3 年次編入生)の他、16 名はすべて 1 年生。4 月からの春学期に本学の中国語実習 1a、1b を履

修し、夏休み期間を利用し、大連理工大学で中国語実習 2a、2b に相当する集中授業を受け、最終段階で

本学の担当教員による試験を実施して単位認定をするものである。集中授業で中国語実習 2a、2b を履修

したことになり、通常なら翌年度以降に履修可能な中国語演習を、年度内の秋学期から履修可能となる。

受講した 17 名のうち、1 名は春学期の成績が条件を満たさなかったため、秋学期からの中国語演習を受

講できなかったが、他の 16 名は秋学期から中国語演習を履修した。

なおすでに中国語初級段階の履修を終えている学生を対象に、全額自費負担による中国語集中授業も 9

月 4 日から 9 月 28 日まで並行して実施した。参加者は 8 名。こちらは最初にハルビン(黒竜江大学)、長

春(東北師範大学)を訪問し、それぞれの地での交流・見学活動を行なったあと、大連理工大学での中級ク

ラスの集中授業を受講した。彼らは大連理工大学からの修了証を発行していただいたが、本学での単位

取得には結びつかない、あくまでも中国語レベルアップを目的とした行動であった。

帰国後、SV プロジェクトに参加した学生を対象に行なったアンケート調査で一番多かった回答は「学

習意欲が大幅に向上した」で「中国に対する見方が大きく変わった」「もっと世界を知ろうという気にな

った」と続き、その次が「語学力が格段と向上した」であった。目標を持って学ぼうとする意欲を喚起

させた点で、今回のプログラムは非常に有意義であったといえる。

集中授業を受ける大学を大連理工大学としたことにも明確な方針があった。同大学と本学とは交流協

定があり、かねてから交流が盛んであることも重要な要因だが、大連には日本企業が多く進出しており、

大連理工大学には5年制の日本語強化クラスという、日本語もでき、専門にも強い人材育成専攻もあり、

また日本語学科には優秀な教員スタッフが揃っていた。日本語科教員に中国語の集中授業を担当しても

らったが、これは前年に山西大学の協力を得て実施した中国語集中授業では、担当教員が日本語は解せ

ず、英語と中国語のみの授業であったため、学生との意思疎通に問題が発生したことから得た改善策で

あった。今年度は日本語学科の教員が担当してくれたため、受講生との意思疎通がかなり順調にできた、

という点で大きな進歩が見られた。ただし日本語科教員による中国語教育であるため、文法など中国語

教授法については改善の余地があることも明確になった。文法についてはやはり日本語を母語とする教

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員が担当することが望ましいので、どのような教育実施体制を構築するか、検討・改善が求められる。

後述する江南大学での国際教育学院での外国人留学生向け授業に一時編入して学ぶスタイルの活用も今

後の検討課題と思われる。

日本語科教員による集中授業のメリットとともに、大連理工大学で日本語を学ぶ学生との交流、とい

う点でも積極的な成果が現れた。午前中の中国語の授業の他に、午後は日本語科の学生との間で、共通

するテーマをめぐってそれぞれが発表するフォーラムの実施や、市内見学の案内など日常生活面でのサ

ポートを受けることができた。とりわけ 9 月 12 日は中秋節であったため、大連市内の家庭訪問というプ

ログラムを大連理工大学側が用意してくれたことは想定外の収穫であった。

この他に、日帰りで旅順に行き、二泊三日で瀋陽に行き、東北大学の学生とも交流することも行なっ

た。また大連民族学院の見学、新開発区にある日本企業「日本電産」の見学も行なった。

帰国後のアンケート調査によると、さまざまな活動が目白押しの状態であり、疲れがたまった、とい

う意見が出された。確かに三週間、あまりに盛り沢山な行動を提案しすぎたのかも知れない。学生の健

康管理も大切な問題であるが、これは本人たちの自覚の問題でもあり、教員側が注意喚起をするだけで

は解決できない。満足度を5段階で評価してもらったところ、5が 10 名、4が 7 名であった。

春休み期間の SV 実施について

春の SV は中国語力のレベルアップを実現することを目標に掲げ、参加する学生たちの滞在可能な期間

から、3 週間と 4 週間の二つのコースを設けた。この集中授業に参加しても履修単位にはカウントされな

い。学生の学習レベルにより①初級班(中国語初級段階を 2 月に履修し終えた学生群)、②夏休みの大連

理工大学での集中授業に参加し、秋学期から中国語演習を学んでいる学生たちの中級一班、③本学にお

いて中国語初級段階は履修済みの 2 年生以上の学生たちの中級二班の三クラスでの実施となった。参加

者は 3 週間コースが 16 名(うち、初級班は 8 名、中級一班は 4 名、中級二班は 4 名)、4 週間コースは

15 名(うち、初級班は 9 名、中級一班は 4 名、ただしそのうちの 1 名(ベトナムからの留学生)は本人

の希望で中級二班での学習、中級二班は 2 名)であった。期間は二つのコースとも 2 月 19 日に出発し、

3 週間コースは 3 月 11 日に帰国、4 週間コースは 3 月 18 日に帰国した。三次募集があった際に、SV 参

加者用に 7 名の追加申請をして認められたので、春の SV 参加者 31 名は全員、日本学生支援機構の支援

を得ることができた。集中授業は江蘇省無錫市にある江南大学で実施した。前年度にも春休み期間に同

大学で集中授業を実施した経験がある。その時の参加者は 9 名であった。

集中授業は月曜から金曜までの午前中に2コマの授業を受講する形で行なわれた。3 週間コースと 4

週間コースを合同で実施し、初級班は合計 17 名、中級一班は 7 名、中級二班は 7 名であった。初級班と

中級一班の授業は江南大学外国語学院日本語科の教員が担当し、中級二班については国際教育学院が外

国人留学生向けに開講している授業に臨時に編入させていただく形で学んだ。国際教育学院のクラスは

学習レベルに応じてAからDまで開設されており、本学学生は各人の判断で自分の学力にあったクラス

に加わった。大部分の学生はCに入ったが、自分の語学力に合わせてBあるいはDに移った学生もいた。

週に1回、江南大学の日本語科の授業に参加し、中国人学生と一緒に日本語を学ぶ(授業は中国語で行

なっているので中国語の学習にもなる)ことも行なった。帰国後、学生たちの意見を聞いたところ、中

国人学生は遅刻しないし、授業開始前から自発的に予習をしているなど、授業への取り組み姿勢が日本

の大学生とは異なり、自己の力をつけることに熱心であることを知り、よい刺激になったようである。

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また他の外国人留学生と一緒に国際教育学院で中国語を学んだ中級二班の学生たちからは、授業におい

