ストレスチェック制度と実務対応 - tk-sr.jp

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多田国際社会保険労務士事務所

ストレスチェック制度と実務対応

目次

01. はじめに

02. STEP1 実施前の準備

03. STEP2 ストレスチェックの実施

04. STEP3 ストレスチェック後の面接指導等

05. STEP 4 集団分析

06. その他留意事項

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01. はじめに

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ストレスチェック制度の導入背景①

ストレスチェック制度が導入された背景はなんでしょうか?年々精神障害の労災認定件数が増加していることが主要因にあげられます。また、中でも自殺で労災認定がなされた件数も増えてきています。平成26年度「過労死等の労災補償状況」を公表

平成22年度に比べると約30%の増加

厚生労働省 平成26年度「過労死等の労災補償状況」

増加する精神障害の労災認定

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2014年11月に施行された過労死等防止対策推進法を推進するための大綱案が2015年6月に明

らかになり、 「平成29年までにメンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合を80%以上にするという具体的な数値目標が設定されました。

このような背景からストレスチェックの義務化が進められることとなりました。

過労死等防止対策大綱案

ストレスチェック制度の導入背景②

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ストレスチェック制度の導入背景③

厚生労働省によると自殺やうつ病による経済的損失は、年間2兆7千億円に上るとされています。国としては、こうしたコストを削減したいということが大きい理由であると考えられます。

経済的損失の大きさ

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ストレスチェック制度の創設

平成26年6月25日に公布された労働安全衛生法の一部を改正する法律により、ストレスチェックと面接指導の実施等を義務づける制度が創設されました。なお、このストレスチェックは2015年12月1日の法施行後1年以内(2016年11月30日まで)に実施する義務があります。

労働安全衛生法 第66条10(心理的な負担の程度を把握するための検査等)第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

2 事業者は、前項の規定により行う検査を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該検査を行つた医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。

3 事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であつて、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省

令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。4 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。

5 事業者は、第三項の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。6 事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の

変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。

事業者のストレスチェック実施義務

検査結果の取扱に関する義務

医師による面接指導の実施

労働者の実情に応じた措置の実施

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ストレスチェック制度の位置づけ

ストレスチェック制度は、どのような位置づけの中にあるかというとメンタルヘルス対策の中の一次予防、つまりメンタルヘルス不調の発症予防の取り組みにあたります。労働者自身のストレスへの気づきを促し、ストレスの原因となる職場環境の改善につなげるということを主目的にしています。うつ病罹患者を発見するためのスクリーニング検査ではないという認識が必要です。

◆メンタルヘルス対策の考え方

一次予防 二次予防 三次予防

発症予防早期発見・早期治療

回復、職場復帰

・セルフケア(ストレスへの気づき)・教育研修・職場環境の把握と改善

・メンタルヘルス不調への気づきと対応

・職場復帰における支援

ストレスチェック制度の創設

一次予防と二次予防の間には大きな差があります!

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ストレスチェックの概要ストレスチェックは、労働者50人以上の事業場の事業者が常時使用する労働者に対して、1年に1回、医師保健師等による心理的な負担の程度を把握するために一定の項目を含む検査(ストレスチェック)のことです。但し、労働者50人未満の事業者については当分の間努力義務とされています。

◆常時使用する労働者とは

①及び②の両方を満たす者

①期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む)

②その者の1週間の労働時間数が通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

◆一定の項目とは

1. 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目

2. 当該労働者の心理的な負担によ

る心身の自覚症状に関する項目

3. 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

つまり?

定期健康診断の対象の者と同じ要件

この50人には、常態として使用しているかどうかで判断するため、週1回しか出勤していないようなアルバイトでも継続雇用し、常態として使用している状態であれば、カウントする必要があります。

◆労働者50人以上とは

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ストレスチェックと定期健康診断の違い

項目 ストレスチェック 定期健康診断

対象者 ①及び②を両方満たす者

①期間の定めのない労働契約により使用される者②その者の1週間の労働時間数が通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

頻度 1年毎に1回

実施費用負担 会社負担

賃金支払い義務 労使で協議し決定(賃金支給することが望ましい)

実施者 医師、保健師等 医師に限定

労働者の受検義務 任意 義務

会社指定医師以外での受検

認められていない 認められている

事業者の結果の把握 労働者の同意なく結果提供を求めることができない

把握義務有

ストレスチェックと定期健康診断には、共通点も多いのですが相違点も多くあります。下表に比較表を載せましたのでその違いはきちんと理解しておきましょう。

◆ストレスチェックと定期健康診断の比較表

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ストレスチェックに関わる罰則

条文 罰則の対象となる行為 罰則内容

第100条・120条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長、労働基準監督官等に報告すべき事項を報告しなかった場合、虚偽の報告をした場合、又は出頭しなかった場合

50万円以下の罰金

第104条・119条 ストレスチェックの実施事務従事者が実施の事務に従事することによって知り得た労働者の秘密を漏えいした場合

6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金

第66条の10、省令52条の13、18、第103条、120条

労働者の同意を得てストレスチェックの結果を受領した場合、その結果を5年間保存しなかった場合、また面接指導の結果の記録を5年間保存しなかった場合

50万円以下の罰金

ストレスチェックを実施しなかったことをもって、罰則が適用されることはありませんが、下記のように是正指導が入った場合に報告しなかった場合や秘密漏えい、また記録保存に関しての罰則があります。

