注射剤 Rb 声性脳梗塞 劍R1日後 1週間後 3~4週間後 注射剤 Rb 声性脳梗塞 劍R...

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立花 本日は非心原性脳梗塞治療について抗血小板薬中 心に議論したいと思います。まず寺山先生に急性期の治 療方針についてお聞きします。 寺山 アルガトロバ/やオザグレルなどの抗血栓薬とェダ ラボ/による静注療法と それに続く経口抗血小板薬療法 が基本です。通常経口抗血小板薬は発症数日後から開始 されることが多いのですが 静注療法の中止に伴って再発 や増悪を認める例も少なくなく 経口抗血小板薬はその作 用を間断なく発揮させる目的で わたしどもの施設では意識 障害や陸下障害がなければ 入院初日から投与を開始して います。これには静注療法を早く切り上げ できるだけ早 くリハビリテ ショ/を開始するという目的もあります。 使用する経口抗血小板薬はクロピドグレル(商品名 プラビックス⑧)単剤を推奨しています (図1。これは現在当院で実施中の試験 で用いているレジメ/の1つなのですが 抗血小板薬を併用投与する他のレジメノ と比較しても 現段階で予後に差があり ません。 立花 単剤投与は併用投与と比較して 出血リスクが低いことがメリットですね。 寺山 はい。脳梗塞またはTIA発症3カ 月以内の高リスク患者7,599例を対象に実 施されたMATCH試験において クロピ ドグレル単剤療法群は併用療法群と比較 して 血管性イベ/トの累積発症率には 差がありませんでしたが 原発性頭蓋内出血の発症率が 低いと報告されました※1。 また,非心原性脳梗塞を発症してから90日以内の患者 20,332例を対象としたPRoFESS試験では,クロピドグレル 単剤投与群で出血性イベ/ト相対リスクが低かったという 結果が出ています※2。 さらに,発症後8日以上経過した脳梗塞患者1,110例を 対象としたCOMPASS試験では,クロピドグレルの脳内出 血の発現率は50mg/日投与群,75mg/日投与群ともに0.2 年%と低値であったと報告されています※3。 これらの結果から 抗血小板薬はできるだけ早く単剤投 与に移行することが望ましく また選択する薬剤としては効 安全性に優れるクロピドグレルが有用と考えられます。 ※1DienerHC,etal Lancet2004:364.331-337 ※2SaccoRL,etal.NEnglJMed2008;359:1238- ※3UchiyamaS.JNewRem&Clin2011,60:1124- 義塾嗣臣勤王瀞確証芦諾潤転諾ヨ竃柁謎‘㌫猫意表義一義違憲義 剪� 1日後 1週間後 3~4週間後 注射剤 �R��������b�▼ 声性脳梗塞 劍�

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立花 本日は非心原性脳梗塞治療について抗血小板薬中

心に議論したいと思います。まず寺山先生に急性期の治

療方針についてお聞きします。

寺山 アルガトロバ/やオザグレルなどの抗血栓薬とェダ

ラボ/による静注療法と それに続く経口抗血小板薬療法

が基本です。通常経口抗血小板薬は発症数日後から開始

されることが多いのですが 静注療法の中止に伴って再発

や増悪を認める例も少なくなく 経口抗血小板薬はその作

用を間断なく発揮させる目的で わたしどもの施設では意識

障害や陸下障害がなければ 入院初日から投与を開始して

います。これには静注療法を早く切り上げ できるだけ早

くリハビリテ ショ/を開始するという目的もあります。

使用する経口抗血小板薬はクロピドグレル(商品名

プラビックス⑧)単剤を推奨しています

(図1。これは現在当院で実施中の試験

で用いているレジメ/の1つなのですが

抗血小板薬を併用投与する他のレジメノ

と比較しても 現段階で予後に差があり

ません。

立花 単剤投与は併用投与と比較して

出血リスクが低いことがメリットですね。

寺山 はい。脳梗塞またはTIA発症3カ

月以内の高リスク患者7,599例を対象に実

施されたMATCH試験において クロピ

ドグレル単剤療法群は併用療法群と比較

して 血管性イベ/トの累積発症率には

差がありませんでしたが 原発性頭蓋内出血の発症率が

低いと報告されました※1。

また,非心原性脳梗塞を発症してから90日以内の患者

20,332例を対象としたPRoFESS試験では,クロピドグレル

単剤投与群で出血性イベ/ト相対リスクが低かったという

結果が出ています※2。

さらに,発症後8日以上経過した脳梗塞患者1,110例を

対象としたCOMPASS試験では,クロピドグレルの脳内出

血の発現率は50mg/日投与群,75mg/日投与群ともに0.2

人 年%と低値であったと報告されています※3。

これらの結果から 抗血小板薬はできるだけ早く単剤投

与に移行することが望ましく また選択する薬剤としては効

果 安全性に優れるクロピドグレルが有用と考えられます。

※1DienerHC,etal Lancet2004:364.331-337

※2SaccoRL,etal.NEnglJMed2008;359:1238-1251.