てまったく日本語が通用しない環境で、さまざまな国・地域からの留学生と一緒に中国語を学んだこと、

また授業以外の時間でも交流ができたなど、国際教育学院での学習体験を高く評価してくれた。彼らか

らは他の班の学生たちもそれぞれの学習レベルにあったクラスに入って一緒に国際教育学院で学んだほ

うがよいと思う、という意見が出された。実は昨年度の江南大学での集中授業は国際教育学院が実施し

たものであったが、本学学生向けに特別クラスを開講したものであり、他の外国人留学生たちと一緒に

学ぶものではなかった。また参加した本学学生にレベル差がありすぎ、効果的授業にはならなかったと

いう反省があった。そこで今年度は初級、中級一班は日本語科教員による授業、中級二班は国際教育学

院による授業という形態で実施したものである。大連理工大学、江南大学での経験を総括し、次年度以

降の授業実施スタイルをよりよいものに改善する必要がある。

学生たちは学内の留学生宿舎を利用させてもらったため、経済的にも助かったし、同大学で学ぶ外国

人留学生との交流もでき、中国についての認識を深めることができただけでなく、さまざまな国々から

学びに来ている留学生との交流を通じて、英語習得の大切さをも含む、グローバルな社会で学ぶことの

意義を実感したようである。

江南大学日本語科では、総勢 31 名というかなりの規模の学生グループの勉学や生活を保証するため、

本学学生 5~6 人ごとに小組を作り(合計5小組)、各小組に江南大学の日本語科学生をそれぞれ 3 名配

置するとともに、緊急連絡用に携帯電話を各小組の本学学生のリーダーに 1 台貸与する、という措置を

とってくれた。携帯電話は有効に使われたとのこと。さまざまな学生交流は各小組単位で行なわれるこ

とになったが、うまく機能した小組とそうでない小組が出現したようである。いずれにせよ、このよう

な対応策をとってくださったことはありがたいことであった。

午後の時間帯は主として小組を単位として日本語科の学生との交流活動が行なわれたが、餃子を作っ

て食べる、太極拳を学ぶ、京劇を体験する、科学技術開発区を見学する、といったいろいろな活動があ

り、中国文化への親近感を増すことができたと思われる。また土曜、日曜には上海、揚州、南京、蘇州

などへの日帰り旅行を行なった。上海には高速鉄道を使って行ったが、他の都市に行く場合には大学の

バスをチャーターして行く形をとった。いずれも短時間の滞在に終わってしまったことは残念だが、無

錫という地の利があったからこそ実現できたものである。

帰国後のアンケート調査でもっとも回答が多かったのは「学習意欲が大幅に向上した」であり、「もっ

と世界を知ろうという気になった」「中国の学生と友人になれた」「中国に対する見方が大きく変わった」

「語学力が格段と向上した」といった評価もある。5段階評価では5が 16、4が 7 おり、他に3と1が

各1ずつあった。4週間の中国滞在はこれまで行なったことがなかったので、4週間コースを選択した

学生にはその期間の長さについて感想を聞いたが、15 名中、11 名が適切、長すぎるが 3 名、もっと長く

てもよいが 1 名という回答であった。

2 SS の実施状況

本学の学生が中国に行き、語学研修や交流、見学をすることは従来から行なって来たが、中国の大学

生を本学に招いて交流することは、実施するための財源が確保されない状態では不可能である。2007 年

2 月に日本学生支援機構・みずほ国際交流奨学財団の支援のもと、北京師範大学、華東師範大学との共催

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で「オリンピック、博覧会の開催と都市の現代化、国際化についての日中大学交流セミナー」を実施し、