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事業主がやらなければならないこと

STEP 1

実施前の準備

STEP 2

ストレスチェックの実施

STEP 4集団分析

努力義務

医師・保健師等がストレスチェッ

クを実施

医師・保健師等労働者

結果を通知

①面接の申出

労働者の同意を得て 通知

会社

②面接実施依頼

医師(産業医等)

③面接実施

④意見聴取

STEP 1実施前の準備

①ストレスチェックの方針の策定②衛生委員会で調査審議③実施体制の整備④ストレスチェック規程の策定

STEP 2 ストレスチェックの実施

STEP 3 ストレスチェック後の面接指導等

⑤就業上の必要措置

⑥集団分析の実施依頼

STEP 4 集団分析

STEP 3面接指導の実施 12

02. STEP1 実施前の準備

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STEP 1 実施前の準備 ①基本方針の策定

ストレスチェックを行う前に、会社として「メンタルヘルス不調の未然防止のためにストレスチェック制度を実施する」旨の方針を示すことが指針にて求められています。

方針を「表明」することが求められており必ずしも基本方針として明文化することまでは法律では求められていませんが、基本方針として文書化しておくことをお勧めいたします。

◆基本方針に定める内容の例 ◆基本方針 策定例

# 内容

1 ストレスチェック制度導入の目的- メンタルヘルス不調になることを未然に防止することを目的とする旨を明示

2 規程の策定・周知- 詳細は規程として定める旨を明示

3 関係法令等の遵守- 安全衛生法等を遵守する旨を明示

4 個人情報保護に関する措置- ストレスチェックに関わる個人情報について適切な取扱をする旨を明示

5 不利益取り扱いの禁止- ストレスチェックに関しての不利益取り扱いの禁止を明示 14

STEP 1 実施前の準備 ②衛生委員会で調査審議

指針では、衛生委員会において、ストレスチェック制度の実施方法等について調査審議を行い、その結果を踏まえ、事業者がその事業場におけるストレスチェック制度の実施方法等を規程として定めることとされています。

# 衛生委員会等で調査審議すべき事項 詳細

1 ストレスチェック制度の目的に係る周知方法 「ストレスチェック制度はメンタルヘルス不調者の発見ではなく、その未然防止を目的としている」旨の周知方法

2 ストレスチェック制度の実施体制 実施者、実施事務従事者の選任等

3 ストレスチェック制度の実施方法 ストレスチェックに用いる調査票、高ストレス者を選定する基準、実施時期、頻度、面接指導の申出の方法

4 ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析方法 集団ごとの集計・分析の手法、集団の範囲の決定

5 ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い 事業者による労働者のストレスチェック受検の有無の把握方法、受検の勧奨方法

6 ストレスチェック結果の記録の保存方法 記録保存の実施事務従事者の選任、セキュリティーの確保等

7 ストレスチェック・面談指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法

ストレスチェック結果の本人への通知方法、実施者による面接指導の申出の勧奨方法、本人からの提供の同意の取得方法、ストレスチェック結果の共有範囲

8 ストレスチェック・面談指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法

情報の開示等の手続き

9 ストレスチェック・面談指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処理方法

苦情の処理窓口、外部に置く場合には内部の産業保健スタッフとの連携体制

10 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること 労働者へのストレスチェック制度の受検の意義の周知方法

11 労働者に対する不利益な取扱いの防止 労働者に対して不利益な取扱いとして禁止される行為の周知方法

法定の要件をクリアするよう事前に

確認※従来から行っている企業は特に注意!

個人情報を適切に保護できるような体制の構築

結果によって不利益の無いように 15

※参考※ 衛生委員会 設置概要

会社は、衛生に関して労働者からの意見をまとめ、事業者に対して述べるために衛生委員会を設置しなければなりません。ストレスチェックに関する事項は、労働安全衛生規則22条の「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」に含まれ、指針で衛生委員会での付議事項に含める旨明示されています。

衛生委員会の設置概要

設置すべき事業場と常時使用する労働者数

全業種、常時50人以上

構成委員 ①総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者(=議長)②衛生管理者③産業医④衛生に関する経験のある労働者⑤作業環境測定士(任意)

その他 ①毎月1回以上開催

②議事の記録を3年間保存

③委員会開催の都度、遅滞なく議事の概要を労働者に周知

全業種、常時使用する労働者50人以上で1人以上設置義務あり!

衛生委員会の付議事項(労働安全衛生規則22条より一部抜粋)

1 衛生に関する規程の作成に関すること。

2 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること。

3 衛生教育の実施計画の作成に関すること。

4 定期健康診断等の医師の診断、診察又は処置の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること

5 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。

6 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。

7 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。

ストレスチェックの場合は規程により周知を行う

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STEP 1 実施前の準備 ③実施体制の整備

指針では、ストレスチェック制度の実施者、実務担当者等を選定する等実施体制を整備することが望

ましいとされています。なお、通達により、人事権(解雇権)を有する者が従事できない業務とできる業務があり、従業員の健康情報を取り扱うかどうかで区別されています。

◆ストレスチェック制度の実施体制の例

①実施計画の策定②ストレスチェックの実施日時・実施場所等の産業医等の実施者との調整③委託する場合の委託の契約の連絡調整④ストレスチェックの日時等の労働者への通知⑤調査票の配布⑥ストレスチェックを受けていない労働者に対する受検の勧奨

衛生管理者(又は、メンタルヘルス推進担当者)

②産業医等のストレスチェック実施者

人事課長

人事課メンバー

③実施事務従事者人事部長

①調査票の回収、データ入力等の事務②結果の封入等、労働者に通知するまでの事務③労働者への通知事務④面接指導の申出勧奨⑤集団分析の事務

人事部長の補佐

人事権(解雇権)がない者

人事課長の補佐

①その他の事務従事者人事権(解雇権)がある者でも可

秘密保持義務有!(罰則あり)

連絡調整

従業員の健康情報を取り扱う!