※3UchiyamaS.JNewRem&Clin2011,60:1124-1130.

義塾嗣臣勤王瀞確証芦諾潤転諾ヨ竃柁謎‘㌫猫意表義一義違憲義 剪�

1日後        1週間後         3~4週間後

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(提供 寺山靖夫氏)

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立花 松本先生は,CAS(頚動脈ステ/ト留置術)をはじ

めとする外科的治療を多く実施されています。脳神経外科

医の立場から 抗血小板薬の選択についてご意見をお聞

かせください。

松本 急性期脳梗塞においては,基本的に2剤を1カ月間

併用しています。これはMATCH試験のサブ解析におい

て 3カ月以内は併用群と単利群の出血リスクに有意差が

見られないと報告されているためです。約1カ月をめどに

クロピドグレル単剤に切り替えています。

使用する薬剤ですが BAD患者あるいは全身にアテロ

ム血栓症を有する患者についてはクロピドグレルを選択

します。クロピドグレルはCAPRIE試験において心筋梗塞,

糖尿病合併例や虚血性イベ/ト(虚血性脳卒中 心筋梗塞)

既往例に対して 血管性イベノトの発症を有意に抑制した

との報告があるためです※4~6。

CASについてですが 2008年4月に保険収載されてか

ら現在まで45例に実施しています。対象はCEA(頚動脈内

膜剥離術)の施術が困難な症例です。CASを施行する症例

は,高度狭窄や全身にわたる血管病変を有することが多い

ため,頚動脈プラ クの評価とともに,ABI(足関節上腕

血圧比)と心エコ は必ず行うようにしています。投与す

る抗血小板薬は,クロピドグレルを含めた2剤併用を基本

としています。

※4CAPRIESteeringCommittee.Lancet1996;348:1329-1339.

※5BhattDL,etal.AmJCardiol2002;90:625-628.

※6RinglebPA,etal.Stroke2004;35・528-532.