大きな成果をあげたが、残念ながら次年度以降に同様な活動を展開することができなかった。

今回、日本学生支援機構が「留学生交流支援制度(ショートステイ・ショートビジット)」を立ち上げ、

海外からあるいは海外に、短期間来訪し、交流を行なう学生たちへの奨学金支給を開始したことは画期

的なことである。かねてから双方向の学生交流の実現を夢見ていたわれわれは、交流校の選定、実施時

期、規模等について、直ちに中国側と具体的協議に入ることができた。

われわれが SS 対象校としたのは、プログラムの実施順に挙げると、中国の江蘇省無錫市にある江南大

学、遼寧省大連市にある大連理工大学、同じく遼寧省瀋陽市にある東北大学の3校で、当初は各大学 10

名ずつの合計 30 名を予定していた。ただし三次募集があったので、10 名追加の 40 名となった。

1 江南大学の SS の実施状況

無錫市にある江南大学と本学との関係は 2010 年 9 月に地域交流科目の地域課題実習「中国研修を通じ

た国際化対応人材育成プロジェクト」の実施にあたり、同大学を 24 名の学生と教員 1 名が訪問、交流し

たのが最初で、翌年 2 月には本学学生 9 名が春休み期間を利用して同大学で中国語の集中授業を 3 週間

受講した。無錫には日系企業が 1000 社ほどあり、しかも中国における IT 産業の実験開発区として急速

に発展しつつある都市である。江南大学外国語学院には日本語科がある。地理的にも上海、南京の中間

に位置し、高速鉄道を利用すればいずれの都市からも 1 時間以内で到着できる利便性がある。さらに成

田と無錫との間には週 2 便、直行便が運行している。にもかかわらず江南大学の知名度はあまり高くな

い。逆にこの大学に注目することは今後の交流を展開するうえでも重要である、との判断から、今年度

の春の SV は昨年度に続き江南大学で実施することにし、双方向の交流という視点から SS の対象校とも

した。

実施時期は 11 月 20 日~11 月 28 日の 9 日間。当初は 10 名の学生の来日を予定していたが、1 名欠員

が発生したので、それは後に紹介する東北大学に回すことにし、9 名の学生が来訪した。本学の学内重点

化競争的資金のうち、学長戦略分「新時代対応型外国語教育の実践と検証」の経費を使って江南大学か

ら 2 名の教員(1 名は外国語学院副院長、1 名は日本語科主任)を引率者としてお招きした。あとで紹介

する大連理工大学、東北大学についても、本学の学長戦略分として配分された予算を活用して各 2 名の

教職員を引率者としてお招きした。

派遣する学生の選抜は江南大学に任せたが、全員が日本語科 3 年生で、8 名が女子、1 名が男子であっ

た。したがって日本語能力も一定程度あるので、日本の社会についての具体的理解を深めてもらうこと

を主たる目的とした 9 日間の行動日程を立てた。しかも 11 月 23 日に横浜市開港記念会館で「辛亥革命

100 周年記念シンポジウム in かながわ」が開催されるので、それとも連動させることとした。横浜と辛

亥革命、とりわけ孫文と横浜との関わりについての理解を深めるため、本学学生と一緒に横浜中華街に

行き、留日広東会館で「孫文と横浜華僑」の展示を見て、上述のシンポジウムに参加、翌日には本学の

授業に参加し、「孫文を支えた日本人 辛亥革命と梅屋庄吉」というNHKが放映した番組のビデオ作品

を見る、といった活動を特別に用意した。かつて日本と中国との間にはきわめて密接な繋がりがあった

ことを具体的事例を通して知ることができ、双方の学生にとって大変有意義な学習になった。

この他に日本社会を理解してもらうため、川崎市の橘処理センターというごみ処理工場の見学、NH

K放送センター、明治神宮、東京駅などを見学することを通じて東京、とりわけ公共交通手段の発達ぶ

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りを体験してもらった。また鎌倉、江ノ島への見学を本学学生と一緒に見学することを通じて相互交流

の機会を持った。本学学生が江南大学学生たち全員を下宿先に招待し、お好み焼きを一緒に作って食べ

る、という想定外の活動も、ある学生の申し出から実施され、学生同士の交流はかなり活発に行なわれ

た。これらの経験が実は翌年 2 月からの本学学生たちの江南大学での SV 実施への受入れ側の積極姿勢を

引き出したと思われる。

帰国後、アンケート調査をしたところ、参加しての感想として、最も多かったのは「日本に学ぶべき

点があると実感した」「実際の日本の姿を知ることができた」「学習意欲が大幅に向上した」を回答する

学生が多かったこと、また満足度を5段階で評価してもらったところ、5と回答した学生が 8 名、4が 1

名という結果になった。改善すべき点を尋ねたところ、期間が短すぎる、もう少し長い時間滞在したか

った、という要望が多く出された。

2 大連理工大学の SS の実施状況

大連理工大学からのSS来訪者は当初 10名の予定であったが、学生の自費負担で 3名追加してほしい、

また学生は日本語科の他に日本語強化クラスからも派遣する予定であるとの意向が先方から表明されて

いた。そこで 13 名の受け入れを予定していたところ、日本学生支援機構から三次募集の呼びかけがあっ

たので、大連理工大学については SS を 10 名から 20 名にすることとし、自費 3 名を含め、合計 23 名が

来訪することとなった。学生の選抜は先方に任せたが、外国語学院日本語科の学生が 14 名、そのうち 3

年生が 4 名、2 年生が 9 名、修士 1 年が 1 名。この他に大連理工大学のいくつかの専攻には日本語強化

クラスがあり、そのクラスの学生は5年制で、最初の一年間は日本語を集中的に学ぶ。この日本語強化

クラスの学生のうち、計算機工学科から 2 名(いずれも 3 年生)、機械工学科から 2 名(2 年生と 3 年生)、

金属材料学科から 5 名(3 年生が 1 名、4 年生が 4 名、うち 3 名が自費)で参加した。女子は 18 名、男

子は 5 名。外国語学院長と日本語科主任を引率教員としてお招きした。経費は江南大学と同様、本学学

長戦略分を活用した。2012 年 1 月 8 日から 1 月 17 日までの 10 日間の滞在であった。

大連理工大学からの SS 来訪者のうち、日本語科の学生が 61%を占めていたが、それぞれの専攻分野

を持ちつつ日本語をも学んでいる、という日本語強化クラスの学生が 39%いるという点で、本学全体と

しての交流を展開するのにふさわしい構成であった。しかも大連市は日本企業が 3000 社もある。日本、

とりわけ神奈川県と密接な関係にある都市であり、いろいろな意味で重視すべき点がある。そこで大連

理工大学の SS 受け入れにあたっては、日本社会の理解を促進するために役立つ日程を立案する以外に、

それぞれの専門分野に応じた本学の授業への聴講や参加を企画した。ただし本学学生にたいする実際の

授業が行なわれている状況のもと、臨時的来訪者に向けた特別授業の開講はなかなか難しかった。幸い

なことに 1 月 11 日には「震災復興の地域経済・政策にかんする日中比較」というテーマでの経済学部の

氏川ゼミの学生の成果発表会、教育人間科学部が総合図書館メディアホールで開催した「横浜で暮らす、

働く」座談講演会への参加、夏の大連理工大学での中国語集中授業に参加した学生が所属する茶道研究

会による茶道お稽古体験などが実施された。翌 12 日には教育人間科学部学生を対象にした村田の授業に

おいて記録映画「嗚呼 満蒙開拓団」の上映を行い、午後にはその映画をめぐってゼミ生との意見交換

をした。日本語科の学生の一部は留学生センターの門倉教授の授業に参加した。材料工学学科の学生向

けには工学部の竹田准教授が研究室紹介をし、計算機工学科、機械工学科の学生は経営学部田名部教授

のビジネスゲーム演習に参加するなど、それぞれの専門分野に見合った交流が行なわれた。さらに夕方、

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横浜地区中国留学生学友会との共催で歓迎会を兼ねた春節晩会が開かれ、横浜地区で学ぶ中国人留学生