(ストレスチェック推進担当者等)

社内事情を知る「産業医」が望ましい

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STEP 1 実施前の準備 ④ストレスチェック規程策定

基本方針を策定し、衛生委員会で審議し実施体制も整備した後は衛生委員会で決めた内容を「ストレスチェック規程」として規程化し、労働者へ周知する必要があります。

◆規程で定めるべき項目例 ◆ストレスチェック規程策定例# 内容

1 実施体制について- 実施者は誰か?(産業医or外部)、実施の責任者は誰か?(人事部長等)

2 調査票について- 使用する調査票は何か?紙で行うかオンラインで行うか?

3 実施時期、頻度について- 定期健康診断と同時に行うか?別に行うか?頻度は年1回か?複数回行うか?

4 高ストレス者の判定方法- 評価基準等

5 面接指導の申出の方法- 面接指導は誰が行うか?どこで行うか?

6 集団分析の方法- 集団分析の方法、対象集団

7 ストレスチェック結果情報の取扱方法- 通知方法、プライバシーの保護、保存方法

8 不利益取り扱いの禁止- 禁止される不利益取り扱いの種類等 18

Q. 派遣労働者についても派遣先がストレスチェックを行うのでしょうか?

A. 指針により、派遣労働者については、派遣元に実施義務が課されています。ストレスチェックを行う大きな目的のひとつに「組織診断」があることから、派遣先の企業においてもストレスチェックを実施することが望ましいとされています。

Q. 出向者や海外赴任者についてのストレスチェックの義務関係は?

A. 在籍型出向の場合には、指揮命令権、賃金支払い等を総合的に判断して、出向元で行うか出向先で行うかを決定するものとされています。国内出向者については、定期健康診断の際と同様、出向元と出向先で話し合い決定することになります。また、海外赴任者についても対象条件にあてはまれば、ストレスチェックの対象となります。

Q. ストレスチェック時期に休職している労働者にも実施義務がありますか?

A. ありません。

Q. 業務の都合上、ストレスチェックの実施日に実施できなかった労働者については、別途実施させる義務があるのでしょうか。

A. あります。

Q. 労働者が受けたくないといった場合には、受検させる義務はありませんか?

A.労働者にストレスチェックを受検する義務はありません。しかし、事業主は全ての労働者がストレスチェックを受検することが望ましいという制度の趣旨は事業場内に周知する必要があります。

STEP1 実施前の準備

ストレスチェック 実施対象者にまつわる Q&A

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03. STEP2 ストレスチェックの実施

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STEP 2 ストレスチェックの実施 実施者の検討

ストレスチェックの実施者となれる者についても法令で決められています。実務上は医師、それも企業の実態をよく把握している産業医に実施をお願いするということが一番望ましく、スムーズであると考えます。

# 実施者になれる者

1 医師

2 保健師

3 看護師(厚労大臣が定める研修を修了した者)(※)

4 精神保健福祉士(厚労大臣が定める研修を修了した者)(※)

(※)平成27年11月30日において、3年以上労働者の健康管理等の業務に従事した経験を有する場合は研修を受けなくても実施者となれる。(附則)

実務的には

優先順位 1位 産業医

優先順位 2位 外部委託先の医師

指針において実施者は、

1. ストレスチェックの調査票の選定2. 調査票に基づくストレスの評価方法3. ストレス者の選定基準の決定

⇒1~3について事業者に対し専門的な見地から意見を述べる

4. ストレスチェックの結果に基づき、当該労働者が医師による面接指導を受ける必要があるか否かを確認する

これらの義務があるとされています。

会社の実態を把握・事業者とのやり取りもスムーズ

今回の安衛法改正で省令で定められている産業医の業務として「ストレスチェック」が追加されました。通達では、何らかのかたちでストレスチェックに関与する趣旨であることが述べられており必ずしも実施自体を行わなければならないわけではないが、なるべく事業場の実態を把握し

ている産業医がストレスチェック等の直接実施に関わることが望ましいとされています。

会社のことはあまり知らない・・・・

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STEP 2 ストレスチェックの実施

産業医の設置と任務常時使用する労働者50人以上の事業所では産業医を選任する必要があります。産業医は、下記の任務について事業者に対して勧告や、指導助言を行う権限があり、少なくとも毎月1回作業場を巡視する義務があります。

産業医 選任概要

選任すべき事業場

全業種、常時使用する労働者50人以上

選任すべき人数 原則 1人常時3000人を超える事業場

2人

専属 原則 産業医は専属の者であることを要しない。

例外 次の事業場の産業医は、専属の者であることが必要。①常時1000人以上の労働者を使用する事業場

②健康上有害な業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場

通常の勤務時間を同じ事業場だけに勤務し、他には勤務しないこと

# 産業医の任務

1 健康診断及び面接指導等の実施並びにこれらの結果に基づく必要な措置

2 作業環境の維持管理

3 作業の管理

4 労働者の健康管理

5 衛生教育

6 健康教育、健康相談等の健康の保持増進のための措置

7 健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置

8 ストレスチェックの実施

9 ストレスチェックの結果に基づく面接指導の実施及び面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するための措置