立花 次にTIAについて議論したいと思います。「脳卒中

治療ガイドライ/2009」では,TIAに対しても経口抗血小

板薬の投与が推奨されています。TIA患者に対して ど

のような治療をされていますか。

寺山 TIAについては,脳梗塞と同等の扱いで 迅速に

治療を行う必要があります。EXPRESS試験では,軽症脳

卒中あるいはTIAの患者で 診断 治療が遅延した群と

迅速に診断 治療を開始した群を比較したところ 後者群

で発症後90日以内の脳卒中発症率が有意に低下したと報

告されています(図2。

西村 TIAが疑われる患者が来院したら まずABCD2ス

コア年齢,血圧,症状,TIA持続時間,糖尿病の有無を

〔RothwellPM,etalLancet2007370(9596)1432-1442〕

点数化し,合計点で脳梗塞に移行するリ

スクを測るスコアで評価し,3 4点以

上の高リスク患者には入院を勧めていま

す。ABCD2の導入により TIAの入院患

者が増加しました。

TIA患者に対しては,入院後直ちにオ

ザグレルとユダラボンを静注投与し,同

時に経口抗血小板薬の投与を開始しま

す。当院ではクロピドグレルのほかアス

ピリ/(ASA)も投与しており 場合によっ

て併用も行っています。MATCH試験の

結果をかんがみて 併用期間はできるだ

け短期間とし,その後はクロピドグレル

単剤にて管理しています。

立花 抗血小坂薬の選択について 患者

からの要望はありますか。

西村 患者が薬価の低い薬剤を選択す

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る傾向があると考えている医療関係者が多いのですが 実

際は効果や安全性に重きを置く方が少なからずいらっしゃ

います。このため 薬価のみならず効果 安全性について

も きちんと説明する必要があると思います。

立花 道免先生,リハビリテ シヨ/専門医の抗血小板薬

処方の現状についてお聞かせください。

道免 急性期リハビリテ ショ/の重要性についての認識

が広まっていますが 多くのリハビリテー

シヨ/専門医が 薬物療法を含めたリハ

ビリテーショ/のスム ズな実施に腐心

し,リハビリテ ショノ医療の質の向上

を追求する動きが少ないというのが実情

です。

わたしは,脳梗塞の回復期から慢性期

治療に携わるリハビリテ ショ/専門医

に対して 意識調査を行っています。3

年前の調査と今年の調査結果を比較して

みると エビデ/スや患者の病態に応じ

た抗血小坂薬の選択についての意識は向

上していますが 主体的薬剤選択にまで

は至っておらず 急性期病院の処方を継

続している医師がほとんどでした。

立花 回復期における抗血小板薬の選

択について どのようにお考えですか。

道免 さまざまなエビデ/スを参照する

と クロピドグレル単剤投与が推奨され

ると考えます。「脳卒中治療ガイドライ/

2009」では,慢性期の再発予防に抗血小

板薬の投与を推奨するという記述が加わ

り クロピドグレルはASAと並んでグ

レ ドAに位置付けられています(表)。

リハビリテーショノに携わる医師も 回復

期から慢性期にかけての抗血小板薬への

意識や知識を高めていく必要があると考

え,勉強会などを通じて啓発活動を行っ

ています。

松本 地域のかかりつけ医の先生方に患者を戻した後も

3 6カ月に1度,頚動脈エコーやMRAでのフォロ アッ

プを行います。その際,病態に適していない抗血小板薬に

変更されていることがあります。ATISが見られる場合は

クロピドグレルを選択するなど かかりつけ医の先生も抗

血小板薬の使い分けを行っていただきたいと思います。

立花 今回のディスカッションでは,急性期から慢性期ま

での非心原性脳梗塞治療において クロピドグレルを中心

とした薬剤投与が有用ということが明らかになりました。

先生方 本日はありがとうございました。

81非心原性脳梗塞の再発予防には,抗血小板薬の投与が推奨される グレードA)。

2.現段階で非心原性脳梗塞の再発予防上 最も有効な抗血小板療法(本邦で使用可能なものはアスピリ/75~150mg/日ク口ピドグレル75mg/日(以上グレードA)

シロスタノール200mg/日 チクロピジ/200mg/日(以上 グレードB)である。

3.非心原性脳梗塞のうち ラクナ梗塞の再発予防にも抗血小板薬の使用が奨められる(グレードB)。ただし十分な血圧のコ/トロールを行う必要がある。

(附記)

1)出血性合併症の他に,アスピリンには胃腸障害など,クロピドグレルには発疹(大部分は軽度かつ一過性),下痢,好中球減少,血小板減少などの副作用もある。また日本人に比較的特徴的な

クロピドグレルとチクロピジンによる副作用に肝機能障害がある。

2)アスピリンとクロピドグレルの併用効果について一定の結論はないが,出血性副作用の増強を

示唆する報告もあり,十分留意を要する。

3)シロスタゾールは,脳梗塞再発予防効果がアスピリンに優るとも劣らないとの大規模臨床試験

もあり,また症候性頭蓋内主幹動脈狭窄性病変の進行抑制,糖尿病・高血圧合併例の再発予防に有効性を有することが示されている。しかし頭痛,頻脈の副作用がある。

4〉糖尿病その他高リスクを合併する脳梗塞症例の再発予防にはアスピリンよりもクロピドグレル,

シロスタゾールが優れている可能性がある。

5)チクロピジンは,脳梗塞再発防止に関するエビデンスはグレードAに相当するが,クロピドグレ

ルのほうが安全性に優れていた(チクロピジンでは,好中球減少,血栓性血小板減少性紫斑病,

肝障害などの副作用に十分な注意が必要)。但し,クロピドグレルその他の抗血小板薬で副作用がみられた例,あるいは従来より安全かつ有効にチクロピジンを使用していた症例にはチクロ

ピジンの使用ないし併用も考慮する。

6)アスピリンは,50%以上の症候性頭蓋内主幹動脈狭窄を有する脳梗塞あるいはTIA例に対して,

抗凝固薬に優る有益性が示されている。

7)アスピリン50mg/日とジピリグモール徐放薬(本邦未承認)400mg/日の併用療法は,特にハイリ

スク例の脳梗塞再発予防に有効であること,脳卒中再発予防効果はクロピドグレルとほぼ同様

であることが示されている。

8)アスピリン30~325mg/日とジピリダモール徐放薬(本邦未承認)400mg/日の併用療法は,動脈

病変に由来する脳梗塞あるいは一過性脳虚血発作(TIA)の再発予防上,有効であることが示されている。

9)出血時の対処が容易な小手術(抜歯など)の施行時は,抗血小楯薬の内服は続行してよい。生横を

含む消化管内視鏡横査などを行う場合,アスピリンは3日前に,クロピドクレルやチクロピジンは5日前,シロスタゾールは2日前を目安に中止する。出血時の対処が容易でない処置(ポリペクトミー,胃癌造設など),大手術(開腹手術など)の施行時は,アスピリンは手術の7日前に,

クロピドクレルは手術の14日前に,チクロピジンは手術の10~14日前に,シロスタゾールは3

日前を目安に中止する。休薬期間中の血栓症や塞栓症のリスクが高い例では,脱水回避,輸汲ヘパリン投与などを適宜考慮する。

(脳卒中合同ガイドライン委員会 篠原華人ほか編 脳卒中治療ガイドライン2009,協和企画,東京 pplO3-109より転載)