と大連理工大学、華東師範大学からの SS 来訪者との交流も行なわれた。1 月 13 日午前には川崎にある

富士通テクノロジーホールの見学、午後は川崎市経済労働局の協力をいただき、「川崎エコ暮らし未来館」、

メガソーラ発電所、「アジア起業家村推進機構」の見学を行なった。この他に 1 月 9 日にはNHK、明治

神宮、東京駅、皇居前などの東京見学、1 月 14 日には横浜中華街、横浜港見学、15 日には国立科学博物

館の見学を行なった。これらの見学活動には本学で学ぶ中国人留学生や昨年 9 月の大連理工大学での集

中授業に参加した学生など多くの本学学生が積極的に協力してくれた。川崎市や富士通からの協力をい

ただいたことも特記し感謝すべきことである。

帰国後、アンケート調査をしたところ、参加しての感想として、最も多かったのは「実際の日本の姿

を知ることができた」「学習意欲が大幅に向上した」「いい海外体験をした」「日本に学ぶべき点があると

実感した」を回答する学生が多かったこと、また満足度を5段階で評価してもらったところ、21 の回答

のうち、5と回答した学生が 14 名、4が 7 名という結果になった。改善すべき点を尋ねたところ、期間

が短すぎる、日本の学生と交流するチャンスを多くしたほうがよい、という要望が多く出された。

3 東北大学の SS の実施状況

東北大学の SS 来訪者は当初 10 名の予定であったが、江南大学で 1 名欠員が生じた分を東北大学に回

した結果、11 名となった。派遣する学生の選抜は先方に任せたが、われわれが予想していたものとはか

なり異なった訪問団の構成になっていた。日本語を学んでいる学生は 1 人のみで、しかも学生の専攻分

野は各人各様であった。本学学長戦略分の経費を利用して 2 名を引率者として招請したが、教員ではな

く職員が来日した。事前打合せとして 3 月と 7 月に東北大学まで出向き、SS&SV 事業の概要と当方が意

図していることを伝えたつもりだったが、必ずしもきちんと理解されていなかったようである。期間は 1

月 19 日から 1 月 28 日までの 10 日間。

来日した翌日、1 月 20 日に横浜国立大学国際戦略推進室が主催するシンポジウム「アウェーで戦える

人になれ-今、あえて留学のすすめ-」に参加してもらった。そこには今年度の SS&SV で9月に大連

理工大学での3週間の中国語集中授業プロジェクトに参加した山田瑶さんのプレゼンテーションもあっ

た。21 日にはNHK、明治神宮、東京駅、皇居前などの東京見学、22 日は中国では除夕(大晦日)にあた

るので、村田の家にお出でいただき、みんなで餃子を作って食べて懇談することで、異国でも楽しく新

年を迎えられるよう配慮した。今年は 1 月 23 日が春節。この日に川崎市産業振興会館で開かれる“かわ

さき・かながわグローバルセミナー2012 シンポジウム”アジア起業家村 2012 新年交流会併催に参加し

た。川崎市と東北大学の所在する遼寧省瀋陽市とは友好都市関係にあり、川崎市は羽田空港に近接する

同市臨海部にアジアとの架け橋になる先進的企業を呼び込もう、立ち上げさせようと「アジア起業家村

推進機構」を支援するなど積極的な姿勢を示していた。24 日には横浜中華街やみなとみらい地区の見学

を行なったが、案内役を務めるはずであった村田が過労のため体調を崩したので、休養をとることにし、

24 日、27 日は SS 訪問団に独力で動いていただいた。この点で東北大学の引率役として来日していただ

いた魏俊霞さんはとても有能で、日本における SS 訪日団の見学活動を安心して任せることができた。25

日には横浜国立大学で村田が日本研究に役立つ公式 Web サイトを紹介する特別授業を行なった。26 日に

は川崎市産業労働局の協力のもと、川崎区にあるゼロ・エミッション工業団地内の三栄レギュレータ(古

紙再生企業)と東芝科学館見学の見学を行なった。

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東北大学の SS は横浜国立大学での交流活動をあまり展開できなかった。それにはいくつかの要因があ