追加 追

加つまり、ストレスチェックの実施義務のある事業場は、産業医が必ず事業場に選任されている事業場ということ! 22

STEP 2 ストレスチェックの実施

産業医の探し方

現行の産業医の先生が、いまいち・・・メンタル関係には詳しくないというお悩みを抱えていらっしゃる場合や、今回のストレスチェック制度義務化に合わせて産業医を選任するという場合、産業医を新ためて探すということがあるかもしれません。

# 依頼先

1 医師会

2 病院

3 健康保険組合

4 民間の紹介会社

5 親会社等からの紹介

# ポイント

1 会社の実情を把握した会社の立場に立ってくれる

2 フットワークが軽い

3 明るい

4 転勤しない

◆主な依頼先

◆良い産業医のポイント

◆医師会に頼んだ場合の産業医の費用相場(※地域によって相場に差があります。)

従業員数 月額

50~100名 6万

101~200名 7万

201~300名 8万

301~400名 9万

401~500名 10万

201~600名 12万

601~700名 14万

701~800名 16万

801~900名 18万

901~999名 20万

医師会への依頼が多いようですが費用が割高、 断りにくい、当たり外れが多い、希望する先生に決まるとは限らない等のデメリットも良く聞かれます。

民間の紹介会社であれば様々な事情を考慮して選んでもらえるので、このようなポイントを考慮して探してみてください。 23

STEP 2 ストレスチェックの実施

ストレスチェックを外部委託する場合ストレスチェック制度を外部委託する場合には、委託先に必要な実施体制等ストレスチェックが法定の要件を満たせるものなのか各種あらかじめ確認しておくべき事項があります。

◆外部委託する場合のチェック項目

チェック項目 内容 ✓

ストレスチェック制度についての理解

ストレスチェックの目的が一次予防にあること、実施者やその他の実施事務従事者に対して、守秘義務が課されること、本人の同意がなくストレスチェック結果を事業者に提供することが禁止されていること等を委託先が理解しているか。

実施体制 受託業務全体を管理するための体制が整備されているか

調査票・評価方法及び実施方法

ストレスチェックに用いる調査票の選定、評価方法及び高ストレス者の選定基準の決定についての提案を行うことになっているか

評価方法 提案されるストレスチェック結果の評価方法や高ストレス者の選定方法・基準は法令の要件を満たすか

実施方法 調査票の回収等が第三者に見られないようセキュリティ管理が適切に行われるか。

ストレスチェック実施後の対応

ストレスチェックの結果及び面接指導の勧奨はどのように通知が行われるのか?

面接指導の実施方法

面接指導の実施場所はプライバシー保護や労働者の利便性の観点から適切か。

面接指導実施後の対応

面接指導の結果を通知するに当たり、就業上の措置を実施するため必要最小限の情報に限定し、診断名等具体的な内容の生データが提供されることがないような方法が取られるか。

◆外部委託する場合のチェックリスト例

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STEP 2 ストレスチェックの実施

ストレスチェックに使用する調査票、実施方法の選定

指針においてストレスチェック制度に用いる調査票は、規則によって定められた3要件が含まれていれば実施者の意見と衛生委員会等での調査審議を踏まえ事業者の判断により選択可能であるとしています。そのう

えで、調査票として、「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を用いることが望ましいとされています。

◆3要件

1. 職場における当該労働者の

心理的な負担の原因に関する項目

2. 当該労働者の心理的な負担

による心身の自覚症状に関する項目

3. 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

◆職業性ストレス簡易調査票 標準版(57項目)とは

2. 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目

3. 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

・活気がわいてくる・イライラしている・ゆううつだ・仕事が手につかない

・時間内に仕事が処理しきれない・勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない・私の部署内で意見のくい違いがある

・上司、同僚と気軽に話ができる程度・上司、同僚がどのくらい頼りになるか・個人的な問題の相談相手

23項目の簡略版調査票を使用することも可能

職業性ストレス簡易調査票は、2.5万人

の統計に基づいた基準値が出されている他、高ストレス者の抽出方法等の例示もされておりこちらを利用するのが当面は、無難。

1. 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目

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職業性ストレス簡易調査票を利用するメリットデメリット

メリット デメリット 改善策

①57問なので実施しやすい ①ポジティブな項目が少ない 新職業性ストレス簡易調査票(80問版)を活用するか、成長機会、適正な評価等のポジティブな項目を追加する。

②標準値や蓄積されたデータがあり信頼できる

②メンタルヘルス不調の要因になりうる長時間労働の項目が無い

時間外労働に関する項目を追加する。Q. 最近1か月のあなたの時間外労働時間について選択してください。1. 0~10時間未満 2. 10時間以上~30時間未満3. 30時間以上~45時間未満 4. 45時間以上~60時間未満 5. 60時間以上~80時間未満 6. 80時間以上~100時間未満 7. 100時間以上

③活用事例が豊富にある ③メンタルヘルス不調の要因になりうるハラスメントの項目が無い

ハラスメントに関する項目を追加する。Q. 必要以上に叱責されパワーハラスメントと感じることがある。

④活用マニュアルが準備されている

④集団分析結果としての仕事のストレス判定図は4つの項目しか活用していないので職場環境改善に活かしにくい

1. ほかの項目も集団分析できる外部機関を選定する。

2. 組織の生き生き度を把握できる新職業性ストレス簡易調査票(80問)を活用する。

⑤国から無料版も公開 ー ー

会社として職業性ストレス簡易調査票を利用するメリットとデメリットは下記のようなものが挙げられます。

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※参考※職業性ストレス簡易調査票の項目の選定

項目 懸念点

一生懸命働かなければならない 通常、労働に伴っては「職務専念義務」があり、どの程度“一生懸命”なのか、“いつも”とはどの頻度を指すのかこれでは分かりづらい。⇒「そうだ/まあそうだ」といった選択肢になり易い。

勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない

私の部署内でくい違いがある 部署内である程度のくい違いがあるのは日常茶飯事ではないか。⇒「そうだ/まあそうだ」といった選択肢になり易い。

職業性ストレス簡易調査票を利用する場合、項目の中で一部判断に悩む部分があるため配慮をすることも一案です。

総じて「程度」が分かりづらい

本来の意味

項目 意味

一生懸命働かなければならない

⇒切迫して、常に気が抜けないような状況下に置かれてているため休憩時間も惜しいほど働かねばならない

勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない

⇒休憩時間、トイレ休憩等の合間にも仕事のことが頭から離れない

私の部署内でくい違いがある

⇒周囲の雰囲気が悪くなるような緊張感をもたらす意見の食い違いがある

【実務ポイント】

こういった本来の意味へ文章を補足する、もしくは注釈として加えることは問題ありません。ストレスチェック実施者と相談の上行いましょう。※著しく企業側に有利な内容でなければ指導の対象にはなりません。 27

※参考※新職業性ストレス簡易調査票

新職業性ストレス簡易調査票とは、「職業性ストレス簡易調査票」をベースとした80問からなる調査票

で、従来の「職業性ストレス簡易調査票」にはなかったポジティブな項目や、セクハラ・パワハラに関する尺度等が追加され、新たな調査票として注目されています。

# 追加された項目 内容

1 ポジティブな業務への関わりを測定できる尺度

ワーク・エンゲイジメント(個人のいきいき=個人の仕事へのポジティブな関わり)と職場の一体感(職場のいきいき)を定量的に評価します。

2 セクハラ・パワハラに関する項目

職業性ストレス簡易調査票にはなかったハラスメントに関する項目が追加されています。

平成21-23年度厚生労働科学研究費補助金(労働安全衛生総合研究事

業)「労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究」(H21-労働-一般-001)

成長の機会や、個人への尊重、キャリア形成等のポジティブな項目

があり、より建設的に職場環境改善に活かしていきやすい。

◆職業性ストレス簡易調査票から追加された項目

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STEP 2 ストレスチェックの実施

国が公開したストレスチェック実施プログラム(無料)

厚労省では、事業者がストレスチェック制度を円滑に導入・実施できるよう無料のストレスチェック実施プログラムが11月にダウンロードが開始されました。

# 内容

1 労働者が画面でストレスチェックを受けることができる機能(職業性ストレス簡易調査票の57項目と23項目が利用可能)

2 労働者の受検状況を管理する機能

3 労働者が入力した情報に基づき、予め設定し

た判定基準に基づき、自動的に高ストレス者を判定する機能

4 個人のストレスチェック結果を出力する機能

5 予め設定した集団ごとに、仕事のストレス判定図を作成する機能

6 集団ごとの集計・分析結果を出力する機能

7 労働基準監督署へ報告する情報を表示する機能

◆提供コンテンツ 実施者(管理者)用ログイン、メニュー画面

受検者用入力画面

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Q. 労働者が、産業医ではなく主治医によるストレスチェックを希望した場合には応じる必要はありますか?

A. 定期健康診断では、労働者が他の医師による健康診断を受けて、その結果を提出することが認められていますが、ストレスチェックはそのような定めがな

いため、事業者が指定した実施者以外で受けることはできません。

Q. ストレスチェック項目として含んではいけないものはありますか?

A. ストレスチェックの目的上、調査票に「性格検査」や「希死念慮(自殺願望)」「自傷行為」「うつ病検査」等を含めることは不適当とされています。

Q. 実施方法はオンライン上のWebテストのような方法でもいいのでしょうか?

A. 紙の配布でも、オンライン上での実施でも問題ありません。

STEP 2 ストレスチェックの実施

ストレスチェックの実施時の実務にまつわるQ&A

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STEP 2 ストレスチェックの実施

高ストレス者の選定方法

使用する調査票が決定したら、その調査票によってどのような結果が出た者が「高ストレス者」として面接指導の対象とするかを決定しなければなりません。指針において、下記のとおり高ストレス者の選定方法が定められています。国のストレスチェック実施マニュアルでは下

記の1又は2に該当する者の割合が概ね全体の10%程度としていますが企業によってその選定方法は任されています。

1. 調査票のうち、「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高い者

2. 調査票のうち、「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が一定以上の者であって、かつ「職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目」及び「職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目」の評価点数の合計が著しく高い者

◆評価基準例(職業性ストレス簡易調査票57項目を使用した例)

最少26

最大104

77ストレス反応

ストレス要因と周囲のサポート

最少29

63

76

A

B

A:「心身のストレス反応」(29項目)の合計点数(ストレスが高い方を4点、低い方を1点)を算出し合計点数が77点以上の者を高ストレス者とする。

B:「仕事のストレス要因」(17項目)及び「周囲のサポ-ト」(9項目)の合計点数(ストレスが高い者を4点、低い方を1点)を算出し、合計点数が76点以上であって「心身のストレス反応」の合計点数が63点以上である者

評価基準の例の詳細は、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック実施マニュアル」にその他の例示があります。