る。1月下旬は学期末であり、本学の学生、教員いずれもとても忙しかった。しかも直前に大連理工大

学の SS 代表団の来訪があり、いささか交流疲れが出ていた。東北大学の代表団のメンバーも各人の専攻

がバラバラであり、まとまった交流活動の実施は難しかった。帰国後のアンケート調査でも、もっと日

本の学生との交流の機会があればよかった、という意見が出されている。それを実現するためにはどう

すればよいか、具体的に考える必要がある。東北大学の学生の参加しての感想として多かったものは「日

本に学ぶべき点があると実感した」「日本に対する見方が大きく変わった」がとりわけ多く、「日本に留

学して勉強したくなった」と2名の学生が回答している。満足度を5段階で評価してもらったところ、

10 人の回答のうち、5は 5 人、4は 4 人、3が 1 人ということであった。

3 アンケート調査結果

SS、SV いずれもプログラム実施後に「学習成果に関するレポート」の提出とともに、アンケート調査

を行なった。以下にアンケートの結果を紹介する。まずは SS(ショートステイ)のアンケートから紹介

する。

江南大学、大連理工大学、東北大学のショートステイについて共通した質問事項でのアンケート調査

を実施した。

第一に「今回のプログラムに応募した動機について」、優先順位をつけて3つを回答するよう求めた。

ここでは 1位の回答には 3倍、2位の回答には 2倍、3位はそのままの値を合計し、回答結果をより強調

した形での数値にして紹介する。優先順位をつけた設問についてはすべて同様の処理をして紹介する。

プログラム応募の動機 江南大学 大連理工大学 東北大学 三大学合計

実際の日本を自分の眼で見たい 32 48 19 99

日本の社会や文化に接してみたい 4 22 19 45

語学力を強化したい 7 22 1 30

日本の学生と交流したい 5 11 9 25

中国と日本との共通点・相違点を知りたい 1 12 12 25

留学の可能性を探りたい 3 15 6 24

経済的負担が少ない 0 2 0 2

大学からの呼びかけがあったので 0 0 0 0

「実際の日本を自分の眼で見たい」という動機がとりわけ多く、ついで「日本の社会や文化に接して

見たい」が続き、「語学力を強化したい」がそれに続く結果となっている。

第二の質問は実際に参加して感じたことであり、やはり優先順位をつけて3つ選択してもらっている。

実際に参加して感じたこと 江南大学 大連理工大学 東北大学 三大学合計

実際の日本の姿を知ることができた 20 36 10 66

日本に学ぶべき点があると実感した 14 14 15 43

学習意欲が大幅に向上した 6 18 5 29

いい海外体験をした 4 16 7 27

日本に対する見方が大きく変わった 3 3 15 21

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もっと世界を知ろうという気になった 2 12 6 20

日本に留学して勉強したくなった 5 8 4 17

日本の学生と交流ができて良かった 0 15 1 16

語学力が格段と向上した 0 8 1 9

日本の学生と友人になれた 0 2 0 2

期待していたほどの成果はなかった 0 0 0 0

実際に参加して感じたことの回答で興味深いことは、「実際の日本の姿を知ることができた」という認

識がもっとも高い値を示す江南大学、大連理工大学の反応にたいし、東北大学では「日本に学ぶべき点

があると実感した」「日本に対する見方が大きく変わった」がもっとも高い値を示しているように、日本

語や日本社会についての基礎知識をそれなりに備えている大学と必ずしもそうとは思えない大学の学生

との間では「衝撃」の度合いがかなり異なるものと思われる。

「今後同様なプログラムがあったら参加したいですか」という設問にたいしての回答は以下の通りで

ある。

今後同様なプログラムがあれば参加したいですか 江南大学 大連理工大学 東北大学 三大学合計

見識を広めることになるので参加したい 23 40 20 83

日本への関心が高まり、もっと多くの所に行きたい 10 21 14 45

もう少し長い期間の訪問・交流活動に参加したい 11 13 6 30

日本だけでなく、他の国にも行ってみたい 1 17 11 29

将来は留学したい 2 16 0 18

語学力向上に役立つので参加したい 3 10 3 16

経済的支援があれば参加したい 2 14 0 16

奨学金支援がない場合でも、魅力的なプログラムで

あれば参加したい 2 1 12 15

それほど参加したいとは思わない 0 0 0 0

横浜国立大学生の中国へのショートビジットについても類似したアンケート調査をした。

まずプログラムへの応募動機について

プログラムへの応募動機 夏三週間 春三週間 春四週間 合計

中国語の語学力を強化したい 32 34 28 94

実際の中国を自分の眼で見たい 25 12 19 56

夏休みに海外体験をしたい 9 11 11 31

中国に行って学べるから 8 9 12 29

経済的負担が少ない 1 16 8 25

中国に興味・関心があるので 14 1 5 20

中国の学生と交流したい 0 7 7 14

集中授業で単位が取得できるから 13 13

中国からの SS の回答と顕著に異なる点は「語学力の強化」が応募動機のトップを占めていることであ

る。これは滞在期間が SS は 10 日以内と短かったのに、SV に関しては 3 週間ないし 4 週間と比較的長か

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ったこと、語学力の向上を学習目標として掲げていたことが大きく影響している。

では実際に参加して感じたことはどうであったか。

実際に参加して感じたこと 夏三週間 春三週間 春四週間 合計

学習意欲が大幅に向上した 29 20 20 69

中国に対する見方が大きく変わった 26 11 15 52

もっと世界を知ろうという気になった 12 11 10 33

語学力が格段と向上した 9 14 9 32

中国の学生と友人になれた 9 10 13 32

中国の学生と交流ができた 2 9 12 23

実際の中国の姿を知ることができた 7 3 5 15

いい海外体験をした 2 4 5 11

横国大生間の交流ができた 6 0 1 7

期待していたほどの成果はなかった 0 5 0 5

「学習意欲が大幅に向上した」が一番多く、ついで「中国に対する見方が大きく変わった」「もっと世

界を知ろうという気になった」と続き、「語学力が格段に向上した」は4位である。「学習成果に関する

レポート」においても学生たちは異口同音に視野の拡大、学習意欲の向上が見られたことを述べている。

今後のプログラムへの参加の意向については以下のような回答であった。

今後同様なプログラムがあれば参加したいですか 夏三週間 春三週間 春四週間 合計

現地での集中的学習は語学力向上に役立つので参加したい 28 29 26 83

中国だけでなく他の国にも行ってみたい 23 17 19 59

見識を広めることになるので参加したい 19 12 14 45

中国への関心が高まりもっと多くの所に行ってみたくなった 12 10 15 37

将来は留学したい 15 6 6 27

今回のような経済的支援があれば参加したい 4 11 8 23

奨学金支援がない場合でも魅力的なプログラムであれば参加したい 1 2 2 5

語学学習重視ではなく交流や見学に重点を置くのであれば参加したい 0 0 0 0

それほど参加したいとは思わない 0 0 0 0

学習活動が単位として認定されるのであれば参加したい 0 0 0 0

現地での集中学習の意義を体験したこと、中国だけでなく他の国にも行ってみたい、と回答する学生

たちが多いことは、昨今話題になっている学生たちの「内向き志向」という傾向も、現実に外の世界に

触れる機会を提供すれば大きく変わる可能性があることをはっきり示している。将来は留学したいとい

う意向を示す学生も少なくない。キッカケ作りが大切なのであろう。その点で SS&SV プログラムは大変

有効であると思われる。

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相互理解促進のための短期集中学習の勧め

村田 忠禧

中国の存在感が高まる一方、日本の政治的、経済的地盤の沈下傾向が指摘されて久しい。将来を担う

若者の内向き志向はグローバル化時代にふさわしくない。中国語履修者の増大は、必ずしも中国への留

学者数の増大に結びついていない。それどころか中国語を選択しながら中国に関心を抱かない学生が増

える一方である。しかしこのような情況を作り出している要因は学生たちにあるわけではない。何のた

めに外国語、とりわけ中国語を学ぶのか、中国語を学ぶことの大切さを自覚させる機会を提供せず、た

だ卒業に必要として単位で学生を縛りつける日本の大学の外国語教育のあり方そのものに問題がある。

私は大学で中国語を教えるなかで、どうしたら学生たちに中国への関心を高めさせることができるか、

自分なりの試行錯誤を重ねてきた。現行の教育体制には手をつけない改善策に過ぎないが、一つの教育

スタイルを見つけ出すことができた。それは通常の大学での学習と現地中国での短期集中的学習とを循

環的に行なうもので、現実の中国を体験する機会を提供することを通して、学ぶ意欲を喚起し、発展さ

せる方法である。以下にその概要を紹介する。

対象者は初級学習者、つまり基本的に一年生とする。なにごとも 初が肝心である。学生交流と社会

見学に重点を置いた研修旅行も実施したが、語学学習に重点を置いたほうが発展性、将来性がある。学

生自身に問い合わせてみても、語学力レベルアップを望む意見のほうが圧倒的に多かった。それだけ学

びたいという意欲ある学生たちがいるのだ。実際には初級学習者向けプログラムとともに、中級レベル

の学生をも対象にした集中授業も並行して実施している。しかしそちらは自主的学習と位置づけている。

そこまで手が回らない、というのが正直なところ。初級については集中授業の形式をとり、夏休みの3

週間、中国の大学で午前中みっちり中国人教師に教えてもらい、 後に本学の教員が試験を実施する。

及第点に達した学生は秋学期から、通常なら翌年度春学期に学ぶ中級の履修が可能となる。つまり夏休

みを含む半期で一年分の授業を受講できるという学習スタイルである。

春休みにもやはり3週間、中国の大学での集中的学習を実施する。実施校は夏休みとは異なる大学と

し、中国の多様さを実感してもらう。また春の集中授業は履修単位にはカウントしない。夏の集中授業

を受けた学生で引き続き春の集中授業にも参加するのもいるし、初参加のも、また三回目以上になるリ

ピーターもいる。したがって学習レベルに応じたクラスを複数開設してもらうことになる。いずれにせ

よ日本の大学での通常の学習と現地中国での集中的学習の組み合わせは非常に効果的である。

この中国語集中学習プログラムにはもう一つの特徴がある。それは中国側実施協力校には日本語科が

ある大学を選んでいることだ。午前中は中国人教員から中国語を学ぶとともに、午後には日本語を学ぶ

中国人学生との相互学習、さらには共通テーマ(たとえば自分の故郷)を分かりやすく紹介しあう交流

活動を行なっている。中国側にとっても日本の若者がまとまってやってきて交流できることは歓迎すべ

きことなのである。企業見学をも含む社会見学を行い、実際の中国を自分自身の眼で体験してもらう。

彼らの中国イメージが大きく変わることは間違いなしである。われわれ日本側教員も、学生の中国滞在

中に順繰りに訪中し、学生たちの学習情況を把握するとともに、中国側の授業への協力や講演を行なう。

学生とともに教員の相互交流をも実施しているのである。

今年度から新しい制度として、日本学生支援機構による「留学生交流支援制度(ショートステイ・シ

ョートビジット)」がスタートした。1 カ月以内の相互の学生交流活動に参加する学生に 8 万円の奨学金

が支給される。「日本と中国とのハイブリッド型教育による人材育成プログラム」を申請し、認められ、

実施中である。この支援制度でとりわけ歓迎すべきことは、これまでは日本側の派遣のみであったのが、

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中国側からの派遣受入れが可能になったことである。このためわれわれがお世話になる大学の学生たち