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STEP 2 ストレスチェックの実施 結果の通知

省令では、事業者は検査を受けた労働者に対し、当該検査を行った医師等から速やかに検査結果を通知されるようにしなければならないとしています。また通達や指針において通知しなければならない事項、通知することが望ましいとされている事項があります。

◆通知しなければならない結果【義務】(通達)

# 通知事項

1 個人ごとのストレスの特徴や傾向を数値、図表

等で示したもの(ストレスチェックの3つの項目ごとの点数を含まねばならない)

2 個人ごとのストレスの程度を示したものであって、高ストレスに該当するかどうかを示した結果

3 面接指導の要否

◆通知することが望ましい事項【努力義務】(指針)

# 通知事項

4 労働者によるセルフケアに関する助言・指導

5 面接指導の対象者にあっては、事業者への面接指導の申出窓口及び申出方法

6 面接指導の申出窓口以外のストレスチェック結果について相談できる窓口に関する情報提供

◆ストレスチェック結果通知のイメージ

1

1

2

3

4

5

6

Q. ストレスチェック結果は会社で配っていいのでしょうか。直接労働者の自宅に郵送しなければいけないのでしょうか。A. 自宅に送付する方法もありますが、個人ごとに

内容を見られない形で封をしたものを会社で各労働者に配布することも可能です。

高ストレス者の場合には、高ストレス者該当通知+面接指導の申出の勧奨

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STEP 2 ストレスチェックの実施 結果の提供の同意

改正安衛法では、ストレスチェックの実施者は予め労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならないことが定められています。また、同意は、書面または

電磁的記録で取得しなければならず、同意の取得のタイミングもストレスチェック結果通知後のみできるものとしています。

結果通知

ストレスチェック実施

面接指導の申出

同意取得不可

実施前~結果通知まで

同意取得可

結果通知後

ストレスチェック実施準備

◆同意取得可能なタイミング

結果通知の封筒に

結果通知提供同意書を封入することも可能

# 留意事項 ☑

1 結果通知前に同意を取得しないこと

2 包括同意(労働者代表の同意により全従業員から同意を得たものとみなすこと)や、

オプトアウト方式による同意(期日までに不同意の申出をしない限り同意があったものとみなすこと)をしないこと

3 書面又はメール等記録の残る方法で同意を取得すること

面接指導の申出があった場合、結果提供の同意があったものとみなして問題ない。(同意取得不要)

◆同意取得時の留意事項

事業者は同意取得に関わる書面又はメール等の電磁的記録を5年間保存するようにすることが望ましい 努力

義務

労働者の同意を得て提供を受けたストレスチェックの結果は5年間保存しなければならない。

義務

■実務ポイント■ストレスチェック未受検者に、「受験勧奨」を行うことも可能です。

実施者から「未受検者の名簿等」を事業者が受領し、労働者へ個別に受検勧奨を行うことができます。

※注意点※未受検を理由に懲戒処分となる等、未受検であることにより不利益取扱いを行われないことを確保した上で実施可能。

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04. STEP3 ストレスチェック後の面接指導等

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STEP 3ストレスチェック後の面接指導等

面接の申出~実施までストレスチェックの結果通知後、受検した労働者は概ね1か月以内に、面接指導の申出を行うこ

ととされています。また、事業者は面接指導申出があった場合、申出後概ね1か月以内に面接指導を行うこととされています。

Q. 面接指導の対象ではない、労働者から面接の申出があった場合、面接指導を実施する必要はあるのでしょうか。

A. 面接指導を実施する対象者としての要件に該当しなかっ

た労働者から申出があった場合は、法令上、事業者に面接指導を行う義務はありません。その場合に面接指導を実施するか否かについては、会社で決定することができます。

◆結果通知~面接指導実施までのフロー

Step 1: 面接指導の対象者を実施者に確認(同意不要)または、労働者からストレスチェックの結果を提出させる

Step 2: 産業医等の医師に面接指導の依頼

面接指導の実施

Q. 結果通知後、数か月も経過してから、労働者から面接指導の申出があった場合、対応する必要はありますか?A. 通達では概ね1か月以内に申し出ることとされているため、何か月も経過した場合には実施義務はないとも考えられますが、受検できなかった個別の事情を判断して、できる限り対応することが未実施とみなされるリスクを回避するためには、良いでしょう。

1か月

結果通知

1か月

面接指導の申出

通達により、面接指導の

申出は書面や電子メール等で行い、その記録を

5年間保存することが望ましいとされた。

■実務ポイント■ストレスチェックは自己記入式。恣意的な操作が可能。故意に高ストレスとすることも可能。こういった問題社員が後に精神疾患に罹患した場合、「会社の責任」であり、何もしてくれなかったと訴えてくる可能性があります↓事後のリスクを軽減するために【面接勧奨の通知を複数回行う】ことをお勧めします。◆勧奨可能な者:実施者及び実施事務従事者 35

STEP 3ストレスチェック後の面接指導等

面接の実施省令により、面接指導において医師が確認しなければならない事項が定められています。適切な

面接指導が行われるために、事業主は面接指導の前に医師に、下表に定める情報提供を行う必要があります。

◆医師が面接指導で確認すべき事項

# 確認項目

1 勤務の状況

2 心理的な負担の状況

3 心身の状況

◆会社が面接指導前に医師に情報提供すべき事項

# 提供項目

1 労働時間、労働密度

2 深夜業の回数及び時間数

3 作業態様、作業負荷の状況

4 職場環境の状況

◆情報提供書のサンプル例

面接指導の申出を行う労働者

は、現状の労働環境に少なからず不満がある者の可能性が高いです。更なる大きなトラブルに発展しないよう客観的なデータで提供を行うよう注意しましょう。

事業者は面接指導の結果を5年間保存する義務があります。※記録の作成様式は任意【記録事項】

1. 実施年月日、労働者の氏名、2. 面接指導を行った医師の名前 3. 勤務の状況、4. 心理的な負担の状況、5. 心身の状況 6. 健康を保持するための必要な措置に関する意見

※面接指導結果の記録には、診断名、検査値、具体的な愁訴の内容の生データや医学的情報を含むことは不可。

義務

■実務ポイント■面接時に、面接する医師から労働者へ、直接「就業上の措置」について言及しないよう、事前に確認をしておきましょう!このときの発言と、会社が提示した就業措置とが異なった場合、トラブルとなりやすいです。

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STEP 3 面接指導 意見の聴取

改正安衛法では、事業者に面接指導の結果に基づき、概ね1か月以内に当該労働者の健康を

保持するために必要な措置について、厚生労働省令の定めるところにより、医師の意見を聴かなければならないとされています。

◆医師に聴取する意見 2種類

就業区分 就業上の措置の内容

区分 内容

通常勤務 通常の勤務でよいもの

就業制限 勤務に制限を加える必要のあるもの

メンタルヘルス不調を未然に防止するため、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少又は昼間勤務への転換等の措置を講じる。

要休業 勤務を休む必要のあるもの

療養等のため、休暇又は休職等により一定期間勤務させない措置を講じる。

1. 下表に基づく就業区分及びその内容に関する医師の判断

2. 必要に応じ、職場環境の改善に関する意見

Q. 面接指導を行った医師が産業医ではない場合、産業医にも別途意見を聴取する必要はありますか。A. 産業医以外が面接指導を行った場合、必ずしも事業場の労働状況等を把握しているわけでありませんので、面接指導の結果を踏まえて、その

結果について産業医にも意見を求めることが適当です。

◆意見聴取書 サンプル

労働時間短縮の趣旨

は時間外労働や休日労働の削減を意味する。(Q&Aより)

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STEP 3 面接指導 就業上の必要措置

改正安衛法では、医師の意見を勘案しその必要性がある場合には就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じなければならないとしています。

Q. 就業上の措置について、本人の希望に応じて、労働時間の短縮をしたり、本人の希望の部署に異動させる必要があるのでしょうか?

A. 指針では、面接指導の結果に基づく就業上の措置を決定する場合には、予め

当該労働者の意見を聴き、十分な話し合いを通じてその労働者の了解を得られるよう努めるとされています。十分な話し合いのもと了解を得られるよう努めたのであれば最終的な判断は事業者が決定できると解されます。

◆実務フロー

Step 1: 当該労働者と面談(1回目)し、労働者の意見を聴取Point 面談の記録は面談シートで記録として残しておく

産業医の同席の下行うことが適当。(指針)

Step 2: 当該労働者と面談(2回目)し、会社としての案を

提示(時間外労働、休日労働の減少)Point 面談の記録は面談シートで記録として残しておく

会社の案を拒否会社の案の受け入れ

就業上の必要措置の実施

Step3: 当該労働者と面談(3回目)し、会社案について再度説明、理解を求める。もしくは違う案を提示(配転案等)Point 面談の記録は面談シートで記録として残しておく

会社の案を拒否

債務の本旨に従った労務提供がで

きないものとして、休職の勧奨等通常

のメンタル疾患者と同様のプロセスを踏む

ストレスチェックを利用して、労働者の希望通りの異動のためのツールに使われないよう毅然とした対応が必要! 38

05. STEP 4 集団分析

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STEP 4 集団分析

省令により、事業者はストレスチェック後、ストレスチェックを実施した医師等に当該検査結果を部や課の一定規模の集団ごとに集計させ、結果を分析させるよう努力義務が課されています。ま

た、その分析結果を鑑みて必要性がある場合には事業場の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努力義務が課されています。

10人以上の集団ごと

営業1課

ストレス集団分析結果職場名:営業一課対象者:10名仕事内容:新規法人顧客開発営業

尺度名 平均点 健康リスク

仕事の量的負担 8.5 108

仕事のコントロール 6.4

上司の支援 6.0 112

同僚の支援 8.8

総合健康リスク 121

10人以下の集団

人事部

経理部

原則 全ての労働者から同意取得

例外 個々の労働者が特定される恐れが無い方法であれば分析可能

10人以上の規模とする方法

10人以下の集団

人事部

10人以上の集団ごと

管理部

集団分析は、メンタルヘルスのリスクマネジメントのツールとして

利用価値がある。

■実務ポイント■

集団分析結果を無制限に事業所内で共有してしまうのは、当該部や課の監督者等に不利益が生じる場合があるので、トラブルを避けるためにも、共有範囲についても(規程等へ)予め決めておくと良いでしょう。

ストレスチェック実施者が行った集団分析の結果は、事業者に提供して問題ありま

せん。

10人以下の集団

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06. その他留意事項

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不利益取り扱いの禁止

改正安衛法では、ストレスチェック制度の実施に関して生じた下表に示すような不利益な取扱を禁止しています。

# 不利益の種類 不利益項目詳細

1 A.ストレスチェックを受検しないことを理由とした不利益取扱い

ストレスチェックを受けない労働者に対して、懲戒処分を行うこと

2 ストレスチェック結果を事業者に提供することに同意をしない労働者に対して不利益な取り扱いを行うこと

3 面接指導の要件を満たしているにも関わらず面接指導の申出を行わない労働者に対して不利益な取り扱いを行うこと

4 B.面接指導結果を理由とした不利益取扱

面接指導結果に基づく措置の実施に当たり、医師による面接指導を行うこと又は面接指導結果に基づく必要な措置について医師の意見を聴取すること等の法令上求められる手順に従わず不利益な取扱いを行うこと。