を、日本に招いてお世話することができる。中国からの来日学生にたいしては、語学学習よりも日本社

会を体験することを重視したプログラムを実施している。これにより相互交流の良性循環現象が発生し

つつある。しかも中国側教員に引率の役割を担ってもらうことで、教員研修にもなるし、今後の双方の

教育・研究面での大学間の協力関係が発展しつつある。

解決すべき課題もいろいろある。宿泊費や渡航費の敷居が低くなれば、奨学金に依存せず、それぞれ

自力による交流ができるようになるだろう。そのほうがはるかに持続的で発展的な交流が可能になるだ

ろう。この面で政府や企業の積極的措置・支援を呼びかけたい。

2011 年 11 月 28 日執筆、同学社発行『TONGXUE』43 号掲載

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中国研修(中級班)の思い出

横浜国立大学大学教育総合センター 新沼 雅代

2011 年 9 月 7 日夜、本学の学生七名と私は、列車で長春へ移動するため、ハルビン駅へ向った。帰宅

のラッシュアワーもすでに過ぎ、空車のタクシーが何台もホテルの前を通過していった。私たち四人が

乗ったタクシーは、順調に駅に着いた。途中、少し雨が降りだしたのに気づいたが、どうせ長春に行く

間に止むだろうと思っていた。私たちが駅に着いたとたん、雨はにわかに豪雨になった。道路はあっと

いう間に冠水し、すさまじく大きな雷が鳴りだし、稲光が走った。

後続の四人は一向に到着しなかった。列車の発車時刻がどんどん近づいてきていた。ある学生が、残

りの学生の携帯にメールしてみると、ひどい雨のせいでタクシーにことごとく乗車拒否され、今はひと

まずホテルの玄関に戻って避難しているという。私は、ホテルのフロントに英語で事情を話し、助けを

求めるよう学生たちに伝えた。この時、「中国語を勉強しに来ていて結局英語か…。中国語で、と言うべ

きだったかな。」と一瞬考えたが、そんなことは今はどうでもよいことだと思い直し、私は、ホテルのフ

ロントに電話して彼らを助けてくれるように頼んだ。

彼らの到着を待つ一方で、予約した列車に乗れなかった場合を考えた。その場合は、まず今夜泊まる

ホテルを確保する必要があった。前日に泊まったホテルにちょうど空室があればよいが、無い場合はど

うしようか。今後の予定もずれてしまうし、切符も買い直さなければならない。中国では高速鉄道の脱

線事故のあと、普通の列車の切符が買いにくくなっていた。ハルビンと長春はそれほど遠くなく、便も

多いので切符は買えるだろうが、横と後ろからくる割り込みを、肩と背中で必死に阻止しながら、あの

長蛇の列にもう一度並ぶことを想像すると、なんとしても予約した今夜の列車に乗らなければならない

と思った。

腕時計を見ると、列車の出発時刻の十分前だった。その時ようやく残りの四人が駅に着いた。誰かが

操作しているのかと思うほど、雨の降り方が急に弱くなった。私は彼らの到着に安堵するとともに、大

変な思いをさせてしまって申し訳ないと思った。あとで分かったことだが、私の時計は五分ほど遅れて

いた。

中国の駅は、入口で荷物のエックス線検査をする。駅構内も広く、通常は二階の「候车室(駅の待合

室)」で改札が始まるのを待つ。駅の中で係員に切符を見せ、発車時刻が迫っていることを伝えると、専

用の近道をどんどん通してくれた。私たちは拍子抜けするくらいあっという間にホームに出た。中国の

列車は、乗降口とホームの間に大きな段差がある場合が多く、乗降時にはそこに階段がつけられる。私

たちが乗り込もうとしたときには、その階段はすでに折りたたまれていた。係員が階段を広げ直してく

れ、私たちは、重いスーツケースを抱えて、必死にその階段を上って車内に入った。どうにか発車時刻

に間に合った。

車中はすでに人いきれでむっとしていた。一人の女性が、私たちが予約した席に座わってインスタン

トラーメンを食べていた。彼女らは三人組みだが、一人だけ別の車両になってしまったので、席をひと

つ替わってほしいという。中国の列車では、このような座席の交渉がごく普通に行われる。私たちは八

人であることを彼女に告げたが、彼女は粘ってどこうとはしなかった。もしも私が一人だったらいつも

のように、切符を相手の顔の前に突き出し、座席番号部分を見せ、「这是我的座位。我是从日本来的。我

是外国人。(これは私の席です。私は日本から来ました。私は外国人です。)」と言って、「中国人は外国

から来た者に対してとても親切だ」という面にあえて訴え、座席交渉を断念してもらおうと試みる。し

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かし、この時私は一人ではなかった。

中国では何事にも交渉がつきものである。私はこれまでの経験から、交渉には、道理や常識を論拠に

するだけではなく、熱意を見せることと周りを味方に付けることが重要だと思っている。他の乗客たち

は私たちに注目していた。彼らの好奇心は車中の退屈さによって余計に掻き立てられていたように感じ

た。私は、彼女に向かって、私は日本の大学の教員で学生を引率して中国に来ている、私は彼らに責任

がある、私以外は中国語が分からないので、安全のためここにみんなで一緒に座らなければならない、

あなたたちの席が分かれてしまうことは私たちには関係のないことだとはっきり伝えた。私たちの席に

座っていたその女性は、しぶしぶ立ち上がった。私の横を通り過ぎるとき、私は彼女に「不好意思。(す

みませんね)」と言ってみたが、彼女は「哼!(ふん!)」と答えただけだった。私は少し強く言い過ぎ

てしまったと思った。

私たちはやっと落ち着くことができ、学生たちの表情も和らいだ。私の隣には、乗車券しか買ってい

ないと言う男性が、平気な顔をして座っていた。そして、やたらと親しげに話しかけてきた。このよう

なことは中国では普通である。中国の列車文化では、居合わせた者同士がどうせなら車中の時間を楽し

く過ごそうとするところがある。私は少し眠りたかったが、目をゆっくり閉じていることは許されなか

った。そんな私の様子を、斜め向かいに座った本学の男子学生がにやにや見ていた。その表情から「ふ

ーん、先生って実は結構中国語できるんだ。」と思っているように見えた(本当は全然違うことを考えて

いたのかもしれないが)。「次が長春駅ですよ。」と一人の乗客が親切に教えてくれた。学生が網棚に上げ

た荷物を降ろすのを手伝ってくれる者もいた。そうこうしているうちに、長春駅に着いた。降り口に向

かう途中、通路の左右の席から、笑顔で話しかけてきてくれる女性たちに、私はとにかく「再见(さよ

うなら)、再见!」と答えながら進んだ。

ハルビンのホテルを出発し、長春に着くまで四時間弱かかった。この短い時間に、異文化を認識する

場面が何回もあった。研修を通じ、学生たちは中国の人々や社会・文化に自分なりの解釈をそれぞれが

持ったはずである。その解釈には好き嫌い、良い悪いといった主観的な判断が影響していると思う。し

かし、異文化理解は、好き嫌い、良い悪いと決めてしまう前に、まず「自分が属する社会とは異なる価

値や常識で成っている社会があり、その社会、文化と、自分が属する社会、文化は、優劣の関係になく、

両者は同等である」ことに気づき、異文化に対して客観的な視点を持つようになることから始まる、と

あらためて思った。研修での色々な経験を通じて、学生たちが持ち帰った思いは様々だと思う。その思

いが、いつどのように彼らにおいて具現するのか、どのように彼らの人生をより良いものにしていくか、

今は知る由もない。しかし、今回の研修が彼らにとって特別な夏休みになったことは間違いないと思う。

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異文化体験に根ざした日本認識

大連理工大學外国語学院日本語学科長 孟 慶栄

昨今、世界のグローバル化が進む一方で、異文化体験は外国語学習者にはより身近なものとなり、

また不可欠な一環となってきた。毎年異国へ言語を含め異文化体験をする学生も増えてきている。こん

な現状の本、大連理工大學は毎年国外への留学生派遣は短期留学を含め 200 人若で、また増加傾向にあ

る。しかし、5万人あまりいる在校生(大学院生含む)にしては、その比例は少なすぎる。その上外国

語学院日本語学科への割り当てはなお更少ない。したがって 2008 年以降日本語学科では日本の大学との

連携を通して学生の留学派遣を模索してきた。主に連携協定のある日本の大学へは短期留学のみで、単

位交換を含む15名前後(8%)にとどまっている。派遣に当たる一番の難点はやはり留学の諸費用に

ある。同じ要因で長期滞在(1年またそれ以上の滞在)の留学生派遣はまだない。

こんな状況の中、2011 年 9 月 11 日から 10 月 2 日まで、横浜国立大学人間科学部(村田忠禧)教授

申請、日本学生国際支援機構支援の SS プログラムその一部が大連理工大学の日本語学科で実施され、横

浜国立大の中国語履修科目の計25名の学生(内 SS 奨学金支援17名)が理工大学で三週間にわたる語

学の強化、実習、企業見学、歴史遺跡訪問など、生の中国社会を体験することにより、日中間の相互補

完型外国語教育を試み始めていた。続いて 2012 年 1 月 8 日から 17 日までプログラムの第二弾が横浜国

立大で実施され、大連理工大學の日本専攻コース及び機械専攻日本語強化コース、計算機専攻日本語強

化コース、材料専攻日本語強化コースの計 20 名の学生が SS の奨学金支援で、短期滞在型の日本の大學、

社会文化の体験学習が実現できた。これで中国語また日本語短期派遣留学(相互)の実施が一循環終え

た段階になった。

大連理工大學でのプログラム実施後、双方の参加学生を対象にアンケート調査、レポート提出、座談

会の開催など結果報告では、語学の効果ばかりではなく、異文化理解の促進、相互信頼関係の強化、及

び後続交流へのつながり等かなり有意義な内容であることが確認された。よって、大連理工大學でも学

内研究プロジェクト―日本語人材育成研究プログラムも目下申請中である。また、双方の教師が今まで

のプロジェクト実施を通して、ハイブリード型外国語人材育成モデルの模索を元に、その成果の一部報

告を含めて、2012 年名古屋大学で開催予定の世界日本語教育大会に向けて連名発表の形で報告を行う予

定である。これを機に相互補完型外国語人材育成の成果をより広く応用される事を期待するねらいにあ

る。

これまで大連理工大學日本語学科では、毎年夏から秋にかけて日本からの学生との交流はいくつか

の大学との間で盛んに行われてきた。しかし期間的に短い(1回―3回)のもあって、活動内容という

と食事会や講演会、買い物案内にとどまることが多く、双方の学生同士にとって後続の交流になかなか

続かないものがあった。というのも当たり前といえば当たり前であり、後続へのつながりはそれなりの

時間や交流の内容にも関係があると思われる。

2011 年夏に行った横浜国大との交流は、今まで担当されてきた交流とは違う形のものであった。横

浜国大の学生は大連理工大の学生と、それぞれ日本語と中国語授業の後に毎日交流の内容が組まれてい

た。同じ教室で授業参加したり、共に食堂で食事したり、体育館でボーリングやビリヤードをやったり、

一緒に企業や文化施設を見学したり、週末はバスで一緒に買い物や出かけたりなど、こんな日常的な付

き合いに成り立った上、帰国後も両校の学生同士はメールやチャットなど後続の交流も続いてきて、何

よりもの収穫ではなかろうかと思われる。人間って気持ちの通じ合いが何より大切なこと実感させた。

そして今年の 1月 8日から 17日までの十日間は横浜国大へ理工大の学生が主として日本の社会体験を

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行われた。経済的負担を少なくするため、期間的にそう長くないが、日本語学科や日本語強化コースの

学生には集中的に日本の社会体験をメインにしたプログラムは、かなり充実された内容であった。まず

国大では、それぞれ学生たちの専攻に合わせた授業参加が実現できた。将来日本留学を考える学生にと

っては切望な内容であった。ほかに国大卒業生による社会人公開講座では、新聞記者の仕事の大変さ、

公務員になるための心の準備の話、実体験に基づく内容は、普段勉強漬けの理工大生にとって心一新さ

せるものであった。しかし、こころを強く打たれたのは、「満蒙開拓団」の DVD 鑑賞であった。中国に多

大な災難をもたらされたあの戦争、日本語教育を従事するわれわれにとってはもっとも顧みたくない一

ページである。しかし、何時までもこの日中間の歴史問題を回避してはいられなく、歴史の事実に直視

し、その上お互いに、真の気持ちを語り合うことが何よりも大事なことであり、またこれに直面する上

こそ真の信頼関係が生まれるではないかと考えさせられた。学生たち、乃至われわれ引率教員にとって

も、日本人の真挚な気持ちを感じさせるものであった。また戦争という非残な結果は被害者だけではな

く、加害者にとっても痛い歴史であったこと、実感させられた。日本のもう一つの側面を窺わせた短期

交流であった。

企業見学や社会文化施設の見学、ほかに満員電車の経験も多感の若い学生たちには教科書から習うも

のよりも、実に豊かなものとなったのは言うまでもなかろう。

プログラム実施の村田忠禧教授をはじめ、川崎市経済労働局の増田さん、佐藤さん、NPO アジア起業家

村の牟田口さん、北さん、大和総研の後藤あす美さん、またいろいろ協力してくれた横浜国大の先生、

交流参加の中国語履修コースの学生たち、このプログラムを提供してくれた日本学生支援機構にも、こ

の場を借りて一言感謝の意を述べたい。