5 面接指導結果に基づく措置の実施に当たり、医師の意見とはその内容・程度が著しく異なる等医師の意見を勘案し必要と認められる範囲内となっていないもの又は労働者の実情が考慮されていないもの等の法令上求められる要件を満たさない内容の不利益な取扱いを行うこと

6 面接指導の結果を理由として、次に掲げる措置を行うこと。

a. 解雇すること

b. 期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと

c. 退職勧奨を行うこと

d. 不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命じること

e. その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること 42

プライバシーの保護

ストレスチェック制度は、機微情報である労働者の健康情報を扱うことから、その情報管理には細心の注意を払う必要があります。

第104条 (前略)第66条の10第1項の規定による検査又は同条第3項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない。

6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金

違反すると

# 留意事項 ☑

1 事業者がストレスチェック制度に関する

労働者の秘密を不正に入手してはならない。

2 実施者は、ストレスチェックの結果を就業上の措置に必要な範囲を超えて労働者の上司又は同僚等に共有してはならない

3 事業者は、集団分析結果を事業場内で制限なく共有してはならない。

4 面接指導結果を事業者に提供する場合

には、診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の生データ又は詳細な医学的情報は提供してはならない。

◆情報取扱上の留意点(指針より)◆安全衛生法

■実務ポイント■実施事務従事者に自社の社員を選定する場合は、① 第104条の規定に基づき「秘密保持義務」が課されること② 所属部署の上司等の指示により、ストレスチェックの秘密を洩らさないこと③ ストレスチェック以外の事務においてストレスチェックの実施事務で得た情報を使用しないこと以上を事前に周知しましょう。

(特に人事部等労働者の解雇や異動の人事を担当する職員を選ぶ場合は周知が義務です。)

必ずしも書面による必要はありませんが、可能であれば、改めて秘密保持誓約書等を取り直すのも効果的です。 43

労働基準監督署への報告義務

省令により、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、ストレスチ

ェック結果について所轄の労働基準監督署長に提出しなければなりません。提出時期は、事業年度の終了後など、事業場ごとに設定することができます。

◆検査結果等報告書 Q. 提出をしなかった場合に罰則はあるのでしょうか。

A. 労基署への報告義務は、安衛法100条1項によるものと考えられるので、その

違反には安衛法120条5号の50万円以下の罰金があります。なお、50人未満の場合には報告義務はありません。事業場ごとに報告書の提出が必要です。

実施者が産業医ではない場合でも、産業医には事業場の実態を把握する必要があるため産業医の捺印は必要です。(Q&Aより)

Q. ストレスチェックの受検者の人数が少ない場合、労基署の指導の対象となるのでしょうか。

A. 労基署への報告は、事業場のストレスチェック制度の実施状況を把握するためのものであるため、受検者や面接指導の実施率が低いことをもって指導されることはないとされています。

提出は事業所ごとに必要です。

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厚労省の「こころの耳」の際とに、「5分でできる職場のストレスセルフチェック」というものがありますが、これを行ったからといってストレスチェックの代わりとすることはできません。

50人未満の事業場のストレスチェック

50人未満の事業場はストレスチェックの実施が義務ではありませんが、もちろん実施する

ことが望ましいと言えます。なお、実施しなくとも、厚労省のこころの耳のサイトを利用して労働者にセルフチェックを促すというようなことも、労働者の気づきを促すためには有用です。

◆各種ツールの利用

◆助成金の利用

◆面接指導の無料実施

地域産業保健センターでは、小規模事業場に対する相談支援などを行っています。ストレスチェック自体を地域産業保健センターで実施することは予定

していませんが、ストレスチェックの結果に基づく面接指導は、依頼に応じて無料で実施することが可能となっています。ぜひ利用しましょう。

助成対象 助成額

①ストレスチェックの実施 1従業員につき500円

②ストレスチェックに係る産業医活動

1事業場あたり産業医1回の

活動につき21,500円(上限3回)

一定の要件を満たすと、下記の助成金がもらえます!

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ストレスチェック制度実施までのスケジュール

2015年 2016年

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

国・行政の動き

法施行 11/30までに実施義務

対社内①衛生委員会調査審議

③規程策定

②基本方針の策定・表明

④周知、研修等

⑤ストレスチェック実施

⑥結果通知・面接指導の実施

⑥労基署報告

実施者、実施体制、実施方法等

の検討・・・

教育研修の実施、実施に関する周知文の発表

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※参考※記録の保存まとめ

# 保存記録 保存義務 保存の主体 保存期間

1 ストレスチェック結果の記録(労働者の同意を得て実施者から検査結果の提供を受けた場合)

義務 事業者 5年

2 ストレスチェック結果の記録(労働者の同意を得ず実施者が保有する結果)

努力義務 実施者(困難な場合、実施事務従事者から指名した担当者)

5年

3 面接指導の申出の記録 努力義務 事業者 5年

4 面接指導の結果 義務 事業者 5年

5 集団分析の結果 努力義務 事業者 5年

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